説明

壁部貫通部材、配管の壁部貫通構造、および壁部への貫通配管固定方法

【課題】 簡易な構造であっても確実な止水機能を発揮し、設置が容易で、かつ設置自由度の高い壁部貫通部材、配管の壁部貫通構造、および壁部への貫通配管固定方法を提供する。
【解決手段】 壁部貫通部材2a自体が配管を構成する。ネジ35の軸はガイドプレート25aから突出する。ネジ35の軸のガイドプレート25aから突出した部位には係止部17aが螺合する。ネジ35の軸の近傍には背当て部39が存在する。屋外プレート15a側からネジ35を回転させると、係止部17aは、背当て部39に接触するまではネジ35とともに回転する。係止部17aが背当て部39に接触すると、ネジ35の回転に伴って、係止部17aはネジ35の軸方向に移動する。板状である係止部17aが貫通孔29の外周側に壁部3と略平行に張り出し、壁部3を挟みこむ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、壁部に設けられる貫通孔に対して取り付ける壁部貫通部材等に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば屋外に設置される給湯器等に接続される配管を屋内に引き込む際には、屋外と屋内を区分けする壁部に配管を挿通させて設置する必要がある。貫通部からの水の浸入を防止する必要があることから、貫通部には壁部貫通部材が設けられる。
【0003】
このような壁部貫通部材としては従来エルボ型の継手配管を用い、当該継手配管を壁部に貫通させ、継手配管の両端にそれぞれ、配管を接続する方法が一般的である。
【0004】
また、壁部貫通部材として、例えば、筒状の鞘管垣外を壁に対して斜めになるように配置し、鞘管ガイドの傾き方向に鞘管を貫通させ、鞘管内部に配管を貫通する配管の壁部貫通構造がある(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2000−199584号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1のような壁部貫通構造は壁部に壁通し具を固定するための部材の数が多く、形状も複雑であるため、壁面において設置できる箇所が限定されてしまう。そのため壁部貫通部材の用途も限定されてしまう。
【0007】
また、特許文献1のような壁貫通配管の壁通し具は鞘管ガイドの傾き方向に鞘管を貫通させ、鞘管内部に配管を貫通することから、設置角度によっては壁通し具の鉛直方向の寸法が大きくなってしまい、設置自由度が低い。
【0008】
本発明は、このような問題に鑑みてなされたもので、簡易な構造であっても確実な止水機能を発揮し、設置が容易で、かつ設置自由度の高い壁部貫通部材、配管の壁部貫通構造、および壁部への貫通配管固定方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前述した目的を達成するため、第1の発明は、壁部貫通部材であって、樹脂製のパイプと、前記パイプの中空部分を塞がないように、前記パイプに対して略垂直に設けられる第1のプレートおよび第2のプレートと、前記第1のプレートおよび前記第2のプレートを貫通するネジと、前記ネジの前記第2のプレート側から突出する部位と螺合する係止部と、前記パイプの外周の前記ネジの軸の近傍に形成され、前記係止部の回転を規制する背当て部と、を具備し、前記第1のプレート側から前記ネジを回転させると、前記係止部は、前記背当て部に接触するまでは前記ネジとともに回転可能であり、前記係止部が前記背当て部に接触すると、前記ネジの回転に伴い、前記係止部が前記ネジの軸方向に移動可能であることを特徴とする壁部貫通部材である。
【0010】
前記係止部を内方に向けた状態から前記ネジを回転させると、前記係止部が外方を向いた状態で、前記係止部を前記背当て部に接触させることが可能であり、壁部に設けられた貫通孔に前記壁部貫通部材を設置した際に、前記第1のプレートと、外方に向いた前記係止部とで、前記壁部を挟みこむことが可能であってもよい。
【0011】
前記第2のプレートと前記係止部との間の前記ネジの軸にはチューブが設けられてもよい。
【0012】
前記パイプの外周部には止水構造が形成され、前記止水構造は弾性部材と水膨脹性不織布から構成され、前記パイプの前記止水構造の内側に位置する部位には、前記止水構造を保持する保持部材が設けられてもよい。
【0013】
本発明によれば、壁部に壁部貫通部材を取り付ける際に、壁部貫通部材の第1のプレート側の面からネジを締めることによって、第1のプレートのネジを回した面の裏側に配置される係止部と第1のプレートとで壁部を挟みこむ。つまり、壁部貫通部材の一方の面からだけネジを締めることによって、壁部に壁部貫通部材が固定されるので、取り付けが容易である。
【0014】
また、第2のプレートと係止部との間のネジの軸にチューブが設けられることによって、チューブと係止部との摩擦が生じるため、係止部をネジとともに確実に回転させることができる。したがって、チューブを設けることによって、ネジを回転させた際に係止部が空回りすることを防止することができる。
【0015】
また、水膨脹性不織布が水分等を吸収して膨脹する際に、第2のプレートが止水構造を第1のプレート側に押圧し、保持部材が止水構造を壁部に対して押圧するため、簡易な構造であっても、より確実に止水機能を保つことができる。また、壁部貫通部材が保持部材を具備することによってパイプが内側に変形することを防止可能であるため、壁部貫通部材のパイプをより確実に壁部に保持することができる。
【0016】
第2の発明は、前記壁部貫通部材を用い、壁部に形成された貫通孔に前記壁部貫通部材が設置され、前記第1のプレートは前記壁部の貫通孔より大きく、前記係止部が前記貫通孔の外周側に張り出し、前記第1のプレートと前記係止部によって前記壁部を挟み込むことで前記壁部貫通部材が前記壁部に固定され、前記パイプ自体が配管を構成することを特徴とする壁部貫通構造である。
【0017】
第2の発明によれば、壁部の一方の面からネジを回転させることで、第1のプレートと外周側に張り出した係止部によって壁部を挟みこむため、容易に壁部に壁部貫通部材を固定することができる。また、簡易な構造であるため、壁部に対しての設置自由度が高い。また、壁部貫通部材を筒状に構成することによって、壁部貫通部材に配管保持部等を具備していなくてもよく、壁部貫通部材の使用用途が増える。
【0018】
また、第1のプレート側のネジを回転させることによって係止部と第1のプレートによって壁部にパイプを保持可能であるため、壁部にさらに固定用のネジ等の部品を取り付ける必要がない。
【0019】
第3の発明は、前記壁部貫通部材を用いた、壁部への貫通配管固定方法であって、前記係止部を壁部貫通部材の内方に向けた状態で、壁部に形成された貫通孔に前記壁部貫通部材を設置する工程aと、前記第1のプレート側から前記ネジを回転させ、前記係止部を前記背当て部に接触するまで回転させ、前記係止部を壁部貫通部材の外方に向ける工程bと、さらに前記ネジを回転させ、前記係止部を前記ネジの軸方向に沿って前記第2のプレート側に移動させ、前記係止部の端部を壁部に接触させる工程cと、を具備することを特徴とする壁部への貫通配管固定方法である。
【0020】
第3の発明によれば、第1のプレート側からネジを回転させる作業によって、第1のプレートと係止部とで壁部を挟みこむことができるため、容易に壁部貫通部材を壁面に設置することができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、簡易な構造であっても確実な止水機能を発揮し、設置が容易で、かつ設置自由度の高い壁部貫通部材、配管の壁部貫通構造、および壁部への貫通配管固定方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】第1の実施の形態にかかる壁部貫通部材2を示す斜視図。
【図2】壁部貫通部材2の本体19より屋外プレート15側に配置される部材の分解斜視図。
【図3】壁部貫通部材2をガイドプレート25側からみた正面図であり、(a)はネジ7を回す前の状態を示した正面図、(b)は係止部7が回転規制部材5に接触した状態を示した正面図。
【図4】壁部貫通構造1を示す図であり、(a)は屋外プレート15側から見た場合の斜視図、(b)はガイドプレート25側から見た場合の斜視図。
【図5】壁部貫通構造1を示す縦断面図。
【図6】壁部貫通部材2を壁部3に取り付ける工程を示した図であり、(a)は壁部3に壁部貫通部材2を取り付ける前の壁部貫通部材2等を示す斜視図、(b)は壁部3に壁部貫通部材2を取り付けた後の壁部貫通構造1を示す斜視図。
【図7】第2の実施の形態にかかる壁部貫通部材2aを示す斜視図。
【図8】貫通孔29に壁部貫通部材2aを取り付ける際の係止部17a付近の拡大斜視図。
【図9】壁部3にとりつけられた壁部貫通部材2aの一対のネジ35と係止部17a付近の拡大断面図。
【図10】壁部貫通部材2aを壁部3に取り付ける工程を示す斜視図であり、(a)は壁部3に壁部貫通部材2aに取り付ける前の状態を示す斜視図、(b)は壁部3に壁部貫通部材2aを取り付けた後の状態を示す斜視図、(c)はフード34を壁部3に取り付ける前の状態を示す斜視図、(d)はフード34を壁部3に取り付けた後の状態を示す斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の第1の実施の形態にかかる壁部貫通部材2について説明する。図1は第2のプレートであるガイドプレート25側から見た場合の第1の実施の形態にかかる壁部貫通部材2の斜視図である。図2は壁部貫通部材2の本体19より、第1のプレートである屋外プレート15側に配置される部材の分解斜視図である。壁部貫通部材2は、主に、屋外プレート15、ガイドプレート25、本体19、ネジ7、係止部17および回転規制部材5等から構成される。壁部貫通部材2は、屋外プレート15とガイドプレート25の間に本体19を挟み込むように設けられる。
【0024】
屋外プレート15およびガイドプレート25には、それぞれ、例えばステンレスやアルミニウム等の耐食性の金属が使用でき、ある程度の強度を有していれば、樹脂等の使用も可能である。
【0025】
本体19は、例えばシリコーンゴムやエチレンプロピレンゴムから形成される。また、本体19は屋外プレート15側の面に配管を保持可能である筒状の配管保持部6を有する。本体19は配管保持部6が形成される面の裏側に凹部を有する。本体19の凹部には壁部貫通部材2の組み立て時に、押さえプレート21が固定される。
【0026】
屋外プレート15、本体19、押さえプレート21およびガイドプレート25にはネジ7が挿通される。ネジ7の頭部は屋外プレート15の表面に配置され、ネジ7の頭部と屋外プレート15との間にはOリング4を挟み、ネジ7の軸は屋外プレート15を貫通する。
【0027】
さらにネジ7の軸が本体19、押さえプレート21およびガイドプレート25に対して順に挿通される。壁部貫通部材2はネジ7によって固定される。また、ネジ7の近傍にはネジ状の部材である回転規制部材5が配置される。
【0028】
次に、ネジ7と回転規制部材5の位置および機能の関係について説明する。ネジ7の軸はガイドプレート25から突出する。ネジ7の軸のガイドプレート25から突出した部位には係止部17が螺合する。係止部17は板状部材である。前述したように、ネジ7の軸の近傍には回転規制部材5が存在する。屋外プレート15側からネジ7を回転させると、係止部17は、回転規制部材5に接触するまではネジ7とともに回転する。係止部17が回転規制部材5に接触すると、係止部17はネジ7の回転に伴って、ネジ7の軸方向に移動する。
【0029】
ガイドプレート25と係止部17との間のネジ7の軸にはチューブ23が設けられる。チューブ23は、ネジ7の軸の外径と比較して、同じかやや小さな内径を有し、弾性変形が可能な部材(例えばゴム部材、バネ)である。すなわち、チューブ23はネジ7の軸に対して密着し、チューブ23がネジ7の軸に対して回転等することがない。係止部17は、ネジ7と螺合した状態でチューブ23と接触する。したがって、ネジ7を回転させると、係止部17は、チューブ23との摩擦によってネジ7とともに回転し、壁部に設置した際にはガイドプレート25の外周側に壁部と略平行に張り出し、壁部を挟みこむことが可能である。
【0030】
図3は壁部貫通部材2をガイドプレート側からみた正面図であり、図3(a)はネジ7を回す前の状態を示した正面図、図3(b)は係止部17が回転規制部材5に接触した状態を示した正面図である。係止部17を内方に向けた状態からネジ7を屋外プレート15側から回転させると、係止部17が外方を向いた状態で、係止部17を回転規制部材5に接触させることが可能である。すなわち、回転規制部材5は、ネジ7に対して、係止部17が外方に向く位置で係止部17と接触する部位に設けられる。なお、図3(b)の状態で、さらにネジ7を締めていくと、係止部17がネジ7の軸方向に沿ってガイドプレート側に移動する。この際、係止部17と接触するチューブ23は、ネジ7の軸方向に同様に移動するか、または、チューブ23自体が変形して、係止部17の移動に追従する。
【0031】
次に、壁部3に壁部貫通部材2を設置した壁部貫通構造1について説明する。図4は、壁部貫通構造1を示す図であり、図4(a)は屋外プレート15側から見た場合の斜視図、図4(b)はガイドプレート25側から見た場合の斜視図である。また、図5は壁部貫通構造1を示す縦断面図である。
【0032】
壁部貫通部材2は壁部3に、屋外プレート15と係止部17とで壁部3を挟みこむことによって固定される。壁部3は例えば屋外と屋内との間を区分けするために設けられる。
【0033】
図4(a)に示すように、壁部貫通構造1は、壁部貫通部材2の配管保持部6によって保持する配管33を挿通する。図4(b)に示すように、配管保持部6が突出する屋外プレート15の面の裏側では、押さえプレート21に貫通する孔27に配管保持部6を挿通した配管33がさらに挿通される。
【0034】
また、図5に示すように、本体19の外周部には止水構造が形成される。止水構造は弾性部材9と水膨脹性不織布11から構成される。本体19の止水構造の内側に位置する部位には、止水構造を保持する保持部材13が設けられる。保持部材13は壁部3に壁部貫通部材2を固定する際に屋外プレート15から圧力を受け、本体19を押さえつける。
【0035】
配管保持部6は、配管33を曲げた際に、配管33の曲げに追従できるよう、軸方向に波付形状であってもよい。また、配管33には保護部材である波付管31が取り付けられてもよい。配管保持部6と配管33は水密性が保たれるよう密着して接続される。波付管31が取り付けられる場合は波付管31と配管保持部6は水密性が保たれるよう密着して接続される。
【0036】
次に、壁部貫通部材2を用いた、壁部3への貫通配管固定方法の手順について説明する。図6は壁部貫通部材2を壁部3に取り付ける工程を示した図であり、図6(a)は壁部3に壁部貫通部材2を取り付ける前の壁部貫通部材2等を示す斜視図、図6(b)は壁部3に壁部貫通部材2を取り付けた後の壁部貫通構造1を示す斜視図である。
【0037】
まず、係止部17を壁部貫通部材2の内方に(係止部17が外方に突出しないように)向けた状態で、壁部3に形成された貫通孔29に壁部貫通部材2を設置する。貫通孔29は屋外プレート15より小さければよく、壁部3によって区切られた一方の壁面ともう一方の側の壁面を貫通する。
【0038】
次に、屋外プレート15側からネジ7を回転させる。係止部17が回転規制部材5に接触するまでネジ7を回転させ、係止部17を壁部貫通部材2の外方に向ける。さらにネジ7を回転させ、係止部17をネジ7の軸方向に沿ってガイドプレート25側に移動させ、係止部17の端部を壁部3に接触させる。すなわち、係止部17と屋外プレート15(本体19)とで壁部を挟み込む。
【0039】
次に、本体19に配管33を挿通する。配管33は配管保持部6に取り付けられ、壁部3の一方の壁面からもう一方の壁面まで挿通させる。配管33には保護部材である波付管31が取り付けられてもよい。
【0040】
このように、本発明の第1の実施の形態にかかる壁部貫通部材2によれば、壁部3に壁部貫通部材2を取り付ける際に、壁部貫通部材2の屋外プレート15側の面からネジ7を締めることによって、屋外プレート15側のネジ7を回した面の裏側に配置される係止部17と屋外プレート15とで壁部3を挟みこむ。つまり、壁部貫通部材2の一方の面からだけネジ7を締めることによって、壁部3に壁部貫通部材2が固定されるので、取り付けが容易である。
【0041】
また、屋外プレート15およびガイドプレート25によって確実に本体19を挟みこむことができる。そのため、配管33と本体19の水密性が保たれる。また、壁部3によって区分けされる両壁面と本体19の水密性が保たれる。したがって、壁部貫通部材2の止水性能が確実に発揮される。
【0042】
また、屋外プレート15とガイドプレート25とで本体19を挟みこむことによって、配管保持部6および配管33を曲げても、本体19を撓み等によって変形させることなく保持することが可能である。
【0043】
また、ガイドプレート25と屋外プレート15とで本体19を挟み込むことにより、ガイドプレート25は壁部貫通部材2の壁部3への取り付け時に係止部17から圧力を受けても回転規制部材5が倒れることを防止可能であるため、確実に壁部貫通部材2を壁部3に取り付けることができる。
【0044】
また、ガイドプレート25と係止部17との間のネジ7の軸にチューブ23が設けられることによって、チューブ23と係止部17との摩擦が生じる。このため、係止部17をネジ7とともに回転させることができる。したがって、チューブ23を設けることによって、ネジ7を回転させた際に係止部17が空回りすることを防止することができる。
【0045】
また、水膨脹性不織布11が水分等を吸収して膨脹する際に、ガイドプレート25が止水構造を屋外プレート15側に押圧し、保持部材13が止水構造を壁部3に対して押圧するため、簡易な構造であっても、より確実に止水できる。また、壁部貫通部材2が保持部材13を具備することによって、本体19が内側に変形することを防止可能であるため、より確実に壁部3に固定することができる。
【0046】
また、ネジ7はOリング4をネジ7の頭部と屋外プレート15とで挟むため、屋外プレート15が建物の屋外等に配置され、水分等が入り込む可能性のある場所に設置されても、壁部貫通部材2の止水性は保たれる。
【0047】
また、押さえプレート21が本体19に固定されることから、配管33を曲げても、本体19が変形することを防止可能であるため、より確実に壁部貫通部材2を壁部3に固定することができる。
【0048】
また、壁部貫通構造1によれば、一方の面からネジ7を回転させることで、屋外プレート15と外周側に張り出した係止部17によって壁部3を挟みこむため、容易に壁部3に壁部貫通部材2を固定し、壁部3に配管33を挿通することができる。また、簡易な構造であるため、設置自由度が高い。
【0049】
また、配管保持部6、配管33および波付管31を密着させることによって、配管保持部と波付管の水密性が保たれる。
【0050】
次に、本発明の第2の実施の形態にかかる壁部貫通部材2aについて説明する。
なお、以下の実施形態において、壁部貫通構造1と同一の機能を奏する構成については、図1〜図6と同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0051】
図7は第2の実施の形態である壁部貫通部材2aを示す斜視図である。壁部貫通部材2aは例えば樹脂製のパイプである。壁部貫通部材2aは例えば空調を屋内に設置する際の貫通配管として用いられる。第1の実施の形態においては、壁部貫通部材2に配管33を挿通させるが、本実施の形態においては、壁部貫通部材2a自体が配管を構成する点が異なる。
【0052】
また、第1のプレートである屋外プレート15aと第2のプレートであるガイドプレート25aに挟まれる本体は、本実施の形態においては屋外プレート15aおよびガイドプレート25aと略垂直である筒状部分を有し、筒状部分を含む本体をパイプ37と称する。
【0053】
屋外プレート15aおよびガイドプレート25aは中央部分に孔を有する。屋外プレート15aおよびガイドプレート25aのそれぞれの孔はパイプ37の断面の孔より大きく、パイプの中空部分を塞ぐことがない。すなわち、壁部貫通部材2a自体が配管を構成する。
【0054】
屋外プレート15a、パイプ37、およびガイドプレート25aは順に、ガイドプレート25aの表面に頭部が位置するネジ35が挿通され、螺合することで固定される。
【0055】
屋外プレート15、ガイドプレート25およびパイプは、それぞれ、例えばステンレスやアルミニウム等の耐食性の金属が使用でき、ある程度の強度を有していれば、樹脂等の使用も可能である。
【0056】
壁部貫通部材2aは壁部3に、屋外プレート15aと係止部17aとで壁部3を挟みこむことによって固定される。
【0057】
ネジ35の頭部と屋外プレート15aとの間にはOリング38が挟みこまれ、ネジ35の軸は屋外プレート15aに挿通される。さらにネジ35の軸はガイドプレート25aに挿通され、螺合されることによって壁部貫通部材2aが固定される。弾性部材9aおよび水膨脹性不織布11aは、屋外プレート15aとガイドプレート25aとの間に挟みこまれて固定される。また、ネジ35の近傍には回転規制部材である背当て部39が配置される。
【0058】
次に、ネジ35と背当て部39の位置及び機能の関係について説明する。図8は貫通孔29に壁部貫通部材2aを取り付ける際の係止部17a付近の拡大斜視図である。ネジ35の軸はガイドプレート25aから突出する。なお、図8ではネジ35の一部は図示を省略している。
【0059】
ネジ35の軸のガイドプレート25aから突出した部位には係止部17aが螺合する。係止部17aは板状部材である。前述したように、ネジ35の軸の近傍には背当て部39が存在する。屋外プレート15a側からネジ35を回転させると、係止部17aは、背当て部39に接触するまではネジ35とともに回転する(図中ではA方向)。
【0060】
係止部17aが背当て部39に接触すると、ネジ35の回転に伴って、係止部17aはネジ35の軸方向(図中ではB方向)に移動する。背当て部39の形状は、図中では壁状であるが、係止部17aが背当て部39に接触してからは、背当て部39によって係止部17aの回転が規制される機能を満たせばよい。
【0061】
ネジ35の軸にはチューブ23aが設けられ、係止部17aとチューブ23aとの摩擦によって、ネジ35と係止部17aがともに回転する。したがって、板状である係止部17aが貫通孔29の外周側に壁部3と略平行に張り出し、壁部3を挟みこむ。
【0062】
次に弾性部材9aと水膨脹性不織布11aとで構成される止水構造について説明する。図9は壁部3に取り付けられた壁部貫通部材2aの一対のネジ35と係止部17a付近の拡大断面図である。屋外プレート15aと壁部3の間には弾性部材9aを挟みこみ、また、パイプ37と壁部3の間には水膨脹性不織布11aを挟みこんで壁部貫通部材2aが固定される。
【0063】
次に、壁部貫通部材2aを用いた、壁部3への貫通配管固定方法の手順ついて説明する。図10は壁部貫通部材2aを壁部3に取り付ける工程を示した図であり、図10(a)は壁部3に壁部貫通部材2aを取り付ける前の状態を示す斜視図、図10(b)は壁部3に壁部貫通部材2aを取り付けた後の状態を示す斜視図、図10(c)は壁部3にフード34を取り付ける前の状態を示す斜視図、図10(d)は壁部3にフード34を取り付けた後の状態を示す斜視図である。
【0064】
まず、係止部17aを壁部貫通部材2aの内方(係止部17が外方に突出しないように)に向けた状態で、壁部3に形成された貫通孔29に壁部貫通部材2aを設置する。貫通孔29は屋外プレート15aより小さければよく、壁部3によって区切られた一方の壁面ともう一方の壁面を貫通する。
【0065】
次に、屋外プレート15a側からネジ35を回転させ、係止部17aを背当て部39に接触するまで回転させ、係止部17aを壁部貫通部材2aの外方に向ける。さらにネジ35を回転させ、係止部17aをネジ35の軸方向に沿ってガイドプレート25側に移動させ、係止部17aの端部を壁部3に接触させる。
【0066】
また、用途に応じて、壁部3に固定された壁部貫通部材2aにフード34等を取り付けてよい。
【0067】
このように、第2の実施の形態にかかる壁部貫通部材2aによれば、壁部3に壁部貫通部材2aを取り付ける際に、壁部貫通部材2aの屋外プレート15a側の面からネジ35を締めることによって、屋外プレート15aのネジ35を回した面の裏側に配置される係止部17aと屋外プレート15aとで壁部3を挟みこむ。つまり、壁部貫通部材2aの一方の面からだけネジ35を締めることによって、壁部3に壁部貫通部材2aが固定されるので、取り付けが容易である。
【0068】
また、屋外プレート15aおよびガイドプレート25aによって確実にパイプ37を挟みこむことができる。そのため、壁部3によって区分けされる両壁面とパイプ37の水密性が保たれる。したがって、壁部貫通部材2aの止水性能が確実に発揮される。
【0069】
また、屋外プレート15aとガイドプレート25aとでパイプ37を挟みこむことによって、パイプ37を変形させることなく保持することが可能である。
【0070】
また、チューブ23aが設けられることによって、チューブ23aと係止部17aとの摩擦が生じるため、係止部17aはネジ35とともに回転することができる。したがって、チューブ23aを設けることによって、ネジ35を回転させた際に係止部17aが空回りすることを防止することができる。
【0071】
また、水膨脹性不織布11aが水分等を吸収して膨脹する際に、ガイドプレート25aが止水構造を屋外プレート15a側に押圧することによって、簡易な構造であっても、より確実に止水機能を保つことができる。
【0072】
また、ネジ35は、Oリング38をネジ35の頭部と屋外プレート15aとで挟むため、屋外プレート15aが建物の屋外等に配置され、水分等が入り込む可能性のある場所に設置されても、壁部貫通部材2aの止水性は保たれる。
【0073】
また、壁部貫通部材2aを取り付けた壁部貫通構造によれば、屋外プレート15aと外周側に張り出した係止部17aによって壁部3を挟みこむ。つまり、壁部貫通部材2aの一方の面からだけネジ35を締めることによって、壁部3に壁部貫通部材2aが固定されるので、取り付けが容易である。また、簡易な構造であるため、壁部3に対しての設置自由度が高い。
【0074】
以上添付図を参照しながら、本発明の実施の形態を説明したが、本発明の技術的範囲は、前述した実施の形態に左右されない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【0075】
例えば、各実施形態は互いに組み合わせることができることはもちろんのこと、各構成の形状や設置範囲、設置個数等は、適宜設定することができる。
【符号の説明】
【0076】
1………壁部貫通構造
2、2a………壁部貫通部材
3………壁部
4……Oリング
5………回転規制部材
6………配管保持部
7………ネジ
9、9a………弾性部材
11、11a………水膨脹性不織布
13………保持部材
15………屋外プレート
16………孔
17、17a………係止部
19………本体
21………押さえプレート
23、23a………チューブ
25、25a………ガイドプレート
27………孔
29………貫通孔
31………波付管
33………配管
34………フード
35………ネジ
37………パイプ
38………Oリング
39………背当て部


【特許請求の範囲】
【請求項1】
壁部貫通部材であって、
樹脂製のパイプと、
前記パイプの中空部分を塞がないように、前記パイプに対して略垂直に設けられる第1のプレートおよび第2のプレートと、
前記第1のプレートおよび前記第2のプレートを貫通するネジと、
前記ネジの前記第2のプレート側から突出する部位と螺合する係止部と、
前記パイプの外周の前記ネジの軸の近傍に形成され、前記係止部の回転を規制する背当て部と、
を具備し、
前記第1のプレート側から前記ネジを回転させると、前記係止部は、前記背当て部に接触するまでは前記ネジとともに回転可能であり、前記係止部が前記背当て部に接触すると、前記ネジの回転に伴い、前記係止部が前記ネジの軸方向に移動可能であることを特徴とする壁部貫通部材。
【請求項2】
前記係止部を内方に向けた状態から前記ネジを回転させると、前記係止部が外方を向いた状態で、前記係止部を前記背当て部に接触させることが可能であり、壁部に設けられた貫通孔に前記壁部貫通部材を設置した際に、前記第1のプレートと、外方に向いた前記係止部とで、前記壁部を挟みこむことが可能であることを特徴とする請求項1記載の壁部貫通部材。
【請求項3】
前記第2のプレートと前記係止部との間の前記ネジの軸にはチューブが設けられることを特徴とする請求項1または請求項2いずれかに記載の壁部貫通部材。
【請求項4】
前記パイプの外周部には止水構造が形成され、前記止水構造は弾性部材と水膨脹性不織布から構成され、前記パイプの前記止水構造の内側に位置する部位には、前記止水構造を保持する保持部材が設けられることを特徴とする請求項1から請求項3いずれかに記載の壁部貫通部材。
【請求項5】
請求項1から請求項4いずれかに記載の壁部貫通部材を用い、壁部に形成された貫通孔に前記壁部貫通部材が設置され、前記第1のプレートは前記壁部の貫通孔より大きく、前記係止部が前記貫通孔の外周側に張り出し、前記第1のプレートと前記係止部によって前記壁部を挟み込むことで前記壁部貫通部材が前記壁部に固定され、前記パイプ自体が配管を構成することを特徴とする壁部貫通構造。
【請求項6】
請求項1から請求項4いずれかに記載の壁部貫通部材を用いた、壁部への貫通配管固定方法であって、
前記係止部を壁部貫通部材の内方に向けた状態で、壁部に形成された貫通孔に前記壁部貫通部材を設置する工程aと、
前記第1のプレート側から前記ネジを回転させ、前記係止部を前記背当て部に接触するまで回転させ、前記係止部を壁部貫通部材の外方に向ける工程bと、
さらに前記ネジを回転させ、前記係止部を前記ネジの軸方向に沿って前記第2のプレート側に移動させ、前記係止部の端部を壁部に接触させる工程cと、
を具備することを特徴とする壁部への貫通配管固定方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2013−57406(P2013−57406A)
【公開日】平成25年3月28日(2013.3.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−272264(P2012−272264)
【出願日】平成24年12月13日(2012.12.13)
【分割の表示】特願2010−282813(P2010−282813)の分割
【原出願日】平成22年12月20日(2010.12.20)
【出願人】(000005290)古河電気工業株式会社 (4,457)
【出願人】(000198787)積水ハウス株式会社 (748)
【Fターム(参考)】