説明

変形させて用いるシート製品

【課題】 折り曲げて箱にしたり、ファスナーのように折り曲げて使用するものは、まずその折り曲げた状態を保つ必要がある。従来のプラスチックの場合、このような変形を保持することは難しく、どうしてもある程度元に復元してしまうのである。また、変形保持性の優れた金属は、地球環境の面から他の材料への転換が望まれている。これは、プラスチックや紙と金属が固着されたものでは、廃棄処分するときに、金属を除去しなければならないためである。
【解決手段】 ポリエステル、ポリオレフィン、及び多官能変性ビニルポリマーの少なくとも3成分を有する樹脂から成るものであって、厚みを0.1〜3.0mmのシート状に成形したもの。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、変形させて用いるシート製品に関するものである。
【背景技術】
【0002】
変形させて用いるシート製品とは、シートとして成形した製品であって、使用者はそれを更に変形させて使用するものである。例えば、折り曲げて箱にするもの、折り曲げて使用するもの等である。よって、文房具の下敷のような変形させないものは含まれない。
【0003】
折り曲げて箱にしたり、ファスナーのように折り曲げて使用するものは、まずその折り曲げた状態を保つ必要がある。すぐに元に戻るものでは用を成さないのである。また、折り曲げて曲がるものの繰り返し使える必要がある。例えば、書類を固定するファスナーでは、書類の穴にファスナーを通した後ファスナーを折り曲げて抜けないようにするのであるが、折った状態を保たなければ書類が抜けることとなる。
【0004】
従来のプラスチックの場合、このような変形を保持することは難しく、どうしてもある程度元に復元してしまうのである。よって、厚いシートの場合、ブランクシートの状態で需要家に搬送し、そこで箱に組み立てる等という運送効率のよいことは不可能だったのである。
【0005】
また、ファスナーのようなものでは、塑性変形が可能な金属製であった。しかしながら、最近では地球環境の問題から、従来金属で製造されていたものも、金属から他の材料への転換が望まれている。これは、プラスチックや紙と金属が固着されたものでは、廃棄処分するときに、金属を除去しなければならないためである。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで、従来ほとんどできなかった需要家でのプラスチック箱の組み立てや、金属代替品としてのシート材料を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
以上のような現状に鑑み、本発明者は鋭意研究の結果本発明変形させて用いるシート製品を完成したものであり、その特徴とするところは、ポリエステル、ポリオレフィン、及び多官能変性ビニルポリマーの少なくとも3成分を有する樹脂から成るものであって、厚みを0.1〜3.0mmのシート状に成形した点にある。
【0008】
ここでポリエステルとは、汎用されているポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、1,4−シクロヘキシルジメチレンテレフタレート(PCT)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリ乳酸、ポリブチルサクシネート、更にその他の脂肪族ポリエステル、芳香族ポリエステル及びその誘導体等があり、要するに主鎖にエステル結合を有するものであればよい。勿論、上記のコポリマーでもよい。
また、回収されたPET樹脂や市販されているものでもよい。
更に、以上のものの混合物でもよい。
【0009】
ポリオレフィンは、ポリエチレン、ポリプロピレンが代表的であるが、ポリブタジエンやメチルペンテン樹脂等でもよい。また、ホモポリマーでもコポリマーでもよい。コポリマーではランダム重合やブロック重合でもよい。要するに、密度や重合度等は自由である。発明者の実験では、低密度ポリエチレンが好適であった。コーポリマーでなく、混合物として用いてもよい。
このポリオレフィンの混合量は、ポリエステル100重量部に対して、1〜30重量部が好ましく、更に1〜8重量部がより好ましい。これは、ポリエステルの海に対して、島構造を持たせるためである。
【0010】
多官能変性ビニルポリマーとは、ポリオレフィン部分と、官能基部分を有するものであり、エラストマーが好適である。官能基は、ポリエステルのカルボン酸やアルコールと反応するものであればよい。例えば、酸無水物、カルボン酸、アルコール、エステル、塩等である。
化合物の例としては、無水マレイン酸含有スチレン系可塑性エラストマー、酸変性飽和型スチレン系熱可塑性エラストマー、スチレン−ブタジエン共重合物水素添加物有機酸誘導体付加物等である。
官能基は少なくとも1つ有しておればよく、2つ以上でなければならないものではない。いわゆる架橋剤とは異なる目的であるためである。
【0011】
この多官能変性ビニルポリマーの混合量は、ポリエステル100重量部に対して、1〜30重量部が好ましく、更に1〜8重量部がより好ましい。この量によって、見掛け伸張粘度が調整できる。
【0012】
更に、本発明にはタルク等の無機フィラーを0.1〜50重量部混合してもよい。好ましくは、1〜10重量部である。タルクは、結晶水を有するマグネシウム、珪素の酸化物であり、結晶核剤となりうるものである。これを添加することによって、結晶化を促進し、耐熱温度が上がると考えられる。
【0013】
本発明に用いる樹脂には、上記した成分に更に添加剤を加えてもよい。例えば、顔料、香料、紫外線吸収剤等である。
要するに、本発明の趣旨に反しない限り、増量剤等何を加えてもよいということである。
【0014】
本発明シート製品は、厚みが0.1〜3.0mmである。これは。これ以下では変形保持の意味がなく、これ以上厚いと折った場合に破断する恐れがあるためである。
【0015】
シート製品とは、これをそのまま使用してもよいが、通常は適当な形状に裁断して最終商品とする。例えば、文房具のファスナーに裁断する、製箱用のブランクシートに裁断する等である。
【発明の効果】
【0016】
本発明シート製品には次のような利点がある。
(1) 金属を用いていないため、分別回収の必要がなく、廃棄処理も簡単である。
(2) 従来のプラスチック製のシートと比較して保形性(可塑性)が優れており、十分使用に耐えられ、繰り返し使用することができる。
(3) 主原料のポリエステルをPETとした場合、リサイクルPETへの応用も可能であり、従来リサイクルPETでの形成が難しかった厚物シートの成形が可能となり、かつ形状保形材料として使用することができる。
(4) 主原料として、植物由来のポリ乳酸を用いて製造できることから、二酸化炭素の低減などに効果があり地球に優しい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下好適な実施例に基づいて本発明をより詳細に説明する。
【実施例】
【0018】
ポリエステル樹脂として次の4つを準備した。
1 PET(ポリエチレンテレフタレート:三菱化学社製BK2180)
2 レイシアH440(ポリ乳酸:三井化学社製:表では乳酸と表示)
3 ビオノーレ#1001(ポリブチレンサクシネート/アジペート:昭和高分子社製:表ではビオと表示)
4 GS PlaAZ81T(ポリブチレンサクシネート:三菱化学社製:表ではGSと表示)
【0019】
ポリオレフィンとしては、次の3つを準備した。
1 LLDPE(直鎖状低密度ポリエチレン:三井住友ポリオレフィン社製、ウルトゼックス3010F)を用いた
2 LDPE(低密度ポリエチレン:旭化成社製M1820)
3 HDPE(高密度ポリエチレン:旭化成社製M161)
【0020】
多官能変性ビニルポリマーとして、酸変性飽和型スチレン系熱可塑性エラストマーであるタフテックM1913とM1957(旭化成社製)を、またフィラーとしては、タルク(タルクMB:竹原化学社製)を用いた。
【0021】
保形性の評価は次のようにして行なった。上記の樹脂で、通常に押出成形し、0.6mm厚のシートを製造した。そしてできたシートを130mm×6mmの短冊にカットし、短冊の両端をつまみループ(両端同士をくっつけた)を作り、そのループを圧縮ジグでつぶした。圧縮荷重は、3.7kgで、10秒間圧縮した。圧縮後10分間放置し、分度器で開いた角度を測定した。×は60度以上、△は25〜60度、○は15〜25度、◎は15度以下である。
【0022】
各実施例の混合比率と結果を表1に示す。
【表1】

【0023】
表1の結果から、比較例のようにポリエステルとポリオレフィン、多官能変性ビニルポリマーの中の2種の混合物では効果がなく、3種混合して効果があることがわかる。また、フィラーを添加することにより保形効果が向上する場合があることもわかる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリエステル、ポリオレフィン、及び多官能変性ビニルポリマーの少なくとも3成分を有する樹脂から成るものであって、厚みを0.1〜3.0mmのシート状に成形したことを特徴とする変形させて用いるシート製品。
【請求項2】
樹脂成分100重量部に対して、フィラーを0.1〜50重量部混合したものである請求項1記載の変形させて用いるシート製品。

【公開番号】特開2006−131669(P2006−131669A)
【公開日】平成18年5月25日(2006.5.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−319356(P2004−319356)
【出願日】平成16年11月2日(2004.11.2)
【出願人】(000198802)積水成型工業株式会社 (66)
【Fターム(参考)】