説明

変性ポリオレフィン樹脂組成物の製造方法

【課題】本発明は、これまでグラフト重合において残留する事が課題となっていたラジカル開始剤を失活させる製造方法を得る事を目的とする。
【解決手段】グラフト重合に使用する原料が、(a)及び(b)と、(c)、(d)及び(e)から選ばれる少なくとも一つの成分であり、単軸又は二軸押出機から選ばれる連続型生産機を用いて変性ポリオレフィン樹脂を製造する方法であって、前述のグラフト重合に使用する原料の全てを混練した後のシリンダーにおいて、235℃以上に保持されたシリンダーが少なくとも1ヶ所以上存在することを特徴とする変性ポリオレフィン樹脂の製造方法及び/又はグラフト重合に使用する原料が、(a)及び(b)と、(c)、(d)及び(e)から選ばれる少なくとも一つの成分であり、バンバリーミキサー、ミル、ニーダー、加熱ロールから選ばれるバッチ混練機を用いて、変性ポリオレフィン樹脂を製造する方法であって、前述のグラフト重合に使用する原料の全てを混練機に投入して反応させた後、混練機の温度を235℃以上に保持する時間が10秒以上ある変性ポリオレフィン樹脂の製造方法。
(a)ポリオレフィン樹脂 100重量部、
(b)ラジカル重合開始剤 0.01重量部〜5重量部、
(c)エポキシ基含有ビニル単量体 0.01〜10重量部、
(d)エチレン性二重結合及びケイ素原子を同一分子内に含む単量体 0.01〜10重量部、
(e)エチレン性二重結合及び酸性極性基を同一分子内に含む単量体 0.01〜10重量部

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリオレフィン樹脂とラジカル重合開始剤の存在下、エポキシ基含有ビニル単量体、エチレン性二重結合及び酸性官能基を同一分子内に含む単量体、及びエチレン性二重結合及びケイ素原子を同一分子内に含む単量体から選ばれる少なくとも1種の単量体を加え溶融混練して得られる変性ポリオレフィン樹脂からなる樹脂組成物及び該樹脂組成物を含有する樹脂組成物とその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリオレフィン樹脂、例えばポリプロピレン樹脂は、その成形性、剛性、耐熱性、耐薬品性、電気絶縁性などに優れ、また安価であることから、シート、フィルム、繊維、そのほか様々な形状の成形品として汎用的に使用されている。一方で、ポリプロピレン樹脂は分子内に極性基を持たず、非極性で化学的に極めて不活性な高分子である。そのため、接着性、塗装密着性、耐油性等が低いという課題がある。この課題を改善するために、ポリオレフィン樹脂へ極性官能基を有する重合可能なモノマーをグラフト重合させて、変性樹脂を製造する様々な方法が報告されている。
この欠点を改善するために、オレフィン系樹脂へ極性官能基を有する重合可能なモノマーをグラフト重合させて、変性樹脂を製造する方法が試みられ、以下のような方法が提案されている。
(i)水中に分散させたポリオレフィン樹脂粒子にビニル単量体を含浸させ、過酸化物の存在下で加熱して変性ポリオレフィンを製造する方法(特許文献1)。
(ii)ポリオレフィン樹脂、無水マレイン酸と有機過酸化物とを溶融混練し、変性ポリオレフィンを製造する方法(特許文献2)。
【0003】
(i)の方法では様々なビニル系単量体をポリオレフィン樹脂にグラフトさせることができる。しかし、エポキシ基などの極性の高い官能基を持つモノマーは、低極性であるポリオレフィン樹脂に含浸しにくいので、共重合できる量に限界があった。また、該モノマーの水への溶解抑制剤を必要とするため、反応後の変性ポリオレフィン組成物中に溶解抑制剤が残存し、印刷性、インキ密着性、接着性を阻害するという問題点があった。
【0004】
(ii)の方法では、余剰の過酸化物によりポリオレフィンの主鎖が切断されて低分子量化するため、着色が生じたり、機械的特性が低下することがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平6−122738号公報
【特許文献2】特開平9−278956号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、一般的な簡素な装置を用い、容易な方法により、難接着基材に対し優れた接着性を有する変性ポリオレフィン系樹脂、該樹脂を含有する組成物およびその製造方法を提供することを目的とする。特に、変性時に使用する有機過酸化物を効率的に失活させ、残留による不具合を無くす事を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上述の現状に鑑み鋭意検討した結果、変性ポリオレフィン樹脂組成物を下記に請求する方法で製造する事により、上記課題の解決が可能となることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち本発明は、以下の構成を有するものである。
1).グラフト重合に使用する原料が、(a)及び(b)と、(c)、(d)及び(e)から選ばれる少なくとも一つの成分であり、単軸又は二軸押出機から選ばれる連続型生産機を用いて変性ポリオレフィン樹脂を製造する方法であって、前述のグラフト重合に使用する原料の全てを混練した後のシリンダーにおいて、235℃以上に保持されたシリンダーが少なくとも1ヶ所以上存在することを特徴とする変性ポリオレフィン樹脂の製造方法。
(a)ポリオレフィン樹脂 100重量部、
(b)ラジカル重合開始剤 0.01重量部〜5重量部、
(c)エポキシ基含有ビニル単量体 0.01〜10重量部、
(d)エチレン性二重結合及びケイ素原子を同一分子内に含む単量体 0.01〜10重量部、(e)エチレン性二重結合及び酸性極性基を同一分子内に含む単量体 0.01〜10重量部
【0009】
2).グラフト重合に使用する原料が、(a)及び(b)と、(c)、(d)及び(e)から選ばれる少なくとも一つの成分であり、バンバリーミキサー、ミル、ニーダー、加熱ロールから選ばれるバッチ混練機を用いて、変性ポリオレフィン樹脂を製造する方法であって、前述のグラフト重合に使用する原料の全てを混練機に投入して反応させた後、混練機の温度を235℃以上に保持する時間が5秒以上あることを特徴とする変性ポリオレフィン樹脂の製造方法。
(a)ポリオレフィン樹脂 100重量部、
(b)ラジカル重合開始剤 0.01重量部〜5重量部、
(c)エポキシ基含有ビニル単量体 0.01〜10重量部、
(d)エチレン性二重結合及びケイ素原子を同一分子内に含む単量体 0.01〜10重量部、(e)エチレン性二重結合及び酸性極性基を同一分子内に含む単量体 0.01〜10重量部
【0010】
3).1)及び2)に記載のグラフト重合に使用する原料が、さらに下記(f)成分を含む変性ポリオレフィン樹脂組成物の製造方法。
(f)芳香族ビニル単量体 0.01〜10重量部。
【0011】
4).(c)エポキシ基含有ビニル単量体が、グリシジル(メタ)アクリレートである1)〜3)いずれかに記載の変性ポリオレフィン樹脂組成物の製造方法。
【0012】
5).(d)エチレン性二重結合及びケイ素原子を同一分子内に含む単量体が、下記一般式(1)で示される化学構造を有する化合物である1)又は2)に記載の変性ポリオレフィン樹脂組成物の製造方法。
―SiX3 (1)
(式中、Xはそれぞれ独立に加水分解性基または水酸基である。)
6).前記一般式(1)のXが、アルコキシ基であることを特徴とする5)に記載の変性ポリオレフィン樹脂組成物の製造方法。
【0013】
7).前記アルコキシ基が、メトキシ基であることを特徴とする6)に記載の変性ポリオレフィン樹脂組成物の製造方法。
【0014】
8).(f)芳香族ビニル単量体がスチレンである3)に記載の変性ポリオレフィン樹脂組成物の製造方法。
【発明の効果】
【0015】
本発明の変性ポリオレフィン樹脂組成物の製造方法は、難接着性の基材に対して優れた接着性を示す変性ポリオレフィンを効率的に製造し、且つ変性時に使用する有機過酸化物を効率的に失活させ、残留による不具合を大幅に低減できる。本発明の変性ポリオレフィン樹脂組成物は、単独で使用してもよいし、配合物として使用しても、難接着基材に対し優れた接着力を確保することができ、文具、雑貨、食品などの包装材、自動車用部品、家電、太陽電池用封止シートなどの電気電子部品、各種産業用資材などの幅広い分野に好適に用いられる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に本発明の詳細について述べる。
(ポリオレフィン樹脂)
本発明の(a)ポリオレフィン樹脂は、例えばポリエチレン、ポリプロピレン、ポリイソブチレン、プロピレンとエチレン、1−ブテン、1−ヘキセン及び1−オクテンから選ばれる少なくとも1種とのあらゆる比率でのランダム共重合体またはブロック共重合体、エチレンとプロピレンとのあらゆる比率においてジエン成分が50重量%以下であるエチレン‐プロピレン‐ジエン三元共重合体、ポリメチルペンテン、シクロペンタジエンとエチレン及び又はプロピレンとの共重合体などの環状ポリオレフィン、エチレンまたはプロピレンと50重量%以下のビニル化合物などとのランダム共重合体、ブロック共重合体などが挙げられる。
【0017】
中でも、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリイソブチレンが好ましく、ポリプロピレンが特に好ましい。
【0018】
また、極性基が導入されたポリオレフィン樹脂も使用できる。極性基が導入されたポリオレフィン樹脂の具体例としては、無水マレイン酸変性ポリプロピレン、エチレン‐酢酸ビニル共重合体、エチレン‐アクリル酸共重合体、エチレン‐アクリル酸エチル共重合体、エチレン‐メタクリル酸メチル共重合体、エチレン‐アクリル酸エチル‐メタクリル酸グリシジル共重合体などが挙げられる。
【0019】
前記の原料ポリオレフィン樹脂は、単独で用いてもよく、また複数を併用してもよい。前記原料ポリオレフィン樹脂には、必要に応じて、他の樹脂、又はゴムを本発明の効果を損なわない範囲内で添加してもよい。
【0020】
前記の他の樹脂またはゴムとしては、たとえばポリペンテン‐1、などのポリα‐オレフィン;プロピレン‐ブテン‐1共重合体などのエチレン又はα‐オレフィン‐α‐オレフィン共重合体;エチレン‐プロピレン‐5‐エチリデン‐2‐ノルボルネン共重合体などのエチレンまたはα‐オレフィン‐α−オレフィン‐ジエン単量体共重合体;ポリブタジエン、ポリイソプレンなどのポリジエン共重合体;スチレン‐ブタジエンランダム共重合体などのビニル単量体‐ジエン単量体ランダム共重合体;スチレン‐ブタジエン‐スチレンブロック共重合体などのビニル単量体‐ジエン単量体‐ビニル単量体ブロック共重合体;水素化(スチレン‐ブタジエンランダム共重合体)などの水素化(ビニル単量体‐ジエン単量体ランダム共重合体);水素化(スチレン‐ブタジエン‐スチレンブロック共重合体)などの水素化(ビニル単量体‐ジエン単量体‐ビニル単量体ブロック共重合体);アクリロニトリル‐ブタジエン‐スチレングラフト共重合体、メタクリル酸メチル‐ブタジエン‐スチレングラフト共重合体などのビニル単量体‐ジエン単量体‐ビニル単量体グラフト共重合体;ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリアクリロニトリル、ポリ酢酸ビニル、ポリアクリル酸エチル、ポリアクリル酸ブチル、ポリメタクリル酸メチル、ポリスチレンなどのビニル重合体;塩化ビニル‐アクリロニトリル共重合体、塩化ビニル‐酢酸ビニル共重合体、アクリロニトリル‐スチレン共重合体、メタクリル酸メチル‐スチレン共重合体などのビニル共重合体などがあげられる。
【0021】
ポリオレフィン樹脂に対するこれら他の樹脂またはゴムの添加量は、この樹脂の種類またはゴムの種類により異なり、前述のように本発明の効果を損なわない範囲内にあればよいものであるが、通常、25重量%程度以下であることが好ましい。
【0022】
また、これらポリオレフィン樹脂(各種の添加材料を含む場合もある)は粒子状のものであってもペレット状のものであってもよく、その大きさや形はとくに制限されるものではない。
【0023】
また、前記の添加材料(ほかの樹脂、およびゴム)を用いる場合は、この添加材料は予めポリオレフィン樹脂に添加されているものであっても、ポリオレフィン樹脂を溶融するときに添加されるものであってもよく、また変性ポリオレフィン樹脂を製造したのちに適宜の方法でこの変性ポリオレフィン樹脂に添加されるものであってもよい。
【0024】
(ラジカル開始剤)
(a)ポリオレフィン樹脂に対して、(c)エポキシ基含有ビニル単量体、(d)エチレン性二重結合及びケイ素原子を同一分子内に含む単量体、及び(e)エチレン性二重結合及び酸性極性基を同一分子内に含む単量体から選ばれる少なくとも1種の単量体をグラフト共重合する際、反応を開始するため、(b)ラジカル重合開始剤を添加する。ラジカル重合開始剤としては、一般に過酸化物またはアゾ化合物などがあげられる。本発明のラジカル重合開始剤としては、メチルエチルケトンパーオキサイド、メチルアセトアセテートパーオキサイドなどのケトンパーオキサイド;1,1‐ビス(t‐ブチルパーオキシ)‐3,3,5‐トリメチルシクロヘキサン、1,1‐ビス(t‐ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、n‐ブチル‐4,4‐ビス(t‐ブチルパーオキシ)バレレート、2,2‐ビス(t‐ブチルパーオキシ)ブタンなどのパーオキシケタール;パーメタンハイドロパーオキサイド、1,1,3,3‐テトラメチルブチルハイドロパーオキサイド、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイドなどのハイドロパーオキサイド;ジクミルパーオキサイド、2,5‐ジメチル‐2,5‐ジ(t‐ブチルパーオキシ)ヘキサン、α,α´‐ビス(t‐ブチルパーオキシ‐m‐イソプロピル)ベンゼン、t‐ブチルクミルパーオキサイド、ジ‐t‐ブチルパーオキサイド、2,5‐ジメチル‐2,5‐ジ(t‐ブチルパーオキシ)ヘキシン‐3などのジアルキルパーオキサイド;ベンゾイルパーオキサイドなどのジアシルパーオキサイド;ジ(3‐メチル‐3‐メトキシブチル)パーオキシジカーボネート、ジ‐2‐メトキシブチルパーオキシジカーボネートなどのパーオキシジカーボネート;t‐ブチルパーオキシオクテート、t‐ブチルパーオキシイソブチレート、t‐ブチルパーオキシラウレート、t‐ブチルパーオキシ‐3,5,5‐トリメチルヘキサノエート、t‐ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、2,5‐ジメチル‐2,5‐ジ(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、t‐ブチルパーオキシアセテート、t‐ブチルパーオキシベンゾエート、ジ‐t‐ブチルパーオキシイソフタレートなどのパーオキシエステルなどの有機過酸化物の1種または2種以上があげられる。
【0025】
これらのうち、とくに水素引き抜き能が高いものが好ましく、そのようなラジカル重合開始剤としては、たとえば1,1‐ビス(t‐ブチルパーオキシ)‐3,3,5‐トリメチルシクロヘキサン、1,1‐ビス(t‐ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、n‐ブチル‐4,4‐ビス(t‐ブチルパーオキシ)バレレート、2,2‐ビス(t‐ブチルパーオキシ)ブタンなどのパーオキシケタール;ジクミルパーオキサイド、2,5‐ジメチル‐2,5‐ジ(t‐ブチルパーオキシ)ヘキサン、α,α´‐ビス(t‐ブチルパーオキシ‐m‐イソプロピル)ベンゼン、t‐ブチルクミルパーオキサイド、ジ‐t‐ブチルパーオキサイド、2,5‐ジメチル‐2,5‐ジ(t‐ブチルパーオキシ)ヘキシン‐3などのジアルキルパーオキサイド;ベンゾイルパーオキサイドなどのジアシルパーオキサイド;t‐ブチルパーオキシオクテート、t‐ブチルパーオキシイソブチレート、t‐ブチルパーオキシラウレート、t‐ブチルパーオキシ‐3,5,5‐トリメチルヘキサノエート、t‐ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、2,5‐ジメチル‐2,5‐ジ(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、t‐ブチルパーオキシアセテート、t‐ブチルパーオキシベンゾエート、ジ‐t‐ブチルパーオキシイソフタレートなどのパーオキシエステルなどの1種または2種以上があげられる。
【0026】
前記ラジカル重合開始剤の添加量は、ポリオレフィン樹脂100重量部に対して、0.01〜5重量部の範囲内にあることが好ましく、0.05〜3重量部の範囲内にあることがさらに好ましい。0.01重量部未満では変性が充分に進行せず、5重量部を超えるとポリオレフィンの流動性、機械的特性の著しい低下を招く。
【0027】
(エポキシ基含有ビニル単量体)
エポキシ基含有ビニル単量体としては、例えば、メタクリル酸グリシジル、アクリル酸グリシジル、マレイン酸モノグリシジル、マレイン酸ジグリシジル、イタコン酸モノグリシジル、イタコン酸ジグリシジル、アリルコハク酸モノグリシジル、アリルコハク酸ジグリシジル、p‐スチレンカルボン酸グリシジル、アリルグリシジルエーテル、メタアリルグリシジルエーテル、スチレン‐p‐グリシジルエーテル、p‐グリシジルスチレン、3,4‐エポキシ‐1‐ブテン、3,4‐エポキシ‐3‐メチル‐1‐ブテンなどのエポキシオレフィン、ビニルシクロヘキセンモノオキシドなどの1種または2種以上が挙げられる。
【0028】
これらのうち、メタクリル酸グリシジル、アクリル酸グリシジルが安価という点で好ましい。前記エポキシ基含有ビニル単量体の添加量は、(a)ポリオレフィン系樹脂100重量部に対して、0.01〜10重量部であることが好ましく、0.5〜5重量部であることがさらに好ましい。添加量が少なすぎると接着性が充分に改善されない傾向があり、添加量が多すぎると好適な形状や外観を有する樹脂組成物として取得できない傾向がある。
【0029】
(エチレン性二重結合及びケイ素原子を同一分子内に含む単量体)
エチレン性二重結合及びケイ素原子を同一分子内に含む単量体は、下記一般式(1)で示される化学構造を有する化合物であることが好ましい。
―SiX3 (1)
式中、Xはそれぞれ独立に加水分解性基または水酸基であり、それぞれ同一であっても異なっても良い。
【0030】
一般式(1)中のXで記載される加水分解性基としては特に限定されず、公知の加水分解性基があげられ、例えば、水素原子、ハロゲン原子、アルコキシ基、アシルオキシ基、ケトキシメート基、アミノ基、アミド基、酸アミド基、アミノオキシ基、メルカプト基、アルケニルオキシ基などがあげられる。これらのなかでは、水素原子、アルコキシ基、アシルオキシ基、ケトキシメート基、アミノ基、アミド基、アミノオキシ基、メルカプト基およびアルケニルオキシ基が好ましく、アルコキシ基が、加水分解性が穏やかで取扱いやすいことからより好ましい。
【0031】
アルコキシ基の具体例としては、特に限定されず、例えば、メトキシ基、エトキシ基、1‐プロポキシ基、2‐プロポキシ基、1‐ブトキシ基、2‐ブトキシ基、tert‐ブチルオキシ基、オクトキシ基、ラウリルオキシ基、フェノキシ基、ベンジルオキシ基などがあげられる。これらのなかでは、メトキシ基、エトキシ基が、入手が容易なことから好ましい。
【0032】
本発明において、ポリオレフィン樹脂にグラフトされるアルコキシシランとしては、ビニルアルコキシシラン、イソプロペニルアルコキシシラン、アリルアルコキシシラン、アクリロキシアルコキシシラン、メタクリロキシアルコキシシラン等のラジカル重合性の官能基(アルケニル基)を有するアルケニルアルコキシシランが好ましく使用される。例えば、ビニルメトキシシラン、ビニルエトキシシラン、ビニルプロポキシシラン、ビニルブトキシシラン、メタクリロキシプロピルシラン等のビニルアルコキシシランなどが好ましく用いられ、このビニル基などの官能基を利用して対象とするポリオレフィン樹脂にグラフト反応により付加される。
【0033】
また、水酸基を有する化合物の具体例としては、ビニルトリヒドロキシシラン、ビニルビスメトキシヒドロキシシラン、メタクリロキシヒドロキシシランなどが挙げられる。前記エチレン性二重結合及びケイ素原子を同一分子内に含む単量体の添加量は、ポリオレフィン樹脂100重量部に対して、0.01〜10重量部であることが好ましく、0.1〜5重量部であることがさらに好ましい。添加量が少なすぎると接着性が充分に改善されない傾向があり、添加量が多すぎると好適な形状や外観を有する樹脂組成物として取得できない傾向がある。
【0034】
(エチレン性二重結合及び酸性極性基を同一分子内に含む単量体)
エチレン性二重結合及び酸性極性基を同一分子内に含む単量体に含まれる酸性極性基としては、例えば、カルボン酸基、カルボン酸無水物基、カルボン酸ハライド基、カルボン酸アミド基、カルボン酸イミド基、カルボン酸塩基、スルホン酸基、スルホン酸エステル基、スルホン酸塩化物基、スルホン酸アミド基、スルホン酸塩基等が挙げられる。このうち、好ましくは、カルボン酸基及びカルボン酸無水物基である。
【0035】
本発明で用いるエチレン性二重結合及び酸性極性基を同一分子内に含む単量体は、特に制限されないが、好ましくは、上記の極性基を含む不飽和カルボン酸及び又はその誘導体である。不飽和カルボン酸又はその誘導体としては、例えば、不飽和モノもしくはジカルボン酸、又はこれらの誘導体が挙げられる。これらの誘導体としては、具体的には、カルボン酸の無水物、ハライド、及び塩等が挙げられる。このうち、好ましくは、不飽和ジカルボン酸又はその無水物である。
【0036】
不飽和モノ又はジカルボン酸の具体例としては、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、エンド‐ビシクロ[2.2.1]‐5‐ヘプテン‐2,3‐ジカルボン酸(エンディック酸)、フマル酸、テトラヒドロフタル酸、イタコン酸、シトラコン酸、クロトン酸、イソクロトン酸、ナジック酸等が挙げられる。
【0037】
不飽和カルボン酸の誘導体の具体例としては、塩化マレニル、無水マレイン酸、無水エンディック酸、無水シトラコン酸、無水イタコン酸、無水ナジック酸、マレイン酸モノメチル、フマル酸モノメチル等が挙げられる。
【0038】
これら不飽和カルボン酸又はその誘導体のうち、好ましくは、アクリル酸、メタクリル酸及びマレイン酸の無水物であり、より好ましくは、無水マレイン酸である。これらは、一種単独で用いてもよく、また、二種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0039】
これらのうち、無水マレイン酸が異種材と接着させる場合、特に金属材料と接着させる場合に、低い温度で接着するという点で好ましい。前記エチレン性二重結合及び酸性極性基を同一分子内に含む単量体の添加量は、ポリオレフィン樹脂100重量部に対して、0.01〜10重量部であることが好ましく、0.1〜5重量部であることがさらに好ましい。添加量が少なすぎると接着性が充分に改善されない傾向があり、添加量が多すぎると好適な形状や外観を有する樹脂組成物として取得できない傾向がある。
【0040】
(芳香族ビニル単量体)
本発明の接着性変性樹脂組成物からなる層は、(a)ポリオレフィン樹脂に対して、(c)エポキシ基含有ビニル単量体、(d)エチレン性二重結合及びケイ素原子を同一分子内に含む単量体、及び(e)エチレン性二重結合及び酸性極性基を同一分子内に含む単量体から選ばれる少なくとも1種の単量体、さらに(f)芳香族ビニル単量体を、溶融混練して得られる接着性変性樹脂組成物からなる層であることが好ましい。
芳香族ビニル単量体を例示するならば、スチレン;o‐メチルスチレン、m‐メチルスチレン、p‐メチルスチレン、α‐メチルスチレン、β‐メチルスチレン、ジメチルスチレン、トリメチルスチレンなどのメチルスチレン;o‐クロロスチレン、m‐クロロスチレン、p‐クロロスチレン、α‐クロロスチレン、β‐クロロスチレン、ジクロロスチレン、トリクロロスチレンなどのクロロスチレン;o‐ブロモスチレン、m‐ブロモスチレン、p‐ブロモスチレン、ジブロモスチレン、トリブロモスチレンなどのブロモスチレン;o‐フルオロスチレン、m‐フルオロスチレン、p‐フルオロスチレン、ジフルオロスチレン、トリフルオロスチレンなどのフルオロスチレン;o‐ニトロスチレン、m‐ニトロスチレン、p‐ニトロスチレン、ジニトロスチレン、トリニトロスチレンなどのニトロスチレン;o‐ヒドロキシスチレン、m‐ヒドロキシスチレン、p‐ヒドロキシスチレン、ジヒドロキシスチレン、トリヒドロキシスチレンなどのビニルフェノール;o‐ジビニルベンゼン、m‐ジビニルベンゼン、p‐ジビニルベンゼンなどのジビニルベンゼン;o‐ジイソプロペニルベンゼン、m‐ジイソプロペニルベンゼン、p‐ジイソプロペニルベンゼンなどのジイソプロペニルベンゼン;などの1種または2種以上が挙げられる。これらのうちスチレン、α‐メチルスチレン、p‐メチルスチレンなどのメチルスチレン、ジビニルベンゼン単量体またはジビニルベンゼン異性体混合物が安価であるという点で好ましい。
【0041】
前記(f)芳香族ビニル単量体の添加量は、ポリオレフィン樹脂100重量部に対して、0.01〜10重量部であることが好ましく、0.1〜5重量部であることがさらに好ましい。前記範囲の添加量において、ポリオレフィン樹脂に対する(c)エポキシ基含有ビニル単量体、(d)エチレン性二重結合及びケイ素原子を同一分子内に含む単量体、(e)エチレン性二重結合及び酸性極性基を同一分子内に含む単量体のグラフト効率を高く維持することでき好適である。一方、添加量が10重量部を超えると(c)エポキシ基含有ビニル単量体、(d)エチレン性二重結合及びケイ素原子を同一分子内に含む単量体、(e)エチレン性二重結合及び酸性極性基を同一分子内に含む単量体のグラフト効率が飽和域に達する。
【0042】
(変性ポリオレフィン樹脂組成物)
本発明の変性ポリオレフィン樹脂組成物は、(a)ポリオレフィン樹脂に対し、(c)エポキシ基含有ビニル単量体、(d)エチレン性二重結合及びケイ素原子を同一分子内に含む単量体、及び(e)エチレン性二重結合及び酸性極性基を同一分子内に含む単量体から選ばれる少なくとも1種の単量体からなるグラフト鎖をグラフトさせた樹脂組成物である。また、本発明の変性ポリオレフィン樹脂組成物は、(a)ポリオレフィン樹脂に対し、(c)エポキシ基含有ビニル単量体、(d)エチレン性二重結合及びケイ素原子を同一分子内に含む単量体、及び(e)エチレン性二重結合及び酸性極性基を同一分子内に含む単量体から選ばれる少なくとも1種の単量体、さらに(f)芳香族ビニル単量体からなるグラフト鎖をグラフトさせた樹脂組成物であることが、グラフト効率を高める点で好ましい。
【0043】
単量体として、(c)エポキシ基含有ビニル単量体、(d)エチレン性二重結合及びケイ素原子を同一分子内に含む単量体、(e)エチレン性二重結合及び酸性極性基を同一分子内に含む単量体、及び(f)芳香族ビニル単量体を使用した場合、種々の素材に対する接着性を得ることができ、さらに好ましい。
【0044】
本発明に用いるグラフト重合反応としては、特に制限されない。特に、溶融重合が簡便で好ましい。溶融混練時の添加順序及び方法については、特に制限はない。なお、その他必要に応じ添加される材料の混合や溶融混練の順序及び方法はとくに制限されるものではない。溶融混練時の加熱温度は、100〜285℃であることが、ポリオレフィン樹脂が充分に溶融し、かつ熱分解しないという点で好ましい。また溶融混練の時間(ラジカル重合開始剤を混合してからの時間)は、通常30秒間〜60分間である。
【0045】
また、前記の溶融混練の装置としては、連続型生産機として短軸又は二軸押出機、バッチ混練機としてバンバリーミキサー、ミル、ニーダー、加熱ロールなどを使用することができる。また、各々の材料を充分に均一に混合するために、前記溶融混練を複数回繰返してもよい。
【0046】
本発明の変性ポリオレフィン樹脂組成物には必要に応じて、酸化防止剤、金属不活性剤、燐系加工安定剤、紫外線吸収剤、紫外線安定剤、蛍光増白剤、金属石鹸、制酸吸着剤などの安定剤、または架橋剤、連鎖移動剤、核剤、滑剤、可塑剤、充填材、強化材、顔料、染料、難燃剤、帯電防止剤などの添加剤を本発明の効果を損なわない範囲内で添加してもよい。これらの安定剤および添加剤を用いる場合は、予め(a)ポリオレフィン樹脂に添加されているものであってもよく、(a)ポリオレフィン樹脂に(c)〜(f)成分をグラフトさせる際に添加されるものであってもよく、また変性ポリオレフィン樹脂を製造したのちに適宜の方法でこの変性ポリオレフィン樹脂に添加されるものであってもよい。
【0047】
本発明の変性ポリオレフィン樹脂組成物は、添加剤として、ポリオレフィン樹脂に添加しても、接着性を向上することができる。
【0048】
本発明の変性ポリオレフィン樹脂組成物は、ポリオレフィン樹脂と混合して用いることができる。例えばポリプロピレン単独重合体、高密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン、ポリ‐1‐ブテン、ポリイソブチレン、プロピレンとエチレンおよび/または1‐ブテンとのあらゆる比率でのランダム共重合体またはブロック共重合体、エチレンとプロピレンとのあらゆる比率においてジエン成分が50重量%以下であるエチレン‐プロピレン‐ジエン三元共重合体、ポリメチルペンテン、シクロペンタジエンとエチレンおよび/またはプロピレンとの共重合体などの環状ポリオレフィン、エチレンまたはプロピレンと50重量%以下のたとえば酢酸ビニル、メタクリル酸アルキルエステル、アクリル酸アルキルエステル、芳香族ビニルなどのビニル化合物などとのランダム共重合体、ポリオレフィン系熱可塑性エラストマーブロック共重合体、オレフィン系熱可塑性エラストマー(ポリプロピレンとエチレン/プロピレン共重合体又はエチレン‐プロピレン‐ジエン三元共重合体の単純混合物、その一部架橋物、又はその完全架橋物)などが挙げられ、これらは単独でまたは2種以上を混合して用いることができる。
【0049】
剛性が高く、安価であるという点からはポリプロピレン単独重合体が好ましく、剛性および耐衝撃性がともに高いという点からはプロピレンとほかの単量体とのブロック共重合体であることが好ましい。また、柔軟性が必要な場合にはポリオレフィン系熱可塑性エラストマーが好ましい。
【0050】
本発明の変性ポリオレフィン樹脂組成物とポリオレフィン樹脂を混合する際にその混合量は特に限定はないが、変性ポリオレフィン樹脂組成物100重量部に対し、0.1〜100重量部を含有とすることが接着性の点で好ましく、更には0.1〜70重量部を含有させることが好ましい。より好ましくは0.3〜50重量部であり、更に好ましくは0.5〜20重量部である。
従来、混練温度が高い場合、ポリオレフィンの熱分解温度が優先するため160〜230℃の温度が好ましいとされており、実際には200℃以下で実施されている。それに対し、グラフト重合の仕方について、特に制限はないが、グラフト重合時に使用する有機過酸化物を効率的に失活させる事が望ましいことを見出した。有機過酸化物が変性ポリオレフィン樹脂組成物中に残留すると、その後の二次加工時に劣化が進行し、着色や強度低下につながる。グラフト重合の際に使用する有機過酸化物を効率的に失活させるために、単軸や二軸押出機のような連続型の混練機の場合、グラフト重合に使用する原料を全て混練した後のシリンダーの一部を235℃以上に加熱する事が好ましい。より確実に失活させるためには240℃以上が好ましく、さらに好ましくは250℃以上である。ニーダーやバンバリーミキサーのようなバッチ混練機の場合、全ての原料を仕込み、反応が終了した後に、混練機の温度を235℃以上にして10秒以上加熱するのが好ましい。より好ましくは、240℃以上で10秒以上、さらに好ましくは250℃以上で10秒以上である。ここで、この有機過酸化物を失活させる工程は、樹脂の熱劣化を防ぐ意味で285℃以下である事が好ましい。
また、混練温度が235度以上の最高温度で混練される時間は、連続型の混練機およびバッチ混練機ともに、5秒以上10分以内であることが望ましい。5秒以下の場合、有機過酸化物を効率的に失活させる事が不十分である場合があり、また10分以上の場合は、生産性が低くなる傾向にあり望ましくない。
【0051】
(シートまたはフィルム状成形体について)
本発明の変性ポリオレフィン樹脂組成物は、熱溶着性を有するポリオレフィンシートまたはフィルム状成形体にすることができる。また、ポリオレフィン樹脂と本発明の変性ポリオレフィン樹脂組成物を混合してなるポリオレフィン樹脂組成物も、熱溶着性を有するポリオレフィンシートまたはフィルム状成形体にすることができる。本発明でいう熱溶着性とは、熱で溶けて被着体と接合する性質のことである。本発明のシートまたはフィルム状成形体とは、成形体の厚みとしては3μmから10mmが例示でき、好ましくは10μm〜5mmであり、シートあるいはフィルムとして利用することができるものである。
【0052】
本発明の熱溶着性を有するポリオレフィンシートまたはフィルム状成形体の製造方法は、特に限定されるものではないが、例えば本発明の変性ポリオレフィン樹脂組成物とポリオレフィン樹脂をドライブレンド、あるいは溶融混練した後に、各種の押出成形機、射出成形機、カレンダー成形機、インフレーション成形機、ロール成形機、あるいは加熱プレス成形機などを用いてシート状成形体に成形加工することが可能である。
【0053】
本発明で用いられる被着体の材料としては、例えば、本発明の接着性フィルムの接着樹脂層と接着し得る材料である。具体的には、例えば、金、銀、銅、鉄、錫、鉛、アルミニウム、シリコンなどの金属;ガラス、セラミックスなどの無機材料;紙、布などのセルロース系高分子材料;メラミン樹脂、アクリル・ウレタン樹脂、ウレタン樹脂、(メタ)アクリル樹脂、スチレン・アクリロニトリル共重合体、ポリカーボネート樹脂、フェノール樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、シリコン樹脂などの合成高分子材料等が挙げられる。
【0054】
被着体の材料として、異なる2種類以上の材料を混合、複合してもよい。また、積層体が本発明の接着性フィルムを介して、異なる2つの被着体が接着してなるものである場合、2つの被着体を構成する材料は、同じ種類の材料でも異なる種類の材料のいずれでもよい。被着体の性状としては特に限定されないが、例えば、フィルム状、シート状、板状、繊維状などが挙げられる。また、被着体には、必要に応じて、離型剤、メッキなどの被膜、塗料による塗膜、プラズマやレーザーなどによる表面改質、表面酸化、エッチングなどの表面処理等を実施してもよい。被着体の具体例としては、トリム類(ドアトリム、内装トリムなど)、成形天井、シート材(内装シート、インパネ表皮、装飾シートなど)等の自動車部材や、室内ドア、パーティション、内装壁板、家具、システムキッチン等の住宅資材で使用される化粧フィルムが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【実施例】
【0055】
以下に具体的な実施例を示すが、本発明は下記実施例に限定されるものではない。下記実施例および比較例中「部」および「%」は、それぞれ「重量部」および「重量%」を表す。
【0056】
(実施例1)
(a)ホモPP(プライムポリマー社製、S119)100部、(b)1,3−ジ(t-ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン(日油社製:パーブチルP、1分間半減期175℃)0.5部をシリンダー温度200℃、ダイスヘッド温度240℃、スクリュー回転数150rpmに設定したベント付き二軸押出機(40mmφ、L/D=38、日本製鋼所製、製品名TEX44)に供給して溶融混練した後、次いで、シリンダー途中より、(f)スチレン5重量部、(c)グリシジルメタクリレート5重量部を加え溶融混練して白色の変性ポリオレフィン樹脂ペレットを得た。なお、240℃のシリンダー部分での滞留時間は、10秒程度であった。得られた変性樹脂ペレットを、130℃の加熱オーブンで24時間乾燥工程にかけたが、変性ポリオレフィン樹脂ペレットに変色は確認されなかった。
【0057】
(実施例2)
(a)ホモPP(プライムポリマー社製、S119)100部、(b)1,3−ジ(t-ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン(日油社製:パーブチルP、1分間半減期175℃)0.5部をシリンダー温度200℃、ダイスヘッド温度240℃、スクリュー回転数150rpmに設定したベント付き二軸押出機(40mmφ、L/D=38、日本製鋼所製、製品名TEX44)に供給して溶融混練した後、次いで、シリンダー途中より、(f)スチレン5重量部、(c)グリシジルメタクリレート5重量部、(e)無水マレイン酸1重量部を加え溶融混練して白色の変性ポリオレフィン樹脂ペレットを得た。なお、240℃のシリンダー部分での滞留時間は、10秒程度であった。得られた変性樹脂ペレットを、130℃の加熱オーブンで24時間乾燥工程にかけたが、変性ポリオレフィン樹脂ペレットに変色は確認されなかった。
【0058】
(実施例3)
(a)ホモPP(プライムポリマー社製、S119)100部、(b)1,3−ジ(t-ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン(日油社製:パーブチルP、1分間半減期175℃)0.5部をシリンダー温度200℃、ダイスヘッド温度280℃、スクリュー回転数150rpmに設定したベント付き二軸押出機(40mmφ、L/D=38、日本製鋼所製、製品名TEX44)に供給して溶融混練した後、次いで、シリンダー途中より、(f)スチレン5重量部、(c)グリシジルメタクリレート5重量部を加え溶融混練して白色の変性ポリオレフィン樹脂ペレットを得た。なお、280℃のシリンダー部分での滞留時間は、10秒程度であった。得られた変性樹脂ペレットを、130℃の加熱オーブンで24時間乾燥工程にかけたが、変性ポリオレフィン樹脂ペレットに変色は確認されなかった。
【0059】
(実施例4)
(a)ホモPP(プライムポリマー社製、S119)100部、(b)1,3−ジ(t-ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン(日油社製:パーブチルP、1分間半減期175℃)0.5部を温度200℃、混練機回転数150rpmに設定したラボプラストミル((株)東洋精機製、LABOPLASTOMILL)に供給して溶融混練し、1分間混練して樹脂を溶融させた所で、(f)スチレン5重量部、(c)グリシジルメタクリレート5重量部を加え、さらに5分間溶融混練した。その後、装置の設定温度を240度とし、240℃に昇温してから1分間混練した。白色の変性ポリオレフィン樹脂の塊を得た。得られた変性樹脂塊を粉砕機でペレットとし、130℃の加熱オーブンで24時間乾燥工程にかけたが、変性ポリオレフィン樹脂ペレットに変色は確認されなかった。
【0060】
(比較例1)
(a)ホモPP(プライムポリマー社製、S119)100部、(b)1,3−ジ(t-ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン(日油社製:パーブチルP、1分間半減期175℃)0.5部をシリンダー温度200℃、スクリュー回転数150rpmに設定したベント付き二軸押出機(40mmφ、L/D=38、日本製鋼所製、製品名TEX44)に供給して溶融混練した後、次いで、シリンダー途中より、(f)スチレン5重量部、(c)グリシジルメタクリレート5重量部を加え溶融混練して白色の変性ポリオレフィン樹脂ペレットを得た。得られた変性樹脂ペレットを、130℃の加熱オーブンで24時間乾燥工程にかけた所、変性ポリオレフィン樹脂ペレットは黄色に変色した。
【0061】
(比較例2) ホモPP(プライムポリマー社製、S119)100重量部、(e)無水マレイン酸が2重量部、(b)パーブチルPが3重量部の混合物を、温度200℃、スクリュー回転速度150rpmに設定したベント口を有する同方向二軸スクリュー混練押出機(40mmφ、L/D=38、日本製鋼所製、製品名TEX44)に5.0kg/時間の速度で供給して溶融混練した。該押出機の吐出部の押出ダイから溶融樹脂をストランド状に押出し、これをカッティングすることによって変性ポリプロピレンのペレットを得た。なお、200℃のシリンダー部分での滞留時間は、30秒程度であった。得られた変性樹脂ペレットを、130℃の加熱オーブンで24時間乾燥工程にかけた所、変性ポリオレフィン樹脂ペレットは黄色に変色した。
【0062】
(比較例3)
(a)ホモPP(プライムポリマー社製、S119)100部、(b)1,3−ジ(t-ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン(日油社製:パーブチルP、1分間半減期175℃)0.5部をシリンダー温度200℃、ダイスヘッド温度330℃、スクリュー回転数150rpmに設定したベント付き二軸押出機(40mmφ、L/D=38、日本製鋼所製、製品名TEX44)に供給して溶融混練した後、次いで、シリンダー途中より、(f)スチレン5重量部、(c)グリシジルメタクリレート5重量部を加え溶融混練して白色の変性ポリオレフィン樹脂ペレットを得た。なお、330℃のシリンダー部分での滞留時間は、10秒程度であった。得られた変性樹脂ペレットは、分子量低下が著しく、使用に耐えないものであった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
グラフト重合に使用する原料が、(a)及び(b)と、(c)、(d)及び(e)から選ばれる少なくとも一つの成分であり、単軸又は二軸押出機から選ばれる連続型生産機を用いて変性ポリオレフィン樹脂を製造する方法であって、前述のグラフト重合に使用する原料の全てを混練した後のシリンダーにおいて、235℃以上に保持されたシリンダーが少なくとも1ヶ所以上存在することを特徴とする変性ポリオレフィン樹脂の製造方法。
(a)ポリオレフィン樹脂 100重量部、
(b)ラジカル重合開始剤 0.01重量部〜5重量部、
(c)エポキシ基含有ビニル単量体 0.01〜10重量部、
(d)エチレン性二重結合及びケイ素原子を同一分子内に含む単量体 0.01〜10重量部、(e)エチレン性二重結合及び酸性極性基を同一分子内に含む単量体 0.01〜10重量部
【請求項2】
グラフト重合に使用する原料が、(a)及び(b)と、(c)、(d)及び(e)から選ばれる少なくとも一つの成分であり、バンバリーミキサー、ミル、ニーダー、加熱ロールから選ばれるバッチ混練機を用いて、変性ポリオレフィン樹脂を製造する方法であって、前述のグラフト重合に使用する原料の全てを混練機に投入して反応させた後、混練機の温度を235℃以上に保持する時間が5秒以上あることを特徴とする変性ポリオレフィン樹脂の製造方法。
(a)ポリオレフィン樹脂 100重量部、
(b)ラジカル重合開始剤 0.01重量部〜5重量部、
(c)エポキシ基含有ビニル単量体 0.01〜10重量部、
(d)エチレン性二重結合及びケイ素原子を同一分子内に含む単量体 0.01〜10重量部、(e)エチレン性二重結合及び酸性極性基を同一分子内に含む単量体 0.01〜10重量部
【請求項3】
請求項1及び請求項2に記載のグラフト重合に使用する原料が、さらに下記(f)成分を含む変性ポリオレフィン樹脂組成物の製造方法。
(f)芳香族ビニル単量体 0.01〜10重量部。
【請求項4】
(c)エポキシ基含有ビニル単量体が、グリシジル(メタ)アクリレートである請求項1〜3いずれかに記載の変性ポリオレフィン樹脂組成物の製造方法。
【請求項5】
(d)エチレン性二重結合及びケイ素原子を同一分子内に含む単量体が、下記一般式(1)で示される化学構造を有する化合物である請求項1、又は2に記載の変性ポリオレフィン樹脂組成物の製造方法。
―SiX3 (1)
(式中、Xはそれぞれ独立に加水分解性基または水酸基である。)
【請求項6】
前記一般式(1)のXが、アルコキシ基であることを特徴とする請求項5に記載の変性ポリオレフィン樹脂組成物の製造方法。
【請求項7】
前記アルコキシ基が、メトキシ基であることを特徴とする請求項6に記載の変性ポリオレフィン樹脂組成物の製造方法。
【請求項8】
(f)芳香族ビニル単量体がスチレンである請求項3に記載の変性ポリオレフィン樹脂組成物の製造方法。

【公開番号】特開2011−256315(P2011−256315A)
【公開日】平成23年12月22日(2011.12.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−133178(P2010−133178)
【出願日】平成22年6月10日(2010.6.10)
【出願人】(000000941)株式会社カネカ (3,932)
【Fターム(参考)】