説明

変圧器

【課題】絶縁媒体の圧力変動を受けにくく、信頼性の高い小型の流れ検出器を備えた変圧器を提供する。
【解決手段】本発明は、変圧器の流れ検出器に特徴を有する。この流れ検出器9は、絶縁媒体上流側に入口配管91が、下流側に出口配管92が、冷却配管7の流路側に突出して設けられている。測定室93は、前記分岐部Bに収められており、入口配管91と出口配管92とはこの測定室93から流路側に突き出すように設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、SF6 ガス、窒素ガス、炭酸ガス、空気などの絶縁冷却ガスをブロアにより循環させて冷却を行うガス絶縁変圧器、あるいは変圧器油をポンプにより循環させて冷却を行う油入変圧器に係り、特に絶縁冷却媒体の流れ検出手段の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の変圧器の構成を図8および図9を用いて説明する。タンク1内にけい素鋼板を積層した鉄心2と、この鉄心2の主脚に巻回された巻線3からなる機器本体が絶縁媒体4とともに収納されている。また、タンク外部に絶縁媒体4を冷却するための冷却器5と、絶縁媒体4を循環するためのブロアあるいはポンプなどからなる循環装置6が設置され、タンク1と冷却器5および循環装置6の間に絶縁媒体を循環させるための冷却配管7が設けられている。さらに、冷却配管7の途中に流れ指示器8が設けられており、配管内の絶縁媒体の流れを検出するようになっている。
【0003】
ここで、流れ指示器8の詳細を図9に示す。流れ指示器8は、冷却配管7の側壁部分に突出した分岐部Bに設けられており、回転軸81と、羽根板82と、回転検出部83とからなる。この回転軸81は、回転検出部83から冷却配管7の絶縁媒体の流路内に突き出して設けられ、この回転軸81の先に羽根板82が取付けられている。そして、絶縁媒体の流れが発生することによりこの羽根板82が押されて回転軸の回転角度が変化し、この角度を回転検出部83により検出して表示あるいは信号出力として取り出す。
【0004】
絶縁媒体の流れがない場合は、羽根板の位置が図示しないバネなどにより初期回転位置に復帰するように設定されている。これにより絶縁媒体の流れの有無が判別でき、また、羽根板の大きさやバネ力の設定により概略の流量を測定することも可能となっている。
【特許文献1】特開平8−166264号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、このような流れ指示器においては、流れの中に羽根板があるため、絶縁媒体の流速変動や圧力変動を直接受けることになる。このため、羽根板の振動の発生原因になったり、羽根板や回転軸が破損することなどが考えられ、強固に羽根板および回転軸を製作する必要があった。
【0006】
一方で、羽根板や回転軸の強度を上げれば必然的にこれらの重量が重くなるので、動きをスムーズにするためには羽根板を大きく設計することになり、却って受ける圧力がさらに大きくなってしまう。
【0007】
また、配管内部の流速分布は均一でない場合が多く、平均的な流れ、すなわち精度の良い流れを検出しようとすると羽根板をやはり大きく設計する必要も生じていた。この点からも羽根板や回転軸を強固に製作する必要が生じていた。
【0008】
さらに、絶縁媒体の流路に羽根板や回転軸を配置することにより、わずかではあるが圧力損失が増大することになり、特にガス絶縁変圧器のブロアの場合はガス流量が減少してしまうという課題もあった。
【0009】
また、回転軸が絶縁媒体の流れに対して直角であるため、垂直配管の高い位置などに取り付けてしまうと回転検出部の表示が地面から確認できなくなる。このように、メンテナンスの面からみて取り付け位置が制約されていた。
【0010】
本発明は、上記のような従来技術の問題点を解決するために提案されたものであり、その目的は、絶縁媒体の圧力変動を受けにくく、信頼性の高い小型の流れ検出器を備えた変圧器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するため、本発明は、けい素鋼板を積層した鉄心と、前記鉄心の主脚部分に銅線を巻回してなる巻線を絶縁媒体と共にタンクに収納し、タンク外部に絶縁媒体を冷却するための冷却器と、この絶縁媒体を循環させるための循環装置とこれらを接続する冷却配管と、前記冷却配管内の絶縁媒体の流れを検出する流れ検出器とを備えた変圧器において、前記流れ検出器は、前記絶縁媒体の流れを検出するセンサを有する測定室と、前記冷却配管内部に、この冷却配管内部を流れる絶縁媒体を前記測定室へ導く流入口と、前記測定室から前記冷却配管に絶縁媒体を戻す流出口と、を備え、前記測定室内には、前記流入口より流入する絶縁媒体の流れにより動く板状体と、前記板状体の動く方向を検出するセンサとを備えたことを特徴とする。
【0012】
このような本発明によれば、絶縁媒体の流れを流入口により測定室に導くことで流速変動や圧力変動が緩和されると共に、流れに応じて動く板状体と板状体の動きを検出するセンサにより流れの向きが確認できる。すなわち、簡単な構成で精度良く流れを検出できる。
【発明の効果】
【0013】
本発明の変圧器によれば、冷却配管内部を流れる絶縁媒体を前記測定室へ導く流入口と、前記測定室から前記冷却配管に絶縁媒体を戻す流出口とを設け、絶縁媒体の流れや圧力を測定室に導くと共に、測定室内にセンサを設置して絶縁媒体の流れを検出するようにしたので、絶縁媒体の圧力変動を受けにくく、信頼性が高く、簡単な構成で精度良く流れを検出できる流れ検出器を備えた変圧器を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明に係る代表的な実施形態について、図1〜図7を参照して具体的に説明する。
【0015】
(1)第1の実施形態
[構成]
本発明の第1の実施形態における変圧器は、図1に示すように、タンク1内に、けい素鋼板を積層した鉄心2と、この鉄心2の主脚に巻回された巻線3からなる機器本体が絶縁媒体4とともに収納されて構成されている。また、タンク外部に絶縁媒体を冷却するための冷却器5と、絶縁媒体を循環するためのブロアあるいはポンプからなる循環装置6が設置され、タンク1と冷却器5と循環装置6との間に絶縁媒体を循環させるための冷却配管7が設けられている。さらに、流れ指示器8が、冷却配管7の側壁部分に突出した分岐部Bに設けられ、この分岐部Bに流れ検出器9が設けられており、配管内の絶縁媒体の流れ検出を行っている。
【0016】
この流れ検出器9について図2を参照して具体的に示す。同図に示すように、絶縁媒体上流側に入口配管91が、下流側に出口配管92が、冷却配管7の流路側に突出して設けられている。測定室93は、前記分岐部Bに収められており、入口配管91と出口配管92とはこの測定室93に設けられた流入口及び流出口から流路側に突き出すように設けられている。
【0017】
この入口配管91と出口配管92とは、ともに略S字形で絶縁媒体の流路に平行な搬送部91a,92aを備え、両端部に冷却配管7における絶縁媒体の流れ方向に垂直な流入部91b,92bと流出部91c,92cとを備え、この2つの配管は分岐部Bの軸に対して対称に配置されている。さらに具体的には、入口配管91は、流入部91bに絶縁媒体の流れ方向上流側に向いた開口部91dを備え、この開口部91dから搬送部91aを通って、測定室93内に設けられた流出部91cに、絶縁媒体の流れ方向下流側に向いた開口部91eを備える。
【0018】
一方、出口配管92は、この開口部91eと対向した位置に設けられた流入部92bに絶縁媒体の流れ方向上流側に向いた開口部92dを備え、この開口部92dから、搬送部92aを通って、流出部92cに、絶縁媒体の流れ方向下流側に向いた開口部92eを備える。また、この開口部91dと流入部92b近傍の配管内部にはメッシュ97が設置されている。
【0019】
対向して配置された開口部91eと開口部92dとの間には、ばね鋼からなる薄板94が片側固定された状態で設置されている。さらに、この薄板94を挟んで両側に金属製端子95が設置されている。また、測定室93の側壁に出力端子96が3つ配置され、薄板94と、2つの金属製端子95のそれぞれより導線にて接続されている。
【0020】
[作用効果]
以上のような構成からなる第1の実施形態において、冷却配管7内に絶縁媒体の流れが発生すると、この絶縁媒体の一部が、入口配管91の開口部91dへ流入し、搬送部91aを通って開口部91eから測定室93に流入する。これにより、この開口部91eから出口配管92の開口部91dへ向かう気流が発生する。
【0021】
この気流に押されて金属製の薄板94が動き、流れの向きに応じて、両側に設けられた金属製端子95のいずれかに接触する。これ基づき、出力端子96から薄板94といずれの金属製端子95が電気的な導通状態にあるかを検出することで、金属製薄板94がどちらに振れているか判別できる。これにより、絶縁媒体の流れの方向や循環装置6のON/OFF状態が確認できる。また、この金属製端子95にランプ等の電気の導通を視覚的に判定できる部材を接続することにより、絶縁媒体の流れの方向や循環装置6の稼動状態を判別することが可能となる。
【0022】
また、入口配管91と出口配管92の開口部近傍配管内にメッシュ97を設置しているが、これにより、冷却配管7の流速変動や圧力変動を抑えることができる。さらに金属製薄板94が、万一破損した場合でも破片が冷却配管側に流出せず、捕捉することができる。
【0023】
また、金属製薄板94は、ばね鋼などのばね性能をもつ金属で構成され、片側を固定されているが、流れに応じて薄板が曲がり、金属製端子に接触することで目的が達成されることになる。また、片側を回転軸とすれば、流れに応じて回転軸を中心に回転運動するようになり、やはり金属製端子に接触することになる。この場合、流れがない場合に薄板が中央位置に戻るようにばねなどを組込むことが望ましい。
【0024】
以上のような本実施形態によれば、絶縁媒体の圧力変動を受けにくく、簡単な構造で信頼性の高い小型の流れ検出器を備えた変圧器を得ることができる。
【0025】
(2)第2の実施形態
[構成]
本発明の第2の実施形態について、図3を参照して説明する。本実施形態の変圧器は、第1の実施形態同様、流れ検出器の構成に改良を加えたものであり、図3はその流れ検出器20の詳細を示す図である。なお、その他の変圧器の構成は第1の実施形態と同様であるので説明を省略する。また、第1の実施形態と同様の構成については同様の符号を付して説明を省略する。
【0026】
本実施形態の流れ検出器20は、図3に示すように、冷却配管7の側壁部分に突出した分岐部Bに設けられており、ここに測定室93が収められている。この測定室93には、測定室93の流入口に設けられた入口配管91と、測定室93の冷却配管7側の壁面に設けられ流出口に対して絶縁媒体の流れに対して開口部の面を平行にして冷却配管内に突出させている出口配管21が設置されている。
【0027】
入口配管91の開口部91eには、薄板22が片側を回転固定された状態で設置されている。この薄板22は、バネなどの弾性体の付勢力により、薄板22に外部から力が掛からない場合には、中央位置すなわち開口部91eの開口面と平行な位置に復帰するようになっている。
【0028】
開口部91eの開口略軸線上であって、薄板22を挟んで流れの下流側にセンサ23が設けられ、このセンサ23はスイッチとなっており、通常時はOFFとなり、薄板22が回転してセンサに当接することでONとなる。また測定室93の側壁に出力端子96が設けられ、センサ23から接続され、センサのONとOFFとを検出する。
【0029】
[作用効果]
以上のような構成からなる本実施形態では、冷却配管7内で絶縁媒体の流れが発生すると、入口配管91より測定室93に絶縁媒体が流入し、これが、出口配管21へと向かう流れが発生する。この絶縁媒体の流れに押されて薄板22が流れ方向、すなわちセンサ23の方向へ回転し、それによってセンサ23を押す。これにより、センサ23はONとなる。すなわち、絶縁媒体の流れがある場合には、センサ23がONとなり、流れがない場合には、薄板22は復帰状態にあるため、センサ23はOFFとなる。
【0030】
以上のようにしてセンサ23から接続された出力端子96によってセンサ23のON/OFFを検出することができる。これにより、流れの有無、すなわち循環装置6のON/OFF状態を検出できる。
【0031】
以上のような本実施形態によれば、絶縁媒体の圧力変動を受けにくく、簡単な構造で信頼性の高い小型の流れ検出器を備えた変圧器を得ることができる。
【0032】
(3)第3の実施形態
[構成]
本発明の第3の実施形態について、図4を参照して説明する。本実施形態の変圧器は、第1,2の実施形態同様、流れ検出器の構成に改良を加えたものであり、図4はその流れ検出器30の詳細を示す図である。なお、その他の変圧器の構成は上記各実施形態と同様であるので説明を省略する。また、上記各実施形態と同様の構成については同様の符号を付して説明を省略する。
【0033】
本実施形態の流れ検出器30では、図4に示すように、冷却配管7の側壁部分に突出した分岐部Bに設けられており、ここに測定室35が収められている。本実施形態の測定室35は、入口側Cと出口側Dとの2つの部屋に分かれている。
【0034】
この測定室35の冷却配管7側の流入口に、絶縁媒体の上流側に向いて開口部32を備えた入口配管31と、測定室35の冷却配管7側の流出口に下流側に向いて開口部34を備えた出口配管33とが設置され、これらの配管の反対側は測定室35内まで導かれている。入口配管31と出口配管33とは、L字型からなり、それらが分岐部Bの軸に対して対称に配置されている。
【0035】
入口配管31と出口配管33とがそれぞれ設置された測定室35の入口側Cと出口側Dとの間の連通部36には、薄板37が、片側を回転固定された状態で設置されている。この薄板37は、バネ等の弾性部材の付勢力により、外部から力が掛からない場合には、中央位置すなわち連通部36に重なる位置に復帰するようになっている。
【0036】
この薄板37の固定軸部分には、この薄板37の傾き角度を検出するセンサ38が設けられている。また、このセンサ38には、測定室35の側壁から外部に突出して設けられた出力端子96が接続されている。このセンサ38は、薄板37は流れがない場合に中央位置に戻るようにばねなどを組込んでいる。
【0037】
[作用効果]
以上のような構成からなる本実施形態では、冷却配管7内に絶縁媒体の流れが発生すると、入口配管31より測定室35の入口側Cに流入し、出口配管33から流出する流れが発生する。この流れに押されて薄板37が傾くことになる。これをセンサ38が検出し、出力端子よりその傾き角度を出力することで、流れの有無、すなわち循環装置6のON/OFFを検出することができ、さらに、流れに応じて角度が変わるため、冷却配管内の絶縁媒体の流速も間接的に検出することができる。
【0038】
以上のような本実施形態によれば、絶縁媒体の圧力変動を受けにくく、簡単な構造で信頼性の高い小型の流れ検出器を備えた変圧器を得ることができる。
【0039】
(4)第4の実施形態
[構成]
本発明の第4の実施形態について、図5を参照して説明する。本実施形態の変圧器は、上記各実施形態同様、流れ検出器の構成に改良を加えたものであり、図5はその流れ検出器40の詳細を示す図である。なお、その他の変圧器の構成は上記各実施形態と同様であるので説明を省略する。また、上記各実施形態と同様の構成については同様の符号を付して説明を省略する。
【0040】
本実施形態の流れ検出器40において、入口配管31並びに出口配管33の構成は、第3の実施形態と同様であるが、第3の実施形態における測定室に設けられた流入口又は流出口について本実施形態では、連通口と呼ぶ。本実施形態の特徴的な構成は、測定室41における入口配管31と出口配管33との中間位置に設けられた薄い隔壁42の構成である。
【0041】
すなわち、この隔壁42は、測定室41を2分し、入口側Eと出口側Fとに分けている。また、この隔壁42には、薄く形成されているため外部から力が掛かることにより、変形してひずみが発生するようになっており、このひずみを、隔壁42の中央部分に貼付されたひずみゲージ式センサ43で検出するようになっている。なお、出力端子96の構成は上記各実施形態と同様である。
【0042】
[作用効果]
以上のような構成からなる本実施形態では、冷却配管7内で絶縁媒体の流れが発生すると、入口配管31より測定室31に高い圧力が伝わり、出口配管から低い圧力が測定室31に伝わる。このため薄い隔壁42の両側で差圧が発生するので、隔壁42が変形し、ひずみが発生することになる。そのひずみ量を出力端子96から検出することで、流れの有無すなわち循環装置6のON/OFFだけでなく、流れに応じてひずみ量が変わるため、絶縁媒体の冷却配管内の流速・方向も間接的に検出することができる。
【0043】
以上のような本実施形態によれば、絶縁媒体の圧力変動を受けにくく、簡単な構造で信頼性の高い小型の流れ検出器を備えた変圧器を得ることができる。
【0044】
(5)第5の実施形態
[構成]
本発明の第5の実施形態について、図6を参照して説明する。本実施形態の変圧器は、上記各実施形態同様、流れ検出器の構成に改良を加えたものであり、図6はその流れ検出器50の詳細を示す図である。なお、その他の変圧器の構成は上記各実施形態と同様であるので説明を省略する。また、上記各実施形態と同様の構成については同様の符号を付して説明を省略する。
【0045】
本実施形態の流れ検出器50は、第4の実施形態の入口配管及び出口配管に代えて、測定室51の冷却配管7との境界面である側壁に、絶縁媒体の流れに対して面を平行にする入口穴52と出口穴53を設け、さらに、この入口穴52の下流側直近に、絶縁媒体の流れに対する板状の障害物54を設置したものである。その他の隔壁42,センサ43の構成は第4の実施形態と同様である。
【0046】
[作用効果]
以上のような構成からなる本実施形態では、冷却配管7内で絶縁媒体の流れが発生すると、障害物54の上流側で圧力が高まるため、入口穴52より測定室51内の入口側Eに高い圧力が伝わり、障害物54の下流側では圧力が下がるため、出口穴53から低い圧力が測定室の出口側Fに伝わる。
【0047】
このため薄い隔壁42の前後に差圧が発生するので、隔壁42が変形し、ひずみが発生することになる。そのひずみ量を出力端子96から検出することで、流れの有無すなわち循環装置6のON/OFFだけでなく、流れに応じてひずみ量が変わるため、絶縁媒体の冷却配管内の流速・方向も間接的に検出することができる。
【0048】
以上のような本実施形態によれば、絶縁媒体の圧力変動を受けにくく、簡単な構造で信頼性の高い小型の流れ検出器を備えた変圧器を得ることができる。
【0049】
(6)第6の実施形態
[構成]
本発明の第6の実施形態について、図7を参照して説明する。本実施形態の変圧器は、上記各実施形態同様、流れ検出器の構成に改良を加えたものであり、図7はその流れ検出器60の詳細を示す図である。なお、その他の変圧器の構成は上記各実施形態と同様であるので説明を省略する。また、上記各実施形態と同様の構成については同様の符号を付して説明を省略する。
【0050】
本実施形態の流れ検出器60は、図7に示すように、冷却配管7内に、上流側に開口部が向いた入口配管61と下流側に開口部が向いた出口配管62が設置され、これらの配管の反対側は流路を開閉自在なバルブ63を介して測定室64内まで導かれている。
【0051】
より具体的には、本実施形態の流れ検出器60は、入口配管61と出口配管62を備えた流入流出部Gと、バルブ63を備えたバルブ部Hと、測定室64を構成する測定部Iとの3つの部分からなり、それぞれの部分に分離可能になっている。
【0052】
測定部Iの構成は、第4,5の実施形態における測定室の構成と同様であり、測定部Iを2分するように、薄い隔壁42が設けられており、この薄い隔壁42にひずみゲージ式センサ43が貼りつけてある。なお、出力端子96の構成についても、上記各実施形態と同様である。
【0053】
[作用効果]
以上のような構成からなる本実施形態では、バルブ63が開いた状態で、冷却配管7内で絶縁媒体の流れが発生すると、入口配管61より測定室64に高い圧力が伝わり、出口配管62から低い圧力が測定室64に伝わる。
【0054】
このため薄い隔壁42の両側で差圧が発生するので、隔壁42が変形し、ひずみが発生することになる。そのひずみ量を出力端子96から検出することで、流れの有無すなわち循環装置6のON/OFFだけでなく、流れに応じてひずみ量が変わるため、絶縁媒体の冷却配管内の流速・方向も間接的に検出することができる。
【0055】
また、バルブ63を閉じることにより、測定部Iと冷却配管7とを隔離することができるので、測定部Iを取り外すことができる。したがって、検出器が故障した場合、変圧器や循環装置を停止させる必要はなく、運転中の状態でもバルブを閉じることで測定室を取り外すことが可能となり、修理や交換などのメンテナンスが容易に行える。なお、測定室にはドレーンバルブや真空引き用のバルブも付けると交換作業がより簡単になる。
【0056】
以上のような本実施形態によれば、絶縁媒体の圧力変動を受けにくく、簡単な構造で信頼性の高い小型の流れ検出器を備えた変圧器を得ることができる。
【0057】
(7)他の実施形態
本発明は、上記の各実施形態に示した実施態様に限らず、以下のような態様も広く含むものである。例えば、上記各実施形態では、冷却配管から絶縁媒体の流れ、あるいは圧力を測定室まで導く手段、流れあるいは圧力より角度や差圧をセンサで測定して絶縁媒体の流速や流れ方向・循環装置のON/OFFを検出する手段、メッシュやバルブなどの保護やメンテナンスのための手段などについては、実施形態ごとの組合せに限られず、適宜他の組み合わせによって構成することも可能である。
【0058】
第1の実施形態における変圧器の流れ検出装置において、例えば、入口配管91と出口配管92の開口部91d,91e,92d,92eの直径を小さくすることにより、冷却配管7の流速変動や圧力変動が測定室まで伝わりにくくなり、精度の良い検出が可能となるだけでなく、薄板94の振動が小さく抑えられ、破損しにくくなる。
【0059】
また、第1の実施形態における金属製端子は完全固定でなく、スプリングなどを組込み、伸縮するようにしたほうが薄板などとの振動や接触の衝撃を吸収できるので好ましい。
【0060】
第2の実施形態において、センサ23より幾分薄板22側にもう一つセンサを設けることにより、薄板22の回転についての中間出力が可能となる。これにより、例えば、中間センサがONとなるか、終端部分のセンサ23がONとなるかにより、薄板22の回転具合が検出することが可能となり、これに基づいて冷却配管7内の絶縁媒体の流速を間接的に求めることができるようになる。
【0061】
また、第2の実施形態では、センサを薄板22に対して、絶縁媒体の流れの下流側のみに設けているが、これに限られず、例えば、絶縁媒体の流れの上流側に増設することにより、逆向きの流れも検出できるようになる。また、出口配管は省略することも可能であり、冷却配管との境界面である測定室93の側壁に穴を設けることで代用できる。この場合、絶縁媒体の流速変動や圧力変動を若干受けやすくなるが、入口配管の直径を細くすることなどで対処可能である。
【0062】
第3の実施形態における薄板37に代えて、羽根車を設置してその回転速度を検出するセンサを取り付けても、流速に応じて変化する回転速度に基づいて、冷却配管内の絶縁媒体の流速を間接的に検出できる。
【0063】
第6の実施形態における流れ検出器60は、上述の通り、入口配管61と出口配管62を備えた流入流出部Gと、バルブ63を備えたバルブ部Hと、測定部Iとの3つの部分からなり、それぞれの部分に分離可能になっているため、例えば、従来技術の欄で示したような流れ指示器8(図9参照)のスペースに、上記流入流出部Gを設け、さらにバルブ部Hと測定部Iとをそれぞれ付加して構成することが可能である。これにより、既存の変圧器の流れ指示器と入れ換えて設置することができる。また、冷却配管が縦配置や横配置の場合でも問題ないので、取付け位置も自由に設定できる。ただし、曲がり配管の近傍などに設置した場合、流れが複雑で安定していないため、設置箇所により誤差が大きくなりやすい。この場合には、流れ検出器をブロアやポンプなどの循環装置に直接組込んで構成すると、一定の流れ環境で使用することになるため、安定した出力が得られ非常に有効である。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】本発明の第1の実施形態を示す変圧器の概略図。
【図2】本発明の第1の実施形態を示す流れ検出器の詳細図
【図3】本発明の第2の実施形態を示す流れ検出器の詳細図。
【図4】本発明の第3の実施形態を示す流れ検出器の詳細図。
【図5】本発明の第4の実施形態を示す流れ検出器の詳細図。
【図6】本発明の第5の実施形態を示す流れ検出器の詳細図。
【図7】本発明の第6の実施形態を示す流れ検出器の詳細図。
【図8】従来の変圧器の概略図。
【図9】従来の変圧器の流れ指示器の詳細図。
【符号の説明】
【0065】
1…タンク
2…鉄心
3…巻線
4…絶縁媒体
5…冷却器
6…循環装置
7…冷却配管
8…流れ指示器
81…回転軸
82…羽根板
83…回転検出部
9,20,30,40,50,60…流れ検出器
91a,92a…搬送部
91b,92b…流入部
91c,92c…流出部
91d,91e,92d,92e…開口部
93,31,35,41,51,64…測定室
94,22,37,…金属製薄板
95…金属製端子
96…出力端子
97…メッシュ
21,33,62,92…出口配管
23,38…センサ
32,61,91…入口配管
34…開口部
36…連通部
42…隔壁
43…ひずみゲージ式センサ
52…入口穴
53…出口穴
54…障害物
63…バルブ
B…分岐部
C,E…入口側
D,F…出口側
G…流入流出部
H…バルブ部
I…測定部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
けい素鋼板を積層した鉄心と、前記鉄心の主脚部分に銅線を巻回してなる巻線を絶縁媒体と共にタンクに収納し、タンク外部に絶縁媒体を冷却するための冷却器と、この絶縁媒体を循環させるための循環装置とこれらを接続する冷却配管と、前記冷却配管内の絶縁媒体の流れを検出する流れ検出器とを備えた変圧器において、
前記流れ検出器は、前記絶縁媒体の流れを検出するセンサを有する測定室と、前記冷却配管内部に、この冷却配管内部を流れる絶縁媒体を前記測定室へ導く流入口と、前記測定室から前記冷却配管に絶縁媒体を戻す流出口と、を備え、
前記測定室内には、前記流入口より流入する絶縁媒体の流れにより動く板状体と、前記板状体の動く方向を検出するセンサとを備えたことを特徴とする変圧器。
【請求項2】
前記流入口及び前記流出口と、前記測定室との間に、前記冷却配管から前記測定室に流入し前記測定室から前記冷却配管に戻る絶縁媒体の流路を開閉するバルブを設け、
さらに、前記測定室は、前記バルブに対して、着脱自在に構成されることを特徴とする請求項1記載の変圧器。
【請求項3】
前記流入口には前記冷却配管内を流れる絶縁媒体を前記測定室内に導く入口配管が設けられ、前記流出口には前記測定室内の絶縁媒体を前記冷却配管に戻す出口配管が設けられ、
前記入口配管と前記出口配管との両端部には開口部が設けられ、この開口部は前記冷却配管内と前記測定室内とにそれぞれが配置され、
前記入口配管の前記冷却配管内の開口部は、絶縁媒体の上流側を向いて設けられ、
前記出口配管の前記冷却配管内の開口部は、絶縁媒体の下流側を向いて設けられ、
前記入口配管と前記出口配管との前記測定室内の開口部はそれぞれ対向して設けられ、 前記板状体は、この対向して設けられた前記測定室内の開口部の間に、この開口部の面と平行に設けられ、
前記センサは、前記板状体の両側に設けられ前記板状体が動くことにより接触する金属製の端子と、この端子に接続され外部に前記板状体と前記端子との電気的な導通状態を出力する出力端子とからなることを特徴とする請求項1又は2記載の変圧器。
【請求項4】
前記流入口には前記冷却配管内を流れる絶縁媒体を前記測定室内に導く入口配管が設けられ、前記流出口には前記測定室内の絶縁媒体を前記冷却配管に戻す出口配管が設けられ、
前記入口配管と前記出口配管との両端部には開口部が設けられ、この開口部は前記冷却配管内と前記測定室内とにそれぞれが配置され、
前記入口配管の前記冷却配管内の開口部は、絶縁媒体の上流側を向いて設けられ、
前記出口配管の前記冷却配管内の開口部は、絶縁媒体の流れに対して面を平行にして設けられ、
前記板状体は、前記入口配管の前記測定室内の開口部の面と平行に設けられ、
前記センサは、前記板状体を挟んで前記入口配管の前記測定室内の開口部の面と反対側に設けられ前記板状体が動くことにより接触する金属製の端子と、この端子に接続され外部に前記板状体と前記端子との電気的な導通状態を出力する出力端子とからなることを特徴とする請求項1又は2記載の変圧器。
【請求項5】
前記板状体は、一端が固定され、弾性金属からなることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の変圧器。
【請求項6】
前記板状体は、一端を回転軸として回転可能に固定されるとともに、前記測定室内の開口部の面と平行な位置を復帰位置として付勢する弾性体を備えることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の変圧器。
【請求項7】
前記流入口には前記冷却配管内を流れる絶縁媒体を前記測定室内に導く入口配管が設けられ、前記流出口には前記測定室内の絶縁媒体を前記冷却配管に戻す出口配管が設けられ、
前記入口配管と前記出口配管との両端部には開口部が設けられ、この開口部は前記冷却配管内と前記測定室内とにそれぞれが配置され、
前記入口配管の前記冷却配管内の開口部は、絶縁媒体の上流側を向いて設けられ、
前記出口配管の前記冷却配管内の開口部は、絶縁媒体の下流側を向いて設けられ、
前記測定室は、前記入口配管の配置される部屋と、前記出口配管の配置される部屋とに分ける仕切りと、この2つの部屋の仕切りに設けられた連通部とを備え、
前記板状体は、前記連通部に前記仕切りと面を共通にし、かつ一端を回転軸として回転可能に固定されるとともに、前記仕切りと面を共通にする位置を復帰位置として付勢する弾性体を備え、
前記センサは、前記板状体の前記回転軸に設けられ、前記板状体の傾き角度を検出する傾き検出手段と、この傾き検出手段に接続され外部に前記板状体の傾き角度を出力する出力端子とからなることを特徴とする請求項1記載の変圧器。
【請求項8】
けい素鋼板を積層した鉄心と、前記鉄心の主脚部分に銅線を巻回してなる巻線を絶縁媒体と共にタンクに収納し、タンク外部に絶縁媒体を冷却するための冷却器と、この絶縁媒体を循環させるための循環装置とこれらを接続する冷却配管と、前記冷却配管内の絶縁媒体の流れを検出する流れ検出器とを備えた変圧器において、
前記流れ検出器は、前記絶縁媒体の流れを検出するセンサを有する測定室と、前記冷却配管内部に、前記冷却配管内部を流れる絶縁媒体の上流側と下流側とにこの冷却配管内部と前記測定室とを連通する2つの連通口と、を備え、
前記測定室は、薄い隔壁により、前記上流側の連通口が設けられた側と、前記下流側の連通口が設けられた側とに2分されており、
前記隔壁には、外部からの圧力により生じるこの隔壁のひずみを検出するひずみ検出センサが設けられたことを特徴とする変圧器。
【請求項9】
前記2つの連通口と、前記測定室との間に、前記冷却配管から前記測定室へ流入する絶縁媒体の流路を開閉するバルブを設け、
前記測定室は、前記バルブに対して、着脱自在に構成されることを特徴とする請求項8記載の変圧器。
【請求項10】
前記上流側の連通口には前記冷却配管内を流れる絶縁媒体を前記測定室内に導く入口配管が設けられ、前記下流側の連通口には前記測定室内の絶縁媒体を前記冷却配管に戻す出口配管が設けられ、
前記入口配管と前記出口配管との両端部には開口部が設けられ、この開口部は前記冷却配管内と前記測定室内とにそれぞれが配置され、
前記入口配管の前記冷却配管内の開口部は、絶縁媒体の上流側を向いて設けられ、
前記出口配管の前記冷却配管内の開口部は、絶縁媒体の下流側を向いて設けられていることを特徴とする請求項8又は9に記載の変圧器。
【請求項11】
前記2つの連通口は、前記冷却配管内における絶縁媒体の流れに対して面を平行にして設けられ、
前記上流側の連通口における絶縁媒体の流れに対して下流側の縁近傍には、この絶縁媒体の流れに対向する板状の障害物を設けたことを特徴とする請求項8又は9に記載の変圧器。
【請求項12】
前記入口配管および前記出口配管の内部に、メッシュを設置したことを特徴とする請求項3,4,7又は10のいずれか1項に記載の変圧器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2008−135555(P2008−135555A)
【公開日】平成20年6月12日(2008.6.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−320416(P2006−320416)
【出願日】平成18年11月28日(2006.11.28)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】