説明

変圧器の冷却方法

【課題】 既存の電気設備に対して、腐食を招くことなく、必要に応じて簡便に配置・撤
去が容易にできる補助冷却方法を提供することを目的とする。
【解決手段】
変圧器本体10と放熱器28間を、配管19とポンプ51により冷却兼絶縁流体を循環し
て送風用ファン29により冷却する装置において、80ミクロン以下の粒子径のミスト1
7を発生させ噴霧するミスト発生装置35を冷却対象である前記放熱器28内の冷却フィ
ン31に噴霧した前記ミスト17が到達するまでに気化する程度に離隔して設置し、前記
ミスト発生装置35から噴霧された前記ミスト17の気化熱により冷却した空気18を、
前記送風用ファン29により前記冷却フィン部31に吹き付けて冷却する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地下変電所など特に屋内に設置される変圧器を、簡易な方法および装置で冷
却する変圧器の冷却方法およびその装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、変圧器の冷却設計に当たっては、「冷却容量>変圧器の損失量」の条件を満足
するようになされる。しかるに、変圧器の冷却には、変圧器本体とは別に放熱器を設けて
空気により自然冷却する方法、変圧器本体内の冷却兼絶縁油を放熱器へ強制的にまたは自
然に循環して空冷する方法、変圧器本体内の絶縁油を放熱器へ強制的に循環して水冷する
方法などがとられている。ところが、夏期の重過負荷時は、負荷電流による銅損が大きく
なり、また、気象条件(気温、風速など)、据付条件(騒音対策による隠蔽化)などによ
り、竣工時の冷却環境を維持することが困難な場合が多い。特に、日射の影響を受ける場
所に設置された電気設備は、気象条件の影響を受けやすい。また、騒音対策により隠蔽化
された電気設備や、変電所の建屋内に設置された電気設備の場合は、放熱器の風量低下が
著しく、そのため冷却容量が低下し冷却効果が低下する。そのため、所望の電気容量の確
保が困難となる場合や、電気設備(例えば、変圧器など)の内部材料の劣化を早め、電気
設備の寿命が短縮する恐れがあった。
【0003】
このような場合において、冷却効果を補うための最も簡便な方法としては、例えば、放
熱器の上方に散水装置を設け、タイマーなどによって所定時間毎に電磁弁を開き、散水ホ
ースに形成したノズルから冷却水を放熱器に散水する方法などがある(特許文献1第1図
参照)。
【0004】
また、変圧器本体に臨設した放熱器内の油温を流体温度センサで検知し、この検知温度
が設定値以上になることを条件として、冷却装置を起動させ、制御部で水ポンプを駆動す
るとともに、バルブを開き、タンクや水道管などの水源からの冷却水を散水して、「自然
冷却量+散水冷却量」により冷却容量を増大させて油温を冷却されるようにしたものがあ
る(特許文献2第10図参照)。
【0005】
また、図6のように、簡易な冷却方式を採用した屋内設置用の変圧器において、少ない
水量でより効果的に冷却できる冷却方法と装置を得ることを目的として、冷却水を自らの
水圧で噴射するノズルユニット15と圧搾空気で噴射水を霧状にするエア供給ユニット2
7とからなる冷却水噴射部34を設け、噴霧した100ミクロン程度の粒子径をもつ水と
この噴霧した水の気化熱の両方により冷却した空気を送風用ファン29により吸引して冷
却対象(この例では放熱器28内の冷却フィン部31)に吹き付け冷却するようにしたこ
とを特徴とする変圧器本体の冷却装置がある(特許文献2第2図参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2001―345218号公報
【特許文献2】特開平7―283034号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、特許文献1、または特許文献2の第10図などの方法によるものは、冷却水は
、水圧だけで噴射されるので、数百ミクロン以上もの大きな水の粒子が多数混在し、水の
粒子径の小さいものから大きいものまで広い範囲で分散してしまうので、電気設備の温度
の降下に直接寄与するものが少なく、空気中で気化せずに地上に落下してしまうのが大半
であった。そのため、冷却効果が低い。冷却水の散布量が多くなるという問題があり、ま
た、変電所によっては、水圧不足により冷却水の散布ができない場合があるという問題が
あった。更には、排水設備の関係から屋内用としては不適当であるという問題があった。
【0008】
すなわち、排水設備の関係からの問題とは、変圧器本体10が屋外設置型である場合に
は、変圧器本体10から流れ落ちる余分な水を排水溝などの簡便な装置で排水処理ができ
る。しかし、屋内設置型、特に地下変電所などでは、冷却作用後の水の貯溜タンクを作っ
たり、それを地上に汲み上げたりするなどの極めて面倒で、大型の装置を必要とするとい
う問題がある。
【0009】
また、特許文献2の第2図の装置は、噴霧した水と、この噴霧した水の気化熱により冷
却した空気との両方を送風用ファン29により吸引して冷却フィン部31に吹き付け冷却
するようにしているため、送風用ファン29や放熱器28内の冷却フィン部31に水滴が
付着する。付着した水滴は気化することによって電気設備の冷却効果を発揮するが、一方
で、設備の腐食を招くという問題を生じさせる。
【0010】
また、送風用ファン29や放熱器28内の冷却フィン部31に付着した水滴が気化しな
かった場合は、地上に落下してしまうので、簡便ではあるが排水処理の設備が必要となっ
たり、コンクリートなどの床材が濡れて、床材の劣化を招く恐れがあった。
【0011】
更に、噴霧した水と、この噴霧した水の両方を送風用ファン29に吸引させ直接冷却フ
ィン部31に吹き付けるためには、送風用ファン29の近傍に電機機器とほぼ一体となる
ような状態で冷却水噴射部34を設置する必要があった。そのため、装置の据付工事や固
定位置の変更を行う場合は、電気設備(例えば変圧器)の運転を一旦停止して実施しなけ
ればならず、装置の取り付け工事が非常に面倒であると共に、運転の停止により変圧器の
稼働率が低下してしまう要因となっていた。しかも、電気設備の運転を一旦停止するには
、当然のことながら、運転停止の手続きが必要となり、また、検電・接地等の作業労力を
要するものとなっていた。加えて冷却水を噴射する冷却水噴射装置に接続されている冷却
水の通り道である配管は、長さが約3m〜4m程度であり、長尺であることから、電気設
備の周辺における工事が、非常に危険な作業となっていた。更に、電気設備に冷却装置が
一体的に固定されるため、冷却装置を撤去してその設置位置を変えることが容易ではない
構造であるいう問題もあった。
【0012】
そこで本発明の目的は、既存の電気設備に対して、腐食を招くことなく、必要に応じて
簡便に配置・撤去が容易にできる補助冷却方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
このような課題を解決するため、本発明である冷却方法では、
変圧器本体と放熱器間を、配管とポンプにより冷却兼絶縁流体を循環して送風用ファンに
より冷却する装置に対して、ミストを発生させ噴霧するとともに噴霧した前記ミストが前
記放熱器内の冷却フィン部に到達するまでに気化する程度に離隔してミスト発生装置を設
け、前記ミスト発生装置から噴霧された前記ミストの気化熱により冷却した空気を前記送
風用ファンにより前記冷却フィン部に吹き付けて冷却するようにした。
【0014】
また、本発明である冷却装置では、変圧器本体と放熱器間を、配管とポンプにより冷却
兼絶縁流体を循環して送風用ファンにより冷却する装置に対して、
前記送風用ファンに対して前記放熱器内の冷却フィン部と反対側にミストを発生させ噴霧
するとともに噴霧した前記ミストが前記放熱器内の前記冷却フィン部に到達するまでに気
化する程度に離隔してミスト発生装置を設け、
前記ミスト発生装置から噴霧された前記ミストの気化熱により冷却した空気を前記送風用
ファンにより吸引して前記冷却フィン部に吹き付け冷却するようにした。
【0015】
また、本発明である冷却方法では、前記ミスト発生装置は、80ミクロン以下の微粒子
の前記ミストを発生させるようにした。また、本発明である冷却方法では、前記ミスト発
生装置は、前記放熱器を設置した建屋の吸気口近傍に設置するようにした。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、ミスト発生装置によって噴霧されたミストが気化することで冷却され
た空気を送風ファンを用いて冷却フィン部に吹き付けることによって冷却するため、水滴
が電気設備に付着することがないことから、腐食を招くことなく冷却することが可能とな
る。
【0017】
また、ミスト発生装置を可搬型とすれば、既存の屋内設置用の電気設備に対して、必要
に応じて簡便に配置・撤去が容易にできるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明による変圧器の冷却方法の第1実施例を示す説明図
【図2】本発明による変圧器の冷却方法の第2実施例を示す説明図
【図3】本発明による変圧器の冷却方法の第3実施例を示す説明図
【図4】本発明による変圧器の冷却方法の第4実施例を示す説明図
【図5】本発明による変圧器の冷却方法の第5実施例を示す説明図
【図6】従来技術による変圧器の冷却方法を示す説明図
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明を実施するための最良の形態を図面を参照しつつ説明する。
【0020】
図1において、10は、地下変電所の配電用などとして屋内に設置されている変圧器本
体である。この変圧器本体10の高温出口20と低温入口21とに、変圧器本体10の冷
媒兼絶縁流体としての油を循環するための配管19が連結され、この配管19は、高温出
口20から2台の放熱器28に導かれるように途中で分岐し、各放熱器28の冷却フィン
部31を通過後に、再び連結されて前記低温入口21に戻る。また、この配管19にはポ
ンプ51が設けられて、冷媒兼絶縁流体を強制的に循環するようになっている。
【0021】
なお、冷媒兼絶縁流体は、以下の実施例では油の場合を例とするが、電機絶縁ガスや、
その他の流体が用いられる場合であってもよい。また、図1では、1台の変圧器本体10
に2台の放熱器28に連結して、夏期など過負荷時には2台を駆動し、冬期など軽負荷時
には1台を駆動するようにしたが、これに限られず、1台の変圧器本体10を3台以上の
放熱器28に連結して負荷の大小に応じて台数を制御するするようにすることも、複数台
の変圧器本体10を大型の1台または2台以上の放熱器28に連結するようにしてもよい

【0022】
前記放熱器28内には、冷却フィン部31が設けられ、また、一側部には、整流金網3
0が設けられ、この整流金網30と前記冷却フィン部31との間には、送風用ファン29
が設けられている。前記放熱器28の他側部の開口部分は、壁部32の排気口33に臨ん
でいる。そして、この送風用ファン29により空気は、冷却フィン部31との熱交換後、
排気口33に抜けるように構成されている。なお、図1において、実線の矢印は空気を、
一点破線および一点波線矢印はミストを示している(なお、破線矢印は、冷媒兼絶縁流体
の流れの向きを示す)。
【0023】
前記整流金網30の外側にミスト発生装置35が設けられている。このミスト発生装置
35は、所定の間隔で1個もしくは複数個のノズルユニット26が設けられている。なお
、図1の例では、前記整流金網30の外側にミスト発生装置35のノズルユニット26が
設けられているが、前記整流金網30の内側に設けてもよい。また、前記整流金網30を
省略しても良い。
【0024】
ミスト発生装置35には、冷却水配管22を通じてバルブ13を介して水道管、タンク
などの水源16に連結されている。そして、ミスト発生装置35が起動すると、ノズルユ
ニット26から80ミクロン以下、好ましくは、10〜30ミクロンの粒子となってミス
ト17が噴霧される。なお、粒子径は小さいほど気化しやすいので冷却効果も増大する。
ミスト発生装置35のノズルユニット26から噴霧されたミスト17は、空気中で気化す
ることで、空気18を冷却し、空気18の温度下げる。この冷却された空気18を送風フ
ァン29により冷却フィン31に吹きつけることによって冷却フィン31を冷却する。
【0025】
変圧器の油温は、「稼動による温度上昇+外部の気温」で定義されるが、本発明では、
冷却対象の外部の気温を下げることによって変圧器の油温を下げる。また送風ファン29
により、噴霧されるミスト17を完全に気化させた状態で冷却フィン31にミスト17に
よって冷却された空気18を吹き付けることから、冷却フィン31に水滴がつくことがな
くなる。そのため、水滴がつくことによる電気設備の部材の腐食や劣化を防ぐことができ
るようになる。また、ミスト17によって冷却をしてない空気を冷却フィン31によって
単に吹き付けるよりも冷却効果は高くなる。
【0026】
噴霧したミストが前記放熱器28内の冷却フィン部31に到達するまでに気化する程度
に離隔する方法は、目視によるものでもよい。また、冷却対象(例えば冷却フィン部31
)のミスト発生装置側に板(金属板などが好ましい)を配置し、水滴の付着の有無を観察
することでも気化の状態を調べることは可能である。
【0027】
またミストの粒子径は隔離すれば、ミストは気化され水滴が冷却フィン部31に付着す
ることがなくなる。よって、ミストの粒子径は100ミクロン程度のものであってもよい
が、床面をぬらさないようにするためには、噴霧してから床面に到着するまでに完全に気
化することが求められる。その観点からみて、噴霧する力(ミストが上方へ飛び出す力)
を考慮すると、80ミクロン程度以下の粒子径としたほうが好ましい。また、ミスト発生
装置35と放熱器28との離隔を、従来技術と同等の距離とした場合、粒子径が40ミク
ロンのミストが、整流金網30に到達する時点では10ミクロン程度に小さくなることが
観察された。また、粒子径10、20、30ミクロン以下の場合は、冷却フィン部31に
水滴は付着しなかった。 図1の例では送風用ファン29にはミスト17とミスト17で
冷却された空気18とが混合した形で通過しているが、送風用ファン29にも水滴が付着
しないようにする面から、粒子径は30ミクロン程度以下であることが望ましい。また、
粒子径は小さい方が気化しやすく、より少ない水量で冷却効果が高くなる面からも、ミス
トの粒子径は10〜30ミクロン程度であることがより好ましい。
【0028】
図2の例は、放熱器28内に設けられる送風用ファン29が、放熱器28の開口部分側
に存在する場合の例である。この場合は、ミスト発生装置35のノズルユニット26から
噴霧されたミスト17が空気中で気化することで冷却された空気18は送風ファン29に
より吸引され、冷却フィン31に吹きつけられる。そして、空気は冷却フィン部31との
熱交換後、排気口33に抜けるように構成される。
【0029】
図3の例は、図1において横方向に空気が流入させる機器の配置を、縦方向(画面下部
から上部)に空気を流入させるように配置した例である。すなわち、図3において、前記
放熱器28内には、冷却フィン部31が設けられる。また前記放熱器28の下方側の一側
部には、整流金網30が設けられ、この整流金網30と前記冷却フィン部31との間には
、送風用ファン29が設けられる。また、前記放熱器28の上方側の他側部の開口部分は
、壁部32の排気口33に臨んでいる。そして、この送風用ファン29により空気は、冷
却フィン部31との熱交換後、排気口33に抜けるように構成されている。
【0030】
前記整流金網30のの下方側の外側にミスト発生装置35が設けられる。そして、ミス
ト発生装置35が起動すると、ノズルユニット26からミスト17は、80ミクロン以下
、好ましくは、10〜30ミクロンの粒子となって噴霧される。なお、粒子径は小さいほ
ど気化しやすいので冷却効果も増大する。ミスト発生装置35のノズルユニット26から
噴霧されたミスト17は、空気中で気化することで、空気を冷却し、空気の温度を下げる
。この冷却された空気18を送風ファン29により冷却フィン31に吹きつけることによ
って冷却フィン31を冷却する。
【0031】
なお図3の例では、送風用ファン29にはミスト17とミスト17で冷却された空気1
8とが混合した形で通過しているが、送風用ファン29にも水滴が付着しないようにする
と腐食防止の観点からより望ましい。
【0032】
図4の例は、前記放熱器28内に設けられる送風用ファン29が、前記放熱器28の上
方側にある開口部分側に存在する場合の例である。この場合は、ミスト発生装置35のノ
ズルユニット26から噴霧されたミスト17が空気中で気化することで冷却された空気1
8は、送風ファン29により吸引され、冷却フィン31に吹きつけられる。そして、空気
は冷却フィン部31との熱交換後、排気口33に抜けるように構成される。
【0033】
なお、冷却フィン31との熱交換によって暖められた空気は単位体積あたりの重量が軽
くなり、上部へ自然と移動し、上部に設けられた排気口33から排出される。よって、自
然の空気の流れが生じるため、図3、図4の配置は、図1、図2より好ましい。
【0034】
図5の例は、ミスト発生装置35を冷却する対象が設置された建屋の吸気口36の近傍
に配置したときの例である。この場合は、ミスト発生装置35を建屋の吸気口36の近傍
に配置することで、建屋に取り入れた空気を速やかにミスト発生装置から噴霧されるミス
ト17によって冷却する。これにより、建屋内部の空気全体の温度がさがることによって
、「稼動による温度上昇+外部の気温」で定義される変圧器の油温を下げる、この例にお
いては、送風用ファン29を設けているが設けなくてもよい。また、送風用ファン29を
、図4の例のように放熱器28の上方に配置してもよい。また、放熱器28、送風用ファ
ン29、排気口33の配置を、図1や図2の例のようにしてもよい。
【0035】
また、ミスト発生装置35は過般型のものを採用すると、より簡便にミスト発生装置3
5が配置できるのでより好ましい。そのようなミスト発生装置35として、例えば、株式
会社鎌倉製作所製の「ミストGYM(型式MG−404)」、株式会社福田屋製の「レイ
ンボーミスト(型式WM−500)」、オリジン工業株式会社製の「ミスト発生装置 ワ
イドクール(型式SPT−25006W)」、スーパー工業株式会社製の「スーパーエコ
クール(型式SFJ−1002)」などがある。
【0036】
図5の例のように、建屋の吸気口にミスト発生装置35を配置する場合は、建屋内の空
気全体を冷却することができるので、ミスト発生装置35と冷却対象物との配置を調整す
る手間が省けて好ましい。
【0037】
本発明によれば、ミスト発生装置によって噴霧されたミストは、空気中で完全に気化し
、これにより冷却された空気によって放熱器の冷却が行われることとなる。よって、放熱
器内の冷却フィン部に水滴が付着することがなくなり、設備の腐食を招くという問題が解
消される。
【0038】
また、冷却対象である電気設備(例えば変圧器の放熱器など)に水滴が付着することが
ないので、地上に落下する冷却水がなくなり、排水処理の設備が不要となる上、コンクリ
ートなどの床材が濡れることもないので、床材の劣化を生じさせないという効果もある。
【0039】
更に、従来では、噴霧した水と、この噴霧した水の両方を送風用ファンに吸引させ直接
冷却フィン部に吹き付ける必要があったため、送風用ファンの近傍に電気設備とほぼ一体
となるような状態で冷却水噴射部を設置する必要があった。しかし、本発明の場合は、ミ
スト発生装置から噴霧されるミストが、冷却フィン部に到達する前に完全に気化すること
が必要であるため、一定の距離を設ける必要がある。よって、装置の据付工事や固定位置
の変更を行う場合では、電気設備(例えば変圧器)とは離れて作業をすることができるた
め、電気設備の運転の停止が必要なくなる。よって、装置の取り付け工事が簡便となるう
え、変圧器の稼働率の低下も生じない。更に、電気設備の運転の停止を伴わないため、運
転停止の手続きや検電・接地等の作業労力も必要がなくなる。
【0040】
また、ミスト発生装置への冷却水の配管の設置も、電気設備とは離れた場所で行えるた
め、作業の危険性が小さくなる。また、冷却対象の外部の気温を下げることができればよ
いから、電気設備にミスト発生装置を一体的に固定する必要はない。そのため、冷却装置
を撤去してその設置位置を変えることが容易となる。ミスト発生装置を可搬型のものとす
れば、更に設置、撤去の対応がより簡便となることは言うまでもない。
【0041】
ミスト発生装置を電気設備を配置する建屋の吸気孔付近に配置すれば、吸気された空気
をすぐに冷却することができるようになる。建屋内に取り入れられる空気が常に冷却され
ることとなるため、これにより建屋の内部全体の温度を下げることが可能となる。変圧器
の油温は、「稼動による温度上昇+外部の気温」で定義されることから、このような位置
にミスト発生装置を配置することで、電気設備の配置場所や、電気設備とミスト発生装置
との相対的な位置関係に係らず、建屋の内部の温度(変圧器の外部の気温)が全体として
低下することによって冷却効果が得られるという効果もある。
【0042】
上記実施の例においては、屋内に設置された電気設備を冷却するための実施例を述べた
が、建物の外部に配置された場合においても、本発明によって一定の冷却効果が得られる
ことは言うまでもない。
【符号の説明】
【0043】
10…変圧器本体
13…バルブ
16…水源
17…ミスト
18…空気
19…配管
20…高温出口
21…低温入口
22…冷却水配管
26…ノズルユニット
28…放熱器
29…送風用ファン
30…整流金網
31…冷却フィン部
32…壁部
33…排気口
35…ミスト発生装置
36…吸気口
51…ポンプ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
変圧器本体と放熱器間を、配管とポンプにより冷却兼絶縁流体を循環して送風用ファンに
より冷却する装置において、
ミストを発生させ噴霧するとともに噴霧した前記ミストが前記放熱器内の冷却フィン部に
到達するまでに気化する程度に離隔してミスト発生装置を設け、
前記ミスト発生装置から噴霧された前記ミストの気化熱により冷却した空気を前記送風用
ファンにより前記冷却フィン部に吹き付けて冷却するようにしたことを特徴とする変圧器
体の冷却方法。
【請求項2】
変圧器本体と放熱器間を、配管とポンプにより冷却兼絶縁流体を循環して送風用ファンに
より冷却する装置において、
前記送風用ファンに対して前記放熱器内の冷却フィン部と反対側にミストを発生させ噴霧
するとともに噴霧した前記ミストが前記放熱器内の前記冷却フィン部に到達するまでに気
化する程度に離隔してミスト発生装置を設け、
前記ミスト発生装置から噴霧した前記ミストの気化熱により冷却した空気を前記送風用フ
ァンにより吸引して前記冷却フィン部に吹き付け冷却するようにしたことを特徴とする変
圧器本体の冷却方法。
【請求項3】
請求項1または請求項2のいずれか1項に記載の変圧器本体の冷却方法において、前記ミ
スト発生装置は、80ミクロン以下の粒子径の前記ミストを発生させることを特徴とする
変圧器本体の冷却方法。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の変圧器本体の冷却方法において、前記ミス
ト発生装置は、前記放熱器を設置した建屋の吸気口近傍に設置されることを特徴とする変
圧器本体の冷却方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−219185(P2010−219185A)
【公開日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−62343(P2009−62343)
【出願日】平成21年3月16日(2009.3.16)
【出願人】(000003687)東京電力株式会社 (2,580)
【Fターム(参考)】