説明

変性重合体を含有するゴム組成物を使用したタイヤ

【課題】補強用充填剤のゴム成分への分散性に優れた、転がり抵抗が小さく、低発熱性、耐摩耗性に優れたゴム組成物を用いたタイヤ。
【解決手段】共役ジエン系重合体の活性部位に官能基を有してもよいヒドロカルビロキシシラン化合物を反応させて、含水ケイ酸との親和性の高い官能基を導入した変性共役ジエン系重合体およびセチルトリメチルアンモニウムブロミド吸着比表面積(CTAB)(m/g)と音響式粒度分布測定によって求められる一次凝集体の直径の最頻値Aac(nm)とが下記式(A)を満たす含水ケイ酸を配合してなるゴム組成物を使用したタイヤ。
ac≧−0.76×(CTAB)+274・・・(A)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タイヤ等の部材用として好適なゴム組成物、さらに詳しくは、補強用充填剤として特定構造の含水ケイ酸を用い、それら充填剤の分散性を改善することができ、低発熱性、破壊特性、耐摩耗性に優れた変性共役ジエン系重合体を含有するゴム組成物を使用したタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、省エネルギーの社会的な要請及び環境問題への関心の高まりに伴う世界的な二酸化炭素排出規制の動きに関連して、自動車の低燃費化に対する要求はより過酷なものとなりつつある。このような要求に対応するため、タイヤ性能についても転がり抵抗を減らした低発熱性のタイヤが求められてきている。タイヤの転がり抵抗を下げる手法としては、タイヤ構造の最適化による手法についても検討されてきたものの、ゴム組成物としてより発熱性の低い材料を用いることが最も一般的な手法として行われている。
【0003】
これまで、かかる低発熱性のゴム組成物を得る方法として、補強用充填剤を改良すること及びゴム成分を改良することが行われている。
従来から、ゴム用補強充填剤としては、カーボンブラックが使用されている。これは、カーボンブラックがゴム組成物に高い耐摩耗性を付与し得るからである。カーボンブラックの単独使用で低発熱化を図ろうとする場合、カーボンブラックの充填量を減らす、あるいは、粒径の大きいものを使用することが考えられるが、いずれの場合も耐摩耗性、湿潤路面でのグリップ性が低下するのを避けられないことが知られている。一方、低発熱性を向上させるために充填剤としてシリカが知られているが(例えば、特許文献1〜4)、シリカは、その表面官能基であるシラノール基の水素結合により粒子同士が凝集する傾向にあり、また、ゴム分子とのぬれ性も劣り、ゴム中へのシリカの分散は良くない。これをよくするためには混練時間を長くする必要がある。また、ゴム中へのシリカの分散が不十分であるとゴム組成物のムーニー粘度が高くなり、押出しなどの加工性に劣る。さらに、シリカ粒子の表面は酸性であることから、ゴム組成物を加硫する際に、加硫促進剤として使用される塩基性物質を吸着し、加硫が十分行われず、弾性率が上がらないという問題も有していた。
【0004】
これらの欠点を改良するために、シランカップリング剤が開発されたが、依然としてシ
リカの分散は十分なレベルには達しておらず、特に工業的に良好なシリカ粒子の分散を得ることは困難であった。そこで、疎水性化剤で表面を処理したシリカを混練してシランカップリング剤の反応を促進することが行われている(特許文献5)。
【0005】
また、特許文献6には、疎水性沈降ケイ酸を用いることが開示されているが、完全疎水化処理した沈降ケイ酸を用いているため、シランカップリング剤が反応する表面シラノール基が存在しなくなるため、ゴムの補強が十分にとれないという問題があった。さらに、低発熱性を高めるため、シリカを大粒径化することが行われているが、大粒径化することでシリカの比表面積が低下し、補強性が悪くなる。特許文献7には、特殊形状のシリカを用いることが開示されているが、ゴム組成物の低発熱性、耐摩耗性が十分ではない。
【0006】
一方、ゴム成分を改良する方法として、シリカやカーボンブラックなどの充填剤と相互作用する変性ゴムの技術開発が多くなされてきた。その中でも特に、有機リチウムを用いたアニオン重合で得られる共役ジエン系重合体の重合活性末端を充填剤と相互作用する官能基を含有するアルコキシシラン誘導体で変性する方法が有効なものとして提案されている(例えば、特許文献8、9)。
【0007】
しかし、これらの多くは重合体末端のリビング性が容易に確保できるポリマーへの適用であり、シリカやカーボンブラックを配合したゴム組成物における変性効果は必ずしも充分なものが得られていない。また、従来の変性手法の多くは、主鎖に対する分岐付与を充分行なうことが出来ないため、実用に供する際に、コールドフローが大きな障害になり、これに対処するために部分カップリングを行なうと、必然的に変性効果が低減するという問題があった。
【0008】
そこで、より変性効果を向上させようとして、共役ジエン系重合体の活性末端をアルコキシシランで変性するにあたり、反応系に縮合促進剤を添加する方法が提案されているが(例えば、特許文献10)、このゴム組成物においては、シリカ系充填剤に対する低ロス効果の向上は大きいものの、カーボンブラック充填剤に対する低ロス効果は十分とはいえない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平6−248116号公報
【特許文献2】特開平7−70369号公報
【特許文献3】特開平8−245838号公報
【特許文献4】特開平3−252431号公報
【特許文献5】特開平6−248116号公報
【特許文献6】特開平6−157825号公報
【特許文献7】特開2006−37046号公報
【特許文献8】特公平6−53763号公報
【特許文献9】特公平6−57767号公報
【特許文献10】WO03/087171号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、かかる実情に鑑みなされたもので、補強用充填剤のゴム成分への分散性に優れた、転がり抵抗が小さく、低発熱性、耐摩耗性、破壊特性などに優れたゴム組成物を用いたタイヤを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、ゴム成分及び補強用充填剤の双方を改良して、補強用充填剤のゴム成分への分散性を改善するものであり、ゴム成分として分子内の活性部位にシリカと親和性の高い官能基が導入された変性共役ジエン系重合体を、充填剤として特殊構造の含水ケイ酸を用いたゴム組成物を使用したタイヤである。
【0012】
本発明の変性共役ジエン系重合体は、活性部位を有する共役ジエン系重合体の該活性部位に、官能基を有してもよいヒドロカルビロキシシラン化合物を反応させて官能基を導入した変性重合体、さらに周期律表の4族、12族、13族、14族及び15族の少なくとも一つに属する元素の化合物からなる縮合促進剤の存在下、前記官能基が関与する縮合反応を行なって得られる変性重合体である。
【0013】
一方、本発明で使用する含水ケイ酸は、通常含水ケイ酸は粒子表面にあるシラノール基同士が水素結合して集合している(二次凝集)のに対して、次のような指標で表すことができる構造(一次凝集)を持つことが特徴である。
【0014】
即ち、セチルトリメチルアンモニウムブロミド吸着比表面積(CTAB)(m/g)と音響式粒度分布測定によって求められる一次凝集体の直径(nm)の最頻値Aacとが下記式(A)
ac≧−0.76×(CTAB)+274・・・(A)
を満たし、さらに灼熱減量(750℃で3時間加熱した時の質量減少%)と加熱減量(105℃で2時間加熱した時の質量減少%)とが下記式(B)
(灼熱減量)−(加熱減量)≦3・・・(B)
を満たすことが好ましい。
上記のような変性共役ジエン系重合体は、シリカ及びカーボンブラック等の充填剤との相互作用に優れ、上記のような含水ケイ酸と共に用いられたゴム組成物は、低発熱性、耐摩耗性及び破壊特性に優れている。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、ゴム成分とシリカ及び/又はカーボンブラックとの相互作用に優れ、これら充填剤の分散性を改善することができ、低発熱性、破壊特性、耐摩耗性などに優れたゴム組成物を用いてなる上記特性を有するタイヤが提供される。
【発明を実施するための形態】
【0016】
まず、本発明で用いる変性共役ジエン系重合体について説明する。
本発明の変性共役ジエン系重合体は、活性部位を分子内に有する共役ジエン系重合体の該活性部位に、官能基を有してもよいヒドロカルビロキシシラン化合物を反応させて官能基を導入した変性重合体である。さらに周期律表の4族、12族、13族、14族及び15族の少なくとも一つに属する元素の化合物からなる縮合促進剤の存在下、前記官能基部位に縮合反応を行なって得られる変性重合体でもよい。
【0017】
縮合促進剤は、通常、共役ジエン系重合体の活性部位を官能基を有してもよいヒドロカルビロキシシラン化合物と変性反応させた後、縮合反応前に加えるが、該ヒドロカルビロキシシラン化合物の添加前(変性反応前)に加えた後、該ヒドロカルビロキシシラン化合物を添加して変性反応後、縮合反応を行なってもよい。
【0018】
本発明において用いられる共役ジエン系重合体は、ジエン系モノマーを単独で、又は他のモノマーと共重合して得られるものであり、その製造方法については特に制限はなく、溶液重合法、気相重合法、バルク重合法のいずれも用いることができるが、特に溶液重合法が好ましい。また、重合形式は、回分式及び連続式のいずれであってもよい。
また、共役ジエン系重合体の分子中に存在する活性部位の金属は、アルカリ金属及びアルカリ土類金属から選ばれる1種であることが好ましく、アルカリ金属がより好ましく、特にリチウムが好ましい。
【0019】
上記溶液重合法においては、例えばアルカリ金属化合物及び/又はアルカリ土類金属化合物、特にリチウム化合物を重合開始剤とし、共役ジエン化合物単独又は共役ジエン化合物と芳香族ビニル化合物をアニオン重合させることにより、目的の重合体を製造することができる。
さらには、ハロゲン含有モノマーを混在させ、ポリマー中のハロゲン原子を有機金属化合物によって活性化することも有効である。例えば、イソブチレン単位、パラメチルスチレン単位及びパラブロモメチルスチレン単位を含む共重合体の臭素部分をリチオ化して活性部位とすることも有効である。
活性部位は、重合体分子中に存在すればよく、限定されないが、重合体がアルカリ金属化合物及び/又はアルカリ土類金属化合物を重合開始剤としたアニオン重合によるものである場合、一般に活性部位は分子の末端に来るもので、このように活性末端を有する重合体が好ましい。
【0020】
共役ジエン化合物としては、例えば1,3−ブタジエン;イソプレン;1,3−ペンタジエン;2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン;2−フェニル−1,3−ブタジエン;1、3−ヘキサジエンなどが挙げられる。これらは単独で用いてもよく、二種以上組み合わせて用いてもよいが、これらの中で、1,3−ブタジエン、イソプレン及び2,3−ジメチル−1,3−ブタジエンが特に好ましい。
また、これらの共役ジエン化合物との共重合に用いられる芳香族ビニル化合物としては、例えばスチレン;α−メチルスチレン;1−ビニルナフタレン;3−ビニルトルエン;エチルビニルベンゼン;ジビニルベンゼン;4−シクロへキシルスチレン;2,4,6−トリメチルスチレンなどが挙げられる。これらは単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよいが、これらの中で、スチレンが特に好ましい。
【0021】
さらに、単量体として共役ジエン化合物と芳香族ビニル化合物を用いて共重合を行う場合、単量体の入手の容易さなどの実用面、及びアニオン重合特性においてリビング性などの点で優れることなどから、それぞれ1,3−ブタジエン及びスチレンの使用が、特に好適である。
溶液重合法を用いた場合には、溶媒中の単量体濃度は、好ましくは5〜50質量%、より好ましくは10〜30質量%である。尚、共役ジエン化合物と芳香族ビニル化合物を用いて共重合を行う場合、仕込み単量体混合物中の芳香族ビニル化合物の含量は0〜55質量%の範囲、好ましくは3〜50、より好ましくは6〜45質量%の範囲である。
【0022】
重合開始剤のアルカリ金属化合物及び/又はアルカリ土類金属化合物としては、特に制限はないが、ヒドロカルビルリチウムおよびリチウムアミド化合物が好ましく用いられ、前者のヒドロカルビルリチウムを用いる場合には、重合開始末端にヒドロカルビル基を有し、かつ他方の末端が重合活性部位である共役ジエン系重合体が得られる。また、後者のリチウムアミド化合物を用いる場合には、重合開始末端に窒素含有基を有し、他方の末端が重合活性部位である共役ジエン系重合体が得られる。
【0023】
ヒドロカルビルリチウムとしては、炭素数1〜20のヒドロカルビル基を有するものが好ましく、例えばメチルリチウム、エチルリチウム、n−プロピルリチウム、イソプロピルリチウム、n−ブチルリチウム、sec−ブチルリチウム、tert−オクチルリチウム、n−デシルリチウム、フェニルリチウム、2−ナフチルリチウム、2−ブチル−フェニルリチウム、4−フェニル−ブチルリチウム、シクロへキシルリチウム、シクロペンチルリチウム、ジイソプロペニルベンゼンとブチルリチウムとの反応生成物などが挙げられるが、これらの中で、特にn−ブチルリチウムが好適である。
【0024】
一方、リチウムアミド化合物としては、例えばリチウムヘキサメチレンイミド、リチウムピロリジド、リチウムピペリジド、リチウムへプタメチレンイミド、リチウムドデカメチレンイミド、リチウムジメチルアミド、リチウムジエチルアミド、リチウムジブチルアミド、リチウムジプロピルアミド、リチウムジへプチルアミド、リチウムジへキシルアミド、リチウムジオクチルアミド、リチウムジ−2−エチルへキシルアミド、リチウムジデシルアミド、リチウム−N−メチルピペラジド、リチウムエチルプロピルアミド、リチウムエチルブチルアミド、リチウムエチルベンジルアミド、リチウムメチルフェネチルアミドなどが挙げられる。これらの中で、カーボンブラックに対する相互作用効果及び重合開始能の点から、リチウムヘキサメチレンイミド、リチウムピロリジド、リチウムピペリジド、リチウムへプタメチレンイミド、リチウムドデカメチレンイミドなどの環状リチウムアミドが好ましく、特にリチウムヘキサメチレンイミド及びリチウムピロリジドが好適である。
【0025】
これらのリチウムアミド化合物は、一般に、第二アミンとリチウム化合物とから、予め調製したものを重合に使用することができるが、重合系中(in−situ)で調製することもできる。
また、これらの重合開始剤の使用量は、好ましくは単量体100g当たり、0.2〜20ミリモルの範囲で選定される。
【0026】
前記リチウム化合物を重合開始剤として用い、アニオン重合によって共役ジエン系重合体を製造する方法としては、特に制限はなく、従来公知の方法を用いることができる。
具体的には、反応に不活性な有機溶剤、例えば脂肪族、脂環族、芳香族炭化水素化合物などの炭化水素系溶剤中において、共役ジエン化合物又は共役ジエン化合物と芳香族ビニル化合物を、前記リチウム化合物を重合開始剤として、所望により用いられるランダマイザーの存在下にアニオン重合させることにより、目的の共役ジエン系重合体が得られる。
【0027】
前記炭化水素系溶剤としては、炭素数3〜8のものが好ましく、例えばプロパン、n−ブタン、イソブタン、n−ペンタン、イソペンタン、n−ヘキサン、シクロヘキサン、プロペン、1−ブテン、イソブテン、トランス−2−ブテン、シス−2−ブテン、1−ペンテン、2−ペンテン、1−へキセン、2−へキセン、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼンなどを挙げることができる。これらは単独で用いてもよく、二種以上を混合して用いてもよい。
【0028】
所望により用いられるランダマイザーとは、共役ジエン系重合体のミクロ構造の制御、例えばブタジエン−スチレン共重合体におけるブタジエン部分の1,2結合、イソプレン重合体における3,4結合の増加など、あるいは共役ジエン化合物−芳香族ビニル化合物共重合体における単量体単位の組成分布の制御、例えばブタジエン−スチレン共重合体におけるブタジエン単位、スチレン単位のランダム化などの作用を有する化合物のことである。このランダマイザーとしては、特に制限はなく、従来ランダマイサーとして一般に使用されている公知の化合物の中から任意のものを適宜選択して用いることができる。具体的には、ジメトキシベンゼン、テトラヒドロフラン、ジメトキシエタン、ジエチレングリコールジブチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、2,2−ビス(2−テトラヒドロフリル)プロパン、トリエチルアミン、ピリジン、N−メチルモルホリン、N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン、1,2−ジピぺリジノエタンなどのエーテル類及び第三アミン類などを挙げることができる。また、カリウム−t−アミレート、カリウム−t−ブトキシドなどのカリウム塩類、ナトリウム−t−アミレートなどのナトリウム塩類も用いることができる。
【0029】
これらのランダマイザーは、一種を単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。また、その使用量は、リチウム化合物1モル当たり、好ましくは0.01〜1000モル当量の範囲で選択される。
【0030】
本発明で使用される開始剤の反応性を向上させようとする場合、あるいは重合体中に導入される芳香族ビニル化合物をランダムに配列するか又は芳香族ビニル化合物の単連鎖を付与させようとする場合に、重合開始剤とともにカリウム化合物を添加してもよい。重合開始剤とともに添加されるカリウム化合物としては、例えばカリウムイソプロポキシド、カリウム−t−ブトキシド、カリウム−t−アミロキシド、カリウム−n−ヘプタオキシド、カリウムベンジルオキシド、カリウムフェノキシドに代表されるカリウムアルコキシド、カリウムフェノキシド;イソバレリアン酸、カプリル酸、ラウリル酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノレイン酸、安息香酸、フタル酸、2−エチルヘキサン酸などのカリウム塩;ドデシルベンゼンスルホン酸、テトラデシルベンゼンスルホン酸、ヘキサデシルベンゼンスルホン酸、オクタデシルベンゼンスルホン酸などの有機スルホン酸のカリウム塩;亜リン酸ジエチル、亜リン酸ジイソプロピル、亜リン酸ジフェニル、亜リン酸ジブチル、亜リン酸ジラウリルなどの有機亜リン酸部分エステルのカリウム塩などが用いられる。
これらのカリウム化台物は、開始剤のアルカリ金属1グラム原子当量あたり、0.005〜0.5モルの量で添加できる。0.005モル未満では、カリウム化合物の添加効果(開始剤の反応性向上、芳香族ビニル化合物のランダム化または単連鎖付与)が現れず、一方0.5モルを超えると、重合活性が低下し、生産性を大幅に低下させることになるとともに、重合体末端を官能基で変性する反応を行なう際の変性効率が低下する。
【0031】
この重合反応における温度は、好ましくは0〜150℃、より好ましくは20〜130℃の範囲で選定される。重合反応は、発生圧力下で行うことができるが、通常は単量体を実質的に液相に保つに十分な圧力で操作することが望ましい。すなわち、圧力は重合される個々の物質や、用いる重合媒体及び重合温度にもよるが、所望ならばより高い圧力を用いることができ、このような圧力は重合反応に関して不活性なガスで反応器を加圧する等の適当な方法で得られる。
【0032】
この重合においては、重合開始剤、溶媒、単量体など重合に関与する全ての原材料は、水、酸素、二酸化炭素、プロトン性化合物などの反応阻害物質を除去したものを用いることが望ましい。
尚、エラストマーとして重合体を得る場合は、得られる重合体又は共重合体の示差熱分析法により求めたガラス転移温度(Tg)が−95℃〜−15℃であることが好ましい。ガラス転移温度を上記範囲にすることによって、粘度が高くなるのを抑え、取り扱いが容易な重合体を得ることができる。
【0033】
本発明においては、上記のようにして得られた活性部位を分子中に有する共役ジエン系重合体に対して、該活性部位に官能基を有してもよいヒドロカルビロキシシラン化合物(以下「変性剤」ともいう)を反応させて変性する。
官能基を有してもよいヒドロカルビロキシシラン化合物としては、特にその種類を限定するものではないが、シリカと親和性のある官能基を有する化合物、例えば、一般式(I)
【0034】
【化1】

(式中、R及びRは、それぞれ独立に炭素数1〜20の一価の脂肪族炭化水素基又は炭素数6〜18の一価の芳香族炭化水素基を示し、aは0〜2の整数であり、ORが複数ある場合、複数のORは互いに同一でも異なっていてもよく、また分子中には活性プロトンは含まれない。)
で表されるヒドロカルビロキシシラン化合物及び/又はその部分縮合物、
及び一般式(II)
【0035】
【化2】

(式中、Aはエポキシ、イソシアネート、イミン、シアノ、カルボン酸エステル、カルボン酸無水物、環状第三アミン、非環状第三アミン、ピリジン、シラザン及びスルフィドの中から選ばれる少なくとも1種の官能基を有する一価の基、Rは単結合又は二価の炭化水素基、Rは炭素数1〜20の一価の脂肪族炭化水素基、炭素数6〜18の一価の芳香族炭化水素基又は反応性基、Rは、炭素数1〜20の一価の脂肪族炭化水素基又は炭素数6〜18の一価の芳香族炭化水素基を示し、bは0〜2の整数であり、R、ORが複数ある場合、複数のR、ORは互いに同一でも異なっていてもよく、また分子中には活性プロトンは含まれない。)
で表されるヒドロカルビロキシシラン化合物及び/又はその部分縮合物、
を用いることができる。
【0036】
ここで、部分縮合物とは、ヒドロカルビロキシシラン化合物のSiOR基の一部(全部ではない)が縮合によりSiOSi結合したものをいう。
上記の変性反応においては、使用する重合体は、少なくとも20%のポリマー鎖がリビング性を有するものが好ましい。
【0037】
重合体の活性部位との反応に用いられる前記一般式(I)で表されるヒドロカルビロキシシラン化合物の具体例としては、例えば、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラ−n−プロポキシシラン、テトライソプロポキシシラン、テトラ−n−ブトキシシラン、テトライソブトキシシラン、テトラ−sec−ブトキシシラン、テトラ−tert−ブトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリプロポキシシラン、メチルトリイソプロポキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、エチルトリプロポキシシラン、エチルトリイソプロボキシシラン、プロピルトリメトキシシラン、プロピルトリエトキシシラン、プロピルトリプロポキシシラン、プロピルトリイソプロポキシシラン、ブチルトリメトキシシラン、ブチルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、メチルフェニルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ジビニルジエトキシシラン等を挙げることができるが、これらの中で、テトラエトキシシラン、メチルトリエトキシシラン及びジメチルジエトキシシランが好適である。これらは一種を単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせても用いてもよい。
【0038】
重合体の活性部位との反応に用いられる前記一般式(II)で表されるヒドロカルビロキシシラン化合物の具体例としては、例えば、エポキシ基含有ヒドロカルビロキシシラン化合物としては、2−グリシドキシエチルトリメトキシシラン、2−グリシドキシエチルトリエトキシシラン、(2−グリシドキシエチル)メチルジメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、(3−グリシドキシプロピル)メチルジメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチル(メチル)ジメトキシシランを好ましく挙げることができるが、これらの中で、特に3−グリシドキシプロピルトリメトキシシランおよび2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシランが好適である。
【0039】
イソシアネート基含有ヒドロカルビロキシシラン化合物としては、3−イソシアネートプロピルトリメトキシシラン、3−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン、3−イソシアネートプロピルメチルジエトキシシラン、3−イソシアネートプロピルトリイソプロポキシシランなどが挙げられ、これらのうち、特に好ましいのは3−イソシアネートプロピルトリメトキシシランである。
【0040】
イミン基含有ヒドロカルビロキシシラン化合物としては、N−(1,3−ジメチルブチリデン)−3−(トリエトキシシリル)−1−プロパンアミン、N−(1−メチルエチリデン)−3−(トリエトキシシリル)−1−プロパンアミン、N−エチリデン−3−(トリエトキシシリル)−1−プロパンアミン、N−(1−メチルプロピリデン)−3−(トリエトキシシリル)−1−プロパンアミン、N−(4−N,N−ジメチルアミノベンジリデン)−3−(トリエトキシシリル)−1−プロパンアミン、N−(シクロヘキシリデン)−3−(トリエトキシシリル)−1−プロパンアミン及びこれらのトリエトキシシリル化合物に対応するトリメトキシシリル化合物、メチルジエトキシシリル化合物、エチルジメトキシシリル化含物等が好ましく挙げることができるが、これらの中で特に、N−(1,3−ジメチルブチリデン)−3−(トリエトキシシリル)−1−プロパンアミン、N−(1−メチルプロピリデン)−3−(トリエトキシシリル)−1−プロパンアミンが好適である。また、イミン(アミジン)基含有化合物としては、1−〔3−(トリメトキシシリル)プロピル〕−4,5−ジヒドロイミダゾール、3−(1−ヘキサメチレンイミノ)プロピル(トリエトキシ)シラン、(1−ヘキサメチレンイミノ)メチル(トリメトキシ)シラン、N−(3−トリエトキシシリルプロピル)−4,5−ジヒドロイミダゾール、N−(3−イソプロポキシシリルプロピル)−4,5−ジヒドロイミダゾール、N−(3−メチルジエトキシシリルプロピル)−4,5−ジヒドロイミダゾールなどを好ましく挙げられ、その中でも、N−(3−トリエトキシシリルプロピル)−4,5−ジヒドロイミダゾール、N−(3−イソプロポキシシリルプロピル)−4,5−ジヒドロイミダゾールが好ましい。
【0041】
カルボン酸エステル含有ヒドロカルビロキシシラン化合物としては、例えば、3−メタクリロイロキシプロピルトリエトキシシラン、3−メタクリロイロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロイロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−メタクリロイロキシプロピルトリイソプロポキシシラン等が挙げられ、その中で、3−メタクリロイロキシプロピルトリエトキシシランが好ましい。
【0042】
カルボン酸無水物含有ヒドロカルビロキシシラン化合物としては、例えば、3−トリメトキシシリルプロピルコハク酸無水物、3−トリエトキシシリルプロピルコハク酸無水物、3−メチルジエトキシシリルプロピルコハク酸無水物等が挙げられ、その中でも、3−トリエトキシシリルプロピルコハク酸無水物が好ましい。
【0043】
シアノ基含有ヒドロカルビロキシシラン化合物としては、例えば、2−シアノエチルプロピルトリエトキシシラン等が挙げられる。
【0044】
環状第三アミン含有ヒドロカルビロキシシラン化合物としては、例えば、3−(1−ヘキサメチレンイミノ)プロピルトリエトキシシラン、3−(1−ヘキサメチレンイミノ)プロピルトリメトキシシラン、(1−ヘキサメチレンイミノ)メチルトリエトキシシラン、(1−ヘキサメチレンイミノ)メチルトリメトキシシラン、2−(1−ヘキサメチレンイミノ)エチルトリエトキシシラン、3−(1−ヘキサメチレンイミノ)エチルトリメトキシシラン、3−(1−ピロリジニル)プロピルトリメトキシシラン、3−(1−ピロリジニル)プロピルトリエトキシシラン、3−(1−ヘプタメチレンイミノ)プロピルトリエトキシシラン、3−(1−ドデカメチレンイミノ)プロピルトリエトキシシラン、3−(1−へキサメチレンイミノ)プロピルジエトキシメチルシラン、3−(1−ヘキサメチレンイミノ)プロピルジエトキシエチルシラン、3−〔10−(トリエトキシシリル)デシル〕−4−オキサゾリン等が挙げることができるが、これらの中で、3−(1−ヘキサメチレンイミノ)プロピルトリエトキシシラン及び(1−ヘキサメチレンイミノ)メチルトリエトキシシランを好ましく挙げることができる。
【0045】
非環状第三アミン含有ヒドロカルビロキシシラン化台物としては、例えば、3−ジメチルアミノプロピルトリエトキシシラン、3−ジメチルアミノプロピルトリメトキシシラン、3−ジエチルアミノプロピルトリエトキシシラン、3−ジメチルアミノプロピルトリメトキシシラン、2−ジメチルアミノエチルトリエトキシシラン、2−ジメチルアミノエチルトリメトキシシラン、3−ジメチルアミノプロピルジエトキシメチルシラン、3−ジブチルアミノプロピルトリエトキシシラン等が挙げられ、これらの中で、3−ジメチルアミノプロピルトリエトキシシラン及び3−ジエチルアミノプロピルトリエトキシシランが好適である。
ピリジン含有ヒドロカルビロキシシラン化合物としては、例えば、2−トリメトキシシリルエチルピリジン等が挙げられる。
【0046】
シラザン含有ヒドロカルビロキシシラン化合物としては、例えば、N,N−ビス(トリメチルシリル)アミノプロピルメチルジメトキシシラン、1−トリメチルシリル−2,2−ジメトキシ−1−アザ−2−シラシクロペンタン、N,N−ビス(トリメチルシリル)アミノプロピルトリメトキシシラン、N,N−ビス(トリメチルシリル)アミノプロピルトリエトキシシラン,N,N−ビス(トリメチルシリル)アミノプロピルメチルジエトキシシラン、N,N−ビス(トリメチルシリル)アミノエチルトリメトキシシラン、N,N−ビス(トリメチルシリル)アミノエチルトリエトキシシラン、N,N−ビス(トリメチルシリル)アミノエチルメチルジメトキシシランおよびN,N−ビス(トリメチルシリル)アミノエチルメチルジエトキシシランなどを挙げることができ、好ましくは、N,N−ビス(トリメチルシリル)アミノプロピルトリエトキシシラン、N,N−ビス(トリメチルシリル)アミノプロピルメチルジエトキシシランまたは1−トリメチルシリル−2,2−ジメトキシ−1−アザ−2−シラシクロペンタンである。
【0047】
スルフィド含有ヒドロカルビロキシシラン化合物としては、例えば、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド及びビス(3−トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィド等が挙げられる。
【0048】
上記の官能基を有してもよいヒドロカルビロキシシラン化合物の中で、分子内に第一アミノ基が保護され、1つのヒドロカルビロキシ基と1つの反応性基とが同じケイ素原子に結合した2官能性ケイ素原子を含む化合物、例えば一般式(III)、一般式(IV)及び一般式(V)で表される化合物の中から選ばれる少なくとも1種を用いることが特に好ましい。
【0049】
【化3】

(式中、R、Rは、それぞれ独立に炭素数1〜20の炭化水素基、R〜Rは、それぞれ独立に炭素数1〜20の炭化水素基、Rは炭素数1〜12の2価の炭化水素基、Aは反応性基、fは1〜10の整数を示す。)
【0050】
【化4】

(式中、R〜R11は、それぞれ独立に炭素数1〜20の炭化水素基、R12は炭素数1〜12の2価に炭化水素基を示す。)
【0051】
【化5】

(式中、R、Rは、それぞれ独立に炭素数1〜20の炭化水素基、R〜Rは、それぞれ独立に炭素数1〜20の炭化水素基、Rは炭素数1〜12の2価の炭化水素基、R13は炭素数1〜12の2価の炭化水素基、Aは反応性基、fは1〜10の整数を示す。)
で表されるヒドロカルビロキシシラン化合物及び/又はその部分縮合物。
【0052】
上記式(III)〜(V)において、それぞれ独立に炭素数1〜20の一価の炭化水素基の具体例としては、例えばメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、各種ペンチル基、各種ヘキシル基、各種オクチル基、各種デシル基、各種ドデシル基、各種テトラデシル基、各種ヘキサデシル基、各種オクタデシル基、各種イコシル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、ビニル基、プロペニル基、アリル基、ヘキセニル基、オクテニル基、シクロペンテニル基、シクロヘキセニル基、フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基、ベンジル基、フェネチル基、ナフチルメチル基等が挙げられる。中でも炭素数1〜4のメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基等が好ましく、エチル基、メチル基、tert−ブチル基がより好ましい。
【0053】
炭素数1〜12の2価の炭化水素基としては、炭素数1〜12のアルキレン基、炭素数6〜12のアリーレン基、炭素数7〜12のアリーレンアルキレン基等が挙げられる。
上記炭素数1〜12アルキレン基は、直鎖状、分枝状のいずれであってもよく、具体的には、メチレン基、エチレン基、トリメチレン基、テトラメチレン基、ヘキサメチレン基、オクタメチレン基、デカメチレン基等の直鎖状アルキレン基、プロピレン基、イソプロピレン基、イソブチレン基、2−メチルトリメチレン基、イソペンチレン基、イソへキシレン基、イソオクチレン基、2−エチルへキシレン基、イソデシレン基などの分枝状のアルキレン基が挙げられる。
【0054】
炭素数6〜12のアリーレン基としては、例えばフェニレン基、メチルフェニレン基、ジメチルフェニレン基、ナフチレン基等が挙げられ、炭素数7〜12のアリーレンアルキレン基としては、例えばフェニレンメチレン基、フェニレンエチレン基、キシリレン基等が挙げられる。
中でも炭素数1〜4のアルキレン基が好ましく、特にトリメチレン基が好ましい。
【0055】
Aの反応性基は、ハロゲン原子、炭素数1〜20のヒドロカルビロキシ基が好ましく、ハロゲン原子としては、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素が挙げられるが、中でも塩素が好ましい。
【0056】
炭素数1〜20のヒドロカルビロキシ基としては、炭素数1〜20のアルコキシ基、炭素数6〜20のアリーロキシ基、炭素数7〜20のアラルキルオキシ基などを挙げることができる。
上記炭素数1〜20のアルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、n−ブトキシ基、イソブトキシ基、sec−ブトキシ基、tert−ブトキシ基、各種ヘキソキシ基、各種オクトキシ基、各種デシロキシ基、各種ドデシロキシ基、各種テトラデシロキシ基、各種ヘキサデシロキシ基、各種オクタデシロキシ基、各種イコシロキシ基などが挙げられる。炭素数6〜20のアリーロキシ基としては、例えばフェノキシ基、メチルフェノキシ基、ジメチルフェノキシ基、ナフトキシ基等が挙げられ、炭素数7〜20のアラルキルオキシ基としては、例えば、ベンジロキシ基、フェネチロキシ基、ナフチルメトキシ基等が挙げられる。これらの中で1〜4のアルコキシ基が好ましく、特にエトキシ基が好ましい。
【0057】
その他の反応性基としては、カルボニル基、酸無水物残基、各ジヒドロイミダゾリニル基、N−メチルピロリドニル基、イソシアネート基等を含有する基が挙げられる。
また、式(III)のR、RおよびRの2つが結合して、それらが結合している珪素原子と一緒になって4〜7員環を形成してもよく、同様に式(IV)のR、R10およびR11の2つが結合してそれらが結合している珪素原子と一緒になって4〜7員環を形成してもよい。この4〜7員環としては炭素数4〜7のメチレン基を有するものを挙げることができる。
【0058】
保護された第一アミノ基及びケイ素原子に結合したヒドロカルビロキシ基を有する2官能性ケイ素原子を含む化合物としては、例えばN,N−ビス(トリメチルシリル)アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N,N−ビス(トリメチルシリル)アミノプロピルメチルジエトキシシラン、N,N−ビス(トリメチルシリル)アミノエチルメチルジメトキシシラン、N,N−ビス(トリメチルシリル)アミノエチルメチルジエトキシシラン、および1−トリメチルシリル−2−エトキシ−2−メチル−1−アザ−2−シラシクロペンタンなどを挙げることができる。
【0059】
また、前記Aがハロゲン原子である化合物として例えば、N,N−ビス(トリメチルシリル)アミノプロピルメチルメトキシクロロシラン、N,N−ビス(トリメチルシリル)アミノプロピルメチルエトキシクロロシラン、N,N−ビス(トリメチルシリル)アミノエチルメチルメトキシクロロシラン、N,N−ビス(トリメチルシリル)アミノエチルメチルエトキシクロロシランなどが挙げられる。
これらの化合物の中で好ましいのは、N,N−ビス(トリメチルシリル)アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N,N−ビス(トリメチルシリル)アミノプロピルメチルジエトキシシラン、1−トリメチルシリル−2−エトキシ−2−メチル−1−アザ−2−シラシクロペンタンである。
【0060】
これらの変性剤は、1種単独で用いてもよく、2種以上組み合わせて用いてもよい。またこの変性剤は部分縮合物であってもよい。ここで、部分縮合物とは、変性剤のSiORの一部(全部ではない)が縮合によりSiOSi結合したものをいう。
上記の変性反応においては、使用する重合体は、少なくとも10%のポリマー鎖がリビング性を有するものが好ましい。
【0061】
変性剤は、重合開始末端、重合終了末端、重合体主鎖、側鎖のいずれに結合していてもよいが、重合体末端からエネルギー消失を抑制して低発熱性を改良しうる点から、重合開始末端あるいは重合終了末端に導入されていることが好ましい。
リビング重合鎖末端、例えばPLiと一般式(III)でf=1のときの変性剤の反応は、下記反応式
【0062】
【化6】

で表すことができる。なお、Pは共役ジエン化合物あるいは共役ジエン化合物と芳香族ビニル化合物の(共)重合体鎖を示している。
【0063】
同様に、リビング重合鎖末端、例えばPLiと一般式(IV)の変性剤の反応は、下記反応式
【化7】

で表すことができる。
【0064】
上記変性剤による変性反応において、該変性剤の使用量は、好ましくは0.5〜200mmol/kg・共役ジエン系重合体である。さらに好ましくは1〜100mmol/kg・共役ジエン系重合体であり、特に好ましくは2〜50mmol/kg・共役ジエン系重合体である。ここで、共役ジエン系重合体とは、製造時または製造後、添加される老化防止剤などの添加剤を含まないポリマーのみの質量を意味する。変性剤の使用量を上記範囲にすることによって、充填剤の分散性に優れ、加硫後の機械特性、耐摩耗性、低発熱性が改良される。
なお、上記変性剤の添加方法は、特に制限されず、一括して添加する方法、分割して添加する方法、あるいは、連続的に添加する方法などが挙げられるが、一括して添加する方法が好ましい。
【0065】
本発明における変性反応は、溶液反応(重合時に使用した未反応モノマーを含んだ溶液でもよい)で行うことが好ましい。
変性反応の形式については特に制限はなく、バッチ式反応器を用いて行ってもよく、多段連続式反応器やインラインミキサなどの装置を用いて連続式で行ってもよい。また、該変性反応は、重合反応終了後、脱溶媒処理、水処理、熱処理、重合体単離に必要な諸操作などを行う前に実施することが肝要である。
【0066】
変性反応の温度は、共役ジエン系重合体の重合温度をそのまま用いることができる。具体的には0℃〜120℃が好ましい範囲として挙げられる。さらに好ましくは、20〜100℃である。温度が低くなると重合体の粘度が上昇する傾向があり、温度が高くなると重合活性末端が失活し易くなるので好ましくない。
また、変性反応時間は、通常、1分〜5時間、好ましくは2分〜1時間である。
また、この変性反応時に、所望により、公知の老化防止剤や反応停止剤を、重合体の活性部位に官能基を有してもよいヒドロカルビロキシ化合物残基を導入した後の工程において、添加することができる。
【0067】
本発明では、さらに上記の変性で導入したヒドロカルビロキシシラン化合物が関与する縮合反応を行った重合体を用いることが好ましい。縮合反応を促進するために、特定の縮合促進剤を用いる。
ここで用いる縮合促進剤は、上記変性反応前に添加することもできるが、変性反応後、および縮合反応開始前に添加することが好ましい。変性反応前に添加した場合、活性末端との直接反応が起こり、活性末端にヒドロカルビロキシシリル基が導入されない場合がある。
また、縮合反応開始後に添加した場合、縮合促進剤が均一に分散せず触媒性能が低下する場合がある。
縮合促進剤の添加時期としては、通常、変性反応開始5分〜5時間後、好ましくは変性反応開始15分〜1時間後である。
【0068】
本発明で用いる縮合促進剤は、周期律表の4族、12族、13族、14族及び15族のうちの少なくとも一つに属する元素の化合物からなるものである。具体的にいうと、縮合促進剤は、チタン(Ti)、ジルコニウム(Zr)、ビスマス(Bi)、スズ(Sn)又はアルミニウム(Al)の化合物からなるものであり、これら元素のアルコキシド、カルボン酸塩、又はアセチルアセトナート錯塩であることが好ましく、その中でも、下記(a)〜(h)から選ばれた少なくとも1種であることが好ましい。
(a);チタンのアルコキシド
(b);チタンのカルボン酸塩
(c);チタンのアセチルアセトナート錯塩
(d);ビスマスのカルボン酸塩
(e);ジルコニウムのアルコキシド
(f);ジルコニウムのカルボン酸塩
(g);アルミニウムのアルコキシド
(h);アルミニウムのカルボン酸塩
【0069】
具体的な縮合促進剤としては、チタン化合物ではテトラキス(2−エチル−1,3−ヘキサンジオラト)チタン、テトラキス(2−メチル−1,3−ヘキサンジオラト)チタン、テトラキス(2−プロピル−1,3−ヘキサンジオラト)チタン、テトラキス(2−ブチル−1,3−ヘキサンジオラト)チタン、テトラキス(1,3−ヘキサンジオラト)チタン、テトラキス(1,3−ペンタンジオラト)チタン、テトラキス(2−メチル−1,3−ペンタンジオラト)チタン、テトラキス(2−エチル−1,3−ペンタンジオラト)チタン、テトラキス(2−プロピル−1,3−ペンタンジオラト)チタン、テトラキス(2−ブチル−1,3−ペンタンジオラト)チタン、テトラキス(1,3−ヘプタンジオラト)チタン、テトラキス(2−メチル−1,3−ヘプタンジオラト)チタン、テトラキス(2−エチル−1,3−ヘプタンジオラト)チタン、テトラキス(2−プロピル−1,3−ヘプタンジオラト)チタン、テトラキス(2−ブチル−1,3−ヘプタンジオラト)チタン、テトラキス(2−エチルヘキソキシ)チタン、テトラメトキシチタン、テトラエトキシチタン、テトラ−n−プロポキシチタン、テトライソプロポキシチタン、テトラ−n−ブトキシチタン、テトラ−n−ブトキシチタンオリゴマー、テトライソブトキシチタン、テトラ−sec−ブトキシチタン、テトラ−tert−ブトキシチタン、ビス(オレート)ビス(2−エチルヘキサノエート)チタン、チタンジプロポキシビス(トリエタノールアミネート)、チタンジブトキシビス(トリエタノールアミネート)、チタントリブトキシステアレート、チタントリプロポキシステアレート、チタントリプロポキシアセチルアセトネート、チタンジプロポキシビス(アセチルアセトネート)、チタントリプロポキシ(エチルアセトアセテート)、チタンプロポキシアセチルアセトネートビス(エチルアセトアセテート)、チタントリブトキシアセチルアセトネート、チタンジブトキシビス(アセチルアセトネート)、チタントリブトキシエチルアセトアセテート、チタンブトキシアセチルアセトネートビス(エチルアセトアセテート)、チタンテトラキス(アセチルアセトネート)、チタンジアセチルアセトネートビス(エチルアセトアセテート)、ビス(2−エチルヘキサノエート)チタンオキサイド、ビス(ラウレート)チタンオキサイド、ビス(ナフテート)チタンオキサイド、ビス(ステアレート)チタンオキサイド、ビス(オレエート)チタンオキサイド、ビス(リノレート)チタンオキサイド、テトラキス(2−エチルヘキサノエート)チタン、テトラキス(ラウレート)チタン、テトラキス(ナフテート)チタン、テトラキス(ステアレート)チタン、テトラキス(オレエート)チタン、テトラキス(リノレート)チタン、チタンジ−n−ブトキサイド(ビス−2,4−ペンタンジオネート)、チタンオキサイドビス(ステアレート)、チタンオキサイドビス(テトラメチルヘプタンジオネート)、チタンオキサイドビス(ペンタンジオネート)、チタンテトラ(ラクテート)などが挙げられる。
この中でも、テトラキス(2−エチル−1,3−ヘキサンジオラト)チタン、テトラキス(2−エチルヘキソキシ)チタン、チタンジ−n−ブトキサイド(ビス−2,4−ペンタンジオネート)が好ましい。
【0070】
さらに、チタン以外の上記化合物の具体例としては、トリス(2−エチルヘキサノエート)ビスマス、トリス(ラウレート)ビスマス、トリス(ナフテート)ビスマス、トリス(ステアレート)ビスマス、トリス(オレエート)ビスマス、トリス(リノレート)ビスマス、テトラエトキシジルコニウム、テトラn−プロポキシジルコニウム、テトラi−プロポキシジルコニウム、テトラn−ブトキシジルコニウム、テトラsec−ブトキシジルコニウム、テトラtert−ブトキシジルコニウム、テトラ(2−エチルヘキソキシ)ジルコニウム、ジルコニウムトリブトキシステアレート、ジルコニウムトリブトキシアセチルアセトネート、ジルコニウムジブトキシビス(アセチルアセトネート)、ジルコニウムトリブトキシエチルアセトアセテート、ジルコニウムブトキシアセチルアセトネートビス(エチルアセトアセテート)、ジルコニウムテトラキス(アセチルアセトネート)、ジルコニウムジアセチルアセトネートビス(エチルアセトアセテート)、ビス(2−エチルヘキサノエート)ジルコニウムオキサイド、ビス(ラウレート)ジルコニウムオキサイド、ビス(ナフテート)ジルコニウムオキサイド、ビス(ステアレート)ジルコニウムオキサイド、ビス(オレエート)ジルコニウムオキサイド、ビス(リノレート)ジルコニウムオキサイド、テトラキス(2−エチルヘキサノエート)ジルコニウム、テトラキス(ラウレート)ジルコニウム、テトラキス(ナフテート)ジルコニウム、テトラキス(ステアレート)ジルコニウム、テトラキス(オレエート)ジルコニウム、テトラキス(リノレート)ジルコニウム、トリエトキシアルミニウム、トリn−プロポキシアルミニウム、トリi−プロポキシアルミニウム、トリn−ブトキシアルミニウム、トリsec−ブトキシアルミニウム、トリtert−ブトキシアルミニウム、トリ(2−エチルヘキソキシ)アルミニウム、アルミニウムジブトキシステアレート、アルミニウムジブトキシアセチルアセトネート、アルミニウムブトキシビス(アセチルアセトネート)、アルミニウムジブトキシエチルアセトアセテート、アルミニウムトリス(アセチルアセトネート)、アルミニウムトリス(エチルアセトアセテート)、トリス(2−エチルヘキサノエート)アルミニウム、トリス(ラウレート)アルミニウム、トリス(ナフテート)アルミニウム、トリス(ステアレート)アルミニウム、トリス(オレエート)アルミニウム、トリス〈リノレート)アルミニウムなどを挙げることができる。
これらの中で、トリス(2−エチルヘキサノエート)ビスマス、テトラn−プロポキシジルコニウム、テトラn−ブトキシジルコニウム、ビス(2−エチルヘキサノエート)ジルコニウムオキサイド、ビス(オレエート)ジルコニウムオキサイド、トリi−プロポキシアルミニウム、トリsec−ブトキシアルミニウム、トリス(2−エチルヘキサノエート)アルミニウム、トリス(ステアレート)アルミニウム、ジルコニウムテトラキス(アセチルアセトネート)、アルミニウムトリス(アセチルアセトネート)が好適である。
【0071】
この縮合促進剤の使用量としては、上記化合物のモル数が、ヒドロカルビロキシシリル基総量に対するモル比として、0.1〜10となることが好ましく、0.5〜5が特に好ましい。0.1未満では、縮合反応が十分に進行せず、一方、10を超えて使用しても縮合促進剤としての効果は飽和しており、経済上好ましくない。
【0072】
本発明における縮合反応は、水の存在下で行うことが好ましい。水としては、単体やアルコール等の溶液、炭化水素溶媒中の分散ミセル等の形態にして使用してもよい。直接、変性重合体又はその溶液を水に接触させてもよい。また、固体表面の吸着水や水和物の水和水等の、反応系中で水を放出し得る化合物が潜在的に含んだ水分も有効に用いることができる。従って、吸着水を持つ固体や、水和物など、容易に水を放出することができる化合物を上記有機金属化合物と併用することもできる。
【0073】
縮合反応時の温度は20〜180℃が好ましく、さらに好ましくは30〜160℃、特に好ましくは50〜150℃である。
縮合反応時の温度が20℃未満の場合は、縮合反応の進行が遅く、縮合反応を完結することができなくなるおそれがあるため、得られる変性共役ジエン系重合体に経時変化が発生し、品質上問題となる場合がある。一方、180℃を超えると、ポリマーの老化反応が進行し物性を低下させる場合があるので好ましくない。
【0074】
縮合反応時間は、通常、5分〜10時間、好ましくは15分〜5時間程度である。5分未満では縮合反応が完結せず、一方、10時間を超えても縮合反応が飽和しているため、好ましくない。
なお、縮合反応時の反応系の圧力は、通常、0.01〜20MPa、好ましくは0.05〜10MPaである。
縮合反応の形式については特に制限はなく、バッチ式反応器を用いても、多段連続式反応器などの装置を用いて連続式で行ってもよい。また、この縮合反応と脱溶媒を同時に行っても良い。
上記のように縮合処理したのち、従来公知の後処理を行い、目的の変性共役ジエン系重合体を得ることができる。
【0075】
なお、本発明において、分子内に第一アミノ基が保護され、1つのヒドロカルビロキシ基と1つの反応性基とが同じケイ素原子に結合した2官能性ケイ素原子を含む化合物で変性した変性共役ジエン系重合体の変性剤由来のアミノ基は、保護されていても、脱保護して第一アミンに変換されていてもよい。脱保護処理を行なう場合には以下の手順が用いられる。
すなわち、該保護アミノ基上のシリル保護基を加水分解することによって遊離したアミノ基に変換する。これを脱溶媒処理することにより、第一アミノ基を有する乾燥したポリマーが得られる。なお、上記縮合処理を含む段階から、脱溶媒して乾燥ポリマーまでのいずれかの段階において必要に応じて変性剤由来の保護第一アミノ基の脱保護処理を行うことができる。
【0076】
本発明においては、上記の如く縮合処理したのち、さらに脱保護を施し、共役ジエン系重合体の活性部位に結合している、2官能性ケイ素原子を含む化合物由来の基を加水分解処理し、該基中の保護された第一アミノ基を遊離基のアミノ基に変換することにより、目的の変性共役ジエン系重合体を得ることができる。
【0077】
本発明で用いられる変性共役ジエン系重合体のムーニー粘度(ML1+4/100℃)は、好ましくは10〜150、より好ましくは15〜130である。ムーニー粘度の値を上記範囲にすることによって、混練り作業性および加硫後の機械的特性のすぐれたゴム組成物を得ることができる。
【0078】
本発明のタイヤに使用するゴム組成物は、ゴム成分として、上記変性共役ジエン系重合体を少なくとも15質量%含むことが好ましい。ゴム成分中の該変性共役ジエン系重合体のより好ましい含有量は30質量%以上であり、特に40質量%以上が好適である。ゴム成分中の変性共役ジエン系重合体を15質量%以上にすることによって、所望の物性を有するゴム組成物を得ることが出来る。
この変性共役ジエン系重合体は1種用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。また、この変性共役ジエン系重合体と併用される他のゴム成分としては、天然ゴム、合成イソプレンゴム、ブタジエンゴム、スチレン−ブタジエンゴム、エチレン−α−オレフィン共重合ゴム、エチレン−α−オレフィン−ジエン共重合ゴム、アクリロニトリル−ブタジエン共重合ゴム、クロロブレンゴム、ハロゲン化ブチルゴムおよびこれらの混合物などが挙げられる。また、その一部が多官能型、例えば四塩化スズ、四塩化珪素のような変性剤を用いることにより分岐構造を有しているものでもよい。
【0079】
本発明のタイヤに使用するゴム組成物は、充填剤として構造性の含水ケイ酸(シリカ)を含有する。
本発明で使用する含水ケイ酸は、ケイ酸ナトリウム等のケイ酸アルカリ塩水溶液を硫酸等の鉱酸で中和することにより含水ケイ酸を析出、沈殿させる方法、いわゆる沈殿法含水ケイ酸の製造方法に準じた方法により得られる。
【0080】
本発明で用いる構造性の含水ケイ酸は、シリカやカーボンブラックなどで一般に測定されている方法で測定した特性値が、次のよう関係を満たすものである。
即ち、セチルトリメチルアンモニウムブロミド吸着比表面積(CTAB)(m/g)と音響式粒度分布測定によって求められる一次凝集体の数の最頻値の直径Aac(nm)とが下記式(A)
ac≧−0.76×(CTAB)+274・・・(A)
を満たし、好ましくは灼熱減量(750℃で3時間加熱した時の質量減少%)と加熱減量(105℃で2時間加熱した時の質量減少%)とが下記式(B)
(灼熱減量)−(加熱減量)≦3・・・(B)
を満たす含水ケイ酸である。
【0081】
セチルトリメチルアンモニウムブロミド吸着比表面積(CTAB)は、含水ケイ酸表面に対するセチルトリメチルアンモニウムブロミドの吸着量から算出した含水ケイ酸の比表面積(m/g)である。
CTABの測定は、ASTM D3765−92記載の方法に準拠して行うことができる。ASTM D3765−92記載の方法は、カーボンブラックのCTABを測定する方法であるので、若干の修正を加える。即ち、カーボンブラックの標準品を使用せず、セチルトリメチルアンムニウムブロミド(以下、CE−TRABと略記する)標準液を調製し、これによって含水ケイ酸OT(ジ−2−エチルヘキシルスルホコハク酸ナトリウム)溶液の標定を行い、含水ケイ酸表面に対するCE−TRAB1分子当たりの吸着断面積を0.35nmとしてCE−TRABの吸着量から、比表面積を算出する。
【0082】
本発明で用いる含水ケイ酸は、CTABが50〜250m/g、好ましくは80〜230m/gであることが望ましい。CTABが50m/g未満であるとゴム組成物の貯蔵弾性率が著しく低下し、250m/gより大きいと未加硫時のゴム組成物の粘度が上昇するおそれがある。
【0083】
含水ケイ酸の粒子径として、音響式粒度分布測定装置によって測定した径(音響式粒度分布径)が構造性の発達の指標になる。含水ケイ酸の粒子は、微粒径の粒子が一次凝集したものと、僅かに二次凝集しているものも含んでいる。
音響式粒度分布測定装置による測定は、含水ケイ酸の0.01M KCl水溶液を超音波で5分間分散処理し、泡を除去して二次凝集体を破壊した後、測定する。含水ケイ酸の一次凝集体の粒径と粒子数の分布が得られ、このうち、最も頻度が多く現われた粒子の直径をAac(nm)とすると、
ac≧−0.76×(CTAB)+274・・・(A)
を満足することが必要である。Aacが、この条件を満たさない時、低発熱性と耐摩耗性のどちらか又は両方が低下する。さらに、Aacは、1μm以下であることが好ましい。1μmより大きいと含水ケイ酸が破壊核となり、ゴム組成物の力学的特性が損なわれる虞がある。
【0084】
さらに、本発明で用いる含水ケイ酸を加熱した時の質量の減少(%)と灼熱した時の質量減少(%)の差が、
(灼熱減量)−(加熱減量)≦3・・・(B)
であることが好ましい。
加熱減量及び灼熱減量は、JIS K6220−1ゴム用配合剤の試験方法に準じて行い、加熱減量は通常105±2℃で2時間加熱した時の質量の減少%、灼熱減量は通常750±25℃で3時間強熱した時の質量の減少%である。
【0085】
本発明で用いる含水ケイ酸の使用量は、ゴム成分100質量部に対して、10〜150質量部である。
【0086】
本発明で使用する含水ケイ酸は、沈殿法含水ケイ酸の製造方法に準じて製造される。例えば、予め一定量の温水を張り込んだ反応容器中に、pH、温度を制御しながらケイ酸ナトリウムおよび硫酸を入れ、一定時間して含水ケイ酸スラリーを得る。
続いて、該含水ケイ酸スラリーをフィルタープレス等のケーキ洗浄が可能なろ過機により濾別、洗浄して副生電解質を除去した後、得られた含水ケイ酸ケーキをスラリー化し、噴霧乾燥機等の乾燥機を用いて乾燥し製造される。
【0087】
本発明のタイヤに使用するゴム組成物においては、補強用充填剤として含水ケイ酸を用い、その補強性及び低発熱性をさらに向上させる目的でシランカップリッグ剤を配合することが好ましい。
シランカップリング剤は、含水ケイ酸表面に残存するシラノール基とゴム成分ポリマーと反応して、含水ケイ酸とゴムとの結合橋として作用し補強相を形成する。
本発明で用いられるシランカップリング剤は、好ましくは下記一般式で表される化合物よりなる群から選ばれた少なくとも一種である。
【0088】
3−mSi−(CH−(CH−SiX3−m…(VI)
(式中、XはC2n+1O(nは1〜3の整数)又は塩素原子であり、Yは炭素数1〜3のアルキル基であり、mは1〜3の整数、pは1〜9の整数、qは1以上の整数で分布を有していてもよい。但し、mが1の時、2つのYは同一でも異なってもよく、mが2又は3の時、2つ又は3つのXは同一でも異なってもよい。)
【0089】
3−mSi−(CH−W・・・(VII)
(式中、XはC2n+1O(nは1〜3の整数)又は塩素原子であり、Yは炭素数1〜3のアルキル基であり、Wはメルカプト基、ビニル基、アミノ基、グリシドキシ基又はエポキシ基であり、mは1〜3の整数、rは0〜9の整数である。但し、mが1の時、2つのYは同一でも異なってもよく、mが2又は3の時、2つ又は3つのXは同一でも異なってもよい。)
【0090】
3−mSi−(CH−S−Z・・・(VIII)
(式中、XはC2n+1O(nは1〜3の整数)又は塩素原子であり、Yは炭素数1〜3のアルキル基であり、Zはベンゾチアゾリル基、N,N−ジメチルチオカルバモイル基又はメタクリロイル基であり、mは1〜3の整数、pは1〜9の整数、qは1以上の整数で分布を有していてもよい。但し、mが1の時、2つのYは同一でも異なってもよく、mが2又は3の時、2つ又は3つのXは同一でも異なってもよい。)
【0091】
具体的には、一般式(VI)で表されるシランカップリング剤としては、ビス−(3−トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス−(3−トリメトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス−(3−メチルジメトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス−(3−トリエトキシシリルエチル)テトラスルフィド、ビス−(3−トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィド、ビス−(3−トリメトキシシリルプロピル)ジスルフィド、ビス−(3−トリエトキシシリルプロピル)トリスルフィドが挙げられる。
【0092】
一般式(VII)で表されるシランカップリング剤としては、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、3−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシランが挙げられる。
【0093】
一般式(VIII)で表されるシランカップリング剤としては、3−トリメトキシシリルプロピル−N,N−ジメチルチオカルバモイルテトラスルフィド、3−トリメトキシシリルプロピルベンゾチアゾリルテトラスルフィド、3−トリメトキシシリルプロピルメタクリロイルモノスルフィドが挙げられる。
これらの中で補強性改善効果などの点から、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)ポリスルフィドおよび3−トリメトキシシリルプロピルベンゾチアゾリルテトラスルフィドが好適である。
これらのシランカップリング剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0094】
本発明のタイヤに使用するゴム組成物においては、ゴム成分として、分子活性部位に含水ケイ酸との親和性の高い官能基が導入された変性重合体が用いられているため、シランカップリング剤の配合量は、通常の場合より低減することができる。好ましいシランカップリング剤の配合量は、シランカップリング剤の種類などにより異なるが、含水ケイ酸に対して、好ましくは1〜20質量%の範囲で選定される。この量が1質量%未満ではカップリング剤としての効果が充分に発揮されにくく、また、20質量%を超えるとゴム成分のゲル化を引き起こす虞がある。カップリング剤としての効果およびゲル化防止などの点から、このシランカップリング剤の好ましい配合量は、5〜15質量%の範囲である。
【0095】
本発明のタイヤに使用するゴム組成物では、含水ケイ酸と共にカーボンブラックを補強用充填剤として用いることができる。カーボンブラックを配合することによって、ゴム組成物の耐摩耗性を向上することができる。
カーボンブラックとしては特に制限はなく、例えばSRF、GPF、FEF、HAF、ISAF、SAFなどが用いられ、ヨウ素吸着量(IA)が60mg/g以上、かつジブチルフタレート吸油量(DBP)が80ml/100g以上のカーボンブラックが好ましい。カーボンブラックを用いることにより、グリップ性能および耐破壊特性の改良効果は大きくなるが、耐摩耗性に優れるHAF、ISAF、SAFが特に好ましい。
カーボンブラックは、1種用いてもよく2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0096】
カーボンブラックの使用量は、好ましくはゴム成分100質量部に対して80質量部以下で、カーボンブラックと含水ケイ酸を合わせた総配合量が120質量部以下であることが好ましい。総配合量をゴム成分100質量部に対して120質量部以下とすることで、低発熱性及び耐摩耗性を十分に向上させることができる。
【0097】
本発明のタイヤに使用するゴム組成物には、本発明の目的が損なわれない範囲で、所望により、通常ゴム工業界で用いられる各種薬品、例えば加硫剤、加硫促進剤、プロセス油、老化防止剤、スコーチ防止剤、亜鉛華、ステアリン酸などを含有させることができる。
本発明のタイヤに使用するゴム組成物は、ロールなどの開放式混練機、バンバリーミキサーなどの密閉式混練機などの混練り機を用いて混練りすることによって得られ、成形加工後に加硫を行ない、各種ゴム製品に適用可能である。例えば、タイヤトレッド、アンダートレッド、カーカス、サイドウォール、ビード部などのタイヤ用途を始め、防振ゴム、防舷材、ベルト、ホースその他の工業品などの用途に用いることができるが、特に、低発熱性、耐摩耗性、破壊強度のバランスに優れた、低燃費用タイヤ、大型タイヤ、高性能タイヤのトレッド用ゴムとして好適に使用される。
【0098】
本発明のタイヤは、上記ゴム組成物をトレッド部材に適用することを特徴とする。該ゴム組成物をトレッド部材に用いたタイヤは、ゴム組成物が低発熱性であるため転がり抵抗が低く、耐摩耗性に優れている。本発明のタイヤに充填する気体としては、通常又は酸素分圧を変えた空気、又は窒素等の不活性ガスも使用できる。
【実施例】
【0099】
以下、実施例によって本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は、これらの実施例によって何ら制限を受けるものではない。なお、実施例中の各種の測定は下記の方法によって行った。
変性共役ジエン系重合体の物性
(1)共役ジオレフィン部分のビニル含量(ブタジエン部を100としたときの質量%)
270MHzH−NMRによって求めた。
(2)結合スチレン含量(ポリマー中の質量%)
270MHzH−NMRによって求めた。
(3)重量平均分子量(Mw)
ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)(東ソー社製、HLC−8220GPC)を用いて、ポリスチレン換算で求めた。
(4)ムーニー粘度(ML1+4/100℃)
JIS K6300に従って、Lローター、予熱1分、ローター作動時間4分、温度100℃で求めた。
【0100】
含水ケイ酸の物性
(1)音響式粒度分布径の測定
各含水ケイ酸の0.01M KCl水溶液を超音波で5分間分散処理し、泡を除去した後、超音波式粒度分布測定装置DT1200(Dispertion Technology社製)を用いて、含水ケイ酸の1次凝集体の直径の最頻値Aac(nm)を測定した。
【0101】
(2)CTABの測定
ASTM D3765−92記載の方法に準拠して実施した。ASTM D3765−92記載の方法は、カーボンブラックのCTABを測定する方法であるので、若干の修正を加えた。すなわち、カーボンブラックの標準品であるIRB#3(83.0m/g)を使用せず、別途セチルトリメチルアンムニウムブロミド(以下、CE−TRABと略記する)標準液を調製し、これによって含水ケイ酸OT(ジ−2−エチルヘキシルスルホコハク酸ナトリウム)溶液の標定を行い、含水ケイ酸表面に対するCE−TRAB1分子当たりの吸着断面積を0.35nmとしてCE−TRABの吸着量から、比表面積(m/g)を算出した。これは、カーボンブラックと含水ケイ酸とでは表面が異なるので、同一表面積でもCE−TRABの吸着量に違いがあると考えられるからである。
【0102】
(3)加熱減量及び灼熱減量の測定
含水ケイ酸サンプルを秤量し、加熱減量の場合は105℃でサンプルを2時間加熱し、灼熱減量の場合は750℃でサンプルを3時間加熱した後、質量を測定し、加熱前のサンプル質量との差を加熱前の質量に対して%で表した。
【0103】
ゴム組成物の評価
ゴム組成物の評価は下記の方法により測定を行った。
(1)低発熱性
米国レオメトリックス社製の動的スペクトロメーターを使用し、引張動歪1%、周波数10Hz、50℃の条件でtanδ(50℃)を測定した。比較例を100として指数で表示し、数値が大きいほど低発熱性である。
【0104】
(2)タイヤの転がり抵抗
タイヤサイズ185/70R14の空気入りタイヤに170kPaの内圧を充填したあと、395kgの荷重を負荷しながら、大型試験ドラム上を時速80km/hで所定時間走行させ、次に前記ドラムの駆動力を遮断して、タイヤを慣性走行させ、この時のタイヤの減速度から転がり抵抗を求め、比較例を100として指数表示した。指数が大きい程、転がり抵抗が小さい。
【0105】
(3)耐摩耗性
タイヤの転がり抵抗の評価に用いたのと同様のタイヤにて国内一般市街地を10,000km走行させた時の残溝深さより求めた。比較例を100として指数により表示した。指数が大きい程、耐摩耗性が良好である。
【0106】
製造例1(重合体Aの合成)
乾燥し、窒素置換された内容積800ミリリットルの耐圧ガラス容器に、ブタジエンのシクロヘキサン溶液(16%)、スチレンのシクロヘキサン溶液(21%)をブタジエン単量体40g、スチレン単量体10gとなるように注入し、2,2−ジテトラヒドロフリルプロパン0.34ミリモルを注入し、これにn−ブチルリチウム(BuLi)0.38ミリモルを加えた後、50℃の温水浴中で1.5時間重合を行った。重合転化率はほぼ100%であった。
この後、重合系にさらに2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール(BHT)のイソプロパノール5重量%溶液0.5ミリリットルを加えて反応の停止を行い、さらに常法に従い乾燥することにより重合体Aを得た。得られた重合体の重合処方及び分析値を表1に示す。
【0107】
製造例2(重合体Bの合成)
乾燥し、窒素置換された内容積800ミリリットルの耐圧ガラス容器に、ブタジエンのシクロヘキサン溶液(16%)、スチレンのシクロヘキサン溶液(21%)をブタジエン単量体40g、スチレン単量体10gとなるように注入し、2,2−ジテトラヒドロフリルプロパン0.34ミリモルを注入し、これにn−ブチルリチウム(BuLi)0.38ミリモルを加えた後、50℃の温水浴中で1.5時間重合を行った。重合転化率はほぼ100%であった。
この重合系に四塩化スズ0.33ミリモルを加えた後、さらに50℃で30分間変性反応を行った。この後、重合系にさらに2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール(BHT)のイソプロパノール5重量%溶液0.5ミリリットルを加えて反応の停止を行い、さらに常法に従い乾燥することにより重合体Bを得た。得られた重合体の重合処方及び分析値を表1に示す。
【0108】
製造例3(重合体Cの合成)
製造例2において、変性剤である四塩化スズをテトラエトキシシランに代えた以外は、製造例2と同様にして重合体Cを得た。得られた重合体の重合処方及び分析値を表1に示す。
【0109】
製造例4(重合体Dの合成)
製造例2において、変性剤である四塩化スズをN−(3−トリエトキシシリルプロピル)−4,5−ジヒドロイミダゾールに代えた以外は、製造例2と同様にして重合体Dを得た。得られた重合体の重合処方及び分析値を表1に示す。
【0110】
製造例5(重合体Eの合成)
製造例2において、変性剤である四塩化スズをN−(1,3−ジメチルブチリデン)−3−(トリエトキシシリル)−1−プロパンアミンに代えた以外は、製造例2と同様にして重合体Eを得た。得られた重合体の重合処方及び分析値を表1に示す。
【0111】
製造例6(重合体Fの合成)
製造例2において、変性剤である四塩化スズをN,N−ビス(トリメチルシリル)アミノプロピルメチルジエトキシシランに代えた以外は、製造例2と同様にして重合体Fを得た。得られた重合体の重合処方及び分析値を表1に示す。
【0112】
製造例7(重合体Gの合成)
製造例2において、変性剤である四塩化スズをN,N−ビス(トリメチルシリル)アミノプロピルトリエトキシシランに代えた以外は、製造例2と同様にして重合体Gを得た。得られた重合体の重合処方及び分析値を表1に示す。
【0113】
製造例8(重合体Hの合成)
乾燥し、窒素置換された内容積800ミリリットルの耐圧ガラス容器に、ブタジエンのシクロヘキサン溶液(16%)、スチレンのシクロヘキサン溶液(21%)をブタジエン単量体40g、スチレン単量体10gとなるように注入し、さらに2,2−ジテトラヒドロフリルプロパン0.34ミリモルを注入し、これにn−ブチルリチウム(BuLi)0.38ミリモルを加えた後、50℃の温水浴中で1.5時間重合を行った。重合転化率はほぼ100%であった。
この重合系にN−(3−トリエトキシシリルプロピル)−4,5−ジヒドロイミダゾール0.33ミリモルを加えた後、さらに50℃で30分間変性反応を行った。この後、重合系にビス(2−エチルヘキサノエート)スズ0.33ミリモル及び水1.26ミリモルを加えた後、50℃で30分間縮合反応を行った。この後、重合系にさらに2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール(BHT)のイソプロパノール5重量%溶液0.5ミリリットルを加えて反応の停止を行い、さらに常法に従い乾燥することにより重合体Hを得た。得られた重合体の重合処方及び分析値を表2に示す。
【0114】
製造例9(重合体Iの合成)
製造例8において、変性剤であるN−(3−トリエトキシシリルプロピル)−4,5−ジヒドロイミダゾールをN,N−ビス(トリメチルシリル)アミノプロピルメチルジエトキシシランに、縮合促進剤であるビス(2−エチルヘキサノエート)スズをテトラキス(2−エチル−1,3−ヘキサンジオラト)チタンに代えた以外は、製造例8と同様にして重合体Iを得た。得られた重合体の重合処方及び分析値を表2に示す。
【0115】
製造例10(重合体Jの合成)
製造例9において、縮合促進剤であるテトラキス(2−エチル−1,3−ヘキサンジオラト)チタンの代わりに、テトラキス(2−エチルヘキソキシ)チタンを用いた以外は、製造例9と同様にして重合体Jを得た。得られた重合体の重合処方及び分析値を表2に示す。
【0116】
製造例11(重合体Kの合成)
製造例9において、縮合促進剤であるテトラキス(2−エチル−1,3−ヘキサンジオラト)チタンの代わりに、ビス(2−エチルヘキサノエート)スズを用いた以外は、製造例9と同様にして重合体Kを得た。得られた重合体の重合処方及び分析値を表2に示す。
【0117】
製造例12(重合体Lの合成)
製造例9において、変性剤であるN,N−ビス(トリメチルシリル)アミノプロピルメチルジエトキシシランをメチルトリエトキシシランに、縮合促進剤であるテトラキス(2−エチル−1,3−ヘキサンジオラト)チタンをビス(2−エチルヘキサノエート)酸化ジルコニウムに代えた以外は、製造例9と同様にして重合体Lを得た。得られた重合体の重合処方及び分析値を表2に示す。
【0118】
【表1】

【0119】
【表2】

【0120】
注(表1及び表2)
*1:2,2−ジテトラヒドロフリルプロパン
*2:n−ブチルリチウム
*3:四塩化スズ
*4:テトラエトキシシラン
*5:N−(3−トリエトキシシリルプロピル)−4,5−ジヒドロイミダゾール
*6:N−(1,3−ジメチルブチリデン)−3−(トリエトキシシリル)−1−プロパンアミン
*7:N,N−ビス(トリメチルシリル)アミノプロピルメチルジエトキシシラン
*8:N,N−ビス(トリメチルシリル)アミノプロピルトリエトキシシラン
*9:メチルトリエトキシシラン
*10:ビス(2−エチルヘキサノエート)スズ
*11:テトラキス(2−エチル−1,3−ヘキサンジオラト)チタン
*12:テトラキス(2−エチルヘキソキシ)チタン
*13:ビス(2−エチルヘキサノエート)酸化ジルコニウム
【0121】
含水ケイ酸の製造
製造例A
攪拌機を備えた容量180リットルのジャケット付ステンレス製反応槽に、水93Lとケイ酸ナトリウム水溶液(SiO160g/L、SiO/NaOモル比3.3)0.6Lを入れ96℃に加熱した。得られた溶液中のNaO濃度は0.005mol/Lであった。
この溶液の温度を96℃に維持しながら、上記と同じのケイ酸ナトリウム水溶液を540ml/分、硫酸(18mol/L)を24ml/分の流量で同時に滴下した。流量を調整しながら、反応溶液中のNaO濃度を0.00〜0.01mol/Lの範囲に維持して中和反応を行なった。反応途中から白濁をはじめ、47分目に粘度が上昇してゲル状溶液となった。さらに添加を続けて90分で反応を停止した。反応停止後、反応液温度を96℃に30分間維持した。生じた溶液中のシリカ濃度は55g/Lであった。引き続いて、上記濃度の硫酸を溶液のpHが3になるまで添加してケイ酸スラリーを得た。得られたケイ酸スラリーをフィルタープレスで濾過、水洗を行なって湿潤ケーキを得た。次いで、湿潤ケーキを乳化装置を用いてスラリーとして、噴霧式乾燥機で乾燥して湿式法含水ケイ酸Aを得た。得られた含水ケイ酸の物性を表3に示す。
【0122】
製造例B
製造例Aと同じ容器および原料を使用し、水93Lとケイ酸ナトリウム水溶液0.6Lを入れ、90℃に加熱した。得られた溶液中のNaO濃度は0.005mol/Lであった。
この溶液の温度を90℃に維持しながら、上記と同じケイ酸ナトリウム水溶液を540ml/分、硫酸(18mol/L)を24ml/分の流量で同時に滴下した。流量を調整しながら、反応溶液中のNaO濃度を0.00〜0.01mol/Lの範囲に維持して中和反応を行なった。反応途中から白濁をはじめ、47分目に粘度が上昇してゲル状溶液となった。さらに添加を続けて90分で反応を停止した。反応停止後、反応液温度を90℃に30分間維持した。生じた溶液中のシリカ濃度は55g/Lであった。引き続いて、上記濃度の硫酸を溶液のpHが3になるまで添加してケイ酸スラリーを得た。以下製造例Aと同様な方法で湿式法含水ケイ酸Bを得た。得られた含水ケイ酸の物性を表3に示す。
【0123】
製造例C
製造例Aと同じ容器および原料を使用し、水93Lとケイ酸ナトリウム水溶液0.6Lを入れ、84℃に加熱した。得られた溶液中のNaO濃度は0.005mol/Lであった。
この溶液の温度を84℃に維持しながら、上記と同じケイ酸ナトリウム水溶液を540ml/分、硫酸(18mol/L)を24ml/分の流量で同時に滴下した。流量を調整しながら、反応溶液中のNaO濃度を0.00〜0.01mol/Lの範囲に維持して中和反応を行なった。反応途中から白濁をはじめ、48分目に粘度が上昇してゲル状溶液となった。さらに添加を続けて90分で反応を停止した。反応停止後、反応液温度を84℃に30分間維持した。生じた溶液中のシリカ濃度は55g/Lであった。引き続いて、上記濃度の硫酸を溶液のpHが3になるまで添加してケイ酸スラリーを得た。以下製造例Aと同様な方法で湿式法含水ケイ酸Cを得た。得られた含水ケイ酸の物性を表3に示す。
【0124】
製造例D
製造例Aと同じ容器および原料を使用し、水93Lとケイ酸ナトリウム水溶液0.6Lを入れ、90℃に加熱した。得られた溶液中のNaO濃度は0.005mol/Lであった。
この溶液の温度を90℃に維持しながら、上記と同じケイ酸ナトリウム水溶液を540ml/分、硫酸(18mol/L)を24ml/分の流量で同時に滴下した。流量を調整しながら、反応溶液中のNaO濃度を0.00〜0.01mol/Lの範囲に維持して中和反応を行なった。反応途中から白濁をはじめ、47分目に粘度が上昇してゲル状溶液となった。さらに添加を続けて90分で反応を停止した。反応停止後、反応液温度を90℃に60分間維持した。生じた溶液中のシリカ濃度は55g/Lであった。引き続いて、上記濃度の硫酸を溶液のpHが3になるまで添加してケイ酸スラリーを得た。以下製造例Aと同様な方法で湿式法含水ケイ酸Dを得た。得られた含水ケイ酸の物性を表3に示す。
【0125】
製造例E
製造例Aと同じ容器および原料を使用し、水93Lとケイ酸ナトリウム水溶液0.6Lを入れ、90℃に加熱した。得られた溶液中のNaO濃度は0.005mol/Lであった。
この溶液の温度を78℃に維持しながら、上記と同じケイ酸ナトリウム水溶液を540ml/分、硫酸(18mol/L)を24ml/分の流量で同時に滴下した。流量を調整しながら、反応溶液中のNaO濃度を0.00〜0.01mol/Lの範囲に維持して中和反応を行なった。反応途中から白濁をはじめ、49分目に粘度が上昇してゲル状溶液となった。さらに添加を続けて90分で反応を停止した。反応停止後、反応液温度を78℃に60分間維持した。生じた溶液中のシリカ濃度は55g/Lであった。引き続いて、上記濃度の硫酸を溶液のpHが3になるまで添加してケイ酸スラリーを得た。以下製造例Aと同様な方法で湿式法含水ケイ酸Eを得た。得られた含水ケイ酸の物性を表3に示す。
【0126】
製造例F
製造例Aと同じ容器および原料を使用し、水93Lとケイ酸ナトリウム水溶液0.6Lを入れ、65℃に加熱した。得られた溶液中のNaO濃度は0.005mol/Lであった。
この溶液の温度を65℃に維持しながら、上記と同じケイ酸ナトリウム水溶液を540ml/分、硫酸(18mol/L)を24ml/分の流量で同時に滴下した。流量を調整しながら、反応溶液中のNaO濃度を0.00〜0.01mol/Lの範囲に維持して中和反応を行なった。反応途中から反応溶液は白濁をはじめ、50分目に粘度が上昇してゲル状溶液となった。さらに添加を続けて90分で反応を停止した。反応停止後、反応液温度を65℃に60分間維持した。生じた溶液中のシリカ濃度は55g/Lであった。引き続いて、上記濃度の硫酸を溶液のpHが3になるまで添加してケイ酸スラリーを得た。以下製造例Aと同様な方法で湿式法含水ケイ酸Fを得た。得られた含水ケイ酸の物性を表3に示す。
【0127】
製造例G
製造例Aと同じ容器および原料を使用し、水86Lとケイ酸ナトリウム水溶液0.5Lを入れ、96℃に加熱した。得られた溶液中のNaO濃度は0.005mol/Lであった。
この溶液の温度を96℃に維持しながら、上記と同じケイ酸ナトリウム水溶液を615ml/分、硫酸(18mol/L)を27ml/分の流量で同時に滴下した。流量を調整しながら、反応溶液中のNaO濃度を0.00〜0.01mol/Lの範囲に維持して中和反応を行なった。反応途中から反応溶液は白濁をはじめ、40分目に粘度が上昇してゲル状溶液となった。さらに添加を続けて90分で反応を停止した。反応停止後、反応液温度を96℃に30分間維持した。生じた溶液中のシリカ濃度は62g/Lであった。引き続いて、上記濃度の硫酸を溶液のpHが3になるまで添加してケイ酸スラリーを得た。以下製造例Aと同様な方法で湿式法含水ケイ酸Gを得た。得られた含水ケイ酸の物性を表3に示す。
【0128】
【表3】

【0129】
実施例1〜17および比較例1〜8
表1に示す製造例1〜7及び表2に示す製造例8〜12の変性共役ジエン系重合体A〜Lと表3に示す含水ケイ酸A〜Gを用い、表4〜7に示す配合に従ってゴム組成物を調製し、160℃15分間の条件で加硫を行い、上記の方法で各ゴム組成物の低発熱性及び各ゴム組成物を使用して製造したタイヤの転がり抵抗、耐摩耗性を測定した。
測定結果を表4〜7に示す。なお、表4〜7においては、低発熱性、転がり抵抗、耐摩耗性のいずれも、表毎に各表にある比較例1、3、5、7を100とした指数で表した。数値の大なるほど良好であることを示している。
【0130】
【表4】


*1:宇部興産製 BR150L
*2:富士興産製 アロマックス#3
*3:N339、東海カーボン社製 シーストKH
*4:東ソーシリカ社製 NipsilAQ
*5:Degussa社製 Si75
*6:N−(1,3−ジメチルブチル)−N’−フェニル−p−フェニレンジアミン
*7:ジフェニルグアニジン
*8:N−t−ブチル−2−ベンゾチアジルスルフェンアミド
【0131】
【表5】


*1:JSR社製 BR01
*2:富士興産製 アロマックス#3
*3:N339、東海カーボン社製 シーストKH
*4:Degussa社製 Si75
*5:N−(1,3−ジメチルブチル)−N’−フェニル−p−フェニレンジアミン
*6:N−t−ブチル−2−ベンゾチアジルスルフェンアミド
*7:N−シクロヘキシル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド
【0132】
【表6】


*1:ランクセス社製 溶液重合SBR BunaVSL5025−1
*2:N339、東海カーボン社製 シーストKH
*3:東ソーシリカ社製 NipsilAQ
*4:Degussa社製 Si75
*5:N−(1,3−ジメチルブチル)−N’−フェニル−p−フェニレンジアミン
*6:ジフェニルグアニジン
*7:N−t−ブチル−2−ベンゾチアジルスルフェンアミド
*8:N−シクロヘキシル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド
【0133】
【表7】


*1:富士興産製 アロマックス#3
*2:N339、東海カーボン社製 シーストKH
*3:東ソーシリカ社製 NipsilAQ
*4:Degussa社製 Si75
*5:N−(1,3−ジメチルブチル)−N’−フェニル−p−フェニレンジアミン
*6:ジフェニルグアニジン
*7:N−t−ブチル−2−ベンゾチアジルスルフェンアミド
*8:N−シクロヘキシル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド
【0134】
表4〜7から、以下に示すことが分かる。
ヒドロカルビロキシ化合物及び縮合促進剤による縮合によって変性した変性共役ジエン系重合体及び構造性含水ケイ酸を配合したゴム組成物を用いたタイヤ(実施例1〜17)は、比較例1〜8に比べて低発熱性、転がり抵抗及び耐摩耗性のいずれにおいても優れている。
【産業上の利用可能性】
【0135】
本発明で使用する変性共重合体を含むゴム組成物は、ゴム成分と含水ケイ酸及びカーボンブラックとの相互作用に優れ、含水ケイ酸及びカーボンブラックの分散性を改善することができ、低発熱性、破壊特性、耐摩耗性などに優れるタイヤを与えることができる。特に、乗用車用低燃費タイヤのトレッドゴムとして有効に活用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
含水ケイ酸との親和性の高い官能基を導入した変性共役ジエン系重合体及びセチルトリ
メチルアンモニウムブロミド吸着比表面積(CTAB)(m/g)と音響式粒度分布測定によって求められる一次凝集体の直径の最頻値Aac(nm)とが下記式(A)
ac≧−0.76×(CTAB)+274・・・(A)
を満たす含水ケイ酸を配合してなるゴム組成物を使用したタイヤ。
【請求項2】
変性共役ジエン系重合体が、ジエン系モノマーを単独又は他のモノマーと併用し、炭化水素溶媒中でアルカリ金属又はアルカリ土類金属系開始剤を用いてアニオン重合させて得られる金属の活性部位を有する共役ジエン系重合体の該活性部位に、ヒドロカルビロキシシラン化合物を反応させて得た変性共役ジエン系重合体からなるゴム組成物を使用した請求項1記載のタイヤ。
【請求項3】
変性共役ジエン系重合体に導入された官能基が、分子末端に導入されている変性共役ジエン系重合体を配合したゴム組成物を使用した請求項1又は2に記載のタイヤ。
【請求項4】
変性共役ジエン系重合体に導入された官能基が、重合停止側の分子末端に導入されている変性共役ジエン系重合体を配合したゴム組成物を使用した請求項3に記載のタイヤ。
【請求項5】
変性共役ジエン系重合体に導入された官能基が、ヒドロキシシリル基、アルコキシシリル基、アミノ基またはハロゲン原子の少なくとも1つである変性共役ジエン系重合体を配合したゴム組成物を使用した請求項1〜4のいずれかに記載のタイヤ。
【請求項6】
官能基として、アルコキシシリル基とアミノ基が同時に導入された変性共役ジエン系重合体を配合したゴム組成物を使用した請求項5に記載のタイヤ。
【請求項7】
アミノ基が、プロトン性アミノ基又は保護されたアミノ基である変性共役ジエン系重合体を配合したゴム組成物を使用した請求項5又は6に記載のタイヤ。
【請求項8】
アミノ基が、第一アミノ基又は保護された第一アミノ基である変性共役ジエン系重合体を配合したゴム組成物を使用した請求項5又は6に記載のタイヤ。
【請求項9】
変性共役ジエン系重合体が、周期律表4族、12族、13族、14族及び15族に属する元素のうちの少なくとも一つの化合物からなる縮合促進剤の存在下で縮合反応を行って得た変性共役ジエン系重合体からなるゴム組成物を使用した請求項1〜8のいずれかに記載のタイヤ。
【請求項10】
含水ケイ酸が、その灼熱減量(750℃で3時間加熱した時の質量減少%)と加熱減量(105℃で2時間加熱した時の質量減少%)とが下記式(B)
(灼熱減量)−(加熱減量)≦3・・・(B)
を満たすことを特徴とする含水ケイ酸からなるゴム組成物を使用した請求項1に記載のタイヤ。
【請求項11】
含水ケイ酸が、音響式粒度分布測定によって求められる一次凝集体の直径の最頻値が1μm以下であることを特徴とする含水ケイ酸からなるゴム組成物を使用した請求項1に記載のタイヤ。
【請求項12】
含水ケイ酸が、CTABが50〜250m/gであることを特徴とする含水ケイ酸からなるゴム組成物を使用した請求項1に記載のタイヤ。
【請求項13】
ゴム組成物にゴム成分として、さらに天然ゴム及び/又はジエン系合成ゴムから選ばれる少なくとも1つ以上のゴムを含有し、全ゴム成分100質量部に対して含水ケイ酸を10〜150質量部を配合してなる請求項1に記載のタイヤ。
【請求項14】
ゴム組成物にシランカップリング剤を含水ケイ酸の配合量の1〜20質量%配合したことを特徴とする請求項1に記載のタイヤ。
【請求項15】
シランカップリング剤が、下記一般式(VI)で表される化合物:
3−mSi−(CH−(CH−SiX3−m…(VI)
[式中、XはC2n+1O(nは1〜3の整数)又は塩素原子であり、Yは炭素数1〜3のアルキル基であり、mは1〜3の整数、pは1〜9の整数、qは1以上の整数で分布を有していてもよい。但し、mが1の時、2つのYは同一でも異なってもよく、mが2又は3の時、2つ又は3つのXは同一でも異なってもよい。]、
下記一般式(VII)で表される化合物:
3−mSi−(CH−W・・・(VII)
[式中、XはC2n+1O(nは1〜3の整数)又は塩素原子であり、Yは炭素数1〜3のアルキル基であり、Yはメルカプト基、ビニル基、アミノ基、グリシドキシ基又はエポキシ基であり、mは1〜3の整数、rは0〜9の整数である。但し、mが1の時、2つのYは同一でも異なってもよく、mが2又は3の時、2つ又は3つのXは同一でも異なってもよい。]、
および下記一般式(VIII)で表される化合物:
3−mSi−(CH−S−Z・・・(VIII)
[式中、XはC2n+1O(nは1〜3の整数)又は塩素原子であり、Yは炭素数1〜3のアルキル基であり、Zはベンゾチアゾリル基、N,N−ジメチルチオカルバモイル基又はメタクリロイル基であり、mは1〜3の整数、pは1〜9の整数、qは1以上の整数で分布を有していてもよい。但し、mが1の時、2つのYは同一でも異なってもよく、mが2又は3の時、2つ又は3つのXは同一でも異なってもよい。]、
からなる群から選択される少なくとも一種であることを特徴とする請求項14に記載のタイヤ。
【請求項16】
ゴム組成物に補強用充填剤としてカーボンブラックをゴム成分100質量部に対して80質量部以下含有し、カーボンブラックと含水ケイ酸との総配合量が120質量部以下であることを特徴とするゴム組成物を使用した請求項1に記載のタイヤ。

【公開番号】特開2009−287019(P2009−287019A)
【公開日】平成21年12月10日(2009.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−110822(P2009−110822)
【出願日】平成21年4月30日(2009.4.30)
【出願人】(000005278)株式会社ブリヂストン (11,469)
【Fターム(参考)】