説明

変性水添ブロック共重合体組成物及び成形品

【課題】透明性、柔軟性、高反発性、表面感触(軟化剤のブリードが無い)に優れ、極性樹脂との接着性に優れ、外観性(発色性、透明性)を有する材料として、各種用途に好適に用いることができる変性水添ブロック共重合体組成物を提供する。
【解決手段】(I−1)ビニル芳香族炭化水素化合物を主体とする重合体ブロックAと共役ジエン化合物を主体とする重合体ブロックBとを有し、前記ビニル芳香族炭化水素化合物の含有量が5〜50質量%である水添ブロック共重合体に、官能基を有する原子団が結合している変性水添ブロック共重合体:100質量部と、
(II)ゴム用軟化剤:50〜200質量部と、
を、含有する変性水添ブロック共重合体組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、変性水添ブロック共重合体とゴム用軟化剤とを組み合わせた変性水添ブロック共重合体組成物及びこの変性水添ブロック共重合体組成物を用いた成形品に関する。
【背景技術】
【0002】
共役ジエン化合物とビニル芳香族炭化水素化合物とからなるブロック共重合体は、比較的ビニル芳香族炭化水素化合物の割合が少ない場合、加硫をしなくても加硫された天然ゴムや合成ゴムと同様の弾性を常温にて示し、しかも高温では熱可塑性樹脂と同様の加工性を有していることから、履物、プラスチック改質、アスファルト改質、粘接着材等の分野で広く利用されている。
【0003】
しかしながら、比較的ビニル芳香族炭化水素化合物の割合が少ないブロック共重合体は、柔軟性、反発性は良好であるものの、極性樹脂との接着性に劣り、十分な衝撃緩衝性が得られないという欠点を有している。
【0004】
一方、従来から、柔軟性を有する材料として、ビニル芳香族炭化水素化合物含有量が3〜50質量%のランダム共重合体であって、分子量分布(Mw/Mn)が10以下であり、かつ、共重合体中のジエン部のビニル結合量が10〜90%である共重合体を水素添加した水添ジエン系共重合体と、ポリプロピレン樹脂とを組み合わせた組成物が開示されている(例えば、特許文献1参照。)。また、ビニル芳香族炭化水素化合物含有量が5〜60質量%のランダム共重合体であって、かつ、共重合体中のジエン部のビニル結合量が60%以上である共重合体を水素添加した水添ジエン系共重合体と、ポリプロピレン樹脂とを組み合わせた組成物が開示されている(例えば、特許文献2参照。)。
【0005】
さらに、オイルブリードが少なく、かつ、優れた機械強度、透明性、柔軟性を有する熱可塑性エラストマー組成物についても開示されている(例えば、特許文献3参照。)。
【0006】
またさらに、ビニル芳香族炭化水素化合物含有量が比較的多いブロック共重合体において、柔軟性を有する材料を得る試みが行われており、スチレン主体のブロックとブタジエン/スチレンを主体とするブロックとを含有する共重合体からなる水添ブロック共重合体をベースとする成形材料が開示されている(例えば、特許文献4参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平2−158643号公報
【特許文献2】特開平6−287365号公報
【特許文献3】特開2005−281489号公報
【特許文献4】国際公開第98/012240号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1及び2に開示された組成物は、柔軟性が十分ではなく、また極性樹脂との接着性が不十分であるという問題を有している。
【0009】
また、特許文献3に開示された熱可塑性エラストマー組成物は、柔軟性、透明性、高反発性に優れ、オイルブリードが少なく成形性にも優れているが、極性樹脂との接着性が不十分であるという問題を有している。
【0010】
さらに、特許文献4に開示された水添共重合体は、低反発性に優れるものの、柔軟性に乏しく、やはり衝撃緩衝性は不十分であり、また、柔軟性を付与する目的でゴム用軟化剤を添加すると柔軟性は向上するものの、オイルブリードが発生するという問題を有している。
【0011】
本発者らは、柔軟性と低反発性を両立した、衝撃緩衝性に優れる材料として使用可能な、水添ブロック共重合体と該水添ブロック共重合体とゴム用軟化剤とを含む組成物を開発した(国際公開第06/088187パンフレット参照)。しかしながら、極性樹脂との接着性については、さらなる改良が必要であるとされているのが現状である。
【0012】
そこで本発明においては、上述した事情に鑑み、実用上十分な機械強度を有し、柔軟性に優れ、高反発性を有し、かつ極性樹脂との接着性にも優れ、さらには外観性(透明性及びこれに伴う発色性)を必要とする軟質材料としても好適な、変性水添ブロック共重合体組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者らは上記課題を解決するため鋭意検討を重ねた結果、特定の変性水添ブロック共重合体とゴム用軟化剤とを、特定の割合で含有する変性水添ブロック共重合体組成物が、上記従来技術の課題を解決することを見出し、本発明を完成するに至った。
詳しくは以下のとおりである。
【0014】
〔1〕
(I−1)ビニル芳香族炭化水素化合物を主体とする重合体ブロックAと共役ジエン化合物を主体とする重合体ブロックBとを有し、前記ビニル芳香族炭化水素化合物の含有量が5〜50質量%である水添ブロック共重合体に、官能基を有する原子団が結合している変性水添ブロック共重合体:100質量部と、
(II)ゴム用軟化剤:50〜200質量部と、
を、含有する変性水添ブロック共重合体組成物。
【0015】
〔2〕
(I−1)ビニル芳香族炭化水素化合物を主体とする重合体ブロックAと共役ジエン化合物を主体とする重合体ブロックBとを有し、前記ビニル芳香族炭化水素化合物の含有量が5〜50質量%である水添ブロック共重合体に、官能基を有する原子団が結合している変性水添ブロック共重合体と、
(I−2) 共役ジエン化合物とビニル芳香族化合物からなる水添ブロック共重合体であって、下記の(1)〜(6)を満たす水添ブロック共重合体に、官能基を有する原子団が結合している変性水添ブロック共重合体と
を、10/90〜90/10の比率で混合した変性水添ブロック共重合体(I−3):100質量部と、
(II)ゴム用軟化剤:50〜200質量部と、
を、含有する変性水添ブロック共重合体組成物。
(1)下記(a)、(b)、(c)の重合体ブロックをそれぞれ少なくとも1個有する。
(a)ビニル芳香族化合物重合体ブロック
(b)共役ジエン化合物とビニル芳香族化合物からなる水添共重合体ブロック
(c)ビニル結合量が40%以上の共役ジエン化合物重合体の水添重合体ブロック
(2)前記水添ブロック共重合体中の前記ビニル芳香族化合物の含有量が40質量%を超 え70質量%未満。
(3)重量平均分子量が5万〜50万。
(4)前記水添重合体ブロック(b)の水添前重合体を構成する共役ジエン化合物単量体 単位のビニル結合量が10%以上20%未満。
(5)前記(I−2)の水添前のブロック共重合体を構成する共役ジエン化合物単量体単 位の二重結合の水添率が50%以上。
(6)前記水添ブロック共重合体中の前記ビニル芳香族化合物重合体ブロック(a)の含 有量が5質量%以上30質量%以下、前記水添共重合体ブロック(b)の含有量が 30質量%以上50質量%以下、前記水添重合体ブロック(c)の含有量が35質 量%を超え50質量%以下。
【0016】
〔3〕
JIS K6253による硬度が5〜35であり、BS903により、23℃で測定される反発弾性率が50%以上である、前記〔1〕又は〔2〕に記載の変性水添ブロック共重合体組成物。
【0017】
〔4〕
前記〔1〕乃至〔3〕のいずれか一に記載の変性水添ブロック共重合体組成物が架橋されたものである変性水添ブロック共重合体組成物。
【0018】
〔5〕
前記〔1〕乃至〔4〕のいずれか一に記載の変性水添ブロック共重合体組成物を成形した成形品。
【0019】
〔6〕
前記成形品の表面に、ウレタン皮膜をさらに具備する前記〔5〕に記載の成形品。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、加工性、柔軟性、高反発性、表面感触が良好で軟化剤のブリードが無く、極性樹脂との接着性に優れ、透明性及び発色性等の外観性が良好で、各種用途に好適に適用可能な変性水添ブロック共重合体組成物が得られる。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明を実施するための形態(以下、「本実施形態」と言う。)について説明するが、本発明は以下に示す形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施できる。
【0022】
第1の実施形態として、後述する変性水添ブロック共重合体(I−1):100質量部と、後述するゴム用軟化剤(II):50〜200質量部とを含有する変性水添ブロック共重合体組成物を提供する。
【0023】
第2の実施形態として、後述する変性水添ブロック共重合体(I−1)と、後述する変性水添ブロック共重合体(I−2)とを、10/90〜90/10の比率で混合した変性水添ブロック共重合体(I−3):100質量部と、後述するゴム用軟化剤(II):50〜200質量部とを含有する変性水添ブロック共重合体組成物を提供する。
【0024】
〔第1の実施形態の変性水添ブロック共重合体組成物〕
上記のように、第1の実施形態の変性水添ブロック共重合体組成物は、
(I−1)ビニル芳香族炭化水素化合物を主体とする重合体ブロックAと共役ジエン化合物を主体とする重合体ブロックBとを有し、前記ビニル芳香族炭化水素化合物の含有量が5〜50質量%である水添ブロック共重合体に、官能基を有する原子団が結合している変性水添ブロック共重合体:100質量部と、
(II)ゴム用軟化剤:50〜200質量部と、
を、含有する変性水添ブロック共重合体組成物である。
【0025】
((I−1)変性水添ブロック共重合体)
(I−1)変性水添ブロック共重合体は、ビニル芳香族炭化水素化合物を主体とする重合体ブロックAと、共役ジエン化合物を主体とする重合体ブロックBとを有している。
上記「ビニル芳香族炭化水素化合物を主体とする」とは、前記重合体ブロックA中のビニル芳香族炭化水素化合物の含有量が50質量%以上であることを意味し、上記「共役ジエン化合物を主体とする」とは、前記重合体ブロックB中の共役ジエンの含有量が50質量%以上であることを意味する。
この(I−1)変性水添ブロック共重合体の、変性前における水添ブロック共重合体のビニル芳香族炭化水素化合物含有量は、本実施形態の変性水添ブロック共重合体組成物の機械強度の観点から5質量%以上であるものとし、硬度の観点から50質量%以下であるものとし、好ましくは10〜40質量%、より好ましくは15〜35質量%の範囲とする。
【0026】
((I−1)変性水添ブロック共重合体の製造方法)
先ず、変性前であって、かつ水素添加前のブロック共重合体の製造方法について説明する。このブロック共重合体の製造方法としては、例えば、特公昭36−19286号公報、特公昭43−17979号公報、特公昭46−32415号公報、特公昭49−36957号公報、特公昭48−2423号公報、特公昭48−4106号公報、特公昭51−49567号公報、特開昭59−166518号公報等に記載された方法が適用できる。
上記において記載されている製造方法は、後述する「共役ジエン化合物」と、「ビニル芳香族炭化水素化合物」とを、後述する「重合溶媒」、「重合触媒」を用いて、後述する「重合条件」により重合することにより、前記変性前であって水素添加前のブロック共重合体が得るものである。
これらの方法により得られるブロック共重合体のリビング末端に、後述する変性剤を用いて後述する変性反応に従って付加反応を行うことにより、官能基を含有する変性ブロック共重合体が得られる。
変性ブロック共重合体は、例えば下記一般式で表されるような構造を有する。
【0027】
(A−B)n−Z、A−(B−A)n−Z、B−(A−B)n−Z、 Z−(A−B)n
Z−(A−B)n−Z、 Z−A−(B−A)n−Z、Z−B−(A−B)n−Z、
[(B−A)nm−Z、[(A−B)n]m−Z、 [(B−A)n−B]m−Z、
[(A−B)n−A]m−Z
【0028】
上記一般式において、Aはビニル芳香族炭化水素化合物を主体とする重合体ブロックである。
Bは共役ジエン化合物を主体とする重合体ブロックである。
AブロックとBブロックとの境界は必ずしも明瞭に区別される必要はない。
nは1以上の整数、好ましくは1〜5の整数である。
mは2以上の整数、好ましくは2〜11の整数である。
Zは、後述する官能基を有する原子団が結合している変性剤の残基を示す。
Zを後述するメタレーション反応で付加させる場合は、Aブロック及び/又はBブロックの側鎖に結合している。
ブロック共重合体中にAブロック及びBブロックがそれぞれ複数存在する場合、それらの構造は同一でも、異なっていてもよい。
また、Zに結合しているポリマー鎖の構造は同一でも、異なっていてもよい。
【0029】
なお、上記において、ビニル芳香族炭化水素化合物を主体とする重合体ブロックAは、ビニル芳香族炭化水素化合物を好ましくは50質量%以上、より好ましくは70質量%以上含有するビニル芳香族炭化水素化合物と共役ジエン化合物との共重合体ブロック又はビニル芳香族炭化水素化合物単独重合体ブロックを示す。
また、上記において、共役ジエン化合物を主体とする重合体ブロックBは、共役ジエン化合物を好ましくは50質量%を超える量で、より好ましくは60質量%以上含有する共役ジエン化合物とビニル芳香族炭化水素化合物との共重合体ブロック又は共役ジエン化合物単独重合体ブロックを示す。
【0030】
共役ジエン化合物を主体とする重合体ブロックB中の、ビニル芳香族炭化水素化合物は、均一に分布していても、テーパー状に分布していてもよい。
また、共重合体ブロック部分には、ビニル芳香族炭化水素化合物が均一に分布している部分及び/又はテーパー状に分布している部分が、それぞれ複数個共存していてもよい。
さらに、該共重合体ブロック部分には、ビニル芳香族炭化水素化合物含有量が異なる部分が複数個共存してもよい。
本実施形態の変性水添ブロック共重合体組成物を形成するためのブロック共重合体は、上記一般式で表されるブロック共重合体の任意の混合物でもよい。
【0031】
本実施形態の変性水添ブロック共重合体組成物を形成するためのブロック共重合体中の共役ジエン化合物部分のミクロ構造(シス、トランス、ビニルの比率)は、後述する極性化合物等の使用により任意に変えることができる。具体的に、共役ジエン化合物として1,3−ブタジエンを使用した場合には、1,2−ビニル結合量は好ましくは10〜80%、より好ましくは25〜75%である。共役ジエン化合物としてイソプレンを使用した場合又は1,3−ブタジエンとイソプレンとを併用した場合には、1,2−ビニル結合と3,4−ビニル結合との合計量は好ましくは5〜70%である。
なお、本明細書においては、1,2−ビニル結合と3,4−ビニル結合との合計量(但し、共役ジエン化合物として1,3−ブタジエンを使用した場合には、1,2−ビニル結合量)を、以後ビニル結合量と称する。
【0032】
(共役ジエン化合物)
本実施形態の変性水添ブロック共重合体組成物を形成するための、ブロック共重合体を構成する共役ジエン化合物とは、一対の共役二重結合を有するジオレフィンである。
例えば、1,3−ブタジエン、2−メチル−1,3−ブタジエン(イソプレン)、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエン、1,3−ヘキサジエン等が挙げられるが、特に一般的なものとしては、1,3−ブタジエン、イソプレンが挙げられる。
これらは、一つのブロック共重合体を製造する際、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0033】
本実施形態の変性水添ブロック共重合体組成物を形成するための、ブロック共重合体を構成する共役ジエンとして、イソプレンと1,3−ブタジエンとを併用する場合、イソプレンと1,3−ブタジエンとの質量比は、好ましくは95/5〜5/95、より好ましくは90/10〜10/90、更に好ましくは85/15〜15/85である。
特に、イソプレンと1,3−ブタジエンとを併用すると、高温での成形加工においても外観特性と機械的特性のバランス性能の良好な変性水添ブロック共重合体組成物が得られる。
【0034】
(ビニル芳香族炭化水素化合物)
本実施形態の変性水添ブロック共重合体組成物を形成するための、ブロック共重合体を構成するビニル芳香族炭化水素化合物としては、例えば、スチレン、o−メチルスチレン、p−メチルスチレン、p−tert−ブチルスチレン、1,3−ジメチルスチレン、α−メチルスチレン、ビニルナフタレン、ビニルアントラセン等が挙げられるが、特に一般的なものとしてはスチレンが挙げられる。
これらは、一つのブロック共重合体を製造する際、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0035】
本実施形態の変性水添ブロック共重合体組成物を構成している変性水添ブロック共重合体の、変性前における水添ブロック共重合体中のビニル芳香族炭化水素化合物含有量は、UV法、NMR法により測定できる。
また、そのビニル芳香族炭化水素化合物中で、ブロックAで存在しているものの含有量は、下記の分析方法により求めることができる。
重合体ブロックAの含有量は、四酸化オスミウムを触媒として水素添加前のブロック共重合体を、ターシャリーブチルハイドロパーオキサイドにより酸化分解する方法(I.M.KOLTHOFF、etal.、J.Polym.Sci.1、429(1946)に記載の方法。以後、四酸化オスミウム酸法と呼ぶ。)で測定できる。
また、重合体ブロックAの含有量は、水素添加前のブロック共重合体や水素添加後のブロック共重合体を検体として、核磁気共鳴装置(NMR)を用いて(Y.Tanaka、et al.、RUBBER CHEMISTRY and TECHNOLOGY 54、685(1981)に記載の方法。以後、NMR法と呼ぶ。)測定することもできる。
なお、この場合、四酸化オスミウム酸法により水素添加前のブロック共重合体を用いて測定した重合体ブロックAの含有量(Osとする)と、NMR法により水添後の共重合体を用いて測定した重合体ブロックAの含有量(Nsとする)には、下記式(F)に示される相関関係がある。
(Os)=−0.012(Ns)2+1.8(Ns)−13.0 ・・・式(F)
従って、NMR法で水添後のブロック共重合体における重合体ブロックAの含有量を求める場合、上式(F)で求められた(Os)の値を本実施の形態で規定する重合体ブロックAの含有量とする。
【0036】
(重合溶媒)
本実施形態の変性水添ブロック共重合体組成物を形成するための、ブロック共重合体の製造に用いられる溶媒としては、例えば、ブタン、ペンタン、ヘキサン、イソペンタン、ヘプタン、オクタン、イソオクタン等の脂肪族炭化水素、シクロペンタン、メチルシクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン等の脂環式炭化水素、ベンゼン、トルエン、エチルベンゼン、キシレン等の芳香族炭化水素等の炭化水素系溶媒が挙げられる。これらは単独で用いてもよく、二種以上を併用してもよい。
【0037】
(重合触媒)
本実施形態の変性水添ブロック共重合体組成物を形成するための、ブロック共重合体の製造に用いられる重合触媒としては、有機リチウム化合物が用いられる。
有機リチウム化合物は、分子中に1個以上のリチウム原子を結合した化合物であり、例えばエチルリチウム、n−プロピルリチウム、イソプロピルリチウム、n−ブチルリチウム、sec−ブチルリチウム、tert−ブチルリチウム、ヘキサメチレンジリチウム、ブタジエニルジリチウム、イソプレニルジリチウムなどが挙げられる。これらは一種のみならず二種以上を使用してもよい。又、有機リチウム化合物は、ブロック共重合体の製造において重合途中で1回以上分割添加してもよい。
【0038】
本実施形態の変性水添ブロック共重合体組成物を形成するための、ブロック共重合体の重合工程において、重合速度の調整、重合した共役ジエン化合物部分のミクロ構造の変更、共役ジエン化合物とビニル芳香族炭化水素化合物との反応性比の調整等の目的で、極性化合物やランダム化剤を使用してもよい。
極性化合物やランダム化剤としては、エーテル類、アミン類、チオエーテル類、ホスホルアミド、アルキルベンゼンスルホン酸のカリウム塩又はナトリウム塩、カリウム又はナトリウムのアルコキシド等が挙げられる。
エーテル類としては、例えば、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、ジフェニルエーテル、テトラヒドロフラン、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテルが挙げられる。
アミン類としては、第三級アミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、テトラメチルエチレンジアミン、その他環状第三級アミン等が挙げられる。
ホスホルアミドとしては、トリフェニルホスフィン、ヘキサメチルホスホルアミド等が挙げられる。
【0039】
(重合条件)
本実施形態の変性水添ブロック共重合体組成物を形成するための、ブロック共重合体の製造工程において、重合温度は、好ましくは−10〜150℃、より好ましくは30〜120℃である。
重合に要する時間は、条件によって異なるが、好ましくは48時間以内であり、特に好適には0.5〜10時間である。
重合系の雰囲気は、窒素ガス等の不活性ガス雰囲気とすることが好ましい。
重合圧力は、上記重合温度範囲でモノマー及び溶媒を液相に維持するに充分な圧力の範囲で行えばよく、特に限定されるものではない。
さらに、重合系内は、触媒及びリビングポリマーを不活性化させるような不純物、例えば水、酸素、炭酸ガス等が混入しないようにすることが好ましい。
【0040】
上述したように、有機リチウム化合物を重合触媒として得られたブロック共重合体は、 少なくとも1個のビニル芳香族炭化水素化合物を主体とする重合体ブロックAと少なくとも1個の共役ジエン化合物を主体とする重合体ブロックBからなるブロック共重合体であり、このブロック共重合体のリビング末端に、後述するように、官能基含有変性剤を付加反応させて、変性ブロック共重合体とする。その後、水素添加を行うことにより、変性水添ブロック共重合体(I−1)が得られる。
なお、重合体ブロック共重合体に水素添加を行ってから、変性反応を行ってもよい。
【0041】
(変性反応)
上述のようにして得られたブロック共重合体に対し、下記のように変性反応を行う。
変性ブロック共重合体は、官能基を少なくとも1個有する原子団が少なくとも1個結合しているものとする。
上述のようにして得られたブロック共重合体のリビング末端との付加反応により、ブロック共重合体に、官能基を少なくとも1個有する原子団が結合されている変性ブロック共重合体を生成する、官能基を有する変性剤、あるいは該官能基を公知の方法で保護した原子団が結合している変性剤を付加反応させることにより得られる。
また、他の方法としては、ブロック共重合体に有機リチウム化合物等の有機アルカリ金属化合物を反応(メタレーション反応)させ、ブロック共重合体に有機アルカリ金属が付加した重合体に、所定の変性剤を付加反応させる方法が挙げられる。
後者の方法の場合、ブロック共重合体の水添物を得た後にメタレーション反応させ、上記の変性剤を反応させてもよい。
【0042】
変性剤の種類により、変性剤を反応させた段階で、一般に水酸基やアミノ基等は、アルカリ金属塩となっていることもあるが、その場合には水やアルコール、無機酸等活性水素を有する化合物(活性水素含有化合物)で処理することにより、水酸基やアミノ基等にすることができる。
なお、ブロック共重合体のリビング末端に変性剤を反応させる際に、一部変性されていないブロック共重合体が、(I−1)の変性水添ブロック共重合体に混在してもよい。
(I−1)の変性水添ブロック共重合体に混在する未変性の水添ブロック共重合体の割合は、70質量%以下であることが好ましく、60質量%以下であることが好ましく、50質量%以下であることがさらに好ましい。
【0043】
(変性剤)
変性剤としては、下記のものが挙げられる。
例えば、テトラグリシジルメタキシレンジアミン、テトラグリシジル−1,3−ビスアミノメチルシクロヘキサン、テトラグリシジル−p−フェニレンジアミン、テトラグリシジルジアミノジフェニルメタン、ジグリシジルアニリン、ジグリシジルオルソトルイジン、4,4’−ジグリシジルージフェニルメチルアミン、4,4’−ジグリシジルージベンジルメチルアミン、ジグリシジルアミノメチルシクロヘキサン等のポリエポキシ化合物が挙げられる。
【0044】
また、γ−グリシドキシエチルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシブチルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリプロポキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリブトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリフェノキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルエチルジメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルエチルジエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジプロポキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジブトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジフェノキシシラン、γ−グリシドキシプロピルジメチルメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルジエチルエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルジメチルエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルジメチルフェノキシシラン、γ−グリシドキシプロピルジエチルメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジイソプロペンオキシシラン、ビス(γ−グリシドキシプロピル)ジメトキシシラン、ビス(γ−グリシドキシプロピル)ジエトキシシランが挙げられる。
【0045】
また、ビス(γ−グリシドキシプロピル)ジプロポキシシラン、ビス(γ−グリシドキシプロピル)ジブトキシシラン、ビス(γ−グリシドキシプロピル)ジフェノキシシラン、ビス(γ−グリシドキシプロピル)メチルメトキシシラン、ビス(γ−グリシドキシプロピル)メチルエトキシシラン、ビス(γ−グリシドキシプロピル)メチルプロポキシシラン、ビス(γ−グリシドキシプロピル)メチルブトキシシラン、ビス(γ−グリシドキシプロピル)メチルフェノキシシラン、トリス(γ−グリシドキシプロピル)メトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、γ−メタクリロキシメチルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシエチルトリエトキシシラン、ビス(γ−メタクリロキシプロピル)ジメトキシシラン、トリス(γ−メタクリロキシプロピル)メトキシシランである。
【0046】
また、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチル−トリメトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチル−トリエトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチル−トリプロポキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチル−トリブトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチル−トリフェノキシシランが挙げられる。
【0047】
また、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)プロピル−トリメトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチル−メチルジメトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチル−エチルジメトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチル−エチルジエトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチル−メチルジエトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチル−メチルジプロポキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチル−メチルジブトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチル−メチルジフェノキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチル−ジメチルメトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチル−ジエチルエトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチル−ジメチルエトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチル−ジメチルプロポキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチル−ジメチルブトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチル−ジメチルフェノキシシランが挙げられる。
【0048】
さらに、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチル−ジエチルメトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチル−メチルジイソプロペンオキシシラン、N−(1、3−ジメチルブチリデン)−3−(トリエトキシシリル)−1−プロパンアミンが挙げられる。
【0049】
また、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、1,3−ジエチル−2−イミダゾリジノン、N,N’−ジメチルプロピレンウレア、1,3−ジエチル−2−イミダゾリジノン、1,3−ジプロピル−2−イミダゾリジノン、1−メチル−3−エチル−2−イミダゾリジノン、1−メチル−3−プロピル−2−イミダゾリジノン、1−メチル−3−ブチル−2−イミダゾリジノン、1−メチル−3−(2−メトキシエチル)−2−イミダゾリジノン、1−メチル−3−(2−エトキシエチル)−2−イミダゾリジノン、1,3−ジ−(2−エトキシエチル)−2−イミダゾリジノン、1,3−ジメチルエチレンチオウレア、N,N’−ジエチルプロピレンウレア、N−メチル−N’−エチルプロピレンウレア等が挙げられる。
【0050】
また、1−メチル−2−ピロリドン、1−シクロヘキシル−2−ピロリドン、1−エチル−2−ピロリドン、1−プロピル−2−ピロリドン、1−ブチル−2−ピロリドン、1−イソプロピル−2−ピロリドン、1,5−ジメチル−2−ピロリドン、1−メトキシメチル−2−ピロリドン、1−メチル−2−ピペリドン、1,4−ジメチル−2−ピペリドン、1−エチル−2−ピペリドン、1−イソプロピル−2−ピペリドン、1−イソプロピル−5,5−ジメチル−2−ピペリドン等が挙げられる。
【0051】
上記の変性剤を反応させることにより、官能基を少なくとも1個有する原子団が結合している変性剤の残基が結合している変性水添ブロック共重合体(I−1)が得られる。
変性水添ブロック共重合体(I−1)は、窒素原子、酸素原子、カルボニル基等を有しているため、これらと極性樹脂の極性基間での水素結合等の物理的な親和力により相互作用が効果的に発現され、極性樹脂との接着性の向上効果が発揮される。
【0052】
上述したブロック共重合体のリビング末端に、官能基含有変性剤を付加反応させる場合、ブロック共重合体のリビング末端は、重合体ブロックAでも重合体ブロックBのいずれでもよいが、本実施形態の変性水添ブロック共重合体組成物において、機械強度や耐衝撃性等のバランスに優れたものとするためには、重合体ブロックAの末端に結合していることが好ましい。
【0053】
上述した官能基含有変性剤の使用量は、ブロック共重合体のリビング末端1当量に対して0.5当量を超え10当量以下が好ましく、0.7当量を超え5当量以下がより好ましく、1当量を超え4当量以下がさらに好ましい。
なお、本発明において、ブロック共重合体のリビング末端の量は、重合に使用した重合触媒の有機リチウム化合物の量から算出できる。
【0054】
(水素添加反応)
変性水添ブロック共重合体(I−1)は、上述のようにして得られる変性ブロック共重合体を水素添加することにより得られる。
(水添触媒)
水添触媒としては、特に制限されず、従来から公知である(1)Ni、Pt、Pd、Ru等の金属をカーボン、シリカ、アルミナ、ケイソウ土等に担持させた担持型不均一系水添触媒、(2)Ni、Co、Fe、Cr等の有機酸塩又はアセチルアセトン塩等の遷移金属塩と有機アルミニウム等の還元剤とを用いる、いわゆるチーグラー型水添触媒、(3)Ti、Ru、Rh、Zr等の有機金属化合物等のいわゆる有機金属錯体等の均一系水添触媒が用いられる。
具体的には、特公昭42−8704号公報、特公昭43−6636号公報、特公昭63−4841号公報、特公平1−37970号公報、特公平1−53851号公報、特公平2−9041号公報に記載された水添触媒を使用できる。
【0055】
好ましい水添触媒としては、チタノセン化合物及び/又は還元性有機金属化合物との混合物が挙げられる。
チタノセン化合物としては、特開平8−109219号公報に記載された化合物が使用できる。具体例としては、ビスシクロペンタジエニルチタンジクロライド、モノペンタメチルシクロペンタジエニルチタントリクロライド等の(置換)シクロペンタジエニル骨格、インデニル骨格あるいはフルオレニル骨格を有する配位子を少なくとも1つ以上有する化合物が挙げられる。
また、還元性有機金属化合物としては、有機リチウム等の有機アルカリ金属化合物、有機マグネシウム化合物、有機アルミニウム化合物、有機ホウ素化合物あるいは有機亜鉛化合物等が挙げられる。
【0056】
(水添反応条件)
水添反応は、好ましくは0〜200℃、より好ましくは30〜150℃の温度範囲で実施する。
水添反応に使用される水素の圧力は、好ましくは0.1〜15MPa、より好ましくは0.2〜10MPa、さらに好ましくは0.3〜5MPaとする。
また、水添反応時間は、好ましくは3分〜10時間、より好ましくは10分〜5時間である。
水添反応は、バッチプロセス、連続プロセス、或いはそれらの組み合わせのいずれでも適用できる。
【0057】
変性水添ブロック共重合体(I−1)を構成する共役ジエン化合物に基づく不飽和二重結合のトータル水素添加率は、目的に合わせて任意に選択でき、特に限定されない。
上記変性水添ブロック共重合体(I−1)の変性前であって水添前のブロック共重合体中の共役ジエン化合物に基づく不飽和二重結合の70%以上、好ましくは80%以上、さらに好ましくは90%以上が水添されていてもよく、一部のみが水添されていてもよい。
一部のみを水添する場合には、水添率が10%以上70%未満、或いは15%以上65%未満、所望によっては20%以上60%未満にすることが推奨される。
熱安定性が高度に要求される場合70%以上であることが好ましく、高度な熱安定性を要求されない場合は、上記のように、一部のみが水添されているものであってもよい。
【0058】
さらに、変性水添ブロック共重合体において、水素添加前の共役ジエン化合物にもとづくビニル結合の水素添加率が、85%以上であることが好ましく、90%以上であることがより好ましく、95%以上であることがさらに好ましい。これにより熱安定性に優れた組成物が得られる。
ここで、ビニル結合の水素添加率とは、ブロック共重合体中に組み込まれている水素添加前の共役ジエン化合物に基づくビニル結合のうち、水素添加されたビニル結合の割合をいう。
変性水添ブロック共重合体中の共役ジエン化合物に基づくビニル結合量は、核磁気共鳴装置(NMR)を用いて知ることができる。
また水添率も、同装置を用いて知ることができる。
なお、変性水添ブロック共重合体中のビニル芳香族炭化水素化合物に基づくビニル芳香族二重結合の水添率については特に制限はないが、好ましくは50%以下、より好ましくは30%以下、さらに好ましくは20%以下である。
水添率は、核磁気共鳴装置(NMR)により測定できる。
【0059】
〔(I−1)変性水添ブロック共重合体の重量平均分子量〕
変性水添ブロック共重合体(I−1)の重量平均分子量は、組成物の機械的強度の点から3万以上、加工性の点から100万以下であることが好ましく、より好ましくは4万〜50万、さらに好ましくは5〜30万である。
変性水添ブロック共重合体の重量平均分子量は、ゲルパーミュエーションクロマトグラフィー(GPC)による測定を行い、市販の標準ポリスチレンの測定から求めた検量線(標準ポリスチレンのピーク分子量を使用して作成)を使用して求めた重量平均分子量である。
【0060】
上述のようにして得られた変性水添ブロック共重合(I−1)の溶液は、必要に応じて触媒残渣を除去し、溶液から分離できる。
溶媒の分離方法としては、例えば重合後又は水添後の溶液に、アセトン又はアルコール等の重合体に対する貧溶媒となる極性溶媒を加えて重合体を沈澱させて回収する方法、重合体の溶液を撹拌下熱湯中に投入し、スチームストリッピングにより溶媒を除去して回収する方法、又は直接重合体溶液を加熱して溶媒を留去する方法等が挙げられる。
なお、変性水添ブロック共重合体(I−1)には、各種フェノール系安定剤、リン系安定剤、イオウ系安定剤、アミン系安定剤等の安定剤を添加してもよい。
【0061】
〔第2の実施形態の変性水添ブロック共重合体組成物〕
第2の実施形態の変性水添ブロック共重合体組成物は、上述した(I−1)変性水添ブロック共重合体と、後述する(I−2)変性水添ブロック共重合体とを、10/90〜90/10の比率で混合し(当該混合物を(I−3)とする。)、当該混合物(I−3):100質量部に、さらに後述する(II)ゴム用軟化剤を50〜200質量部含有したものである。
【0062】
前記(I−2) 変性水添ブロック共重合体は、共役ジエン化合物とビニル芳香族化合物からなる水添ブロック共重合体であって、下記の(1)〜(6)を満たす水添ブロック共重合体に、官能基を有する原子団が結合しているものである。
(1)下記(a)、(b)、(c)の重合体ブロックをそれぞれ少なくとも1個有する。
(a)ビニル芳香族化合物重合体ブロック
(b)共役ジエン化合物とビニル芳香族化合物からなる水添共重合体ブロック
(c)ビニル結合量が40%以上の共役ジエン化合物重合体の水添重合体ブロック
(2)前記水添ブロック共重合体中の前記ビニル芳香族化合物の含有量が40質量%を超 え70質量%未満。
(3)重量平均分子量が5万〜50万。
(4)前記水添重合体ブロック(b)の水添前重合体を構成する共役ジエン化合物単量体 単位のビニル結合量が10%以上20%未満。
(5)前記(I−2)の水添前のブロック共重合体を構成する共役ジエン化合物単量体単 位の二重結合の水添率が50%以上。
(6)前記水添ブロック共重合体中の前記ビニル芳香族化合物重合体ブロック(a)の含 有量が5質量%以上30質量%以下、前記水添共重合体ブロック(b)の含有量が 30質量%以上50質量%以下、前記水添重合体ブロック(c)の含有量が35質 量%を超え50質量%以下。
【0063】
上記(I−2)変性水添ブロック共重合体は、上述した変性水添ブロック共重合体(I−1)と同様に製造することができるが、国際公開第06/088187号に開示されている構造のブロック共重合体を(I−1)の変性水添ブロック共重合体で開示された製法により、変性及び水素添加された共重合体である。
【0064】
((II)ゴム用軟化剤)
第1の実施形態においては、上述した(I−1)の変性水添ブロック共重合体を用い、 第2の実施形態においては、上述した(I−1)及び(I−2)の変性水添ブロック共重合体を所定の比率で混合した変性水添ブロック共重合体を用い、(II)ゴム用軟化剤と組み合わせて組成物を得ることにより、効果的な柔軟化が図られ、さらに良好な加工性を付与できる。
ゴム用軟化剤(II)としては、鉱物油系のゴム用軟化剤や、液状もしくは低分子量の合成軟化剤が挙げられ、特に、ナフテン系及び/又はパラフィン系のプロセスオイル又はエクステンダーオイルが好ましい。
【0065】
鉱物油系のゴム用軟化剤とは、芳香族環、ナフテン環及びパラフィン鎖の混合物であり、パラフィン鎖の炭素数が全炭素の50%以上を占めるものがパラフィン系と呼ばれ、ナフテン環の炭素数が30〜45%のものがナフテン系、また芳香族炭素数が30%を超えるものが芳香族系と呼ばれる。
【0066】
また、ポリブテン、低分子量ポリブタジエン、流動パラフィン等の合成軟化剤を用いてもよいが、上述した鉱物油系ゴム用軟化剤を用いることがより好ましい。
【0067】
ゴム用軟化剤(II)の配合量は、上述した(I−1)変性水添ブロック共重合体、又は(I−1)と(I−2)との変性水添ブロック共重合体の混合物100質量部に対して、50〜200質量部とし、好ましくは70〜150質量部とする。
ゴム用軟化剤(II)の量が変性水添ブロック共重合体((I−1)単独又は(I−1)と(I−2)との混合物)100質量部に対して、200質量部を超えるとゴム用軟化剤のブリードアウトを生じやすく、表面感触を悪化させる。
また、ゴム用軟化剤が50質量部未満であると、本実施形態の変性水添ブロック重合体組成物の硬度が高くなりすぎ、実用上十分な柔軟性が得られにくくなるため、好ましくない。
【0068】
〔添加剤等〕
本実施形態の変性水添ブロック共重合体組成物には、必要に応じて、任意の添加剤を配合することができる。
添加剤としては、熱可塑性樹脂やゴム状重合体の配合に一般的に用いられるものであれば特に制限されない。
【0069】
添加剤としては、例えば、カーボンブラック、酸化チタン等の顔料や着色剤、ステアリン酸、ベヘニン酸、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、エチレンビスステアロアミド等の滑剤、離型剤、フタル酸エステル系やアジピン酸エステル化合物、アゼライン酸エステル化合物等の脂肪酸エステル系、ミネラルオイル等の可塑剤、ヒンダードフェノール系酸化防止剤、りん系熱安定剤等の酸化防止剤、ヒンダードアミン系光安定剤、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、帯電防止剤、有機繊維、ガラス繊維、炭素繊維、金属ウィスカ等の補強剤等が挙げられる。
これらは単独で用いてもよく、任意に組み合わせて用いてもよい。
【0070】
本実施形態の変性水添ブロック共重合体組成物には、必要に応じて、任意の充填材及び難燃剤を配合してもよい。
充填材及び難燃剤としては、熱可塑性樹脂やゴム状重合体の配合に一般的に用いられる物であれば特に制限されない。
【0071】
充填剤としては、例えば、シリカ、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、カーボンブラック、ガラス繊維、ガラスビーズ、ガラスバルーン、ガラスフレーク、グラファイト、酸化チタン、チタン酸カリウムウイスカー、カーボンファイバー、アルミナ、カオリンクレー、ケイ酸、ケイ酸カルシウム、石英、マイカ、タルク、クレー、ジルコニア、チタン酸カリウム、アルミナ、金属粒子等の無機充填剤、木製チップ、木製パウダー、パルプ等の有機充填剤が挙げられる。
充填剤の形状としては、特に限定されず、鱗片状、球状、粒状、粉体、不定形状等のものを用いることができる。
これらの充填剤は、単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0072】
難燃剤としては、臭素化合物が主なハロゲン系、芳香族化合物が主なリン系、金属水酸化物が主な無機系等の難燃剤が挙げられるが、近年環境問題等により無機難燃剤が主流となっており好ましい。
無機難燃剤としては、例えば、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、水酸化カルシウム等の金属水酸化物、硼酸亜鉛、硼酸バリウム等の金属酸化物、その他炭酸カルシウム、クレー、塩基性炭酸マグネシウム、ハイドロタルサイト等の主に含水金属化合物等が挙げられる。
なお、上記難燃剤の中でも、難燃性向上の観点から、水酸化マグネシウム等の金属水酸化物が好ましい。
また、上記難燃剤の中には、それ自身の難燃性発現効果は低いが、他の難燃剤と併用することで相乗的により優れた効果を発揮する、いわゆる難燃助剤も含まれる。
【0073】
充填剤、難燃剤としては、シランカップリング剤等の表面処理剤であらかじめ表面処理を行ったタイプのものを使用してもよい。
【0074】
本実施形態の変性水添ブロック共重合体組成物には、その他必要に応じて、「ゴム・プラスチック配合薬品」(ラバーダイジェスト社編)等に記載された添加剤や、これらの混合物を添加してもよい。
【0075】
〔架橋〕
本実施形態の変性水添ブロック共重合体組成物は、必要に応じて架橋処理を施すことができる。
架橋方法としては、過酸化物、イオウ等の架橋剤及び必要に応じて共架橋剤等の添加による化学的方法、放射線架橋等を用いることができる。
架橋プロセスとしては、静的な方法、動的加硫法等を用いることができる。
【0076】
架橋剤としては、有機過酸化物、硫黄、フェノール系、イソシアネート系、チウラム系、モルフォリンジスルフィド等が挙げられる。
これらは、ステアリン酸、オレイン酸、ステアリン酸亜鉛、酸化亜鉛等の架橋助剤、共架橋剤、加硫促進剤等と併用できる。
【0077】
有機過酸化物架橋剤としては、例えば、ヒドロパーオキサイド、ジアルキルパーオキサイド、ジアリルパーオキサイド、ジアシルパーオキサイド、パーオキシエステル、ケトンパーオキサイド等が挙げられる。
また、電子線、放射線等による物理的架橋法も使用可能である。
【0078】
〔変性水添ブロック共重合体組成物の製造方法〕
本実施形態の変性水添ブロック共重合体組成物の製造方法は、特に制限されるものではなく、公知の方法が適用できる。
例えば、バンバリーミキサー、単軸スクリュー押出機、2軸スクリュー押出機、コニーダ、多軸スクリュー押出機等の一般的な混和機を用いた溶融混練方法、各成分を溶解又は分散混合後、溶剤を加熱除去する方法等を用いることができる。
本実施形態においては、押出機による溶融混合法が、生産性、良混練性の観点から好ましい。
得られる変性水添ブロック共重合体組成物の形状については、特に限定されるものではなく、ペレット状、シート状、ストランド状、チップ状等が挙げられる。
【0079】
〔変性水添ブロック共重合体組成物の成形品〕
上述した変性水添ブロック共重合体組成物を成形加工することにより成形品体を得ることができる。上記組成物の溶融混練後に、直接成形品としてもよい。
成形方法としては、押出成形、射出成形、中空成形、圧空成形、真空成形、発泡成形、複層押出成形、複層射出成形、高周波融着成形、スラッシュ成形及びカレンダー成形等を適用できる。
【0080】
本実施形態の変性水添ブロック共重合体組成物は、発泡成形品体としてもよい。
発泡成形品を得る場合に適用可能な方法としては、化学的方法、物理的方法等が挙げられ、各々、無機系発泡剤、有機系発泡剤等の化学的発泡剤、物理発泡剤等の発泡剤の添加等により材料内部に気泡を分布させることができる。
変性水添ブロック共重合体組成物を発泡材料とすることにより、軽量化、柔軟性向上、意匠性向上等の効果が得られる。
【0081】
無機系発泡剤としては、例えば、重炭酸ナトリウム、炭酸アンモニウム、重炭酸アンモニウム、亜硝酸アンモニウム、アジド化合物、ホウ水素化ナトリウム、金属粉等が挙げられる。
【0082】
有機系発泡剤としては、例えば、アゾジカルボンアミド、アゾビスホルムアミド、アゾビスイソブチロニトリル、アゾジカルボン酸バリウム、N、N'−ジニトロソペンタメチレンテトラミン、N、N'−ジニトロソ−N、N'−ジメチルテレフタルアミド、ベンゼンスルホニルヒドラジド、p−トルエンスルホニルヒドラジド、p、p'−オキシビスベンゼンスルホニルヒドラジド、p−トルエンスルホニルセミカルバジド等が挙げられる。
【0083】
物理的発泡剤としては、例えば、ペンタン、ブタン、ヘキサン等の炭化水素、塩化メチル、塩化メチレン等のハロゲン化炭化水素、窒素、空気等のガス、トリクロロフルオロメタン、ジクロロジフルオロメタン、トリクロロトリフルオロエタン、クロロジフルオロエタン、ハイドロフルオロカーボン等のフッ素化炭化水素等が挙げられる。
【0084】
変性水添ブロック共重合体組成物の成形品は、変性水添ブロック共重合体組成物に架橋処理を施したものにより形成されていてもよい。
【0085】
本実施形態の変性水添ブロック共重合体組成物の成形品は、表面に必要に応じて外観性向上、耐候性、耐傷付き性等を向上させることを目的として、所定の印刷、塗装、コーティング、シボ等の加飾等を行うことができる。
【0086】
コーティング剤としては、2液硬化型、湿気硬化型、溶剤揮発硬化型のウレタン系コーティング剤が好ましく、それらのコーティング剤を用いて成形品の表面にウレタン皮膜を形成できる。
印刷性、塗装性、コーティング性等を向上させる目的で表面処理を行う場合、表面処理の方法としては、特に制限されず、物理的方法、化学的方法等を用いることができ、例えば、コロナ放電処理、オゾン処理、プラズマ処理、火炎処理、酸・アルカリ処理等が挙げられる。
これらの中でも、コロナ放電処理が、実施の容易さ、コスト、連続処理が可能である等の観点から好ましい。
【0087】
本実施形態の変性水添ブロック共重合体組成物は、必要に応じて各種添加剤を配合して、様々な態様とし、用途に応じることができる。
【0088】
本実施形態の変性水添ブロック共重合体組成物の具体的態様に関しては、(i)補強性充填剤配合物、(ii)架橋物、(iii)発泡体、(iv)多層フィルム及び多層シート等の成形品、(v)建築材料、(vi)制振・防音材料、(vii)電線被覆材料、(viii)高周波融着性組成物、(ix)スラッシュ成形材料、(x)粘接着性組成物、(xi)アスファルト組成物、(xii)医療用具材料、(xiii)自動車材料等に好適に用いることができる。
【0089】
(成形品の用途)
成形品は、シート、フィルム、チューブや、不織布や繊維状の成形品、合成皮革等として利用できる。
【実施例】
【0090】
以下、本発明の実施例と、比較例を挙げて具体的に説明する。
実施例及び比較例に適用した、物性の測定方法、評価方法について下記に示す。
【0091】
〔(1)水添ブロック共重合体の特性〕
(1−1)水添ブロック共重合体中のビニル芳香族炭化水素化合物(スチレン)の含有量
水添前のブロック共重合体を用い、紫外分光光度計(島津製作所製、UV−2450)を用いて測定した。
【0092】
(1−2)水添ブロック共重合体中の、ビニル芳香族炭化水素化合物の含有量
水添前のブロック共重合体を用い、I.M.Kolthoff、etal.、J.Polym.Sci.1、429(1946)に記載の四酸化オスミウム酸法で測定した。
ブロック共重合体の分解には、オスミウム酸0.1g/125ml第3級ブタノール溶液を用いた。
【0093】
(1−3)水添ブロック共重合体のビニル結合量
水添前のブロック共重合体を使用し、赤外分光光度計(日本分光社製、FT/IR−230)を用いて測定した。共重合体のビニル結合量はハンプトン法により算出した。
【0094】
(1−4)水添ブロック共重合体の重量平均分子量及び分子量分布
GPC〔装置は東ソー株式会社製、製、HLC−8120GPC〕により測定した。
溶媒にはテトラヒドロフランを用い、測定条件は温度35℃で行った。
重量平均分子量と数平均分子量とを、既知の市販の標準ポリスチレンを用いて作成した検量線を使用し求めた。
また、分子量分布は、重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)の比から算出した。
【0095】
(1−5)水添ブロック共重合体の共役ジエン化合物単量単位の二重結合の水素添加率(水添率)
水添後の水添ブロック共重合体を用い、核磁気共鳴装置(装置名:DPX−400;ドイツ国、BRUKER社製)で測定した。
【0096】
(1−6)変性率
変性した変性水添ブロック共重合体は、シリカ系ゲルカラムには吸着するが、ポリスチレン系ゲルカラムには吸着しないという特性を利用して変性率の測定を行った。
測定用試料及び低分子量内部標準ポリスチレンを含む試料溶液に関して、上記(1―5)と同様に行った標準ポリスチレン系ゲルカラムのGPCと、シリカ系ゲルカラム(米国、デュポン社製Zorbax)のGPCの両クロマトグラムを測定し、それらの差分よりシリカ系ゲルカラムへの変性水添ブロック共重合体の吸着量を測定し、変性率を求めた。
【0097】
〔(2)変性水添ブロック共重合体組成物の特性〕
(2−1)加工性:流動性(メルトフローレート(MFR))
JIS K6758に従い、130℃、荷重2.16kgのMFRを測定した。
(2−2)柔軟性:硬度
JIS K6253に従い、デュロメータタイプAで10秒後の値を測定した。
(2−3)機械強度:破断強度、破断伸び
JIS K6251に従い、3号ダンベル、クロスヘッドスピード500mm/分で測定した。
破断強度が10kg/cm2未満であると、強度が実用上の観点から不足しているものと判断した。
【0098】
(2−4)透明性
2mm厚のプレスシートを作製し、5枚重ねて新聞の上に置き、目視にて活字の読み取れる程度を判定し、下記の基準で評価した。
○:鮮明に活字が読み取れる。
△:不鮮明であるが、活字が読み取れる。
×:活字が読み取れない。
【0099】
(2−5)反発性:反発弾性率
ダンロップ反撥弾性試験機により、BS903に従い、23℃で測定した。
50%以上であると、実用上良好であると判断した。
【0100】
(2−6)表面感触
2mm厚のプレスシートを作製し、下記の方法により評価した。
(粘着感):シート表面を指で触り、ベタツキの有無を確認した。
(オイルブリード):シート間に紙を挟み、24時間後、紙へのオイルの移行の有無を 確認した。評価用紙としては、カラーモノクロ兼紙C2 A4版 (富士ゼロックス社製)を用いた。
ベタツキ、オイルブリードのいずれかがある場合は、実用上の特 性が不良であると判断した。
【0101】
(2−8)接着性
T型剥離試験による接着強さの測定から接着性を評価した。
接着強さが大きいほど、接着性が優れているものとして判断した。
接着条件と剥離試験の条件を下記に示す。
〔接着条件〕
変性水添ブロック共重合体組成物を、2mm厚のシートに200℃でプレス成形した。
その後、前記シート表面を、次亜塩素酸を含むトリアリルイソシアヌレートの酢酸エチル3%溶液で表面処理し、更に湿気硬化型のポリウレタンの酢酸ブチル溶液に浸漬して、表面をウレタンコーティングしたサンプルシートを作製した。
前記ウレタンコーティングしたサンプルシートと、ウレタンエラストマーからなる2mm厚のシートとを、2液硬化型ウレタン接着剤で接着した。
その後、2cm幅の短冊状にシートを切断し、後述する剥離試験の測定を行った。
〔剥離試験〕
剥離速度を200mm/分とした。
剥離強度は、kg/2cmの単位で測定した。
剥離強度は強いほど望ましいものとして判断した。
接着性が十分でない場合の剥離は、ウレタンコーティング層と組成物の接着面で起こった。
接着性に優れている場合は、組成物からなるシート内部の破断が起こり、剥離強度が強かったことが確認された。
【0102】
〔変性水添ブロック共重合体組成物の作製〕
(水添触媒の調製)
後述する実施例及び比較例において作製する変性水添ブロック共重合体組成物を構成している水添ブロック共重合体を得るための、ブロック共重合体の水添反応に用いる水添触媒は、下記の方法により調製した。
窒素置換した反応容器に、乾燥、精製したシクロヘキサン1Lを仕込み、ビス(η5−シクロペンタジエニル)チタニウムジクロリド100ミリモルを添加し、十分に攪拌しながらトリメチルアルミニウム200ミリモルを含むn−ヘキサン溶液を添加して、室温にて約3日間反応を行った。
【0103】
(変性水添ブロック共重合体(I−1)の調製)
<ブロック共重合体のリビングポリマー(I−1)−1:Pa−1>
攪拌機及びジャケットを具備するオートクレーブを洗浄、乾燥、窒素置換し、予め精製したスチレン10質量部を含むシクロヘキサン溶液(濃度20質量%)を投入した。
次に、n−ブチルリチウムとテトラメチルエチレンジアミンを添加し、70℃で1時間重合した。
その後、予め精製したブタジエン80質量部を含むシクロヘキサン溶液(濃度20質量%)を加えて70℃で1時間重合し、さらにスチレン10質量部を含むシクロヘキサン溶液を加えて70℃で1時間重合して、ブロック共重合体のリビングポリマーを得た。 得られたブロック共重合体の特性を下記表1に示した。
【0104】
<ブロック共重合体のリビングポリマー(I−1)−2〜(I−1)−4:Pa−2〜Pa−4>
上述したブロック共重合体のリビングポリマー(I−1)−1:Pa−1と同様の方法により、下記表1に示す特性を有するブロック共重合体のリビングポリマーを得た。
これらにおいては、スチレン、ブタジエンの仕込み比率を調製し、スチレンの含有量を変化させ、さらにはテトラメチルエチレンジアミン量を変量させて、ビニル結合量を調製した。
【0105】
【表1】

【0106】
次に、上記のようにして得たブロック共重合体のリビングポリマーと、変性剤と、水添触媒とを用いて、変性ブロック共重合体及びその水添物を調製した。
ブロック共重合体のリビングポリマー(I−1)−1:Pa−1〜(I−1)−4:Pa−4の溶液中に、下記表2に示す所定量の変性剤を添加し、70℃で20分間反応させて変性ブロック共重合体を得た。
次に、上記の変性ブロック共重合体の溶液に水添触媒をTiとして100ppm添加し、水素圧0.7MPa、温度65℃で水添反応を1時間行い、変性水添ブロック共重合体の溶液を得た。
次に、この溶液に、メタノールを重合に使用したn−ブチルリチウムに対して10倍モル添加し、その後、炭酸水を添加してpHを8以下に調整した。
このようにして得られた変性ブロック共重合体及びその水添物(Pa−1:HPa−1)〜(Pa−4:HPa−5)の特性を下記表2に示す。
【0107】
【表2】

【0108】
なお、表2中に示す変性剤の具体的な材料名を下記に示す。
M1:1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン
M2:テトラグリシジル−1,3−ビスアミノメチルシクロヘキサン
M3:γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン
【0109】
(変性水添ブロック共重合体(I−2)の調製)
(ブロック共重合体のリビングポリマー(I−2)−1〜(I−2)−2)
内容積が10Lの攪拌装置及びジャケットを具備する槽型の反応器を使用してバッチ重合を行った。
先ず、スチレン10質量部を含むシクロヘキサン溶液(濃度20質量%)を投入した。
次に、n−ブチルリチウムを全モノマー100質量部に対して0.06質量部とTMEDA(テトラメチルエチレンジアミン)を、n−ブチルリチウム1モルに対して0.85モル添加し、70℃で1時間重合した。
その後、ブタジエン40質量部を含むシクロヘキサン溶液(濃度20質量%)を加えて70℃で1時間重合した。この時点でサンプリングしたポリマーのポリブタジエン部のビニル結合量を測定したところ、60%であった。
次に、ブタジエン14質量部とスチレン28質量部とを含むシクロヘキサン溶液(濃度20質量%)を加えて70℃で1時間重合した。この時点でサンプリングしたポリマーのビニル結合量を測定したところ、48%であった。
次に、スチレン8質量部を含むシクロヘキサン溶液を投入して、70℃で1時間重合した。
【0110】
ブロック共重合体のリビングポリマー(I−2)−1に対し、変性剤として、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノンを、重合に使用したn−ブチルリチウムと当モル添加して、70℃で20分反応させ、変性ブロック共重合体を得た。
一方、変性剤を添加しないポリマーを、ブロック共重合体のリビングポリマー(I−2)−2とした。
このようにして得られた、変性されたブロック共重合体のリビングポリマー(I−2)−1、未変性のブロック共重合体のリビングポリマー(I−2)−2は、スチレン含有量46質量%、ポリスチレンブロック含有量18質量%、ポリブタジエンブロック部のビニル結合量48質量%、分子量12.1万、分子量分布1.1であった。
【0111】
次に、このようにして得られた変性されたブロック共重合体のリビングポリマー(I−2)−1、未変性のブロック共重合体のリビングポリマー(I−2)−2に、上述した水添触媒を、リビングポリマー(I−2)−1、(I−2)−2を、それぞれ100質量部に対してチタンとして100ppm添加し、水素圧0.7MPa、温度65℃で水添反応を行った。
その後、メタノールを添加し、次に安定剤としてオクタデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネートを水添重合体100質量部に対して0.3質量部添加した。
変性されたブロック共重合体のリビングポリマー(I−2)−1を水添した水添ブロック共重合体をHPb−1と呼び、未変性のブロック共重合体のリビングポリマー(I−2)−2を水添した水添ブロック共重合体をHPb−2と呼ぶ。
得られた水添ブロック共重合体の水素添加率は71%であった。
また、得られた水添共重合体のDSCを測定したところ、結晶化ピークは存在しなかった。
【0112】
【表3】

【0113】
〔実施例1〜9〕、〔比較例1〜5〕
次に、上述のようにして作製した表2に示す水添ブロック共重合体及び変性水添ブロック共重合体(HPa−1〜HPa−5)、表3に示す水添ブロック共重合体及び変性水添ブロック共重合体(HPb−1、HPb−2)をペレットにし、下記表4、表5に示す組成に従い、ゴム用軟化剤(オイル)を添加して二軸押出機(PCM30)で混練し、ペレット化することにより変性水添ブロック共重合体組成物を得た。
押出条件は、シリンダー温度130℃、スクリュー回転数300rpmであった。
得られた組成物を、160℃で圧縮成形して2mm厚のシートを作製し、物性測定片とした。
なお、ゴム用軟化剤は、パラフィンオイル(PW−90:出光興産社製)を使用した。
【0114】
実施例1〜9及び比較例1〜5の変性水添ブロック共重合体組成物の試験片の物性値及び評価結果を下記表4、表5に示す。
【0115】
【表4】

【0116】
【表5】

【0117】
表4、表5の結果から明らかなように、本実施形態の水添ブロック共重合体組成物である実施例1〜9においては、実用上良好な加工性を有し、柔軟性、高反発弾性に優れ、実用上十分な機械強度を有し、極性樹脂との接着性にも優れたものであった。また、透明性も良好であることから、良好な外観を要求される軟質材料として好適であることが分かった。
【0118】
また、比較例1では、ゴム用軟化剤が過多であり機械強度が低下し、オイルブリード等も発生していた。
比較例2においては、逆にゴム用軟化剤が過少であり、硬度が高く、実用面において不適当であった。
比較例3では、水添ブロック共重合体(HPa−3)が変性されておらず、接着性が不良であった。さらに比較例4においても水添ブロック共重合体(HPa−3)が変性されておらず、接着性が不良であった。
比較例5では、水添ブロック共重合体が未変性(HPb−2)であり、接着性が不良であった。
【産業上の利用可能性】
【0119】
本発明の変性水添ブロック共重合体組成物及びその成形体は、衝撃緩衝性材料、医療用具材料、家電用品、工業部品、スポーツ用具、玩具等として産業上の利用可能性がある。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(I−1)ビニル芳香族炭化水素化合物を主体とする重合体ブロックAと共役ジエン化合物を主体とする重合体ブロックBとを有し、前記ビニル芳香族炭化水素化合物の含有量が5〜50質量%である水添ブロック共重合体に、官能基を有する原子団が結合している変性水添ブロック共重合体:100質量部と、
(II)ゴム用軟化剤:50〜200質量部と、
を、含有する変性水添ブロック共重合体組成物。
【請求項2】
(I−1)ビニル芳香族炭化水素化合物を主体とする重合体ブロックAと共役ジエン化合物を主体とする重合体ブロックBとを有し、前記ビニル芳香族炭化水素化合物の含有量が5〜50質量%である水添ブロック共重合体に、官能基を有する原子団が結合している変性水添ブロック共重合体と、
(I−2) 共役ジエン化合物とビニル芳香族化合物からなる水添ブロック共重合体であって、下記の(1)〜(6)を満たす水添ブロック共重合体に、官能基を有する原子団が結合している変性水添ブロック共重合体と
を、10/90〜90/10の比率で混合した変性水添ブロック共重合体(I−3):100質量部と、
(II)ゴム用軟化剤:50〜200質量部と、
を、含有する変性水添ブロック共重合体組成物。
(1)下記(a)、(b)、(c)の重合体ブロックをそれぞれ少なくとも1個有する。
(a)ビニル芳香族化合物重合体ブロック
(b)共役ジエン化合物とビニル芳香族化合物からなる水添共重合体ブロック
(c)ビニル結合量が40%以上の共役ジエン化合物重合体の水添重合体ブロック
(2)前記水添ブロック共重合体中の前記ビニル芳香族化合物の含有量が40質量%を超 え70質量%未満。
(3)重量平均分子量が5万〜50万。
(4)前記水添重合体ブロック(b)の水添前重合体を構成する共役ジエン化合物単量体 単位のビニル結合量が10%以上20%未満。
(5)前記(I−2)の水添前のブロック共重合体を構成する共役ジエン化合物単量体単 位の二重結合の水添率が50%以上。
(6)前記水添ブロック共重合体中の前記ビニル芳香族化合物重合体ブロック(a)の含 有量が5質量%以上30質量%以下、前記水添共重合体ブロック(b)の含有量が 30質量%以上50質量%以下、前記水添重合体ブロック(c)の含有量が35質 量%を超え50質量%以下。
【請求項3】
JIS K6253による硬度が5〜35であり、
BS903により、23℃で測定される反発弾性率が50%以上である、
請求項1又は2に記載の変性水添ブロック共重合体組成物。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか一項に記載の変性水添ブロック共重合体組成物が架橋されたものである、変性水添ブロック共重合体組成物。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか一項に記載の変性水添ブロック共重合体組成物を成形した成形品。
【請求項6】
前記成形品の表面に、ウレタン皮膜をさらに具備する請求項5に記載の成形品。

【公開番号】特開2012−36300(P2012−36300A)
【公開日】平成24年2月23日(2012.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−178016(P2010−178016)
【出願日】平成22年8月6日(2010.8.6)
【出願人】(303046314)旭化成ケミカルズ株式会社 (2,513)
【Fターム(参考)】