説明

変速駆動装置用ダブルコグVベルト

上側輪郭形状に対しては対称形で歯底の中央から隣接するコグの中央までシーケンスL1−A1−L2−A2−L3で接続される直線(“L”)と円弧(“A”)を備える上側およびL4−A3−L5−A4−L6の下側輪郭形状を有するVベルトであって、少なくとも1つの上側歯底と1つの下側歯底が相互に実質的に整列され、L1の長さ足すA1の半径の合計がL4の長さ足すA3の半径の合計に等しいか前後20%以内である。上側および下側ピッチは例えば等しく、全ての歯底は整列され、あるいは上コグが下コグよりも多くてもよい。幾つかあるいは全ての円弧と直線は例えば接線に沿って接続される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、広くはダブルコグVベルトに関し、より詳細には、特定のコグ形状の組合せからなる、位置決めされた上下コグを備えるダブルコグVベルトに関し、特に変速トランスミッションに採用されるようなVベルトに関する。
【背景技術】
【0002】
当該ベルトは、スクータ、オートバイ、スノーモービル、全地形対応車、自動車、工業用途などで使用される変速動力伝達システムあるいは変速駆動装置の運転において重要な役割を果たす。変速トランスミッション(VST)の1つの典型的なデザインにおいて、ベルトは原動シャフトから従動シャフトへと動力を伝達するために摩擦を通して2対のシーブを連結する可撓性の構成要素である。シーブの各対は固定シーブと可動シーブを備える。可動シーブの軸方向移動を制御することで、速度およびトルク比が変更できる。運転中ベルトは極めて大きな長手方向の張力と屈曲および横方向圧縮力を受ける。最大の性能、効率、耐久性を達成する上で、ベルト設計が直面する主な難題の1つは、相反する要求、すなわち長手方向への高い柔軟性、適正な側面接触を維持しながらの横方向への高い剛性、に遭遇することである。この難問に対する一般的なアプローチは、ベルトの一方あるいは両側に交互に厚い部分および薄い部分を形成することで行われており、それぞれコグあるいは歯、そして歯底と呼ばれ、歯底は谷、溝あるいはノッチとも呼ばれる。コグは、横方向の剛性に必要な厚みと硬さを与えることを意図したものであり、一方歯底あるいはノッチは要求される長手方向への屈曲性を与えることを意図したものである。コグは、ベルトの内側すなわち下側に形成あるいは設けられてもよく、またコグはベルトの外側、すなわち背面側あるいは上側に設けられてもよい。コグはベルトの下側および上側の両方に交互に設けられてもよく、これはダブルコグベルトとなる。
【0003】
固定シーブすなわち単一速度駆動装置に用いられる従来のVベルトに対する難問も同様であるがこれほど厳しくはない。VSTに用いられるVベルトは、可変シーブ内における径方向内側および外側への移動範囲に適合するために、固定駆動装置に用いられるVベルトよりも相対的に幅広で薄い必要が一般的にある。その結果もたらされる相対的に幅広のVSTベルトのアスペクト比は、横方向への剛性を与えることをより困難にし、特にベルトの横方向荷重の増大をもたらすシフト運動がともなう場合はなおさらである。一方、固定駆動装置におけるVベルトは内側および外側に動く必要がないので、ベルトのアスペクト比を、十分な横方向剛性がより簡単に得られるように設定できる。そのため定速および変速Vベルトの両方においてコグあるいはノッチの利用が一般的であるものの、定速VベルトのコグデザインはVSTでは高い性能を示さないであろう。
【0004】
この技術の代表は米国特許第4,276,039号明細書であり、整列された上下コグによる固定駆動用のダブルコグVベルトが開示される。このような初期のデザインは、コグ同士の整列(アライメント)と特に歯底同士の整列(アライメント)によって引き起こされると認識される問題から好まれなくなってきている。上下の歯底の整列は、曲げ応力が極度に集中し得る、そして曲げ半径がとても小さくなり得るコグ同士の間の相対的に薄いウェブ部を形成する。これは歯底領域のベルト本体へのクラック発生、心線の疲労、そして早期破損をもたらす。米国特許第4,276,039号明細書は、クラックの発生防止を補強するために上下のベルト面の両方にキャンバスカバーを適用する。
【0005】
またこの技術の代表は米国特許第4,708,703号明細書であり、整列された上下の歯と溝を備えるVST用のVベルトを開示する。歯は、座屈の問題に対処するため、その頂部において補強および補剛要素で被覆されることが好ましい。
【0006】
この技術には、ダブルコグVベルトの上下コグの輪郭形状、ピッチ、深さ、アライメントなどを含む外形を最適にするための多くの試みが含まれる。米国特許第6,620,068号明細書は、内側および外側に曲線コグを有する変速駆動装置用のエッジが未加工なダブルコグVベルトを開示する。外側コグの数は内側コグの数の倍であり、内側コグに対して整列されている。特開2002−089631号公報は、下コグよりも多いが2倍よりは少ない数の上コグを有し、上下コグのアライメントあるいは位相が可変であるデュアルコグVベルトを開示する。
【0007】
多くの特許は、上下コグがスタッガード状に配置されること、すなわち正確に180°位相がズレ、ピッチまたは数が等しいことが好ましいとしている。米国特許第1,890,080号明細書は、同じ大きさ形状のスタッガード状に配置された丸コグを開示する。米国特許第2,699,685号明細書は、弱い箇所ができるのを防止し、ベルトの厚さが全体を通して一様になるように、一方のセクションの溝が他方のセクションのコグに対して垂直方向に向かい合う、同じ大きさ、形状のスタッガード状に配置されたブロック形状のコグを開示する。
【0008】
特開2002−031192号公報は、同数の上下コグが完全には位相が一致あるいはずれていないが、その間の何れかの値、好ましくは10分の1からピッチの半分まで位相がシフトされたVSTのアプリケーションに用いられるスタッガード配置のダブルコグVベルトのバリエーションを開示する。その公報は、ベルト厚さが極端に小さくならず、それによりその領域での応力集中と早期クラックの発生を防止するように、上下コグ部分が整列すなわち一致するべきではないとしている。明らかに有限要素法(FEM)解析が、改良された位相シフトスタッガード輪郭形状を設計し、その効果を確認するのに利用された。半ピッチまでの増大された位相シフトは歯底のクラックを低減した。
【0009】
下コグよりも上コグが多い特開2002−031192号公報および特開2002−089631号公報に開示されたデザインでは、上下コグのアライメントは可変である。そのようなデザインでは、不均一なピッチは上下歯底が最も接近して整列されるベルト周りの位置で「弱連結」をもたらす。この整列された歯底位置から歯底のクラッキングが始まることが観察されるであろう。それでもダブルコグ変速Vベルトの現マーケットでは、このデザインが最も最適化されたデザインであると思われている。
【0010】
2008年7月1日に出願された同時係属中の米国特許出願第12/217,026号が参照され、その全内容はここで援用され組み入れられる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、改良されたダブルコグVベルトを提供する、あるいは変速駆動装置に用いられる改良されたダブルコグVベルトを提供するシステムと方法に向けられている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、対称形であるとともに歯底の中央から隣接するコグの中央まで延在する、あるシーケンスで接続される直線(“L”)と円弧(“A”)からなる上側および下側コグ輪郭形状を備え、上側輪郭形状に対してシーケンスがL1−A1−L2−A2−L3であり、下側輪郭形状に対してはL4−A3−L5−A4−L6であり、L1の長さ足すA1の半径の合計がL4の長さ足すA3の半径の合計に等しいか前後20%以内で、少なくとも1つの上側歯底と1つの下側歯底が相互に実質的に整列されているダブルコグVベルトに向けられている。
【0013】
一実施形態において、上側および下側ピッチは等しくてもよく、また全ての歯底が整列されていてもよい。別の実施形態では、下コグよりも上コグの方が多く存在するかもしれない。上コグの下コグに対する数の比は、例えば1.3までであり、あるいは1.1〜1.3である。
【0014】
また別の実施形態では、L4は長さ0であり、下側輪郭形状はシーケンスALALである。この実施形態の変形例では、上側および下側ピッチは例えば等しく、歯底は全て実質的に整列され、あるいは下コグよりも上コグの方が多く存在してもよい。
【0015】
様々な実施形態では、幾つかのあるいは全ての円弧と直線は接線に沿って接続されるであろう。例えば、直線L1およびL2は、円弧A1と接線に沿って接続され、前記直線L4およびL5は、円弧A3と接線に沿って接続される。好ましくは、L1、L3、L4、L6は、歯底の中央およびコグ頂部の中央において、それらの鏡像と接線に沿って接続され、そして歯底と頂部は平らで滑らかである。
【0016】
様々な実施形態において、コグのフランクは、反対側を向くコグのフランク同士の間の夾角が約10〜約30°の範囲となるような角度をなしているであろう。
【0017】
本発明の実施形態は、ベルトの上幅がベルトの全厚さの約2倍のとき、特に変速トランスミッション用のVベルトに適している。また、Vベルトのプーリ接触面が、シーブとの係合のため第1角度で配置される第1平面と、シーブ面とは係合しない第2角度で配置される協同する第2平面とを備えることは更に有益であろう。
【0018】
本発明のベルトは、従来技術のダブルコグVベルトのデザインに対して様々なアドバンテージを示す。歯底クラックへの感受性を大きく増大させること無く可撓性が向上され、下コグの歯底では特に改善されたクラック耐久性が見られた。パフォーマンスの整合性は向上された。
【0019】
以上の説明では、以下に続く発明の詳細な説明をより良く理解できるように、本発明の特徴及び技術的な利点についてやや大雑把にそのアウトラインを述べた。本発明の更なる特徴及び利点については以下に説明され、それは本発明の請求の範囲の主題を構成する。当業者であれば、開示された概念や特定の実施形態は、本発明と同じ目的を実行するに当たって、他の構造へ変更したり、他の構造を設計したりする際のベースとして容易に利用できることが理解できるであろう。更に当業者であるならば、そのような同等な構造が添付した請求の範囲に記載の本発明の範囲から逸脱しないことが理解されるであろう。本発明を特徴付けるものとして考えられる新しい特徴は、その構造および作動方法の両方に関し、更なる目的と利点と共に、以下の説明が添付された図面と関連させて考慮されるときに、より良く理解されるであろう。しかしながら、個々の図面は例示および説明を目的として提供されただけのものであって、本発明の限定事項を規定することを意図したものではないことは明確に理解されるべきである。
【図面の簡単な説明】
【0020】
この明細書に組み込まれその一部を構成し、同一参照番号が同一構成部を指し示す添付図面は、本発明の好ましい実施形態を示し、説明とともに本発明の原理を説明するために用いられる。
【0021】
【図1】本発明の一実施形態の部分側面図である。
【0022】
【図2】図1の線2−2に沿った断面図である。
【0023】
【図3】図1の実施形態の別の部分側面図である。
【0024】
【図4】図1の実施形態に適応されたコグ輪郭形状命名法を示す。
【0025】
【図5】本発明の第2実施形態に適用されたコグ輪郭形状命名法を示す。
【0026】
【図6】本発明の第3実施形態に適用されたコグ輪郭形状命名法を示す。
【0027】
【図7】従来技術のコグ輪郭形状に適用されたコグ輪郭形状命名法を示す。
【0028】
【図8】従来技術の別のコグ輪郭形状に適用されたコグ輪郭形状命名法を示す。
【0029】
【図9】従来技術の別のコグ輪郭形状に適用されたコグ輪郭形状命名法を示す。
【発明を実施するための形態】
【0030】
最大の性能、効率、そしてVSTにおける耐久性を達成するには、ベルトは適正な側面接触および低い応力集中を維持しながら、高い可撓性を有する一方で高い横方向剛性を有する設計にする必要がある。これらの特別な要求をあるレベルで満たすために、Vベルトではベルトの内側40に設けられる1セットの下コグが採用されるであろう。より高い伝達力を要求するVSTのアプリケーションでは、高い可撓性と適正な接触面積をなお維持しつつも横方向剛性を更に増大するために、追加コグがベルトの上側、すなわち背面側30に追加されるダブルコグVベルトのデザインが採用されるであろう。シングルコグ、ダブルコグVSTベルトの何れの設計においても、最適なコグ輪郭形状の寸法と心線位置は重要であるものの従来技術において見出される多くの提案によって示されるように簡単に見出すことはできない。
【0031】
通常、各コグの輪郭形状はコグ中心に対して対称であり、直線セグメントと弧形の組合せである。ここおよび特許請求の範囲では、本技術分野で見出される輪郭形状および本発明の実施形態を同定し分類するのを助けるための命名法が利用される。このシステムでは“A”は形状の構成要素である円弧を表し、“L”は直線を表す。もし隣接する円弧および/または直線が連結されているが、接線に沿って連結されていない場合には、“+”記号がその連結を示すのに用いられる。別の方法で接線に沿わない円弧および/または直線セグメントの連結を説明すると、それは連結点において1次導関数が連続でないことに対応する。もし隣接する2つの円弧および/または直線セグメントがコグの輪郭形状において接線に沿って接続されていれば、ここで使用される命名法において、これらのセグメントを指定する2つの文字間に記号は用いられない。与えられた輪郭形状を定義する1つのシーケンスにおける多くの直線や円弧を識別するために数字の列が文字Lおよび/またはAとともに使用されてもよい。例えば、“L1”は輪郭形状における例えば第1の直線セグメントを表し、状況によっては、“L1”は更にその直線セグメントの長さを表してもよい。同様に、例えば“A1”は輪郭形状を表すシーケンス中の第1の円弧を表す。対称な輪郭形状に対しては、繰り返しの単位の半分のみが表示される必要があり、これは残りの半分が先の半分の鏡像であることからである。ここでの命名法の使用において、輪郭形状の描写は歯底中央から始まりコグ頂部中央で終わる。本命名法の他の特徴は以下において必要に応じて説明される。
【0032】
本発明は、上コグ輪郭形状がシーケンスLALALを有し、下コグ輪郭形状がシーケンスLALALを有するダブルコグVベルトに向けられている。したがって、上下両輪郭形状において初めのLで表される歯底あるいは谷は実質的に平らである。また上下両輪郭形状にあるコグのフランクも平らであり上下両輪郭形状における頂部も平らである。各平坦部は円弧によって連結される。実質的に「平ら」によって意味されるのは、輪郭形状の「ラック」形状と呼ばれるベルトが平らに置かれた状態で、輪郭部分が直線であることである。したがって、それが環状の帯形状などの自然な状態に置かれると、平坦セグメントは実際にはコードラインの湾曲あるいはベルトの自然な湾曲に従う。一般に全ての円弧および直線セグメントは、特別な場合として別の方法で明示しない限り、有限かつ0でない半径と長さである必要がある。もしこの条件が満たされないならば、輪郭形状はここで使用される命名法の慣習に従って別の方法で表現される必要がある。コグはベルトの全長に亘って配置される。
【0033】
本発明に係るベルトの輪郭形状の直線や円弧を番号付けすると便利である。したがって上コグ輪郭形状は、歯底中央から隣接するコグ中央まで例えばシーケンスL1−A1−L2−A2−L3で表される。同様に、下コグ輪郭形状は、歯底中央から隣接するコグ中央まで例えばシーケンスL4−A3−L5−A4−L6で表される。図3の実施形態は、ダブルコグVベルトのコグ輪郭形状を形成しているこれらの円弧と直線の間の配置および接続関係を示す。本発明は、少なくとも1つの対応する下部歯底に整列される少なくとも1つの上部歯底を有するようなダブルコグVベルトに向けられている。また、本発明に係るベルトでは、L1の長さにA1の半径を足した合計が、L4の長さにA3の半径を足した合計の前後20%以内である。全ての円弧および直線セグメントが有限かつ0でない半径と長さであるべきとするこのルールに対する1つの特別な例外は、様々な実施形態において、例えばL4が長さ0であることである。同ルールに対する別の特別な例外は、特別な実施形態において例えばL2が長さ0であることである。
【0034】
本発明の詳細な特徴と本発明の実施形態の特質は、図1、図2および図3を参照して明確にされ説明されるであろう。図1を参照すると、ダブルコグVベルト10は、ベルト本体を構成する心線上側層14と心線下側層12に挟まれた心体層16を有する。図1〜3に示されるダブルコグVベルトは、ベルト本体から突出する下コグ18と上コグ20を更に備える。上コグ20は、頂部17、フランク26および谷あるいは歯底22を含む。同様に下コグ18は、頂部19、フランク36および歯底32を含む。図1および図3のダブルコグVベルトは、ラック形状、すなわち平らで心体層が湾曲していない形状で描かれている。
【0035】
図2は、図1の線2−2に沿って切断された図1のVベルト断面を示す。ベルト全幅は上幅と呼ばれ“TW”で示される。ベルトの全厚さは“T”で示される。Vベルトのプーリ接触面すなわち側面42は、プーリあるいは駆動システムの垂直軸と概ね一致されるベルトの垂直軸に対してα/2の角度で切断されている。したがって、一対の相対する側面42は夾角αをなす。角側面42は運転中シーブに係合し、シーブ角度も略α/2に等しい。
【0036】
本発明の実施形態では、各コグが、下コグ頂部19に向けて配置されるとともに第1の側面42と協同する、相対する一対の第2の側面44を更に備えると有益かもしれない。第2の側面44の各々は夾角γをなす。角度αは例えば約15°〜50°の範囲(すなわち、プーリシーブ角毎に約7°〜25°)にある。角度γは例えば約25°〜65°の範囲にある。すなわち、γ=α+(2×逃げ角(relief angle))である。「逃げ角」は、例えば約5°以上であり、例えば(γ/2−α/2)で定義される。第1の側面と第2の側面を協同させることによってもたらされる特徴は、運転中にベルトによって発生される騒音の顕著な低減と考えられている。本発明を説明するのにこの明細書で使用される数値は単なる実例であり、特に言明されない限り、本発明の幅や応用性を限定することを意図したものではない。例として、第2の側面44は約5°の逃げ角を備え、シーブが第2の側面44と接触することを防止する。20°の角度αを仮定すると、これは30°の角度γを与える。コグ頂部切断高さ、図2における(“h”)は、必要に応じて調整でき、例えば、約1〜2mmである。
【0037】
図3はダブルコグVベルト10の付加的な寸法上の特徴を特定する。心体層の厚さ、あるいは心線の直径は、例えば“D”で示される。心線上側層の厚さはtであり、心線下側そうの厚さはtである。上コグ頂部から心体層の中心までの距離は“PLD”として示され、下コグ頂部から心体層の中心までの距離は“PLD”として示される。PLDはピッチ・ライン・ディファレンシャルの略であり、一般的な簡略化の仮定に基づいた撓曲状態におけるベルトの中立軸、すなわちそのピッチ線であり、心体層の中心に存在する。ウェブの厚さ“W”は、整列された上側歯底と下側歯底の間の距離である。上側歯底の深さ、言い換えれば上コグの高さは、“H2”で示され、下側歯底の深さ、言い換えれば下コグの高さは、“H1”で示される。ピッチ、すなわち輪郭形状が繰り返す距離は、隣接する2つの歯底間の距離として特定され、それは上側輪郭形状では“P2”であり、下側輪郭形状では“P1”である。輪郭形状を構成する直線および円弧は既に紹介されている。上コグの相対するフランクを構成する直線“L2”同士は夾角“β”をなす。下コグの相対するフランクを構成する直線“L5”同士は夾角“β”をなす。他の特徴および/または特徴同士の間の関係は図から自明であろう。例えば、T=PLD+PLD=H1+H2+Wである。また、W=t+D+tである。
【0038】
様々な実施形態において、L4は例えば長さ0であり、それ故下側輪郭形状はシーケンスALALである。この実施形態の変形例では、上側および下側のピッチが等しく、全ての歯底が実質的に整列されてもよく、また上コグが下コグよりも多くともよい。これらの実施形態は、後でより詳細に説明される。
【0039】
様々な実施形態において、幾つかあるいは全ての円弧と直線は、接線に沿って接続されてもよく、あるいは少なくとも滑らかに変化して接続される。L1、L3、L4およびL6は、歯底と頂部が平らで滑らかであるために、歯底の中央およびコグ頂部の中央においてそれらの鏡像と接線に沿って接続されることが好ましい。また直線L1とL2が円弧A1(図1の24)と接線に沿って接続され、および/または、直線L4とL5が円弧A3(図1の34)と接線に沿って接続されることも好ましい。これらコグの歯底とフランクの間の接続は、ベルト運転中、そこで応力集中が発生することから特に重要である。
【0040】
一方、A2(図1の28)、L3、A4(図1の38)、L6の隣接部を含むコグ頂部における応力は、一般にコグ歯底のクラックと関係するベルト寿命に対してあまり重要でなく、そのため本発明の実施形態では、L2とL3はA2と接線に沿って接続する必要はなく、L5とL6はA4と接線に沿って接続する必要はない。そしてR2は、コグ頂部の大きさを最大にすることでベルトに設けられたコグの横剛性効果を最大するために、できる限り小さくできる。それでもR2とR4は、角張った角や滑らかでない移行部による製造上の問題を避けるために、有限であるべきであり、コグ頂部に少なくとも僅かに丸みを与える。
【0041】
様々な実施形態において、コグの相対するフランクの間の夾角は、例えば約10〜30°の範囲にある。β1および/またはβ2の一方あるいは両方の夾角は、例えば10〜30°の範囲にある。
【0042】
本発明の実施形態は、ベルトの上幅がベルトの全厚さの約2倍のときに特に変速トランスミッション用のVベルトに適している。単一速度Vベルト用には、上幅対全厚さの比が1により近くともよい。本発明は、特にVSTベルトに対する用途として考えられたが、適用範囲において特に限定されるものではない。
【0043】
3つの好ましい実施形態と、1以上の好ましい実施形態において見出される多くの付加的な特徴について以下に説明する。
【0044】
上述したように、本発明はLALAL型の上側および下側輪郭形状を有するダブルコグVベルトに向けられている。このような輪郭形状は図4に示され、シーケンスLALALを含む上側輪郭形状41と、シーケンスLALALを同様に含む下側輪郭形状43が示される。図4に同様に示されるように、少なくとも1つの上側歯底は少なくとも1つの対応する下側歯底に整列される。更に本発明の輪郭形状では、L1の長さにA1の半径を足した合計は、L4の長さにA3の半径を足した合計の前後20%以内、すなわち0.8≦(L1+R1)/(L4+R3)≦1.2である。この合計は歯底幅の近似値、あるいは隣接するコグ同士におけるコグ歯元近くの間の距離である。上下コグが似通った間隔を有するとき、すなわち上下歯底幅がお互い対して約20%以内で、少なくとも一対の歯底が整列され歯底が直線的すなわち平らな部分を備えるとき、ベルトは可撓性を備える。可撓性は、長寿命、高性能なVSTベルトを設計する上で取り組まれる基本的すなわち最初に考慮すべき事項であると考えられている。これは、歯底の整列は望ましくないとするこの技術分野における教訓と対照的である。歯底が直線的すなわち平坦な部分を有することの別の利点は、ベルト製造において整列を容易に行えることである。歯底が広いほど、歯底の整列と言う観点からの製造工程を容易にし、可撓性に関し結果的に利益が得られる。したがって、上側および下側歯底の実際の整列は完璧でなくともよく、あるいは必ずしも完璧である必要はない。本発明の実施形態において、上側および下側の歯底の直線的あるいは平坦な部分は、ある程度オーバーラップすれば十分であろう。対照的に、極めて狭く、湾曲形状とされた歯底は、可撓性の利益を実現するために正確に配列されている必要があり、製造上の問題をもたらす。
【0045】
上記発明の第1のより具体的な実施形態では、下側の輪郭形状における歯底が平坦部を備えない。言い換えれば、L4=0、等価的には下側コグの輪郭形状がシーケンスALALである。この実施形態では、下側の歯底の中間点が上側の歯底の直線的すなわち平坦な部分の中のどこかに配列されていればよいことから、上側および下側の歯底の整列がまだ比較的容易に達成できる。このような輪郭形状は図5に例示され、シーケンスLALALを含む上側輪郭形状45と、シーケンスALALを含む下側輪郭形状49が示される。再び、少なくとも1つの上側歯底が少なくとも1つの対応する下側歯底に整列される。
【0046】
第2のより具体的な実施形態では、ベルトは同数の上下コグを有する。言い換えれば、ベルトがラック形状に配置されるときP1とP2は等しい。シーブの周りに巻かれたベルトは、下側の寸法が圧縮され、上側の寸法が伸張されるので、便宜的にここではベルトはラック形状で描かれることが理解されるべきである。上コグの数N1と下コグの数N2が等しく、かつ少なくとも一組の歯底が整列されていることから、全ての上側および下側輪郭形状は実質的に整列されている。再び、これは本技術分野のより最近の教訓と対照的である。上述したように歯底と歯底の整列は、最も可撓性が高いベルトデザインを可能にする。上側および下側歯底において平坦なセグメント、すなわち直線セグメントを維持することは、製造過程における整列を容易にする。上記背景技術の項で説明されたスタッガード輪郭デザインとの比較において、本発明の整列されたデザインはより可撓性がとても高いので、例えば横方向の強度を高めることが求められるときには、ウェブ厚さ“W”を幾分増大できる。したがって、歯底が整列されているベルト部分は、ベルトの「弱連結」に相当するかもしれないが、全ての歯底を整列することで可撓性とともに弱連結の強度を向上でき、性能全体の増大をもたらすと考えられる。加えて、コグからコグへの幾何形状は一貫しており、歪みおよび荷重も一貫しているので、ベルトの性能と寿命が向上される。更に、従来のデザインにおける最大応力領域は、ベルトにおけるコグと歯底が整列された可撓性がない部分と関係しており、これは歯底と歯底が整列された実施形態では完全に除かれている。
【0047】
第2の具体的実施形態の変形例では、L4を長さ0に制限することが望ましいかもしれず、言い換えれば、上記第1の具体的実施形態のように下コグ輪郭形状がシーケンスALALであるかもしれない。L4=0のとき、L1の長さにA1の半径を足した合計がA3の半径以上でかつ20%以内、すなわち1.0≦(L1+R1)/R3≦1.2となるように、上側歯底の幅を下側歯底の幅に対して更に規定することが望ましいかもしれない。この後者の制限は、製造中に歯底を整列させる難しさの幾つかを防止するであろう。
【0048】
本発明の第3のより具体的な実施形態では、ベルトは依然LALAL型の上下輪郭形状を備え、少なくとも1つの上側歯底が少なくとも1つの対応する下側歯底と整列し、L1の長さにA1の半径を足した合計が、L4の長さにA3の半径を足した合計の前後20%以内である。しかし、この第3実施形態では、ベルトの上コグの数が下コグよりも大きい。言い換えれば、ベルトがラック形状に配置されるとき、P1>P2である。このような輪郭形状は図6に図示されており、シーケンスLALALを含んでいる上側輪郭形状46と、シーケンスALALを含んでいる下側輪郭形状47が示される。ピッチの半分しか示されていないためピッチや位相シフト“ΔP”は2で割った状態で示される。N2対N1の比は、特に限定される分けではないが、1.0〜1.3あるいは約1.1〜約1.3の範囲内にあることが好ましいであろう。上コグの数N2と下コグの数N1が等しくないが、少なくとも1組の歯底が整列されていることから、全ての上側および下側の輪郭形状が実質的に整列される分けではない。しかし、上側歯底が直線的すなわち平らな幅を有し、N2がN1よりも大きすぎないならば、実質的には整列された相当数のコグが依然としてあるであろう。更に、本発明の輪郭形状は改良され、それによって、この実施形態のベルトは、従来の輪郭形状の他のデザインを超える高い可撓性と性能を依然発揮すると考えられる。下コグ輪郭形状は、図6の例がALAL型のそれを示すものの、LALAL型であってもよいと理解されるべきである。この実施形態は、ピッチの差異とそれによる輪郭形状のあまり厳格でない整列の結果として、低製造コストをもたらすであろう。
【0049】
これまでに述べられた1つ以上の特徴は、ここで説明された3つの具体的実施形態の何れかに従って、本発明の変形例にも適用し得ると理解されるべきである。これには、コグフランクの夾角、相対的な頂部幅と全体の厚さ、接触面に切り込まれる逃げ角、そして輪郭における円弧と直線の様々な滑らかな接続が含まれるが、限定されるものではない。
【0050】
様々な実施形態において、L2を長さ0に限定し、上側輪郭形状をLAAL型にすることが有効かもしれない。この実施形態は、上コグを相対的に短くすることが望まれるベルト、すなわちhが相対的に小さいときに有益であろう。
【0051】
本発明によるVベルトにはどのような適切な材料が含まれてもよい。以下の材料は例示的に提示され、本発明の広さや適用範囲を限定することを意図したものではない。心体層16は、ガラス、カーボン、金属、ポリエステル、ポリアミド系合成繊維、アラミド(PBOを含む)、そしてこれらの混合物や合成物などの高張力ファイバからなる、個々の撚られた心線を備えるであろう。心体層は必要に応じて、織られた、布、タイヤコードなどであってもよい。ベルト本体は望まれたいかなる合成物であってもよいが、典型的な材料は、天然ゴム、ポリクロロプレン、ポリイソプレン、スチレンブタジエンゴム、エチレン‐α−オレフィンエラストマ、ニトリルゴム、ポリウレタンエラストマ、様々な熱可塑性エラストマなどのエラストマを基本とするゴム合成物である。これらのエラストマには、周知のように、短繊維フィラー、可塑剤、オイル、加工助剤、抗酸化剤、硬化剤、共架橋剤など様々な充填剤が混合されるであろう。他の布地層、例えば従来周知のように配向あるいは無配向の織布、不織布、編物、あるいは不連続繊維層などの他の補強層が、ベルトにおいて心体層の隣に組み入れられてもよい。例えば、布地層は例えば表面特性を変更しクラックの形成および/または進行に対する抵抗力を高めるなどするためベルトのどの表面に使用されてもよい。
【0052】
本発明は、例えば多数の布地、エラストマ、心体部材の層を、円筒形モルドの上、あるいはモルドへの移動のためのマンドレルの上に真直ぐあるいは逆向きに積み上げるなど、既知の方法に従って作成されてもよい。モルドは、その内側に形成されるコグ輪郭を備えてもよく、そして/あるいは、「マトリクス」と呼ばれるものがコグ輪郭を形成するのに使用されるであろう。ダブルコグが形成されたスラブを成形するための硬化あるいは硫化処理後、個々のベルトは、適切な接触面角で、その状態から例えば切断、および/または切削され、必要に応じて反転される。
【0053】
以下の実施例は、この技術分野で見出される他の代表的なデザインに勝る本発明のダブルコグVベルトのデザインの利点を説明するのに使用される。実施例では、有限要素解析(“FEA”)が様々なベルトデザインと比較するために用いられた。各々のケースにおいて、ベルト本体材料(典型的なエラストマ合成物)および心体層(典型的なアラミド心線)には同じ材料特性が用いられ、それ故結果の違いは輪郭形状のデザインの違いのみに起因するであろう。FEAモデリングは、様々な運転条件をシミュレートするために各ベルト例に対し走行する4つのモデルを含み、VSTベルトでは:ベルト曲げモデル、張力モデル、アンダドライブモデル、オーバドライブモデルを見る。曲げモデルは、成型されたその自然な形で45°の円弧となる1/8の長さのベルトを用いて行われ、一方の端部を更に180°回転し、225°の円弧で終了した。張力モデルは、90°の円弧状に対応する同じ100mmの長さのベルトを用いて行われ、それを真直ぐに引っ張った。オーバドライブモデルは、高速度比に対応するシーブ直径において、1000Nのハブ荷重を掛けてベルトを2つのシーブの間で引っ張り、そして従動シーブに30Nmのトルクを掛けて原動シーブを回転させた状態をシミュレートした。アンダードライブモードは、低速度比に対応するシーブ直径において、1000Nのハブ荷重を掛けてベルトを2つのシーブの間で引っ張り、そして従動シーブに30Nmのトルクを掛けて原動シーブを回転させた状態をシミュレートした。
【0054】
実施例のベルト(実施例Aと実施例B)の寸法と特性は、4つの比較例(比較例1〜4)のデータとともに表1−3に示される。表1は上コグ輪郭形状データを示し、表2は下コグ輪郭形状データを示し、表3は付加的なベルトの一般形状データを示す。実施例Aは、LALAL型の上側輪郭形状およびALAL型の下側輪郭形状を有する本発明の実施形態であり、上下コグの数は等しく、輪郭形状は歯底と歯底が整列されている。実施例Bは、実施例Aと同じ下コグ輪郭形状を有するが、上側輪郭形状が下側輪郭形状よりも多くのコグを備える。両実施例は、本発明の一実施形態に従ってL4=0である。実施例あるいは比較例の何れも、ここで説明されたように逃げ角を備えない。
【0055】
比較例は、現在市場で見つけられるVSTアプリケーション用のVベルトに基づく。比較例1のコグ輪郭形状は図9に示され、ここで上側輪郭形状66はA+LAL型であり、下側輪郭形状68はALA型である。比較例2のコグ輪郭形状は図7に示され、ここで上側輪郭形状62はAAL型であり、下側輪郭形状60はALA型である。比較例3のコグ輪郭形状は図8に示され、ここで上側輪郭形状54はA+A型であり、下側輪郭形状56はAL+A型である。比較例4のコグ輪郭形状は、別の図として特に図示されないが、これまでに説明された型である。図7〜9は、比較例における歯底と歯底の整列がない場合を、例えば図7では位相差64によって示し、図8では位相差58で示す。また、シャープな輪郭形状は、円弧および/または直線が滑らかに、すなわち接線方向に交わらない場所、例えば図8の点50、52を破壊する。
【0056】
【表1】

【0057】
【表2】

【0058】
【表3】

【0059】
FEAモデルの結果は表4に示される。表4では、実施例B用に2列結果が示される。実施例Bが下コグよりも多くの上コグを有することから、輪郭形状の整列された部分および輪郭形状のスタッガード部分、すなわち整列されていない部分双方に対するモデル予測結果が示される。実施例B−1と表示された列は、ベルトの歯底と歯底が整列された部分の結果を示し、一方実施例B−2と表示された列は、歯底とコグが整列された場合の結果を示す。曲げモデルは、整列の両方の型が含まれたベルトの全ての部分を含むことから、1つの結果のみが示される。ピーク応力は心線層にあり、曲げ応力は曲げモデルのときよりも遥かに小さいので、張力モデルの結果は別立てで示されていない。通常両方の極値を持つと考えられる比較例に対しては、最悪のケースのみが示される。結果は、重要な領域、すなわち、コグ歯底あるいはコグ頂部における表に記載されたピーク歪みエネルギー密度(“SED”)として示される。表に示されるようにピーク接触摩擦応力(“CFS”)が更に示される。表4には、上述の値の絶対値と、相対値、すなわち“B”で示された4つの比較例の中での最良値を基準とする差のパーセント(“Diff.(%)”)がともに示される。
【0060】
【表4】

【0061】
ダブルコグ変速トランスミッションベルトのFEA解析は、実施例1および実施例2の両代表実施形態が比較例に対して優れていることを裏づけた。曲げ応力の結果は、実施例1、2が、最大の可撓性を備えることを裏づけ、最良の比較例よりもそれぞれ32%、25%良好であった。SEDの結果は、オーバドライブおよびアンダドライブ双方の条件の下での下コグの歯底における低減されたピーク応力を裏づけ、最良の比較例よりも3%〜12%良好であった。同様に、下コグ歯底におけるピークCFSレベルは、7%から9%と比較例よりも低く、顕著に改善された。上コグ歯底は、比較例と同等のSEDレベルを示したが、上側歯底におけるSEDの絶対値は、既に下側歯底よりも遥かに低い。
【0062】
FEA解析は更に、ピークコグ頂部の歪みエネルギー密度、すなわちSEDが、比較例に対して実施例のベルトでは16〜21%と顕著に増大することを示している。コグ頂部は、一般に歪みや応力によるクラックとあまり関係がないことから、これは必ずしも悪いことではない。それどころか増大された頂部応力は、コグを設けたことの目的に合致してより多くの負荷がコグによって担われることを示すであろう。
【0063】
したがって、本発明は、可撓性が向上され、歯底クラックの発生し易さが低減され、パフォーマンスの整合性が改善されたダブルコグVベルト、特にVST用ダブルコグVベルトを提供するために示された。
【0064】
本発明及びその利点は詳細に説明されてきたが、添付された請求の範囲により規定される本発明の範囲から逸脱することなく、様々な変更、置き換え、および修正がここで可能であるこが理解されるべきである。更に、本願の範囲は、本願明細書に記載された工程、機械、製造、合成物、手段、方法、及びステップからなる特定の実施形態に限定されることを意図するものではない。ここで説明した実施形態と実質上同じ機能を演じ、あいは実質上同じ結果をもたらす、既存のあるいは後に開発される工程、機械、製造、合成物、手段、方法、又はステップを本発明に従って利用できることは、当該技術分野において通常の技量をもつ者ならば本発明の開示から容易に理解できる。したがって、添付された特許請求の範囲は、それらの範囲に、そのような工程、機械、製造、合成物、手段、方法、又はステップを含むことを意図している。ここで開示された発明は、ここでは特に開示されない構成要素のいかなるものがなくとも適正に実施できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上側ピッチ、上側曲線輪郭形状でなる複数の上コグと歯底と、下側ピッチ、下側曲線輪郭形状でなる複数の下コグと歯底と、前記上下の歯底の実質的な中間に強化心体層とを備えるVベルトであって、
対称形で歯底の中央から隣接するコグの中央までシーケンスL1−A1−L2−A2−L3で接続される直線(“L”)と円弧(“A”)を含む上側輪郭形状を有し、
対称形で歯底の中央から隣接するコグの中央までシーケンスL4−A3−L5−A4−L6で接続される直線と円弧を含む下側輪郭形状を有し、
L1の長さ足すA1の半径の合計がL4の長さ足すA3の半径の合計に等しいか前後20%以内であり、
少なくとも1つの上側歯底と1つの下側歯底が相互に実質的に整列されている
ことを特徴とするVベルト。
【請求項2】
上コグと下コグの数が等しく、
前記上側および下側輪郭形状は、実質的に歯底と歯底が整列されている
ことを特徴とする請求項1に記載のVベルト。
【請求項3】
前記直線L1とL2が円弧A1と接線に沿って続され、前記直線L4とL5が円弧A3と接線に沿って接続されることを特徴とする請求項2に記載のVベルト。
【請求項4】
L1の長さ足すA1の半径の合計が、L4の長さ足すA3の半径の合計に等しいか、それよりも20%以内で大きいことを特徴とする請求項2に記載のVベルト。
【請求項5】
下コグのフランク同士の夾角が10〜30°の範囲にあり、上コグのフランク同士の夾角が10〜30°の範囲にあることを特徴とする請求項2に記載のVベルト。
【請求項6】
L4が長さ0であることを特徴とする請求項2に記載のVベルト。
【請求項7】
L1の長さ足すA1の半径の合計が、A3の半径に等しいか、それよりも20%以内で大きいことを特徴とする請求項6に記載のVベルト。
【請求項8】
前記直線L1とL2が円弧A1と接線に沿って接続され、前記直線5が円弧A3と接線に沿って接続されることを特徴とする請求項7に記載のVベルト。
【請求項9】
下コグのフランク同士の夾角が10〜30°の範囲にあり、上コグのフランク同士の夾角が10〜30°の範囲にあることを特徴とする請求項8に記載のVベルト。
【請求項10】
上側および下側輪郭形状双方における隣接する円弧と直線の各々が接線に沿って接続されることを特徴とする請求項9に記載のVベルト。
【請求項11】
前記ベルトが全厚さの約2倍の上幅を有することを特徴とする請求項2に記載のVベルト。
【請求項12】
上側および下側輪郭形状双方における隣接する円弧と直線の各々が接線に沿って接続されることを特徴とする請求項2に記載のVベルト。
【請求項13】
直線L2の長さが0であることを特徴とする請求項1に記載のVベルト。
【請求項14】
上コグの数が下コグの数よりも略多いことを特徴とする請求項1に記載のVベルト。
【請求項15】
上コグの数が、下コグの数の約1.1〜1.3倍であることを特徴とする請求項14に記載のVベルト。
【請求項16】
前記直線L1およびL2が円弧A1と接線に沿って接続し、前記直線L4およびL5が円弧A3に接線に沿って接続することを特徴とする請求項14に記載のVベルト。
【請求項17】
下コグのフランク同士の夾角が10〜30°の範囲にあり、上コグのフランク同士の夾角が10〜30°の範囲にあることを特徴とする請求項14に記載のVベルト。
【請求項18】
L4が長さ0であることを特徴とする請求項14に記載のVベルト。
【請求項19】
前記ベルトが全厚さの約2倍の上幅を有することを特徴とする請求項14に記載のVベルト。
【請求項20】
上側および下側輪郭形状双方における隣接する円弧と直線の各々が接線に沿って接続されることを特徴とする請求項14に記載のVベルト。
【請求項21】
下コグ頂部近くに配置された逃げ角を有する反対側を向く側面を更に備えることを特徴とする請求項1に記載のVベルト。
【請求項22】
L4の長さが0であることを特徴とする請求項1に記載のVベルト。
【請求項23】
前記直線L1およびL2が円弧A1と接線に沿って接続し、前記直線L4およびL5が円弧A3と接線に沿って接続することを特徴とする請求項22に記載のVベルト。
【請求項24】
前記ベルトが全厚さの約2倍の上幅を有することを特徴とする請求項1に記載のVベルト。
【請求項25】
下コグのフランク同士の夾角が10〜30°の範囲にあり、上コグのフランク同士の夾角が10〜30°の範囲にあることを特徴とする請求項14に記載のVベルト。
【請求項26】
前記直線L1およびL2が円弧A1と接線に沿って接続し、前記直線L4およびL5が円弧A3と接線に沿って接続することを特徴とする請求項1に記載のVベルト。
【請求項27】
上側および下側輪郭形状双方における隣接する円弧と直線の各々が接線に沿って接続されることを特徴とする請求項1に記載のVベルト。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公表番号】特表2012−525554(P2012−525554A)
【公表日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−508463(P2012−508463)
【出願日】平成22年4月14日(2010.4.14)
【国際出願番号】PCT/US2010/001106
【国際公開番号】WO2010/126562
【国際公開日】平成22年11月4日(2010.11.4)
【出願人】(000115245)ゲイツ・ユニッタ・アジア株式会社 (101)