説明

変性ポリマーの製造法

【課題】ポリマーに、常温かつ酸素の存在下で安定なニトロキシドフリーラジカルを分子中に有する化合物、有機過酸化物および官能基を有するラジカル重合性モノマーを反応させて変性ポリマーを製造するに際し、反応温度を低下させ、加えて変性率を向上せしめた変性ポリマーの製造法を提供する。
【解決手段】(A)ポリマーに、(B)常温かつ酸素の存在下で安定なニトロキシドフリーラジカルを分子中に有する化合物、(C)有機過酸化物および(D)官能基を有するラジカル重合性モノマーを反応させて変性ポリマーを製造するに際し、(E)一般式 NR1R2R3(R1:C1〜C20のアルキル基、アリール基、R2、R3:H、C1〜C20のアルキル基、アリール基)で表されるモノアミン化合物または一般式 (R4)2N(R5N)nR6N(R4)2(R4:H、C1〜C6のアルキル基、R5、R6:C1〜C6のアルキレン基、n:0〜20)で表されるポリアミン化合物であるアミン化合物の存在下で反応させて変性ポリマーを製造する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、変性ポリマーの製造法に関する。さらに詳しくは、ポリマーにニトロキシドフリーラジカル含有化合物および官能基含有重合性モノマーをラジカル反応させる変性ポリマーの製造法に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリマーに、常温かつ酸素の存在下で安定なニトロキシドフリーラジカルを分子中に有する化合物、有機過酸化物および官能基を有するラジカル重合性モノマーを反応させて変性ポリマーを製造することは、従来知られている。
【0003】
例えば、本出願人の出願に係る発明を記載している特許文献1〜2には、ポリイソブチレン、ブチルゴム、イソブチレン-パラメチルスチレン共重合体、ハロゲン化ブチルゴム、臭素化イソブチレン-パラメチルスチレン共重合体等のイソモノオレフィンユニットを有するポリマー、2,2,6,6-テトラメチル-1-ピペリジニルオキシまたはその誘導体であるニトロキシドフリーラジカル含有化合物および有機過酸化物を非溶媒系で混練機中で混合、反応させ、次いでアクリル系モノマーまたは芳香族ビニルモノマーである官能基含有重合性モノマーを反応させて、イソモノオレフィンユニットを有するポリマーに官能基含有重合性モノマーをグラフト反応させ、変性ポリマーを製造する方法が記載されている。
【0004】
イソモノオレフィンユニットを有するポリマーへのニトロキシドフリーラジカル含有化合物および官能基含有重合性モノマーのグラフト反応は、特許文献1〜2の各実施例の記載によれば、それぞれ175℃および185℃での15分間の混練によって行われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第4046734号公報
【特許文献2】特許第4286300号公報
【特許文献3】特許第4101242号公報
【特許文献4】特許第4243320号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、ポリマーに、常温かつ酸素の存在下で安定なニトロキシドフリーラジカルを分子中に有する化合物、有機過酸化物および官能基を有するラジカル重合性モノマーを反応させて変性ポリマーを製造するに際し、反応温度を低下させ、加えて変性率を向上せしめた変性ポリマーの製造法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
かかる本発明の目的は、(A)ポリマーに、(B)常温かつ酸素の存在下で安定なニトロキシドフリーラジカルを分子中に有する化合物、(C)有機過酸化物および(D)官能基を有するラジカル重合性モノマーを反応させて変性ポリマーを製造するに際し、(E)一般式
NR1R2R3 〔I〕
(ここで、R1は炭素数1〜20のアルキル基またはアリール基であり、R2、R3はそれぞれ独立に水素原子、炭素数1〜20のアルキル基またはアリール基である)で表わされるモノアミン化合物
または一般式
(R4)2N(R5N)nR6N(R4)2 〔II〕
(ここで、R4は水素原子または炭素数1〜6のアルキル基であり、R5、R6はそれぞれ独立に炭素数1〜6のアルキレン基であり、nは0〜20の整数である)で表わされるポリアミン化合物
であるアミン化合物の存在下で反応させて変性ポリマーを製造する方法、好ましくは(A)成分ポリマーに、(B)成分ニトロキシドフリーラジカル含有化合物、(C)成分有機過酸化物および(E)成分アミン化合物を添加し、反応させた後、(D)成分官能基含有重合性モノマーを加えて反応させ、変性ポリマーのを製造する方法によって達成される。
【発明の効果】
【0008】
本発明方法において、一般式〔I〕または〔II〕で表わされるアミン化合物の存在下で、ニトロキシドフリーラジカル含有化合物および官能基含有重合性モノマーをグラフト反応させる際の反応温度を、従来の175℃および185℃から120〜170℃に低下させることができ、しかも得られる変性ポリマーの変性率(グラフト量)を向上させることができるという効果が奏せられる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
変性される(A)成分ポリマーとしては、ジエン系ゴム、オレフィン系ポリマー等が用いられ、好ましくは構成単位中にイソブチレン基を含んでいるポリマーが用いられる。
【0010】
ジエン系ゴムとしては、天然ゴム、ポリイソプレンゴム、ポリブタジエンゴム、スチレンブタジエンゴム、アクリロニトリルブタジエンゴム、水素化アクリロニトリルブタジエンゴム、クロロプレインゴム等が用いられる。なお、スチレンブタジエンゴムとしては、乳化重合SBR(E-SBR)、溶液重合SBR(S-SBR)のいずれをも用いることができる。
【0011】
また、オレフィン系ポリマーとしては、例えばエチレンプロピレン共重合体、エチレンブテン共重合体等のエチレン-α-オレフィン共重合体など用いられる。
【0012】
構成単位中にイソブチレン基を有するポリマーとしては、前述の如く、ポリイソブチレン、ブチルゴム、イソブチレン-パラメチルスチレン共重合体、ハロゲン化ブチルゴム、臭素化イソブチレン-パラメチルスチレン共重合体等が用いられる。
【0013】
(B)成分の常温かつ酸素の存在下で安定な、ニトロキシドフリーラジカル(-N-O・)を分子中に有する化合物については、特許文献1〜4に詳細に記載されており、好ましくは2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-1-オキシル〔TEMPO〕

またはその誘導体が用いられる。
【0014】
TEMPOの誘導体として、4-位が置換された誘導体、例えばオキソ、メチル、エチル、メトキシ、エトキシ、クロロ、アミノ、ヒドロキシ、カルボキシル、イソシアネート、グリシジルエーテル、チオグリシジルエーテル、フェニル、フェノキシ、メチルカルボニル、エチルカルボニル、ベンゾイル、ベンゾイルオキシ、アセトキシ、エトキシカルボニル、N-メチルカルバモイルオキシ、N-エチルカルバモイルオキシ、N-フェニルカルバモイルオキシ等が挙げられ、またメチル(4-TEMPO)サルフェイト、エチル(4-TEMPO)サルフェイト、フェニル(4-TEMPO)サルフェイト等も挙げられる。
【0015】
(C)成分有機過酸化物は、TEMPOまたはその誘導体および官能基含有ラジカル重合性モノマーを変性剤とする変性反応に用いられ、例えばベンゾイルパーオキサイド、第3ブチルパーオキシベンゾエート、ジクミルパーオキサイド、第3ブチルクミルパーオキサイド、ジ第3ブチルパーオキサイド、2,5-ジメチル-2,5-ジ第3ブチルパーオキシヘキサン、2,5-ジメチル-2,5-ジ第3ブチルヘキシン-3、2,4-ジクロロベンゾイルパーオキサイド、ジ第3ブチルパーオキシジイソプロピルベンゼン、1,1-ビス(第3ブチルパーオキシ)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、n-ブチル-4,4-ビス(第3ブチルパーオキシ)バレレート、2,2-ビス(第3ブチルパーオキシ)ブタン等が挙げられる。
【0016】
これらの有機過酸化物は、ニトロキシドラジカルを分子中に有する化合物および官能基含有ラジカル重合性モノマーとの反応系に添加することによって、ポリマーに炭素ラジカルを発生させることができる。
【0017】
以上の各成分は、(A)成分ポリマー100重量部に対して、(B)成分ニトロキシドラジカルを有する化合物が1重量部以上、好ましくは1.5〜20重量部の割合で、(C)成分有機過酸化物が0.01〜30重量部、好ましくは0.05〜20重量部の割合で、かつ有機過酸化物に対するニトロキシドラジカルを有する化合物のモル比が0.5以上、好ましくは1以上、さらに好ましくは1.0〜50.0の割合で用いられる。
【0018】
ニトロキシドラジカルを有する化合物の使用割合がこれよりも少ないと、所望のポリマー変性が得られず、一方これよりも多い割合で用いられると、未反応のニトロキシドラジカルを有する化合物が系内に多量の残存するため、配合物の物性を低下させる可能性がある。有機過酸化物の使用割合がこれより少ないと、所望のポリマー変性を達成させることができず、一方これよりも多い割合で用いられると、ポリマーの分解もしくは劣化が促進されてしまい、配合物の物性を低下させる原因となる。また、有機過酸化物に対するニトロキシドラジカルを有する化合物のモル比がこれよりも少ないと、変性さるべきポリマー鎖の分解もしくは劣化が抑えられず、分子量が低下するおそれがある。
【0019】
(D)成分の官能基を有するラジカル重合性モノマーは、カルボニル基、ハロゲン、シアノ基等の電子吸引基を有するものが好ましく、特に(メタ)アクリロキシ基を有するものが好ましい。ここで、(メタ)アクリロキシ基はアクリロキシ基またはメタクリロキシ基を指している。
【0020】
官能基を有するラジカル重合性モノマーとしては、例えばγ-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ-メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、γ-メタクリロキシプロピルトリフェノキシシラン、γ-メタクリロキシプロピルメチルジフェノキシシラン、γ-メタクリロキシプロピルジメチルフェノキシシラン、γ-メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ-メタクリロキシプロピルジメチルエトキシシラン、γ-アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ-アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、γ-アクリロキシプロピルトリフェノキシシラン、γ-アクリロキシプロピルメチルジフェノキシシラン、γ-アクリロキシプロピルジメチルフェノキシシラン、γ-アクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ-アクリロキシプロピルジメチルエトキシシラン等のγ-(メタ)アクリロキシプロピル基含有シラン、あるいはジトリメチロールプロパン テトラアクリレート、2-(2-エトキシエトキシ)エチル アクリレート、ステアリル(メタ) アクリレート、テトラヒドロフルフリル (メタ)アクリレート、ラウリル(メタ) アクリレート、2-フェノキシエチル (メタ)アクリレート、インデシル アクリレート、3,3,5−トリメチルシクロヘキサン アクリレート、イソオクチル アクリレート、オクチル/デシル アクリレート、トリデシル (メタ)アクリレート、カプロラクトン アクリレート、エトキシ化ノニルフェノール アクリレート、イソボルニル アクリレート、環状トリメチロールプロパンフォルマル アクリレート、メトキシポリエチレングリコール モノ(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール ジ(メタ)アクリレート、アルコキシ化テトラヒドロフルフリル アクリレート、アルコキシ化ノニルフェノール アクリレート、アルコキシ化ラウリル アクリレート、アルコキシ化フェノール アクリレート、インデシル メタクリレート、トリデシル メタクリレート、イソボルニル メタクリレート、プロボキシ化アリル メタクリレート、エトキシ化ヒドロキシエチル メタクリレート、ポリプロピレングリコール モノメタクリレート、エトキシ化ノニルフェノール メタクリレート、1,3-ブチレングリコール モノアクリレート、1,3-ブチレングリコール ジ(メタ)アクリレート、1,4-ブチレングリコール ジアクリレート、ジエチレングリコール ジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオール ジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコール ジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール ジアクリレート、テトラエチレングリコール ジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコール ジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコール ジアクリレート、ポリエチレングリコール ジ(メタ)アクリレート、エトキシ化ビスフェノールA ジ(メタ)アクリレート、シクロヘキサンジメタノール ジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコール ジアクリレート、ジオキサングリコール ジアクリレート、アルコキシ化ヘキサンジオール ジアクリレート、アルコキシ化シクロヘキサンジメタノール ジアクリレート、トリシクロデカンジメタノール ジアクリレート、プロポキシ化ネオペンチルグリコール ジアクリレート、アルコキシ化ネオペンチルグリコール ジアクリレート、エチレングリコール ジメタクリレート、1,4-ブタンジオール ジメタクリレート、1,12-ドデカンジオール ジメタクリレート、トリメチロールプロパン トリアクリレート、エトキシ化トリメチロールプロパン トリアクリレート、トリス(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌレート トリアクリレート、ペンタエリスリトール トリアクリレート、プロポキシ化トリメチロールプロパン トリアクリレート、プロポキシ化グリセリル トリアクリレート、ペンタエリスリトール テトラアクリレート、エトキシ化 テトラアクリレート、ジペンタエリスリトール ペンタアクリレート等のγ-(メタ)アクリロキシプロピル基含有シラン以外の(メタ)アクリロキシ基を有する重合性モノマーが挙げられ、(メタ)アクリロキシ基以外の官能基を有する重合性モノマーとしては、例えばトリアリルイソシアヌレート、トリアリルシアヌレート等が挙げられる。
【0021】
また、(D)成分の官能基含有ラジカル重合性モノマーとしては、例えばスチレンまたはその各種誘導体、ジビニルベンゼン、N,N′-フェニレンマレイミド、N,N′-フェニレンアクリルアミド、ビスマレイミドジフェニルメタン等の芳香族ビニルモノマーを用いることもできる。なお、この(D)成分の具体例は、特許文献1〜2に記載されている。
【0022】
これらの(D)成分は、2段階反応の際、ニトロキシドラジカルを有する化合物の結合したポリマー100質量部に対して0.1〜20質量部、好ましくは1〜10質量部の割合で反応に用いられる。(D)成分の使用割合がこれよりも少ないと、所望の変性ポリマーを得ることができず、一方これよりも多い割合で用いられると、変性ポリマーが未反応または単独重合した官能基含有ラジカル重合性モノマーを含むこととなり、やはり所望の変性ポリマーが得られなくなる。
【0023】
このような割合で用いられる以上の各成分は、加熱混合機を用いて140〜170℃の温度で混合し、反応させることによって、ポリマーの変性が行われる。加熱混合機としては、ゴムの加熱混合機として一般に用いられているニーダ、バンバリーミキサ、2軸混練機、ヘンシェルミキサ等が用いられる。
【0024】
これらの加熱混合機を用いての加熱混合は、好ましくは2段階ラジカル重合法によって行われ、ポリマー、ニトロキシドフリーラジカルを有する化合物、有機過酸化物およびアミノ化合物を加熱混合機に投入し、室温乃至約100℃で約5分間程度攪拌した後、混合物温度を上昇させて120〜170℃、好ましくは140〜160℃に達したら、その温度で約5〜20分間程度反応させることによって行われ、ポリマーのニトロキシドフリーラジカル含有化合物による第1段の変性が行われる。
【0025】
この反応に際して用いられる、前記一般式〔I〕で表わされる(E)成分アミン化合物としては、例えばメチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、イソプロピルアミン、ブチルアミン、イソブチルアミン、第3ブチルアミン、ペンチルアミン、イソペンチルアミン、ヘキシルアミン、ヘプチルアミン、オクチルアミン、2-エチルヘキシルアミン、ジイソブチルアミン、ノニルアミン、デシルアミン、ウンデシルアミン、ドデシルアミン、テトラデシルアミン、ヘキサデシルアミン、オクタデシルアミン、エイコシルアミン、ドコシルアミン、アミルアミン、N,N-ジメチルアニリン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリブチルアミン、トリフェニルアミン、N,N-ジメチルシクロヘキシルアミン、N,N,N’,N’-テトラメチルエチレンジアミン、テトラメチルグアニジン、トリエチレンジアミン、N−メチルモルホリン等が挙げられる。
【0026】
また、前記一般式〔II〕で表わされる(E)成分アミン化合物としては、エチレンジアミン、ジアミノプロパン、ジアミノブタン、ジアミノペンタン、ヘキサメチレンジアミン、ジアミノヘプタン、ジアミノオクタン、ジアミノノナン、ジアミノデカン、N-メチルエチレンジアミン、N-エチルエチレンジアミン、N-プロピルエチレンジアミン、N,N-ジメチルエチレンジアミン、N,N,N-トリメチルエチレンジアミン、N-メチル-1,3-プロパンジアミン、N,N,N-トリメチル-1,3-プロパンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、N-(2-アミノエチル)-1,3-プロパンジアミン、N-(3-アミノプロピル)-1,3-プロパンジアミン、N,N-ビス(3-アミノプロピル)-1,3-プロパンジアミン等が挙げられる。
【0027】
これらの(E)成分は、有機過酸化物の-O-O-結合の数に対して0.1〜1.2当量、好ましくは0.5〜1.0当量用いられ、この使用割合がこれよりも少ないと反応温度の低下、変性率の向上という効果を達成することができない。
【0028】
このようにして(B)成分ニトロキシドフリーラジカル含有化合物による第1段の変性が行われた後、(D)成分官能基含有ラジカル重合性モノマーによる第2段の変性が、従来の同じ反応条件、すなわち160〜190℃、好ましくは170〜180℃の温度で約5〜20分間混練し、反応させる工程がとられる。なお、このように、変性剤である(B)成分と(D)成分とを2段階に分けて変性反応させることが好ましいが、(B)成分と(D)成分とを同時に変性反応させることもできる。
【0029】
得られた変性ポリマーは、前記一般式〔I〕または〔II〕で表わされる(E)成分アミン化合物存在下での反応を120〜170℃、好ましくは140〜160℃とより低温条件下で反応が行われているにも拘わらず、(B)成分ニトロキシドフリーラジカル含有化合物および(D)成分官能基含有ラジカル重合性モノマーの変性率(グラフト量)を、それぞれ0.3モル%および0.1モル%程度に迄向上させている。
【実施例】
【0030】
次に、実施例について本発明を説明する。
【0031】
比較例1
(1) 天然ゴム360g、4-ヒドロキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-1-オキシル〔OH-TEMPO〕(ADEKA製品LA7RD)6.37g(有機過酸化物に対するモル比18.5)およびビス(第3ブチルジオキシイソプロピル)ベンゼン-炭酸カルシウム(重量比40:60)混合物〔DTBPOPB〕(化薬アクゾ製品パーカドックス14-40)0.274gを600mlの密閉型混合機に投入し、40℃で5分間攪拌し、さらに混合機内を窒素雰囲気とした後、混合物温度を185℃迄上昇させ、その変性温度で15分間混練して反応させ、変性天然ゴムA(原料使用量の合計366.6gに対応)を得た。
【0032】
(2) 600mlの密閉型混合機に、変性天然ゴムA 346.3gおよびγ-メタクリロキシプロピルトリアルコキシシラン〔シランKBM〕(信越化学製品KBM-503)9.45gを添加し、混合機内を窒素雰囲気とした後、ヘンシェルミキサを用いて180℃で25分間混練して反応させ、変性天然ゴムBを得た。
【0033】
(3) 変性天然ゴムBについて、上記工程(1)および(2)OH-TEMPOの残存率を求めると、それぞれ0.55重量%、0.41重量%という値が得られ、また上記工程(2)におけるOH-TEMPOの変性率(グラフト量)およびシランKBMの変性率(グラフト量)を求めると、それぞれ0.34モル%、0.27モル%という値が得られた。
【0034】
なお、OH-TEMPOの変性率およびシランKBMの変性率は、試料をトルエンに溶解した後、大過剰のメタノール中に攪拌しながら滴下し、沈殿させる操作を2回くり返した後に得られた沈殿ポリマーを真空乾燥器で60℃、48時間乾燥し、この乾燥ポリマーを重クロロホルムに溶解して、1H NMR測定を行い、その水酸基のプロトン量比の値から算出した。
【0035】
実施例1
比較例1(1)において、さらにトリフェニルアミン0.079gが添加して用いられ、反応温度を140℃に変更した。
【0036】
実施例2
比較例1(1)において、さらにN,N-ジメチルアニリン0.039gが添加して用いられ、反応温度を140℃に変更した。
【0037】
実施例3
比較例1(1)において、さらにテトラエチレンペンタミン0.061gが添加して用いられ、反応温度を140℃に変更した。
【0038】
実施例4
比較例1(1)において、DTBPOPB量が0.411gに変更され、さらにトリフェニルアミン0.119gが添加して用いられ、反応温度を140℃に変更した。以下、比較例1(2)、(3)が同様に行われた。
【0039】
実施例5
比較例1(1)において、DTBPOPB量が0.411gに変更され、さらにトリフェニルアミン0.119gが添加して用いられ、反応温度を120℃に変更した。以下、比較例1(2)、(3)が同様に行われた。
【0040】
実施例6
比較例1(1)において、DTBPOPB量が0.411gに変更され、さらにN,N-ジメチルアニリン0.059gが添加して用いられ、反応温度を120℃に変更した。以下、比較例1(2)、(3)が同様に行われた。
【0041】
実施例7
比較例1(1)において、DTBPOPB量が0.411gに変更され、さらにテトラエチレンペンタミン0.092gが添加して用いられ、反応温度を120℃に変更した。以下、比較例1(2)、(3)が同様に行われた。
【0042】
以下の比較例および各実施例で得られた結果は、次の表1に示される。
表1
比較 実施例
例1
〔変性天然ゴムA〕
DTBPOPB(40%) (mg) 274 274 274 274 411 411 411 411
トリフェニルアミン (mg) − 79 − − 119 119 − −
N,N-ジメチルアニリン (mg) − − 39 − − − 59 −
テトラエチレンペンタミン(mg) − − − 61 − − − 92
変性温度 (℃) 185 140 140 140 140 120 120 120
OH-TEMPO残存率 (重量%) 0.55 0.49 0.64 0.53 0.56 0.55 0.51 0.50
OH-TEMPO変性率 (モル%) 0.34 0.94 0.50 0.53 0.98 0.81 0.56 0.59
〔変性天然ゴムB〕
OH-TEMPO残存率 (重量%) 0.41 0.38 0.49 0.38 0.48 0.39 0.49 0.48
シランKBM変性率 (モル%) 0.27 0.76 0.52 0.47 0.89 0.77 0.51 0.55
【0043】
比較例2〜4、実施例8〜12
(1) ブチルゴム(ランクセス社製品Butyl 301)360g、OH-TEMPO 32.2g、DTBPOPB(40%)60.6gおよびトリフェニルアミン35.1g(DTBPOPBに対して100モル%)またはN,N-ジメチルアニリン17.3g(DTBPOPBに対して100モル%)をM600型密閉型混合機に投入し、40℃で5分間攪拌した後、混合物温度を所定温度迄上昇させ、その変性温度で30分間混練して反応させ、変性ブチルゴムA(原料使用量の合計量に対応)を得た。
【0044】
(2) この変性ブチルゴムAの所定量に、γ-メタクリロキシプロピルトリアルコキシシラン〔シランKBM〕0.34gおよびジトリメチロールプロパンテトラアクリレート〔DTMPTA〕21.76gを添加した後、ヘンシェルミキサを用いて180℃で30分間混練して、変性ブチルゴムBを得た。
【0045】
なお、(1)で用いられたアミンの種類、変性温度およびOH-TEMPO変性率、(2)で用いられた変性ブチルゴム量およびDTMPTA変性率は、表2に示される。
表2
比較例 実施例
10 11 12
〔変性ブチルゴムA〕
トリフェニルアミン − − − ○ ○ ○ − −
ジメチルアニリン − − − − − − ○ ○
変性温度 (℃) 140 160 180 140 160 170 140 160
OH-TEMPO変性率(モル%) 0.028 0.041 0.301 0.310 0.331 0.309 0.301 0.321
〔変性ブチルゴムB〕
変性ブチルゴムA (g) 442.8 442.8 442.8 477.9 477.9 477.9 480.1 480.1
アクリレート変性率 0.097 0.090 0.145 0.141 0.153 0.140 0.144 0.151
(モル%)


【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)ポリマーに、(B)常温かつ酸素の存在下で安定なニトロキシドフリーラジカルを分子中に有する化合物、(C)有機過酸化物および(D)官能基を有するラジカル重合性モノマーを反応させて変性ポリマーを製造するに際し、(E)一般式
NR1R2R3 〔I〕
(ここで、R1は炭素数1〜20のアルキル基またはアリール基であり、R2、R3はそれぞれ独立に水素原子、炭素数1〜20のアルキル基またはアリール基である)で表わされるモノアミン化合物
または一般式
(R4)2N(R5N)nR6N(R4)2 〔II〕
(ここで、R4は水素原子または炭素数1〜6のアルキル基であり、R5、R6はそれぞれ独立に炭素数1〜6のアルキレン基であり、nは0〜20の整数である)で表わされるポリアミン化合物
であるアミン化合物の存在下で反応させることを特徴とする変性ポリマーの製造法。
【請求項2】
(A)ポリマーがジエン系ゴムまたはオレフィン系ポリマーである請求項1記載の変性ポリマーの製造法。
【請求項3】
(A)ポリマーが構成単位中にイソブチレン基を含んでいるポリマーである請求項1記載の変性ポリマーの製造法。
【請求項4】
(B)成分ニトロキシドフリーラジカル含有化合物が2,2,6,6-テトラメチル-1-ピペリジニルオキシまたはその誘導体である請求項1記載の変性ポリマーの製造法。
【請求項5】
(D)成分官能基含有ラジカル重合性モノマーが電子吸引基を有するモノマーである請求項1記載の変性ポリマーの製造法。
【請求項6】
(D)成分電子吸引基を有するモノマーがγ-(メタ)アクリロキシプロピル基含有シラン、γ-(メタ)アクリロキシプロピル基含有シラン以外の(メタ)アクリロキシ基を有する重合性モノマーまたは芳香族ビニルモノマーである請求項5記載の変性ポリマーの製造法。
【請求項7】
(A)成分ポリマーに、(B)成分ニトロキシドフリーラジカル含有化合物、(C)成分有機過酸化物および(E)成分アミン化合物を添加し、反応させた後、(D)成分官能基含有ラジカル重合性モノマーを加えて反応させる請求項1記載の変性ポリマーの製造法。
【請求項8】
混練機を用いて反応が行われる請求項1または7記載の変性ポリマーの製造法。
【請求項9】
(E)成分アミン化合物存在下での反応が120〜170℃で行われる請求項1、7または8記載の変性ポリマーの製造法。

【公開番号】特開2011−236280(P2011−236280A)
【公開日】平成23年11月24日(2011.11.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−106883(P2010−106883)
【出願日】平成22年5月7日(2010.5.7)
【出願人】(000006714)横浜ゴム株式会社 (4,905)
【Fターム(参考)】