説明

変性炭素生成物を含有する水性インクとコーティング

イオン性の、又はイオン化可能な基で置換された少なくとも1つの有機基を有する炭素を含む変性炭素生成物を含む水性インク組成物が記載されている。コーティング組成物も記載されており、これは、水、結合剤、及び炭素に結合した少なくとも1つの有機基を有する変性炭素生成物であってその有機基がイオン性の又はイオン化可能な基で置換されたものを含む。

【発明の詳細な説明】
変性炭素生成物を含有する水性インクとコーティング この出願は、米国特許出願第08/356,660号および08/356,653号(いずれも1994年12月15日出願)の一部継続出願であり、これらをここに引用してそれらの開示内容をこの明細書の記載に含める。
発明の分野 本発明は、変性炭素生成物を含有する水性インクおよびコーティングに関する。
発明の背景 現在多種類のインクが使用されている。これらの種類には、印刷用インク、紫外線硬化インク、ボールペン用インク、およびスタンプ台インクまたはマーキング用インクがある。基本的にはインクは、4種類の主要材料からなる。これらは、着色剤、ビヒクルもしくはワニス、添加物、および溶剤である。
さらに詳しくは、着色剤(顔料、トーナーおよび染料を含む)は、下地との色のコントラストを与える。ビヒクルまたはワニスは、印刷操作の間、着色剤の担体として作用する。乾燥すると、ビヒクルは着色剤を下地に結合させる。添加物は、印刷性、フィルム性能、乾燥速度、および最終用途特性に影響を与える。最後に溶剤は、ビヒクルの形成に参加するのみでなく、インクの粘性を下げ、乾燥の容易さと樹脂の能力を調整するのに使用される。一般的に、目的の処方に従ってこれらの4種類の成分を秤量し、混合し、および一緒かまたは別々に粉砕(すなわち、分散)する。
現在黒の主要な顔料は、乾燥型、粉末型、フラッシュペースト、または液体濃縮物型の着色剤として使用されるファーネスブラックのようなカーボンブラックである。フラッシュペーストや液体濃縮物型は分散の手間が最も少ないため、より経済的である。一般に着色剤の型は、色相、耐久性、かさ、不透明性、光沢、レオロジー、最終用途、および印刷品質に影響する。
一般にインクは、凸版印刷、平板印刷、フレキソ印刷、グラビア印刷、スクリーン印刷、ステンシル印刷、複写印刷、および静電印刷により、適用される。従ってインクは、新聞、刊行物、広告、折り畳み箱、本、段ボール箱、紙袋、包装紙、ラベル、金属容器、プラスチック容器、プラスチックフィルム、フォイル、ラミネート加工、食品インサート、衛生紙、布帛などに見いだされる。マグローヒル(McGraw-Hill)の科学技術百科事典(Encyclopedia of Science and Technology)、第7巻、159−164頁は、入手できるインクのタイプの詳細、およびその使用法を提供する(これらのすべてはここに引用してこの明細書の記載に含める)。
市販のインクでも、より容易に調製できるインクに対するニーズがある。
コーティングは、多くの種類の表面の装飾的、保護的および機能的処理のために使用される。これらの表面には、コイル、金属、電気機器、家具、ハードボード、材木や合板、船舶、保全、自動車、缶、およびボール紙がある。海底パイプラインのような保護的目的のコーティングもある。自動車の外装のコーティングのような他のコーティングは、装飾的および保護的目的の両方の機能を果たす。
さらに別のコーティングは、船のデッキや自動車のシートのように摩擦を調節する。船底の汚れを抑えるコーティングもあり、缶詰食品や飲料を保存するものもある。シリコンチップ、プリント回路パネル、シグナル伝達のための導波管ファイバーのコーティング、およびビデオテープやコンピューターディスクの磁気コーティングは、コーティングのいわゆるハイテクへの多くの応用の中の例である。
毎年、何万ものコーティングタイプが製造されている。一般にこれらは1つまたはそれ以上の結合剤(例えば、樹脂またはポリマー)、および少なくとも1つの溶剤、1つまたはそれ以上の顔料、および任意にいくつかの添加物から構成される。ほとんどのコーティングは液体として製造および適用され、下地への適用後「固体」フィルムに変換される。
顔料やコーティングは、不透明度と色を与える。顔料の含有量は、最終的なフィルムの光沢を支配し、その機械的性質に重要な影響を与える。腐食を阻害する顔料もある。さらに、顔料は、コーティングの粘性に影響を与え、コーティングの塗布性を増強する。顔料の性質を決定する重要な変数は、その粒子径と粒子径分布である。顔料の製造法は、その顔料の粒子の最適の妥協を与えるような粒子径と粒子径分布を与えるように設計される。コーティングの製造において、すべてではないにしてもほとんどの顔料粒子が、顔料製造業者により製品に設計される個々の粒子に分離されている、安定な分散を得るような方法で顔料を分散することが好ましい。顔料の分散には、湿潤、分離および安定化が関与する。
ビヒクルには、以下の3つの種類がある。結合剤が水に可溶性のもの、コロイド分散されるもの、および乳化してラテックスを形成するもの。表面コーティング組成物は、通常3つのベース成分(結合剤と呼ばれるフィルム形成性の物質または物質の組合せ、顔料または顔料の組合せ、および揮発性液体)を有するいくぶん粘性のある液体である。結合剤と揮発性液体の組合せは、ビヒクルと呼ばれ、これは溶液または非溶剤中の結合剤微粒子の分散液でもよい。顔料は、コーティングビヒクルに分散され、最終フィルムの結合剤に分布された不溶性の固体微粒子である。
界面活性剤が、顔料分散剤として使用される。水性コーティングの成分と製造は、さらに Concised Encyclopedia of Polymers,Science and Engineering,160−171頁(1990)に記載されている(これをここに引用して本明細書の記載に含める)。
水性インクおよびコーティングの両方で、より容易に調製される水性コーティングに対するニーズがある。溶剤は水であるか、または水を含有する。
発明の要約 従って、本発明は、水、および有機基を結合して有する炭素からなる変性炭素生成物を含む、水性インク組成物および水性コーティング組成物に関する。有機基は、イオン基またはイオン化可能な基で置換される。ここで用いられる炭素は、ジアゾニウム塩と反応して前記変性炭素生成物を形成することができる。炭素は、結晶質または非晶質のタイプでもよい。例としては、グラファイト、カーボンブラック、ガラス質炭素、活性木炭、活性炭、およびこれらの混合物があるが、これらに限定されない。これらの微細に分割された形のものが好ましい。
前記有機基は、a)少なくとも1つの芳香族基、およびb)少なくとも1つのイオン基、少なくとも1つのイオン化可能な基、またはイオン基とイオン化可能な基の混合物、を含む。芳香族基を有する有機基は、その芳香族基により直接炭素に結合される。
あるいは、変性炭素生成物の有機基は、a)少なくとも1つのC1−C12置換もしくは非置換アルキル基、およびb)少なくとも1つのイオン基、少なくとも1つのイオン化可能な基、またはイオン基とイオン化可能な基の混合物、を含む。
本発明の水性インクおよびコーティングは、好適な分散安定性、印刷品質、および画像光学密度を与える。
以下の説明は、本発明の更なる態様や利点を示す。これらの機能は、以下の説明より明らかであるか、または本発明の実施により理解されるであろう。本発明の目的または他の利点は、特に以下の説明および添付の請求の範囲に指摘した方法、生成物および組成物から理解され達成されるであろう。
詳細な説明 ここで用いられる炭素は、ジアゾニウム塩と反応して前記変性炭素生成物を形成することができる。炭素は、結晶質でも非晶質型でもよい。例としては、グラファイト、カーボンブラック、ガラス質炭素、活性木炭、活性炭、およびこれらの混合物があるが、これらに限定されない。これらの微粒子型が好ましい。
本発明は、水性ビヒクルおよび変性炭素生成物からなる水性インクおよびコーティング組成物に関する。従来の炭素顔料に対して、本発明のインクまたはコーティングに使用される変性炭素生成物は、水性ビヒクル中で分散するのは困難ではない。変性炭素生成物は、必ずしも通常の摩砕工程を必要とせず、使用可能なインクまたはコーティングを得るための分散剤を必要としない。好ましくは変性炭素生成物は、水中で顔料を速やかに分散するのに低剪断攪拌または混合をするのみでよい。
炭素生成物は、上に定義した炭素を、液体反応媒体中でジアゾニウム塩と反応させて、炭素の表面に少なくとも1つの有機基を結合させることにより調製することができる。好適な反応媒体としては、水、水を含有する任意の媒体、およびアルコールを含有する任意の媒体がある。水が最も好ましい媒体である。炭素がカーボンブラックである変性炭素生成物、およびその種々の製造法は、1994年12月15日出願の“Reaction of Carbon Black with Diazonium Salts,Resultant Carbon Black Products and Their Uses"という名称の米国特許出願第08/356,660号および本出願と同時に出願されたその一部継続出願(いずれもここに引用して本明細書の記載に含める)に記載されている。炭素がカーボンブラックではない変性炭素生成物、およびその種々の製造法は、1994年12月15日出願の“Reaction of Carbon Materials with Diazonium Salts and Resultant Carbon Products"という名称の米国特許出願第08/356,653号(これもここに引用して本明細書の記載に含める)
に記載されている。
前記変性炭素生成物を調製するには、ジアゾニウム塩は炭素と反応するのに充分安定であるだけでよい。すなわち反応は、そうでない場合は不安定で分解しやすいと考えられているあるジアゾニウム塩と行われる。いくらかの分解過程が、炭素とジアゾニウム塩との反応と競合し、炭素に結合した有機基の総数を減少させてもよい。さらに反応は、多くのジアゾニウム塩が分解し易い高温で行われてもよい。高温はまた、反応媒体中のジアゾニウム塩の溶解度を上昇させ、反応中のその取り扱いを改良するため有利である。しかし高温は、他の分解過程のためにジアゾニウム塩の一部の消失を引き起こす。
カーボンブラックは希薄な、容易に攪拌される水性のスラリーとして存在する時、またはカーボンブラックペレット形成のための適正な量の水の存在下で、ジアゾニウム塩と反応させることができる。望むならば、カーボンブラックペレットは、従来ペレット化技術を用いて形成される。他の炭素は同様にジアゾニウム塩と反応させられる。さらに、水性インクおよびコーティングに使用されるカーボンブラック以外の炭素を用いて変性炭素生成物が使用される時、炭素は好ましくは粉砕して微粒子のサイズにしてから、ジアゾニウム塩と反応され、インク内の不要な沈殿を防ぐ。炭素に結合されてもよい有機基は、官能基としてイオン基またはイオン化可能な基で置換された有機基である。イオン化可能な基は、使用される媒体中でイオン基を形成することができる基である。イオン基は陰イオン基または陽イオン基であり、イオン化可能な基は陰イオンまたは陽イオンを形成してもよい。
陰イオンを形成するイオン化可能な基には、例えば酸性基または酸性基の塩がある。従って前記有機基は、有機酸から得られる基を含有する。このような有機基が陰イオンを形成するイオン化可能な基を含有する時、これは好ましくは、a)芳香族基またはC1−C12の置換もしくは非置換のアルキル基、およびb)pKaが11未満の少なくとも1つの酸性基、もしくはpKaが11未満の酸性基の少なくとも1つの塩、またはpKaが11未満の少なくとも1つの酸性基とpKaが11未満の酸性基の少なくとも1つの塩の混合物、を有する。酸性基のpKaは有機基全体としてのpKaを意味し、酸性置換基のみのpKaではない。
より好ましくは、pKaは10未満であり、最も好ましくは9未満である。好ましくは有機基の芳香族基またはアルキル基は直接炭素に結合している。前記芳香族基は、例えばアルキル基でさらに置換されていてもよく、また、置換されていなくてもよい。前記C1−C12アルキル基は分岐していてもよく、また、非分岐であってもよく、好ましくはエチルである。より好ましくは、前記有機基はフェニルまたはナフチル基であり、前記酸性基はスルホン酸基、スルフィン酸基、ホスホン酸基、またはカルボン酸基である。例としては、−COOH、−SO3H、−PO32、−SO2NH2、−SO2NHCOR、およびこれらの塩、例えば−COONa、−COOK、−COO−NR4+、−SO3Na、−HPO3Na、−SO3−NR4、および−PO3Na2(ここでRはアルキルまたはフェニル基である)がある。特に好ましいイオン化可能な置換基は、−COOHと−SO3Hおよびこれらのナトリウム塩とカリウム塩である。
最も好ましくは、前記有機基は置換もしくは非置換スルホフェニル基またはその塩;置換もしくは非置換(ポリスルホ)フェニル基またはその塩;置換もしくは非置換スルホナフチル基またはその塩;または置換もしくは非置換(ポリスルホ)ナフチル基またはその塩である。好適な置換スルホフェニル基は、ヒドロキシスルホフェニル基またはその塩である。
アニオンを形成するイオン化可能な官能基を有する具体的な有機基は、p−スルホフェニル、4−ヒドロキシ−3−スルホフェニル、および2−スルホエチルである。
アミンは、陽イオン基を形成するイオン化可能な官能基の例であり、陰イオンを形成するイオン化可能な基について前記したものと同じ有機基に結合することができる。例えば、アミンは酸性媒体中でプロトン化されてアンモニウム基を形成する。好ましくはアミン置換基を有する有機基のpKbは5未満である。第四級アンモニウム基(−NR3+)および第四級ホスホニウム基(−PR3+)もまた、陽イオン基の例であり、陰イオンを形成するイオン化可能な基について前記したものと同じ有機基に結合することができる。好ましくは前記有機基は、芳香族基(例えば、フェニルまたはナフチル基)および第四級アンモニウムもしくは第四級ホスホニウム基を含有する。前記芳香族基は、好ましくは炭素に直接結合している。四級化環状アミンおよび四級化芳香族アミンもまた、前記有機基として使用できる。すなわち、N−置換ピリジニウム化合物(例えば、N−メチル−ピリジル)も、この意味で使用できる。有機基の例には、(C54N)C25+、C64 (NC55
+、C64COCH2N(CH33+、C64COCH2(NC55+、(C54N)CH3+、およびC64CH2N(CH3)3+がある。
イオン基またはイオン化可能な基で置換された有機基を結合して有する変性炭素生成物の利点は、変性炭素生成物は、対応する未処理炭素に対して水分散性が増加することである。一般に、変性炭素生成物の水分散性は、イオン化可能な基を有する炭素に結合した有機基の数またはある有機基に結合したイオン化可能な基の数の増加とともに上昇する。すなわち、変性炭素生成物に結合したイオン化可能な基の数を増加させると、その水分散性が上昇し、所望のレベルへの水分散性の調節が可能になる。炭素に結合した有機基としてアミンを含有する変性炭素生成物の水分散性は、水性ビヒクルを酸性化することにより上昇させることができる。
変性炭素生成物の水分散性は、電荷の安定化にある程度依存するため、水性媒体のイオン強度は0.1モル(molar)未満が好ましい。より好ましくはイオン強度は0.01モル未満である。本発明の変性炭素生成物は、副生成物または塩を含有しないことが好ましい。
本発明の水分散性変性炭素生成物が調製される時、イオン基またはイオン化可能な基は反応媒体中でイオン化されることが好ましい。得られる生成物の分散液またはスラリーは、そのまま使用するかまたは使用前に希釈される。あるいは、変性炭素生成物は、通常のカーボンブラックについて使用される方法により乾燥してもよい。これらの方法には、乾燥器または回転炉中の乾燥があるが、これらに限定されない。しかし乾燥し過ぎると、水分散性の程度が低下することがある。前記変性炭素生成物が水性ビヒクル中に期待するほど容易に分散しない場合は、摩砕または粉砕などの通常知られている方法を用いて変性炭素生成物を分散してもよい。
本発明の変性カーボンブラックは、水性インク配合物に特に有用である。すなわち本発明は、水および本発明の変性炭素生成物からなる改良されたインク組成物を提供する。他の公知の水性インク添加物を、この水性インク配合物中に導入してもよい。
一般にインクは以下の4つの基本成分より構成される:(1)着色剤または顔料、(2)印刷中に担体として機能するビヒクルまたはワニス、(3)印刷性、乾燥性などを改良するための添加物、および(4)粘性、乾燥性および他のインク成分との融和性を調整するための溶剤。水性インクの性質、調製法および用途に関する一般的説明は、“The Printing Manual"、第5版、Leachら編(Chapman とHall,1993)に記載されている(ここに引用して本明細書の記載に含める)
。種々の水性インクはまた、例えば米国特許第2,833,736号、3,607,813号、4,104,833号、4,308,061号、4,770,706号、および5,026,755号にも開示されている(これらすべてを、ここに引用して本明細書の記載に含める)。
本発明の変性炭素生成物は分散物であれ固体であれ、標準的方法を用いて水性インク中に取り込むことができる。本発明の水分散性変性炭素生成物は、他の通常のカーボンブラックで一般的に使用される摩砕工程を短縮または排除することにより、大きな利点とコスト節約を与える。
フレキソ印刷インクは、一群の水性インク組成物である。フレキソ印刷インクは一般に、着色剤、結合剤および溶剤を含有する。本発明の変性炭素生成物は、フレキソ印刷インク着色剤として有用である。例3は、水性フレキソ印刷インク配合物中の本発明の変性炭素生成物の使用を示す。
本発明の変性炭素生成物は、水性ニュースインク中で使用することができる。
例えば、水性新聞インク組成物は、水、本発明の変性炭素生成物、樹脂および従来の添加物(例えば、消泡剤または界面活性剤)を含有してもよい。
本発明の変性炭素生成物はまた、水性コーティング組成物(例えば、ペンキまたは仕上げ塗)にも使用できる。すなわち本発明の実施態様は、水、樹脂および本発明の変性炭素生成物からなる改良された水性コーティング組成物である。他の公知の水性コーティング添加物を、この水性コーティング組成物に取り込んでもよい。例えば、マグローヒル(McGraw-Hill)の Encyclopedia of Science and Technology、第5版(McGraw-Hill,1982)(ここに引用して本明細書の記載に含める)を参照。また、米国特許第5,051,464号、5,319,044号、5,204,404号、5,051,464号、4,692,481号、5,356,973号、5,314,945号、5,266,406号、および5,266,361号も参照。これらのすべてをここに引用して本明細書の記載に含める。
本発明の変性炭素生成物は分散物であれ固体であれ、標準的方法を用いて水性コーティング組成物中に取り込み得る。水分散性の変性炭素生成物の使用は、他の通常のカーボンブラックで一般的に使用される摩砕工程を短縮または排除することにより、大きな利点とコスト節約を与える。以下のいくつかの例は、水性自動車表面処理配合物中の本発明の変性炭素生成物の使用を示す。
前記炭素生成物が使用される時、水性ビヒクルを含有し、安定に分散された変性炭素生成物を顔料として含有する水性インクまたはコーティングは、最小の成分と加工工程により調製することができ−。このようなインクまたはまたはコーティングは、種々の用途に使用される。本発明の水性インクおよびコーティングにおいて、好ましくは変性炭素生成物は、インクまたはコーティングの20重量%またはそれ以下の量で存在する。非変性炭素と本発明の変性炭素生成物の混合物を含有する水性インクまたはコーティング配合物を使用することも本発明の範囲内である。水性インクまたはコーティングの性質をさらに改良するために、下記のような通常の添加物を加えてもよい。
例分析方法 表面積測定のためのASTM D−4820に従ってBET窒素表面積を得た。DBPAデータは、ASTM D−2414に従って得た。
揮発性物質含有量は以下のようにして得た。カーボンブラック試料を125℃で一定の重量になるまで乾燥した。乾燥カーボンブラックの45mlの試料を、950℃で乾燥しておいたカバーのある50mlのるつぼに入れ、マッフル炉で950℃で7分間加熱した。揮発性物質含有量は、炭素試料の重量損失のパーセントとして表す。
本発明のカーボンブラック生成物および未処理カーボンブラックの水分残渣を測定するために、種々の実施例で以下の方法を使用した。カーボンブラック生成物(5g)を45gの水とともに5分間振った。得られた分散物をふるいを通して注ぎ、洗浄液が無色になるまで水で洗浄した。特に明記しない場合は、325メッシュのふるいを使用した。乾燥後、ふるい、ふるい上の残渣の重量を測定し、試験で使用したカーボンブラック生成物のパーセントとして表した。
例1 ピンペレタイザー中でのあらかじめ形成したジアゾニウム塩によるカーボンブラック生成物の調製 本例は、本発明のカーボンブラック生成物の調製の別の方法を示す。ピンペレタイザーに、表面積80m2/g でDBPAが85ml/100gを有する400gのふわふわしたカーボンブラックを充填した。スルファニル酸のナトリウム塩27.1g、亜硝酸ナトリウム10.32g、濃塩酸29.0gおよび水293.
5gから調製した4−スルホベンゼンジアゾニウムヒドロキシド内部塩の冷懸濁液をペレタイザーに加えた。2分間ペレット化した後、試料を除去し、一定重量になるまで115℃で乾燥した。本発明の生成物は325メッシュの残渣が0.
1%であったのに比較して、未処理カーボンブラックは81%であった。エタノールで一晩ソックスレー抽出を行うと、1.1%のイオウを含有するカーボンブラック生成物が得られ、これに対して未処理カーボンブラックでは0.8%であった。これは27%のp−C64SO3−基がカーボンブラック生成物に結合していることを示す。従って、カーボンブラック生成物の、結合したp−C64SO3−基は0.09ミリモル/gであった。
例2 その場で産生したジアゾニウム塩によるカーボンブラック生成物の調製 本実施例は、本発明のカーボンブラック生成物の別の調製方法を例示する。表面積560m2/g でDBPAが90ml/100gで揮発性物質含有量9.5%を有するふわふわしたカーボンブラックを使用した。ふわふわしたカーボンブラック50gを、水420gに溶解したスルファニル酸溶液8.83gに加えた。得られる懸濁液を30℃に冷やし、4.6gの濃亜硝酸を加えた。次に3.51gの亜硝酸ナトリウムを含有する水溶液を攪拌しながら静かに加え、その場で4−スルホベンゼンジアゾニウムヒドロキシド内部塩を形成させると、これはふわふわしたカーボンブラックと反応する。得られた生成物を125℃で乾燥器中で乾燥し、カーボンブラック生成物が得られた。この生成物は325メッシュの残渣が0.1%であったのに比較して、未処理カーボンブラックは6%であった。エタノールで一晩ソックスレー抽出を行うと、1.97%のイオウを含有するカーボンブラック生成物が得られ、これに対して未処理カーボンブラックでは0.24%であった。これは53%のp−C64SO3−基がカーボンブラック生成物に結合していることに対応する。従って、カーボンブラック生成物の、結合したp−C64SO3−基は0.54ミリモル/gであった。
例3 水性インクの調製におけるカーボンブラック生成物の使用 本例は、水性インク配合物において本発明のカーボンブラック生成物を用いる利点を例示する。インク組成物Aは、2.92部のJONCRYL 61LV樹脂、0.21部のイソプロパノール、0.31部のARROWFLEX消泡剤、7.29部のJONCRYL89樹脂および6.98部の水を混合して得られたビヒクルに、例1のカーボンブラック生成物3.13部を加えて調製した。下記の表は、635メッシュの残渣レベルを示す。
JONCRYLは、SC Johnson Polymer,Racine,WIが製造販売している樹脂の登録商標である。ARROWFLEXは、Witco,New York,NYが製造販売している消泡剤の登録商標である。
インク組成物Bは、例1で使用したカーボンブラック生成物120部、112部のJONCRYL61LV樹脂、8部のイソプロパノール、4部のARROWFLEX消泡剤、156部の水および400gの粉砕媒体の混合物を粉砕して調製した。粉砕レベルをチェックするために、15.0部のカーボンブラック生成物、14.0部のJONCRYL61LV樹脂、1.0部のイソプロパノール、1.7部のARROWFLEX消泡剤、35.1部のJoncryl 89および33.
4部の水を含有する組成物Cに定期的に加えた。
インク組成物Dは、実施例1で使用したカーボンブラック120部、112部のJONCRYL61LV樹脂、8部のイソプロパノール、4部のARROWFLEX消泡剤、156部の水および400gの粉砕媒体の混合物を粉砕して調製した。粉砕レベルをチェックするために、15.0部のカーボンブラック生成物、14.0部のJONCRYL61LV樹脂、1.0部のイソプロパノール、1.7部のARROWFLEX消泡剤、35.1部のJONCRYL89樹脂および33.4部の水を含有する組成物Eに定期的に加えた。
粉砕時間の関数としてのインク組成物A、CおよびEからの残渣を、以下の表に示す。表は、本発明のカーボンブラック生成物が、対応する未処理カーボンブラックより速やかにこれらの水性インク中に分散することを明白に示す。


例4 水性コーティングの調製におけるカーボンブラック生成物の使用 本実施例は、本発明のカーボンブラック生成物は水性コーティングの調製に有用であることを示す。例2のカーボンブラック生成物(10g)を、90gの水の中で10分攪拌して分散させた。この分散物4.3gを、7.53gのCARGILL17−7240アクリル樹脂、0.80gのジメチルエタノールアミン(DMEA)、19.57gの水、0.37gのSURFYNOL CT136界面活性剤、1.32gのCARGILL23−2347メラミン樹脂、0.53gのエチレングリコールモノブチルエーテル、および0.075gのBYK−306界面活性剤の混合物中に攪拌することにより、コーティング組成物Aを調製した。CARGILL17−7240アクリル樹脂とCARGILL23−2347アクリル樹脂は、Cargill Inc.,ミネアポリス、ミネソタ州から入手できる。SURFYNOL CT136は、Air Products and Chemicals,Inc.,Allentown,PA が製造販売する界面活性剤の登録商標である。BYK−306は、BYK-Chemie USA,Wallingford が製造販売する界面活性剤の登録商標である。
表面積560m2/g でDBPAが80ml/100gで揮発性物質含有量が9%を有する酸化型カーボンブラック生成物(15g)を、74.6gのCARGILL17−7240アクリル樹脂、9.53gのDMEA、236.5gの水および16.35gのCT−136界面活性剤の混合物中で、平均容量粒径が0.
18ミクロンになるまで粉砕して練り顔料を調製した。24.4gの練り顔料を、17.51gのCARGILL17−7240アクリル樹脂、1.74gのDMEA、50.56gの水、3.97gのCARGILL23−2347メラミン樹脂、1.59gのエチレングリコールモノブチルエーテル、および0.23gのBYK−306界面活性剤の混合物と混合することにより、比較コーティング組成物Bを調製した。
組成物AとBでコーティングした光沢のあるレネッタ(lenetta)ペーパーを350°Fで10分間乾燥した。透明なコーティングを適用し、試料を再び乾燥した。組成物Aでコーティングしたペーパーは、ハンター(Hunter)L、a、およびb値はそれぞれ1.0、0.01、および0.03であり、比較組成物Bでコーティングしたペーパーではそれぞれ1.1、,0.01、および−0.06であった。
例5 カーボンブラック生成物の調製と水性コーティングにおけるその使用 本実施例は、本発明のカーボンブラック生成物の調製と水性コーティングにおけるそのカーボンブラック生成物の使用を例示する。CTAB表面積が350m2/g でDBPAが120ml/100gを有するカーボンブラック(200g)を、水2800g中の42.4gのスルファニル酸の攪拌溶液に加えた。二酸化窒素(25.5g)を冷水100gに溶解し、カーボンブラック生成物懸濁液に加えた。泡が発生した。4−スルホベンゼンジアゾニウムヒドロキシド内部塩をその場で形成させると、これはカーボンブラックと反応した。1時間攪拌後、さらに5gのNO2を直接カーボンブラック分散物に加えた。分散物をさらに15分攪拌し、一晩放置した。得られたカーボンブラック生成物を、乾燥器中で分散物を130℃で乾燥して回収した。
このカーボンブラック生成物の分散物を、水90g中にこのカーボンブラック生成物10gを攪拌して調製した。この分散物4.3gを、7.53gのCARGILL17−7240アクリル樹脂、0.80gのDMEA、19.57gの水、0.37gのSULFINOL CT136界面活性剤、1、32gのCARGILL23−2347メラミン樹脂、0.53gのエチルグリコールモノブチルエーテルおよび0.075gのBYK−306界面活性剤の混合物中に攪拌することにより、コーティング組成物Cを調製した。
表面積560m2/g でDBPAが91ml/100gで揮発性物質含有量が9.
5%を有する酸化型カーボンブラック生成物(15g)を、74.6gのCARGILL17−7240アクリル樹脂、9.53gのDMEA、236.5gの水および16.35gのSULFINOL CT−136界面活性剤の混合物中で、24時間粉砕(粉砕機)することにより調製した。24.4gの練り顔料を、17.51gのCARGILL17−7240アクリル樹脂、1.74gのDMEA、50.56gの水、3.97gのCARGILL23−2347メラミン樹脂、1.59gのエチレングリコールモノブチルエーテル、および0.23gのBYK−306界面活性剤の混合物と混合することにより、比較コーティング組成物Dを調製した。
組成物AとBでコーティングした光沢のあるレネッタ(lenetta)ペーパーを350°で10分間乾燥した。透明なコーティングを適用し、試料を再び乾燥した。組成物Cでコーティングしたペーパーは、ハンター(Hunter)L、a、およびb値はそれぞれ1.0、0.01、および0.03であり、比較組成物Dでコーティングしたペーパーではそれぞれ1.1、0.01、および−1.06であった。

【特許請求の範囲】
1.水、および炭素に結合した少なくとも1つの有機基(ここで有機基は、イオン基またはイオン化可能な基で置換されている)を有する変性炭素生成物からなる、水性インク組成物。
2.前記イオン基もしくはイオン化可能な基が、スルホン酸基もしくはその塩、スルフィン酸基もしくはその塩、カルボン酸基もしくはその塩、ホスホン酸基もしくはその塩、または第四級アンモニウム基である、請求項1記載の水性インク組成物。
3.前記有機基が、置換もしくは非置換のスルホフェニル基もしくはその塩であるか、またはその有機基が、置換もしくは非置換の(ポリスルホ)フェニル基もしくはその塩である、請求項1記載の水性インク組成物。
4.前記有機基が、置換もしくは非置換のスルホナフチル基もしくはその塩であるか、またはその有機基が、置換もしくは非置換(ポリスルホ)ナフチル基もしくはその塩である、請求項1記載の水性インク組成物。
5.前記有機基が、置換もしくは非置換のp−スルホフェニルまたはその塩である、請求項3記載の水性インク組成物。
6.前記有機基が、p−C64SO3Naである、請求項5記載の水性インク組成物。
7.前記炭素が、カーボンブラック、グラファイト、ガラス質炭素、微細に分割された炭素、活性炭、活性木炭、またはこれらの混合物である、請求項1記載の水性インク組成物。
8.前記炭素が、カーボンブラックである、請求項7項記載の水性インク組成物。
9.水、結合剤、および炭素に結合した少なくとも1つの有機基(ここでこの有機基は、イオン基またはイオン化可能な基で置換されている)を有する変性炭素生成物を含む、水性コーティング組成物。
10.前記イオン基もしくはイオン化可能な基が、スルホン酸基もしくはその塩、スルフィン酸基もしくはその塩、カルボン酸基もしくはその塩、ホスホン酸基もしくはその塩、または第四級アンモニウム基である、請求項9記載の水性コーティング組成物。
11.前記有機基が、置換もしくは非置換のスルホフェニル基もしくはその塩であるか、またはその有機基が、置換もしくは非置換(ポリスルホ)フェニル基もしくはその塩である、請求項9記載の水性コーティング組成物。
12.前記有機基が、置換もしくは非置換のスルホナフチル基もしくはその塩であるか、またはその有機基が、置換もしくは非置換の(ポリスルホ)ナフチル基もしくはその塩である、請求項9記載の水性コーティング組成物。
13.前記有機基が、p−スルホフェニルまたはその塩である、請求項11記載の水性コーティング組成物。
14.前記有機基が、p−C64SO3Naである、請求項13記載の水性コーティング組成物。
15.前記炭素が、カーボンブラック、グラファイト、ガラス質炭素、微細に分割された炭素、活性炭、活性木炭、またはこれらの混合物である、請求項9記載の水性コーティング組成物。
16.前記炭素が、カーボンブラックである、請求項15記載の水性コーティング組成物。

【公表番号】特表平10−510863
【公表日】平成10年(1998)10月20日
【国際特許分類】
【出願番号】特願平8−519305
【出願日】平成7年(1995)12月14日
【国際出願番号】PCT/US95/16453
【国際公開番号】WO96/18696
【国際公開日】平成8年(1996)6月20日
【出願人】
【氏名又は名称】キャボット コーポレイション