説明

外科用物品のための異種ヤーン

【課題】異なる材料の異種ヤーンから作られている生体適合性の外科用デバイスを提供すること。
【解決手段】外科用デバイスであって、少なくとも1つの異種ヤーンであって、該異種ヤーンは、長手方向の軸を規定し、かつ複数の直線的に配置されたポリエステルストランドを、複数の直線的に配置されたポリオレフィンストランドと密接な接触状態で含む、異種ヤーンを備え、該複数のポリエステルストランドおよび該複数のポリオレフィンストランドは、該ヤーンの長さ方向に沿って互いと、該長手方向の軸とに並行して延びる、外科用デバイス。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の引用)
本出願は、2004年8月12日に出願された同時係属中の米国特許出願第10/917,183号の一部継続出願であり、その特許出願の利益およびそれに基づく優先権を主張し、かつ2003年8月14日に出願された米国仮出願第60/494,993号に基づく優先権およびその仮出願の利益を主張するものであり、それらの各々の開示全体が参考として本明細書によって援用される。
【0002】
(技術分野)
本開示は、異なる材料から作られているヤーンに関する。少なくとも2つの異なる材料のフィラメントが、ヤーンを形成するために組み合わされ、次いで、ヤーンが、組まれたり、織られたり、などすることにより、外科的使用に適したデバイスを形成し得る。
【背景技術】
【0003】
身体組織の修復を目的とする縫合糸は、特定の要件を満たさなければならない。縫合糸は、実質的に無毒であり、容易に殺菌されることが可能であり、縫合糸は、良好な引っ張り強度を有し、かつ許容可能な結び目結合特性および結び目保持特性を有さなければならず、縫合糸が生体吸収性の種類である場合には、縫合糸の生体吸収は、厳密に制御されなければならない。
【0004】
縫合糸は、外科用ガット、絹、綿、ポリプロピレンなどのポリオレフィン、ポリアミド、ポリエチレンテレフタレートなどのポリエステル、ポリグリコール酸、グリコリドラクチドコポリマーなどを含む多種多様な材料から造られている。縫合糸は、単一フィラメント形態のこれらの材料から造られ、かつ組物の構造として造られている。例えば、絹、ポリアミド、ポリエステルおよび生体吸収性のグリコリドラクチドコポリマーから製造された縫合糸は、一般に、複数フィラメントの組物として提供される。
【0005】
フィラメントはまた、他の複数フィラメントの外科用デバイスまたは医療用デバイス(例えば、組物のテープ、ガーゼ、創傷包帯、ヘルニア修復メッシュ、脈管移植片(例えば、布および/またはチューブ)、吻合リング、補綴靭帯および腱、成長マトリックス、薬物供給デバイスおよび他の移植可能な医療用デバイス)を形成するために利用されている。複数フィラメントの組物は、一般に、単一フィラメント構造に比べて高められた柔軟性および引っ張り強度の利点をもたらし、縫合糸として利用される場合には、高められた結び目の固定を保つ。複数フィラメント組物の高められた柔軟性は、1本の大きな直径の単一フィラメントとは対照的に、非常に細いフィラメントのストランド(strand)の屈曲に対するより低い抵抗によってもたらされる。個々のフィラメントは、それらの近隣のフィラメントによって妨げられたり、制限されたりすることなく屈曲が可能でなければならない。この個々の繊維の移動性を低減する任意の機構(例えば、単純な繊維対繊維の摩擦、組物の隙間の中に侵入する被覆、または繊維を一体的に接着する溶解したポリマーマトリックス)は、組物の柔軟性に悪影響を与え得る。柔軟性および強度を高めるために、フィラメントストランドを形成するための異なる材料または繊維を組み合わせることは有利であり得る。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
(概要)
本開示は、異種のヤーンから作られている生体適合性の複合型の外科用デバイスに関する。ヤーンは、ポリエステル材料の複数のストランドと、ポリオレフィン材料の複数のストランドとを含んでいる。ストランドは、異種ヤーンを形成するために互いに対して実質的に同等の長さで組み合わされる。ヤーンは、次いで、組まれたり、編まれたり、織られたりすることにより、縫合糸を含む医療用デバイス/外科用デバイスを形成し得る。
【0007】
例えば、本開示は、以下を提供する。
(項目1)
外科用デバイスであって、
少なくとも1つの異種ヤーンであって、該異種ヤーンは、長手方向の軸を規定し、かつ複数の直線的に配置されたポリエステルストランドを、複数の直線的に配置されたポリオレフィンストランドと密接な接触状態で含む、異種ヤーン
を備え、
該複数のポリエステルストランドおよび該複数のポリオレフィンストランドは、該ヤーンの長さ方向に沿って互いと、該長手方向の軸とに並行して延びる、
外科用デバイス。
(項目2)
上記ポリエステルストランドは、ポリエチレンテレフタレートを含む、上記項目のうちのいずれか一項目に記載の外科用デバイス。
(項目3)
上記ポリオレフィンストランドは、ポリエチレンを含む、上記項目のうちのいずれか一項目に記載の外科用デバイス。
(項目4)
上記ポリオレフィンストランドは、超高分子量ポリエチレンを含む、上記項目のうちのいずれか一項目に記載の外科用デバイス。
(項目5)
上記少なくとも1つの異種ヤーンは、ポリオレフィンまたはポリエステルを除く材料から作られたストランドをさらに含む、上記項目のうちのいずれか一項目に記載の外科用デバイス。
(項目6)
組まれた複数の異種ヤーンを含む、上記項目のうちのいずれか一項目に記載の外科用デバイス。
(項目7)
編まれた複数の異種ヤーンを含む、上記項目のうちのいずれか一項目に記載の外科用デバイス。
(項目8)
織られた複数の異種ヤーンを含む、上記項目のうちのいずれか一項目に記載の外科用デバイス。
(項目9)
生体適合性の外科用デバイスであって、
複数の異種ヤーンから作成されたテキスタイルであって、該複数の異種ヤーンは、各々が長手方向の軸を規定し、かつ直線的に配置されたポリエチレンテレフタレートのストランドを、直線的に配置された超高分子量ポリエチレンのストランドと密接な接触状態で有する、テキスタイル
を備え、
該複数のポリエチレンテレフタレートストランドおよび該複数の超高分子量ポリエチレンストランドは、該ヤーンの長さ方向に沿って互いと、該長手方向の軸とに並行して延びる、
生体適合性の外科用デバイス。
(項目10)
上記テキスタイルは、組まれた異種ヤーンを含む、上記項目のうちのいずれか一項目に記載の生体適合性の外科用デバイス。
(項目11)
上記テキスタイルは、編まれた異種ヤーンを含む、上記項目のうちのいずれか一項目に記載の生体適合性の外科用デバイス。
(項目12)
上記テキスタイルは、織られた異種ヤーンを含む、上記項目のうちのいずれか一項目に記載の生体適合性の外科用デバイス。
(項目13)
上記テキスタイルは、縫合糸、テープ、ガーゼ、創傷包帯、ヘルニア修復メッシュ、脈管移植片、吻合リング、補綴靭帯、補綴腱、成長マトリックスおよび薬物供給デバイスから成る群から選択されたデバイスとしての使用に適応する、上記項目のうちのいずれか一項目に記載の生体適合性の外科用デバイス。
(項目14)
上記テキスタイルは、組物の縫合糸である、上記項目のうちのいずれか一項目に記載の生体適合性の外科用デバイス。
(項目15)
縫合糸であって、
少なくとも1つの異種ヤーンであって、該異種ヤーンは、長手方向の軸を規定し、かつ複数の直線的に配置されたポリエステルストランドを、複数の直線的に配置されたポリオレフィンストランドと密接な接触状態で有する、異種ヤーン
を備え、
該複数のポリエステルストランドおよび該複数のポリオレフィンストランドは、該ヤーンの長さ方向に沿って互いと、該長手方向の軸とに並行して延びる、
縫合糸。
(項目16)
上記ポリエステルストランドは、ポリエチレンテレフタレートを含む、上記項目のうちのいずれか一項目に記載の縫合糸。
(項目17)
上記ポリオレフィンストランドは、ポリエチレンを含む、上記項目のうちのいずれか一項目に記載の縫合糸。
(項目18)
上記ポリオレフィンストランドは、超高分子量ポリエチレンを含む、上記項目のうちのいずれか一項目に記載の縫合糸。
(項目19)
上記異種ヤーンは、1つ以上の生物学的作用材料を含む構成物によって被覆される、上記項目のうちのいずれか一項目に記載の縫合糸。
(項目20)
上記複数のポリエステルストランドおよびポリオレフィンストランドは、複数の隙間を形成する一体的な群にされ、該複数の隙間は、上記ヤーンの長さ方向に沿って互いと、該ポリエステルおよびポリオレフィンストランドとに並行して延びる、上記項目のうちのいずれか一項目に記載の外科用デバイス。
(項目21)
外科用デバイスによって使用するためのヤーンを製造する方法であって、
複数の異種ストランドを並んだ様態で位置決めすることであって、それによって、該複数の異種ストランドは、互いと並行関係に維持される、ことと、
結合剤を該複数の異種ストランドに適用することと、
該結合剤を固めることと
を包含する、方法。
【0008】
(摘要)
異なる材料のストランドを含む異種のヤーンは、外科用デバイスを形成することにおいて有用である。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】図1は、ポリエステルストランドおよびポリオレフィンストランドの異種ヤーンの断面図である。
【図2】図2は、本開示に従った、針と縫合糸との組み合わせを示している。
【図3】図3は、人の割れた胸骨の一部分の斜視図であり、治癒を促進するために、割れた部分を一体的に保持するための本発明の一用途を例示している。
【図4】図4は、図3中に示されている縫合糸製品の拡大図であり、細長い製品は、扁平な組物の部材であり、長さ方向に沿って延びる少なくとも8つの補強フィラメントを含む一実施形態を例示している。
【図5】図5は、縫合糸修復製品の代替の実施形態の図であり、細長い部材は、少なくとも1つの細長い補強部材を含む、概して円形の断面を有する螺旋状の組物の部材である。
【図6】図6は、縫合糸修復製品の別の代替の実施形態の図であり、細長い製品は、概して円形の断面を有する中空の組物の部材であり、長さ方向に沿ってその中央に延びる少なくとも1つの細長い補強部材を含んでいる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本開示は、異種のヤーンに関し、異種ヤーンは、様々なテキスタイルの外科用デバイスの全体または一部分の製作に用いられ得、テキスタイルの外科用デバイスは、例えば、縫合糸、組物のテープ、ガーゼ、創傷包帯、ヘルニア修復メッシュ、脈管移植片(例えば、布および/またはチューブ)、吻合リング、補綴靭帯および腱、成長マトリックス、薬物供給デバイス、ならびに他の移植可能な医療用デバイスを含む。移植可能な医療用デバイスは、医療目的のために動物に移植され得る任意のデバイスとして規定される。ヤーンは、組まれたり、編まれたり、織られたりすることにより、デバイスを形成し得る。
【0011】
本開示に従った、少なくとも2つの異なる種類の繊維またはストランドが、密接な接触状態で配置されることにより、異種ヤーンを形成する。より具体的には、異種ヤーンは、ポリエステルから作られたストランドと、ポリオレフィンから作られたストランドとを含んでいる。ポリエステルおよびポリオレフィンの複数のストランドが、単一のヤーンを形成するために組み合わされる。従って、取得される複数の異種ヤーンは、次いで、組まれたり、編まれたり、織られたりすることにより、例えば、複数フィラメントの外科縫合糸などの複数フィラメントの外科用/医療用デバイスを形成する。
【0012】
特に有用な実施形態においては、ポリエステルストランドが、ポリエチレンテレフタレートから作られる。ポリエチレンテレフタレートは、エチレングリコールとテレフタル酸とからエステル化によって形成される熱可塑性ポリエステルである。その有利な特性は、高い引っ張り強度、湿潤と乾燥との両条件下での引き伸ばしに対する高い抵抗、ならびに化学漂白剤による劣化と磨耗とに対する良好な抵抗を含む。ポリエチレンテレフタレートは、DuPont Corporation(Wilmington, Del.)からDACRON(登録商標)という商標名で市販されている。
【0013】
ポリオレフィンストランドは、好ましくは、ポリエチレンから作られる。特に有用な実施形態において、ポリエチレンは、超高分子量ポリエチレンである。超高分子量(「UHMW」)ポリエチレンは、約400,000超の、一般に約500,000〜約6,000,000の範囲の平均分子量を有するリニアポリマーである。UHMWポリエチレンは、高いテナシティと、低い伸長率(elongation rate)を有することにより、物品に対して非常に増大した強度と、減少した伸びとを提供する。
【0014】
UHMWポリエチレンは、一般に結晶性の配向(crystalline orientation)(95%〜99%)と、結晶性の含有量(crystalline content)(60%〜85%)とのかなり十分な程度を示す。UHMWのポリエチレンの有意な強度および安定性は、通常、分子配向の高い程度によって引き起こされる。結果として、繊維は、約375kpsi〜約560kpsi(平方インチあたり千ポンド)の強度と、約15msi〜約30msi(平方インチあたり百万ポンド)の引っ張り弾性係数を示す。超高分子量ポリエチレンは、SPECTRA(登録商標)という商標名で、Allied−Signal Technologies(Petersburg, Va.)から市販され、そしてDYNEEMA(登録商標)という商標名で、DSM High Performance Fibers(JH Heerlen, The Netherlands)から市販されている。
【0015】
ヤーンは、随意に他の材料のストランドを含み得る。これらの随意のストランドを造るために用いられる材料は、縫合糸の製造に前から公知の任意の繊維材料などの多種多様な天然繊維材料および合成繊維材料を含み得る。そのような材料は、非吸収性ならびに部分的な生体吸収性および完全な生体吸収性(すなわち、再吸収可能)の天然および合成の、熱可塑性物質を含む繊維形成ポリマーを含む。適切な非吸収性材料は、例えば、ポリアミド、ポリエチレンテレフタレートなどのポリエステル、ポリアクリロニトリル、ポリエチレンおよびポリプロピレンなどのポリオレフィン、絹、綿、リネンなどを含み得る。炭素繊維、鋼繊維、および他の生物学的に許容可能な無機的繊維材料もまた利用され得る。生体吸収性樹脂は、グリコール酸、グリコリド、乳酸、ラクチド、ジオキサノン(dioxanone)、εカプロラクトン、トリメチレンカーボネートなど、ならびに、これらおよび関連するモノマーの様々な組み合わせから誘導されるものを含み得る。
【0016】
ヤーンを形成するストランドは、任意の公知の技術、例えば、押し出し、成型および/または溶剤注型などを用いて作られ得る。好適な一実施形態において、ストランドは、米国特許第6,063,105号、米国特許第6,203,564号、および米国特許第6,235,869号(それらの各々の内容は参考として本明細書中に援用される)に開示されているような従来タイプの押出機ユニットを介して押し出され得る。異なる材料のストランドは、別々に押し出され、続いてヤーンを形成するために群へと寄せ集められ得るか、またはストランドは、並んでいる様態で押し出され、直ちにヤーンを形成するために一体的に収集され得る。一ヤーンあたり用いられるストランドの数は、生産されるヤーンおよび最終的複数フィラメント物品の所望の最終的サイズを含む多くの因子に依存する。例えば、縫合糸に関して、サイズは、米国薬局方(「USP」)規格に従って確立される。しかしながら、各々のヤーンは、少なくとも10本のストランドと、通常は少なくとも2種類の異なる材料のタイプとを含み得る。ストランドは、ヤーンの長さ方向に沿って互いに並行して延びている。しかしながら、撚りヤーンを形成するためにストランドをねじることもまた想定される。
【0017】
ここで図1を参照すると、本開示の異種ヤーン10が示されている。ヤーン10は、押し出し型の実施形態において、任意の適切な長さに形成され得る。より具体的には、ヤーン10の押し出し長さは、ヤーン10の使用目的によって決定され得る。例えば、ヤーン10の用途が縫合糸101の製造用である例においては、ヤーン10は、縫合糸(例えば、図2を見られたい)の長さと少なくとも等しい長さを含む。実施形態において、ヤーン10は、約5インチ〜約144インチの長さを含み得る。例示目的のために、ヤーン10のセグメントが、図1中に示されており、複数のポリオレフィンストランド12(例えば、UHMWポリエチレン)と、ポリエステルストランド14(例えば、DACRON(登録商標))とを含む。ヤーン10の単にセグメントが図1中に示されているが、実施形態においては、ストランド12および14の並行する配向が、ヤーン10の全体の長さに沿って維持され得る(図示されていない)ことが理解される。すなわち、複数のストランド12および14は、ヤーン10の長さ方向に沿って互いと、ヤーン10の長手方向の軸との両方に対して並行して延びている。
【0018】
上記のように、ヤーン10は、1つ以上の公知の押し出しプロセスによって形成され得る。ストランド12および14が押し出され、続いて寄せ集められ、かつ/または収集された後、ストランド12および14の各々は、それらが互いに対して並行する関係で互いとの密接な接触状態にあるように配置され、かつ維持される。ストランド12および14のこの並行配置は、ヤーン10の構造的完全性を増大させ得る。
【0019】
ストランド12および14は、任意の適切な方法および/またはプロセスによって、この並行する関係に維持され得る。例えば、一実施形態において、ストランド12および14は、例えば、取り外し可能な形成シース(図示されていない)などの保持レセプタクル内に一時的に位置決めされ得る。形成シースは、ヤーン10の形成の間、ストランド12および14を並行配置状態に維持するように構成され得る。
【0020】
実施形態において、ストランド12および14が形成シース内に位置決めされた後、ストランド12および14は、続いて、当業者が考え得る任意の手段によって互いに結合され得る。そのような手段は、例えば、熱の適用、結合剤の使用、被覆の使用、それらの組み合わせ、などを含み得る。実施形態において、形成シースの代わりに恒久的なシースが、ヤーン10の外表面に適用され、それによって、ストランド12および14の並行する配向を維持することを補助し得る。
【0021】
ストランド12および14に適用され、それらの並行する配向を維持するためにストランド12および14上に残されるシースは、ストランド12および/または14を形成するために用いられる任意の材料、ならびに本開示の縫合糸を形成するために利用される任意の他の構成要素から形成され得る。
【0022】
実施形態においては、ストランドを形成するために利用される材料に依存して、ストランドを一体的に溶融させる適切な加熱は、約70℃〜約160℃の加熱を含み、実施形態においては、約100℃〜約140℃の加熱を含み得る。
【0023】
加熱は、ストランドを形成するために利用される材料のガラス転移温度に依存し得る。さらに、実施形態においては、ストランドの並行する配向を維持するために張力の下でストランドを加熱することが望ましくあり得る。
【0024】
適切な結合剤は、当業者の考え得る範囲内にあり、適切な生体適合性の接着材、熱可塑性樹脂、ワックス、それらの組み合わせ、などを含む。実施形態において、複数の隙間「I」が、複数のストランド12と14との間に形成され得る。隙間「I」は、ヤーン10の長さ方向に沿って互いと、ストランド12および14と並行して延びている。実施形態において、複数の隙間は、結合剤「A」を受け入れる領域を提供するように構成され得る。結合剤「A」は、ヤーンの長さ全体に沿って、またはヤーンの長さに沿って不連続な位置に適用され得る。実施形態において、結合剤を適用することは、ヤーンの長さ方向に沿った特定の位置またはノード「n」(図1を見られたい)に堆積され得ることは有用であることが分かり得る。複数のノード「n」および/または形成シースは、結合剤をヤーン10の長さ方向に沿った対応する所定の位置に受け入れるように構成され得る。複数のノード「n」は、ストランド12および14を互いに対して固定された並行関係に維持するように構成され得る。
【0025】
従って、実施形態において、本開示のヤーンを形成する方法は、複数のストランドを並んだ様態で位置決めすることを含み、それによって、複数のストランドが互いに対して並行関係に維持され、結合剤を複数の異種ストランドに適用し、ストランドがそれらの並行する配置に維持されることを助けるために結合剤を固め得る。
【0026】
任意の生体適合性の接着材が利用され得る。実施形態において、適切な接着材料は、乳酸、グリコール酸、カプロラクトン、ジオキサノン、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリプロピレングリコール、イソシアネート、それらのコポリマー、それらの組み合わせ、などのような材料から合成されたものを含む合成の吸収性および非吸収性のモノマーおよびオリゴマーを含む。接着材料は、それらの用途に対して、極性の溶剤および無極性の溶剤を含む溶剤と組み合わされ得る。適切な溶剤は、アルコール(例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、塩素化炭化水素(例えば、塩化メチレン、クロロホルム、1,2−ジクロロエタン)、および脂肪族炭化水素(例えば、ヘキサン、ヘプテン、酢酸エチル)を含む。
【0027】
結合剤がヤーン10に適用され得る具体的な態様は、縫合糸の想定される用途に依存する。結合剤がストランド12および14に適用された後、ストランド12および14ならびに/または結合剤が、公知の硬化方法またはプロセス(例えば、紫外線硬化)あるいは本明細書中に記載されていない他の適切な方法またはプロセスを用いて固められ得る。
【0028】
実施形態において、ストランド12および14ならびに/または結合剤が、同時に紫外線硬化プロセスにさらされ得る。紫外線硬化プロセスに続いて、形成シースが後で取り外され、固定された並行配置状態のストランド12および14を含むヤーン10が生産され得る。
【0029】
実施形態において、ストランド12および14が固定された並行配置状態に固められたかまたは形成された後、ストランド12および14を含むヤーン10が、適切な被覆(図示されていない)によって処理され得る。実施形態において、被覆が、ストランド12および14を並行配置状態に維持することを容易にするために利用され得る。任意の生体適合性の被覆が、そこに適用され得、その生体適合性被覆には、米国特許出願公開第2008/0268243号、米国特許出願公開第2007/0207189号、米国特許出願公開第2007/0010856号、米国特許出願公開第2006/0188545号、米国特許出願公開第2004/0153125号および米国特許出願公開第2004/0147629号、ならびに米国特許第6,878,757号、米国特許第6,136,018号、米国特許第6,007,565号および米国特許第5,716,376号(それら各々の開示全体が参考として本明細書中に援用される)に開示されているものを含む。
【0030】
被覆および/またはシースは、不連続な位置に適用され得るか、または実施形態においては、縫合糸の長手方向の距離に沿って適用され得る。不連続な位置に適用される場合に、位置は、間欠的かつ/または不連続的であり得るか、あるいは縫合糸に沿った長さにおいて連続的に変化する、かつ/または増大変化する、かつ/または減少変化する1つ以上の部分的な長さ方向に沿ってであり得る。
【0031】
一旦、形成されると、複数の異種ヤーン10は、次いで、一体的に組まれたり、編まれたり、織られたりされ得る。組むことは、当業者に公知の任意の方法によってなされ得る。例えば、縫合糸および他の医療用デバイスのための組物構造は、米国特許第5,019,093号、米国特許第5,059,213号、米国特許第5,133,738号、米国特許第5,181,923号、米国特許第5,226,912号、米国特許第5,261,886号、米国特許第5,306,289号、米国特許第5,318,575号、米国特許第5,370,031号、米国特許第5,383,387号、米国特許第5,662,682号、米国特許第5,667,528号、米国特許第6,203,564号(それら各々の内容は参考として本明細書中に援用される)に記載されている。一旦、縫合糸が造られると、縫合糸は好ましくは、当業者に公知の任意の手段によって殺菌される。
【0032】
本開示に従って作成された異種ヤーンを用いて作られる組物の外科用デバイスは、デバイスの機能特性を改善するために、随意に1つ以上の被覆形成材料で被覆され得る。例えば、被覆は、表面潤滑性を向上させ、結び目のタイダウン挙動を向上させるために適用され得る。適切な被覆形成材料は、米国特許第3,867,190号、米国特許第3,942,532号、米国特許第4,047,533号、米国特許第4,452,973号、米国特許第4,624,256号、米国特許第4,649,920号、米国特許第4,716,203号、米国特許第4,826,945号、および米国特許第5,569,302号(それらの開示が参考として本明細書中に援用される)に開示されているものを含むが、それらに限定されない。被覆は、任意の公知の技術、例えば、被覆、浸せき、スプレー、または他の適切な技術を用いて適用され得る。
【0033】
デバイスに適用される被覆形成材料の量は、デバイスの特定の構造、そのサイズおよびその構造の正確な材料によって変わり得る。一般に、被覆形成材料は、被覆されるデバイスの重量あたり約0.5パーセント〜約4.0パーセント、またはより高い約1.0パーセント〜約3.0パーセントの好適な範囲によって構成され得る。
【0034】
ここで記載されている異種ヤーンから作成された外科用デバイスはまた、1つ以上の医療外科的に有用な物質(例えば、縫合糸が損傷部位または手術部位に適用されたときに、治癒プロセスを加速したり、有益に修正したりする物質)が染み込まされ得る。医学的に有用な薬品または治療薬品は、例えば、生物作用性物質(例えば、殺生物剤、抗生物質、抗菌薬、メディカント、成長因子、抗凝固剤、鎮痛剤、麻酔薬、抗炎症剤など)などの1つ以上の随意の成分の量を変えることを含み得る。メディカントは、動物に有益であり、治癒を促進する傾向がある物質として規定される。例えば、組物の縫合糸は、縫合部位に堆積される治療薬品を提供され得る。治療薬品は、その抗菌特性、損傷修復および/または組織成長を促進する能力、または血栓症などの特異適応のために選ばれ得る。組織の中に徐々に解放される多目的の抗生物質(硫酸ゲンタマイシン、エリスロマイシンまたは誘導体化されたグリコペプチド)などの抗菌薬品が、この態様において適用されることにより、手術部位または損傷部位における臨床的感染および亜臨床的感染に立ち向かうことを助力し得る。損傷修復および/または組織成長を促進するために、これらの目的のいずれかまたは両方を達成することが公知の1つ以上の生物学的作用材料もまた、組物の縫合糸に適用され得る。そのような材料は、任意のいくつかの人成長因子(HGF)、マゲイニン、血栓症を起こす組織または腎臓プラスミノーゲン活性薬、組織損傷フリーラジカルを除去するスーパーオキシドジスムターゼ、癌療法のための腫瘍壊死因子、コロニー刺激因子、インターフェロン、インターロイキン2、または免疫系を強化する他のリンフォカインなどを含む。
【0035】
本開示に従った異種ヤーンから作成される組物のデバイスはまた、例えば、生物学的に許容可能な可塑剤、酸化防止剤および着色剤を含み得、それらは、デバイスの異種ヤーンの中に染み込まされ得る。
【0036】
さらに、ヤーンおよび/または製品は、特定のニーズまたは意図される用途に依存して、製品の知覚される「滑りやすさ」を低減するために、所望に応じてプラズマ処理され得る。
【0037】
本開示に従って作成された組物の縫合糸101は、図2に例示するように、そこに取り付けられた針102を有することにより、針と縫合糸との組み合わせ100を提供し得る。針の取り付けを容易にするために、従来のティッピング剤が組物に適用され得る。縫合糸の2つの先端部は、いわゆる両端針縫合糸を提供するために、針を縫合糸の各々の端部に取り付けることが望ましくあり得る。針の取り付けは、米国特許第5,133,738号、米国特許第5,226,912号、および米国特許第5,569,302号(それらの開示は参考として本明細書中に援用される)に記載されているものを含む、かしめ、スウェージングなどの任意の従来の方法によって行われ得る。
【0038】
上記のように、本開示の異種ヤーンはまた、組物のテープ、ガーゼ、創傷包帯、ヘルニア修復メッシュ、脈管移植片(例えば、布および/またはチューブ)、吻合リング、補綴靭帯および腱、成長マトリックス、薬物供給デバイスおよび他の移植可能な医療用デバイスを含む他の外科用または医療用物品を形成するために利用され得る。
【0039】
初めに図3を参照すると、本発明に従って造られ、人の胸骨116の部分112、114を一体的に保持するように位置決めされた胸骨閉鎖リボン110が例示されている。バンド110は、本明細書中に記載された異種ヤーンから作られた組物製品である。図4において、図3中に示されたバンド110が、米国特許第5,318,575号(その開示は参考として本明細書中に援用される)に記載のように作成された細長い扁平な組物テキスタイル製品として、本開示に従った異種ヤーンが構造に用いられることを除いて非常に詳細に示されている。
【0040】
従って、一用途においては、図3中に示されたような人の胸骨116の割れた部分112、114のまわりに補強構造110を位置決めすることが可能であり、それによって、十分な力が、バンドを縛ることによってまたは図3中に示されている結び目122によってバンドに加えられ得、または他の技術(例えば、バックルなどの機械的な接続デバイス)によって、有意な力が加えられ、かつ保持されることにより、胸骨部分112、114の自然治癒を促進し得る。例えば、米国特許第4,813,416号を見られたい。
【0041】
図5において、概して円形断面の螺旋状の組物構造で、かつ概して円形断面構成の組物のロープ様の構造を形成するように組み合わされた異種ヤーン126から成る細長い、代替の実施形態が示される。円形断面を有する組物構造が、米国特許第3,565,077号および米国特許第5,019,093号に記載されている。図6において、異種ヤーン130から造られたシースを有し、かつコア132を有する中空の組物構造128が示されている。
【0042】
本開示に従った異種ヤーンから作成された外科用デバイスは、当業者に公知の任意の従来の態様で包装され、かつ殺菌され得る。
【0043】
様々な修正が本明細書中に開示された実施形態になされ得ることが理解され得る。例えば、本明細書中に記載された組物製品のいずれかにおいて、ヤーンの1つ以上が本開示に従った異種ヤーンであり得、一方で、残りの部分が吸収性または非吸収性の繊維またはフィラメントから作られる。コア/シース構造を含む組物製品に対する1つの例示的な例としては、コアが本開示に従った異種ヤーンであり得、一方で、シースヤーンが、必須ではないが生体吸収性の繊維を含む他の生体適合性の繊維から作られ得る。従って、上記の説明は、限定としてではなく、単に好適な実施形態の例示として解釈されるべきである。当業者は添付の特許請求の範囲の精神および範囲の内で他の修正を想到し得る。
【符号の説明】
【0044】
10 異種のヤーン
12 ポリオレフィンのストランド
14 ポリエステルのストランド
100 針と縫合糸との組み合わせ
101 縫合糸
102 針
A 結合剤
I 隙間
n ノード

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外科用デバイスであって、
少なくとも1つの異種ヤーンであって、該異種ヤーンは、長手方向の軸を規定し、かつ複数の直線的に配置されたポリエステルストランドを、複数の直線的に配置されたポリオレフィンストランドと密接な接触状態で含む、異種ヤーン
を備え、
該複数のポリエステルストランドおよび該複数のポリオレフィンストランドは、該ヤーンの長さ方向に沿って互いと、該長手方向の軸とに並行して延びる、
外科用デバイス。
【請求項2】
前記ポリエステルストランドは、ポリエチレンテレフタレートを含む、請求項1に記載の外科用デバイス。
【請求項3】
前記ポリオレフィンストランドは、ポリエチレンを含む、請求項1に記載の外科用デバイス。
【請求項4】
前記ポリオレフィンストランドは、超高分子量ポリエチレンを含む、請求項1に記載の外科用デバイス。
【請求項5】
前記少なくとも1つの異種ヤーンは、ポリオレフィンまたはポリエステルを除く材料から作られたストランドをさらに含む、請求項1に記載の外科用デバイス。
【請求項6】
組まれた複数の異種ヤーンを含む、請求項1に記載の外科用デバイス。
【請求項7】
編まれた複数の異種ヤーンを含む、請求項1に記載の外科用デバイス。
【請求項8】
織られた複数の異種ヤーンを含む、請求項1に記載の外科用デバイス。
【請求項9】
生体適合性の外科用デバイスであって、
複数の異種ヤーンから作成されたテキスタイルであって、該複数の異種ヤーンは、各々が長手方向の軸を規定し、かつ直線的に配置されたポリエチレンテレフタレートのストランドを、直線的に配置された超高分子量ポリエチレンのストランドと密接な接触状態で有する、テキスタイル
を備え、
該複数のポリエチレンテレフタレートストランドおよび該複数の超高分子量ポリエチレンストランドは、該ヤーンの長さ方向に沿って互いと、該長手方向の軸とに並行して延びる、
生体適合性の外科用デバイス。
【請求項10】
前記テキスタイルは、組まれた異種ヤーンを含む、請求項9に記載の生体適合性の外科用デバイス。
【請求項11】
前記テキスタイルは、編まれた異種ヤーンを含む、請求項9に記載の生体適合性の外科用デバイス。
【請求項12】
前記テキスタイルは、織られた異種ヤーンを含む、請求項9に記載の生体適合性の外科用デバイス。
【請求項13】
前記テキスタイルは、縫合糸、テープ、ガーゼ、創傷包帯、ヘルニア修復メッシュ、脈管移植片、吻合リング、補綴靭帯、補綴腱、成長マトリックスおよび薬物供給デバイスから成る群から選択されたデバイスとしての使用に適応する、請求項9に記載の生体適合性の外科用デバイス。
【請求項14】
前記テキスタイルは、組物の縫合糸である、請求項9に記載の生体適合性の外科用デバイス。
【請求項15】
縫合糸であって、
少なくとも1つの異種ヤーンであって、該異種ヤーンは、長手方向の軸を規定し、かつ複数の直線的に配置されたポリエステルストランドを、複数の直線的に配置されたポリオレフィンストランドと密接な接触状態で有する、異種ヤーン
を備え、
該複数のポリエステルストランドおよび該複数のポリオレフィンストランドは、該ヤーンの長さ方向に沿って互いと、該長手方向の軸とに並行して延びる、
縫合糸。
【請求項16】
前記ポリエステルストランドは、ポリエチレンテレフタレートを含む、請求項15に記載の縫合糸。
【請求項17】
前記ポリオレフィンストランドは、ポリエチレンを含む、請求項15に記載の縫合糸。
【請求項18】
前記ポリオレフィンストランドは、超高分子量ポリエチレンを含む、請求項15に記載の縫合糸。
【請求項19】
前記異種ヤーンは、1つ以上の生物学的作用材料を含む構成物によって被覆される、請求項15に記載の縫合糸。
【請求項20】
前記複数のポリエステルストランドおよびポリオレフィンストランドは、複数の隙間を形成する一体的な群にされ、該複数の隙間は、前記ヤーンの長さ方向に沿って互いと、該ポリエステルおよびポリオレフィンストランドとに並行して延びる、請求項1に記載の外科用デバイス。
【請求項21】
外科用デバイスによって使用するためのヤーンを製造する方法であって、
複数の異種ストランドを並んだ様態で位置決めすることであって、それによって、該複数の異種ストランドは、互いと並行関係に維持される、ことと、
結合剤を該複数の異種ストランドに適用することと、
該結合剤を固めることと
を包含する、方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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