説明

夏用掛布団

【課題】本発明は、寝苦しい高温・多湿の時期でも、清涼感を感じさせる夏用掛布団を提供するものである。
【解決手段】本発明に係る夏用掛布団Aは、掛布団の長さ方向に、充填物を封入した中央キルティング部10、充填物を封入した左側部キルティング部20、及び、充填物を封入した右側部キルティング部30の3筋のキルティング部を形成し、各キルティング部の間は、通気性布地のみからなり、充填物を封入しない2筋の薄地部40、50を配したことを特徴とするものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高温・多湿の時期に適した夏用の掛布団に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、公知文献1に示されるように、掛布団の幅方向にメッシュ地を2筋又は4筋配した掛布団が知られている。下記公知文献1に示される掛布団は、脚部及び胸部に相当する位置に幅方向にメッシュ地を配することにより通気性を向上させて、掛布団内部にこもる体温を放出できるようにし、使用者を寝苦しさから解放し、保温の必要な腹部は放熱を防止して健康促進を図るようにしたものである。
【特許文献1】実開平5-9368号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上記公知文献1の掛布団は、幅方向にメッシュ地を介在させているために、使用者が就寝中に上下に移動すると、メッシュ地の部分が縮こまって掛布団がたくし上がるおそれがあり、身体に対してフィット性が欠如する欠点がある。また、脚部及び胸部の熱を放出する予定でメッシュ地を幅方向に配したとしても、使用者が就寝中に上下に移動すれば、腹部にメッシュ地が被さってしまうようなおそれがあり、寝冷え等を引き起こすおそれがある。また、幅方向にメッシュ地を配したことにより、メッシュ地が身体を横断するので局部的に熱が開放されるだけで、身体全体に清涼感を感じさせるようなものではなく、寝苦しさを改善する程のものではなかった。しかも、通常、掛布団を畳んだり、敷いたりするとき、又は、就寝中に掛布団を引き上げるようなときには、長手方向の端部を引っ張ることが多く、これが日常頻繁に行われるため、布団綿充填部よりも引っ張り強度が低い幅方向のメッシュ地に引っ張り力が集中して引きちぎれるおそれがあった。
【0004】
本発明は、上記の実情に鑑み、上記従来の欠点を解消すべく、寝苦しい高温・多湿の時期でも、清涼感を感じさせる夏用掛布団を開発することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に係る夏用掛布団は、掛布団の長さ方向に、充填物を封入した中央キルティング部、充填物を封入した左側部キルティング部、及び、充填物を封入した右側部キルティング部の3筋のキルティング部を形成し、各キルティング部の間は、通気性布地のみからなり、充填物を封入しない2筋の薄地部を配したことを特徴とするものである。この構成は、特にシングルサイズの掛布団に最適な構成である。
【0006】
また、本発明に係る夏用掛布団として、ダブルサイズの掛布団に最適になるように、掛布団の長さ方向に、充填物を封入した中央左キルティング部、充填物を封入した中央右キルティング部、充填物を封入した左側部キルティング部、及び、充填物を封入した右側部キルティング部の4筋のキルティング部を形成し、各キルティング部の間は、通気性布地のみからなり、充填物を封入しない3筋の薄地部を配した構成としてもよい。
【0007】
上記の各夏用掛布団において、通気性のある布地により、夏用掛布団の裏面側全面を覆う裏面被覆地を縫着してもよい。
【0008】
さらに、本発明の夏用掛布団として、充填物を封入し、キルティングにより仕切られた区画部を有する掛布団であって、1又は複数の区画部において、その一部に充填物の介在しない通気性布地のみからなる通気領域を設けてなる構成としてもよい。
【発明の効果】
【0009】
上記のように長さ方向に薄地部を配した構成にしたことにより、従来のように幅方向にメッシュ地を配したことに起因する欠点が全て解消され、身体の両側に薄地部が位置するので、身体に致してフィット性が良好であり、かつ、身体の両側から熱を放出するので身体全体に清涼感を与え、高温・多湿の時期である夏用の掛布団として最適である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明に係る夏用掛布団(以下、単に「掛布団」という。)について、図面に基づき詳細に説明する。なお、本発明において、キルティング部とはキルティングにより区画された区画部のこという。
【実施例1】
【0011】
実施例1はシングルサイズの掛布団について説明するものであり、図1は実施例1に係る掛布団の平面図であり、図2は実施例1に係る掛布団の斜視図であり、図3は実施例1に係る掛布団の幅方向の端面図である。
【0012】
図1〜図3に示されるように、実施例1に係る掛布団Aは、長さ方向の中央部及び左右側部に羽毛等の充填物を封入したキルティング部が長さ方向全長に亘って配され、この各キルティング部の間に充填物を封入しない薄地部を長さ方向全長に亘って配してなるものである。
【0013】
すなわち、図において10は、中央キルティング部を示し、該中央キルティング部10は内部に羽毛11が封入されていると共に、縦横に縫着によるキルティング12が配されている。20は左側キルティング部を示し、該左側キルティング部20は内部に羽毛21が封入されていると共に、縦横に縫着によるキルティング22が配されている。30は右側キルティング部を示し、該右側キルティング部30は内部に羽毛31が封入されていると共に、縦横に縫着によるキルティング32が配されている。40は左側薄地部であって、通気性のある布地40aのみからなり、充填物は封入されていない。50は右側薄地部であって、通気性のある布地50aのみからなり、充填物は封入されていない。
【0014】
その構造が図3に示される。中央キルティング部10は、表側地10aと裏側地10bと、その間に充填された羽毛11が介在しており、その中央に縫着によるキルティング12が配されて構成されている。中央キルティング部10の左側縁部10cは表側地10aと裏側地10bとの間に左側薄地部40を形成する通気性のある布地40aの端縁が縫着により挟着されている。中央キルティング部10の右側縁部10dは表側地10aと裏側地10bとの間に右側薄地部50を形成する通気性のある布地50aの端縁が縫着により挟着されている。
【0015】
左側キルティング部20は、表側地20aと裏側地20bと、その間に充填された羽毛21が介在しており、その中央に縫着によるキルティング22が配されて構成されている。左側キルティング部20の縫着された左側縁部20cは掛布団の端縁となる。左側キルティング部20の右側縁部20dは表側地20aと裏側地20bとの間に左側薄地部40を形成する通気性のある布地40aの端縁が縫着により挟着されている。
【0016】
右側キルティング部30は、表側地30aと裏側地30bと、その間に充填された羽毛31が介在しており、その中央に縫着によるキルティング32が配されて構成されている。右側キルティング部30の左側縁部30cは表側地30aと裏側地30bとの間に右側薄地部50を形成する通気性のある布地50aの端縁が縫着により挟着されている。右側キルティング部30の縫着された右側縁部30dは掛布団の端縁となる。
【0017】
そして、前記の中央キルティング部10を構成する裏側地10b、その左側に縫着されている左側薄地部40を構成する布地40a、さらにその左側に布地40aに縫着された左側キルティング部20を構成する裏側地20b、また、中央キルティング部10を構成する裏側地10bの右側に縫着されている右側薄地部50を構成する布地50a、さらにその右側に布地50aに縫着された右側キルティング部30を構成する裏側地30bの全面を覆う裏面被覆地60が縫着されている。該裏面被覆地60は通気性ある布地で構成されており、掛布団の端縁と各キルティング部と各薄地部との挟着箇所において縫着され、一体化されている。
【0018】
実施例1に係る掛布団Aは、上記のように構成されており、薄地部40、50においては通気性が良好であり、キルティング部10、20、30においては十分な保温性が保たれている。また、裏面被覆地60により、薄地部とキルティング部との段差を感じさせず、極めて肌触りの良好なものとなっている。さらに薄地部40、50が長さ方向全長に亘って配されているので、身体から発する熱が身体の側部から放出されるので、掛布団内全体において熱が発散されるので、十分な清涼感が得られ、高温・多湿の環境下においても寝苦しさを感じることなく快適な睡眠をとることができる。当該掛布団Aを長さ方向に引っ張っても、キルティング部が長さ方向の全長に亘って配されているため、薄地部に引っ張り力が集中することがないので、長さ方向の引っ張りに対して薄地部が破損するおそれがない。しかも、薄地部が長さ方向に配されているので、薄地部が縮こまっても、掛布団がたくし上がるようなことはなく、むしろ、身体に沿った状態となるのでフィット性の極めて良好となり、寝心地がよくなる利点がある。
【0019】
実施例1においては、充填物として羽毛を採用しているが、これに限られるものではなく羊毛綿、合繊綿又は木綿綿などを使用してもよい。また、実施例1において縫着によるキルティングを採用しているが、桟立てにより区画するキルティングを採用してもよい。
【0020】
なお、実施例1においては、シングルサイズ用として説明したが、ダブルサイズ用として、掛布団の長さ方向に、充填物を封入した中央左キルティング部と充填物を封入した中央右キルティング部と充填物を封入した左側部キルティング部と充填物を封入した右側部キルティング部との4筋のキルティング部を形成し、各キルティング部の間は、通気性布地のみからなり、充填物を封入しない3筋の薄地部を配した構成としてもよい。
【実施例2】
【0021】
図4は実施例2に係る掛布団の平面図であり、図5は実施例2に係る掛布団の斜視図であり、図6は図4におけるVI−VI線端面図である。
【0022】
図4〜図6に示されるように、実施例2に係る掛布団Bは、長さ方向及び幅方向にキルティングが配され、内部に羽毛を充填してなるものであり、キルティングにより仕切られた複数の区画部のうちのいくつかの区画部において、その一部に充填物の介在しない通気性布地のみからなる通気領域を設けたものである。
【0023】
すなわち、図4〜図6において100は掛布団Bに配したキルティングであり、キルティング100により仕切られた複数の区画部のうち、区画部110,120,130,140の4区画部には、掛布団Bの表裏を貫通する孔を形成し、充填物が漏出しないように孔周縁を縫合すると共に孔全面に通気性のある布地を縫着して通気領域111,121,131,141を形成したものである。
【0024】
このように通気領域111,121,131,141を掛布団Bに設けたことにより、通気領域111,121,131,141においては通気性が良好であり、身体から発する熱が掛布団Bの外部に放出されるので、掛布団内全体において熱が発散されるので、十分な清涼感が得られ、高温・多湿の環境下においても寝苦しさを感じることなく快適な睡眠をとることができる。また、当該掛布団Bを長さ方向に引っ張っても、通気領域に引っ張り力が集中することがないので、長さ方向の引っ張りに対して通気領域が破損するおそれがない。しかも、通気領域が縮こまるようなことがなく、掛布団がたくし上がるようなことはない。
【0025】
実施例2においては、充填物として羽毛を採用しているが、これに限られるものではなく羊毛綿、合繊綿又は木綿綿などを使用してもよい。また、実施例2においては通気領域が区画部一つ飛びに設けられているが、これに限られるものではなく、全区画部に設けてもよく、桂馬飛びなど適当に飛んで配してもよい。通気領域の形状も実施例のように円形に限られるものではなく、三角、四角、星形など適宜の形状を採用してもよい。また、縫着によるキルティングを採用しているが、桟立てにより区画するキルティングを採用してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の実施例1に係る掛布団の平面図である。
【図2】本発明の実施例1に係る掛布団の斜視図である。
【図3】本発明の実施例1に係る掛布団の幅方向の端面図である。
【図4】本発明の実施例2に係る掛布団の平面図である。
【図5】本発明の実施例2に係る掛布団の斜視図である。
【図6】図4におけるVI-VI線端面図である。
【符号の説明】
【0027】
A・・・・・掛布団
10・・・・中央キルティング部
10a・・・中央キルティング部の表側地
10b・・・中央キルティング部の裏側地
10c・・・中央キルティング部の左側縁部
10d・・・中央キルティング部の右側縁部
11・・・・羽毛
12・・・・キルティング
20・・・・左側キルティング部
20a・・・左側キルティング部の表側地
20b・・・左側キルティング部の裏側地
20c・・・左側キルティング部の左側縁部
20d・・・左側キルティング部の右側縁部
21・・・・羽毛
22・・・・キルティング
30・・・・右側キルティング部
30a・・・右側キルティング部の表側地
30b・・・右側キルティング部の裏側地
30c・・・右側キルティング部の左側縁部
30d・・・右側キルティング部の右側縁部
31・・・・羽毛
32・・・・キルティング
40・・・・左側薄地部
40a・・・左側薄地部を構成する布地
50・・・・右側薄地部
50a・・・右側薄地部を構成する布地
60・・・・裏面被覆地
B・・・・・掛布団
100・・・キルティング
110・・・区画部
120・・・区画部
130・・・区画部
140・・・区画部
111・・・通気領域
121・・・通気領域
131・・・通気領域
141・・・通気領域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
掛布団の長さ方向に、充填物を封入した中央キルティング部、充填物を封入した左側部キルティング部、及び、充填物を封入した右側部キルティング部の3筋のキルティング部を形成し、各キルティング部の間は、通気性布地のみからなり、充填物を封入しない2筋の薄地部を配したことを特徴とする夏用掛布団。
【請求項2】
掛布団の長さ方向に、充填物を封入した中央左キルティング部、充填物を封入した中央右キルティング部、充填物を封入した左側部キルティング部、及び、充填物を封入した右側部キルティング部の4筋のキルティング部を形成し、各キルティング部の間は、通気性布地のみからなり、充填物を封入しない3筋の薄地部を配したことを特徴とする夏用掛布団。
【請求項3】
通気性のある布地により裏面側全面を覆う裏面被覆地を縫着してなることを特徴とする請求項1又は2に記載の夏用掛布団。
【請求項4】
充填物を封入し、キルティングにより仕切られた区画部を有する掛布団であって、1又は複数の区画部において、その一部に充填物の介在しない通気性布地のみからなる通気領域を設けてなることを特徴とする夏用掛布団。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−100864(P2009−100864A)
【公開日】平成21年5月14日(2009.5.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−273806(P2007−273806)
【出願日】平成19年10月22日(2007.10.22)
【出願人】(591034143)西川リビング株式会社 (27)
【Fターム(参考)】