説明

変性硫黄含有材料及びその製造法

【課題】一般及び産業廃棄物を原料骨材として利用して土木・建設資材を調製する場合においても、該資材に、優れた、耐着火性、機械的強度、遮水性、及び耐硫黄酸化細菌性を付与でき、且つ経済性にも優れた変性硫黄含有材料及びその製造法を提供すること。
【解決手段】本発明の変性硫黄含有材料は、ENBと、DCPD及び/又はTHIとからなる硫黄変性材混合物、もしくはTHIと、DCPD及び/又はENBとからなる硫黄変性材混合物、並びに硫黄を反応させた変性硫黄を含み、該反応させる際の硫黄変性材混合物の配合割合を特定割合とし、硫黄変性材混合物中のENB、DCPD及びTHIの含有割合を特定割合とし、且つ前記変性硫黄が、140℃で溶融した際に特定の粘度を示すことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特定の硫黄変性材混合物を利用した経済性に優れ、製造時の反応制御が良好な、土木用又は建設用の資材として有用な変性硫黄含有材料及びその製造法に関する。
【背景技術】
【0002】
硫黄は、119℃を越えると溶解し、常温で固体であるという性質を利用して、土木用、建設用の資材としての利用が試みられている。例えば、特許文献1には舗装材料への利用が、特許文献2には建築用資材への利用が、特許文献3には廃棄物封鎖用資材の結合材としての利用が検討されている。
しかし、硫黄単独の結合材では、得られる成形物の外表面が硫黄であるため、成型物が着火性を有し、更には、機械的強度、耐硫黄酸化細菌性にも劣るなど、多くの問題があり、その利用は必ずしも拡大していない。
そこで、硫黄の性質を改良するために、多くの添加用化合物が検討されている。
【0003】
特許文献4には、硫黄100質量部とジシクロペンダジエン2〜20質量部とを溶融混合し、冷却する硫黄組成物の製造法と、更に骨材を特定条件で混合した硫黄組成物の製造法が開示されている。また、ジシクロペンタジエンは、安価で経済性に優れることが知られている。
しかし、ジシクロペンダジエンを用いる製造法においては、反応中における粘度の安定性と成型物の非着火性の両立が困難である。
特許文献5には、硫黄100質量部とテトラハイドロインデン0.1〜25質量部とを120〜160℃で溶融混合し、120℃以下に冷却する変性硫黄含有結合材の製造法、並びに更に骨材を特定条件で混合した変性硫黄材料の製造法が開示されている。
しかし、テトラハイドロインデンを用いる方法においては、反応中に多量の硫化水素が発生する問題がある。
特許文献6には、硫黄100質量部と、エチリデンノルボルネン0.1〜25質量部とを、特定条件で反応させる変性硫黄含有結合材及び変性硫黄含有資材の製造法が提案されている。この製造法により得られる変性硫黄含有資材は、耐着火性、機械的強度、遮水性及び耐硫黄酸化細菌性に優れ、土木・建設資材への利用が図られている。
【0004】
しかし、エチリデンノルボルネンは、必ずしも経済的に優れているとは言えず、従って、これを用いた場合と同程度の材料の物性や性能の維持と、優れた経済性とを両立させた新規な変性硫黄含有材料及びその製造法の開発が望まれている。
【特許文献1】米国特許第4290816号明細書
【特許文献2】特開昭48−91123号公報
【特許文献3】特開昭59−26180号公報
【特許文献4】特開2002−69188号公報
【特許文献5】特開2003−277108号公報
【特許文献6】特許第4033894号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の課題は、一般及び産業廃棄物を原料骨材として利用して土木・建設資材を調製する場合においても、該資材に、優れた、耐着火性、機械的強度、遮水性、及び耐硫黄酸化細菌性を付与でき、且つ経済性にも優れた変性硫黄含有材料を提供することにある。
本発明の別の課題は、容易な反応制御により効率良く、上記本発明の変性硫黄含有材料及びその製造法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によれば、エチリデンノルボルネン(ENB)と、ジシクロペンタジエン(DCPD)及び/又はテトラハイドロインデン(THI)とからなる硫黄変性材混合物と、硫黄とを反応させた変性硫黄を含み、該反応させる際の硫黄変性材混合物の配合割合が、硫黄及び硫黄変性材混合物の合計量に対して、0.1〜25質量%であり、硫黄変性材混合物中のENBの含有割合が20〜70質量%、DCPD及び/又はTHIの含有割合が80〜30質量%であり、且つ前記変性硫黄が、140℃で溶融した際に0.05〜3.0Pa・sの粘度を示すことを特徴とする変性硫黄含有材料が提供される。
また本発明によれば、THIと、DCPD及び/又はENBとからなる硫黄変性材混合物と、硫黄とを反応させた変性硫黄を含み、該反応させる際の硫黄変性材混合物の配合割合が、硫黄及び硫黄変性材混合物の合計量に対して、0.1〜25質量%であり、硫黄変性材混合物中のTHIの含有割合が10〜80質量%、DCPD及び/又はENBの含有割合が90〜20質量%であり、且つ前記変性硫黄が、140℃で溶融した際に0.05〜3.0Pa・sの粘度を示すことを特徴とする変性硫黄含有材料が提供される。
更に本発明によれば、ENBと、DCPD及び/又はTHIとからなる硫黄変性材混合物0.1〜25質量%と、硫黄99.9〜75質量%とからなり、且つ硫黄変性材混合物中のENBの含有割合が20〜70質量%、DCPD及び/又はTHIの含有割合が80〜30質量%である変性硫黄原材料を120〜160℃で溶融混合する工程(a)、及び工程(a)の溶融混合物の140℃における粘度が0.05〜3.0Pa・sになった後に、120℃以下に冷却する工程(b)を含む変性硫黄含有材料の製造法が提供される。
更にまた本発明によれば、THIと、DCPD及び/又はENBとからなる硫黄変性材混合物0.1〜25質量%と、硫黄99.9〜75質量%とからなり、且つ硫黄変性材混合物中のTHIの含有割合が10〜80質量%、DCPD及び/又はENBの含有割合が90〜20質量%である変性硫黄原材料を120〜160℃で溶融混合する工程(a)、及び工程(a)の溶融混合物の140℃における粘度が0.05〜3.0Pa・sになった後に、120℃以下に冷却する工程(b)を含む変性硫黄含有材料の製造法が提供される。
【発明の効果】
【0007】
本発明の変性硫黄含有材料は、ENBと、DCPD及び/又はTHIとからなる硫黄変性材混合物、もしくはTHIと、DCPD及び/又はENBとからなる硫黄変性材混合物を特定割合で硫黄と反応させた変性硫黄を含むので、得られる資材に、優れた、耐着火性、機械的強度、遮水性、及び耐硫黄酸化細菌性をバランス良く付与できると共に、ENBを硫黄変性材として単独に用いた場合に比して経済性をも両立させる。
また本発明の製造法では、容易な反応制御により効率良く本発明の変性硫黄含有材料を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明を更に詳細に説明する。
本発明の変性硫黄含有材料は、ENBを必須に含む、ENBと、DCPD及び/又はTHIとからなる硫黄変性材混合物、もしくはTHIを必須に含む、THIと、DCPD及び/又はENBとからなる硫黄変性材混合物と、硫黄とを反応させた変性硫黄を含む。
前記変性硫黄は、140℃で溶融した際に0.05〜3.0Pa・s、好ましくは0.05〜1.5Pa・s、特に好ましくは0.05〜0.07Pa・sの粘度を示す。
【0009】
硫黄としては、通常の硫黄単体で、天然産又は、石油や天然ガスの脱硫によって生成した硫黄が挙げられる。
硫黄変性材混合物の使用割合は、硫黄変性材混合物と硫黄との合計量に対して、0.1〜25質量%、好ましくは2.0〜5.0質量%である。
硫黄変性材混合物の使用割合が0.1質量%未満では、所望の優れた物性及び性能がバランスよく得られないおそれがあり、25質量%を超えると、反応制御が困難になり、更に経済的に不利になるおそれがある。
硫黄変性材混合物の組み合わせとしては、ENBと、DCPD及び/又はTHIとの混合物、もしくはTHIと、DCPD及び/又はENBとの混合物、特に、ENBとDCPDとの混合物が好ましい。
【0010】
ENBを必須に含む硫黄変性材混合物中のENBの含有割合は、20〜70質量%、好ましくは30〜60質量%である。20質量%未満では、所望の優れた物性及び性能が得られないおそれがあり、70質量%を超えると経済的に不利である。
ENBを必須に含む硫黄変性材混合物中のDCPD及び/又はTHIの含有割合は、通常、80〜30質量%、好ましくは70〜40質量%である。
ENBを必須に含む硫黄変性材混合物において、DCPDを必須に含有させる場合の割合は、通常、30〜80質量%、好ましくは40〜70質量%である。DCPDの割合が、30質量%未満では、経済性が不利であり、80質量%を超えると、所望の優れた物性及び性能が低下するおそれがあり、また、反応制御が困難になるおそれがある。
【0011】
THIを必須に含む硫黄変性材混合物中のTHIの含有割合は、10〜80質量%、好ましくは20〜70質量%である。10質量%未満では、所望の優れた物性及び性能が得られないおそれがあり、80質量%を超えると臭気発生のおそれがある。
THIを必須に含む硫黄変性材混合物中のDCPD及び/又はENBの含有割合は、通常、90〜20質量%、好ましくは80〜30質量%である。
THIを必須に含む硫黄変性材混合物において、DCPDを必須に含有させる場合の割合は、通常、30〜50質量%、好ましくは35〜45質量%である。DCPDの割合が、30質量%未満では、経済性が不利であり、50質量%を超えると、所望の優れた物性及び性能が低下するおそれがあり、また、反応制御が困難になるおそれがある。
ENB及びTHIを必須に含む硫黄変性材混合物において、ENBの含有割合は、通常、20〜90質量%、好ましくは30〜80質量%であり、THIの含有割合は、通常、80〜10質量%、好ましくは70〜20質量%である。
【0012】
ENBとしては、いわゆるエチリデンノルボルネンと称する市販品や、ENBの純度が通常80質量%以上、好ましくは90質量%以上、更に好ましくは95質量%以上、最も好ましくは98質量%以上のものが挙げられる。従って、製造プラントにおいてENBを精製する前段の粗ENBは、微量のビニルノルボルネンを含み得るが、前記純度を満足すれば使用可能である。尚、ENB製造プラントにおける副生油は、THI等の副生物を20質量%以上含みうることから、上記ENBとTHIの含有割合を満たす場合には、副生物とのENBの混合物をそのまま用いることもできる。
【0013】
DCPDとしては、DCPD単体、若しくはDCPDと、シクロペンタジエンの2〜5量体を主体に構成される混合物が挙げられる。混合物中のDCPDの含有量は、通常70質量%以上、好ましくは85質量%以上である。従って、いわゆるジシクロペンタジエンと称する市販品の多くは使用可能である。
【0014】
THIとしては、例えば、THI単体、若しくはTHIと、シクロペンタジエンの単体、シクロペンタジエン及びブタンジエンの重合物、シクロペンタジエンの2〜4量体からなる群より選択される1種又は2種以上を主体に構成されるものとの混合物が挙げられる。該混合物中のTHIの含有量は、通常50質量%以上、好ましくは65質量%以上である。従って、いわゆるテトラハイドロインデンと称する市販品やENBの製造プラントから排出される副生成油の多くは本発明に用いるTHIとして使用可能である。
【0015】
上記硫黄変性材混合物と硫黄とを反応させて変性硫黄含有材料を調製するには、例えば、上記硫黄変性材混合物と、硫黄とを上述の特定割合で含む変性硫黄原材料を特定温度で溶融混合する工程(a)、及び工程(a)の溶融混合物の140℃における粘度が特定粘度になった後に、120℃以下に冷却する工程(b)を含む方法により得ることができる。
工程(a)において、溶融混合する特定温度は、120〜160℃、好ましくは130〜150℃、より好ましくは135〜140℃である。
工程(a)の溶融混合は、例えば、先ず硫黄を加熱溶融した後、所定量の上記硫黄変性材混合物を少しずつ添加する方法により行うことができる。
通常、固体硫黄を加熱していくと119℃で固体から液体への相変化が始まるので、硫黄を液化させてから全体を撹拌し、適当な粘度計、例えばB型粘度計で粘度を測定しながら、130℃程度まで温度を上昇させた後に、上記硫黄変性材混合物を添加することが、反応制御が容易な点で好ましい。
【0016】
前記溶融混合時の溶融物の粘度上昇速度は、反応温度に関係し、温度が高いほど速い。溶融混合温度が120℃未満では硫黄は容易に変性しない。一方、溶融混合温度が160℃を超えると、粘度上昇が急激で制御が困難になる傾向が高い。溶融混合温度が130℃程度では、硫黄と上記硫黄変性材混合物との重合反応は遅く、急な発熱及び粘度上昇は起こらず、僅かな温度上昇と粘度上昇がみられるだけで、ほぼ一定の粘度を維持する。従って、発熱の起こらないことを確認後、前記温度範囲まで次第に温度上昇させることにより工程(a)の溶融混合を行うことができる。
【0017】
工程(a)の溶融混合に使用する混合機は、混合が十分に行えるものであれば公知のものが使用でき、変性硫黄含有結合材の製造には主に液体撹拌用の混合機の使用が好ましい。例えば、インターナルミキサー、ロールミル、ドラムミキサー、ポニーミキサー、リボンミキサー、ホモミキサー、スタティックミキサーが挙げられる。
【0018】
工程(b)において、120℃以下に冷却する時期、即ち、反応終了時期は、上記硫黄変性材混合物の使用割合と溶融混合温度により異なるが、前記溶融混合物の粘度により決定できる。変性硫黄含有材から製造される成型物の強度や着火性、更には製造工程の作業性の観点からは、140℃における粘度が通常0.05〜1.5Pa・s、特に0.05〜0.07Pa・sの範囲が総合的に最適である。該粘度が前記範囲に満たない状態で120℃以下に冷却すると、得られる変性硫黄含有材料を用いて土木・建設資材を調製した場合の所望の物性が低下するおそれがある。改質が進行するに従い、粘度が高くなり、得られる材料の強度も高くなるが、該粘度が前記範囲を超える場合は、工程(a)の混合が困難となり、作業性が著しく悪化すると共に変性効果が飽和する。
【0019】
前記溶融混合物の粘度が上記範囲に達したか否かは、B型粘度計により測定できる。該粘度の測定は、必ずしも常時行う必要は無く、バッチ式で行っても良く、そのような場合、予め工程(a)における溶融混合時間から推測して測定時期を決定することもできる。
工程(b)において120℃以下への冷却は、室温程度まで冷却することにより、固体の変性硫黄含有材料を得ることができる。
また、変性硫黄含有材料が、後述する骨材を含む場合には、工程(b)で得られた材料と骨材とを、特定の温度下、変性硫黄含有材料の140℃における粘度を特定粘度に維持しながら混合する工程(c)及び、得られる混合物を、120℃以下に冷却する工程(d)を更に行うことができる。
また、工程(b)から工程(c)を連続的に行う場合には、工程(b)における120℃以下への冷却を省くことも可能である。
【0020】
工程(c)に用いる骨材としては、骨材として使用可能であれば特に限定されないが、再利用可能な産業廃棄物の使用が好ましい。産業廃棄物としては、例えば、焼却灰、焼却飛灰、都市ごみ高温溶融炉から発生する溶融飛灰、電力事業及び一般産業から排出される石炭灰、流動床焼却装置で使用した流動砂、重金属に汚染された土壌、研磨屑、各種金属製造時に副生する副生物、例えば、鉄鋼スラグ、鉄鋼ダスト、フェロニッケルスラグ、アルミドロス、鋼スラグ等から選ばれる1種又は2種以上が挙げられる。
【0021】
前記鉄鋼スラグは、製鉄業から副生するスラグを指し、高炉スラグ、平炉スラグ、転炉スラグ等がある。鉄鋼スラグの主成分は、シリカ、アルミナ、酸化カルシウム、酸化鉄等の酸化物やその他無機硫化物も含まれる。
前記焼却灰は、都市ごみ焼却炉や産業廃棄物焼却炉等の各種燃焼炉から排出され、主成分がシリカ、アルミナ、酸化カルシウム、酸化鉄等の酸化物であるが、鉛、カドミウム、砒素等の有害金属の含有量も多い。このような焼却灰は、汚水を出さない最終処分場で埋め立て処理されているものが多いが、本発明においてはこのような焼却灰も骨材として使用することができる。
前記石炭灰は、発電用、加熱用の各種石炭焚燃焼炉から排出され、コンクリートや土木資材混合材として従来から利用されているものが使用できる。
本発明においては、上記骨材の他に、例えば、硅砂、粘土鉱物、活性炭、カーボンファイバー、グラスファイバー、ビニロン繊維、アラミド繊維、砂、砂利等の有害物質を含有しない無機系資材、有機系資材等も骨材として使用可能である。
【0022】
工程(c)において、工程(b)で得られる骨材を含まない変性硫黄含有材料と、骨材との混合割合は、質量比で通常10〜50:90〜50、好ましくは15〜30:85〜70である。最も望ましいのは、骨材が最密充填構造をとった場合のその空隙を埋める量の前記骨材を含まない変性硫黄含有材料が配合された場合であり、この際に強度は最も高くなる。前記変性硫黄含有材料の混合割合が前記範囲に満たない場合は、骨材の表面を十分に濡らすことができず、骨材が露出した状態となり、強度が十分発現しないと共に遮水性が維持できないおそれがある。一方、混合割合が前記範囲を超える場合は、強度が低下する傾向にある。
【0023】
工程(c)において、混合時における前記骨材を含まない変性硫黄含有材料の粘度は、時間と共に上昇するので、取り扱いが容易で好ましい最適粘度範囲に維持する必要がある。骨材を含まない変性硫黄含有材料の粘度は、140℃における粘度が0.05〜3.0Pa・s、好ましくは0.05〜1.5Pa・s、特に0.05〜0.07Pa・sの範囲が総合的に最適である。該粘度が前記範囲に満たない場合は、得られる変性硫黄含有材料の物性が低下する傾向にある。粘度が高くなるに従い、得られる変性硫黄含有材料の強度も高くなるが、前記範囲を超えると製造時の混合が困難となり、作業性が悪化するおそれがある。
【0024】
工程(c)において、骨材の混合にあたっては、混合時の温度低下を避けるために予熱することが好ましい。骨材及び骨材を含まない変性硫黄含有材料を、それぞれ120〜155℃程度に予熱し、混合機も120〜155℃の温度に予熱することが好ましい。
前記混合は、予熱した各成分をほぼ同時に混合機に投入し、通常120〜160℃、好ましくは130〜140℃の温度条件で行うことができる。
混合時のより好ましい温度範囲としては、混合機を130〜140℃で予熱しておき、130〜140℃の温度で混合することが望ましい。この場合、骨材の予熱範囲は130〜140℃、骨材を含まない変性硫黄含有材料の予熱範囲は125〜140℃が好ましい。
混合の時間は、通常1分〜1時間、好ましくは5〜30分間程度である。硫黄と硫黄変性材混合物との重合による高粘度化、更には硬化を避けるため製造物の性状が許す範囲で極力短時間による混合が望ましい。しかし、混合時間が1分間未満の場合は、十分混合されず、得られる材料が連続相とならず、隙間が生じ、表面が滑らかにならないおそれがある。混合時間が1時間を超える場合は、硫黄と硫黄変性材混合物との重合による高粘度化が進行する恐れがある。
【0025】
工程(c)においては、所望により他の成分を混合することもできる。この場合は、骨材を含まない変性硫黄含有材料を再溶融して他の成分を混合する方法、或いは得られた直後の変性硫黄含有結合材を冷却して固化する前に他の成分を混合する方法が挙げられる。
工程(c)に用いる混合機は、混合が十分に行えるものであれば特に限定されず、好ましくは固液撹拌用が使用できる。例えば、インターナルミキサー、ロールミル、ボールミル、ドラムミキサー、スクリュー押出し機、パグミル、ポニーミキサー、リボンミキサー、ニーダーが使用できる。
【0026】
工程(d)において、120℃以下に冷却することにより、骨材を含む変性硫黄含有材料が得られる。また、該冷却時に、変性硫黄含有材料を、成型物、ペレット、破砕物若しくは粒状物等の所望の形態とすることができる。この冷却・固化前に、変性した硫黄の過度の粘度上昇を回避するため、所定の流動状態になったところで温度を下げ、120〜130℃で混合をしばらく継続することもできる。また、溶融混合物を不定形に冷却し、塊状固化物を得、該固化物を破砕して変性硫黄含有材料とすることもできる。
【0027】
本発明の変性硫黄含有材料は、任意の構造に作製可能な特性を生かし、例えば、パネル材、床材、壁材、瓦、水中構造物とすることができる他、粒状物として、埋立材、路盤材、盛土材、コンクリート用骨材として利用することもできる。
【実施例】
【0028】
以下、実施例及び比較例によって具体的に説明するが、本発明はこれらの例に限定されない。尚、例中で作製した変性硫黄含有材料について、以下に示す方法に従い各測定及び評価を行なった。これらの結果を、以下に示す、硫黄変性材としてENBのみを用いた参考例との比較により表1に示す。
耐着火性:消防法における可燃性固体(危険物第2類)評価のための着火性試験に準拠して評価した。3秒以内に着火し、かつ10秒以上燃焼を継続する第1種可燃性固体並びに3秒を超えて10秒以内に着火し、かつ燃焼を継続する第2種可燃性固体に相当するものを「着火性あり」、10秒を超えて着火するもの及び燃焼を継続しないものを「危険性なし」とした。
圧縮強度:φ5×10cmの円筒検体を作製し、作製後7日目に30トン加圧テンシロン圧縮強度測定器を使用して測定した。
耐硫黄酸化細菌性:500mlバッフル(ヒダ)付きフラスコに、2cm×2cm×4cmの角柱検体及び培養液(NH4Cl 2.0g、KH2PO4 4.0g、MgCl2・6H2O 0.3g、CaCl2・2H2O 0.3g、FeCl2・4H2O 0.01g、イオン交換水1.0リットル、塩酸でpH3.0に調整)100mlを入れ、種菌(硫黄酸化細菌:Thiobacillus thiooxidans IFO 12544)を植菌後、28℃恒温室内で回転振とう培養(170rpm)し、植菌後からのpH変化及び試料状態を調べた。硫黄酸化細菌により硫黄が資化されると硫酸イオンが生成し、pHが低下する。
【0029】
参考例1
攪拌混合槽中に固体硫黄970gを入れ、140℃で溶融した後135℃に保持した。続いてENB30gをゆっくりと添加し、約5分間静かに攪拌して温度上昇のないことを確認してから、140℃まで昇温した。反応が開始し、次第に粘度が上昇し、3時間後、140℃の粘度が0.06Pa・sに達したところで直ちに加熱を停止し、適当な型又は容器に流し込んで室温で冷却し、骨材を含まない変性硫黄含有材料を得た。
次いで、3号硅砂1120g、7号硅砂1127g及び石炭灰413gからなる140℃で予熱した骨材と、上記で調製した骨材を含まない変性硫黄含有材料840gを140℃に再加熱して溶融した溶解物とを、140℃に保った混錬機内にほぼ同時に投入した。続いて、溶融物の140℃の粘度を0.05〜0.07Pa・sに維持して20分間混錬し、これを直径5cm、高さ10cmの円柱型に流し込んで冷却し成型物を作製した。
【0030】
実施例1、2、比較例1及び2
固体硫黄の量、硫黄変性材の種類と量、並びに骨材を含まない変性硫黄含有材料の調製時における加熱を停止し、冷却する際の140℃における粘度を、表1に示すとおり変更した以外は、参考例と同様に操作して、対応する骨材を含まない変性硫黄含有材料及び成型物を調製した。
【0031】
【表1】

表1の結果から、実施例1及び2は、安価なDCPDを含んでいても、硫黄変性材としてENB単独を用いた参考例と同程度の物性を示すことがわかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エチリデンノルボルネンと、ジシクロペンタジエン及び/又はテトラハイドロインデンとからなる硫黄変性材混合物、並びに硫黄を反応させた変性硫黄を含み、該反応させる際の硫黄変性材混合物の配合割合が、硫黄及び硫黄変性材混合物の合計量に対して、0.1〜25質量%であり、硫黄変性材混合物中のエチリデンノルボルネンの含有割合が20〜70質量%、ジシクロペンタジエン及び/又はテトラハイドロインデンの含有割合が80〜30質量%であり、且つ前記変性硫黄が、140℃で溶融した際に0.05〜3.0Pa・sの粘度を示すことを特徴とする変性硫黄含有材料。
【請求項2】
テトラハイドロインデンと、ジシクロペンタジエン及び/又はエチリデンノルボルネンとからなる硫黄変性材混合物、並びに硫黄を反応させた変性硫黄を含み、該反応させる際の硫黄変性材混合物の配合割合が、硫黄及び硫黄変性材混合物の合計量に対して、0.1〜25質量%であり、硫黄変性材混合物中のテトラハイドロインデンの含有割合が10〜80質量%、ジシクロペンタジエン及び/又はエチリデンノルボルネンの含有割合が90〜20質量%であり、且つ前記変性硫黄が、140℃で溶融した際に0.05〜3.0Pa・sの粘度を示すことを特徴とする変性硫黄含有材料。
【請求項3】
骨材を更に含む請求項1又は2記載の変性硫黄含有材料。
【請求項4】
エチリデンノルボルネンと、ジシクロペンタジエン及び/又はテトラハイドロインデンとからなる硫黄変性材混合物0.1〜25質量%、並びに硫黄99.9〜75質量%からなり、且つ硫黄変性材混合物中のエチリデンノルボルネンの含有割合が20〜70質量%、ジシクロペンタジエン及び/又はテトラハイドロインデンの含有割合が80〜30質量%である変性硫黄原材料を120〜160℃で溶融混合する工程(a)、及び工程(a)の溶融混合物の140℃における粘度が0.05〜3.0Pa・sになった後に、120℃以下に冷却する工程(b)を含む変性硫黄含有材料の製造法。
【請求項5】
テトラハイドロインデンと、ジシクロペンタジエン及び/又はエチリデンノルボルネンとからなる硫黄変性材混合物0.1〜25質量%、並びに硫黄99.9〜75質量%からなり、且つ硫黄変性材混合物中のテトラハイドロインデンの含有割合が10〜80質量%、ジシクロペンタジエン及び/又はエチリデンノルボルネンの含有割合が90〜20質量%である変性硫黄原材料を120〜160℃で溶融混合する工程(a)、及び工程(a)の溶融混合物の140℃における粘度が0.05〜3.0Pa・sになった後に、120℃以下に冷却する工程(b)を含む変性硫黄含有材料の製造法。
【請求項6】
工程(b)で得られた材料と骨材とを、120〜160℃の温度下、該変性硫黄含有材料の140℃における粘度を0.05〜3.0Pa・sの範囲内に維持しながら混合する工程(c)及び、工程(c)の混合物を、120℃以下に冷却する工程(d)とを更に含む請求項4又は5記載の製造法。

【公開番号】特開2010−6630(P2010−6630A)
【公開日】平成22年1月14日(2010.1.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−166684(P2008−166684)
【出願日】平成20年6月26日(2008.6.26)
【出願人】(000004444)新日本石油株式会社 (1,898)
【Fターム(参考)】