説明

外壁面材

【課題】 汚染や劣化のない綺麗な表面状態が簡単な作業で再生でき、また基材表面の水密性等が確保できる外壁面材を提供する。
【解決手段】 この外壁面材1は、フィルム状の表面膜3の複数枚を、各表面膜毎に剥離可能なように、剥離性を有する接着剤により外壁面材1の基材2表面に重ねて接着したものである。表面に汚染や劣化が生じた場合、表層側から表面膜3を剥がして表面を再生する。前記表面膜3は、剥離性を有する接着剤層、着色層、およびクリア層をこの順で積層してなる複層体である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、住宅や他の種々の建物の外壁に用いられる外壁面材に関する。
【背景技術】
【0002】
建物の外壁面材には、その基材の保護や意匠性向上を目的として塗装を施したものがある。このように塗装された面材は、経年による表面の汚染や劣化によって再塗装される。例えば、住宅では、築後10〜20年で再塗装される。
【0003】
なお、建物内における内壁や、間仕切り、天井面等の内装表面仕上げ用のシートとしては、片面に粘着剤層が設けられた合成樹脂製シートを複数枚積層してなる表面仕上げ用多層シートが提案されている(例えば、特許文献1,2)。これによれば、汚れた場合等に、最上層のシートを剥がすだけで簡単に表面を新品状態に再生することができる。
【特許文献1】実開平06−028062号公報
【特許文献2】特開2007−136801号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
外壁面材を再塗装する場合の多くは、その面材の脱着が容易でない限り、現地での作業となる。このため、以下に挙げるような問題がある。
・ 非塗装部への養生や、建物使用者への配慮などが必要である。
・ 塗料の飛散や余剰塗料の発生など、資源としての利用効率が悪い。
・ 溶剤に含まれるVOCによる環境の汚染が懸念される。
・ 屋外の作業となるため、天候などの影響を受けやすく、作業工程の遅延や品質不安定の要因となる。
・ 塗装作業のために、足場等の大規模な仮設装置が必要となり、塗装費用と併せて、経済的負担となる。
【0005】
なお、特許文献1,2等の内装表面仕上げ用多層シートは、建物の内装用であって、外壁面に使用されるものではなく、また板状の面材ではなく、仕上げ用シートとして設けられたものであるため、現場等でその表面仕上げ用多層シートを壁面や天井面等に貼る作業が必要となる。外壁面材の場合、現場で表面仕上げ用多層シートを貼るのでは、貼付け品質の不良部分が生じた場合に、シートの早期剥離や劣化、それらに伴う基材劣化の恐れがある。
【0006】
この発明の目的は、汚染や劣化のない綺麗な表面状態が簡単な作業で再生でき、また基材表面の水密性等が確保できる外壁面材を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明の外壁面材は、フィルム状の表面膜の複数枚を、各表面膜毎に剥離可能なように、剥離性を有する接着剤によって、板状の基材の表面に重ねて接着したことを特徴とする。なお、この明細書で言う「フィルム状」は、「シート状」を含む意味である。前記基材には、窯業系無機質板等が用いられる。
この構成によると、外壁面材の表面に汚染や劣化が生じた場合、最表層の表面膜を剥がすことで、汚染や劣化のない表面に簡単に再生、すなわち更新できる。例えば、外壁面材の表面に傷が付くと、そのままでは傷から内側に水が浸透して外壁面材の全体を劣化させてしまうが、上記したように表層側の表面膜を剥がすことにより、簡単に傷を無くすことができ、傷に起因して外壁面材の全体が劣化してしまうことが予防できる。剥がす作業で済むため、再生の作業が簡単であり、現場作業となっても、再塗装の場合のような足場等の仮設装置が不要となる。表面膜を接着する接着剤としては、解体性接着剤等と呼ばれる剥離が簡単でかつ剥離前の接着強度に優れた接着剤が種々開発されており、そのような接着剤を使用することで、表面膜の剥離が簡単に行える。
外壁面材の予測寿命に合わせて前記表面膜の枚数を設定することにより、外壁部材の寿命の制御も可能となる。これにより、超長期利用型住宅への適用性にも優れたものとなる。剥離した表面膜は、回収して再利用(リサイクル)することもできる。
また、建物の新築に際しても、外壁面材の製造時に、予め複数回再生分の塗装に代わる表面膜を貼りつけることで、現地での塗装や貼り付け作業を無くすことが可能となる。現地で表面仕上げシートを貼る場合と異なり、完成された表面仕上げ付きの面材部品として準備するため、外壁を構成するものでありながら、隙間の発生等で水密性が低下することが回避できる。また、工業的に製造されたフィルム状の表面膜を使用することで、品質が安定する。フィルム状の表面膜とすることで、印刷技術の導入も容易になり、塗装では表現が困難なデザイン性の高い意匠も可能となる。
【0008】
この発明において、前記表面膜が、剥離性を有する接着剤層、着色層、およびクリア層をこの順で積層してなる複層体であっても良い。
このように、表面膜が、接着剤層、着色層、およびクリア層を積層してなる複層体からなる場合には、基材の表面への表面膜の接着や、次の表面膜の接着のために、表面膜とは別に剥離性を有する接着剤を用意する必要がないので、その接着作業が容易になる。
【0009】
この発明において、前記着色層は前記クリア層の裏面に印刷したものであっても良い。 このように、着色層をクリア層の裏面に印刷した場合、塗装では表現が困難なデザイン性の高い意匠が可能となる。
【発明の効果】
【0010】
この発明の外壁面材は、フィルム状の表面膜の複数枚を、各表面膜毎に剥離可能なように、剥離性を有する接着剤により、板状の基材の表面に重ねて接着したものであるため、表面に汚染や劣化が生じた場合の表面再生作業を容易に行うことができ、また基材表面の水密性等が確保できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
この発明の一実施形態を図1ないし図4と共に説明する。図1はこの実施形態の外壁面材の分解斜視図を示し、図2はその部分拡大断面図を示す。この外壁面材1は、フィルム状の表面膜3の複数枚を、各表面膜3毎に剥離可能なように、剥離性を有する接着剤により外壁面材1の基材2の表面に重ねて接着したものである。基材2の表面には、前記表面膜3の接着に先立ち、図1のように塗料2aを下塗りしておいても良い。基材2は、窯業系無機質板、例えば、繊維補強セメント板、ケイ酸カルシウム板、石膏板、木片セメント板等が用いられる。
【0012】
前記複数枚の各フィルム状の表面膜3には、図3のように接着剤層4、意匠性を有する着色層5、および耐候性を有するクリア層6を、この順で積層してなる複層体を用いている。基材2の表面への表面膜3の接着では、表面膜3の接着剤層4がその接着剤となる。また、表面膜3の表面への次の表面膜3の接着では、次の表面膜3の接着剤層4がその接着剤となる。
接着剤層4には、接着性と剥離性とを兼ね備える接着剤、つまり任意時に簡単に剥がすことができ、かつ剥がす前は強固な接着状態を保持する接着剤が用いられる。このような性質を持つ接着剤は、近年開発されて、解体性接着剤等と呼ばれている。この解体性接着剤としては、例えば、熱可塑性接着剤の加熱時の軟化を利用して剥離可能としたもの、加熱により膨張するマイクロカプセルや発泡剤を混入して剥離可能としたもの、熱硬化性樹脂に熱溶融性や熱分解性を与えて剥離可能としたもの等があり、これらの接着剤が使用できる。
着色層5としては、例えばPMMA(ポリエチレンメタクリレート樹脂)のフィルムが用いられる。クリア層6としては、例えばPET(ポリエチレンテレフタレート樹脂)、あるいはPMMAに紫外線吸収剤を混合したものからなるフィルムが用いられる。着色層5およびクリア層6は、塗膜、つまり塗料の膜であっても良い。
【0013】
なお、前記表面膜3の接着剤層4は省略して、クリア層6と着色層5の2層構造としても良い。この場合、基材2の表面への表面膜3の接着、および表面膜3の表面への次の表面膜3の接着には、表面膜3とは別に用意した接着性と剥離性とを兼ね備える接着剤を用いる。また、表面膜3は、クリア層がなく着色層5と接着剤層4との2層構造としてもよく、着色層5がなくてクリア層6と接着剤層4との2層構造としてもよい。
【0014】
表面膜3の着色層5は、クリア層6の裏面に印刷しても良い。このように印刷により着色層5をクリア層5の裏面に形成することにより、塗装では表現が困難なデザイン性の高い意匠が可能になる。
【0015】
図4は、前記フィルム状の表面膜3を基材2の表面へ接着する工程の一例を示す。この工程例では、先ず図4(A)のように、基材2が支持される型11を配置した密閉空間10内を真空状態に減圧し、この密閉空間10内で展張状態とした前記表面膜3をヒータ12で加熱する。次に、この加熱した表面膜3で、図4(B)のように、基材2を覆う。次に、図4(C)のように、前記密封空間10を加圧することで、表面膜3を基材2の端部裏まで巻き込ませて、基材2の表面に密着させる。最後に、図4(D)のように、基材2の表面からはみ出す表面膜3の不要な箇所を切り取る。以上の工程を繰り返すことにより、基材2の表面に所要枚数の表面膜3を重ねて接着する。
【0016】
なお、上記の接着方法の他に、表面膜3を複数重ねた多層シートを製造し、その多層シートを基材2の表面に接着しても良い。
【0017】
この構成の外壁面材1によると、フィルム状の表面膜3の複数枚を、各表面膜毎に剥離可能なように、剥離性を有する接着剤を用いて外壁面材1の基材2表面に重ねて接着したので、塗装によらず基材2の表面を容易に保護できる。また、フィルム状の表面膜3として、工業的に製造されたものを使用することで、品質を安定させることができる。
【0018】
とくに、外壁面材1の表面に汚染や劣化が生じた場合、その都度、その表層側の表面膜3を剥がすことで、汚染や劣化のない表面に簡単に更新でき、塗装した外壁面材の場合のような現地での再塗装作業といった煩雑な作業をなくすことができる。例えば、外壁面材1の表面に傷が付くと、そのままでは傷から内側に水が浸透して外壁面材1の全体を劣化させてしまうが、上記したように表層側の表面膜3を剥がすことにより、簡単に傷を無くすことができ、傷に起因して外壁面材1の全体が劣化してしまうのを確実に予防できる。また、剥離性を有する接着剤として、解体性接着剤を採用することにより、上記した表層側の表面膜3を容易に剥がすことができる。
【0019】
また、外壁面材1の予測寿命に合わせて前記表面膜3の枚数を設定することにより、外壁部材1の寿命の制御も可能となる。また、剥離した表面膜3は、回収して再利用(リサイクル)できる。
【0020】
また、上記実施形態のように、表面膜3が、剥離性を有する接着剤層4、着色層5およびクリア層6をこの順で積層してなる複層体からなる場合には、基材2の表面への表面膜3の接着、および表面膜3の表面への次の表面膜3の接着のために、表面膜3とは別に剥離性を有する接着剤を用意する必要がないので、その接着作業が容易になる。また、着色層5をクリア層6の裏面に印刷技術により形成することもできるので、塗装では表現が困難なデザイン性の高い意匠が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】この発明の一実施形態にかかる外壁面材の分解斜視図である。
【図2】同外壁面材の部分拡大断面図である。
【図3】同外壁面材における表面膜の一構成例を示す断面図である。
【図4】同外壁面材の製造工程の一例を示す説明図である。
【符号の説明】
【0022】
1…外壁面材
2…基材
3…表面膜
4…接着剤層
5…着色層
6…クリア層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フィルム状の表面膜の複数枚を、各表面膜毎に剥離可能なように、剥離性を有する接着剤により、板状の基材の表面に重ねて接着したことを特徴とする外壁面材。
【請求項2】
請求項1において、前記表面膜が、剥離性を有する接着剤層、着色層、およびクリア層をこの順で積層してなる複層体である外壁面材。
【請求項3】
請求項2において、前記着色層は前記クリア層の裏面に印刷したものである外壁面材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−249880(P2009−249880A)
【公開日】平成21年10月29日(2009.10.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−97760(P2008−97760)
【出願日】平成20年4月4日(2008.4.4)
【出願人】(390037154)大和ハウス工業株式会社 (946)
【Fターム(参考)】