説明

声門下狭窄患者用会話可能な気管切開チューブ

【課題】 特に声門下狭窄を来した患者に使用する会話が可能な気管切開チューブの提供。
【構成】気管切開孔から挿入される管状物で、開口部の一端は切開孔の体外部に、もう一端の開口部は気管内に位置し、体外部の開口部には患者吸気は通過可能で、患者呼気は遮断する一方弁を備え、該一方弁で遮断された患者呼気の一部を大気に放出することを特徴とする気管切開部位に使用される気管切開チューブである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、声門下狭窄を来した患者が使用する会話可能な気管切開用のチューブに関する。
【背景技術】
【0002】
鼻、口を経由した呼吸が困難となった場合、気管切開を行いその気管切開孔にチューブを挿入し、該チューブを通じて呼吸を行えるように処置が行われる場合があり、該チューブとして具体的に気管切開用カニューレやレティナがある。
例えば特許文献1には患者の気管内に挿入される気管切開チューブと協働するようにされた気管切開バルブであって、前記バルブ装置は、前記患者が息を吸い込むとき、バルブ装置インレットから前記バルプ装置を介して、かつそれから前記チューブを介して前記患者の気管に至る気流を可能にするための導通手段と、前記患者が息を吐き出すとき常に、かつ前記患者が息を吸い込むとき以外のとき、前記チューブから前記導通手段を介して、かつ前記バルブ装置インレットを介して前記大気に至る気流を完全に阻止するための阻止手段とを有する、気管切開バルブ装置が開示されている。また、特許文献2には気管切開チューブの湾曲部外壁の壁面に、声帯に空気を送るための長孔を設けることが示されている。特許文献3には管壁に管内外を連通する連通孔が形成された湾曲外管と、この湾曲外管内に挿脱自在に設けられた湾曲内管と、前記湾曲外管内の前記連通孔より一端側外周に両端を密嵌合させた伸縮自在なカフと、前記湾曲外管側外周に取り付けられた板状プロテクタと、前記湾曲外管の他端と前記湾曲外管内に挿入された湾曲内管の他端との間に解除可能に設けられた湾曲内管ロック機構と、前記カフ内にチューブを介して連通されたカフ膨張手段と、前記湾曲外管の連通孔側カフ近傍に開口するチューブに連通された分泌物吸引手段とからなることを特徴とする気管切開チューブが開示されている。更に特許文献4には管壁に連通孔を有する湾曲外管の一端外周部に第1の連結壁部が設けられたアウターカニューレと、該アウターカニューレ内に挿入自在な湾曲内管の一端外周部に前記第1の連結壁部と連結可能な第2の連結壁部とが設けられ、かつ、該第2の連結壁部に第3の連結壁部が連接されたインナーカニューレと、前記第3の連結壁部に連結可能な第4の連結壁部及び逆止弁を有するスピーチバルブとを備えてなるカニューレにおいて、前記スピーチバルブの第4の連結壁部が、前記アウターカニューレの第1の連結壁部と連結可能に構成されていることを特徴とするカニューレが開示されている。
これら特許文献3及び4は何れもアウターチューブ、インナーチューブからなる二重管構造で、かつスピーチバルブを持ったカニューレが示されている。
【0003】
この気管切開を行った患者は、気管切開チューブの体外側端部に挿入してある逆止弁を通して、吸気の場合空気の通過を許容し、呼気の場合は逆止弁によって空気の通過を遮断し、患者の声帯、鼻、口を通して行われ、患者の発声が可能となるのである。しかしながら、声門下狭窄を来した患者は、呼気が十分に行えず、次第に息苦しくなってくる。しかし上記の発声することを目的とした気管切開チューブでは、患者が会話をする場合には、患者呼気が気管切開チューブを通して外部に抜けるのを遮断し、その空気を気管切開チューブの途中から声帯に送ることで会話が可能となる。しかし声帯から気管切開チューブまでの気道が狭窄している患者では十分量の空気を声帯に送ることが困難であるために、呼吸が困難になると言う問題があり、そのために会話用の気管切開チューブを使用することができない場合があった。特に先天的な声門下狭窄の新生児、乳児、幼児では、気管切開チューブ等により呼吸は確保できるが、更に早い時期から発声させることが成人になってからの会話能力の取得にとって重要であると言われている。
【特許文献1】実開昭63−96848号公報
【特許文献2】実開昭63−124947号公報
【特許文献3】実開平3−27255号公報
【特許文献4】特開2000−33121号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
そこで本発明は、声帯に十分量の空気を送ることが困難な患者、具体的には声門下狭窄の患者であっても、容易に会話ができ楽に呼吸が可能な気管切開チューブの開発を目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の目的は、気管切開孔から挿入される管状物で、開口部の一端は切開孔の体外部に、もう一端の開口部は気管内に位置し、体外部の開口部には患者吸気は通過可能で、患者呼気は遮断する一方弁を備え、該一方弁で遮断された患者呼気の一部を大気に放出することを特徴とする気管切開部位に使用される気管切開チューブを提供することによって達成できた。
【発明の効果】
【0006】
本発明においては、呼気の大部分は声帯に流れるので発声は可能であると共にその一部は外部に漏洩することが出来るので、声門下狭窄の患者に取って息苦しさを解除することが出来る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明の気管切開チューブは通常の気管切開チューブのように、気管切開孔より気管内に挿入され用いられる。本発明の気管切開チューブは会話を行う場合には患者の呼気を声帯に導き、声帯を振動させることで会話が可能となるが、声帯への呼気量が狭窄のために不十分となるため呼気の一部を気管切開チューブを通じ外部へ逃がすことによって、楽に呼吸ができるようになり、かつ会話も可能となった。具体的には患者吸気を通過させ、呼気を遮断する一方弁について完全な遮断状態にならないようにし、更にその程度を調節することで狭窄の程度の異なる患者に広く適応が可能となる。
【0008】
一方弁を完全な遮断状態にしない手段としては、弁が完全に閉じないようにしたり、或いは、弁が閉じても空気の通過が可能なように弁に小孔を開けたり、或いはこれらの手段を併用する等種々の方法を取ることが可能である。弁が完全に閉じないようにする具体的な手段としては、弁の閉鎖部位に高さの調節可能な突起を設けることが可能である。更に具体的には弁のハウジングとなる構造体のうち、弁によって閉鎖される箇所に対して突起が出るようにする。この突起はハウジング構造体に設けても、弁自体に設けて良い。またこの突起の高さを調節することで弁を通過する空気量を調節することができるが、そのためにハウジング構造物に設けた突起はネジ等の可動構造にすることで高さを調節できる。また弁に突起を設けた場合には、色々な高さの突起を持った弁を準備することで、いかなる状態の狭窄にも対応が可能となる。
【0009】
弁が閉じても空気の通過が可能なように弁に小孔を開ける方法については特に制限はないが、具体的には弁の穴の開けられる部位に直径約5mm以下の小孔を開けることで、目的を達成できる。またいくつかのサイズの小孔を持った弁を準備することで、いかなる状態の狭窄にも対応が可能となる。
本発明の気管切開チューブとしては気管切開用カニューレやレティナなどが含まれる。更に気管切開用カニューレには気管挿入部位にカフを設けてもよい。
本開発品を患者が使用するにあたっては、呼吸能検査を元に、適切な突起高さ、小孔サイズ等を選択し使用することとなる。
【実施例】
【0010】
本発明に係る実施例として図面を以て示す。
図1は本発明に係る声門下狭窄患者用の会話可能なカニューレの組み立て斜視図である。図1においてカニューレ本体は両端部が開口部13,14を有する曲状管状物11であって、その開口部13は患者の切開孔の体外部に、他の開口部14は気管内にそれぞれ位置するように構成され、気管側の側壁に通気孔12を有する。開口部13は環状壁部8を有し、その下側に固定板9が凸設している。固定板9の端にはチューブを患者の首に固定するための固定用孔10が設けられて居てこの固定用孔10に紐を通して患者の首に結びつける。環状壁部内にはスピーチバルブ1が挿入されている。
スピーチバルブ1は一方弁3がスピーチバルブハウジング内に保持されている。スピーチバルブハウジングは、中央に隔壁7によって区切られている空気口のある環状体5とこれに冠着する通気口を有する環状枠体2によって構成され、環状体5の内側には突起状弁座6が設けられており、この弁座6の上に中央に小孔4を設けてある弁3が載置されている。環状枠体2及び環状体5の裏面を図2及び図3に示す。図2に示すように、環状枠体2の裏面(環状体5に対向する面)に突起6'を設け、この突起6'の高さによって間隙を調製することができる。また、ハウジング内の弁3は種々変更でき、弁に設けてある小孔4の大きさは、0.5mm〜5mm程度で、声門下狭窄の患者の程度によって適したものが選択される。
【0011】
このような気管切開チューブを使用するに際しては、開口部13が患者の気管切開孔の体外に開口部14が気管内に位置し、固定板に設けてある固定用孔に紐を通して患者の首に固定する。しかして、患者の吸気は弁3を通して気管内に導入され、呼気は弁によって閉ざされ声帯に導かれて発声を可能とする。その際声門下狭窄を来した患者にとっては呼気の全てが声帯に送ることが出来ず、次第に気管内に溜まり息苦しい状態となるが、本発明の気管切開チューブにおいては弁に小孔が設けてあるため、呼気の一部が外部に漏れるため息苦しい状態を防ぐことが出来る。
図4はレティナの組み立て斜視図である。図4において、短管15の一方の開口部13が体外に、他の開口部側が気管内壁に位置し、開口部13には環状壁部8が設けられており、この内部にスピーチバルブ1が挿入されている。スピーチバルブ1の構造は上述のカニューレの場合と同じである。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明にかかる気管切開チューブの斜視図
【図2】スピーチバルブの環状枠体の裏面の斜視図
【図3】スピーチバルブの環状体の裏面の斜視図
【図4】レティナの組み立て斜視図
【符号の説明】
【0013】
1 スピーチバルブ 2 環状枠体 3 弁 4 小孔
5 空気孔を有する環状体 6 突起状弁座 6' 突起
7 隔壁 8 環状壁部 9 固定板 10 固定用孔
11 曲状管状物 12 通気孔 13,14 開口部
15 短管

【特許請求の範囲】
【請求項1】
気管切開孔から挿入される管状物で、開口部の一端は切開孔の体外部に、もう一端の開口部は気管内に位置し、体外部の開口部には患者吸気は通過可能で、患者呼気は遮断する一方弁を備え、該一方弁で遮断された患者呼気の一部を大気に放出することを特徴とする気管切開部位に使用される気管切開チューブ。
【請求項2】
前記管状物が曲状管状物であって、気管内に挿入される部分に声帯側への通気孔を有する請求項1記載の気管切開チューブ。
【請求項3】
患者呼気の一部を体外に放出する手段として一方弁に小孔を設けたことを特徴とする請求項1または2記載の気管切開チューブ。
【請求項4】
一方弁を含む部分が取り外し可能であることを特徴とする請求項1〜3の何れかの項に記載の気管切開チューブ。
【請求項5】
気管内に位置する開口部とチューブの声帯側孔の間に気体あるいは液体の充填が可能なカフを持つことを特徴とする特許請求項1〜4の何れかの項に記載の気管切開チューブ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−50020(P2007−50020A)
【公開日】平成19年3月1日(2007.3.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−235213(P2005−235213)
【出願日】平成17年8月15日(2005.8.15)
【出願人】(591071104)株式会社高研 (38)