外傷防止治具
【課題】ドア開口フランジから外れることなく、且つ塗装面に傷が付くことを防止することができる外傷防止治具を提供することを課題とする。
【解決手段】外傷防止治具10はクリップ機構20にドアストッパ部30を係合し、クリップ機構20は第1クリップ部材21、第2クリップ部材22及びねじりコイルばね27を備え、ドアストッパ部30はドア受け面32、ネック部33、保護部34及びフランジ当接面35を備えると共に軟質材で構成した。
【効果】クリップ機構20でドア開口フランジ42を強力に挟むことができるので、ドア開口フランジ42から外れることを防止することができる。また、ドアストッパ部30を軟質材で構成したので、ドア43がドアストッパ部30に当たってもドア43側の塗装面に傷が付く心配はない。
【解決手段】外傷防止治具10はクリップ機構20にドアストッパ部30を係合し、クリップ機構20は第1クリップ部材21、第2クリップ部材22及びねじりコイルばね27を備え、ドアストッパ部30はドア受け面32、ネック部33、保護部34及びフランジ当接面35を備えると共に軟質材で構成した。
【効果】クリップ機構20でドア開口フランジ42を強力に挟むことができるので、ドア開口フランジ42から外れることを防止することができる。また、ドアストッパ部30を軟質材で構成したので、ドア43がドアストッパ部30に当たってもドア43側の塗装面に傷が付く心配はない。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塗装を終えた車体の塗装面に、傷が付くことを防止するために使用する外傷防止治具の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車車体の塗装工程では、下塗り、中塗り、上塗り等の塗装作業を行った後、ドアの窓枠(ドアサッシュフレーム)に主に装飾のためドアサッシュテープを貼着し、その後車体は次工程の車体組立工程へと搬送される。
【0003】
通常、塗装工程において、ドアは車体にヒンジを介して旋回可能に枢着されているだけのため、塗装時にはドアを所定の開度で固定するドアチェッカ治具が取付けられると共に、車体を搬送する際の振動やドアの開閉等により、ドアが所定のクリアランス以下に閉じられて車体と接触し、車体及びドアに外傷が生じることを防止するドア開度保持治具が取付けられている。
【0004】
そして、塗装工程では塗装終了後の車体から前記ドアチェッカ治具及びドア開度保持治具が取外され、その後ドアサッシュテープが貼着された後、ドアと車体をゴムバンドで一体に係止させて次工程の車体組立工程へと搬送される。塗装終了後、ドアサッシュテープの貼着や点検作業によるドアの開閉作業時や、ゴムバンドで係止して搬送する際の振動等によって、ドアとドア開口フランジが接触して外傷が生じる問題があった。
【0005】
また、ドアはドアレギュレータやウィンドガラス等のドア構成部品が収納される袋状部と、ウィンドガラスの昇降をガイドするドアサッシュ部とから構成され、ドアサッシュ部は袋状部に比べ剛性が低いために撓み易く、車体上側のドア開口フランジ、特に後方(車体前方を前として)のコーナー部における外傷が顕著となる不具合があった。
【0006】
そこで、塗装面の外傷防止やドアの開閉保持などが必要となる。これらを満たすために多数の治具が実用化されている。その1つとして、ドア開閉補助装置が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
【特許文献1】実開昭61−006481号公報(第1図)
【0007】
特許文献1を次図に基づいて説明する。
図12は従来の技術の基本構成を説明する図であり、ドア開閉補助装置100は、車体101のドア開口フランジ102に取付ける基板103と、この基板103の側面に固定する板ばね104と、この板ばね104に固定する磁石105とからなる。
【0008】
板ばね104は、ドア106の閉じ動作によって、ドア106が基準点以上に押し込まれたときに撓むことで、磁石105を後退させることによって過剰な押込み力を吸収するように設けられる。これにより、ドア106とドア開口フランジ102の接触を防止する。
【0009】
しかし、特許文献1の基板103の下部は、ドア開口フランジ102への着脱を複数回繰り返すうちに、摩耗して薄くなり、挟持力が徐々に弱まっていく。摩耗が進行していることに気が付かないでドア開閉補助装置100を使用すると、車体の搬送時に、ドア開閉補助装置100がドア開口フランジ102から落下する可能性があり、特に車体上側のドア開口フランジに装着した場合に落下しやすい。この結果、ドア106がドア開口フランジ102に接触して、塗装面に傷が付く虞がある。
【0010】
また、ドア開閉補助装置100は、ドア106を磁石105で固定しているものの車体下側のドア開口フランジ102に装着されるため、ドアサッシュ部が撓みやすく車体上側のドア開口フランジ102に外傷が生じやすい。そのため、塗装後の車体を次工程の車体組立工程へ搬送する際にはドア106とドア開口フランジ102が接触することを防止するため、別途ゴムバンドなどで車体とドアを係止する必要があった。
そこで、ドア開口フランジから外れることなく、且つ塗装面に傷が付くことを防止することができる治具の開発が望まれる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、ドア開口フランジから外れることなく、且つ塗装面に傷が付くことを防止することができる外傷防止治具を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
請求項1に係る発明は、塗装を終えた車体のドア開口フランジに、ドアが当たって塗装面に傷が付くことを防止するために使用する外傷防止治具であって、この外傷防止治具は、一端に第1挟持部、他端に第1把持部を有する第1クリップ部材と、一端に第2挟持部、他端に第2把持部を有する第2クリップ部材と、これらの第1クリップ部材と第2クリップ部材との間に介装され、常時前記第1挟持部及び第2挟持部を互いに当接する方向に付勢するばね部材とを備えるクリップ機構と、前記第1挟持部の外面及び/又は第2挟持部の外面に設けられ、先端がドア側に向けて延出してドア受け面を形成すると共に軟質材で構成したドアストッパ部と、からなることを特徴とする。
【0013】
請求項2に係る発明では、ドアストッパ部は、基端側にドア開口フランジに当接するフランジ当接面を有し、塗装面を保護する保護部が形成されることを特徴とする。
【0014】
請求項3に係る発明では、ドアストッパ部は、フランジ当接面を含む基部部材と、ドア受け面を含む先端部材と、これらの基部部材と先端部材を結合するねじ部と、で構成したことを特徴とする。
【0015】
請求項4に係る発明では、ドアストッパ部は、第1挟持部の外面又は第2挟持部の外面に設けられる基部部材と、ドア受け面を含む先端部材と、これらの基部部材と先端部材を結合するねじ部と、で構成したことを特徴とする。
【0016】
請求項5に係る発明では、ドアストッパ部は、全体又はドア受け面を、ゴム原料に磁性粉末を分散させてなるゴム磁石又はプラスチック原料に磁性粉末を分散させてなるプラスチック磁石で構成したことを特徴とする。
【0017】
請求項6に係る発明では、クリップ機構には、ドアストッパ部のドア受け面に当接したドアを押さえるドア固定部材が取り付けられ、このドア固定部材は、一端にドア挟持部、他端に第3把持部を有する第3クリップ部材と、他端に第4把持部を有し、この第4把持部が第1把持部又は第2把持部に連結されてなる第4クリップ部材と、これらの第3クリップ部材と第4クリップ部材との間に介装され、常時前記ドア挟持部を前記ドアストッパ部のドア受け面に当接する方向に付勢する第2ばね部材とを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
請求項1に係る発明では、第1クリップ部材と第2クリップ部材とばね部材とを備えるクリップ機構で、ドア開口フランジを強力に挟むことができる。クリップ機構は繰り返し使用しても、挟持性能が低下する心配はない。よって、外傷防止治具がドア開口フランジから外れることを防止することができる。
【0019】
また、ドアを受けるドアストッパ部を軟質材で構成したので、ドアがドアストッパ部に当たってもドア側の塗装面に傷が付く心配はない。
よって、請求項1によれば、ドア開口フランジから外れることなく、且つドアの塗装面に傷が付くことを防止することができる外傷防止治具を提供することができる。
【0020】
請求項2に係る発明では、ドアストッパ部の基端側に保護部を備えるので、外傷防止治具を取付ける際にドア開口フランジの塗装面に傷が付く心配はない。よって、ドア開口フランジの塗装面に傷が付くことを防止することができる。
【0021】
請求項3に係る発明では、ドアストッパ部は基部部材、先端部材及びねじ部で構成した。基部部材を固定したまま、先端部材をねじゆるみ方向へ回すことで、先端部材は任意の水平方向位置へ移動することができる。これにより、ドアの開度を変更したいときに、その開度変更を容易に行うことができる。
【0022】
請求項4に係る発明では、ドアストッパ部は基部部材、先端部材及びねじ部で構成した。基部部材を固定したまま、先端部材をねじゆるみ方向へ回すことで、先端部材は任意の水平方向位置へ移動することができる。これにより、ドアの開度を変更したいときに、その開度変更を容易に行うことができる。
【0023】
請求項5に係る発明では、ドアストッパ部の全体又はドア受け面を、ゴム磁石又はプラスチック磁石で構成したことで、ドアストッパ部はドアを吸引して固定することができる。これにより、別途ゴムバンドを用いなくてもドアはドア開口フランジと所定のクリアランスを保持して搬送でき、ドアとドア開口フランジが接触して車体及びドアに傷が付くことを防止することができる。
【0024】
請求項6に係る発明では、第1挟持部と第2挟持部でドア開口フランジを挟持する。次に、ドアストッパ部にドアを当接させ、このドアをドアストッパ部とドア挟持部とで挟持する。1個のクリップ機構でドア開口フランジとドアとを挟持することができ、ドア開口フランジに対してドアがばたつく心配がない。
【0025】
その結果、ドア開口フランジとドアは、別途ゴムバンドを用いることなく所定のクリアランスを保持して搬送でき、ドアとドア開口フランジとが接触して車体及びドアに傷が付くことを確実に防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
本発明を実施するための最良の形態を添付図に基づいて以下に説明する。なお、説明の都合上、請求項1は図6で、請求項2は図1で、請求項3は図5で、請求項4は図7で、請求項5は図8で、請求項6は図10で説明する。
【0027】
図1は本発明に係る外傷防止治具の側面図であり、外傷防止治具10は、クリップ機構20にドアストッパ部30を取り付けてなる可搬式治具である。クリップ機構20及びドアストッパ部30の詳細構造を次に説明する。
【0028】
クリップ機構20は、第1クリップ部材21、第2クリップ部材22及びばね部材としてのねじりコイルばね27を備え、第1クリップ部材21は、一端に第1挟持部23、他端に第1把持部24を有し、第2クリップ部材22は、一端に第2挟持部25、他端に第2把持部26を有する。第1クリップ部材21と第2クリップ部材22との間には、ねじりコイルばね27が介装され、第1挟持部23及び第2挟持部25はねじりコイルばね27によって常時閉じ方向に付勢され、第1把持部24及び第2把持部26をねじりコイルばね27の付勢力に抗してねじりコイルばね27を支点として互いに当接する方向に回動することで、第1挟持部23及び第2挟持部25が離間するように構成する。
【0029】
ドアストッパ部30は、円錐状のストッパ部本体31と、このストッパ部本体31の先端に設けるドア受け面32と、ストッパ部本体31の後端から延長すると共に第1挟持部23に設けるためにストッパ部本体31の直径より小さく形成する円柱状のネック部33と、このネック部33の端部から延長して形成する角柱状の保護部34と、この保護部34の後端に設けるフランジ当接面35と、からなり、ゴム、樹脂等の軟質材で構成する。
【0030】
なお、ドアストッパ部30の各部の形状は、前述のとおりストッパ部本体31は円錐状、ネック部33は円柱状、保護部34は角柱状としたが、これらの形状は角柱状、円柱状、円錐状に自由に組み合わせて形成することができるため、他の形状に変更することは差し支えない。
【0031】
図2は図1の2矢視図であり、クリップ機構20は、つる巻き状に成形されたねじりコイルばね27と、このねじりコイルばね27の両端部から同方向に延設すると共に逆U字形に形成する第1挟持部23及び第2挟持部25と、これらの第1挟持部23及び第2挟持部25から同方向に延設すると共にJ字形に形成する第1把持部24及び第2把持部26とから構成され、第1挟持部23をネック部33に巻き付けることでドアストッパ部30と一体に結合される。
【0032】
なお、クリップ機構20とドアストッパ部30の結合形式は、前述のとおりネック部33に第1挟持部23を逆U字形に巻き付けることにしたが、例えば接着材、締結部品を用いてネック部33と第1挟持部23を結合することは可能であるため、他の形式に変更することは差し支えない。
【0033】
ここで図1に戻って、外傷防止治具10は、一端に第1挟持部23、他端に第1把持部24を有する第1クリップ部材21と、一端に第2挟持部25、他端に第2把持部26を有する第2クリップ部材22と、これらの第1クリップ部材21と第2クリップ部材22との間に介装され、常時第1挟持部23及び第2挟持部25を互いに当接する方向に付勢するねじりコイルばね27とを備えるクリップ機構20と、第1挟持部23の外面に設けられ、先端が延出してドア受け面32を形成すると共に軟質材で構成したドアストッパ部30と、からなり、ドアストッパ部30は、基端側にフランジ当接面35を有し、塗装面を保護する保護部34が形成されることを特徴とする。
【0034】
なお、ドアストッパ部30は、上記ではネック部33に第1挟持部23を巻き付けてクリップ機構20と一体化させたが、ドアストッパ部30の取付方向を変えるときには、第2挟持部25をネック部33に巻き付けてドアストッパ部30とクリップ機構20を一体化させても差し支えない。
【0035】
以上の構成からなる外傷防止治具10の作用を次に説明する。
図3は本発明に係る外傷防止治具の作用図である。
(a)は準備状態を示し、塗装終了後、矢印のように第1把持部24と第2把持部26を互いに接近させることで、第2挟持部25とフランジ当接面35を互いに離し、車体41のドア開口フランジ42に外傷防止治具10を装着する。
【0036】
(b)は装着後の治具とドアの接触状態を示す。その後、ドア43を開放してドアサッシュテープを貼着し、その後ドア43を外傷防止治具10に当接させた状態でゴムバンドを装着してドア43を車体41に係止する。この状態で次工程の車体組立工程へ搬送し、車体組立工程においてドア43にドア構成部品を組み付けるため、ドア43を車体41から取外すドア取外し工程へと搬送され、ゴムバンドと外傷防止治具10が取外され、その後ドアは取外されることになる。
【0037】
外傷防止治具10は、ドア43をドアストッパ部30のドア受け面32で受ける。これにより、ドアストッパ部30がスペーサの役割を果たすため、ドア43がドア開口フランジ42に当たる心配はない。
【0038】
図4は本発明に係る外傷防止治具を取付けた車体の斜視図であり、外傷防止治具10、10は、台車44の上に載せた車体41のフロントドア開口フランジ45及びリアドア開口フランジ46の後端に各々取付けられている。
【0039】
ここで図1に戻って、外傷防止治具10は、クリップ機構20に備えた第2挟持部25と、ドアストッパ部30に備えた保護部34のフランジ当接面35と、でドア開口フランジ(図4符号45又は46)を挟み込むことができる。ドア開口フランジの表面は通常平面で形成されるため、ドア開口フランジのどの部位であってもフランジ当接面35を垂直に当てることができる。
【0040】
また、ドアストッパ部30は保護部34を備えるため、ドア開口フランジの塗装面に傷が付く心配はない。
【0041】
再び図4に戻って、したがって、外傷防止治具10は、フロントドア開口フランジ45及びリアドア開口フランジ46のどの部位であってもフランジ当接面35を垂直に当てることができるため、取付位置が特別に限定されることはない。
【0042】
以上のように、図3にて、外傷防止治具10は、クリップ機構20で、ドア開口フランジ42を強力に挟むことができる。クリップ機構20は繰り返し使用しても、挟持性能が低下する心配はない。よって、外傷防止治具10がドア開口フランジ42から外れることを防止することができる。
また、ドアストッパ部30を軟質材で構成したので、ドア43がドアストッパ部30に当たってもドア側の塗装面に傷が付く心配はない。
【0043】
そして、ドアストッパ部30に保護部34を備えるので、外傷防止治具10を取付ける際にドア開口フランジ42の塗装面に傷が付く心配はない。
【0044】
次にドアストッパ部30の構造を変更した例を説明する。
図5は図1の変更実施例を示す断面図であり、図1と共通部分については、符号を流用して説明を省略する。
外傷防止治具10Bは、クリップ機構20にドアストッパ部30Bを取り付けてなる可搬式治具である。クリップ機構20の詳細構造は図1及び図2で説明したので、ここでは説明を省略する。
【0045】
ドアストッパ部30Bは、フランジ当接面35を含むと共に角柱状に形成する基部部材36と、ドア受け面32を含むと共に円錐状に形成する先端部材37と、これらの基部部材36と先端部材37を結合するために基部部材36から先端部材37へ延長して設けるねじ部38と、で構成したことを特徴とする。
【0046】
なお、ドアストッパ部30Bの各部の形状は、前述のとおり基部部材36は角柱状、先端部材37は円錐状としたが、これらの形状は角柱状、円柱状、円錐状に自由に組み合わせて形成することができるため、他の形状に変更することは差し支えない。
【0047】
加えて、ドアストッパ部30Bは、第1挟持部23をねじ部38に巻き付けることでクリップ機構20と一体に結合される。
【0048】
なお、ドアストッパ部30Bは、上記ではねじ部38に第1挟持部23を巻き付けてクリップ機構20と一体化させたが、ドアストッパ部30Bの取付方向を変えるときには、第2挟持部25をねじ部38に巻き付けてドアストッパ部30Bとクリップ機構20を一体化させても差し支えない。
【0049】
外傷防止治具10Bは、ドアストッパ部30Bを基部部材36、先端部材37及びねじ部38で構成した。基部部材36を固定したまま先端部材37をねじゆるみ方向へ回すことで、先端部材37は任意の水平方向位置へ移動することができる。これにより、ドアの開度を変更したいときに、その開度変更を容易に行うことができる。
【0050】
次に図1の外傷防止治具10とは異なる構造の外傷防止治具を説明する。
図6は本発明に係る別の外傷防止治具の断面図であり、図1と共通部分については、符号を流用して説明を省略する。主たる変更点は、保護部34を無くしたことである。
【0051】
外傷防止治具10Cは、クリップ機構20にドアストッパ部30Cを取り付けてなる可搬式治具である。クリップ機構20の詳細構造は図1及び図2で説明したので、ここでは説明を省略する。
【0052】
ドアストッパ部30Cは、円錐状のストッパ部本体31と、このストッパ部本体31の先端に設けるドア受け面32と、ストッパ部本体31の後端から延長してストッパ部本体31の直径より小さく形成する円柱状の後端部52とからなり、クリップ機構20に設ける第1挟持部23に後端部52を取り付け、第1挟持部23と端面53との間に例えば接着剤51を塗布することでクリップ機構20とドアストッパ部30Cを一体化し、ゴム、樹脂等の軟質材で構成したことを特徴とする。
【0053】
なお、ドアストッパ部30Cの各部の形状は、前述のとおりストッパ部本体31は円錐状、後端部52は円柱状としたが、これらの形状は角柱状、円柱状、円錐状に自由に組み合わせて形成することができるため、他の形状に変更することは差し支えない。
【0054】
また、ドアストッパ部30Cは、上記では後端部52に第1挟持部23を取り付けてクリップ機構20と一体化させたが、ドアストッパ部30Cの取付方向を変えるときには、第2挟持部25を後端部52に取り付けてドアストッパ部30Cとクリップ機構20を一体化させても差し支えない。
【0055】
さらに、外傷防止治具10Cは、第1挟持部23及び第2挟持部25をゴム、樹脂等の軟質材で被覆することによって、ドア開口フランジ42の塗装面に傷が付くことを防止することにも対応可能である。
【0056】
外傷防止治具10Cは、クリップ機構20で、ドア開口フランジ42を強力に挟むことができる。クリップ機構20は繰り返し使用しても、挟持性能が低下する心配はない。よって、外傷防止治具10Cがドア開口フランジ42から外れることを防止することができる。
【0057】
また、ドアストッパ部30Cを軟質材で構成したので、ドア43がドアストッパ部30Cに当たってもドア側の塗装面に傷が付く心配はない。
【0058】
図7は本発明に係る更に別の外傷防止治具の断面図であり、図1と共通部分については、符号を流用して説明を省略する。
外傷防止治具10Dは、クリップ機構20にドアストッパ部30Dを取り付けてなる可搬式治具である。クリップ機構20の詳細構造は図1及び図2で説明したので、ここでは説明を省略する。
【0059】
ドアストッパ部30Dは、クリップ機構20の第1挟持部23に接着剤51を塗布して結合されると共に円柱状に形成する基部部材36と、円錐状に形成する先端部材37と、これらの基部部材36と先端部材37を結合するためのねじ部38と、から構成される。
【0060】
なお、ドアストッパ部30Dの各部の形状は、前述のとおり基部部材36は円柱状、先端部材37は円錐状としたが、これらの形状は角柱状、円柱状、円錐状に自由に組み合わせて形成することができるため、他の形状に変更することは差し支えない。
【0061】
また、ドアストッパ部30Dは、上記では基部部材36に第1挟持部23を結合させてクリップ機構20と一体化したが、ドアストッパ部30Dの取付方向を変えるときには、第2挟持部25を基部部材36に結合させてドアストッパ部30Dとクリップ機構20を一体化しても差し支えない。
【0062】
さらに、外傷防止治具10Dは、第1挟持部23及び第2挟持部25をゴム、樹脂等の軟質材で被覆することによって、ドア開口フランジ42の塗装面に傷が付くことを防止することにも対応可能である。
【0063】
外傷防止治具10Dは、基部部材36を固定したまま、先端部材37をねじゆるみ方向へ回すことで、先端部材37は任意の水平方向位置へ移動することができる。これにより、ドアの開度を変更したいときに、その開度変更を容易に行うことができる。
【0064】
図8は本発明に係るドアストッパ部の変更実施例図であり、図1と共通部分については、符号を流用して説明を省略する。
ドアストッパ部30Eは、ドア受け面32を、ゴム原料に磁性粉末を分散させてなるゴム磁石39で構成したことを特徴とする。
【0065】
ドア受け面32を、ゴム磁石39で構成したことで、ドアストッパ部30Eはドアを吸引して固定することができる。これにより、別途ゴムバンドを用いなくてもドアはドア開口フランジと所定のクリアランスを保持して搬送でき、ドアとドア開口フランジが接触して車体及びドアに傷が付くことを防止することができる。
【0066】
なお、この例ではドア受け面32をゴム磁石39で構成したが、これに限らずドア受け面32をプラスチック原料に磁性粉末を分散させてなるプラスチック磁石に変更することは差し支えない。
さらに、この例ではドア受け面32のみをゴム磁石39で構成したが、これに限らずドアストッパ部30Eの全体をゴム磁石又はプラスチック磁石に変更することは差し支えない。
【0067】
上記ドアストッパ部30Eを備えた外傷防止治具よりも、確実にドアを固定できる外傷防止治具を次に説明する。
【0068】
図9は図5の変更実施例を示す分解斜視図であり、外傷防止治具10Eは、クリップ機構20B及びドアストッパ部30Bと、先端部材37と、ドア固定部材60と、2本のボルト61、61と、2枚のばね座金62、62と、4枚の平座金63、63、63、63と、2個のナット64、64とからなる可搬式治具である。
【0069】
図10は図5の変更実施例を示す側面図であり、図5と共通部分については、符号を流用して説明を省略する。
外傷防止治具10Eは、クリップ機構20Bと、ドアストッパ部30Bと、クリップ機構20Bと一体であるドア固定部材60とからなる。
【0070】
クリップ機構20Bは、第1クリップ部材21B、第2クリップ部材22B及びねじりコイルばね27を備え、第1クリップ部材21Bは、一端に略逆U字形に形成される(図9参照)第1挟持部23、他端に略U字形に形成される(図9参照)第1把持部24Bを有し、第2クリップ部材22Bは、一端に第1挟持部23に平行に形成されると共に略逆U字形に形成される(図9参照)第2挟持部25B、他端に第2挟持部25Bに非平行に形成されると共に略U字形に形成される(図9参照)第2把持部26Bを有する。
【0071】
第1クリップ部材21Bと第2クリップ部材22Bとの間には、ねじりコイルばね27が介装され、第1挟持部23及び第2挟持部25Bはねじりコイルばね27によって常時閉じ方向に付勢され、第1把持部24B及び第2把持部26Bをねじりコイルばね27の付勢力に抗してねじりコイルばね27を支点として互いに当接する方向に回動することで、第1挟持部23及び第2挟持部25Bが離間するように構成される。
【0072】
また、第2挟持部25Bには、車体のドア開口フランジに当接させる例えば樹脂製のドア開口フランジ保護部材65が被覆されている。このドア開口フランジ保護部材65によって、ドア開口フランジの塗装面に傷が付くことを防ぐことができる。
【0073】
なお、ドア開口フランジ保護部材65の材質は、樹脂製で説明したが、ゴムを適用することができるため、他の軟質材料に変更することは差し支えない。
クリップ機構20Bと一体のドア固定部材60の詳細構造は後述する。
【0074】
ドアストッパ部30Bは、第1挟持部23をねじ部38に巻き付けることでクリップ機構20Bと一体に結合される。
なお、ドアストッパ部30Bの詳細構造は図5と同様であるため、説明を省略する。
【0075】
また、ドアストッパ部30Bは、上記ではねじ部38に第1挟持部23を巻き付けてクリップ機構20Bと一体化させたが、ドアストッパ部30Bの取付方向を変えるときには、第2挟持部25Bをねじ部38に巻き付けてドアストッパ部30Bとクリップ機構20Bを一体化させても差し支えない。同時に、ドア開口フランジ保護部材65の取付位置は、第2挟持部25Bから第1挟持部23に変更してもよい。
【0076】
そして、この例では外傷防止治具10Eに用いるドアストッパ部を、ドアストッパ部30Bで説明したが、このドアストッパ部30Bの代わりにドアストッパ部30、30C、30D、30Eのいずれも適用できることは言うまでもない。
【0077】
ドア固定部材60は、一端に略円弧状に形成する(図9参照)ドア挟持部66、他端に略U字形に形成される(図9参照)第3把持部67を有する第3クリップ部材68と、他端に略U字形に形成された(図9参照)第4把持部69を有し、この第4把持部69が第1把持部24Bに2組のボルト61及びナット64で連結されてなる第4クリップ部材71と、これらの第3クリップ部材68と第4クリップ部材71との間に介装され、常時ドア挟持部66をドアストッパ部30Bのドア受け面32に当接する方向に付勢する第2ばね部材としての第2ねじりコイルばね72とを備える、クリップ機構20Bと一体の部材である。
【0078】
なお、ドア固定部材60は、上記では第4把持部69を第1把持部24Bに連結させてクリップ機構20Bと一体化したが、ドアストッパ部30Bを第2挟持部25Bで巻き付けると共に、ドア開口フランジ保護部材65を第1挟持部23に取り付けた場合には、第4把持部69を第2把持部26Bに連結させることでドア固定部材60とクリップ機構20Bを一体化してもよい。この取付変更を行っても、外傷防止治具10Eで得られる効果は変わることがない。
【0079】
加えて、ドア挟持部66の外周には、後述するドアのウィンドガラス溝部に当接させる例えば樹脂製のドア保護部材73が被覆されている。このドア保護部材73によって、ドアの塗装面に傷が付くことなく、ドアを車体に係止することができる。
【0080】
なお、ドア保護部材73の材質は、樹脂製で説明したが、ゴムを適用することができるため、他の軟質材料に変更することは差し支えない。
【0081】
また、外傷防止治具10Eに用いるドアストッパ部の全体又はドア受け面を、ゴム磁石又はプラスチック磁石で構成すれば、ドアは磁石で吸引されると共にドア挟持部66及びドア保護部材73で係止されるので、ドアを更に確実に固定することができる。
【0082】
ドア挟持部66及びドア保護部材73は、常時第2ねじりコイルばね72の付勢力でドアストッパ部30Bのドア受け面32に当接している。
【0083】
一方、第2ねじりコイルばね72の付勢力に抗して、第3把持部67を第2ねじりコイルばね72を支点として第4把持部69及び第1把持部24Bに当接する方向に回動させると、ドア挟持部66及びドア保護部材73はドアストッパ部30Bのドア受け面32から離間する。これでドア受け面32とドア挟持部66及びドア保護部材73との間にドアを挟持することができる。
以上の構成からなる外傷防止治具10Eの作用を次に説明する。
【0084】
図11は図10の作用図であり、(a)にて、塗装終了後、矢印のように第2把持部26Bを第1把持部24B及び第4把持部69に接近させることで、第2挟持部25B及びドア開口フランジ保護部材65をフランジ当接面35から離し、車体41のドア開口フランジ42に外傷防止治具10Eを装着する。
【0085】
(b)にて、ドア43を開放してドアサッシュテープを貼着し、その後第3把持部67を第4把持部69及び第1把持部24Bに接近させ、ドアストッパ部30Bのドア受け面32にドア43を当接させる。
【0086】
(c)にて、(b)の状態のままで第3把持部67への押圧力を解除することで、ドア保護部材73をドア43のウィンドガラス取付溝部74に当接させる。これで車体41にドア43を係止することができる。
【0087】
外傷防止治具10Eを用いて、第1挟持部23と第2挟持部25Bでドア開口フランジ42を挟持し、次にドアストッパ部30Bのドア受け面32にドア43を当接させ、このドア43をドアストッパ部30Bとドア挟持部66とで挟持する。外傷防止治具10Eは、ドア固定部材60を含む1個のクリップ機構20Bでドア開口フランジ42とドア43とを挟持することができるので、ドア開口フランジ42に対してドア43がばたつく心配がない。
【0088】
その結果、ドア開口フランジ42とドア43は、別途ゴムバンドを用いることなく所定のクリアランスを保持して搬送でき、ドア43とドア開口フランジ42とが接触して車体41及びドア43に傷が付くことを確実に防止することができる。
【0089】
尚、本発明に用いるドアストッパ部は、実施の形態では、第1挟持部の外面、
第2挟持部の外面のいずれかに設けることで説明したが、第1挟持部の外面と第2挟持部の外面に同時に設けても差し支えない。
【0090】
これにより、一方のドアストッパ部が摩耗又は欠損した場合、外傷防止治具の装着方向を変えることで、他方のドアストッパ部を使用することができる。そのため、ドアとドア開口フランジが接触してドア及びドア開口フランジに傷が付くことを確実に防止することができる。
【産業上の利用可能性】
【0091】
本発明の外傷防止治具は、塗装を終えた車体に使用する治具に好適である。
【図面の簡単な説明】
【0092】
【図1】本発明に係る外傷防止治具の側面図である。
【図2】図1の2矢視図である。
【図3】本発明に係る外傷防止治具の作用図である。
【図4】本発明に係る外傷防止治具を取付けた車体の斜視図である。
【図5】図1の変更実施例を示す断面図である。
【図6】本発明に係る別の外傷防止治具の断面図である。
【図7】本発明に係る更に別の外傷防止治具の断面図である。
【図8】本発明に係るドアストッパ部の変更実施例図である。
【図9】図5の変更実施例を示す分解斜視図である。
【図10】図5の変更実施例を示す側面図である。
【図11】図10の作用図である。
【図12】従来の技術の基本構成を説明する図である。
【符号の説明】
【0093】
10、10B、10C、10D、10E…外傷防止治具、20、20B…クリップ機構、21、21B…第1クリップ部材、22、22B…第2クリップ部材、23…第1挟持部、24、24B…第1把持部、25、25B…第2挟持部、26、26B…第2把持部、27…ねじりコイルばね(ばね部材)、30、30B、30C、30D、30E…ドアストッパ部、32…ドア受け面、33…ネック部、34…保護部、35…フランジ当接面、36…基部部材、37…先端部材、38…ねじ部、39…ゴム磁石、41…車体、42…ドア開口フランジ、43…ドア、60…ドア固定部材、66…ドア挟持部、67…第3把持部、68…第3クリップ部材、69…第4把持部、71…第4クリップ部材、72…第2ねじりコイルばね(第2ばね部材)。
【技術分野】
【0001】
本発明は、塗装を終えた車体の塗装面に、傷が付くことを防止するために使用する外傷防止治具の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車車体の塗装工程では、下塗り、中塗り、上塗り等の塗装作業を行った後、ドアの窓枠(ドアサッシュフレーム)に主に装飾のためドアサッシュテープを貼着し、その後車体は次工程の車体組立工程へと搬送される。
【0003】
通常、塗装工程において、ドアは車体にヒンジを介して旋回可能に枢着されているだけのため、塗装時にはドアを所定の開度で固定するドアチェッカ治具が取付けられると共に、車体を搬送する際の振動やドアの開閉等により、ドアが所定のクリアランス以下に閉じられて車体と接触し、車体及びドアに外傷が生じることを防止するドア開度保持治具が取付けられている。
【0004】
そして、塗装工程では塗装終了後の車体から前記ドアチェッカ治具及びドア開度保持治具が取外され、その後ドアサッシュテープが貼着された後、ドアと車体をゴムバンドで一体に係止させて次工程の車体組立工程へと搬送される。塗装終了後、ドアサッシュテープの貼着や点検作業によるドアの開閉作業時や、ゴムバンドで係止して搬送する際の振動等によって、ドアとドア開口フランジが接触して外傷が生じる問題があった。
【0005】
また、ドアはドアレギュレータやウィンドガラス等のドア構成部品が収納される袋状部と、ウィンドガラスの昇降をガイドするドアサッシュ部とから構成され、ドアサッシュ部は袋状部に比べ剛性が低いために撓み易く、車体上側のドア開口フランジ、特に後方(車体前方を前として)のコーナー部における外傷が顕著となる不具合があった。
【0006】
そこで、塗装面の外傷防止やドアの開閉保持などが必要となる。これらを満たすために多数の治具が実用化されている。その1つとして、ドア開閉補助装置が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
【特許文献1】実開昭61−006481号公報(第1図)
【0007】
特許文献1を次図に基づいて説明する。
図12は従来の技術の基本構成を説明する図であり、ドア開閉補助装置100は、車体101のドア開口フランジ102に取付ける基板103と、この基板103の側面に固定する板ばね104と、この板ばね104に固定する磁石105とからなる。
【0008】
板ばね104は、ドア106の閉じ動作によって、ドア106が基準点以上に押し込まれたときに撓むことで、磁石105を後退させることによって過剰な押込み力を吸収するように設けられる。これにより、ドア106とドア開口フランジ102の接触を防止する。
【0009】
しかし、特許文献1の基板103の下部は、ドア開口フランジ102への着脱を複数回繰り返すうちに、摩耗して薄くなり、挟持力が徐々に弱まっていく。摩耗が進行していることに気が付かないでドア開閉補助装置100を使用すると、車体の搬送時に、ドア開閉補助装置100がドア開口フランジ102から落下する可能性があり、特に車体上側のドア開口フランジに装着した場合に落下しやすい。この結果、ドア106がドア開口フランジ102に接触して、塗装面に傷が付く虞がある。
【0010】
また、ドア開閉補助装置100は、ドア106を磁石105で固定しているものの車体下側のドア開口フランジ102に装着されるため、ドアサッシュ部が撓みやすく車体上側のドア開口フランジ102に外傷が生じやすい。そのため、塗装後の車体を次工程の車体組立工程へ搬送する際にはドア106とドア開口フランジ102が接触することを防止するため、別途ゴムバンドなどで車体とドアを係止する必要があった。
そこで、ドア開口フランジから外れることなく、且つ塗装面に傷が付くことを防止することができる治具の開発が望まれる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、ドア開口フランジから外れることなく、且つ塗装面に傷が付くことを防止することができる外傷防止治具を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
請求項1に係る発明は、塗装を終えた車体のドア開口フランジに、ドアが当たって塗装面に傷が付くことを防止するために使用する外傷防止治具であって、この外傷防止治具は、一端に第1挟持部、他端に第1把持部を有する第1クリップ部材と、一端に第2挟持部、他端に第2把持部を有する第2クリップ部材と、これらの第1クリップ部材と第2クリップ部材との間に介装され、常時前記第1挟持部及び第2挟持部を互いに当接する方向に付勢するばね部材とを備えるクリップ機構と、前記第1挟持部の外面及び/又は第2挟持部の外面に設けられ、先端がドア側に向けて延出してドア受け面を形成すると共に軟質材で構成したドアストッパ部と、からなることを特徴とする。
【0013】
請求項2に係る発明では、ドアストッパ部は、基端側にドア開口フランジに当接するフランジ当接面を有し、塗装面を保護する保護部が形成されることを特徴とする。
【0014】
請求項3に係る発明では、ドアストッパ部は、フランジ当接面を含む基部部材と、ドア受け面を含む先端部材と、これらの基部部材と先端部材を結合するねじ部と、で構成したことを特徴とする。
【0015】
請求項4に係る発明では、ドアストッパ部は、第1挟持部の外面又は第2挟持部の外面に設けられる基部部材と、ドア受け面を含む先端部材と、これらの基部部材と先端部材を結合するねじ部と、で構成したことを特徴とする。
【0016】
請求項5に係る発明では、ドアストッパ部は、全体又はドア受け面を、ゴム原料に磁性粉末を分散させてなるゴム磁石又はプラスチック原料に磁性粉末を分散させてなるプラスチック磁石で構成したことを特徴とする。
【0017】
請求項6に係る発明では、クリップ機構には、ドアストッパ部のドア受け面に当接したドアを押さえるドア固定部材が取り付けられ、このドア固定部材は、一端にドア挟持部、他端に第3把持部を有する第3クリップ部材と、他端に第4把持部を有し、この第4把持部が第1把持部又は第2把持部に連結されてなる第4クリップ部材と、これらの第3クリップ部材と第4クリップ部材との間に介装され、常時前記ドア挟持部を前記ドアストッパ部のドア受け面に当接する方向に付勢する第2ばね部材とを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
請求項1に係る発明では、第1クリップ部材と第2クリップ部材とばね部材とを備えるクリップ機構で、ドア開口フランジを強力に挟むことができる。クリップ機構は繰り返し使用しても、挟持性能が低下する心配はない。よって、外傷防止治具がドア開口フランジから外れることを防止することができる。
【0019】
また、ドアを受けるドアストッパ部を軟質材で構成したので、ドアがドアストッパ部に当たってもドア側の塗装面に傷が付く心配はない。
よって、請求項1によれば、ドア開口フランジから外れることなく、且つドアの塗装面に傷が付くことを防止することができる外傷防止治具を提供することができる。
【0020】
請求項2に係る発明では、ドアストッパ部の基端側に保護部を備えるので、外傷防止治具を取付ける際にドア開口フランジの塗装面に傷が付く心配はない。よって、ドア開口フランジの塗装面に傷が付くことを防止することができる。
【0021】
請求項3に係る発明では、ドアストッパ部は基部部材、先端部材及びねじ部で構成した。基部部材を固定したまま、先端部材をねじゆるみ方向へ回すことで、先端部材は任意の水平方向位置へ移動することができる。これにより、ドアの開度を変更したいときに、その開度変更を容易に行うことができる。
【0022】
請求項4に係る発明では、ドアストッパ部は基部部材、先端部材及びねじ部で構成した。基部部材を固定したまま、先端部材をねじゆるみ方向へ回すことで、先端部材は任意の水平方向位置へ移動することができる。これにより、ドアの開度を変更したいときに、その開度変更を容易に行うことができる。
【0023】
請求項5に係る発明では、ドアストッパ部の全体又はドア受け面を、ゴム磁石又はプラスチック磁石で構成したことで、ドアストッパ部はドアを吸引して固定することができる。これにより、別途ゴムバンドを用いなくてもドアはドア開口フランジと所定のクリアランスを保持して搬送でき、ドアとドア開口フランジが接触して車体及びドアに傷が付くことを防止することができる。
【0024】
請求項6に係る発明では、第1挟持部と第2挟持部でドア開口フランジを挟持する。次に、ドアストッパ部にドアを当接させ、このドアをドアストッパ部とドア挟持部とで挟持する。1個のクリップ機構でドア開口フランジとドアとを挟持することができ、ドア開口フランジに対してドアがばたつく心配がない。
【0025】
その結果、ドア開口フランジとドアは、別途ゴムバンドを用いることなく所定のクリアランスを保持して搬送でき、ドアとドア開口フランジとが接触して車体及びドアに傷が付くことを確実に防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
本発明を実施するための最良の形態を添付図に基づいて以下に説明する。なお、説明の都合上、請求項1は図6で、請求項2は図1で、請求項3は図5で、請求項4は図7で、請求項5は図8で、請求項6は図10で説明する。
【0027】
図1は本発明に係る外傷防止治具の側面図であり、外傷防止治具10は、クリップ機構20にドアストッパ部30を取り付けてなる可搬式治具である。クリップ機構20及びドアストッパ部30の詳細構造を次に説明する。
【0028】
クリップ機構20は、第1クリップ部材21、第2クリップ部材22及びばね部材としてのねじりコイルばね27を備え、第1クリップ部材21は、一端に第1挟持部23、他端に第1把持部24を有し、第2クリップ部材22は、一端に第2挟持部25、他端に第2把持部26を有する。第1クリップ部材21と第2クリップ部材22との間には、ねじりコイルばね27が介装され、第1挟持部23及び第2挟持部25はねじりコイルばね27によって常時閉じ方向に付勢され、第1把持部24及び第2把持部26をねじりコイルばね27の付勢力に抗してねじりコイルばね27を支点として互いに当接する方向に回動することで、第1挟持部23及び第2挟持部25が離間するように構成する。
【0029】
ドアストッパ部30は、円錐状のストッパ部本体31と、このストッパ部本体31の先端に設けるドア受け面32と、ストッパ部本体31の後端から延長すると共に第1挟持部23に設けるためにストッパ部本体31の直径より小さく形成する円柱状のネック部33と、このネック部33の端部から延長して形成する角柱状の保護部34と、この保護部34の後端に設けるフランジ当接面35と、からなり、ゴム、樹脂等の軟質材で構成する。
【0030】
なお、ドアストッパ部30の各部の形状は、前述のとおりストッパ部本体31は円錐状、ネック部33は円柱状、保護部34は角柱状としたが、これらの形状は角柱状、円柱状、円錐状に自由に組み合わせて形成することができるため、他の形状に変更することは差し支えない。
【0031】
図2は図1の2矢視図であり、クリップ機構20は、つる巻き状に成形されたねじりコイルばね27と、このねじりコイルばね27の両端部から同方向に延設すると共に逆U字形に形成する第1挟持部23及び第2挟持部25と、これらの第1挟持部23及び第2挟持部25から同方向に延設すると共にJ字形に形成する第1把持部24及び第2把持部26とから構成され、第1挟持部23をネック部33に巻き付けることでドアストッパ部30と一体に結合される。
【0032】
なお、クリップ機構20とドアストッパ部30の結合形式は、前述のとおりネック部33に第1挟持部23を逆U字形に巻き付けることにしたが、例えば接着材、締結部品を用いてネック部33と第1挟持部23を結合することは可能であるため、他の形式に変更することは差し支えない。
【0033】
ここで図1に戻って、外傷防止治具10は、一端に第1挟持部23、他端に第1把持部24を有する第1クリップ部材21と、一端に第2挟持部25、他端に第2把持部26を有する第2クリップ部材22と、これらの第1クリップ部材21と第2クリップ部材22との間に介装され、常時第1挟持部23及び第2挟持部25を互いに当接する方向に付勢するねじりコイルばね27とを備えるクリップ機構20と、第1挟持部23の外面に設けられ、先端が延出してドア受け面32を形成すると共に軟質材で構成したドアストッパ部30と、からなり、ドアストッパ部30は、基端側にフランジ当接面35を有し、塗装面を保護する保護部34が形成されることを特徴とする。
【0034】
なお、ドアストッパ部30は、上記ではネック部33に第1挟持部23を巻き付けてクリップ機構20と一体化させたが、ドアストッパ部30の取付方向を変えるときには、第2挟持部25をネック部33に巻き付けてドアストッパ部30とクリップ機構20を一体化させても差し支えない。
【0035】
以上の構成からなる外傷防止治具10の作用を次に説明する。
図3は本発明に係る外傷防止治具の作用図である。
(a)は準備状態を示し、塗装終了後、矢印のように第1把持部24と第2把持部26を互いに接近させることで、第2挟持部25とフランジ当接面35を互いに離し、車体41のドア開口フランジ42に外傷防止治具10を装着する。
【0036】
(b)は装着後の治具とドアの接触状態を示す。その後、ドア43を開放してドアサッシュテープを貼着し、その後ドア43を外傷防止治具10に当接させた状態でゴムバンドを装着してドア43を車体41に係止する。この状態で次工程の車体組立工程へ搬送し、車体組立工程においてドア43にドア構成部品を組み付けるため、ドア43を車体41から取外すドア取外し工程へと搬送され、ゴムバンドと外傷防止治具10が取外され、その後ドアは取外されることになる。
【0037】
外傷防止治具10は、ドア43をドアストッパ部30のドア受け面32で受ける。これにより、ドアストッパ部30がスペーサの役割を果たすため、ドア43がドア開口フランジ42に当たる心配はない。
【0038】
図4は本発明に係る外傷防止治具を取付けた車体の斜視図であり、外傷防止治具10、10は、台車44の上に載せた車体41のフロントドア開口フランジ45及びリアドア開口フランジ46の後端に各々取付けられている。
【0039】
ここで図1に戻って、外傷防止治具10は、クリップ機構20に備えた第2挟持部25と、ドアストッパ部30に備えた保護部34のフランジ当接面35と、でドア開口フランジ(図4符号45又は46)を挟み込むことができる。ドア開口フランジの表面は通常平面で形成されるため、ドア開口フランジのどの部位であってもフランジ当接面35を垂直に当てることができる。
【0040】
また、ドアストッパ部30は保護部34を備えるため、ドア開口フランジの塗装面に傷が付く心配はない。
【0041】
再び図4に戻って、したがって、外傷防止治具10は、フロントドア開口フランジ45及びリアドア開口フランジ46のどの部位であってもフランジ当接面35を垂直に当てることができるため、取付位置が特別に限定されることはない。
【0042】
以上のように、図3にて、外傷防止治具10は、クリップ機構20で、ドア開口フランジ42を強力に挟むことができる。クリップ機構20は繰り返し使用しても、挟持性能が低下する心配はない。よって、外傷防止治具10がドア開口フランジ42から外れることを防止することができる。
また、ドアストッパ部30を軟質材で構成したので、ドア43がドアストッパ部30に当たってもドア側の塗装面に傷が付く心配はない。
【0043】
そして、ドアストッパ部30に保護部34を備えるので、外傷防止治具10を取付ける際にドア開口フランジ42の塗装面に傷が付く心配はない。
【0044】
次にドアストッパ部30の構造を変更した例を説明する。
図5は図1の変更実施例を示す断面図であり、図1と共通部分については、符号を流用して説明を省略する。
外傷防止治具10Bは、クリップ機構20にドアストッパ部30Bを取り付けてなる可搬式治具である。クリップ機構20の詳細構造は図1及び図2で説明したので、ここでは説明を省略する。
【0045】
ドアストッパ部30Bは、フランジ当接面35を含むと共に角柱状に形成する基部部材36と、ドア受け面32を含むと共に円錐状に形成する先端部材37と、これらの基部部材36と先端部材37を結合するために基部部材36から先端部材37へ延長して設けるねじ部38と、で構成したことを特徴とする。
【0046】
なお、ドアストッパ部30Bの各部の形状は、前述のとおり基部部材36は角柱状、先端部材37は円錐状としたが、これらの形状は角柱状、円柱状、円錐状に自由に組み合わせて形成することができるため、他の形状に変更することは差し支えない。
【0047】
加えて、ドアストッパ部30Bは、第1挟持部23をねじ部38に巻き付けることでクリップ機構20と一体に結合される。
【0048】
なお、ドアストッパ部30Bは、上記ではねじ部38に第1挟持部23を巻き付けてクリップ機構20と一体化させたが、ドアストッパ部30Bの取付方向を変えるときには、第2挟持部25をねじ部38に巻き付けてドアストッパ部30Bとクリップ機構20を一体化させても差し支えない。
【0049】
外傷防止治具10Bは、ドアストッパ部30Bを基部部材36、先端部材37及びねじ部38で構成した。基部部材36を固定したまま先端部材37をねじゆるみ方向へ回すことで、先端部材37は任意の水平方向位置へ移動することができる。これにより、ドアの開度を変更したいときに、その開度変更を容易に行うことができる。
【0050】
次に図1の外傷防止治具10とは異なる構造の外傷防止治具を説明する。
図6は本発明に係る別の外傷防止治具の断面図であり、図1と共通部分については、符号を流用して説明を省略する。主たる変更点は、保護部34を無くしたことである。
【0051】
外傷防止治具10Cは、クリップ機構20にドアストッパ部30Cを取り付けてなる可搬式治具である。クリップ機構20の詳細構造は図1及び図2で説明したので、ここでは説明を省略する。
【0052】
ドアストッパ部30Cは、円錐状のストッパ部本体31と、このストッパ部本体31の先端に設けるドア受け面32と、ストッパ部本体31の後端から延長してストッパ部本体31の直径より小さく形成する円柱状の後端部52とからなり、クリップ機構20に設ける第1挟持部23に後端部52を取り付け、第1挟持部23と端面53との間に例えば接着剤51を塗布することでクリップ機構20とドアストッパ部30Cを一体化し、ゴム、樹脂等の軟質材で構成したことを特徴とする。
【0053】
なお、ドアストッパ部30Cの各部の形状は、前述のとおりストッパ部本体31は円錐状、後端部52は円柱状としたが、これらの形状は角柱状、円柱状、円錐状に自由に組み合わせて形成することができるため、他の形状に変更することは差し支えない。
【0054】
また、ドアストッパ部30Cは、上記では後端部52に第1挟持部23を取り付けてクリップ機構20と一体化させたが、ドアストッパ部30Cの取付方向を変えるときには、第2挟持部25を後端部52に取り付けてドアストッパ部30Cとクリップ機構20を一体化させても差し支えない。
【0055】
さらに、外傷防止治具10Cは、第1挟持部23及び第2挟持部25をゴム、樹脂等の軟質材で被覆することによって、ドア開口フランジ42の塗装面に傷が付くことを防止することにも対応可能である。
【0056】
外傷防止治具10Cは、クリップ機構20で、ドア開口フランジ42を強力に挟むことができる。クリップ機構20は繰り返し使用しても、挟持性能が低下する心配はない。よって、外傷防止治具10Cがドア開口フランジ42から外れることを防止することができる。
【0057】
また、ドアストッパ部30Cを軟質材で構成したので、ドア43がドアストッパ部30Cに当たってもドア側の塗装面に傷が付く心配はない。
【0058】
図7は本発明に係る更に別の外傷防止治具の断面図であり、図1と共通部分については、符号を流用して説明を省略する。
外傷防止治具10Dは、クリップ機構20にドアストッパ部30Dを取り付けてなる可搬式治具である。クリップ機構20の詳細構造は図1及び図2で説明したので、ここでは説明を省略する。
【0059】
ドアストッパ部30Dは、クリップ機構20の第1挟持部23に接着剤51を塗布して結合されると共に円柱状に形成する基部部材36と、円錐状に形成する先端部材37と、これらの基部部材36と先端部材37を結合するためのねじ部38と、から構成される。
【0060】
なお、ドアストッパ部30Dの各部の形状は、前述のとおり基部部材36は円柱状、先端部材37は円錐状としたが、これらの形状は角柱状、円柱状、円錐状に自由に組み合わせて形成することができるため、他の形状に変更することは差し支えない。
【0061】
また、ドアストッパ部30Dは、上記では基部部材36に第1挟持部23を結合させてクリップ機構20と一体化したが、ドアストッパ部30Dの取付方向を変えるときには、第2挟持部25を基部部材36に結合させてドアストッパ部30Dとクリップ機構20を一体化しても差し支えない。
【0062】
さらに、外傷防止治具10Dは、第1挟持部23及び第2挟持部25をゴム、樹脂等の軟質材で被覆することによって、ドア開口フランジ42の塗装面に傷が付くことを防止することにも対応可能である。
【0063】
外傷防止治具10Dは、基部部材36を固定したまま、先端部材37をねじゆるみ方向へ回すことで、先端部材37は任意の水平方向位置へ移動することができる。これにより、ドアの開度を変更したいときに、その開度変更を容易に行うことができる。
【0064】
図8は本発明に係るドアストッパ部の変更実施例図であり、図1と共通部分については、符号を流用して説明を省略する。
ドアストッパ部30Eは、ドア受け面32を、ゴム原料に磁性粉末を分散させてなるゴム磁石39で構成したことを特徴とする。
【0065】
ドア受け面32を、ゴム磁石39で構成したことで、ドアストッパ部30Eはドアを吸引して固定することができる。これにより、別途ゴムバンドを用いなくてもドアはドア開口フランジと所定のクリアランスを保持して搬送でき、ドアとドア開口フランジが接触して車体及びドアに傷が付くことを防止することができる。
【0066】
なお、この例ではドア受け面32をゴム磁石39で構成したが、これに限らずドア受け面32をプラスチック原料に磁性粉末を分散させてなるプラスチック磁石に変更することは差し支えない。
さらに、この例ではドア受け面32のみをゴム磁石39で構成したが、これに限らずドアストッパ部30Eの全体をゴム磁石又はプラスチック磁石に変更することは差し支えない。
【0067】
上記ドアストッパ部30Eを備えた外傷防止治具よりも、確実にドアを固定できる外傷防止治具を次に説明する。
【0068】
図9は図5の変更実施例を示す分解斜視図であり、外傷防止治具10Eは、クリップ機構20B及びドアストッパ部30Bと、先端部材37と、ドア固定部材60と、2本のボルト61、61と、2枚のばね座金62、62と、4枚の平座金63、63、63、63と、2個のナット64、64とからなる可搬式治具である。
【0069】
図10は図5の変更実施例を示す側面図であり、図5と共通部分については、符号を流用して説明を省略する。
外傷防止治具10Eは、クリップ機構20Bと、ドアストッパ部30Bと、クリップ機構20Bと一体であるドア固定部材60とからなる。
【0070】
クリップ機構20Bは、第1クリップ部材21B、第2クリップ部材22B及びねじりコイルばね27を備え、第1クリップ部材21Bは、一端に略逆U字形に形成される(図9参照)第1挟持部23、他端に略U字形に形成される(図9参照)第1把持部24Bを有し、第2クリップ部材22Bは、一端に第1挟持部23に平行に形成されると共に略逆U字形に形成される(図9参照)第2挟持部25B、他端に第2挟持部25Bに非平行に形成されると共に略U字形に形成される(図9参照)第2把持部26Bを有する。
【0071】
第1クリップ部材21Bと第2クリップ部材22Bとの間には、ねじりコイルばね27が介装され、第1挟持部23及び第2挟持部25Bはねじりコイルばね27によって常時閉じ方向に付勢され、第1把持部24B及び第2把持部26Bをねじりコイルばね27の付勢力に抗してねじりコイルばね27を支点として互いに当接する方向に回動することで、第1挟持部23及び第2挟持部25Bが離間するように構成される。
【0072】
また、第2挟持部25Bには、車体のドア開口フランジに当接させる例えば樹脂製のドア開口フランジ保護部材65が被覆されている。このドア開口フランジ保護部材65によって、ドア開口フランジの塗装面に傷が付くことを防ぐことができる。
【0073】
なお、ドア開口フランジ保護部材65の材質は、樹脂製で説明したが、ゴムを適用することができるため、他の軟質材料に変更することは差し支えない。
クリップ機構20Bと一体のドア固定部材60の詳細構造は後述する。
【0074】
ドアストッパ部30Bは、第1挟持部23をねじ部38に巻き付けることでクリップ機構20Bと一体に結合される。
なお、ドアストッパ部30Bの詳細構造は図5と同様であるため、説明を省略する。
【0075】
また、ドアストッパ部30Bは、上記ではねじ部38に第1挟持部23を巻き付けてクリップ機構20Bと一体化させたが、ドアストッパ部30Bの取付方向を変えるときには、第2挟持部25Bをねじ部38に巻き付けてドアストッパ部30Bとクリップ機構20Bを一体化させても差し支えない。同時に、ドア開口フランジ保護部材65の取付位置は、第2挟持部25Bから第1挟持部23に変更してもよい。
【0076】
そして、この例では外傷防止治具10Eに用いるドアストッパ部を、ドアストッパ部30Bで説明したが、このドアストッパ部30Bの代わりにドアストッパ部30、30C、30D、30Eのいずれも適用できることは言うまでもない。
【0077】
ドア固定部材60は、一端に略円弧状に形成する(図9参照)ドア挟持部66、他端に略U字形に形成される(図9参照)第3把持部67を有する第3クリップ部材68と、他端に略U字形に形成された(図9参照)第4把持部69を有し、この第4把持部69が第1把持部24Bに2組のボルト61及びナット64で連結されてなる第4クリップ部材71と、これらの第3クリップ部材68と第4クリップ部材71との間に介装され、常時ドア挟持部66をドアストッパ部30Bのドア受け面32に当接する方向に付勢する第2ばね部材としての第2ねじりコイルばね72とを備える、クリップ機構20Bと一体の部材である。
【0078】
なお、ドア固定部材60は、上記では第4把持部69を第1把持部24Bに連結させてクリップ機構20Bと一体化したが、ドアストッパ部30Bを第2挟持部25Bで巻き付けると共に、ドア開口フランジ保護部材65を第1挟持部23に取り付けた場合には、第4把持部69を第2把持部26Bに連結させることでドア固定部材60とクリップ機構20Bを一体化してもよい。この取付変更を行っても、外傷防止治具10Eで得られる効果は変わることがない。
【0079】
加えて、ドア挟持部66の外周には、後述するドアのウィンドガラス溝部に当接させる例えば樹脂製のドア保護部材73が被覆されている。このドア保護部材73によって、ドアの塗装面に傷が付くことなく、ドアを車体に係止することができる。
【0080】
なお、ドア保護部材73の材質は、樹脂製で説明したが、ゴムを適用することができるため、他の軟質材料に変更することは差し支えない。
【0081】
また、外傷防止治具10Eに用いるドアストッパ部の全体又はドア受け面を、ゴム磁石又はプラスチック磁石で構成すれば、ドアは磁石で吸引されると共にドア挟持部66及びドア保護部材73で係止されるので、ドアを更に確実に固定することができる。
【0082】
ドア挟持部66及びドア保護部材73は、常時第2ねじりコイルばね72の付勢力でドアストッパ部30Bのドア受け面32に当接している。
【0083】
一方、第2ねじりコイルばね72の付勢力に抗して、第3把持部67を第2ねじりコイルばね72を支点として第4把持部69及び第1把持部24Bに当接する方向に回動させると、ドア挟持部66及びドア保護部材73はドアストッパ部30Bのドア受け面32から離間する。これでドア受け面32とドア挟持部66及びドア保護部材73との間にドアを挟持することができる。
以上の構成からなる外傷防止治具10Eの作用を次に説明する。
【0084】
図11は図10の作用図であり、(a)にて、塗装終了後、矢印のように第2把持部26Bを第1把持部24B及び第4把持部69に接近させることで、第2挟持部25B及びドア開口フランジ保護部材65をフランジ当接面35から離し、車体41のドア開口フランジ42に外傷防止治具10Eを装着する。
【0085】
(b)にて、ドア43を開放してドアサッシュテープを貼着し、その後第3把持部67を第4把持部69及び第1把持部24Bに接近させ、ドアストッパ部30Bのドア受け面32にドア43を当接させる。
【0086】
(c)にて、(b)の状態のままで第3把持部67への押圧力を解除することで、ドア保護部材73をドア43のウィンドガラス取付溝部74に当接させる。これで車体41にドア43を係止することができる。
【0087】
外傷防止治具10Eを用いて、第1挟持部23と第2挟持部25Bでドア開口フランジ42を挟持し、次にドアストッパ部30Bのドア受け面32にドア43を当接させ、このドア43をドアストッパ部30Bとドア挟持部66とで挟持する。外傷防止治具10Eは、ドア固定部材60を含む1個のクリップ機構20Bでドア開口フランジ42とドア43とを挟持することができるので、ドア開口フランジ42に対してドア43がばたつく心配がない。
【0088】
その結果、ドア開口フランジ42とドア43は、別途ゴムバンドを用いることなく所定のクリアランスを保持して搬送でき、ドア43とドア開口フランジ42とが接触して車体41及びドア43に傷が付くことを確実に防止することができる。
【0089】
尚、本発明に用いるドアストッパ部は、実施の形態では、第1挟持部の外面、
第2挟持部の外面のいずれかに設けることで説明したが、第1挟持部の外面と第2挟持部の外面に同時に設けても差し支えない。
【0090】
これにより、一方のドアストッパ部が摩耗又は欠損した場合、外傷防止治具の装着方向を変えることで、他方のドアストッパ部を使用することができる。そのため、ドアとドア開口フランジが接触してドア及びドア開口フランジに傷が付くことを確実に防止することができる。
【産業上の利用可能性】
【0091】
本発明の外傷防止治具は、塗装を終えた車体に使用する治具に好適である。
【図面の簡単な説明】
【0092】
【図1】本発明に係る外傷防止治具の側面図である。
【図2】図1の2矢視図である。
【図3】本発明に係る外傷防止治具の作用図である。
【図4】本発明に係る外傷防止治具を取付けた車体の斜視図である。
【図5】図1の変更実施例を示す断面図である。
【図6】本発明に係る別の外傷防止治具の断面図である。
【図7】本発明に係る更に別の外傷防止治具の断面図である。
【図8】本発明に係るドアストッパ部の変更実施例図である。
【図9】図5の変更実施例を示す分解斜視図である。
【図10】図5の変更実施例を示す側面図である。
【図11】図10の作用図である。
【図12】従来の技術の基本構成を説明する図である。
【符号の説明】
【0093】
10、10B、10C、10D、10E…外傷防止治具、20、20B…クリップ機構、21、21B…第1クリップ部材、22、22B…第2クリップ部材、23…第1挟持部、24、24B…第1把持部、25、25B…第2挟持部、26、26B…第2把持部、27…ねじりコイルばね(ばね部材)、30、30B、30C、30D、30E…ドアストッパ部、32…ドア受け面、33…ネック部、34…保護部、35…フランジ当接面、36…基部部材、37…先端部材、38…ねじ部、39…ゴム磁石、41…車体、42…ドア開口フランジ、43…ドア、60…ドア固定部材、66…ドア挟持部、67…第3把持部、68…第3クリップ部材、69…第4把持部、71…第4クリップ部材、72…第2ねじりコイルばね(第2ばね部材)。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
塗装を終えた車体のドア開口フランジに、ドアが当たって塗装面に傷が付くことを防止するために使用する外傷防止治具であって、
この外傷防止治具は、一端に第1挟持部、他端に第1把持部を有する第1クリップ部材と、一端に第2挟持部、他端に第2把持部を有する第2クリップ部材と、これらの第1クリップ部材と第2クリップ部材との間に介装され、常時前記第1挟持部及び第2挟持部を互いに当接する方向に付勢するばね部材とを備えるクリップ機構と、
前記第1挟持部の外面及び/又は第2挟持部の外面に設けられ、先端がドア側に向けて延出してドア受け面を形成すると共に軟質材で構成したドアストッパ部と、からなることを特徴とする外傷防止治具。
【請求項2】
前記ドアストッパ部は、基端側にドア開口フランジに当接するフランジ当接面を有し、塗装面を保護する保護部が形成されることを特徴とする請求項1記載の外傷防止治具。
【請求項3】
前記ドアストッパ部は、前記フランジ当接面を含む基部部材と、前記ドア受け面を含む先端部材と、これらの基部部材と先端部材を結合するねじ部と、で構成したことを特徴とする請求項2記載の外傷防止治具。
【請求項4】
前記ドアストッパ部は、前記第1挟持部の外面又は第2挟持部の外面に設けられる基部部材と、前記ドア受け面を含む先端部材と、これらの基部部材と先端部材を結合するねじ部と、で構成したことを特徴とする請求項1記載の外傷防止治具。
【請求項5】
前記ドアストッパ部は、全体又はドア受け面を、ゴム原料に磁性粉末を分散させてなるゴム磁石又はプラスチック原料に磁性粉末を分散させてなるプラスチック磁石で構成したことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項記載の外傷防止治具。
【請求項6】
前記クリップ機構には、前記ドアストッパ部のドア受け面に当接した前記ドアを押さえるドア固定部材が取り付けられ、
このドア固定部材は、一端にドア挟持部、他端に第3把持部を有する第3クリップ部材と、他端に第4把持部を有し、この第4把持部が前記第1把持部又は第2把持部に連結されてなる第4クリップ部材と、これらの第3クリップ部材と第4クリップ部材との間に介装され、常時前記ドア挟持部を前記ドアストッパ部のドア受け面に当接する方向に付勢する第2ばね部材とを備えることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項記載の外傷防止治具。
【請求項1】
塗装を終えた車体のドア開口フランジに、ドアが当たって塗装面に傷が付くことを防止するために使用する外傷防止治具であって、
この外傷防止治具は、一端に第1挟持部、他端に第1把持部を有する第1クリップ部材と、一端に第2挟持部、他端に第2把持部を有する第2クリップ部材と、これらの第1クリップ部材と第2クリップ部材との間に介装され、常時前記第1挟持部及び第2挟持部を互いに当接する方向に付勢するばね部材とを備えるクリップ機構と、
前記第1挟持部の外面及び/又は第2挟持部の外面に設けられ、先端がドア側に向けて延出してドア受け面を形成すると共に軟質材で構成したドアストッパ部と、からなることを特徴とする外傷防止治具。
【請求項2】
前記ドアストッパ部は、基端側にドア開口フランジに当接するフランジ当接面を有し、塗装面を保護する保護部が形成されることを特徴とする請求項1記載の外傷防止治具。
【請求項3】
前記ドアストッパ部は、前記フランジ当接面を含む基部部材と、前記ドア受け面を含む先端部材と、これらの基部部材と先端部材を結合するねじ部と、で構成したことを特徴とする請求項2記載の外傷防止治具。
【請求項4】
前記ドアストッパ部は、前記第1挟持部の外面又は第2挟持部の外面に設けられる基部部材と、前記ドア受け面を含む先端部材と、これらの基部部材と先端部材を結合するねじ部と、で構成したことを特徴とする請求項1記載の外傷防止治具。
【請求項5】
前記ドアストッパ部は、全体又はドア受け面を、ゴム原料に磁性粉末を分散させてなるゴム磁石又はプラスチック原料に磁性粉末を分散させてなるプラスチック磁石で構成したことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項記載の外傷防止治具。
【請求項6】
前記クリップ機構には、前記ドアストッパ部のドア受け面に当接した前記ドアを押さえるドア固定部材が取り付けられ、
このドア固定部材は、一端にドア挟持部、他端に第3把持部を有する第3クリップ部材と、他端に第4把持部を有し、この第4把持部が前記第1把持部又は第2把持部に連結されてなる第4クリップ部材と、これらの第3クリップ部材と第4クリップ部材との間に介装され、常時前記ドア挟持部を前記ドアストッパ部のドア受け面に当接する方向に付勢する第2ばね部材とを備えることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項記載の外傷防止治具。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2007−284041(P2007−284041A)
【公開日】平成19年11月1日(2007.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−70899(P2007−70899)
【出願日】平成19年3月19日(2007.3.19)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年11月1日(2007.11.1)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年3月19日(2007.3.19)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】
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