説明

外ガイド付き釣竿

【課題】キャスティングの飛距離や位置精度を改善できる外ガイド付き釣竿を提供する。
【解決手段】釣竿のハンドル部20にリール装着部Sを設け、該ハンドル部よりも先方の竿杆10外周に複数のガイドG1,G2,・・・,G10を設けた外ガイド付き釣竿であって、前記複数のガイドの内のトップガイドG1の内径Dを5mm以下にすると共に、その他のガイドの内径はトップガイドの内径以下であり、竿杆の表面から前記複数のガイドの夫々の挿通孔下端までの各高さの相違が4mm以下であるよう構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、外ガイド付きの釣竿に関し、特に、キャスティング用の外ガイド付き釣竿に関する。
【背景技術】
【0002】
複数の外ガイドが設けられている釣竿のハンドル部にリールを装着してキャスティング操作をする場合、釣糸が絡まないように複数の外ガイドによって先方へ誘導され、先端のトップガイドから外に放出され、仕掛けやルアーを遠くに飛ばすことができる。従って、キャスティング操作によってリールから解き放たれた釣糸が螺旋状旋回や上下左右の振れ等で広がっていても、ガイドを通過しながら釣糸の暴れ状態を徐々に拘束して穂先側に向かわせる。このため、元側程大径の挿通孔を有するガイドが装着されており、穂先側になるに従って徐々に小径の挿通孔を有するガイドとなっている。例えば、下記特許文献1には、そうした孔径の大小の表われたガイド付き釣竿が描かれている。また、非常に特殊なものとして、特許文献2には釣竿の長手方向においてガイド内径が大小に変化する釣竿が開示されている。
なお、ルアーロッドの、例えば、ベイトキャスティングロッド等の一般的なキャスティングロッドでは、主に、直径が0.37mm以下のナイロン、フロロカーボン、ポリエチレン等の5号以下の釣糸が使用されており、トップガイドについては、その挿通孔直径が5mm以下で4.8〜3.0mmが多い。その他のガイドは、既述の如く、トップガイドよりも元側程内径が漸次大きくなるのが一般的である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実開平3−34771号公報
【特許文献2】特許第3885188号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、このようにトップガイドに対して元側のガイドの内径が大径に形成されていると、トップガイドに到達する前に、これらのガイドの挿通孔を通過する際に釣糸が大きく振れつつ通過することになるため、釣糸の空気抵抗が大きく、キャスティングした仕掛けやルアーの飛距離が出難い他、所望ポイントへのキャスティングが困難である。また、キャスティングでは、投げられた仕掛けやルアーの飛翔方向と釣竿の穂先の向きとを一致させなければ、釣糸がトップガイド内縁に強く接触して飛距離が低下し、所望ポイントへのキャスティングも困難になる。
依って解決しようとする課題は、キャスティングの飛距離や位置精度を改善できる外ガイド付き釣竿を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題に鑑みて第1の発明は、釣竿のハンドル部にリール装着部を設け、該ハンドル部よりも先方の竿杆外周に複数のガイドを設けた外ガイド付き釣竿であって、前記複数のガイドの内のトップガイドの内径を5mm以下にすると共に、その他のガイドの内径はトップガイドの内径以下であり、竿杆の表面から前記複数のガイドの夫々の挿通孔下端までの各高さの相違が4mm以下であることを特徴とする外ガイド付き釣竿を提供する。
5mm以下は、好ましくは3mm以下である。
4mm以下は、好ましくは3mm以下、更に好ましくは2mm以下である。要は、各ガイドの高さが同じであるか、又は高さの相違が小さいことを述べている。
【0006】
第2の発明は、第1の発明の前記複数のガイドは、隣接する前後のガイドが同じ内径を有するか又は元側が小径であるよう構成する。
第3の発明は、第1又は第2の発明の前記竿杆は、ハンドル部を水平状態に保持した状態において、トップガイド位置の撓み量がトップガイドの内径よりも小さい値となる撓み剛性を有するよう構成する。
【0007】
第4の発明は、第1〜第3の発明の前記複数のガイドの夫々は、竿杆の表面から各ガイドの挿通孔の下端までの高さが、当該ガイドの挿通孔の内径よりも小さいよう構成する。
第5の発明は、第1〜第4の発明の前記複数のガイドは全て同じ内径を有すると共に、竿杆の表面から各ガイドの挿通孔の下端までの高さが同じであるよう構成する。
【発明の効果】
【0008】
第1の発明では、全てのガイドの内径を5mm以下のトップガイド内径以下にするため、リールから離たれた釣糸を最初のガイドに誘導した後は大きく振れることなく各ガイド挿通孔を通過する。また、竿杆の表面から各ガイドの挿通孔下端までの夫々の高さの相違が4mm以下と小さいため、ガイド挿通の際の釣糸の折れは殆ど生じない。従って、ガイドの挿通孔を通過する際の釣糸の空気抵抗が低減し、キャスティングした仕掛けやルアーの飛距離が改善できる他、所望ポイントへのキャスティングの位置精度が向上する。
【0009】
第2の発明では、キャスティングでは所望ポイントへの精度が重要であるが、そのためには、仕掛けやルアーの飛翔方向と釣竿の延伸方向とを一致させる必要がある。しかし、釣竿は先程よく撓むため、元側よりも先側のガイド挿通孔が小さくては前記方向を一致させ難い。このため、元側寄りのガイドと比べて先側寄りのガイドの挿通孔の大きさが同じかより大きいことが望ましい。特に、本願では全てのガイドが5mm以下の小さな挿通孔であるため、この第2発明の要件はキャスティングの位置精度や飛距離にとって効果が大きい。
【0010】
第3の発明では、トップガイド位置の撓みがトップガイドの内径(5mm以下)よりも小さい量となる撓み剛性を有する竿杆であるとは、先端における撓みが小さいことを意味し、長手方向に亘って硬質な竿杆であることを意味する。このように先端の撓みが小さく、自重では竿杆全体が直線に近い状態なので、キャスティング操作で竿杆を振った直後に、釣竿を投擲ポイントの方向に指向静止させた際、複数ガイドが小径であっても直線状に並ぶので釣糸抵抗が小さく、仕掛けやルアーの飛距離が伸びると共に、位置精度も向上する。
【0011】
第4の発明では、ガイド位置の高さが低いので、各ガイドは竿杆表面近くに沿って並んでいる。このため、キャスティング操作に伴う仕掛けやルアーを設けた釣糸の動きは、竿杆(の中心軸線)そのものに近く、キャスティング操作が違和感なく可能となる。
第5の発明では、少なくともトップガイドを除けば、残りガイドは同じ形態寸法のガイドが使用でき、釣竿コストを低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明に係る外ガイド付き釣竿の側面図である。
【図2】図1の拡大図であって、自重を無視した状態の部分縦断面図である。
【図3】図1の拡大図であって、自重を考慮した状態の部分縦断面図である。
【図4】本発明に係る第2形態例の外ガイド付き釣竿の図であって、図2に対応する部分縦断面図である。
【図5】本発明に係る第3形態例の外ガイド付き釣竿の図であって、図2に対応する部分縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を添付図面を用いて更に詳細に説明する。第1実施形態例を示す図1と図2を参照する。エポキシ樹脂等の合成樹脂を炭素繊維等の強化繊維で強化した繊維強化合成樹脂材からなる竿杆10の元部領域にはハンドル部20が設けられている。この例の釣竿はバスを対象魚としたバス用キャスティングロッドであり、竿杆10は中実の1本竿であるが、本発明は中空竿管の竿杆を用いてもよく、また、継式竿杆でもよい。
【0014】
ハンドル部20にはリールR(この例ではベイトリール等の両軸受型リール)を装着固定させるリール装着部Sが設けられており、元側に固定フードF2、先側に移動フードF1がナット部材Nを伴って設けられている。また、固定フードの径方向反対側にはトリガーTが形成されており、この固定フードF2よりも元側のハンドル部領域にはグリップ部材が設けられて、グリップ部GPが形成されている。トリガーTに指を係止するとキャスティング操作が容易になるため、その存在はキャスティングロッドには好ましいが、本発明に必須ではない。
【0015】
ハンドル部20の前方の竿杆10の外周には複数のガイドGが設けられている。この実施例では10個のガイドG1〜G10が配設されており、竿杆に沿った長手方向の間隔は前方ほど狭くなっている。トップガイドG1は、内径Dの挿通孔を有するセラミックス製のガイドリングG1Rを金属製の保持体HBで保持して、竿杆先端部に差し込んで固定すると共に、竿杆表面からガイドリングG1Rの挿通孔下端までの高さHを有するように竿杆10の先端部に固定している。
【0016】
これに隣接する第2ガイドG2から、最も元側寄りの第10ガイドG10までは、全て同じ部品としてのガイドGが使用されている。また、ガイドリングG2R〜G10RはトップガイドのガイドリングG1Rと同じ材質、同じ寸法形態のものである。更には、竿杆表面から各ガイドリングの挿通孔下端までの高さも前記トップガイドのものと同じHである。ガイドG2〜G10は各保持体HBの足部fを糸巻回IKと接着剤とによって固定保持している。また、挿通孔の直径Dは5mm以下の3mmであり、高さHは直径Dよりも小さく、例えば2mmである。
【0017】
こうした構成のため、キャスティングによってリールRを離たれた釣糸は第10ガイドG10によってその振れが大きく規制され、その後のガイドも竿杆表面からの高さが同じであると共に内径も同じであるため、釣糸は折れ曲がりが防止されつつ振れも小さい。従って、飛距離が向上すると共に、投擲位置精度も向上する。
【0018】
次に図3を参照する。これはハンドル部20を水平に保持した場合、釣竿の自重による竿杆10の撓みを図示しており、トップガイドG1の位置の撓み量δが最も大きい。記号CLは竿杆10の中心軸線である。しかし、この形態例の竿杆10の撓み量δはそのトップガイドG1の内径Dよりも小さい。即ち、一般的に表現すると、竿杆が硬質であり、撓み難い。このため、釣りに際してキャスティング操作を行い、ルアーが飛翔している間に釣竿を投擲目標位置に対する方向に指向させると、各ガイドの挿通孔が実質的に一直線状に並び、更に釣糸の折れ曲がりが防止されて、更に飛距離が向上すると共に投擲位置精度も向上する。
【0019】
次に第2実施形態例の図4を参照する。第1実施形態例と相違するところを主に説明する。第2ガイドG2〜第10ガイドG10は同じ部品としてのガイドを使用しているが、トップガイドG1の挿通孔の直径Dよりも夫々小さな同じ直径dの挿通孔を有している。また、第2ガイドG2〜第10ガイドG10の挿通孔下端の竿杆表面からの高さhは、トップガイドD1の高さHは僅かに低いが実質同じともいえる。例えば、2mmほど低いに過ぎない。従って、第1実施形態例と同様な作用効果を奏する。
【0020】
次に第3実施形態例の図5を参照する。第1実施形態例と相違するところを主に説明する。第2ガイドG2と第3ガイドG2とは同じ部品を使用しており、その挿通孔直径も高さもトップガイドG1のものと同じである。第4ガイドG4と第5ガイドG5と第6ガイドG6とは互いに同じ部品であり、その挿通孔直径はガイドG1〜G3のものより小さく、高さは僅かに低いに過ぎない。第7ガイドG7と第8ガイドG8と第9ガイドG9と第10ガイドG10とは互いに同じ部品であり、その挿通孔直径はガイドG4〜G6のものより小さく、高さは僅かに低いに過ぎない。全てのガイドG1〜G10の挿通孔下端までの高さの互いの相違は4mmを越えることは無く、3mm以下或いは2mm以下であるため、第1実施形態例と同様な作用効果を奏する。
【0021】
以上の形態例では、各ガイドのガイドリングは竿杆表面に対して垂直に設けられているが、適宜傾斜していてもよい。また、各ガイドのガイドリングを金属製にしたり、保持体を合成樹脂(繊維強化樹脂を含む)で形成してもよく、その材料は様々なものを用いることができる。
【産業上の利用可能性】
【0022】
本発明は、外ガイドを設けた釣竿に利用でき、特に硬質竿杆のキャスティングロッドに利用できる。
【符号の説明】
【0023】
10 竿杆
20 ハンドル部
D トップガイドの挿通孔直径
G1 トップガイド
H 竿杆表面からのトップガイド挿通孔下端の高さ
S リール装着部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
釣竿のハンドル部にリール装着部を設け、該ハンドル部よりも先方の竿杆外周に複数のガイドを設けた外ガイド付き釣竿であって、前記複数のガイドの内のトップガイドの内径を5mm以下にすると共に、その他のガイドの内径はトップガイドの内径以下であり、竿杆の表面から前記複数のガイドの夫々の挿通孔下端までの各高さの相違が4mm以下であることを特徴とする外ガイド付き釣竿。
【請求項2】
前記複数のガイドは、隣接する前後のガイドが同じ内径を有するか又は元側が小径である請求項1記載の外ガイド付き釣竿。
【請求項3】
前記竿杆は、ハンドル部を水平状態に保持した状態において、トップガイド位置の撓み量がトップガイドの内径よりも小さい値となる撓み剛性を有する請求項1又は2記載の外ガイド付き釣竿。
【請求項4】
前記複数のガイドの夫々は、竿杆の表面から各ガイドの挿通孔の下端までの高さが、当該ガイドの挿通孔の内径よりも小さい請求項1〜3の何れか1記載の外ガイド付き釣竿。
【請求項5】
前記複数のガイドは全て同じ内径を有すると共に、竿杆の表面から各ガイドの挿通孔の下端までの高さが同じである請求項1〜4の何れか1記載の外ガイド付き釣竿。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−5379(P2012−5379A)
【公開日】平成24年1月12日(2012.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−142211(P2010−142211)
【出願日】平成22年6月23日(2010.6.23)
【出願人】(000002495)グローブライド株式会社 (1,394)
【Fターム(参考)】