説明

外断熱基礎構造及びその施工方法

【課題】熟練の技術を必要とせず、短期間で施工できる外断熱基礎構造とその施工方法を提供することを課題とするものである。
【解決手段】基礎の立ち上がり部に断熱材が埋設され、断熱材より外周側の基礎立ち上がり部のコンクリートの断面幅が20mm以上であることを特徴とする外断熱基礎構造、及び、捨てコンクリート上に立設した外型枠に、後記断熱材との間に所定の幅を保持するための間隔保持部材を設け、当該間隔保持部材上に鉄筋を配して結束筋で留めるとともに、当該間隔保持部材を外型枠とによって挟み込むように断熱材を留め具で取り付けて、耐圧板コンクリートを打設したのち、当該耐圧板コンクリート上に内型枠を立設し、断熱材の両型枠との間隙に同時にコンクリートを打設したことを特徴とする外断熱基礎構造、並びに、これら外断熱基礎構造の施工方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建築物の基礎の外側に取り付ける外断熱基礎構造及びその施工方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、建物物の基礎の外周部(建物外側)を断熱材で被う外断熱基礎構造がある。
この外断熱基礎構造は、一般的には、基礎外周部に断熱材を設置したあと、断熱材の上からモルタルを塗りこむ方法が採られている。
【0003】
しかし、このモルタルの塗りこみは、職人が鏝(こて)を使って手作業で塗る左官仕事であるため、職人の熟練の技術が必要であるだけでなく、地中に埋まっている断熱材にまでモルタルを塗ることは当然にできない。
また、この左官仕事が、工期を長期化させる要因にもなっていた。
さらに、せっかく塗りこんだモルタルは、経年劣化によってひび割れすることがあり、ひび割れ部分から雨水が浸水したり、白蟻が侵入して蟻道となるなどの被害が発生していた。
【0004】
そのため、断熱材に金属のメッシュをいれたり、白蟻用の薬剤を入れて、白蟻の侵入を防ぐ断熱材が考えられるようになったが、このような断熱材は、当然のことながら金額が高く、またそれほど効果を得られないものも少なくない。
【0005】
そこで、断熱材を、基礎の内部(基礎の立ち上がり部分の内側と、基礎の底部分)に設けた内断熱基礎構造による施工も行われている。
この内断熱基礎構造は、床下部分を室内として考えることができ、床下に外気を取り込んで換気するための通気口などを設ける必要が無く、白蟻などの害虫が侵入する心配がない。
【0006】
しかし、内断熱基礎構造は、基礎の立ち上がり部分の内側だけでは断熱効率が低いため、基礎の底部分にまで断熱材を敷設することが必要になるが、基礎の底部分を断熱すると地熱エネルギーを利用することができなくなってしまう。
つまり、地表から2〜3mほどの地中の温度は、年間を通して13〜15℃であるため、この地熱エネルギーを断熱せずに居室内に取り込むことで、冷暖房器具を使用せずとも、夏は涼しく、冬は暖かく過ごすことができるようになる。
【0007】
そのため、内断熱基礎構造よりも、外断熱基礎構造の方が、地熱エネルギーを利用した省エネルギー建築物を実現することができるのである。
しかし、外断熱基礎構造には、上述のような問題があるが、これを解消する1つの方法として、予め断熱材をコンクリートに埋め込むプレキャストコンクリートパネルが開示されている(例えば、特許文献1及び2参照)。
【0008】
このプレキャストコンクリートパネルによれば、パネル内部に埋め込まれた断熱材によって、プレキャストコンクリートパネルを挟んだ外気側と室内側の熱伝達を抑えることができ、且つ、断熱材を被うのがコンクリートであるため、上述のモルタルのような被害が発生することが無いため、安心して外断熱基礎構造によって施工することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】実公昭50−27138号公報
【特許文献2】特開2006−315318号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかし、プレキャストコンクリートパネルは、予め工場などで成型したものをいうが、大量に使用することを前提とした規格化されたものであれば良いが、個人の注文住宅等のように、同じ規格のものが大量に使用されないような場合や、現場の状況によって変更することが必要となる場合、増改築の場合などには不向きである。
【0011】
また、プレキャストコンクリートパネルを現場に搬入する際にはクレーンを使用する必要があり、建築現場の前面道路の状況や敷地条件によっては、使用できない。
さらに、パネル同士の継ぎ目が多いため、接合に難点があり、強度、断熱効率の点でも問題があるため、やはり現場打ちによる施工方法が望ましい。
【0012】
本発明は、以上の問題点に鑑み、熟練の技術を必要とせず、短期間で施工できる外断熱基礎構造とその施工方法を提供することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決するため、本発明においては、次の技術的手段を講じている。
【0014】
なお、本願発明に係る外断熱基礎構造及びその施工方法は、布基礎、ベタ基礎に拘わらず、あらゆる基礎構造に対して適用が可能であり、特に、基礎構造の立ち上がり部分に関するものである。
以下、特に明示していなければ、あらゆる基礎を対象とするものとする。
【0015】
本発明の請求項1は、
基礎の立ち上がり部が、
現場打ちによって打設されたコンクリートに断熱材が埋設されるように、
外周側のコンクリート、断熱材、内周側のコンクリートの3つの垂直方向の層から成形されている
ことを特徴とする外断熱基礎構造である。
【0016】
本請求項に係る発明は、断熱材が埋設されるように、現場打ちによってコンクリートを打設した断熱基礎構造である。
断熱材は、基礎の立ち上がり部に立設した状態で埋め込まれ、基礎構造を構成する。
基礎の立ち上がり部の断面は、外周側のコンクリート、断熱材、内周側のコンクリートの3つの層からなる。
断熱材は、板状に限らず、あらゆる断熱材を使用することができる。
【0017】
本発明の請求項2は、
前記の基礎の立ち上がり部は、
外周側の外型枠と、内周側の内型枠と、両型枠の間の空間に立設する断熱材と、によって2つのコンクリート打設空間を設け、
当該空間に、現場打ちによってコンクリートを打設することで成形される
ことを特徴とする請求項1に記載の外断熱基礎構造である。
【0018】
本請求項に係る発明は、基礎の立ち上がり部を、外周側の外型枠と内周側の内型枠の2つの型枠によって成形する。
基礎の立ち上がり部のコンクリートは、2つの型枠と断熱材とによって生じる2つの間隙(コンクリート打設空間)に打設する。
この2つの間隙は、同時にコンクリートを打設しても良いし、一方ずつ打設しても良い。
「同時」とは、同一工程内を意味し、一方の間隙のみに打設した場合であっても、当該コンクリートが硬化する前に、他方の間隙に打設することが可能であることを意味するのであって、必ずしも同時刻であることを意味するものではない。
外型枠と内型枠は、コンクリートが硬化したあとは取り外され、断熱材のみが埋め込まれた状態で基礎構造を構成する。
型枠は、木、鋼板、スチール、合板など、いずれもものも使用できる。
【0019】
本発明の請求項3は、
前記の断熱材は、
間隔保持部材によって、外型枠と内型枠の間の所定の位置に保持する
ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の外断熱基礎構造である。
【0020】
本請求項に係る発明は、断熱材を、間隔保持部材によって、外型枠と内型枠の間の所定の位置に保持して埋設したものである。
間隔保持部材は、断熱材を、2つの型枠(外型枠、内型枠)の間の所定の位置に保持するためのものであり、例えば、一般的に、基礎コンクリートを打設する際に、型枠間の間隔を保持する目的で使用されるセパレーターでも良いし、セパレーターの端部に用いる各種コーン(Pコンや木コン、モルタルコーンなど)だけを用いても良く、間隔を保持できればいずれでも良い。
間隔保持部材は、薄鉄板製、鋼製、石綿モルタル製など、いずれの素材でも良いし、いずれの形状であっても良い。
間隔保持部材は、端部に各種のコーン状のものが付いていても良い。
貫通孔を設けられないスチールの型枠などを使用した場合は、例えば、各種コーンのようなものを用いて、型枠側を接着材、両面テープで固着させても良い。
間隔保持部材の型枠や断熱材への固定は、例えば、型枠側へは、フォームタイ(登録商標)を根太によって型枠の外側に所定間隔を維持して設けられたパイプと連結して支保工を行うことが考えられる。
さらに、断熱材側への固定は、例えば、断熱材にポリスチレンフォームなどの板状断熱材を使用する場合、ポリスチレンフォームは、棒状のセパレーターであれば、容易に貫通するので、貫通させたセパレーターにタップ付きのプレートなどで締め付けることが考えられる。
断熱材を保持する位置は、基礎の立ち上がり部分の断面幅、外周側のコンクリートの断面幅などによって異なるが、いずれの基礎の立ち上がり部分のいずれの位置で保持しても良いが、基礎コンクリート内に配設する鉄筋の影響を受けないように、外周側に保持することが望ましい。
【0021】
本発明の請求項4は、
前記の間隔保持部材は、
断熱材を挿通するようにして、外型枠と内型枠との間の所定の位置に断熱材を保持する
ことを特徴とする請求項3に記載の外断熱基礎構造である。
【0022】
本請求項に係る発明は、間隔保持部材を断熱材に挿通して、断熱材を所定の位置で保持するものである。
間隔保持部材は、前記のとおり、種々のものを採用することができるが、断熱材にポリスチレンフォームのような発泡樹脂系の板状のものを使用した場合、先端が突状のものであれば容易に断熱材を貫通させることができる。
本請求項に係る発明は、特に、容易に貫通させることができるような断熱材を使用した場合に有効である。
断熱材を保持する具体的な方法は、例えば、間隔保持部材を断熱材に挿通させたあと、間隔保持部材に予め設けた凹凸部分に、断熱材の両側から固定部材を嵌合して、断熱材が動かないように保持することが考えられるが、単に、断熱材の両側にプレート状のものを介在させて間隔保持部材にボルト等で締めて固定しても良いし、フォームタイ(登録商標)などによって留めても良い。
【0023】
本発明の請求項5は、
前記の間隔保持部材は、
外型枠、断熱材、内型枠の天端及び底端から各型枠及び断熱材を挟むようにして、外型枠と内型枠との間の所定の位置に断熱材を保持する
ことを特徴とする請求項3に記載の外断熱基礎構造である。
【0024】
本請求項に係る発明は、前記の請求項4に係る発明とは異なり、間隔保持部材を、外型枠、断熱材、内型枠の天端及び底端から断熱材を挟持するようにして、所定の位置で断熱材を保持するものである。
本請求項に係る発明は、特に、断熱材及び型枠に、貫通させることが困難なものを用いる場合に有効である。
間隔保持部材は、例えば、板状のセパレーターを用い、外型枠、断熱材、内型枠の天端及び底端から各型枠及び断熱材を挟んで、断熱材を保持する。
また、天端側及び底端側の2つの間隔保持部材の所定の位置に孔を設け、当該孔に棒状のものを指し込んで断熱材を保持しても良い。
【0025】
本発明の請求項6は、
前記の断熱材は、
外型枠側または内型枠側の、両面または片面に、
コンクリートの側圧に対抗するための補強部材が設けられている
ことを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の外断熱基礎構造である。
【0026】
本請求項に係る発明は、断熱材が打設したコンクリートの側圧に耐え得るように、断熱材に補強部材を設けたものである。
例えば、前記のような発泡樹脂系の断熱材を使用した場合、打設したコンクリートの側圧によって、断熱材が撓んでしまうことが考えられる。
そこで、断熱材に補強部材を設けて、打設したコンクリートの側圧に耐え得るようにしたものである。
補強部材は、例えば、断熱材に添うようにして、鉄筋を配設することが考えられる。
この他、前記の請求項5記載の、天端側及び底端側の2つの間隔保持部材の所定の位置に設けられた孔に指し込んだ棒状のものでも良い。
この棒状のものが鉄製、鋼製であれば、間隔保持部材としても、補強部材としても利用できる。
棒状の補強部材は、丸棒でも角棒でもいずれでも良い。
【0027】
本発明の請求項7は、
基礎の立ち上がり部分に外型枠及び断熱材を立設し、
外型枠を間隔保持部材の一方の端部に、断熱材を間隔保持部材の所定の位置に、それぞれ留め具で固定して取り付けるとともに、
断熱材の両面または片面に補強部材を配設して断熱材を補強する第1工程と、
断熱材によって仕切られた基礎の内周側に、土間コンクリートを打設する第2工程と、
土間コンクリートが硬化したのち、当該コンクリート上の断熱材より内周側の所定の位置に内型枠を立設し、
間隔保持部材の端部を内型枠に留め具で固定して取り付ける第3工程と、
断熱材によって区分される外型枠と内型枠との間隙部分(2つのコンクリート打設空間)にコンクリートを打設する第4工程と、
によって成形されることを特徴とする外断熱基礎構造である。
【0028】
本請求項に係る発明は、外断熱基礎構造を第1から第4の各工程によって成形したものである。
まず、第1工程は、基礎の立ち上がり部分に、外型枠と断熱材とを立設する。
断熱材が所定の位置で保持されるように、間隔保持部材を用いる。
間隔保持部材は、同一部材で、内型枠も固定できる長さのものを用いる。
つまり、同一部材で、外型枠、断熱材、内型枠を固定する。
外型枠と断熱材とを間隔保持部材によって固定したのち、断熱材の両面または片面に、コンクリートの側圧に耐え得るように補強部材を配設する。
補強部材は、前記のとおり、鉄筋などを用いる。
次に、第2工程として、断熱材よりも内周面の土間コンクリートを打設する。
コンクリートが硬化したら、第3工程として、断熱材よりも内周側に内型枠を立設し、断熱材から突出している間隔保持部材の端部に内型枠を固定する。
最後に、第4工程として、外型枠と内型枠の間隙部分にコンクリートを打設する。
この間隙部分は、断熱材によって2つの空間に区分されているが、一方の空間から順次コンクリートを打設しても良いし、両方の空間に同時にコンクリートを打設しても良い。
この「同時」という意味は、前記同様に、同一工程内を意味し、一方の空間のみに打設した場合であっても、当該コンクリートが硬化する前に、他方の空間に打設することが可能であることを意味するのであって、必ずしも同時刻であることを意味するものではない。
外型枠と内型枠は、コンクリートが硬化したあとは取り外され、断熱材のみが埋め込まれた状態で基礎構造を構成する。
型枠や断熱材、間隔保持部材についての説明は、前記と同様である。
【0029】
本発明の請求項8は、
基礎の立ち上がり部分に外型枠及び断熱材を立設し、
外型枠を間隔保持部材の一方の端部に、断熱材を間隔保持部材の他方の端部に、それぞれ留め具で固定して取り付けるとともに、
断熱材の両面または片面に補強部材を配設して断熱材を補強する第1工程と、
断熱材によって仕切られた基礎の内周側に、土間コンクリートを打設する第2工程と、
土間コンクリートが硬化したのち、当該コンクリート上の断熱材より内周側の所定の位置に内型枠を立設し、
断熱材を間隔保持部材の一方の端部に、内型枠を間隔保持部材の他方の端部に、それぞれ留め具で固定して取り付ける第3工程と、
断熱材によって区分される外型枠と内型枠との間隙部分(2つのコンクリート打設空間)にコンクリートを打設する第4工程と、
によって成形されることを特徴とする外断熱基礎構造である。
【0030】
前記の請求項7に係る発明が、第1工程及び第3工程で使用する間隔保持部材を、同一部材で外型枠、断熱材、内型枠を固定するとしたのに対し、本請求項に係る発明は、第1工程で使用する間隔保持部材は、外型枠と断熱材とを、第3工程で使用する間隔保持部材は、断熱材と内型枠とをそれぞれ固定するものである。
つまり、本請求項に係る発明は、外型枠と断熱材、断熱材と内型枠、のそれぞれを、別の間隔保持部材によって固定するようにしたものである。
【0031】
本発明の請求項9は、
基礎の立ち上がり部分に外型枠、断熱材、内型枠を立設し、
外型枠を間隔保持部材の一方の端部に、断熱材を間隔保持部材の所定の位置に、内型枠を間隔保持部材の他方の端部に、
それぞれ留め具で固定して取り付けるとともに、断熱材の両面または片面に補強部材を配して断熱材を補強する第1工程と、
断熱材によって仕切られた基礎の内周側に、土間コンクリートを打設する第2工程と、
土間コンクリートが硬化したのち、
断熱材によって区分される外型枠と内型枠との間隙部分(2つのコンクリート打設空間)にコンクリートを打設する第3工程と、
によって成形されることを特徴とする外断熱基礎構造である。
【0032】
本請求項に係る発明は、前記の請求項7及び8に記載の第1工程と第3工程とを同一工程として行うようにしたものである。
すなわち、外型枠、断熱材、内型枠を同一工程内で立設して、それぞれを間隔保持部材によって固定する工程を同時に行う。
その後、土間部分と、立ち上がり部分へ、それぞれコンクリートを打設するようにしたものである。
【0033】
本発明の請求項10は、
基礎の立ち上がり部分に外型枠、断熱材、内型枠を立設し、
外型枠を間隔保持部材の一方の端部に、断熱材を間隔保持部材の所定の位置に、内型枠を間隔保持部材の他方の端部に、
それぞれ留め具で固定して取り付けるとともに、断熱材の両面または片面に補強部材を配して断熱材を補強する第1工程と、
断熱材によって区分される外型枠と内型枠との間隙部分(2つのコンクリート打設空間)にコンクリートを打設する第2工程と、
によって成形されることを特徴とする外断熱基礎構造である。
【0034】
本請求項に係る発明は、前記の請求項9に記載の第2工程(土間コンクリートの打設)を省略した工程によって成形されるものである。
例えば、独立基礎の場合、立ち上がり部分へコンクリートを打設するのみであるから、本請求項に係る発明のように、第1工程と第2工程のみによって、外断熱基礎構造を成形することができる。
【0035】
本発明の請求項11は、
前記の各工程によって施工する
ことを特徴とする請求項7乃至10のいずれかに記載の外断熱基礎構造の施工方法である。
【0036】
本請求項に係る発明は、請求項7から請求項10に記載の外断熱基礎構造を、各請求項に記載した各工程によって施工することを特徴とする施工方法に関するものである。
【0037】
本発明の請求項12は、
前記の外周側のコンクリートの断面幅が20mm以上である
ことを特徴とする請求項1乃至11のいずれかに記載の外断熱基礎構造または外断熱基礎構造の施工方法である。
【0038】
断熱材と外型枠との間隙部分に打ち込まれた外周側のコンクリートは、現場打ち込みによって打設されるが、コンクリートの断面幅が小さいと外周側のコンクリート強度が弱くなったり、さらにはコンクリートが断熱材から剥離してしまう危険もある。
例えば、断熱材にポリスチレンフォームを使用したときの、断熱材とコンクリートとの付着強度の実験結果は、通常1平方センチメートル当たり、2.0〜3.0kgであるため、外周側のコンクリートの断面幅は、20mm以上であることが望ましい。
好ましくは、30mm以上である。
【発明の効果】
【0039】
1)断熱材をコンクリートで被った外断熱基礎構造を提供できる。
【0040】
2)モルタルを塗り込むなどの左官仕事を必要としないため、熟練の技術を必要とせず、常に一定の品質を備えた外断熱基礎構造を提供できる。
【0041】
3)モルタルを塗り込むなどの左官仕事を必要としないため、モルタルの工程を省略でき、材料費や工費を削減できる。
【0042】
4)基礎立ち上がり部のコンクリートの流し込みを、断熱材の内側と外側とで同時に行うことができるため、短期間で外断熱基礎構造を施工することができる。
【0043】
5)従来から一般的に使用されている型枠の道具を使うことができるので、余分な費用がかからず、安価に施工できる。
【0044】
6)防蟻処理が施された断熱材を使用する必要が無いため、安価な材料で施工できる。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】図1は、外断熱基礎構造の基礎立ち上がり部分における一実施例を示した断面概略図である。
【図2】図2は、外断熱基礎構造の基礎立ち上がり部分における一実施例を示した断面概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0046】
以下、本発明の実施形態について図面を用いて説明する。
【0047】
図1は、外断熱基礎構造の基礎立ち上がり部分における一実施例の断面概略図である。
【0048】
捨てコンクリート1上に、外型枠2と断熱材3とを所定距離(例えば、35mm)を隔てて立設する。
この外型枠22と断熱材3との間隔が狭いと、外型枠2と断熱材3との間に打設したコンクリートの強度が弱くなったり、コンクリートが断熱材3から剥離してしまう危険もあるため、20mm以上であることが望ましい。
【0049】
外型枠2は木製のものを、断熱材3はポリスチレンフォームを、それぞれ使用し、外型枠2と断熱材3の大きさは同一とする。
外型枠2と断熱材3との間に、セパレーターを取り付ける。
外型枠2に、例えば、スチール製などの孔を空けることができない型枠を使用する場合は、セパレーターの替わりにPコンや木コンのみによっても良い。
Pコンや木コンの場合、型枠と一緒に取り外す必要があるので、モルタルコーンを使用しても良い。
【0050】
セパレーターは、断熱材3の大きさに応じて適当な本数を取り付ける。
セパレーターの外型枠2側の端部は、Pコンを取り付け、フォームタイ(登録商標)で締め付け、必要に応じて支保工を行う。
セパレーターの断熱材3側の端部は、断熱材3に貫通させた状態で、セパレーターが抜け落ちないように端部をタップ付きのプレートで締め付ける。
【0051】
断熱材3の外型枠2側の面に当接させるようにして、補強部材としての鉄筋をセパレーター上に配設する。
このとき、例えば、外型枠2と断熱材3との間隔が35mmであった場合、Pコンの奥行きが25mmとすれば、Pコンと断熱材3との間に直径10mmの鉄筋が丁度収まることになる。
もし、鉄筋とPコンとの間に隙間が生じてしまう場合は、断熱材3の外型枠2側にもタップ付きのプレートで締め付ける。
【0052】
鉄筋は、セパレーターの箇所で結束線によって緊締する。
断熱材3の内周側に土間コンクリート4を打設したのち、土間コンクリート4上に内型枠5を立設する。
内型枠5は外型枠2と同様、木製のものを使用する。
内型枠5と断熱材3との間には、前記と同様に、セパレーターを取り付ける。
必要に応じて、断熱材3の内型枠5側にも補強部材としての鉄筋をセパレーター上に配設する。
【0053】
断熱材3によって区分けされた外型枠2と内型枠5との間の空間に、基礎の立ち上がり部分となるコンクリート6を打設する。
この基礎立ち上がり部のコンクリート6の打設作業は、断熱材3によって区分けされた2つの空間のうち、一方の空間から順次打設しても良いし、両方の空間に同時に打設しても良い。
【0054】
この「同時」という意味は、同一工程内であることを意味し、一方の空間のみに打設した場合であっても、当該コンクリートが硬化する前に、他方の空間に打設することが可能であることを意味するのであって、必ずしも同時刻であることを意味するものではない。
外型枠2と内型枠5は、コンクリート6が硬化したあとは取り外され、断熱材3のみが埋め込まれた状態で基礎構造を構成する。
【0055】
図2は、図1とは異なる基礎における一実施例の断面概略図である。
土台部分のコンクリート7を打設したのち、外型枠2と断熱材3とを所定距離(例えば、35mm)を隔てて立設し、また内型枠5も同時に立設する。
セパレーターは、外型枠2、断熱材3、内型枠5の3つを間隔保持、固定するように取り付ける。
セパレーターは、1本で外型枠2、断熱材3、内型枠5の3つを固定しても良いし、外型枠2と断熱材3、断熱材3と内型枠5との2本に分けても良い。
この他の作業については、前記実施例と同様である。
【0056】
以上のようにして、従来から基礎工事として一般的に使用されている型枠の道具のみによって施工することができるので、余分な費用がかからず、安価に施工できるだけでなく、基礎立ち上がり部のコンクリートの流し込みを、断熱材の内側と外側とで同時に行うことができるため、短期間で外断熱基礎構造を施工することができる。
本発明に係る外断熱基礎構造は、断熱材を立ち上がり部のコンクリート内に埋設するものであるため、防蟻処理が施された断熱材を使用する必要が無く、安価な断熱材を用いることができるだけでなく、断熱材の上からモルタルを塗り込む左官仕事が不要であるから、モルタルの工程を省略でき、工期を短縮できる。
また、本発明に係る外断熱基礎構造を施工するにあたって、熟練の技術は一切必要でないため、職人不足や技術レベルの低下を懸念する必要が無く、常に一定の品質を備えた外断熱基礎構造を提供することができる。
【符号の説明】
【0057】
1 捨てコンクリート
2 外型枠
3 断熱材
4 土間コンクリート
5 内型枠
6 基礎立ち上がり部のコンクリート
7 土台部分のコンクリート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基礎の立ち上がり部が、
現場打ちによって打設されたコンクリートに断熱材が埋設されるように、
外周側のコンクリート、断熱材、内周側のコンクリートの3つの垂直方向の層から成形されている
ことを特徴とする外断熱基礎構造。
【請求項2】
前記の基礎の立ち上がり部は、
外周側の外型枠と、内周側の内型枠と、両型枠の間の空間に立設する断熱材と、によって2つのコンクリート打設空間を設け、
当該空間に、現場打ちによってコンクリートを打設することで成形される
ことを特徴とする請求項1に記載の外断熱基礎構造。
【請求項3】
前記の断熱材は、
間隔保持部材によって、外型枠と内型枠の間の所定の位置に保持する
ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の外断熱基礎構造。
【請求項4】
前記の間隔保持部材は、
断熱材を挿通するようにして、外型枠と内型枠との間の所定の位置に断熱材を保持する
ことを特徴とする請求項3に記載の外断熱基礎構造。
【請求項5】
前記の間隔保持部材は、
外型枠、断熱材、内型枠の天端及び底端から各型枠及び断熱材を挟むようにして、外型枠と内型枠との間の所定の位置に断熱材を保持する
ことを特徴とする請求項3に記載の外断熱基礎構造。
【請求項6】
前記の断熱材は、
外型枠側または内型枠側の、両面または片面に、
コンクリートの側圧に対抗するための補強部材が設けられている
ことを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の外断熱基礎構造。
【請求項7】
基礎の立ち上がり部分に外型枠及び断熱材を立設し、
外型枠を間隔保持部材の一方の端部に、断熱材を間隔保持部材の所定の位置に、それぞれ留め具で固定して取り付けるとともに、
断熱材の両面または片面に補強部材を配設して断熱材を補強する第1工程と、
断熱材によって仕切られた基礎の内周側に、土間コンクリートを打設する第2工程と、
土間コンクリートが硬化したのち、当該コンクリート上の断熱材より内周側の所定の位置に内型枠を立設し、
間隔保持部材の端部を内型枠に留め具で固定して取り付ける第3工程と、
断熱材によって区分される外型枠と内型枠との間隙部分(2つのコンクリート打設空間)にコンクリートを打設する第4工程と、
によって成形されることを特徴とする外断熱基礎構造。
【請求項8】
基礎の立ち上がり部分に外型枠及び断熱材を立設し、
外型枠を間隔保持部材の一方の端部に、断熱材を間隔保持部材の他方の端部に、それぞれ留め具で固定して取り付けるとともに、
断熱材の両面または片面に補強部材を配設して断熱材を補強する第1工程と、
断熱材によって仕切られた基礎の内周側に、土間コンクリートを打設する第2工程と、
土間コンクリートが硬化したのち、当該コンクリート上の断熱材より内周側の所定の位置に内型枠を立設し、
断熱材を間隔保持部材の一方の端部に、内型枠を間隔保持部材の他方の端部に、それぞれ留め具で固定して取り付ける第3工程と、
断熱材によって区分される外型枠と内型枠との間隙部分(2つのコンクリート打設空間)にコンクリートを打設する第4工程と、
によって成形されることを特徴とする外断熱基礎構造。
【請求項9】
基礎の立ち上がり部分に外型枠、断熱材、内型枠を立設し、
外型枠を間隔保持部材の一方の端部に、断熱材を間隔保持部材の所定の位置に、内型枠を間隔保持部材の他方の端部に、
それぞれ留め具で固定して取り付けるとともに、断熱材の両面または片面に補強部材を配して断熱材を補強する第1工程と、
断熱材によって仕切られた基礎の内周側に、土間コンクリートを打設する第2工程と、
土間コンクリートが硬化したのち、
断熱材によって区分される外型枠と内型枠との間隙部分(2つのコンクリート打設空間)にコンクリートを打設する第3工程と、
によって成形されることを特徴とする外断熱基礎構造。
【請求項10】
基礎の立ち上がり部分に外型枠、断熱材、内型枠を立設し、
外型枠を間隔保持部材の一方の端部に、断熱材を間隔保持部材の所定の位置に、内型枠を間隔保持部材の他方の端部に、
それぞれ留め具で固定して取り付けるとともに、断熱材の両面または片面に補強部材を配して断熱材を補強する第1工程と、
断熱材によって区分される外型枠と内型枠との間隙部分(2つのコンクリート打設空間)にコンクリートを打設する第2工程と、
によって成形されることを特徴とする外断熱基礎構造。
【請求項11】
前記の各工程によって施工する
ことを特徴とする請求項7乃至10のいずれかに記載の外断熱基礎構造の施工方法。
【請求項12】
前記の外周側のコンクリートの断面幅が20mm以上である
ことを特徴とする請求項1乃至11のいずれかに記載の外断熱基礎構造または外断熱基礎構造の施工方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−189972(P2010−189972A)
【公開日】平成22年9月2日(2010.9.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−37250(P2009−37250)
【出願日】平成21年2月20日(2009.2.20)
【出願人】(591142149)
【Fターム(参考)】