変化した植物構造を示すグルタミン酸デカルボキシラーゼ(GAD)トランスジェニック植物
本発明は、変化した植物構造、炭素と窒素の分配、増加したバイオマス、および/または向上した収穫可能な収量を特徴とするトランスジェニック植物を産生するために使用することができる単離された核酸分子を植物に導入することによって変化した構造を有する植物を作製するための方法、ならびにそのように作製された植物およびこれらの植物の部分に関する。特に、本発明は、変化した表現型を示す植物を産生するように植物を改変するための方法に関する。GADポリペプチドをコードする単離された核酸配列、そのような核酸分子を発現することができるベクター、そのようなベクターを含む宿主細胞、およびそのような核酸によってコードされるポリペプチドも提供される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は一般に、変化した構造を有する植物を作製する方法ならびにそのように作製された植物およびこれらの植物の部分に関する。特に、本発明は、変化した表現型を示す植物を産生するために植物を改変する方法に関する。植物ならびに植物の部分、例えば、花部分および種子を含む生殖部分もまた、本発明の一部を形成する。植物の表現型を改変することができることは、より大いに望ましい特徴を有する植物を産生するために有用であり得る。
【背景技術】
【0002】
植物構造の操作は、おそらく植物の栄養所要量の発見に次ぐ、植物改良の最大の柱の1つである。「遺伝子革命」の到来により、植物構造の選択的改変の新たな機会が数え切れないほど多く存在する。
【0003】
植物は、例えば、生体力学、水力学構造、もしくは微気象学への、または生物成長のシミュレーションへの適用の要件によって多様な方法で記載することができる複合構造体である。植物は、いろいろな規模で構成された、特定の形態学的特徴を有する構成要素の集合体とみなすことができるという一般的合意がある(White,1979;Barthelemy,1991)。植物構造は、植物構成要素の空間構成に適用される用語であり、この空間構成は時間とともに変化することがある。所与の時点で、植物構造は、位相情報および幾何学的情報により規定することができる。位相は、植物構成要素間の物理的関連を扱うが、幾何学は、これらの構成要素の形状、大きさ、配向、および空間的位置を含む。
【0004】
植物構造は植物体の三次元構成と規定される。地上の部分について、これは、葉ならびに他の光合成器官および花器官の茎での空間的配置と、分岐パターンとを含む。植物構造は今日でも植物種を同定する最良の手段であり、長い間、系統的分類および分類学的分類の唯一の基準であった(Reinhardt and Kuhlemeier,2002)。葉は太陽エネルギーを集積し、また、ガス交換のための表面となるので、植物キャノピーにおけるその配置は、遮光と光合成にとって極めて重要である。植物による遮光は植物構造に依存している。したがって、自然システムと農業システムの両方において、植物の適合性と収量は植物構造によって影響を受ける。キャノピー遮光を最大化する植物は様々な適応形質を進化させており、植物構造は主な適応形質の1つである。遮光を最大化するために、改変された植物構造は、葉の大きさと形状と角度、草高、枝、およびひこばえの改変を含む。いくつかの植物は、遮光を一時的に最大化するために、そのキャノピー構造を改変することができる。
【0005】
植物構造は遺伝的に制御された形質であり、それゆえ遺伝性であるが、それでもなお、非生物要因と生物要因の両方の環境要因によって、キャノピー構造が改変されることがある。キャノピー構造に影響を及ぼす非生物要因としては、土壌の水分含量、養分利用性、温度、および光が挙げられる。一方、生物要因としては、草食動物、病原菌、および他の植物との競合が挙げられる。
【0006】
植物構造は主として農学的に重要であり、植物の栽培への適合性や収量に強く影響を及ぼす。農業では、収量を向上させる植物構造は、作物の可能性を高めることができる。より良好に遮光することができる改変されたキャノピー構造を持つ矮性品種が様々な作物で開発されてきた(Coyne,1980)。生産性の大きな増加をもたらしたグリーン革命の最大の成功の1つは、植物構造の改変に基づくものであったが、この場合には、短くて頑丈な茎を持つ矮性小麦品種を選択することで、植物が風雨による被害に耐えることができ、結果としてより高い収量がもたらされた(Peng et al.,1999)。
【0007】
植物構造に影響を及ぼすことができる非生物要因としては、土壌水分、温度、および光などの植物成長のための資源が挙げられ、これらの資源の十分な供給の下で、植物は、適応度が最大のその遺伝的潜在能力に近い成長速度を達成し、典型的な構造を発現させる。しかしながら、これらの資源の供給が乏しい中では、植物は、生理的変化や成長変化を経て、その適応度を高めるために構造の改変を引き起こす。
【0008】
従来技術
植物構造に関する遺伝子
植物は、規則的なパターンで配置された新しい葉を絶えず形成し、これは葉序と呼ばれる。オーキシン輸送タンパク質PIN1の突然変異か、またはオーキシン輸送の化学的阻害剤のいずれかによるオーキシン輸送の阻害によって、シュート頂分裂組織(SAM)での器官形成が特異的に無効化されるのに対し、茎の成長と分裂組織の永久化は影響を受けず、マツのような柄を形成する(Okada et al.,1991;Reinhardt et al.,2000)。P糖タンパク質PGPは形質膜アニオン輸送体であり、アラビドプシスのPGPは、細胞の伸張、植物の形状、根の分岐、および果実の発達を制御するホルモンのオーキシンを輸送する。これまでに調べられたpgp突然変異体は、オーキシン輸送が低下しており、様々な程度の屈性応答を示す矮性体である(Murphy et al.,2000;Noh et al.,2001)。
【0009】
ピロリン酸駆動性プロトンポンプであるAVP1は、根の成長と発達に必要なオーキシン勾配の樹立と維持に重要である。AVP1を過剰発現する植物(AVP1OX)では、シュートと根の質量や表面積がより大きい。AVP1は植物界全体で高度に保存されており、過剰発現の同様の効果はアラビドプシス、トマト、およびイネで観察されている(Gaxiola et al.,2001; Drozdowicz et al.,200)。
【0010】
TWDは、推定形質膜GPIアンカーを有するイムノフィリン様タンパク質である。TWDは、PGPをはじめとする、植物内の多くのタンパク質と相互作用する。pgp1 pgp19二重突然変異体はtwd突然変異体に似ており、TWDがPGPと他のタンパク質の相互作用を媒介することを示している。twd突然変異体は矮小体であり、ねじれた器官(特に、茎、葉、および花)を有するより短い植物を生じさせる超突然変異が全ての解剖学的特徴として見られ、結果として、見た目が楽しく珍しい植物が生じる(Kamphausen et al.,2002; Geisler et al.,2003)。
【0011】
最近の証拠から、トレハロース−6−リン酸シンターゼ(TPS)遺伝子が植物発達や花序構造の重要な調節物質であることが示唆された。一例では、トレハロースはトウモロコシの花序の分岐を調節するように見える(Satoh−Nagasawa et al.,2006)。トウモロコシの花序の分岐は、RAMOSA遺伝子により制御されており、これらの遺伝子のうちの1つ(RAMOSA3)は、転写因子RAMOSA1の調節を通じて機能するトレハロース生合成遺伝子をコードしている(Satoh−Nagasawa et al.,2006)。Charyら(2008)は、クラスII型のTPS遺伝子が、植物発生に関わる表現型全体の広範な修飾因子として機能する他に、細胞形態の制御において機能することを示す証拠を提供した。彼らは、葉の表皮で劇的な細胞効果を有し、被蓋細胞裂片の喪失を生じさせる細胞形状表現型−1(csp−1)突然変異体を同定した。さらに、csp−1は毛状突起の細胞形態に影響を及ぼし、分岐パターンを変化させることが示された。この突然変異体は、丈の低下、茎の分岐の変化、および葉の鋸歯の際立ちを含む様々な発生障害を示す。
【0012】
GABAシャント
γ−アミノ酪酸(GABA)は、細菌から植物および脊椎動物まで保存されている4炭素非タンパク質アミノ酸である。GABAは遊離アミノ酸プールの重要な成分である。GABAは、α−炭素上ではなくg−炭素上にアミノ基を有し、非結合形態で存在する。GABAは水によく溶け、構造的には、プロリンに似た環状構造を含む、いくつかの立体構造を溶液中でとることができる柔軟な分子である。GABAは、生理的pH値(pK値4.03および10.56)で双性イオンとなる(正負両方の電荷を持つ)。
【0013】
GABAは半世紀余り前に植物で発見されたが、GABAが脳で高レベルに生じ、神経伝達において大きな役割を果たすことが明らかになったとき、GABAへの関心は動物に移った。それ以来、脊椎動物のGABAに関する研究は、特に神経伝達における、シグナル伝達分子としてのその役割に主に焦点が当てられた。植物および動物において、GABAは、GABAシャントと呼ばれる、3つの酵素から構成される短い経路を介して主に代謝されるが、それは、この経路がトリカルボン酸(TCA)回路の2つの段階を迂回するからである。この経路は、細胞質酵素のグルタミン酸デカルボキシラーゼ(GAD)ならびにミトコンドリア酵素のGABAトランスアミナーゼ(GABA−T)およびコハク酸セミアルデヒドデヒドロゲナーゼ(SSADH)から構成されている。この保存された代謝経路の調節は、植物の独自の特徴を有しているように思われる。
【0014】
GABAを介してグルタミン酸をコハク酸に変換する経路はGABAシャントと呼ばれる。このシャントの第1の段階は、グルタミン酸デカルボキシラーゼ(GAD、EC 4.1.1.15)による直接的かつ不可逆的なグルタミン酸のα−脱カルボキシル化である。インビトロでのGAD活性は、多くの植物種および植物組織からの粗抽出物で特徴解析されている(Brown & Shelp,1989)。GADは、L−グルタミン酸に特異的であり、ピリドキサル5’−リン酸依存的であり、スルフヒドリル基と反応することが知られている試薬によって阻害され、カルモジュリン結合ドメインを有し、約5.8のはっきりとした酸性至適pHを示す。ペチュニア(Baum et al.,1993)、トマト(Gallego et al.,1995)、タバコ(Yu & Oh,1998)、およびアラビドプシス(Zik et al.,1998)由来のGAD遺伝子が同定されている。GABAシャントに関与する第2の酵素であるGABAトランスアミナーゼ(GABA−T;EC 2.6.1.19)は、ピルビン酸またはα−ケトグルタル酸のいずれかをアミノ酸受容体として用いて、GABAのコハク酸セミアルデヒドへの可逆的変換を触媒する。粗抽出物では、インビトロでのGABA−T活性は、α−ケトグルタル酸よりもピルビン酸を好むように見える。しかしながら、別個のピルビン酸依存的活性とα−ケトグルタル酸依存的活性とがタバコ葉の粗抽出物中に存在しており、これらはイオン交換クロマトグラフィーで互いに分離することができる(Van Cauwenberghe & Shelp)。両活性とも、8〜10の幅広い至適pHを示す。約1000倍に精製された、タバコ由来のピルビン酸特異的ミトコンドリアGABA−Tのミカエリス定数(Km)は、GABAについては1.2mM、ピルビン酸については0.24mMである(Van Cauwenberghe & Shelp)。
【0015】
GABAシャントの最後の段階は、コハク酸セミアルデヒドをコハク酸に不可逆的に酸化する、コハク酸セミアルデヒドデヒドロゲナーゼ(SSADH;EC 1.2.1.16)によって触媒される。部分精製された植物酵素は、約9のアルカリ性至適pHを有し、活性は、NADを用いる方がNADPを用いるよりも最大20倍大きい(Shelp et al.,1995)。
【0016】
実際のところ、植物のGABAシャントへの関心は、主に、GABAが生物ストレスと非生物ストレスに応答して大量にかつ速やかに産生されるという実験的観察から起こった。それ以来、GABAシャントは、細胞質pHの調節、TCA回路への炭素移動、窒素代謝、虫の抑止、酸化ストレスからの保護、浸透圧調節、およびシグナル伝達をはじめとする様々な生理的応答と関連付けられている。
【0017】
今回初めて、グルタミン酸デカルボキシラーゼ遺伝子を用いて植物の形態構造を変化させる方法が示されている。P−糖タンパク質、オーキシン輸送体、植物ホルモン、およびプロトンポンプのような遺伝子を用いて、この方向で様々な試みが行なわれている。GABAシャント経路に関与する遺伝子、特にグルタミン酸デカルボキシラーゼを用いて植物の構造を変化させる試みは今日まで行なわれていない。過去の試みは、イネ由来の2つのグルタミン酸デカルボキシラーゼ遺伝子であるOsGAD1とOsGAD2に対して行なわれたものであり、これらの遺伝子がアグロバクテリウムを介してイネカルスに同時に導入されて、トランスジェニック細胞株が樹立された。再生したイネ植物は、矮小発育、黄化葉、および不稔などの異常な表現型を有していた(Akama & Takaiwa,2007)。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明は、グルタミン酸デカルボキシラーゼ遺伝子のアグロバクテリウム媒介性形質転換によって(単子葉植物と双子葉植物の両方の)植物構造を変化させる方法に関する。さらに、本発明は、植物を改変して植物構造に関する遺伝子を発現させる方法、およびこの方法を用いて産生された植物に関する。
【0019】
トランスジェニック植物におけるGAD遺伝子ファミリーの操作によって植物の構造を変化させるための組成物および方法を提供する。
【0020】
本発明はGAD遺伝子のヌクレオチド配列を提供する。本発明のヌクレオチド配列およびポリペプチドには、GAD遺伝子、タンパク質、およびそれらの機能断片または変異体が含まれる。
【0021】
本発明の方法は、植物にヌクレオチド配列を導入し、対応するポリペプチドを植物内で発現させることを含む。本発明の配列は、植物における植物構造、炭素と窒素の分配、バイオマスの増加、および/または収穫可能な収量の向上を変化させるために使用することができる。本発明の方法は、植物のバイオマスや収穫可能な収量を向上させるために使用される。
【0022】
さらに、形質転換植物、植物組織、植物細胞、種子、および葉を提供する。このような形質転換植物、組織、細胞、種子、および葉は、それらのゲノムに安定に組み込まれた、少なくとも1コピーの本発明のヌクレオチド配列を含む。
【0023】
本発明の一実施形態は、植物の特徴を得る方法であって、
a.その発現が、単独でまたはさらなるポリヌクレオチドと組み合わせて、植物内での窒素利用効率のエフェクターとして機能するヌクレオチド配列を含む組換え発現カセットを植物細胞に導入すること;
b.この植物細胞を植物形成条件下で培養して植物を産生すること;および
c.このヌクレオチド配列の発現を誘導して植物の構造を変化させること
を含む方法である。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】グルタミン酸デカルボキシラーゼをコードするDNA配列を有する植物形質転換ベクターを示す。
【図2】アグロバクテリウム媒介性遺伝子導入を介したGAD遺伝子によるタバコ葉の形質転換の様々な段階を示す。
【図3】様々なプライマー組合せ、すなわち、a)HygR遺伝子フォワードおよびリバースプライマー;b)遺伝子特異的フォワードおよびリバースプライマー、ならびにc)遺伝子フォワードおよびNOSリバースプライマーを用いて、GAD遺伝子で形質転換され、再生されたタバコのT0苗のPCRによる確認を示す。
【図4】GAD遺伝子特異的なフォワードプライマーとリバースプライマーを用いて、cDNAを鋳型とするRT−PCRを用いて解析された、GAD遺伝子を有するタバコのT0苗における導入遺伝子(GAD)発現の確認を示す。
【図5】温室で成長させた野生型植物およびGAD遺伝子以外の遺伝子を有するトランスジェニック植物とT0 GADトランスジェニックタバコの葉の大きさの比較を示す。
【図6】温室の植木鉢で成長させたときのハイグロマイシン陽性のGADトランスジェニック体(D1A、E2、およびH1)由来のT1苗と野生型苗の草高の比較を示す。
【図7】温室の植木鉢で成長させたときのハイグロマイシン陽性のGADトランスジェニック体(D1A、E2、およびH1)由来のT1苗と野生型苗の節間距離の比較を示す。
【図8】温室の植木鉢で成長させたときのハイグロマイシン陽性のGADトランスジェニック体(D1A、E2、およびH1)由来のT1苗と野生型苗の葉の数の比較を示す。
【図9】温室の植木鉢で成長させたときのハイグロマイシン陽性のGADトランスジェニック体(D1A、E2、およびH1)由来のT1苗と野生型苗の茎の周囲長または太さの比較を示す。
【図10】温室の植木鉢で成長させたときのハイグロマイシン陽性のGADトランスジェニック体(D1A、E2、およびH1)由来のT1苗と野生型苗のa)葉の長さ;b)葉の幅広さ、およびc)葉面積といった葉の特徴の比較を示す。
【図11】温室の植木鉢で成長させたときのハイグロマイシン陽性のGADトランスジェニック体(D1A、E2、およびH1)由来のT1苗と野生型苗の総バイオマスの比較を示す。
【図12】温室の植木鉢で成長させたときのハイグロマイシン陽性のGADトランスジェニック体(D1A、E2、およびH1)由来のT1苗と野生型苗の総穀粒収量の比較を示す。
【図13】温室の植木鉢で成長させたときのハイグロマイシン陽性のGADトランスジェニック体(D1A、E2、およびH1)由来のT1苗と野生型苗の種子の実り具合(種子100個の重量)の比較を示す。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下の本発明の詳細な説明は、当業者が本発明を実施するのに役立つように提供されている。それでも、本明細書で論じられる実施形態の変更および改変が、本発明の精神または範囲から逸脱することなく当業者によってなされ得るので、以下の本発明の詳細な説明は、本発明を過度に限定するものとみなされるべきではない。
【0026】
本発明は、グルタミン酸デカルボキシラーゼの特徴を有する精製および単離されたDNA配列に関する。
【0027】
本発明によれば、この精製および単離されたDNA配列は、通常、グルタミン酸デカルボキシラーゼのヌクレオチド配列またはその断片からなる。
【0028】
任意の手段で産生することができる、上記の配列または断片の相補配列も同様に、本発明に含まれる。
【0029】
上記の配列の変異体、すなわち、1つ以上のヌクレオチドが同じ特徴を有する別のヌクレオチドにより置換される保存的ヌクレオチド置換によって参照配列と異なっているヌクレオチド配列が本発明に包含される。
【0030】
本発明によれば、上記のヌクレオチド配列は、発現ベクター内でプロモーターと目的の遺伝子とを含む配列の5’末端と3’末端の両方に位置することができる。
【0031】
本発明に含まれるのは、本発明の産生される植物の構造を変化させるときの上記の配列の使用である。「植物構造」とは、好適な条件下で宿主植物にDNA配列を導入した後、この配列が、対照植物(ここで、この植物は、該DNA配列でトランスフェクトされていない)と比較して、植物の葉の大きさ、節間距離、茎の太さ、バイオマス、および収穫可能な収量を増大させることができることを意味する。
【0032】
以下の定義は本発明の理解を助けるために用いられる。
【0033】
「染色体」とは、細胞の内部に見られるDNAとタンパク質の組織化された構造体のことである。
【0034】
「クロマチン」とは、真核細胞の核の内部に見られるDNAとタンパク質の複合体のことであり、これによって染色体が構成されている。
【0035】
「DNA」またはデオキシリボ核酸は遺伝情報を含む。これは、様々なヌクレオチドで構成されている。
【0036】
「遺伝子」とは、所与の成熟タンパク質をコードするデオキシリボヌクレオチド(DNA)配列のことである。「遺伝子」は、RNA転写開始シグナル、ポリアデニル化付加部位、プロモーター、またはエンハンサーなどの、非翻訳隣接領域を含まないものとする。
【0037】
「プロモーター」とは、遺伝子の発現を制御する核酸配列のことである。
【0038】
「エンハンサー」とは、遺伝子の位置または方向とは無関係に遺伝子の転写を開始するように働く遺伝子の配列を指す。
【0039】
本明細書における「ベクター」の定義は、その中に外来DNA断片を挿入し得るDNA分子を指す。ベクターは、通常、プラスミドから得られるが、これは、DNA断片を宿主細胞内に運ぶ「分子キャリア」のように機能する。
【0040】
「プラスミド」とは、細菌やいくつかの他の生物に見られる小さいDNA環のことである。プラスミドは、宿主細胞染色体とは独立に複製することができる。
【0041】
「転写」とは、DNA鋳型からのRNAの合成を指す。
【0042】
「翻訳」とは、メッセンジャーRNAからのポリペプチドの合成を意味する。
【0043】
「方向」とは、DNA配列中のヌクレオチドの順序を指す。
【0044】
「遺伝子増幅」とは、他の遺伝子のコピー数を比例的に増加させることなく、特定の遺伝子を繰り返し複製することを指す。
【0045】
「形質転換」とは、任意の導入手段によって外来遺伝物質(DNA)を植物細胞に導入することを意味する。様々な形質転換方法には、遺伝子銃(バイオリスティック)による衝撃、エレクトロポレーション、アグロバクテリウム媒介性形質転換などが含まれる。
【0046】
「形質転換植物」とは、外来DNAが該植物に導入されている植物を指す。このDNAは宿主染色体の一部となる。
【0047】
「安定な遺伝子発現」とは、目的の遺伝子を永久に発現する安定な形質転換植物の調製が、プラスミドの宿主染色体への安定な組込みに依存することを意味する。
【0048】
本発明は、広く上で定義された通りのものであるが、本発明はそれらのものに限定されるものではないこと、および本発明は以下の説明によって例が示される実施形態も含むことが当業者には理解されるであろう。
【実施例】
【0049】
実施例1
イネ由来のGAD遺伝子ヌクレオチド配列の単離および精製ならびに植物形質転換ベクターの構築
GAD遺伝子を35Sカリフラワーモザイクウイルスプロモーターの下流にクローニングし、NOSターミネーターで終結させる。これらのプロモーターおよびターミネーターは全て機能的に連結されている。
【0050】
植物材料
オリザ・サティバ(Oryza sativa)(栽培品種Rasi)を核酸の調製に使用した。発芽した後、種子を培養室の水耕溶液中で成長させた。苗を150mMのNaClで7〜16時間処理した。
【0051】
RNA抽出およびESTライブラリー構築
RNAを苗全体から抽出した。塩ストレスを与えたRASIのcDNAのESTライブラリーを構築した。グルタミン酸デカルボキシラーゼとの同一性を示すESTをESTライブラリーから同定した。
【0052】
GABAシャント内の遺伝子の同定および単離
高等植物では、酸性化、酸素欠乏、低温、熱ショック、機械的刺激、病原菌による攻撃、渇水、および塩ストレスなどの種々のストレスの発生後にGABAが蓄積する。GABAシャント内の遺伝子であるグルタミン酸デカルボキシラーゼは、塩ストレスを与えたO.サティバのライブラリーから単離された。
【0053】
グルタミン酸デカルボキシラーゼ遺伝子のクローニング
グルタミン酸デカルボキシラーゼ遺伝子をクローニングベクターにクローニングし、構成的プロモーターの下にある植物形質転換ベクター(バイオリスティックおよびバイナリー)にもクローニングした。グルタミン酸デカルボキシラーゼ遺伝子の完全なコード配列をコードするcDNAを、BglII制限酵素部位およびEcoRI制限酵素部位(下線を付したヌクレオチド配列)でタグを付けた以下のプライマー対を用いてインディカイネ(栽培品種RASI)のcDNAから増幅した。
フォワード:5'−GCGGATCCATGGTGCTCTCCAAGGCCGTCTC−3'
リバース:5'−GCGAATTCCTAGCAGACGCCGTTGGTCCTCTTG−3'
【0054】
以下のPCR条件を用いる。94℃、1分;94℃、30秒;75℃、3分(5サイクル);94℃、30秒;68℃、3分(30サイクル)、最後の伸張は68℃、7分。
【0055】
増幅されたcDNAは1479塩基対のヌクレオチドからなり、成熟グルタミン酸デカルボキシラーゼ酵素をコードする。
【0056】
増幅された断片をpGEMT easyベクターにクローニングした。遺伝子をBamHI部位とEcoRI部位で制限消化し、バイオリスティックベクターpV1に連結した。このバイオリスティックベクターをBglII制限部位とEcoRI制限部位で切り出し(BglII酵素とBamHI酵素はアイソシゾマーである)、遺伝子の存在を確認した。遺伝子をシーケンシングでも確認した。得られたベクター(pV1−GAD)は、選択マーカーとしてのアンピシリン耐性遺伝子とともに、35Sカリフラワーモザイクウイルス(35S CaMV)プロモーターで駆動されるGAD遺伝子(1.479kb)とNOSターミネーターとを有する。
【0057】
CaMVプロモーターで駆動され、NOSターミネーターによって終結させられる、pV1−GD由来のGAD遺伝子の遺伝子カセットをHindIII部位とBamHI部位で制限消化した。この遺伝子カセットを、HindIII部位とBamHI部位で制限消化したpCAMBIA 1390 pNG15に連結した。得られたベクター(pAPTV 1390−GAD)は、選択マーカーとしてのnptII(カナマイシン耐性)遺伝子およびhph遺伝子(ハイグロマイシン耐性)とともに、35Sカリフラワーモザイクウイルス(35S CaMV)プロモーターで駆動され、NOSターミネーターによって終結させられるGAD遺伝子(1.479kb)を有する(図1)。
【0058】
実施例2
変化したGAD遺伝子を有する植物の作製
植物形質転換
遺伝子が同定されたという考えを証明するために、アグロバクテリウムを介してグルタミン酸デカルボキシラーゼ遺伝子をタバコ(モデル植物)とイネ(作物用植物)に形質転換した。
【0059】
GAD遺伝子を含むバイナリーベクターによるタバコ葉外植片のアグロバクテリウム媒介性形質転換に関わる詳細な工程:
1.ベクター骨格がKan耐性遺伝子とRif耐性遺伝子(これらは1回で終わる二重選択としても機能する)からなるので、アグロバクテリウムの陽性コロニーを、50mg/Lのカナマイシン(Kan)と10mg/Lのリファマイシン(Rif)を含むLBブロスに播種した。
2.次に、このブロスを、シェーカー上で、28℃でインキュベートした。
3.午前中に、一晩成長させたコロニーを、50mg/LのKanと10mg/LのRifを含む50mLのLBブロスに播種し、28℃で3〜4時間インキュベートし、600nmでODをチェックし、ODが0.6〜1になるまで成長させ続けた。
4.ブロスが所要のODに達した時点で、このブロスを5000rpmで5分間遠心分離した。
5.上清を捨て、細胞ペレットをMurashige & Skooge(MS)液体培地(Agro−MSブロス)に溶かした。
6.タバコの葉を、中肋を取らずに四角い小片(これは外植片の役割を果たした)に切り、注意を払って、播種物の中心部分にあまり傷をつけないようにして、葉の四方に傷をつけた。
7.これらの葉試料をBODインキュベーター内のMS無添加培地中に2日間置いた。播種の2日後、これらの葉試料に、形質転換したアグロバクテリウム細胞(この時、これはAgro−MSブロス中に入れられている)を感染させた。
8.葉の外植片をこのAgro−MSブロス中に30分間置いた後、それらを共栽培培地(これは、MS+1mg/L 6−ベンジルアミノプリン塩酸塩(BAP)+0.2mg/L ナフタレン酢酸(NAA)+250mg/L セフォタキシムからなる)上に2日間置いた(図2a)。
9.共栽培の後、外植片を第1の選択培地(これは、MS+1mg/L BAP+0.2mg/L NAA+40mg Hyg+250mg/L セフォタキシムからなる)中で15日間維持し、カルスが隆起し始めたとき、カルスを十分成熟させるために、これらの外植片を第1の選択培地上で再び継代培養した(図2b)。
10.カルスが成熟したことが分かった時点で、これらのカルスを第2の選択培地(これは、MS+1mg/L BAP+0.2mg/L NAA+50mg Hyg+250mg/L セフォタキシムからなる)上に播種した。ハイグロマイシン濃度が増加しているので、第1の選択を逃れたものが抑制されるようになり、形質転換カルスのみがこの培地上で生存し始める。
11.その後、この第2の培地上で継代培養を10日間で1回行なった。
12.この時までに、小植物体がカルスから隆起し始めた。第2の選択から得た小植物体を採取し、発根培地(これは、1/2 MS+0.2mg/L インドール−3−酪酸(IBA)からなる)上に置いた。ここで、これらの小植物体は12〜15日までに根を突き出し始めた。逃れたものをこの段階でも同定することができるので、成熟根が形成された時点で、20mg/Lのハイグロマイシンを含む発根培地上で植物を継代培養した(図2c)。
13.この段階の植物を、植物がその成長室環境に適応するように瓶の蓋を2日間開けたままにして、環境に順応させた。その後、寒天培地から得た植物を取って、1/4 MS液体培地中に2日間置いた。これらの植物をさらにバーミキュライト上に移し、1週間毎日水をやった。
14.植物の状態に応じて、好適な植物を温室に移した。
15.植物を温室に移す前の環境順応期に、植物から古い葉を採集した。
16.それぞれの葉試料からDNAを抽出し、遺伝子特異的プライマーと、選択マーカー遺伝子、すなわち、ハイグロマイシンのプライマーとを用いてPCRを行なった。PCRで確認した陽性植物をさらに温室に移した。
【0060】
導入GAD遺伝子を有する植物の確認
GADタバコトランスジェニック株のゲノムDNA抽出
トランスジェニックGADタバコ植物の葉試料を採集し、ゲノムDNAを抽出した。
【0061】
ゲノムDNA抽出の手順:
・約1gmの葉を各植物から採集した。
・液体窒素を用いて乳棒と乳鉢で試料をすりつぶした。
・1mlの抽出バッファー(Extraction buffer)(0.2M Tris Cl pH8.0;2M NaCl;0.05M EDTA;2% CTAB)を試料に加え、13Kで10分間回転させた。
・上清を回収した。RNアーゼ[1mlに対して3μl(1mg/mL)]を加え、37℃で30分間インキュベートした。
・次に、等量のクロロホルム−イソアミルアルコールを加え、13kで10分間回転させた。
・上清を新しいチューブに回収し、等量の冷イソプロパノールを加え、13kで10分間回転させた。
・ペレットを70%アルコールで洗浄し、ペレットを乾燥させ、オートクレーブした温水30μlに溶かした。
・1μlのDNAを充填し、ゲル上でチェックした。
【0062】
トランスジェニック植物を、様々なプライマー組合せを用いるPCRによって確認した:
1.ハイグロマイシンフォワード(Hyg F)プライマーとハイグロマイシンリバース(Hyg R)プライマーを用いるPCR:
【0063】
【表1】
PCR条件:(エッペンドルフ装置)
【0064】
【表2】
図3aに示すように、増幅産物を0.8%アガロースゲルで可視化した。
【0065】
2.遺伝子特異的プライマーのGADフォワード(GD F)とGADリバース(GD R)を用いるPCR:
【0066】
【表3】
PCR条件:(エッペンドルフ装置)
【0067】
【表4】
図3bに示すように、増幅産物を0.8%アガロースゲルで可視化した。
【0068】
3.GD FとNos MRを用いるPCR:
【0069】
【表5】
PCR条件:(エッペンドルフ装置)
【0070】
【表6】
図3cに示すように、増幅産物を0.8%アガロースゲルで可視化した。
【0071】
様々なPCR反応で使用されるプライマー配列を以下に列挙する:
Hyg F:5'−CTGAACTCACCGCGACGTCT−3'
Hyg R:5'−CCACTATCGGCGAGTACTTC−3'
GD F:5'−GCGGATCCATGGTGCTCTCCAAGGCCGTCTC−3'
GD R:5'−GCGAATTCCTAGCAGACGCCGTTGGTCCTCTTG−3'
NOS MR:5'−GATAATCATCGCAAGACCGGCAAC−3'
Tub F:5'−GACGAGCACGGCGTTGATCCTA−3'
Tub R:5'−CCTCCTCTTCATACTCTTCCT−3'
【0072】
トランスジェニック植物における導入GAD遺伝子発現の確認
導入GAD遺伝子発現の確認は、RNA抽出、cDNA合成、および逆転写PCRのような工程を含んだ。
【0073】
対照植物(野生型)とともにトランスジェニックGADタバコ植物のRNAを単離した。
【0074】
RNA抽出に関わる詳細な工程:
1.500mgの葉組織を予冷した乳鉢にとり、液体窒素中ですりつぶして、細かい粉末にした。
2.冷やしたスパチュラを用いて、粉末を予冷したエッペンドルフチューブに移した。
3.ホモジナイズした試料に1mlのTrizol溶液を加えた。よく混合し、室温(RT)で5分間インキュベートした。
4.これに200μlのクロロホルムを加え、15秒間激しく振盪させ、室温で5分間インキュベートした。
5.試料を13000rpmで15分間、4℃にて遠心分離した。
6.上部の水相を新しいチューブに回収した(約60%、すなわち、600μl)。
7.回収した上部相に500μlの冷イソプロパノールを加え、RTで10分間インキュベートした。
8.試料を13000rpmで15分間、4℃にて遠心分離した。
9.上清をデカントで捨て、ペレットを500ulの70%アルコール(DEPC H2O)で洗浄し、10000rpmで5分間、4℃にて遠心分離した。
10.上清をデカントで捨て、ペレットをRTで15分間乾燥させた。
11.ペレットを、55℃に設定された加熱式のウォーターバスまたはドライバス中で20μlのDEPC処理H2Oに溶かした。
12.2μlの試料をゲルに充填した。試料をさらに使用するまで−80℃で保存した。
【0075】
cDNA合成に関わる詳細な工程:
野生型とともにトランスジェニックGADタバコ植物のcDNA合成を行なった。
1.構成要素を以下に示す順序で加えた。
トータルRNA :4ul(1ug)
オリゴdT :0.5ul
0.1%DEPC/ヌクレアーゼフリー水 :6.5ul
合計 :11ul
2.内容物を70℃で5分間、PCR装置で加熱し、氷中で素早く冷却した。
3.一方、以下の構成要素を別のチューブに加えることにより、次の混合物を調製した。
5×反応バッファー :4ul
dNTP(10mM) :2ul
RNアーゼ阻害剤(20U/ul) :0.5ul
0.1%DEPC/ヌクレアーゼフリー水 :2ul
合計 :8.5ul
4.この8.5ulの混合物を、素早く冷却したPCRチューブ中の内容物に加え、穏やかにタッピングして混合した。
5.内容物を、PCRチューブ中、37℃で5分間、PCR装置でインキュベートした。
6.0.5ulのM−MuLV RT酵素をチューブに加え、PCR装置で設定されたプログラムを継続した(25℃、10分;37℃、60分、および70℃、10分)。
7.PCRでさらに使用するまでcDNAを−20℃で保存した。
【0076】
RT−PCRによるトランスジェニックタバコ植物における導入GAD遺伝子発現の解析
タバコにおける導入GAD遺伝子の発現をチェックするために、GADトランスジェニックタバコおよび野生型植物由来のcDNA試料を、遺伝子特異的プライマーを用いるPCRで解析した。
【0077】
遺伝子特異的プライマーを用いるcDNAのPCR:
【0078】
【表7】
PCR条件:(エッペンドルフ装置)
【0079】
【表8】
図4に示すように、増幅産物を0.8%アガロースゲルで可視化した。
【0080】
実施例3
変化したGAD遺伝子を有する植物がT0世代で変化した植物構造を有する証拠
植物材料
野生型植物とT0トランスジェニックタバコ植物を用いて実験を行なった。苗を、温室で、野外土壌の混合物を含む植木鉢の中で栽培した。肥料の外部適用なしに、植物に普通の水をやった。土壌に混合したFYMが植物にとっての唯一の栄養源としての役割を果たした。
【0081】
葉の大きさ
葉の大きさをトランスジェニック植物と野生型植物(導入されたグルタミン酸デカルボキシラーゼ遺伝子を持たない植物)で測定した。T0トランスジェニック植物の葉の大きさは、対照植物の葉と比較したとき、より大きかった。葉の大きさは、対照よりも少なくとも20%大きく増加したが、葉の大きさの最大増加は、野生型植物を160%上回るものであった(表1および図5)。
表1:野生型植物とT0 GADタバコトランスジェニック植物の葉の大きさの比較
【0082】
【表9】
【0083】
実施例4
変化したGAD遺伝子を有する植物がT1世代で変化した植物構造を有する証拠
植物の全生活環を含む成熟植物段階での植物構造の変化を評価するために、トランスジェニック植物の表現型をT1世代で検討した。
【0084】
温室での植木鉢培養で植物構造の変化を評価するために、3つのトランスジェニック事象D1A、E2、およびH1を選択した。野生型タバコとトランスジェニックタバコを用いて実験を行なった。ハイグロマイシン(50mg/L)が補充された湿った濾紙盤の上でT1種子を発芽させ、この上で発芽し、成長した陽性苗を選択し、野生型の苗とともに大きい植木鉢(11インチ直径)の土壌の上に置いた。苗を温室で、野外土壌と堆肥(FYM)の混合物を含む植木鉢の中で栽培した。植物に普通の水または生理食塩水(200mM NaCl)をやった。表1に示すように4つの遺伝子型(野生型とD1A、E2、およびH1トランスジェニックタバコ)を用いて3つの複製を伴って実験を行なった。
表1:植物構造の変化を評価するための実験設計。比較のために、3つの複製と4つの遺伝子型を用いた。
【0085】
【表10】
【0086】
表現型評価:
表現型の特徴を観察し、草高、節間距離、枝の数、葉の数、葉面積、茎の太さ(周囲長)、総バイオマス、穀粒収量などのような、植物構造に寄与するパラメータを記録した。
【0087】
草高
トランスジェニック植物と野生型植物(導入されたグルタミン酸デカルボキシラーゼ遺伝子を持たない植物)で植物の高さを測定した。定規を用いて地面から花と枝を含む植物の先端までの草高を測定した。3つの事象由来のトランスジェニック植物は、野生型植物と比較してより高い草高を示した(図6)。少なくとも10%の草高の増加があり(H1)、最大23%の草高の増加(D1A)が観察された。
【0088】
節間距離
トランスジェニック植物と野生型植物(導入されたグルタミン酸デカルボキシラーゼ遺伝子を持たない植物)で茎上の2つの節間の距離を測定した。第5および第6葉と第6および第7葉の間で節間距離を測定した。完全に広がった葉を葉番号1とみなして、先端から葉を計数した。スレッドを用いて距離を測定し、その後、定規でスレッド長を測定して、cmで表した。トランスジェニック植物(H1)は、野生型と比較して少なくとも44%の節間距離の増加を示した(図7)。
【0089】
葉の数
トランスジェニック植物と野生型植物(導入されたグルタミン酸デカルボキシラーゼ遺伝子を持たない植物)で各植物の葉の数を計数した。トランスジェニック体は、野生型と比較して35%多い葉の数を示した(図8)。
【0090】
茎の周囲長(外周または茎の太さ)
トランスジェニック植物と野生型植物(導入されたグルタミン酸デカルボキシラーゼ遺伝子を持たない植物)で茎の太さを測定した。地面から5〜6cmの高さで茎の周囲長を測定した。スレッドを用いて、適当な高さで茎の周りを囲み、その後、定規でスレッドの長さを測定して、cmで表した。トランスジェニック体の茎は、野生型植物と比較して明らかにより太かった(図9)。トランスジェニック体では、茎が少なくとも28%太かったが、茎の太さは最大47%増加することができた(E2)。
【0091】
葉面積
トランスジェニック植物と野生型植物(導入されたグルタミン酸デカルボキシラーゼ遺伝子を持たない植物)で葉の大きさを測定した。葉を節から葉の先端まで垂直に測定し、葉の長さとみなした。トランスジェニック植物は、野生型植物よりも27%〜37%長い葉を有していた(図10a)。葉の幅を、最も幅が広い位置で水平に測定し、葉の幅とみなした。トランスジェニック植物は、野生型植物よりも42%〜65%幅広い葉を示した(図10b)。葉面積を長さ×幅(cm−2単位で表す)として計算した。野生型と比較して、トランスジェニック体の葉面積に有意な増加(80%〜129%)が見られた(図10c)。葉面積の増加は、試験した2つの世代(T0およびT1)にわたって安定であった。
【0092】
植物バイオマス
トランスジェニック植物と野生型植物(導入されたグルタミン酸デカルボキシラーゼ遺伝子を持たない植物)で生成されるバイオマスを測定した。植物バイオマスを植物の総乾燥重量として測定した。トランスジェニック体由来の総バイオマスは、野生型と比較して有意により多かった(22%〜88%)(図11)。これは、葉の大きさ、茎の太さなどのような、他の表現型特徴に増加が見られるという明白な事実によるものである可能性があった。
【0093】
穀粒収量
総穀粒収量は、野生型よりもトランスジェニック体で有意に多かった(最大50%多かった)(図12)。トランスジェニック植物由来の穀粒または種子はまた、より実っているかまたはサイズが大きかったが、これは、種子のより大きい試験重量によって示されている(図13)。
【0094】
要約すると、試験した3つ全ての事象由来のGADトランスジェニック植物は、陽性の変化した表現型または植物構造を示した。GADトランスジェニック植物は、植物の様々な農学的および生理学的状態について、野生型植物よりも優れた性能を発揮し、したがって、トランスジェニック植物の優れた性能の一因となる変化した植物構造に対するGAD遺伝子の役割が示された。
【0095】
配列番号1は、オリザ・サティバのグルタミン酸デカルボキシラーゼ遺伝子の核酸配列を示す。開始コドンと終止コドンは、イタリック体で示されている。
【0096】
配列番号2は、オリザ・サティバのグルタミン酸デカルボキシラーゼ遺伝子のアミノ酸配列を示す。アスタリスクは終止コドンを表す。
【技術分野】
【0001】
本発明は一般に、変化した構造を有する植物を作製する方法ならびにそのように作製された植物およびこれらの植物の部分に関する。特に、本発明は、変化した表現型を示す植物を産生するために植物を改変する方法に関する。植物ならびに植物の部分、例えば、花部分および種子を含む生殖部分もまた、本発明の一部を形成する。植物の表現型を改変することができることは、より大いに望ましい特徴を有する植物を産生するために有用であり得る。
【背景技術】
【0002】
植物構造の操作は、おそらく植物の栄養所要量の発見に次ぐ、植物改良の最大の柱の1つである。「遺伝子革命」の到来により、植物構造の選択的改変の新たな機会が数え切れないほど多く存在する。
【0003】
植物は、例えば、生体力学、水力学構造、もしくは微気象学への、または生物成長のシミュレーションへの適用の要件によって多様な方法で記載することができる複合構造体である。植物は、いろいろな規模で構成された、特定の形態学的特徴を有する構成要素の集合体とみなすことができるという一般的合意がある(White,1979;Barthelemy,1991)。植物構造は、植物構成要素の空間構成に適用される用語であり、この空間構成は時間とともに変化することがある。所与の時点で、植物構造は、位相情報および幾何学的情報により規定することができる。位相は、植物構成要素間の物理的関連を扱うが、幾何学は、これらの構成要素の形状、大きさ、配向、および空間的位置を含む。
【0004】
植物構造は植物体の三次元構成と規定される。地上の部分について、これは、葉ならびに他の光合成器官および花器官の茎での空間的配置と、分岐パターンとを含む。植物構造は今日でも植物種を同定する最良の手段であり、長い間、系統的分類および分類学的分類の唯一の基準であった(Reinhardt and Kuhlemeier,2002)。葉は太陽エネルギーを集積し、また、ガス交換のための表面となるので、植物キャノピーにおけるその配置は、遮光と光合成にとって極めて重要である。植物による遮光は植物構造に依存している。したがって、自然システムと農業システムの両方において、植物の適合性と収量は植物構造によって影響を受ける。キャノピー遮光を最大化する植物は様々な適応形質を進化させており、植物構造は主な適応形質の1つである。遮光を最大化するために、改変された植物構造は、葉の大きさと形状と角度、草高、枝、およびひこばえの改変を含む。いくつかの植物は、遮光を一時的に最大化するために、そのキャノピー構造を改変することができる。
【0005】
植物構造は遺伝的に制御された形質であり、それゆえ遺伝性であるが、それでもなお、非生物要因と生物要因の両方の環境要因によって、キャノピー構造が改変されることがある。キャノピー構造に影響を及ぼす非生物要因としては、土壌の水分含量、養分利用性、温度、および光が挙げられる。一方、生物要因としては、草食動物、病原菌、および他の植物との競合が挙げられる。
【0006】
植物構造は主として農学的に重要であり、植物の栽培への適合性や収量に強く影響を及ぼす。農業では、収量を向上させる植物構造は、作物の可能性を高めることができる。より良好に遮光することができる改変されたキャノピー構造を持つ矮性品種が様々な作物で開発されてきた(Coyne,1980)。生産性の大きな増加をもたらしたグリーン革命の最大の成功の1つは、植物構造の改変に基づくものであったが、この場合には、短くて頑丈な茎を持つ矮性小麦品種を選択することで、植物が風雨による被害に耐えることができ、結果としてより高い収量がもたらされた(Peng et al.,1999)。
【0007】
植物構造に影響を及ぼすことができる非生物要因としては、土壌水分、温度、および光などの植物成長のための資源が挙げられ、これらの資源の十分な供給の下で、植物は、適応度が最大のその遺伝的潜在能力に近い成長速度を達成し、典型的な構造を発現させる。しかしながら、これらの資源の供給が乏しい中では、植物は、生理的変化や成長変化を経て、その適応度を高めるために構造の改変を引き起こす。
【0008】
従来技術
植物構造に関する遺伝子
植物は、規則的なパターンで配置された新しい葉を絶えず形成し、これは葉序と呼ばれる。オーキシン輸送タンパク質PIN1の突然変異か、またはオーキシン輸送の化学的阻害剤のいずれかによるオーキシン輸送の阻害によって、シュート頂分裂組織(SAM)での器官形成が特異的に無効化されるのに対し、茎の成長と分裂組織の永久化は影響を受けず、マツのような柄を形成する(Okada et al.,1991;Reinhardt et al.,2000)。P糖タンパク質PGPは形質膜アニオン輸送体であり、アラビドプシスのPGPは、細胞の伸張、植物の形状、根の分岐、および果実の発達を制御するホルモンのオーキシンを輸送する。これまでに調べられたpgp突然変異体は、オーキシン輸送が低下しており、様々な程度の屈性応答を示す矮性体である(Murphy et al.,2000;Noh et al.,2001)。
【0009】
ピロリン酸駆動性プロトンポンプであるAVP1は、根の成長と発達に必要なオーキシン勾配の樹立と維持に重要である。AVP1を過剰発現する植物(AVP1OX)では、シュートと根の質量や表面積がより大きい。AVP1は植物界全体で高度に保存されており、過剰発現の同様の効果はアラビドプシス、トマト、およびイネで観察されている(Gaxiola et al.,2001; Drozdowicz et al.,200)。
【0010】
TWDは、推定形質膜GPIアンカーを有するイムノフィリン様タンパク質である。TWDは、PGPをはじめとする、植物内の多くのタンパク質と相互作用する。pgp1 pgp19二重突然変異体はtwd突然変異体に似ており、TWDがPGPと他のタンパク質の相互作用を媒介することを示している。twd突然変異体は矮小体であり、ねじれた器官(特に、茎、葉、および花)を有するより短い植物を生じさせる超突然変異が全ての解剖学的特徴として見られ、結果として、見た目が楽しく珍しい植物が生じる(Kamphausen et al.,2002; Geisler et al.,2003)。
【0011】
最近の証拠から、トレハロース−6−リン酸シンターゼ(TPS)遺伝子が植物発達や花序構造の重要な調節物質であることが示唆された。一例では、トレハロースはトウモロコシの花序の分岐を調節するように見える(Satoh−Nagasawa et al.,2006)。トウモロコシの花序の分岐は、RAMOSA遺伝子により制御されており、これらの遺伝子のうちの1つ(RAMOSA3)は、転写因子RAMOSA1の調節を通じて機能するトレハロース生合成遺伝子をコードしている(Satoh−Nagasawa et al.,2006)。Charyら(2008)は、クラスII型のTPS遺伝子が、植物発生に関わる表現型全体の広範な修飾因子として機能する他に、細胞形態の制御において機能することを示す証拠を提供した。彼らは、葉の表皮で劇的な細胞効果を有し、被蓋細胞裂片の喪失を生じさせる細胞形状表現型−1(csp−1)突然変異体を同定した。さらに、csp−1は毛状突起の細胞形態に影響を及ぼし、分岐パターンを変化させることが示された。この突然変異体は、丈の低下、茎の分岐の変化、および葉の鋸歯の際立ちを含む様々な発生障害を示す。
【0012】
GABAシャント
γ−アミノ酪酸(GABA)は、細菌から植物および脊椎動物まで保存されている4炭素非タンパク質アミノ酸である。GABAは遊離アミノ酸プールの重要な成分である。GABAは、α−炭素上ではなくg−炭素上にアミノ基を有し、非結合形態で存在する。GABAは水によく溶け、構造的には、プロリンに似た環状構造を含む、いくつかの立体構造を溶液中でとることができる柔軟な分子である。GABAは、生理的pH値(pK値4.03および10.56)で双性イオンとなる(正負両方の電荷を持つ)。
【0013】
GABAは半世紀余り前に植物で発見されたが、GABAが脳で高レベルに生じ、神経伝達において大きな役割を果たすことが明らかになったとき、GABAへの関心は動物に移った。それ以来、脊椎動物のGABAに関する研究は、特に神経伝達における、シグナル伝達分子としてのその役割に主に焦点が当てられた。植物および動物において、GABAは、GABAシャントと呼ばれる、3つの酵素から構成される短い経路を介して主に代謝されるが、それは、この経路がトリカルボン酸(TCA)回路の2つの段階を迂回するからである。この経路は、細胞質酵素のグルタミン酸デカルボキシラーゼ(GAD)ならびにミトコンドリア酵素のGABAトランスアミナーゼ(GABA−T)およびコハク酸セミアルデヒドデヒドロゲナーゼ(SSADH)から構成されている。この保存された代謝経路の調節は、植物の独自の特徴を有しているように思われる。
【0014】
GABAを介してグルタミン酸をコハク酸に変換する経路はGABAシャントと呼ばれる。このシャントの第1の段階は、グルタミン酸デカルボキシラーゼ(GAD、EC 4.1.1.15)による直接的かつ不可逆的なグルタミン酸のα−脱カルボキシル化である。インビトロでのGAD活性は、多くの植物種および植物組織からの粗抽出物で特徴解析されている(Brown & Shelp,1989)。GADは、L−グルタミン酸に特異的であり、ピリドキサル5’−リン酸依存的であり、スルフヒドリル基と反応することが知られている試薬によって阻害され、カルモジュリン結合ドメインを有し、約5.8のはっきりとした酸性至適pHを示す。ペチュニア(Baum et al.,1993)、トマト(Gallego et al.,1995)、タバコ(Yu & Oh,1998)、およびアラビドプシス(Zik et al.,1998)由来のGAD遺伝子が同定されている。GABAシャントに関与する第2の酵素であるGABAトランスアミナーゼ(GABA−T;EC 2.6.1.19)は、ピルビン酸またはα−ケトグルタル酸のいずれかをアミノ酸受容体として用いて、GABAのコハク酸セミアルデヒドへの可逆的変換を触媒する。粗抽出物では、インビトロでのGABA−T活性は、α−ケトグルタル酸よりもピルビン酸を好むように見える。しかしながら、別個のピルビン酸依存的活性とα−ケトグルタル酸依存的活性とがタバコ葉の粗抽出物中に存在しており、これらはイオン交換クロマトグラフィーで互いに分離することができる(Van Cauwenberghe & Shelp)。両活性とも、8〜10の幅広い至適pHを示す。約1000倍に精製された、タバコ由来のピルビン酸特異的ミトコンドリアGABA−Tのミカエリス定数(Km)は、GABAについては1.2mM、ピルビン酸については0.24mMである(Van Cauwenberghe & Shelp)。
【0015】
GABAシャントの最後の段階は、コハク酸セミアルデヒドをコハク酸に不可逆的に酸化する、コハク酸セミアルデヒドデヒドロゲナーゼ(SSADH;EC 1.2.1.16)によって触媒される。部分精製された植物酵素は、約9のアルカリ性至適pHを有し、活性は、NADを用いる方がNADPを用いるよりも最大20倍大きい(Shelp et al.,1995)。
【0016】
実際のところ、植物のGABAシャントへの関心は、主に、GABAが生物ストレスと非生物ストレスに応答して大量にかつ速やかに産生されるという実験的観察から起こった。それ以来、GABAシャントは、細胞質pHの調節、TCA回路への炭素移動、窒素代謝、虫の抑止、酸化ストレスからの保護、浸透圧調節、およびシグナル伝達をはじめとする様々な生理的応答と関連付けられている。
【0017】
今回初めて、グルタミン酸デカルボキシラーゼ遺伝子を用いて植物の形態構造を変化させる方法が示されている。P−糖タンパク質、オーキシン輸送体、植物ホルモン、およびプロトンポンプのような遺伝子を用いて、この方向で様々な試みが行なわれている。GABAシャント経路に関与する遺伝子、特にグルタミン酸デカルボキシラーゼを用いて植物の構造を変化させる試みは今日まで行なわれていない。過去の試みは、イネ由来の2つのグルタミン酸デカルボキシラーゼ遺伝子であるOsGAD1とOsGAD2に対して行なわれたものであり、これらの遺伝子がアグロバクテリウムを介してイネカルスに同時に導入されて、トランスジェニック細胞株が樹立された。再生したイネ植物は、矮小発育、黄化葉、および不稔などの異常な表現型を有していた(Akama & Takaiwa,2007)。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明は、グルタミン酸デカルボキシラーゼ遺伝子のアグロバクテリウム媒介性形質転換によって(単子葉植物と双子葉植物の両方の)植物構造を変化させる方法に関する。さらに、本発明は、植物を改変して植物構造に関する遺伝子を発現させる方法、およびこの方法を用いて産生された植物に関する。
【0019】
トランスジェニック植物におけるGAD遺伝子ファミリーの操作によって植物の構造を変化させるための組成物および方法を提供する。
【0020】
本発明はGAD遺伝子のヌクレオチド配列を提供する。本発明のヌクレオチド配列およびポリペプチドには、GAD遺伝子、タンパク質、およびそれらの機能断片または変異体が含まれる。
【0021】
本発明の方法は、植物にヌクレオチド配列を導入し、対応するポリペプチドを植物内で発現させることを含む。本発明の配列は、植物における植物構造、炭素と窒素の分配、バイオマスの増加、および/または収穫可能な収量の向上を変化させるために使用することができる。本発明の方法は、植物のバイオマスや収穫可能な収量を向上させるために使用される。
【0022】
さらに、形質転換植物、植物組織、植物細胞、種子、および葉を提供する。このような形質転換植物、組織、細胞、種子、および葉は、それらのゲノムに安定に組み込まれた、少なくとも1コピーの本発明のヌクレオチド配列を含む。
【0023】
本発明の一実施形態は、植物の特徴を得る方法であって、
a.その発現が、単独でまたはさらなるポリヌクレオチドと組み合わせて、植物内での窒素利用効率のエフェクターとして機能するヌクレオチド配列を含む組換え発現カセットを植物細胞に導入すること;
b.この植物細胞を植物形成条件下で培養して植物を産生すること;および
c.このヌクレオチド配列の発現を誘導して植物の構造を変化させること
を含む方法である。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】グルタミン酸デカルボキシラーゼをコードするDNA配列を有する植物形質転換ベクターを示す。
【図2】アグロバクテリウム媒介性遺伝子導入を介したGAD遺伝子によるタバコ葉の形質転換の様々な段階を示す。
【図3】様々なプライマー組合せ、すなわち、a)HygR遺伝子フォワードおよびリバースプライマー;b)遺伝子特異的フォワードおよびリバースプライマー、ならびにc)遺伝子フォワードおよびNOSリバースプライマーを用いて、GAD遺伝子で形質転換され、再生されたタバコのT0苗のPCRによる確認を示す。
【図4】GAD遺伝子特異的なフォワードプライマーとリバースプライマーを用いて、cDNAを鋳型とするRT−PCRを用いて解析された、GAD遺伝子を有するタバコのT0苗における導入遺伝子(GAD)発現の確認を示す。
【図5】温室で成長させた野生型植物およびGAD遺伝子以外の遺伝子を有するトランスジェニック植物とT0 GADトランスジェニックタバコの葉の大きさの比較を示す。
【図6】温室の植木鉢で成長させたときのハイグロマイシン陽性のGADトランスジェニック体(D1A、E2、およびH1)由来のT1苗と野生型苗の草高の比較を示す。
【図7】温室の植木鉢で成長させたときのハイグロマイシン陽性のGADトランスジェニック体(D1A、E2、およびH1)由来のT1苗と野生型苗の節間距離の比較を示す。
【図8】温室の植木鉢で成長させたときのハイグロマイシン陽性のGADトランスジェニック体(D1A、E2、およびH1)由来のT1苗と野生型苗の葉の数の比較を示す。
【図9】温室の植木鉢で成長させたときのハイグロマイシン陽性のGADトランスジェニック体(D1A、E2、およびH1)由来のT1苗と野生型苗の茎の周囲長または太さの比較を示す。
【図10】温室の植木鉢で成長させたときのハイグロマイシン陽性のGADトランスジェニック体(D1A、E2、およびH1)由来のT1苗と野生型苗のa)葉の長さ;b)葉の幅広さ、およびc)葉面積といった葉の特徴の比較を示す。
【図11】温室の植木鉢で成長させたときのハイグロマイシン陽性のGADトランスジェニック体(D1A、E2、およびH1)由来のT1苗と野生型苗の総バイオマスの比較を示す。
【図12】温室の植木鉢で成長させたときのハイグロマイシン陽性のGADトランスジェニック体(D1A、E2、およびH1)由来のT1苗と野生型苗の総穀粒収量の比較を示す。
【図13】温室の植木鉢で成長させたときのハイグロマイシン陽性のGADトランスジェニック体(D1A、E2、およびH1)由来のT1苗と野生型苗の種子の実り具合(種子100個の重量)の比較を示す。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下の本発明の詳細な説明は、当業者が本発明を実施するのに役立つように提供されている。それでも、本明細書で論じられる実施形態の変更および改変が、本発明の精神または範囲から逸脱することなく当業者によってなされ得るので、以下の本発明の詳細な説明は、本発明を過度に限定するものとみなされるべきではない。
【0026】
本発明は、グルタミン酸デカルボキシラーゼの特徴を有する精製および単離されたDNA配列に関する。
【0027】
本発明によれば、この精製および単離されたDNA配列は、通常、グルタミン酸デカルボキシラーゼのヌクレオチド配列またはその断片からなる。
【0028】
任意の手段で産生することができる、上記の配列または断片の相補配列も同様に、本発明に含まれる。
【0029】
上記の配列の変異体、すなわち、1つ以上のヌクレオチドが同じ特徴を有する別のヌクレオチドにより置換される保存的ヌクレオチド置換によって参照配列と異なっているヌクレオチド配列が本発明に包含される。
【0030】
本発明によれば、上記のヌクレオチド配列は、発現ベクター内でプロモーターと目的の遺伝子とを含む配列の5’末端と3’末端の両方に位置することができる。
【0031】
本発明に含まれるのは、本発明の産生される植物の構造を変化させるときの上記の配列の使用である。「植物構造」とは、好適な条件下で宿主植物にDNA配列を導入した後、この配列が、対照植物(ここで、この植物は、該DNA配列でトランスフェクトされていない)と比較して、植物の葉の大きさ、節間距離、茎の太さ、バイオマス、および収穫可能な収量を増大させることができることを意味する。
【0032】
以下の定義は本発明の理解を助けるために用いられる。
【0033】
「染色体」とは、細胞の内部に見られるDNAとタンパク質の組織化された構造体のことである。
【0034】
「クロマチン」とは、真核細胞の核の内部に見られるDNAとタンパク質の複合体のことであり、これによって染色体が構成されている。
【0035】
「DNA」またはデオキシリボ核酸は遺伝情報を含む。これは、様々なヌクレオチドで構成されている。
【0036】
「遺伝子」とは、所与の成熟タンパク質をコードするデオキシリボヌクレオチド(DNA)配列のことである。「遺伝子」は、RNA転写開始シグナル、ポリアデニル化付加部位、プロモーター、またはエンハンサーなどの、非翻訳隣接領域を含まないものとする。
【0037】
「プロモーター」とは、遺伝子の発現を制御する核酸配列のことである。
【0038】
「エンハンサー」とは、遺伝子の位置または方向とは無関係に遺伝子の転写を開始するように働く遺伝子の配列を指す。
【0039】
本明細書における「ベクター」の定義は、その中に外来DNA断片を挿入し得るDNA分子を指す。ベクターは、通常、プラスミドから得られるが、これは、DNA断片を宿主細胞内に運ぶ「分子キャリア」のように機能する。
【0040】
「プラスミド」とは、細菌やいくつかの他の生物に見られる小さいDNA環のことである。プラスミドは、宿主細胞染色体とは独立に複製することができる。
【0041】
「転写」とは、DNA鋳型からのRNAの合成を指す。
【0042】
「翻訳」とは、メッセンジャーRNAからのポリペプチドの合成を意味する。
【0043】
「方向」とは、DNA配列中のヌクレオチドの順序を指す。
【0044】
「遺伝子増幅」とは、他の遺伝子のコピー数を比例的に増加させることなく、特定の遺伝子を繰り返し複製することを指す。
【0045】
「形質転換」とは、任意の導入手段によって外来遺伝物質(DNA)を植物細胞に導入することを意味する。様々な形質転換方法には、遺伝子銃(バイオリスティック)による衝撃、エレクトロポレーション、アグロバクテリウム媒介性形質転換などが含まれる。
【0046】
「形質転換植物」とは、外来DNAが該植物に導入されている植物を指す。このDNAは宿主染色体の一部となる。
【0047】
「安定な遺伝子発現」とは、目的の遺伝子を永久に発現する安定な形質転換植物の調製が、プラスミドの宿主染色体への安定な組込みに依存することを意味する。
【0048】
本発明は、広く上で定義された通りのものであるが、本発明はそれらのものに限定されるものではないこと、および本発明は以下の説明によって例が示される実施形態も含むことが当業者には理解されるであろう。
【実施例】
【0049】
実施例1
イネ由来のGAD遺伝子ヌクレオチド配列の単離および精製ならびに植物形質転換ベクターの構築
GAD遺伝子を35Sカリフラワーモザイクウイルスプロモーターの下流にクローニングし、NOSターミネーターで終結させる。これらのプロモーターおよびターミネーターは全て機能的に連結されている。
【0050】
植物材料
オリザ・サティバ(Oryza sativa)(栽培品種Rasi)を核酸の調製に使用した。発芽した後、種子を培養室の水耕溶液中で成長させた。苗を150mMのNaClで7〜16時間処理した。
【0051】
RNA抽出およびESTライブラリー構築
RNAを苗全体から抽出した。塩ストレスを与えたRASIのcDNAのESTライブラリーを構築した。グルタミン酸デカルボキシラーゼとの同一性を示すESTをESTライブラリーから同定した。
【0052】
GABAシャント内の遺伝子の同定および単離
高等植物では、酸性化、酸素欠乏、低温、熱ショック、機械的刺激、病原菌による攻撃、渇水、および塩ストレスなどの種々のストレスの発生後にGABAが蓄積する。GABAシャント内の遺伝子であるグルタミン酸デカルボキシラーゼは、塩ストレスを与えたO.サティバのライブラリーから単離された。
【0053】
グルタミン酸デカルボキシラーゼ遺伝子のクローニング
グルタミン酸デカルボキシラーゼ遺伝子をクローニングベクターにクローニングし、構成的プロモーターの下にある植物形質転換ベクター(バイオリスティックおよびバイナリー)にもクローニングした。グルタミン酸デカルボキシラーゼ遺伝子の完全なコード配列をコードするcDNAを、BglII制限酵素部位およびEcoRI制限酵素部位(下線を付したヌクレオチド配列)でタグを付けた以下のプライマー対を用いてインディカイネ(栽培品種RASI)のcDNAから増幅した。
フォワード:5'−GCGGATCCATGGTGCTCTCCAAGGCCGTCTC−3'
リバース:5'−GCGAATTCCTAGCAGACGCCGTTGGTCCTCTTG−3'
【0054】
以下のPCR条件を用いる。94℃、1分;94℃、30秒;75℃、3分(5サイクル);94℃、30秒;68℃、3分(30サイクル)、最後の伸張は68℃、7分。
【0055】
増幅されたcDNAは1479塩基対のヌクレオチドからなり、成熟グルタミン酸デカルボキシラーゼ酵素をコードする。
【0056】
増幅された断片をpGEMT easyベクターにクローニングした。遺伝子をBamHI部位とEcoRI部位で制限消化し、バイオリスティックベクターpV1に連結した。このバイオリスティックベクターをBglII制限部位とEcoRI制限部位で切り出し(BglII酵素とBamHI酵素はアイソシゾマーである)、遺伝子の存在を確認した。遺伝子をシーケンシングでも確認した。得られたベクター(pV1−GAD)は、選択マーカーとしてのアンピシリン耐性遺伝子とともに、35Sカリフラワーモザイクウイルス(35S CaMV)プロモーターで駆動されるGAD遺伝子(1.479kb)とNOSターミネーターとを有する。
【0057】
CaMVプロモーターで駆動され、NOSターミネーターによって終結させられる、pV1−GD由来のGAD遺伝子の遺伝子カセットをHindIII部位とBamHI部位で制限消化した。この遺伝子カセットを、HindIII部位とBamHI部位で制限消化したpCAMBIA 1390 pNG15に連結した。得られたベクター(pAPTV 1390−GAD)は、選択マーカーとしてのnptII(カナマイシン耐性)遺伝子およびhph遺伝子(ハイグロマイシン耐性)とともに、35Sカリフラワーモザイクウイルス(35S CaMV)プロモーターで駆動され、NOSターミネーターによって終結させられるGAD遺伝子(1.479kb)を有する(図1)。
【0058】
実施例2
変化したGAD遺伝子を有する植物の作製
植物形質転換
遺伝子が同定されたという考えを証明するために、アグロバクテリウムを介してグルタミン酸デカルボキシラーゼ遺伝子をタバコ(モデル植物)とイネ(作物用植物)に形質転換した。
【0059】
GAD遺伝子を含むバイナリーベクターによるタバコ葉外植片のアグロバクテリウム媒介性形質転換に関わる詳細な工程:
1.ベクター骨格がKan耐性遺伝子とRif耐性遺伝子(これらは1回で終わる二重選択としても機能する)からなるので、アグロバクテリウムの陽性コロニーを、50mg/Lのカナマイシン(Kan)と10mg/Lのリファマイシン(Rif)を含むLBブロスに播種した。
2.次に、このブロスを、シェーカー上で、28℃でインキュベートした。
3.午前中に、一晩成長させたコロニーを、50mg/LのKanと10mg/LのRifを含む50mLのLBブロスに播種し、28℃で3〜4時間インキュベートし、600nmでODをチェックし、ODが0.6〜1になるまで成長させ続けた。
4.ブロスが所要のODに達した時点で、このブロスを5000rpmで5分間遠心分離した。
5.上清を捨て、細胞ペレットをMurashige & Skooge(MS)液体培地(Agro−MSブロス)に溶かした。
6.タバコの葉を、中肋を取らずに四角い小片(これは外植片の役割を果たした)に切り、注意を払って、播種物の中心部分にあまり傷をつけないようにして、葉の四方に傷をつけた。
7.これらの葉試料をBODインキュベーター内のMS無添加培地中に2日間置いた。播種の2日後、これらの葉試料に、形質転換したアグロバクテリウム細胞(この時、これはAgro−MSブロス中に入れられている)を感染させた。
8.葉の外植片をこのAgro−MSブロス中に30分間置いた後、それらを共栽培培地(これは、MS+1mg/L 6−ベンジルアミノプリン塩酸塩(BAP)+0.2mg/L ナフタレン酢酸(NAA)+250mg/L セフォタキシムからなる)上に2日間置いた(図2a)。
9.共栽培の後、外植片を第1の選択培地(これは、MS+1mg/L BAP+0.2mg/L NAA+40mg Hyg+250mg/L セフォタキシムからなる)中で15日間維持し、カルスが隆起し始めたとき、カルスを十分成熟させるために、これらの外植片を第1の選択培地上で再び継代培養した(図2b)。
10.カルスが成熟したことが分かった時点で、これらのカルスを第2の選択培地(これは、MS+1mg/L BAP+0.2mg/L NAA+50mg Hyg+250mg/L セフォタキシムからなる)上に播種した。ハイグロマイシン濃度が増加しているので、第1の選択を逃れたものが抑制されるようになり、形質転換カルスのみがこの培地上で生存し始める。
11.その後、この第2の培地上で継代培養を10日間で1回行なった。
12.この時までに、小植物体がカルスから隆起し始めた。第2の選択から得た小植物体を採取し、発根培地(これは、1/2 MS+0.2mg/L インドール−3−酪酸(IBA)からなる)上に置いた。ここで、これらの小植物体は12〜15日までに根を突き出し始めた。逃れたものをこの段階でも同定することができるので、成熟根が形成された時点で、20mg/Lのハイグロマイシンを含む発根培地上で植物を継代培養した(図2c)。
13.この段階の植物を、植物がその成長室環境に適応するように瓶の蓋を2日間開けたままにして、環境に順応させた。その後、寒天培地から得た植物を取って、1/4 MS液体培地中に2日間置いた。これらの植物をさらにバーミキュライト上に移し、1週間毎日水をやった。
14.植物の状態に応じて、好適な植物を温室に移した。
15.植物を温室に移す前の環境順応期に、植物から古い葉を採集した。
16.それぞれの葉試料からDNAを抽出し、遺伝子特異的プライマーと、選択マーカー遺伝子、すなわち、ハイグロマイシンのプライマーとを用いてPCRを行なった。PCRで確認した陽性植物をさらに温室に移した。
【0060】
導入GAD遺伝子を有する植物の確認
GADタバコトランスジェニック株のゲノムDNA抽出
トランスジェニックGADタバコ植物の葉試料を採集し、ゲノムDNAを抽出した。
【0061】
ゲノムDNA抽出の手順:
・約1gmの葉を各植物から採集した。
・液体窒素を用いて乳棒と乳鉢で試料をすりつぶした。
・1mlの抽出バッファー(Extraction buffer)(0.2M Tris Cl pH8.0;2M NaCl;0.05M EDTA;2% CTAB)を試料に加え、13Kで10分間回転させた。
・上清を回収した。RNアーゼ[1mlに対して3μl(1mg/mL)]を加え、37℃で30分間インキュベートした。
・次に、等量のクロロホルム−イソアミルアルコールを加え、13kで10分間回転させた。
・上清を新しいチューブに回収し、等量の冷イソプロパノールを加え、13kで10分間回転させた。
・ペレットを70%アルコールで洗浄し、ペレットを乾燥させ、オートクレーブした温水30μlに溶かした。
・1μlのDNAを充填し、ゲル上でチェックした。
【0062】
トランスジェニック植物を、様々なプライマー組合せを用いるPCRによって確認した:
1.ハイグロマイシンフォワード(Hyg F)プライマーとハイグロマイシンリバース(Hyg R)プライマーを用いるPCR:
【0063】
【表1】
PCR条件:(エッペンドルフ装置)
【0064】
【表2】
図3aに示すように、増幅産物を0.8%アガロースゲルで可視化した。
【0065】
2.遺伝子特異的プライマーのGADフォワード(GD F)とGADリバース(GD R)を用いるPCR:
【0066】
【表3】
PCR条件:(エッペンドルフ装置)
【0067】
【表4】
図3bに示すように、増幅産物を0.8%アガロースゲルで可視化した。
【0068】
3.GD FとNos MRを用いるPCR:
【0069】
【表5】
PCR条件:(エッペンドルフ装置)
【0070】
【表6】
図3cに示すように、増幅産物を0.8%アガロースゲルで可視化した。
【0071】
様々なPCR反応で使用されるプライマー配列を以下に列挙する:
Hyg F:5'−CTGAACTCACCGCGACGTCT−3'
Hyg R:5'−CCACTATCGGCGAGTACTTC−3'
GD F:5'−GCGGATCCATGGTGCTCTCCAAGGCCGTCTC−3'
GD R:5'−GCGAATTCCTAGCAGACGCCGTTGGTCCTCTTG−3'
NOS MR:5'−GATAATCATCGCAAGACCGGCAAC−3'
Tub F:5'−GACGAGCACGGCGTTGATCCTA−3'
Tub R:5'−CCTCCTCTTCATACTCTTCCT−3'
【0072】
トランスジェニック植物における導入GAD遺伝子発現の確認
導入GAD遺伝子発現の確認は、RNA抽出、cDNA合成、および逆転写PCRのような工程を含んだ。
【0073】
対照植物(野生型)とともにトランスジェニックGADタバコ植物のRNAを単離した。
【0074】
RNA抽出に関わる詳細な工程:
1.500mgの葉組織を予冷した乳鉢にとり、液体窒素中ですりつぶして、細かい粉末にした。
2.冷やしたスパチュラを用いて、粉末を予冷したエッペンドルフチューブに移した。
3.ホモジナイズした試料に1mlのTrizol溶液を加えた。よく混合し、室温(RT)で5分間インキュベートした。
4.これに200μlのクロロホルムを加え、15秒間激しく振盪させ、室温で5分間インキュベートした。
5.試料を13000rpmで15分間、4℃にて遠心分離した。
6.上部の水相を新しいチューブに回収した(約60%、すなわち、600μl)。
7.回収した上部相に500μlの冷イソプロパノールを加え、RTで10分間インキュベートした。
8.試料を13000rpmで15分間、4℃にて遠心分離した。
9.上清をデカントで捨て、ペレットを500ulの70%アルコール(DEPC H2O)で洗浄し、10000rpmで5分間、4℃にて遠心分離した。
10.上清をデカントで捨て、ペレットをRTで15分間乾燥させた。
11.ペレットを、55℃に設定された加熱式のウォーターバスまたはドライバス中で20μlのDEPC処理H2Oに溶かした。
12.2μlの試料をゲルに充填した。試料をさらに使用するまで−80℃で保存した。
【0075】
cDNA合成に関わる詳細な工程:
野生型とともにトランスジェニックGADタバコ植物のcDNA合成を行なった。
1.構成要素を以下に示す順序で加えた。
トータルRNA :4ul(1ug)
オリゴdT :0.5ul
0.1%DEPC/ヌクレアーゼフリー水 :6.5ul
合計 :11ul
2.内容物を70℃で5分間、PCR装置で加熱し、氷中で素早く冷却した。
3.一方、以下の構成要素を別のチューブに加えることにより、次の混合物を調製した。
5×反応バッファー :4ul
dNTP(10mM) :2ul
RNアーゼ阻害剤(20U/ul) :0.5ul
0.1%DEPC/ヌクレアーゼフリー水 :2ul
合計 :8.5ul
4.この8.5ulの混合物を、素早く冷却したPCRチューブ中の内容物に加え、穏やかにタッピングして混合した。
5.内容物を、PCRチューブ中、37℃で5分間、PCR装置でインキュベートした。
6.0.5ulのM−MuLV RT酵素をチューブに加え、PCR装置で設定されたプログラムを継続した(25℃、10分;37℃、60分、および70℃、10分)。
7.PCRでさらに使用するまでcDNAを−20℃で保存した。
【0076】
RT−PCRによるトランスジェニックタバコ植物における導入GAD遺伝子発現の解析
タバコにおける導入GAD遺伝子の発現をチェックするために、GADトランスジェニックタバコおよび野生型植物由来のcDNA試料を、遺伝子特異的プライマーを用いるPCRで解析した。
【0077】
遺伝子特異的プライマーを用いるcDNAのPCR:
【0078】
【表7】
PCR条件:(エッペンドルフ装置)
【0079】
【表8】
図4に示すように、増幅産物を0.8%アガロースゲルで可視化した。
【0080】
実施例3
変化したGAD遺伝子を有する植物がT0世代で変化した植物構造を有する証拠
植物材料
野生型植物とT0トランスジェニックタバコ植物を用いて実験を行なった。苗を、温室で、野外土壌の混合物を含む植木鉢の中で栽培した。肥料の外部適用なしに、植物に普通の水をやった。土壌に混合したFYMが植物にとっての唯一の栄養源としての役割を果たした。
【0081】
葉の大きさ
葉の大きさをトランスジェニック植物と野生型植物(導入されたグルタミン酸デカルボキシラーゼ遺伝子を持たない植物)で測定した。T0トランスジェニック植物の葉の大きさは、対照植物の葉と比較したとき、より大きかった。葉の大きさは、対照よりも少なくとも20%大きく増加したが、葉の大きさの最大増加は、野生型植物を160%上回るものであった(表1および図5)。
表1:野生型植物とT0 GADタバコトランスジェニック植物の葉の大きさの比較
【0082】
【表9】
【0083】
実施例4
変化したGAD遺伝子を有する植物がT1世代で変化した植物構造を有する証拠
植物の全生活環を含む成熟植物段階での植物構造の変化を評価するために、トランスジェニック植物の表現型をT1世代で検討した。
【0084】
温室での植木鉢培養で植物構造の変化を評価するために、3つのトランスジェニック事象D1A、E2、およびH1を選択した。野生型タバコとトランスジェニックタバコを用いて実験を行なった。ハイグロマイシン(50mg/L)が補充された湿った濾紙盤の上でT1種子を発芽させ、この上で発芽し、成長した陽性苗を選択し、野生型の苗とともに大きい植木鉢(11インチ直径)の土壌の上に置いた。苗を温室で、野外土壌と堆肥(FYM)の混合物を含む植木鉢の中で栽培した。植物に普通の水または生理食塩水(200mM NaCl)をやった。表1に示すように4つの遺伝子型(野生型とD1A、E2、およびH1トランスジェニックタバコ)を用いて3つの複製を伴って実験を行なった。
表1:植物構造の変化を評価するための実験設計。比較のために、3つの複製と4つの遺伝子型を用いた。
【0085】
【表10】
【0086】
表現型評価:
表現型の特徴を観察し、草高、節間距離、枝の数、葉の数、葉面積、茎の太さ(周囲長)、総バイオマス、穀粒収量などのような、植物構造に寄与するパラメータを記録した。
【0087】
草高
トランスジェニック植物と野生型植物(導入されたグルタミン酸デカルボキシラーゼ遺伝子を持たない植物)で植物の高さを測定した。定規を用いて地面から花と枝を含む植物の先端までの草高を測定した。3つの事象由来のトランスジェニック植物は、野生型植物と比較してより高い草高を示した(図6)。少なくとも10%の草高の増加があり(H1)、最大23%の草高の増加(D1A)が観察された。
【0088】
節間距離
トランスジェニック植物と野生型植物(導入されたグルタミン酸デカルボキシラーゼ遺伝子を持たない植物)で茎上の2つの節間の距離を測定した。第5および第6葉と第6および第7葉の間で節間距離を測定した。完全に広がった葉を葉番号1とみなして、先端から葉を計数した。スレッドを用いて距離を測定し、その後、定規でスレッド長を測定して、cmで表した。トランスジェニック植物(H1)は、野生型と比較して少なくとも44%の節間距離の増加を示した(図7)。
【0089】
葉の数
トランスジェニック植物と野生型植物(導入されたグルタミン酸デカルボキシラーゼ遺伝子を持たない植物)で各植物の葉の数を計数した。トランスジェニック体は、野生型と比較して35%多い葉の数を示した(図8)。
【0090】
茎の周囲長(外周または茎の太さ)
トランスジェニック植物と野生型植物(導入されたグルタミン酸デカルボキシラーゼ遺伝子を持たない植物)で茎の太さを測定した。地面から5〜6cmの高さで茎の周囲長を測定した。スレッドを用いて、適当な高さで茎の周りを囲み、その後、定規でスレッドの長さを測定して、cmで表した。トランスジェニック体の茎は、野生型植物と比較して明らかにより太かった(図9)。トランスジェニック体では、茎が少なくとも28%太かったが、茎の太さは最大47%増加することができた(E2)。
【0091】
葉面積
トランスジェニック植物と野生型植物(導入されたグルタミン酸デカルボキシラーゼ遺伝子を持たない植物)で葉の大きさを測定した。葉を節から葉の先端まで垂直に測定し、葉の長さとみなした。トランスジェニック植物は、野生型植物よりも27%〜37%長い葉を有していた(図10a)。葉の幅を、最も幅が広い位置で水平に測定し、葉の幅とみなした。トランスジェニック植物は、野生型植物よりも42%〜65%幅広い葉を示した(図10b)。葉面積を長さ×幅(cm−2単位で表す)として計算した。野生型と比較して、トランスジェニック体の葉面積に有意な増加(80%〜129%)が見られた(図10c)。葉面積の増加は、試験した2つの世代(T0およびT1)にわたって安定であった。
【0092】
植物バイオマス
トランスジェニック植物と野生型植物(導入されたグルタミン酸デカルボキシラーゼ遺伝子を持たない植物)で生成されるバイオマスを測定した。植物バイオマスを植物の総乾燥重量として測定した。トランスジェニック体由来の総バイオマスは、野生型と比較して有意により多かった(22%〜88%)(図11)。これは、葉の大きさ、茎の太さなどのような、他の表現型特徴に増加が見られるという明白な事実によるものである可能性があった。
【0093】
穀粒収量
総穀粒収量は、野生型よりもトランスジェニック体で有意に多かった(最大50%多かった)(図12)。トランスジェニック植物由来の穀粒または種子はまた、より実っているかまたはサイズが大きかったが、これは、種子のより大きい試験重量によって示されている(図13)。
【0094】
要約すると、試験した3つ全ての事象由来のGADトランスジェニック植物は、陽性の変化した表現型または植物構造を示した。GADトランスジェニック植物は、植物の様々な農学的および生理学的状態について、野生型植物よりも優れた性能を発揮し、したがって、トランスジェニック植物の優れた性能の一因となる変化した植物構造に対するGAD遺伝子の役割が示された。
【0095】
配列番号1は、オリザ・サティバのグルタミン酸デカルボキシラーゼ遺伝子の核酸配列を示す。開始コドンと終止コドンは、イタリック体で示されている。
【0096】
配列番号2は、オリザ・サティバのグルタミン酸デカルボキシラーゼ遺伝子のアミノ酸配列を示す。アスタリスクは終止コドンを表す。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
変化した植物構造を示す形質転換植物を作製するための方法であって、機能的なグルタミン酸デカルボキシラーゼ(GAD)酵素をコードするヌクレオチド配列に機能的に連結された構成的または非構成的プロモーターを含むDNAコンストラクトを植物のゲノムに組み込むことを含む、方法。
【請求項2】
前記機能的なグルタミン酸デカルボキシラーゼ酵素をコードするヌクレオチド配列が配列番号1に示すヌクレオチド配列を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記プロモーターが、配列番号1に示すヌクレオチド配列に機能的に連結された構成的プロモーター、誘導性プロモーター、組織特異的プロモーター、および細胞型特異的プロモーターからなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記選択されたプロモーターが誘導性プロモーター由来であり、かつ機械的衝撃、暑さ、寒さ、塩、湛水、渇水、損傷、酸素欠乏、病原菌、紫外線B、栄養枯渇、開花シグナル、結実シグナル、細胞特化、およびそれらの組合せからなる群から選択されるシグナルに応答する、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
選択されたプロモーターが組織特異的プロモーター由来であり、葉、茎、根、花、花弁、葯、胚珠など、およびそれらの組合せからなる群から選択される植物組織で発現する、請求項3に記載の方法。
【請求項6】
選択されたプロモーターが細胞型特異的プロモーター由来であり、柔組織、葉肉、木部、師部、孔辺細胞、気孔細胞など、およびそれらの組合せからなる群から選択される植物細胞で発現する、請求項3に記載の方法。
【請求項7】
前記グルタミン酸デカルボキシラーゼ酵素が配列番号2に示すアミノ酸配列を含む、請求項2に記載の方法。
【請求項8】
前記配列番号2に示すアミノ酸配列が、グルタミン酸からγ−アミノ酪酸(GABA)への反応を触媒するのに効果的である、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記形質転換植物が、同じ種の形質転換されていない植物によって同じ条件下で発現されるGAD遺伝子のレベルよりも高いレベルで配列番号1に示すグルタミン酸デカルボキシラーゼ(GAD)遺伝子を発現する、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
標的植物が、単子葉植物、双子葉植物、穀草類、飼料作物、マメ科植物、豆類、野菜、果物、油糧種子、繊維作物、観賞用草花、園芸植物、薬用植物、および芳香植物からなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記DNAコンストラクトを植物のゲノムに組み込むことが、
I.宿主植物由来の細胞、組織、または器官を前記DNAコンストラクトで形質転換すること;
II.前記DNAコンストラクトを含む形質転換細胞、細胞カルス、体細胞胚、または種子を選択すること;
III.前記選択された形質転換細胞、細胞カルス、体細胞胚、または種子から全植物を再生すること;および
IV.ポリヌクレオチドを発現する再生された全植物を選択すること
を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
宿主植物由来の細胞組織または器官が、パーティクルガン、バイオリスティック、またはアグロバクテリウムを用いることにより伝達されるDNAコンストラクトで形質転換される、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
請求項1〜12に記載の得られた形質転換植物およびその子孫。
【請求項14】
前記配列番号1に示すDNAコンストラクトが、ヘテロ接合またはホモ接合の状態で植物に組み込まれている、請求項13に記載の形質転換植物。
【請求項15】
前記植物が、草高、節間距離、茎の太さ、葉の数、葉の大きさ、バイオマス、収穫可能な収量、およびそれらの組合せからなる群から選択される顕著に変化した植物構造の特徴を示す、請求項1〜14に記載の形質転換植物。
【請求項16】
前記植物が、顕著に増加した葉の数および/または葉の大きさを示す、請求項15に記載の形質転換植物。
【請求項17】
前記植物が、顕著により長いまたはより幅広い葉を示す、請求項16に記載の形質転換植物。
【請求項18】
前記植物が、顕著に増加したバイオマスを示す、請求項15に記載の形質転換植物。
【請求項19】
前記植物が、顕著に増加した収穫可能な収量を示す、請求項15に記載の形質転換植物。
【請求項20】
GAD酵素をコードするポリヌクレオチドに機能的に連結された構成的プロモーターを含むベクターで形質転換した植物、またはその子孫であって、前記植物が前記ポリヌクレオチドを発現し、前記植物が、形質転換されていない植物と比較して、顕著に改善された植物構造、草高、節間距離、茎の太さ、葉の数、葉の大きさ、バイオマス、収穫可能な収量、生殖機能、または他の形態学的もしくは農学的特徴を示す、植物、またはその子孫。
【請求項1】
変化した植物構造を示す形質転換植物を作製するための方法であって、機能的なグルタミン酸デカルボキシラーゼ(GAD)酵素をコードするヌクレオチド配列に機能的に連結された構成的または非構成的プロモーターを含むDNAコンストラクトを植物のゲノムに組み込むことを含む、方法。
【請求項2】
前記機能的なグルタミン酸デカルボキシラーゼ酵素をコードするヌクレオチド配列が配列番号1に示すヌクレオチド配列を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記プロモーターが、配列番号1に示すヌクレオチド配列に機能的に連結された構成的プロモーター、誘導性プロモーター、組織特異的プロモーター、および細胞型特異的プロモーターからなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記選択されたプロモーターが誘導性プロモーター由来であり、かつ機械的衝撃、暑さ、寒さ、塩、湛水、渇水、損傷、酸素欠乏、病原菌、紫外線B、栄養枯渇、開花シグナル、結実シグナル、細胞特化、およびそれらの組合せからなる群から選択されるシグナルに応答する、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
選択されたプロモーターが組織特異的プロモーター由来であり、葉、茎、根、花、花弁、葯、胚珠など、およびそれらの組合せからなる群から選択される植物組織で発現する、請求項3に記載の方法。
【請求項6】
選択されたプロモーターが細胞型特異的プロモーター由来であり、柔組織、葉肉、木部、師部、孔辺細胞、気孔細胞など、およびそれらの組合せからなる群から選択される植物細胞で発現する、請求項3に記載の方法。
【請求項7】
前記グルタミン酸デカルボキシラーゼ酵素が配列番号2に示すアミノ酸配列を含む、請求項2に記載の方法。
【請求項8】
前記配列番号2に示すアミノ酸配列が、グルタミン酸からγ−アミノ酪酸(GABA)への反応を触媒するのに効果的である、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記形質転換植物が、同じ種の形質転換されていない植物によって同じ条件下で発現されるGAD遺伝子のレベルよりも高いレベルで配列番号1に示すグルタミン酸デカルボキシラーゼ(GAD)遺伝子を発現する、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
標的植物が、単子葉植物、双子葉植物、穀草類、飼料作物、マメ科植物、豆類、野菜、果物、油糧種子、繊維作物、観賞用草花、園芸植物、薬用植物、および芳香植物からなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記DNAコンストラクトを植物のゲノムに組み込むことが、
I.宿主植物由来の細胞、組織、または器官を前記DNAコンストラクトで形質転換すること;
II.前記DNAコンストラクトを含む形質転換細胞、細胞カルス、体細胞胚、または種子を選択すること;
III.前記選択された形質転換細胞、細胞カルス、体細胞胚、または種子から全植物を再生すること;および
IV.ポリヌクレオチドを発現する再生された全植物を選択すること
を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
宿主植物由来の細胞組織または器官が、パーティクルガン、バイオリスティック、またはアグロバクテリウムを用いることにより伝達されるDNAコンストラクトで形質転換される、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
請求項1〜12に記載の得られた形質転換植物およびその子孫。
【請求項14】
前記配列番号1に示すDNAコンストラクトが、ヘテロ接合またはホモ接合の状態で植物に組み込まれている、請求項13に記載の形質転換植物。
【請求項15】
前記植物が、草高、節間距離、茎の太さ、葉の数、葉の大きさ、バイオマス、収穫可能な収量、およびそれらの組合せからなる群から選択される顕著に変化した植物構造の特徴を示す、請求項1〜14に記載の形質転換植物。
【請求項16】
前記植物が、顕著に増加した葉の数および/または葉の大きさを示す、請求項15に記載の形質転換植物。
【請求項17】
前記植物が、顕著により長いまたはより幅広い葉を示す、請求項16に記載の形質転換植物。
【請求項18】
前記植物が、顕著に増加したバイオマスを示す、請求項15に記載の形質転換植物。
【請求項19】
前記植物が、顕著に増加した収穫可能な収量を示す、請求項15に記載の形質転換植物。
【請求項20】
GAD酵素をコードするポリヌクレオチドに機能的に連結された構成的プロモーターを含むベクターで形質転換した植物、またはその子孫であって、前記植物が前記ポリヌクレオチドを発現し、前記植物が、形質転換されていない植物と比較して、顕著に改善された植物構造、草高、節間距離、茎の太さ、葉の数、葉の大きさ、バイオマス、収穫可能な収量、生殖機能、または他の形態学的もしくは農学的特徴を示す、植物、またはその子孫。
【図1】
【図2a)】
【図2b)】
【図2c)】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2a)】
【図2b)】
【図2c)】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公表番号】特表2012−507263(P2012−507263A)
【公表日】平成24年3月29日(2012.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−518021(P2011−518021)
【出願日】平成21年7月7日(2009.7.7)
【国際出願番号】PCT/IB2009/006227
【国際公開番号】WO2010/007497
【国際公開日】平成22年1月21日(2010.1.21)
【出願人】(511013500)アヴェストハゲン リミテッド (4)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成24年3月29日(2012.3.29)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年7月7日(2009.7.7)
【国際出願番号】PCT/IB2009/006227
【国際公開番号】WO2010/007497
【国際公開日】平成22年1月21日(2010.1.21)
【出願人】(511013500)アヴェストハゲン リミテッド (4)
【Fターム(参考)】
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