説明

変色玩具

【課題】インテリア要素を備えた変色玩具において、幼児等が容易に変色効果を発現できると共に、繰り返しの使用が容易な再利用性の高いものであり、興趣に富んだ色変化を発現できる変色玩具を提供する。
【解決手段】少なくとも上下二段以上に形成される複数の透明性収容部21を備え、最上段の容器2の収容部21に注いだ液体6が満水になると下段の収容部21に順に注がれる形態の玩具であって、前記各収容部21の内周面又は外周面に可逆熱変色層3を設けてなる変色玩具1。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は変色玩具に関する。更には、収容部に注入される液体の温度に応じて様々な色調を現出する変色玩具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、インテリア要素を備えた玩具が広く市販されており、特に、色変化を楽しむ玩具として化学反応を用いた玩具が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
前記玩具は、スライダー形態の透明管状容器内に二種類以上の薬品溶液を注入し、該容器内を流れながら混合することで徐々に反応し、透明容器内での色変化が視認できるものであり、前記薬品溶液の種類によって様々な色調を現出できるものである。
前記特許文献1の反応として、時計反応(一般的にヨウ素酸カリウム水溶液とデンプンを含有する亜硫酸水素ナトリウム水溶液が用いられる)が例示されているが、この反応では混合時には無色である液体が環状容器を流れる最中に突然褐色(試薬量が薄い場合は黄色)に色変化するものであるため、興趣に富んだ玩具である。
しかしながら、変色効果を得るために特殊な薬品を使用する必要があるため、幼児等が使用し難いものであった。また、再度使用する場合には新規の薬品を用意する必要があるため、家庭での再利用性に乏しいものであった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−130684号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、この種のインテリア要素を備えた変色玩具であって、幼児等が容易に変色効果を発現できると共に、繰り返しの使用が容易な再利用性の高いものであり、インテリアとしても有用な興趣に富んだ色変化を発現できる変色玩具を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、少なくとも上下二段以上に形成される複数の透明性収容部を備え、最上段の収容部に注いだ液体が満水になると下段の収容部に順に注がれる形態の玩具であって、前記各収容部の内周面又は外周面に可逆熱変色層を設けてなる変色玩具を要件とする。
更に、前記熱変色層が常温で透明であり、注がれる液体の温度によって二色以上の色調に発色すること、各収容部に形成される熱変色層の変色温度が等しいこと、前記収容部の外周面に低屈折率顔料をバインダー樹脂に分散状態に固着させた非吸液状態で不透明であり吸液状態で透明化する多孔質層を設けてなることを要件とする。
更には、前記玩具がシャンパンタワー形態であることを要件とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明は、液体を最上段の収容部に注ぐことで、液温に応じて各収容部が上段から順に色変化を発現する視覚効果の高いインテリア要素を備えた変色玩具を提供できる。
また、可逆熱変色層が温度に応じて透明から二色以上に変化するように構成することで、収容部の上段から下段に到達する際に生じる液温の変化や、注入する液体を温度の異なる二種類以上とすることで生じる各段(各収容部)での温度差によって、複数の色調を現出させたり、グラデーションを生じさせることができ、より視覚効果の高いものとなる。
更に、収容部の外周面に多孔質層を設けることで、上段収容部から溢れた液体の付着によって様相変化を生じるため、より変色効果が高く興趣に富んだものとなる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】可逆熱変色層の変色挙動を説明する第一図である。
【図2】可逆熱変色層の変色挙動を説明する第二図である。
【図3】本発明の変色玩具の一実施例の外観説明図である。
【図4】本発明の変色玩具の他の実施例の外観説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明は収容部に水を注ぐことで、該水の液温によって様々な色調変化を発現する玩具であり、上下方向に二段以上に形成される複数の透明性収容部を備えるものである。そのため、最上段の収容部に注いだ液体が満水になると溢れ出し、下段の収容部に順に注がれていく形態をとっており、例えばシャンパンタワーや噴水用受水容器等として知られている。
尚、前記シャンパンタワー形態とする場合、使用時に各グラスをユーザーが積み上げる他、接着や成形により一体化させたものであってもよい。また、積み上げ時に容易に倒壊することを抑制するため、各グラスの接触箇所に溝部(孔部)や突起を形成して溝部同士の嵌装や凹凸部の嵌合を施すこともできる。
【0009】
前記各収容部は外側から内容物が視認できるように透明性を有しており、例えばガラスや樹脂により構成されている。
更に、前記各収容部の内周面又は外周面には、温度変化により変色する可逆熱変色層が設けられており、色調変化や様相変化が付与される。
前記可逆熱変色層は、可逆熱変色性材料をインキ形態として直接塗布、印刷したり、可逆熱変色性シール形態のものを貼付することで形成される。更に、収容部を樹脂材料で形成する場合には、樹脂組成物中に可逆熱変色性材料を混練して成形することにより得ることもできる。
尚、各収容部に形成される可逆熱変色層の変色温度をすべて同じように設定した場合には、同温の液体が上段から下段に順に注入されるに従って色変化を生じ、可逆熱変色層の変色温度を変えた場合には、注がれる液体の温度によって部分的に色変化を生じるものとなる。
【0010】
前記可逆熱変色性材料としては、可逆熱変色性組成物を含む汎用の材料を適宜用いることができるが、具体的には、前記組成物としては電子供与性呈色性有機化合物と電子受容性化合物と呈色反応を可逆的に生起させる反応媒体の三成分を含む組成物が好適に用いられる。より具体的には、特公昭51−35414号公報、特公昭51−44706号公報、特開平7−186540号公報に記載されている可逆熱変色性組成物が挙げられる。
また、本出願人が提案した特公平1−29398号公報に記載した如き、温度変化による色濃度−温度曲線に関し、3℃以下のヒステリシス幅をもつ、高感度の可逆熱変色性組成物が挙げられる。
前記は所定の温度(変色点)を境としてその前後で変色し、変化前後の両状態のうち常温域では特定の一方の状態しか存在しえない。即ち、もう一方の状態は、その状態が発現するのに要する熱又は冷熱が適用されている間は維持されるが、前記熱又は冷熱の適用がなくなれば常温域で呈する状態に戻る、所謂、温度変化による温度−色濃度について小さいヒステリシス幅(ΔH)を示して変色するタイプである。
更に、本出願人が提案した特公平4−17154号公報に記載されている、大きなヒステリシス特性を示して変色する感温変色性色彩記憶性組成物、即ち、温度変化による着色濃度の変化をプロットした曲線の形状が、温度を変色温度域より低温側から温度を上昇させていく場合と逆に変色温度より高温側から下降させていく場合とで大きく異なる経路を辿って変色するタイプの変色材であり、低温側変色点と高温側変色点の間の常温域において、前記低温側変色点以下又は高温側変色点以上の温度で変化させた状態を記憶保持できる特徴を有する可逆熱変色性組成物も有効である。
【0011】
また、加熱発色型の組成物として、消色状態からの加熱により発色する、本出願人の提案による、電子受容性化合物として、炭素数3乃至18の直鎖又は側鎖アルキル基を有する特定のアルコキシフェノール化合物を適用した系(特開平11−129623号公報、特開平11−5973号公報)、或いは特定のヒドロキシ安息香酸エステルを適用した系(特開2001−105732号公報)を挙げることができる。更には、没食子酸エステル等を適用した系(特開2003−253149号公報)等を応用できる。
【0012】
以下に加熱消色型の可逆熱変色性組成物の色濃度−温度曲線(ヒステリシス曲線)におけるヒステリシス特性を図1のグラフによって説明する。
図1において、縦軸に色濃度、横軸に温度が表されている。温度変化による色濃度の変化は矢印に沿って進行する。ここで、Aは完全消色状態に達する温度t(以下、完全消色温度と称す)における濃度を示す点であり、Bは消色を開始する温度t3(以下、消色開始温度と称す)における濃度を示す点であり、Cは発色を開始する温度t(以下、発色開始温度と称す)における濃度を示す点であり、Dは完全発色状態に達する温度t(以下、完全発色温度と称す)における濃度を示す点である。
変色温度領域は前記tとt間の温度域であり、加熱又は冷却に応じて発色状態と消色状態の両相が共存でき、色濃度の差の大きい領域であるtとt間の温度域が実質変色温度域(二相保持温度域)である。
また、線分EFの長さが変色のコントラストを示す尺度であり、線分HGの長さ〔即ちt−t:t=(t+t)/2、t=(t+t)/2〕がヒステリシスの程度を示す温度幅(以下、ヒステリシス幅ΔHと記す)であり、このΔH値が大きい程、変色前後の各状態の保持が容易である。
【0013】
前記した可逆熱変色性組成物は、そのままの適用でも有効であるが、従来公知の方法で得られるマイクロカプセルに内包して使用することが好ましい。それは、酸性物質、塩基性物質、過酸化物等の化学的に活性な物質又は他の溶剤成分と接触しても、その機能を低下させることがないことは勿論、耐熱安定性が保持できるためであり、種々の使用条件において可逆熱変色性組成物は同一の組成に保たれ、同一の作用効果を奏することができるからである。
前記マイクロカプセル化としては、例えばイソシアネート系の界面重合法、メラミン−ホルマリン系等のin Situ重合法、液中硬化被覆法、水溶液からの相分離法、有機溶媒からの相分離法、融解分散冷却法、気中懸濁被覆法、スプレードライング法等があり、用途に応じて適宜選択される。更にマイクロカプセルの表面には、目的に応じて二次的な樹脂皮膜を設けて耐久性を付与したり、表面特性を改質させて実用に供することもできる。
尚、前記マイクロカプセル顔料は、インキや塗料への使用に対して分散安定性に優れることから、平均粒子径1.5〜20μm、好ましくは2〜15μm、より好ましくは、2〜10μmの範囲で適用される。
【0014】
特に、前記マイクロカプセル顔料は、ビヒクル中に分散して、塗料や印刷インキ等の液状組成物を調製し、スクリーン印刷、オフセット印刷、グラビヤ印刷、コーター、タンポ印刷、転写等の印刷手段、刷毛塗り、スプレー塗装、静電塗装、電着塗装、流し塗り、ローラー塗り、浸漬塗装等の手段により各収容部の内周面又は外周面に可逆熱変色層を形成することが好ましい。
尚、前記マイクロカプセル顔料を用いた液状組成物には、一般の染料や顔料(非熱変色性)を配合し、有色(1)から有色(2)への変色挙動を呈することもできる。
また、必要に応じて前記収容部と可逆熱変色層の間に密着性を向上させるアンカーコート層や意匠性を付与させる非熱変色性インキによる非変色層を適宜設けることもできる。
【0015】
前記可逆熱変色層には、特性の異なる複数の可逆熱変色性材料(好ましくはマイクロカプセル顔料)を添加することで、液温に応じて無色(白色)透明から二種類以上の色調を発現することができるため、より視覚効果の高いものとなる。その際、前記ヒステリシス幅(ΔH)や変色点が異なるものを組み合わせることで、得られる色調や変色温度帯を調整できる。
例えば、図2のような二種類の異なる色濃度−温度曲線(ヒステリシス曲線)を示す可逆熱変色性材料〔A(温度T)、B(温度t)〕を用いた場合、一方の可逆熱変色性材料(A)のヒステリシス曲線に、他方の可逆熱変色性材料(B)のヒステリシス曲線が内在する。
この場合、T以上の温度域では無色を呈してなり、降温によりtの温度に達すると可逆熱変色性材料Bが発色を開始し、tの温度に達すると完全に発色する。この時点で無色から有色(1)への色変化が視認される。
更に降温していくと、Tの温度に達すると可逆熱変色性材料(A)が発色を開始し、Tの温度に達すると完全に発色し、有色(1)と混色になった有色(2)の色調が視認される。
この状態から昇温していくと、tの温度に達すると先に可逆熱変色性材料(B)が消色を開始し、tの温度に達すると完全に消色し、可逆熱変色性材料(A)のみが発色した状態となるため、有色(2)から有色(3)への色変化が視認される。
更に昇温していくと、Tの温度に達して可逆熱変色性材料(A)が消色を開始し、Tの温度に達すると完全に消色するため、有色(3)から無色の色変化が視認される。
従って、前記図2に示されるヒステリシス特性を示す可逆熱変色性材料(A)、(B)を用いることにより、無色、有色(1)、有色(2)、有色(3)の四状態の色変化(即ち、無色から三色の色調を発現)が視認できる。
また、非変色性着色剤を添加することも可能であり、前記四状態の色彩と非変色性着色剤の色彩が混色となった有色(1)、有色(2)、有色(3)、有色(4)の色変化が視認されるものとなる。
その他、併用する熱変色性材料の各温度(T、t)に応じて、ヒステリシス曲線の一辺(AB又はCD)が重なる構成(即ち、無色から二色の色調を発現する構成)や、ヒステリシス曲線が重ならない構成や、ヒステリシス曲線が一方に内在することなく重なる構成等を適用することで、様々な色変化を発現できるものとなる。
【0016】
また、前記可逆熱変色層を擦過や経時劣化から保護するために、該可逆熱変色層上に透明性樹脂層を設けることができる。前記透明性樹脂層としては、従来汎用の各種樹脂フィルムを貼付したり、樹脂を含有する液状組成物を塗布することで設けられる。
更に、前記透明性樹脂層には、天然雲母、合成雲母、偏平ガラス片、酸化珪素、又は薄片状酸化アルミニウムから選ばれる材料を芯物質とし、金属酸化物で被覆した金属光沢顔料或いはコレステリック液晶型光輝性顔料等の光輝性顔料や、一般染料、一般顔料、紫外線吸収剤、酸化防止剤、老化防止剤、一重項酸素消光剤、スーパーオキシドアニオン消光剤、オゾン消色剤、可視光線吸収剤、赤外線吸収剤から選ばれる光安定剤等を添加することもできる。
【0017】
更に、前記収容部の外周面には、低屈折率顔料をバインダー樹脂に分散状態に固着させた非吸液状態で不透明であり吸液状態で透明化する多孔質層を設けることもできる。
これにより、上段の収容部から溢れた液体が外面をつたって下段の収容部に移る際、前記多孔質層が吸液することで、水温に関係なく透明化するため、より巧妙な様相変化を発現できるものとなる。
前記多孔質層に用いられる低屈折率顔料としては、珪酸及びその塩、バライト粉、硫酸バリウム、炭酸バリウム、炭酸カルシウム、石膏、クレー、タルク、アルミナホワイト、炭酸マグネシウム等が挙げられ、これらは屈折率が1.4〜1.8の範囲にあり、水を吸液すると良好な透明性を示すものである。
尚、前記珪酸の塩としては、珪酸アルミニウム、珪酸アルミニウムカリウム、珪酸アルミニウムナトリウム、珪酸アルミニウムカルシウム、珪酸カリウム、珪酸カルシウム、珪酸カルシウムナトリウム、珪酸ナトリウム、珪酸マグネシウム、珪酸マグネシウムカリウム等が挙げられる。
また、前記低屈折率顔料は二種以上を併用することもできる。
前記低屈折率顔料はバインダー樹脂を結合剤として含むビヒクル中に分散され、支持体に塗布した後、揮発分を乾燥させて多孔質層を形成する。
前記バインダー樹脂としては、ウレタン系樹脂、ナイロン樹脂、酢酸ビニル樹脂、アクリル酸エステル樹脂、アクリル酸エステル共重合樹脂、アクリルポリオール樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合樹脂、マレイン酸樹脂、ポリエステル樹脂、スチレン樹脂、スチレン共重合樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリカーボネート樹脂、エポキシ樹脂、スチレン−ブタジエン共重合樹脂、アクリロニトリル−ブタジエン共重合樹脂、メタクリル酸メチル−ブタジエン共重合樹脂、ブタジエン樹脂、クロロプレン樹脂、メラミン樹脂、及び前記各樹脂エマルジョン、カゼイン、澱粉、セルロース誘導体、ポリビニルアルコール、尿素樹脂、フェノール樹脂等が挙げられる。
【0018】
更に、前記多孔質層中には、一般染料や蛍光染料、着色顔料を添加して色変化を多様化することができる。
前記着色顔料は、一般顔料や蛍光顔料の他、雲母、アルミナ、ガラス等の芯物質を酸化チタンで被覆した透明性金属光沢顔料(パール顔料)を例示できる。また、温度変化により可逆的に色変化する可逆熱変色材料を混在させて、環境温度や付着させる水温により色変化させることができる。
その他、必要に応じて、消泡剤、粘度調整剤、分散剤、保湿剤、湿潤剤、界面活性剤、pH調整剤、防腐剤、可塑剤等の各種添加剤を添加することもできる。
また、前記収容部と多孔質層の間には、非変色像を設けて多孔質層が吸液状態で非変色像が現出する構成とすることもできる。これにより液体付着時の様相変化を更に多彩なものとすることができる。
前記多孔質層及び非変色像は、公知の手段、例えば、スクリーン印刷、オフセット印刷、グラビヤ印刷、コーター、タンポ印刷、転写等の印刷手段、刷毛塗り、スプレー塗装、静電塗装、電着塗装、流し塗り、ローラー塗り、浸漬塗装等により適宜形成できる。
【実施例】
【0019】
以下に本発明の実施例を示すが、本発明はこれに限定されるものではない。尚、実施例中の部は質量部である。
実施例1(図2、3参照)
可逆熱変色性顔料A(ΔH:18℃、T:10℃、T:15℃、T:28℃、T:33℃、濃桃色から無色の可逆的色変化)6.0部、可逆熱変色性顔料B(ΔH:2℃、t:18℃、t:20℃、t:20℃、t:22℃、黄色から無色の可逆的色変化)4.0部を、バインダー樹脂を含む油性ビヒクル中に分散して油性スプレーインキを調製した。
シャンパングラス形状のアクリロニトリルブタジエンスチレン共重合樹脂製透明グラス2の収容部21の内側表面全体に、前記油性スプレーインキを吹き付け塗装し、可逆熱変色層3を形成したグラス2を複数個作製し、ピラミッド状に四段積み上げることでシャンパンタワー形態の変色玩具1を得た。
【0020】
前記変色玩具1は、室温ではすべての収容部21が透明であり、20℃の水6を最上段のグラス2に注いでいくと可逆熱変色層3の可逆熱変色性顔料Bが徐々に発色してくるため、収容部21が黄色に変色し、無色の水6を注いでいるにもかかわらず、収容部21内で黄色に着色したように視認される。
最上段のグラス2(収容部21)が満水になると、溢れた水6が二段目のグラス2に徐々に注がれ、収容部21が透明から黄色に着色される。
更に、二段目のグラス2の収容部21が満水になると、溢れた水6が三段目のグラス2に徐々に注がれ、注がれた収容部21内の可逆熱変色層3が透明から黄色に着色される。前記液体移動と収容部の着色は水6を注ぎ続けることで、四段目のグラス2が満水になるまで視認される。
【0021】
次に、先に注がれた水6を貯水した状態(各収容部21が黄色の状態)で、10℃の水6を最上段のグラス2に注いでいくと可逆熱変色層3の可逆熱変色性顔料Aが徐々に発色してくるため、黄色に着色された収容部21が徐々に赤色(濃桃色と黄色の混色)に変色する。そのため、無色の水6を注いでいるにもかかわらず、収容部21内の黄色の液体が赤色に変色したように視認される。
更に注いでいくと、最上段のグラス2(収容部21)から溢れた10℃の水6が二段目のグラス2に徐々に注がれ、収容部21が黄色から赤色に着色されていく。その際、収容部21内下方が赤色で上方が黄色というグラデーションが視認され、最終的に全体が赤色となる。
前記収容部の変色効果は10℃の水6を注ぎ続けることで、四段目のグラス2から溢れ続けるまで視認される。
【0022】
次に、先に注がれた水6を貯水した状態(収容部21が赤色の状態)で、28℃の水6を最上段のグラス2に注いでいくと可逆熱変色層3の可逆熱変色性顔料Bが徐々に消色してくるため、赤色に着色された収容部21が徐々にピンク色に変色する。そのため、無色の水6を注いでいるにもかかわらず、収容部21内の赤色の液体がピンク色に変色したように視認される。
更に注いでいくと、最上段のグラス2(収容部21)から溢れた28℃の水6が二段目のグラス2に徐々に注がれ、収容部21が赤色からピンク色に着色されていく。その際、収容部21内がピンク色と赤色のグラデーション状に視認され、最終的に全体がピンク色となる。
前記収容部の変色効果は28℃の水6を注ぎ続けることで、四段目のグラス2から溢れ続けるまで視認される。
【0023】
最後、先に注がれた水6を貯水した状態(収容部21がピンク色の状態)で、35℃の水6を最上段のグラス2に注いでいくと可逆熱変色層3の可逆熱変色性顔料Aが徐々に消色してくるため、ピンク色に着色された収容部21が徐々に無色透明に消色する。
更に注いでいくと、最上段のグラス2(収容部21)から溢れた35℃の水6が二段目、三段目、四段目のグラス2へと順に注がれ、収容部21が徐々に消色していき、最終的に全体が無色透明となる。
尚、これらの様相変化は繰り返し発現できるものである。
【0024】
前記4種類の温度帯の水6を注ぐことで、液体の移動に伴って各段のグラス2(収容部21)が上段から下段に向かって徐々に変色していくため、玩具1全体を見ていると、部分的にグラデーションが視認され、上段から下段に向かってグラデーション部分が移動しながら変色していく、装飾効果が高く興趣に富んだ玩具となる。
【0025】
実施例2(図4参照)
可逆熱変色性顔料A(ΔH:18℃、T:10℃、T:15℃、T:28℃、T:33℃、ピンク色から無色の可逆的色変化)6.0部、可逆熱変色性顔料B(ΔH:2℃、t:18℃、t:20℃、t:20℃、t:22℃、青色から無色の可逆的色変化)4.0部を、バインダー樹脂を含む油性ビヒクル中に分散して油性スプレーインキを調製した。
噴水用受水容器形状のアクリロニトリルスチレン共重合樹脂製透明容器2の収容部21の内側表面全体に、前記油性スプレーインキを吹き付け塗装し、可逆熱変色層3を形成した。更に、収容部21の外側表面の一部に黄色像形態の非変色層5を印刷した後、該非変色層5を隠蔽するように、湿式法珪酸〔商品名:ニップシールE−200、日本シリカ工業(株)製〕15部、ウレタンエマルジョン〔商品名:ハイドランHW−930、大日本インキ化学工業(株)製、固形分50%〕30部、水50部、シリコーン系消泡剤0.5部、水系インキ用増粘剤3部、エチレングリコール1.5部を均一に混合、攪拌してなる白色スクリーン印刷用インキを用いてベタ状印刷し、吸液状態と非吸液状態とで透明性を異にする多孔質層4を形成し、各容器2を組み合わせることで噴水用受水容器形態の変色玩具1を得た。
【0026】
前記変色玩具1は、室温ではすべての収容部21が透明であり、外周面の一部に部分的な多孔質層4が視認される。
最上段の収容部21に20℃の水6を注いでいくと可逆熱変色層3の可逆熱変色性顔料Bが徐々に発色してくるため、収容部21が青色に変色し、無色の水6を注いでいるにもかかわらず、収容部21内で青色に着色したように視認される。
最上段の容器2(収容部21)が満水になると、溢れた水6が二段目の各容器2に徐々に注がれ、二段目の収容部21も透明から青色に着色される。その際、一段目の収容部21外周面に形成される多孔質層4が溢れ出た水6を吸液することで透明化し、隠蔽されていた赤色像5が視認される。
更に、二段目の各収容部21が満水になると、溢れた水6が三段目の容器2に徐々に注がれ、収容部21内の注がれた部分の可逆熱変色層3が透明から青色に着色される。前記液体移動と収容部の着色は水5を注ぎ続けることで、四段目の容器2が満水になるまで視認される。また、三段目の容器2から水6が溢れた際には、外周面に設けられた多孔質層4が吸液して透明化することで、隠蔽されていた非変色層5が視認されるようになる。
【0027】
次に、先に注がれた水6を貯水した状態(各収容部21が青色の状態)で、10℃の水6を最上段の容器2に注いでいくと可逆熱変色層3の可逆熱変色性顔料Aが徐々に発色してくるため、青色に着色された収容部21が徐々にバイオレット色(青色とピンク色の混色)に変色する。そのため、無色の水6を注いでいるにもかかわらず、収容部21内の青色の液体がバイオレット色に変色したように視認される。
更に注いでいくと、最上段の容器2(収容部21)から溢れた10℃の水6が二段目の容器2に徐々に注がれ、収容部21が青色からバイオレット色に着色されていく。その際、収容部21内下方がバイオレット色で上方が青色というグラデーションが視認され、最終的に全体がバイオレット色となる。
前記収容部の変色効果は10℃の水6を注ぎ続けることで、四段目の容器2から溢れ続けるまで視認される。
【0028】
次に、先に注がれた水6を貯水した状態(収容部21がバイオレット色の状態)で、28℃の水6を最上段の容器2に注いでいくと可逆熱変色層3の可逆熱変色性顔料Bが徐々に消色してくるため、バイオレット色に着色された収容部21が徐々にピンク色に変色する。そのため、無色の水6を注いでいるにもかかわらず、収容部21内のバイオレット色の液体がピンク色に変色したように視認される。
更に注いでいくと、最上段の容器2(収容部21)から溢れた28℃の水6が二段目の容器2に徐々に注がれ、収容部21がバイオレット色からピンク色に着色されていく。その際、収容部21内がピンク色とバイオレット色のグラデーション状に視認され、最終的に全体がピンク色となる。
前記収容部の変色効果は28℃の水6を注ぎ続けることで、四段目のグラス2から溢れ続けるまで視認される。
【0029】
最後、先に注がれた水6を貯水した状態(収容部21がピンク色の状態)で、35℃の水6を最上段の容器2に注いでいくと可逆熱変色層3の可逆熱変色性顔料Aが徐々に消色してくるため、ピンク色に着色された収容部21が徐々に無色透明に消色する。
更に注いでいくと、最上段の容器2(収容部21)から溢れた35℃の水6が二段目、三段目、四段目の容器2へと順に注がれ、収容部21が徐々に消色していき、最終的に全体が無色透明となる。
尚、これらの様相変化(色調変化及び非変色層5の現出)は繰り返し発現できるものである。
【0030】
前記4種類の温度帯の水6を注ぐことで、液体の移動に伴って各段の容器2(収容部21)が上段から下段に向かって徐々に変色していくため、玩具1全体を見ていると、部分的にグラデーションが視認され、上段から下段に向かってグラデーション部分が移動しながら変色していく、装飾効果が高く興趣に富んだ玩具となる。
【符号の説明】
【0031】
、T 完全発色温度
、T 発色開始温度
、T 消色開始温度
、T 完全消色温度
ΔH ヒステリシス幅
1 変色玩具
2 容器(グラス)
21 収容部
3 可逆熱変色層
4 多孔質層
5 非変色層
6 水

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも上下二段以上に形成される複数の透明性収容部を備え、最上段の収容部に注いだ液体が満水になると下段の収容部に順に注がれる形態の玩具であって、前記各収容部の内周面又は外周面に可逆熱変色層を設けてなる変色玩具。
【請求項2】
前記可逆熱変色層が常温で透明であり、注がれる液体の温度によって二色以上の色調に発色する請求項1記載の変色玩具。
【請求項3】
各収容部に形成される可逆熱変色層の変色温度が等しい請求項1又は2に記載の変色玩具。
【請求項4】
前記収容部の外周面に低屈折率顔料をバインダー樹脂に分散状態に固着させた非吸液状態で不透明であり吸液状態で透明化する多孔質層を設けてなる請求項1乃至3のいずれかに記載の変色玩具。
【請求項5】
前記玩具がシャンパンタワー形態である請求項1乃至4のいずれかに記載の変色玩具。


【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2011−156168(P2011−156168A)
【公開日】平成23年8月18日(2011.8.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−20503(P2010−20503)
【出願日】平成22年2月1日(2010.2.1)
【出願人】(000111890)パイロットインキ株式会社 (832)
【Fターム(参考)】