説明

外装面用の表面撥水保護剤

【課題】 乗用車等の外装面の表面に初期撥水、撥油性に優れ、防汚性、耐洗車性、耐候性、とりわけ耐油汚れ性に優れ、さらにそれらの持続性に優れた外装面用の表面撥水保護剤を提供すること。
【解決手段】 湿気硬化性液状シリコーンオリゴマーからなる基材(A)を100質量部、硬化触媒(B)を0.1〜40質量部、湿気硬化性フッ素含有シラン化合物(C)としてパーフルオロポリエーテルシランを0.1〜100質量部、(A)(B)(C)の各成分を溶解または分散し得る揮発性溶剤(D)としてシリコーン系揮発性溶剤、炭化水素系揮発性溶剤、極性基含有揮発性溶剤、揮発性フッ素溶剤の少なくとも1種または2種以上を(A)(B)(C)の各成分の合計1質量部に対して1000質量部以下の割合で含有することを特徴とする外装面用の表面撥水保護剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、外装面に塗布する表面撥水保護剤に関するものであって、乗用車、トラック、バス、単車、飛行機、電車あるいは船舶などの外装の塗装面、ガラス面またはプラスチック面、あるいは自動車のタイヤ、アルミホイール、ミラー、あるいはビル、家屋などの壁面や屋根部分、その他として、石油や液化ガスなどの各種貯蔵タンクの外壁、高速道路の防護壁あるいは橋脚などの各種構造物の外装面(以下、単に「外装面」という。)に塗布する表面撥水保護剤に関する。これらの外装面に塗布した保護膜が汚れた場合でも洗浄が容易にできる撥水性、撥油性を有して長期に外装面の美観を保持しうるといった、特に乗用車などの車両の塗装面に好適な外装面の表面撥水保護剤に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、乗用車その他の車などの外装の塗装面やあるいは種々の家具の表面や建造物の壁面などの表面に塗布し、撥水性を付与するための各種構造物の外装面用の塗布剤が開発されて使用されている。これらのうち、特に乗用車など車両の塗装面に使用する塗布剤は、ワックスタイプの塗布剤やエマルジョンタイプの塗布剤であり、これらの塗布剤を塗布する用具や方法には、塗布用の布地やスポンジあるいはスエード調の合成皮革で塗布するものあるいはスプレーで塗布するものなどある。これらの種々のタイプの塗布剤の中で、特にエマルジョンタイプの塗布剤が使用の便利さから種々開発されている。
【0003】
自動車の車体の塗装面に対してカーポリッシュ(オートモービルポリッシュ)として優れた性質を有する、特定のアミノ変性シリコーンオイルと界面活性剤とから乳化した高撥水性である撥水性付与エマルジョンが提案されている(例えば、特許文献1参照。)。しかし、さらに塗布後に簡単に仕上げができ、初期撥水性により一層に優れた外装面用の表面撥水保護剤が要望されている。
【0004】
さらに、長期にわたって車両の金属面、塗装面または樹脂面の、艶および光沢、撥水性や防汚性を洗浄しても維持できるとした車両用コーティング剤として、湿気硬化性シリコーンオリゴマーと、硬化触媒と、両末端型反応性シリコーンオイルを含有し、両末端型反応性シリコーンオイルの配合割合が、湿気硬化性シリコーンオリゴマー100質量部に対して、25質量部以上である車両用コーティング剤が提案されている(例えば、特許文献2参照。)。しかし、とりわけ乗用車等の車両用のコーティング剤として用いられる外装面用の表面撥水保護剤においては、長期の耐久性や防汚性が志向されているので、塗布後の仕上げが簡便で優れた初期撥水性を備えるのみならず、洗浄後の長期の耐久性や防汚性に優れた表面撥水保護剤が要望されているのであって、これまでにそうした期待に十分に応えうる保護剤は提供されていなかった。
【0005】
そこで、防汚性、撥水性、光沢性に優れるとともに、長期間にわたりこれらの効果が持続し、変色がない塗膜を形成させることを目的として、
一般式(1):CF3(CF2mCH2MenSi(OMe)r,但しm=5〜7,n=0〜1,r=2〜3,で表されるフルオロアルキルシランと、2官能性アルキルアルコキシシラン及び3官能性アルキルアルコキシシランとを重量比で2:8〜0.1:9.9の割合で含み、該2官能性アルキルアルコキシシランと3官能性アルキルアルコキシシランとの含有割合を重量比で75:25〜85:15とすることにより、2官能性アルキルアルコキシシランと3官能性アルキルアルコキシシランとの共加水分解3次元縮合体と、フルオロアルキルシラン加水分解縮合物とを含むことを特徴とする、乗り物塗装面用コーティング組成物が提案されている(たとえば、特許文献3)。
しかしながら、特許文献3の記載にあるように、接触角測定の結果を例にとってみても、750時間程度の経過で、接触角は初期から15%程度も小さくなっており、初期撥水性に比して撥水性の低下が大きく、また光沢度測定結果も同様に初期の性能から大きく低下しており、車両用コーティング剤において求められつつある、さらなる長期の性能維持や耐洗車性能、防汚性の持続性といった観点からは、未だ十分なものとはいえなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2004−339305号公報
【特許文献2】特開2008−75021号公報
【特許文献3】特許第3847127号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明が解決しようとする課題は、乗用車、電車、航空機、船舶などの外装の塗装面や種々の家具の表面、橋脚などの構造物、ビルや家屋等の建造物の外壁面などの外装面の表面に塗布する撥水性および撥油性に優れた表面保護剤であって、塗布のみで、あるいは塗布後に拭取ることによりに簡易に仕上げができるとともに、少量の保護剤で初期撥水、撥油性に優れた塗布面を形成しうるものであって、防汚性、耐洗車性および耐候性ならびに耐油汚れ性にも優れ、さらにそれらの持続性に優れた外装面用の表面撥水保護剤を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するための本発明の手段は、請求項1の発明では、湿気硬化性液状シリコーンオリゴマーからなる基材(A)100質量部に対して、硬化触媒(B)を0.1〜40質量部有し、湿気硬化性フッ素含有シラン化合物(C)としてパーフルオロポリエーテルシランを0.1〜100質量部有し、(A)(B)(C)の各成分を溶解または分散し得る揮発性溶剤(D)としてシリコーン系揮発性溶剤、炭化水素系揮発性溶剤、極性基含有揮発性溶剤、揮発性フッ素溶剤の少なくとも1種または2種以上を(A)(B)(C)の各成分の合計1質量部に対して1000質量部以下の割合で含有することを特徴とする外装面用の表面撥水保護剤である。
【0009】
請求項2の発明では、湿気硬化性フッ素含有シラン化合物(C)は実質的に炭素数1〜3のアルコキシ基であることを特徴とする請求項1に記載の外装面用の表面撥水保護剤である。
【0010】
請求項3の発明では、湿気硬化性フッ素含有シラン化合物(C)は数平均分子量が500〜10000のパーフルオロポリエーテルシランであって、かつ、(C)成分を可溶化するために揮発性溶剤(D)として揮発性フッ素溶剤を(D)成分中に5〜100質量%を含むことを特徴とする請求項1または2に記載の外装面用の表面撥水保護剤である。
【0011】
請求項4の発明では、撥水性の向上および保持するために、湿気硬化性フッ素含有シラン化合物(C)は、湿気硬化性液状シリコーンオリゴマーからなる基材(A)100質量部に対して1〜50質量部で含有することを特徴とする請求項1〜3に記載の外装面用の表面保護剤である。
【発明の効果】
【0012】
本発明の外装面用の表面撥水保護剤は、乗用車、電車、航空機、船舶などの外装の塗装面や種々の家具の表面、橋脚などの構造物、ビルや家屋等の建造物の外壁面などの外装面の表面に塗布するときには、スプレーによる塗布のみで簡便に塗布面が形成でき、もしくは従来のスポンジやポリッシャーなどの塗布具によって本発明の表面保護剤を塗布しても簡易に塗り拡がり、塗布面を形成することができるので、少量の保護剤で初期撥水、撥油性に優れた塗布面を形成しうる。また、塗布後に拭取ることで簡単な仕上げをすることもできるので施工時の調整が容易である。本発明の外装面用の表面撥水保護剤による塗布面は、塗布面形成後の初期撥水性に優れることから、外装面の外観の状態を施工初期から良好に得ることができる。また、撥油性にも優れることから水汚れのみならず油の汚れに対する耐汚れ性に優れており、油分の混在する環境下に暴露されても、油分の汚れが付着しにくくかつその洗浄もしやすいので、従来よりも外観の状態を良好に保持することが容易となっている。また、塗布面は変形、変色、劣化等を起こしにくく、耐候性にも優れている。さらに洗車などの洗浄を繰り返し行っても効果の低下が少なく長期に外観の状態を良好に保持できるといった、洗車等の繰り返し洗浄に対する耐久性にも優れている。すなわち、本発明の外装面用の表面撥水保護剤の塗布面は、撥水、撥油による初期の防汚性、耐油汚れ性に優れるだけでなく、耐候性および耐洗浄性に優れることで、持続的に長期の防汚性、とりわけ耐油汚れ性を維持することができる。
【0013】
請求項2の発明のように、湿気硬化性フッ素含有シラン化合物(C)を、実質的に炭素数1〜3のアルコキシ基を有することで、塗布初期の作業性を保ちつつも、炭素数が少ないことで硬化反応が進みやすくなるので、早期に初期撥水性能を得ることができる。
【0014】
請求項3の発明のように、揮発性溶剤(D)として揮発性フッ素溶剤を(D)成分中に5〜100%含むことで、数平均分子量が500〜10000のパーフルオロポリエーテルシラン(C)が可溶化され、(A)、(B)と相溶し、十分に混和されるので、塗布作業も良好で、塗布面の効果もより良好に発揮されることとなる。
【0015】
請求項4の発明のように、湿気硬化性フッ素含有シラン化合物(C)を湿気硬化性シリコーンオリゴマーからなる基材(A)100質量部に対して1〜50質量部とすることで、より撥水性が向上し皮膜が安定的となるので、より持続的に撥水性が保持でき、防汚性も良好に保たれることとなる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】洗浄試験結果の図である。すなわち、試験片の塗装鋼板に、実施例7の溶液を塗布したものとA社市販品を塗布したもの、および未塗布のものについての洗浄試験結果を、ブラシの往復回数(繰り返し洗浄回数)と水滴の接触角の変化の様子として表した図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明を実施するための形態について、本発明に係る外装面用の表面撥水保護剤について説明する。
前提として、この外装面用の表面撥水保護剤は、各種の外装面を洗浄して脱脂した後に、塗布施工する。塗布方法としては、スポンジや専用形状のスポンジ塗布具(特開2006−297354参照)を用いての手塗り、ポリッシャーなどを用いた機械塗布、エアガン等によるスプレー状に噴霧することによる吹付け塗布、浸漬など、各種の塗布方法を用いて外装面の表面に塗布面を形成させることができる。また、乗用車の外装面などの平滑な塗装面上には、これを上回る非常に良好な美観といった良好な外観が特に要求されるが、そうした場合にも、本発明の表面撥水保護剤を塗布時に拭取りをすることにより、カーワックスのような簡単に拭き取り仕上げができるので、平滑で均一な塗布面を簡易に塗装面上に形成させることができる。
また、本発明の表面撥水保護剤は、適度な揮発性と粘性を有することから微細な液滴として噴霧することができるので、少量の表面撥水保護剤を広範囲に効率よく塗布することに適しており、エアガン等で吹付けることで、拭き取り仕上げをせずとも、良好な塗布面を形成させることもできる保護剤である。
【0018】
以下に、表を参照しつつ、本発明に係る外装面用の表面撥水保護剤の主要成分について説明する。
請求項1に係る発明の必須成分の一つである基材(A)成分は、湿気硬化性の液状のシリコーンオリゴマーからなる。この湿気硬化性の液状のシリコーンオリゴマーには、次の式(2)のような、湿気により架橋硬化して造膜する性質を有する湿気硬化性炭化水素基含有シリコーンオリゴマーが用いられる
(R)−Si(O)(4-a-b)/2(X)b ・・・式(2)
ただし、Rは炭素数1〜8の置換または非置換の炭化水素基であり、Xはアルコキシ、アシル、ハロゲンなどの湿気硬化性基であり、aは0〜2未満、好ましくはaは0〜1.5であり、bは湿気硬化性基が5%以上となる値である。
中でもRがメチル基、エチル基などのアルキル基、特にメチル基が好ましく、Xはメトキシ基、エトキシ基、イソプロポキシ基などのアルコキシ基、特にメトキシ基が好ましい。この場合、上記において、aが1.5を超えると、得られる皮膜の強度が不足して、繰り返し洗浄などでの耐久性が低下しやすくなるので、aは0〜1.5であることが好ましい。
【0019】
(A)成分は、他の必須成分のひとつである(B)成分の硬化触媒による促進作用によって、塗布後迅速に緻密な架橋構造を有する硬化皮膜を早期に形成し、優れた耐候性を呈した、耐汚染性に優れた架橋皮膜を形成する。この場合、(A)成分を100質量部とするとき、(B)成分の硬化触媒は0.1〜40質量部とする。
【0020】
(A)成分の湿気硬化性液状シリコーンオリゴマーとしては、信越化学(株)からKC89S、KR400、KR401、KR500、X−40−2327、X−40−9246、X−40−9250、KR401N、X−40−9225、X−40−9227、X−40−9247、X−40−9250、KR510、KR9218、KR213、X−41−1056、X−41−1810、X−41−1805、X−41−1053、X−40−2651、X−40−2308、X−040−9238、GE東芝シリコーン(株)からXC96−B0446、東レ・ダウコーニング(株)からSR2402、AY42−161、AY42−163、AY42−182、AZ−6101、旭化成ワッカー(株)からSILRES MSE 100、SILICATE TES 40 WNなどの名称で市販されているものが好適に例示できる。
【0021】
なお、上記の信越化学(株)のKR−400(アルミ系触媒10質量%配合)、KR401(チタン系触媒5質量%配合)、X−40−2327(リン酸系触媒5%配合)には、予め硬化触媒の(B)成分が配合されている。そこで、表1−1、表1−2においては、これらの硬化触媒は(A)成分由来として記載している。
【0022】
(A)の硬化触媒として用いられる(B)成分としては、有機金属化合物、酸、アルカリなどが用いられる。
(B)成分の硬化触媒である有機金属化合物としては、アルミニウム、チタニウム、ジルコニウム、スズなどの化合物が挙げられ、具体的には、ジ−イソプロポキシ(エチルアセトアセテート)アルミニウム、イソプロポキシビス(エチルアセトアセテート)アルミニウム、トリス(エチルアセトアセテート)アルミニウム、ジ−イソプロポキシビス(アセチルアセトナート)チタニウム、ジ−イソプロポキシビス(エチルアセトアセテート)チタニウム、テトラキス(2−ブトキシエチルアルコラート)チタニウム、ジブトキシビス(エチルアセトアセテート)ジルコニウム、テトラキス(2−ブトキシエチルアルコラート)ジルコニウム、ジブチルスズジラウレート、ジブチルスズビス(オクチロキシカルボニルメチルチオラート)などが例示され、また市販品として信越化学(株)のD−20、D−25、DX−9740などが例示される。
【0023】
(B)成分の硬化触媒である酸触媒としては、蟻酸、酢酸、シュウ酸、クエン酸、トリフルオロ酢酸、パラトルエンスルホン酸、塩酸、硫酸、およびリン酸などが挙げられ、市販品として信越化学(株)製のD−220、X−40−2309が例示できる。
【0024】
(B)成分の硬化触媒であるアルカリ触媒としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、アンモニア、エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、ブチルアミン、ジブチルアミン、トリブチルアミン、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、メチルジエタノールアミン、ジメチルエタノールアミン、エチレンジアミン、トリエチレンジアミン、モルホリン、ピペリジン、ジアザビシクロウンデカン、アミノシラン類、アミノ変性シリコーン類、各種の1級または2級アミンとエポキシ基含有シランカップリング剤との反応物、ジシラザンなどの各種有機・無機アルカリ化合物が例示され、市販品としては信越化学(株)製のKP−390などが例示される。
【0025】
これら(B)成分は、(A)成分100質量部に対して0.1〜40質量部の範囲で加えるのが好ましい。この範囲より少ないと、十分な硬化速度が得られず、これより多いと、ポットライフ( 元の包みが開封されたあと、あるいは促進剤その他の添加剤が混合された後での、本発明の保護剤を有効に外装面に塗布しうる期間)が短くなり、作業性が低下するうえに、硬化皮膜の物性にも悪影響を与えるので好ましくない。
【0026】
次に、請求項1の発明に係るさらなる必須成分である(C)成分の湿気硬化性フッ素含有シラン化合物は、加水分解性置換基含有シリル基が(A)成分と縮合して化学結合を形成することにより、(A)成分が構成する耐久性架橋硬化皮膜の物性を低下することなく、持続性のある撥水、撥油性能を皮膜に付与し、防汚性が発現するのに必須な成分である。
【0027】
本発明の(C)成分の湿気硬化性フッ素含有シラン化合物について説明する。パーフルオロポリエーテルシラン(perfluoropolyether silanes)は、本発明の保護剤に適用すると、その塗布面に耐油汚れ性や耐洗車性(耐洗浄性、長期の撥水性)に優れた特性を付与できることがわかった。そこで本発明の(C)成分は、パーフルオロポリエーテルシランを有することを特徴としている。
ところで、湿気硬化性フッ素含有シラン化合物には、パーフルオロポリエーテルシラン以外にも、フルオロアルキルシランなどがある。耐油汚れ性や耐洗車性(耐洗浄性、長期の撥水性)などに優れた特性を付与するためには、本発明においてパーフルオロポリエーテルシランが含まれていることは必須であるが、その他の湿気硬化性フッ素含有シラン化合物も、併せて用いることが可能である。たとえば、アルコール由来の実質的に炭素数が1〜3程度のアルコキシ基といった加水分解性置換基を含有するシリル基を末端に持つフルオロアルキルシランなどが、本発明の溶液に組合せ可能である。こうしたフルオロアルキルシランは市販品として入手可能であり、具体的な例としてはアヅマックス(株)のSIT8176.0((トリデカフルオロ1,1,2,2-テトラヒドロオクチル)トリメトキシシラン)、SIN6697.7(ノナフルオロヘキシルトリメトキシシラン)などがある。
【0028】
さて、(C)成分のパーフルオロポリエーテルシランとしては、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、イソプロポキシ基などの加水分解性置換基含有シリル基を両末端または片方の末端あるいは側鎖に有するものであり、(A)成分に直接、または下記の(D)成分によって(A)成分と溶解または分散するものであれば特段に制限はない。もっとも可溶化しやすいという意味では、湿気硬化性フッ素含有シラン化合物の中でもパーフルオロポリエーテルシランの数平均分子量が500〜10000のものがより好ましい。
【0029】
そして、上記のメトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基などのアルコキシ基は、強固な架橋皮膜を早期に形成せしめる観点から、とりわけ実質的に炭素数が1〜3のアルコキシ基であることが好ましい。たとえば、車両用のコーティング剤として本発明の実施品を車両に施工する場合には、養生場所などの関係で、養生時間を数日間も確保することは現実的に困難であるから、早期に皮膜が形成されることが要請されているからである。早期の皮膜形成ができるならば、実質的に炭素数1〜3のものに影響しない程度の不純物や炭素数4以上のものが含まれ得ることを妨げるものではない。
【0030】
パーフルオロポリエーテルシランは市販品として入手可能である。信越化学(株)からKY−164、KY−130、KY−108、ソルベイ ソレクシス(株)Fluorolink S10、ダイキン工業(株)オプツールDSXなどが挙げられる。特に、信越化学(株)KY−164、KY−108、ソルベイ ソレクシス(株)Fluorolink S10が市販されているもので好適に使用できる。
【0031】
また、上記の(C)成分のパーフルオロポリエーテルシランはイソシアネート基を含有するアルキルシラン化合物とヒドロキシ基含有のパーフルオロポリエーテルを反応させることでも作成することができるがこれに限定されることはない。
【0032】
もっとも、パーフルオロポリエーテルシランは、耐洗車性や水汚れや油汚れの防汚性の持続性に特に優れるので、(C)成分としてより好適である。そこで本発明では(A)成分100質量部に対して(C)成分としてパーフルオロポリエーテルシランを0.1〜100質量部有するものとしている。
【0033】
(C)成分は(A)成分で構成される硬化被膜に化学的な結合をして持続性のある撥油性を付与するのに必須な成分である。これを、フッ素オイルなど非反応性撥油性付与剤に置き換えてしまうと、経時的にブリードアウトし、長期の撥油性が得られがたい。
一方、本発明の組成物を用いることにより、単なる皮膜の耐久性に優れるのみでなく、初期には優れた撥水、撥油性を示すとともに、撥水、撥油性の持続にも優れる強固な架橋皮膜が得られることとなる。撥油性があると、油汚れが付着しにくくなり、また洗いやすくなるので、油分に対する防汚れ性が向上する。
【0034】
(C)成分の使用量は、(A)成分100質量部に対して0.1〜100質量部の範囲で使用するのが好ましい。本成分の撥水性を向上させるために、(A)成分の100質量部に対して0.1質量部以上を用いるのが好ましく、他方、皮膜の強度を低下させずにかつ未反応成分のブリードアウトによる悪影響を防止するために100質量部を越えないことが好ましい。とりわけ、撥水性を良好としつつ未反応成分の悪影響を押さえるには、(C)成分の使用量を(A)成分100質量部に対して1〜50質量部の範囲内とすることがより好ましい。すなわち、(C)成分を1質量部以上とすることで、より撥水性能を好適に得ることができるが、他方、(C)成分が多くなると(A)成分の硬化による成膜の強度が低下して繰り返しの洗浄等で塗布面が剥離しやすくなるので、皮膜の安定性のためには(C)成分を50質量部以下とすることが望ましい。
【0035】
請求項1に係る発明における(D)成分としては、シリコーン系揮発性溶剤、炭化水素系揮発性溶剤、極性基含有揮発性溶剤、揮発性フッ素溶剤の1種または2種以上からなる(A)(B)(C)の各成分を溶解または分散し得る揮発性有機溶剤が用いられる。
【0036】
(D)成分のシリコーン系揮発性溶剤としては、粘度が5mm2/s以下のポリジメチルシロキサンオイルや、ヘキサメチルシクロトリシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサンなどの環状ジメチルシロキサン類、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、トリメチルメトキシシランなどが挙げられ、具体的には信越化学(株)製のKF96L−0.65cs、KF96L−1cs、KF96L−1.5cs、KF96L−2cs、KF96L−5cs、KF994、KF995、GE東芝シリコン(株)製のTSF405、TSF3802A、旭化成ワッカー(株)製のAK0.65などが例示される。
【0037】
(D)成分の炭化水素系揮発性溶剤の例としては、n−パラフィン系炭化水素溶剤、イソパラフィン系炭化水素溶剤、ナフテン系炭化水素溶剤、あるいは、これらを主体とする石油留分、残油の改質あるいは分解物の留分などが例示され、イソパラフィン系炭化水素溶剤としてはイソヘキサン、イソオクタン、イソノナン、イソデカン、出光興産(株)製のIPソルベントの1016(bp93〜140℃)、1620(bp166〜202℃)(実施例用)、2028(bp213〜262℃)、2836(bp277〜353℃)、日本石油製アイソゾール200(bp95〜155℃)、300(bp170〜189℃)、400(bp206〜257℃)、n−パラフィン系炭化水素溶剤として、n−ヘキサン、n−オクタン、n−デカン、n−ドデカン、0号ソルベントL、0号ソルベントM、0号ソルベントH(いずれも日本石油化学(株)製)、ナフテン系炭化水素溶剤としてシクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、エチルシクロキサン、デカリン、ナフテゾールL、M、H(いずれも日本石油化学(株)製)が、これらを主体とする石油留分、残油の改質あるいは分解物の留分としては、石油エーテル、ガソリン、軽油、灯油、ミネラルスピリット、ターペンなどが挙げられる。
【0038】
(D)成分の極性基含有揮発性溶剤としては、ヒドロキシル基、エーテル基、エステル基、カルボニル基、カプロキシル基などを有するアルコール、グリコールエーテル、グリコールエーテルエステル、エーテル、エステル、ケトン類が挙げられる。
【0039】
これらのうち、アルコール類としては、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、イソブタノール、sec−ブタノール、t−ブタノール、n−ペンタノール、ネオペンチルアルコール、n−ヘキサノール、n−オクタノール、イソオクタノール、n−デカノール、n−ドデシアルコール、シクロペンタノール、シクロヘキサノールなどが挙げられる。
【0040】
次に、グリコールエーテルおよびグリコールエーテルエステルとしては、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノn−プロピルエーテル、エチレングリコールn−ブチルエーテル、エチレングリコールモノt−ブチルエーテル、エチレングリコールモノヘキシルエーテル、エチレングリコールモノ2−エチルヘキシルエーテル、エチレングリコールモノベンジルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノn−プロピルエーテル、ジエチレングリコールモノn−ブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノn−プロピルエーテル、トリエチレングリコールモノn−ブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノn−プロピルエーテル、プロピレングリコールモノi−プロピルエーテル、プロピレングリコールモノn−ブチルエーテル、プロピレングリコールモノt−ブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノn−プロピルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノi−プロピルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノn−ブチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノn−プロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノi−プロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノn−ブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノt−ブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、トリプロピレングリコールモノエチルエーテル、3−メトキシ−1−プロパノール、3−メトキシ−1−ブタノール、3−メトキシブチルアセテート、3−メトキシ−3−メチル−1−ブタノール、3−メトキシ3−メチルブチルアセテート、ジエチルエーテル、ジi−プロピルエーテル、ジブチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールジブチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテルなどが挙げられる。
【0041】
エステル類としては、エチルアセテート、プロピルアセテート、ブチルアセテート、エチレングリコールジアセテート、1、4−ブタンジオールジアセテートなどが挙げられる。
【0042】
ケトン類としては、アセトン、メチルエチルケトン、メチルi−ブチルケトン、ジi−プロピルケトン、ジi−ブチルケトンなどが挙げられる。
【0043】
(D)成分の揮発性フッ素溶剤としては、ハイドロフルオロカーボンやハイドロフルオロエーテルなどが挙げられ、具体的には旭硝子(株)製のAC−6000、AC−2000、AE−3000、住友スリーエム(株)製のFC−8283、FC−40、HFE7200、HFE7300、HFE7600などが例示される。
【0044】
以上のとおり(D)成分の揮発性有機溶剤は(A)(B)(C)成分を溶解もしくは分散しうるものであれば種々に適用しうるが、これらの中では、特にハイドロフルオロカーボン、ハイドロフルオロエーテルの単独使用、もしくは、ハイドロフルオロカーボン、ハイドロフルオロエーテルに、さらにシリコーン系揮発性溶剤、イソパラフィン系炭化水素溶剤、n−パラフィン系炭化水素溶剤、ナフテン系炭化水素溶剤、灯油、ミネラルスピリット、ターペンなどの炭化水素系溶剤を併用して使用するのが好ましい。
【0045】
なぜなら、貯蔵安定性の点でみると、揮発性フッ素溶剤を含まないものは、時間の経過で徐々に沈殿物を生じることがあり、若干、貯蔵安定性が低くなるからである。また、車両用コーティングとして用いる場合には、塗布後に拭き上げるなどの作業をすることから作業性に違いが生じるほか、揮発性の特性の差により拭き上げた後の皮膜が呈する撥水性や撥油性には違いが生じやすいことから、撥水性、撥油性といった防汚性やその持続性の前提となる特性を発揮するうえでも、ハイドロフルオロカーボンやハイドロフルオロエーテルといった溶剤が(D)成分に入ることが好適だからである。
また、揮発性フッ素溶剤が(A)成分100質量部に対して5質量部を下まわると、(C)成分が可溶化しにくくなる。そこで、貯蔵安定性の面からも、(D)成分中に揮発性フッ素溶剤を5〜100%で混合するのが好ましい。
【0046】
ところで、エアガンで広範囲に少量の溶液を効率よくスプレー状に噴霧すれば、こうした拭き上げによる撥水性や撥油性の低下を気にせずともよくなるのであり、本発明における(D)成分は、揮発性フッ素溶剤含有のものが好適とはいえ、揮発性フッ素溶剤含有のもののみに限定されるものではない。
【0047】
上記の(A)成分、(B)成分、(C)成分の合計1質量部に対する(D)成分の割合は、1000質量部以下にするのが好ましい。(D)成分の量が1000質量部を超える場合は、粘度が低くなりすぎて、塗布時に外装面上ではじかれやすくなり、また、1回の塗布で形成される膜の厚みが薄くなりすぎてしまい、性能が発揮でない場合があるので、作業性の面からも好ましくなくなるからである。
【0048】
本組成物は、さらに初期の撥水性を高めるために、(C)成分に加えて、エポキシ基、アミノ基、メルカプト基、アルコキシシリル基、ビニル基などの官能基を有する変性シリコーンオイルや、固体の撥水性シリコーン樹脂などを少量加えることができる。また、紫外線吸収剤、赤外線吸収剤、紫外線安定剤、酸化防止剤、研磨剤、顔料、染料、香料、消臭剤、粘度調整剤、乾燥剤、はじき抑制剤、拭き取り性向上剤などを添加することもできる。
【0049】
本発明の外装面用の表面撥水保護剤を製造する原料について、実施例1〜10および比較例1〜8を表1に示す。この表1に示す(A)、(B)、(C)、(D)の各原料は、ドライボックス中にてステンレスビーカーに秤取し、約10分間スターラーで撹拌し、各実施例および各比較例の組成物である外装面用の表面撥水保護剤に調製した。以下の実施例および比較例において、%は質量%を示す。
【実施例1】
【0050】
実施例1は、湿気硬化性液状シリコーンオリゴマーの(A)成分として信越化学(株)のX−40−9225を0.20%およびKC89を0.99%の小計1.19%、硬化触媒(B)として信越化学(株)のD−25を0.02%、末端にアルコキシシリル基を有する湿気硬化性フッ素含有シラン化合物(C)として信越化学(株)のアルコキシ末端パーフルオロポリエーテルシランKY−164を0.05%、揮発性溶剤(D)として旭硝子(株)の揮発性フッ素溶剤のAC6000を98.70%および(C)成分由来分を0.04%の小計98.74%からなる溶液である。(A)成分、(B)成分、(C)成分、(D)成分の合計は100%である。したがって、(A)成分を100質量部とするとき(B)成分は1.68質量部であり、(C)成分は0.84質量部であり、揮発性フッ素溶剤は(D)成分中の質量100.00%であり、さらに上記の(A)成分、(B)成分、(C)成分、(D)成分の小計量を1質量部とすると、(D)成分は80.93質量部で、いずれも請求項1で規定する条件を満足するものであった。調整直後の液の外観は良好であった。
【実施例2】
【0051】
実施例2は、湿気硬化性液状シリコーンオリゴマーの(A)成分として信越化学(株)のX−40−9225を4.60%およびX−40−9250を1.10%の小計5.70%、硬化触媒(B)として信越化学(株)のDX−9740を0.35%およびD−25を0.10%の小計0.45%、末端にアルコキシシリル基を有する湿気硬化性フッ素含有シラン化合物(C)として信越化学(株)のアルコキシ末端パーフルオロポリエーテルシランKY−108を0.90%、東芝シリコーン(株)のヒドロキシ末端ジメチルポリシロキサンXF3905を0.12%、揮発性溶剤(D)として出光興産(株)のIPソルベント1620を66.70%および信越化学(株)のPGMAc(プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート)を13.77%、旭硝子(株)の揮発性フッ素溶剤のAC6000を9.80%、(C)成分由来分を0.72%の小計90.99%からなり、その他として、日本アエロジル(株)のアエロジルRX300を0.05%および信越化学(株)のKMP590とX−22−1186の質量比1:1からなるシリコーンパウダーを1.79%からなる溶液である。(A)成分、(B)成分、(C)成分、(D)成分、その他の合計は100%である。したがって、(A)成分を100質量部とするとき(B)成分は7.89質量部であり、(C)成分は5.26質量部であり、揮発性フッ素溶剤を(D)成分中に11.56%であり、さらに上記の(A)成分、(B)成分、(C)成分の小計量を1質量部とすると、(D)成分は14.11質量部で、いずれも請求項1で規定する条件を満足するものであった。調整直後の液の外観は良好であった。
【実施例3】
【0052】
実施例3は、湿気硬化性液状シリコーンオリゴマー(A)として信越化学(株)のKR500を7.50%およびX−40−9250を1.50%の小計9.00%、硬化触媒(B)として信越化学(株)のDX−9740を0.70%、末端にアルコキシシリル基を有する湿気硬化性フッ素含有シラン化合物(C)として信越化学(株)のアルコキシ末端パーフルオロポリエーテルシランKY−108を0.75%、揮発性溶剤(D)として日本油脂(株)のイソパラフィン系溶剤のNAS3を10.30%、旭硝子(株)の揮発性フッ素溶剤のAC2000を77.00%および(C)成分由来を0.60%の小計87.90%からなり、その他として、日本アエロジル(株)のアエロジルRX300を0.10%、信越化学(株)のKMP590とX−22−1186の質量比1:1からなるシリコーンパウダーを1.55%からなる溶液である。(A)成分、(B)成分、(C)成分、(D)成分、その他の合計は100%である。したがって、(A)成分を100質量部とするとき(B)成分は7.78質量部であり、(C)成分は1.67質量部であり、揮発性フッ素溶剤は(D)成分中に88.28%であり、さらに上記の(A)成分、(B)成分、(C)成分の小計量を1質量部とすると、(D)成分は8.92質量部で、いずれも請求項1で規定する条件を満足するものであった。調整直後の液の外観は良好であった。
【実施例4】
【0053】
実施例4は、湿気硬化性液状シリコーンオリゴマー(A)として信越化学(株)のKR500を11.19%、硬化触媒(B)として信越化学(株)のDX−9740を1.54%、末端にアルコキシシリル基を有する湿気硬化性フッ素含有シラン化合物(C)としてソルベイ ソレクシス(株)のアルコキシ末端パーフルオロポリエーテルシランFluorolink S10を4.60%、揮発性溶剤(D)として信越化学(株)のKF96L−1.00csを50.15%および旭硝子(株)の揮発性フッ素溶剤のAC2000を29.70%の小計79.85%からなり、その他として、信越化学(株)のKMP590とX−22−1186の質量比1:1からなるシリコーンパウダーを2.82%からなる溶液である。(A)成分、(B)成分、(C)成分、(D)成分、その他の合計は100%である。したがって、(A)成分を100質量部とするとき(B)成分は13.76質量部であり、(C)成分は41.11質量部であり、揮発性フッ素溶剤は(D)成分中に37.19%であり、さらに上記の(A)成分、(B)成分、(C)成分の小計量を1質量部とすると、(D)成分は4.61質量部で、いずれも請求項1で規定する条件を満足するものであった。調整直後の液の外観は良好であった。
【実施例5】
【0054】
実施例5は、湿気硬化性液状シリコーンオリゴマー(A)として信越化学(株)のX−40−9225を1.63%、KR500を0.81%およびX−40−9250を0.47%の小計2.91%、硬化触媒(B)として信越化学(株)のDX−9740を0.21%、末端にアルコキシシリル基を有する湿気硬化性フッ素含有シラン化合物(C)として信越化学(株)のアルコキシ末端パーフルオロポリエーテルシランKY−164を8.08%、揮発性溶剤(D)として信越化学(株)のKF96L−0.65csを49.90%、旭硝子(株)の揮発性フッ素溶剤のAC6000を30.50%および(C)成分由来を6.46%の小計86.86%からなり、その他として、信越化学(株)のKMP590とX−22−1186の質量比1:1からなるシリコーンパウダーを1.94%からなる溶液である。(A)成分、(B)成分、(C)成分、(D)成分、その他の合計は100%である。したがって、(A)成分を100質量部とするとき(B)成分は7.22質量部であり、(C)成分は55.53質量部であり、揮発性フッ素溶剤は(D)成分中に42.55質量部であり、さらに上記の(A)成分、(B)成分、(C)成分の小計量を1質量部とすると、(D)成分は18.34質量部で、いずれも請求項1で規定する条件を満足するものであった。調整直後の液の外観は良好であった。
【実施例6】
【0055】
実施例6は、湿気硬化性液状シリコーンオリゴマー(A)として信越化学(株)のX−40−9225を1.09%、硬化触媒(B)として信越化学(株)のD−20を0.01%、末端にアルコキシシリル基を有する湿気硬化性フッ素含有シラン化合物(C)としてソルベイ ソレクシス(株)のアルコキシ末端パーフルオロポリエーテルシランFluorolink S10を0.25%、揮発性溶剤(D)として信越化学(株)のPGMAc(プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート)を32.75%、KF96L−1.00csを40.40%および旭硝子(株)の揮発性フッ素溶剤のAC6000を25.50%の小計98.65%からなる溶液である。(A)成分、(B)成分、(C)成分、(D)成分の合計は100%である。したがって、(A)成分を100質量部とするとき、(B)成分は0.92質量部であり、(C)成分は22.94質量部であり、揮発性フッ素溶剤は(D)成分中に25.85%であり、さらに上記の(A)成分、(B)成分、(C)成分の小計量を1質量部とすると、(D)成分は73.07質量部で、いずれも請求項1で規定する条件を満足するものであった。調整直後の液の外観は良好であった。
【実施例7】
【0056】
実施例7は、湿気硬化性液状シリコーンオリゴマー(A)として信越化学(株)のKR−500を0.30%およびKC−89を0.05%の小計0.35%、硬化触媒(B)として信越化学(株)のD−25を0.06%、末端にアルコキシシリル基を有する湿気硬化性フッ素含有シラン化合物(C)として信越化学(株)のアルコキシ末端パーフルオロポリエーテルシランKY−108を0.12%、ソルベイ ソレクシス(株)のアルコキシ末端パーフルオロポリエーテルシランFluorolink S10を0.03%の小計0.15%、揮発性溶剤(D)として日本油脂(株)のイソパラフィン系溶剤のNAS−3を35.30%、信越化学(株)のKF96L−1.50csを13.40%、旭硝子(株)の揮発性フッ素溶剤のAC6000を47.30%および(C)成分由来を0.10%の小計96.10%からなり、その他として、信越化学(株)のKMP590とX−22−1186の質量比1:1からなるシリコーンパウダーを3.34%からなる溶液である。(A)成分、(B)成分、(C)成分、(D)成分、その他の合計は100%である。したがって、(A)成分を100質量部とするとき、(B)成分は17.14質量部であり、(C)成分は15.43質量部であり、揮発性フッ素溶剤は(D)成分中に49.32質量部であり、さらに上記の(A)成分、(B)成分、(C)成分の小計量を1質量部とすると、(D)成分は207.11質量部で、いずれも請求項1で規定する条件を満足するものであった。調整直後の液の外観は良好であった。
【実施例8】
【0057】
実施例8は、湿気硬化性液状シリコーンオリゴマー(A)として信越化学(株)のKR−400を0.40%、X−40−9250を0.56%およびKC−89を1.70%の小計2.62%、硬化触媒(B)として信越化学(株)のD−20を0.06%および(A)成分由来分を0.04%の小計0.10%、末端にアルコキシシリル基を有する湿気硬化性フッ素含有シラン化合物(C)として信越化学(株)のアルコキシ末端パーフルオロポリエーテルシランKY−108を1.35%、揮発性溶剤(D)として出光興産(株)のIPソルベント1620を19.10%、信越化学(株)のKF96L−0.65csを11.00%、旭硝子(株)の揮発性フッ素溶剤のAC6000を63.95%および(C)成分由来を1.08%の小計95.13%からなり、その他として、日本アエロジル(株)のアエロジルRX300を0.30%、信越化学(株)のKMP590とX−22−1186の質量比1:1からなるシリコーンパウダーを0.50%からなる溶液である。(A)成分、(B)成分、(C)成分、(D)成分、その他の合計は100%である。したがって、(A)成分を100質量部とするとき、(B)成分は3.82質量部であり、(C)成分は10.31質量部であり、揮発性フッ素溶剤は(D)成分中に68.36%であり、さらに上記の(A)成分、(B)成分、(C)成分の小計量を1質量部とすると、(D)成分は31.82質量部で、いずれも請求項1で規定する条件を満足するものであった。調整直後の液の外観は良好であった。
【実施例9】
【0058】
実施例9は、湿気硬化性液状シリコーンオリゴマー(A)として信越化学(株)のKR−400を0.15%、硬化触媒(B)として(A)成分由来分を0.02%、末端にアルコキシシリル基を有する湿気硬化性フッ素含有シラン化合物(C)として信越化学(株)のアルコキシ末端パーフルオロポリエーテルシランKY−108を0.23%、揮発性溶剤(D)として信越化学(株)のKF96L−0.65csを41.18%、旭硝子(株)の揮発性フッ素溶剤のAC2000を58.20%および(C)成分由来を0.24%の小計99.60%からなる溶液である。(A)成分、(B)成分、(C)成分、(D)成分の合計は100%である。したがって、(A)成分を100質量部とするとき、(B)成分は11.11質量部であり、(C)成分は34.07質量部であり、揮発性フッ素溶剤は(D)成分中に58.66%であり、さらに上記の(A)成分、(B)成分、(C)成分の小計量を1質量部とすると、(D)成分は508.27質量部で、いずれも請求項1で規定する条件を満足するものであった。調整直後の液の外観は良好であった。
【実施例10】
【0059】
実施例10は、湿気硬化性液状シリコーンオリゴマー(A)として信越化学(株)のKR−400を0.55%、硬化触媒(B)として(A)成分由来分を0.05%、末端にアルコキシシリル基を有する湿気硬化性フッ素含有シラン化合物Cとしてソルベイ ソレクシス(株)のアルコキシ末端パーフルオロポリエーテルシランFluorolink S10を0.16%、揮発性溶剤(D)として、日本油脂(株)のイソパラフィン系溶剤のNAS3を66.26%、信越化学(株)のKF96L−0.65csを32.98%の小計99.24%からなる溶液である。(A)成分、(B)成分、(C)成分、(D)成分の合計は100%である。したがって、(A)成分を100質量部とするとき、(B)成分は10.10質量部であり、(C)成分は32.32質量部であり、さらに上記の(A)成分、(B)成分、(C)成分の小計量を1質量部とすると、(D)成分は140.77質量部で、請求項1で規定する条件を満足するものであった。
【0060】
(比較例1)
次に、比較例1として、湿気硬化性液状シリコーンオリゴマー(A)として信越化学(株)のX−40−9225を5.77%、硬化触媒(B)として信越化学(株)のDX−9740を0.58%、湿気硬化性フッ素含有シラン化合物としてアヅマックス(株)のアルコキシ末端のフルオロアルキルシランSIT8176.0(CF3(CF25CH2CH2Si(OCH33)を0.53%、揮発性溶剤(D)として出光興産(株)のIPソルベント1620を10.72%および旭硝子(株)の揮発性フッ素溶剤のAC6000を82.00%、その他として、信越化学(株)のKMP590とX−22−1186の質量比1:1からなるシリコーンパウダーを0.40%からなる溶液を調整して得た。比較例1は(C)成分を含有しておらず、請求項1の構成要件を充足していない。なお、調整直後の液の外観は良好であった。
【0061】
(比較例2)
比較例2として、湿気硬化性液状シリコーンオリゴマー(A)として信越化学(株)のKR−400を0.14%、X−40−9250を0.16%およびKC−89を0.53%の小計0.82%、硬化触媒(B)として信越化学(株)のD−25を0.018%および(A)成分由来分を0.014%の小計0.03%、フッ素オイルとしてソルベイ ソレクシス(株)のパーフルオロポリエーテルFOMBLIN YRを0.08%、揮発性溶剤(D)として、旭硝子(株)の揮発性フッ素溶剤のAC2000を99.07%からなる溶液を調整して得た。比較例2は(C)成分を含有しておらず、フッ素オイルとは、Siを構造中に含まないパーフロポリエーテルのオイルであるから、請求項1の構成要件を充足していない。なお、調整直後の液の外観は良好であった。
【0062】
(比較例3)
比較例3として、湿気硬化性液状シリコーンオリゴマー(A)として信越化学(株)のX−40−9250を0.01%およびKC−89を0.04%の小計0.05%、硬化触媒(B)として信越化学(株)のD−20を0.008%、末端にアルコキシシリル基を有する湿気硬化性フッ素含有シラン化合物(C)として信越化学(株)のアルコキシ末端パーフルオロポリエーテルシランKY−108を0.06%、揮発性溶剤(D)として、信越化学(株)のKF96L−1.00csを25.80%、旭硝子(株)の揮発性フッ素溶剤のAC2000を74.03%および(C)成分由来分を0.05%からなる溶液を調整して得た。もっとも、(A)(B)(C)成分の小計量の合計を1質量部とすると、(D)成分は1426.86質量部に相当することから、比較例3は請求項1で規定する条件から大きく外れるものである。なお、調整直後の液の外観は良好であった。
【0063】
(比較例4)
比較例4として、湿気硬化性液状シリコーンオリゴマー(A)として信越化学(株)のKR−500を0.80%およびX−40−9250を0.10%の小計0.90%、硬化触媒(B)として信越化学(株)のD−25を0.45%、末端にアルコキシシリル基を有する湿気硬化性フッ素含有シラン化合物(C)として信越化学(株)のアルコキシ末端パーフルオロポリエーテルシランKY−108を0.04%、揮発性溶剤(D)として、信越化学(株)のKF96L−1.50csを68.30%、旭硝子(株)の揮発性フッ素溶剤のAC2000を30.28%および(C)成分由来分を0.03%からなる溶液を調整して得た。もっとも、比較例4は、(A)成分を100質量部とするとき、(B)成分は50.00質量部であり、請求項1で規定する条件を外れるものである。なお、調整直後の液の外観は良好であった。
【0064】
(比較例5)
比較例5として、湿気硬化性液状シリコーンオリゴマー(A)として信越化学(株)のKR−400を0.50%およびX−40−9250を0.10%の小計0.60%、硬化触媒(B)として(A)成分由来分を0.05%、末端にアルコキシシリル基を有する湿気硬化性フッ素含有シラン化合物(C)としてソルベイ ソレクシス(株)のアルコキシ末端パーフルオロポリエーテルシランFluorolink S10を3.00%、揮発性溶剤(D)として、出光興産(株)のIPソルベント1620を21.50%、信越化学(株)のKF96L−0.65csを10.90%および旭硝子(株)の揮発性フッ素溶剤のAC2000を63.31%、その他として、日本アエロジル(株)のアエロジルRX300を0.04%および信越化学(株)のKMP590とX−22−1186の質量比1:1からなるシリコーンパウダーを0.60%からなる溶液を調整して得た。比較例5は、(A)成分を100質量部とするとき(C)成分は545.45質量部であり、請求項1で規定する条件を大きく外れるものである。なお、調整直後の液の外観は良好であった。
【0065】
(比較例6)
比較例7として、湿気硬化性液状シリコーンオリゴマー(A)として信越化学(株)のX−40−9250を1.40%およびKC−89を5.60%の小計7.00%、硬化触媒(B)として信越化学(株)のD−25を0.70%、末端にアルコキシシリル基を有する湿気硬化性フッ素含有シラン化合物(C)として信越化学(株)のアルコキシ末端パーフルオロポリエーテルシランKY−164を0.008%、揮発性溶剤(D)として、信越化学(株)のKF96L−1.50csを53.20%、旭硝子(株)の揮発性フッ素溶剤のAC6000を37.79%および(C)成分由来分を0.01%、その他として、信越化学(株)のKMP590とX−22−1186の質量比1:1からなるシリコーンパウダーを1.29%からなる溶液を調整して得た。もっとも、比較例7は、(A)成分を100質量部とするとき、(C)成分は0.02質量部であり、請求項1で規定する条件を外れるものである。なお、調整直後の液の外観は良好であった。
【0066】
(比較例7)
比較例8は、湿気硬化性液状シリコーンオリゴマー(A)として信越化学(株)のKR−500を8.40%およびX−40−9250を2.10%の小計10.50%、硬化触媒(B)として信越化学(株)のD−25を0.005%、末端にアルコキシシリル基を有する湿気硬化性フッ素含有シラン化合物(C)として信越化学(株)のアルコキシ末端パーフルオロポリエーテルシランKY−164を1.05%、揮発性溶剤(D)として、日本油脂(株)のイソパラフィン系溶剤のNAS3を14.50%、信越化学(株)のPGMAc(プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート)を10.90%、旭硝子(株)の揮発性フッ素溶剤のAC2000を60.36%および(C)成分由来分を0.84%、その他として、日本アエロジル(株)のフュームドシリカのアエロジルRX300を0.05%および信越化学(株)のKMP590とX−22−1186の質量比1:1からなるシリコーンパウダーを1.79%からなる溶液を調整して得た。もっとも、比較例8は(A)成分を100質量部とするとき、(B)成分は0.05質量部であり、請求項1で規定する条件を外れるものであった。なお、調整直後の液の外観は良好であったが、塗布後の硬化速度が十分とはいえなかった。
【0067】
(比較例8)
比較例9として、湿気硬化性液状シリコーンオリゴマー(A)として信越化学(株)のX−40−9225を0.60%およびX−40−9250を0.20%の小計0.80%、硬化触媒(B)として信越化学(株)のD−20を0.060%、東芝シリコーン(株)のヒドロキシ末端ジメチルポリシロキサンXF3905を0.20%、揮発性溶剤(D)として、信越化学(株)のKF96L−0.65csを47.20%、旭硝子(株)の揮発性フッ素溶剤のAC6000を51.50%、その他として、信越化学(株)のKMP590とX−22−1186の質量比1:1からなるシリコーンパウダーを0.24%からなる溶液を調整して得た。もっとも、比較例9は、ヒドロキシ末端ジメチルポリシロキサンを用いたので(C)成分を含んでおらず、請求項1で規定する条件を外れるものである。なお、調整直後の液の外観は良好であった。
【0068】
【表1−1】

【0069】
【表1−2】

【0070】
上記の実施例および比較例の配合で調製して得た溶液を用いて、(a)エアガンによる吹付け塗布する方法で施工し、もしくは(b)専用スポンジによる塗布方法で試験体に塗布し、所定の時間養生した後、拭き取る方法で施工して、試験体の外装面上に塗布面を形成せしめた。その際、拭き取りをしたものについては、その作業性を評価した。次に、この塗布面について、外観、初期光沢、初期接触角、耐洗車性(耐洗浄性)、耐候性、防汚性として(ア)水汚れの洗いやすさ、(イ)油汚れの付きにくさと(ウ)油汚れの洗いやすさ、防汚性の持続性としてJIS K5400に規定の方法で耐洗車性試験を行ったのちに(ア)水汚れの洗いやすさの持続性、(イ)油汚れの付きにくさの持続性と(ウ)油汚れの洗いやすさの持続性の各評価を、実施例1〜10および比較例1〜8について行なった。これらの結果を表2−1および表2−2に示した。
【0071】
【表2−1】

【0072】
【表2−2】

【0073】
また、調製した各外装面用の表面撥水保護剤をガラスビンに充填し、密封の上、45℃で3ヶ月間放置した後、外観を評価し、外観上で問題のないものについて再び性能試験を行い、また、貯蔵安定性を評価した。貯蔵安定性は、放置の段階で白濁や沈殿がみられなかったものは「良好」として○で表し、沈殿などがみられたものは徐々に貯蔵安定性が低下しているものとして、これを△で表した。
【0074】
性能試験には、外装面がウレタン塗料で塗装された鉄板からなる試験片上に、実施例および比較例の組成物を表2−1、表2−2に記載の塗布方法で塗布し、表面に塗布膜を形成させて評価に用いた。
【0075】
これらの性能試験に用いた試験片について説明する。試験片の鉄板に塗装したウレタン塗料は、水汚れ、油汚れの防汚性評価では白色塗料を用い、その他は黒色塗料を用いることとした。まず、SPCC鋼板(一般用冷間圧延鋼板)をイソプロピルアルコールおよびブレーキアンドパーツクリーナーで脱脂した後、日本ペイント(株)製の2液硬化型ウレタン塗料をエアガン吹付けで塗装し、80℃で1時間焼付けて、調整してウレタン塗装鉄板としての試験片を得た。
【0076】
このウレタン塗装鉄板の表面に、特願2006−285814に記載の脱脂剤をポンプスプレーにて均一に吹付けたのち、直ちに拭き取り専用クロスで拭き取ることにより脱脂作業を行った。次いで、脱脂された清浄面に、表1−1、表1−2に記載の外装面用の表面撥水保護剤を、(ア)低圧のエアガンを用いて脱脂済みの表面に均一に塗装し、乾燥させることで、塗布面として形成させた。もしくは、(イ)専用スポンジで均一に手塗りして塗布してから乾燥させ、乾燥直後に拭取り専用クロスで過剰のポリマーを拭き取って表面を平滑化し、塗布面として形成させた。(ア)(イ)いずれの塗布方法の場合も、塗布面を有する試験片を25℃で1日養生した後に、初期評価を行った。
【0077】
初期評価は、塗布面上の光沢をJIS(日本工業規格)K5400に規定の方法に従い、HORIBA社製のGLOSS CHECKR IG−330を用いて、校正用標準板で校正した後に入射角と受光角とがそれぞれ60°の反射率を計測し、鏡面光沢度の基準面の光沢度を100としたときの百分率を数値として記録し、これを評価した。また、接触角は、塗布面に液体を滴下した際に塗布面と液体表面との間に形成される角度を、協和界面科学株式会社製の自動接触角計 DM−501を用いて計測し、角度(°)を数値として記録した。なお、接触角が大きいと濡れにくい状態であり、接触角が小さいと濡れやすい状態であるから、これによりマクロな撥水性の程度が確認できる。
【0078】
また、25℃で2週間養生した後に、JIS K5400に規定の方法で、中性カーシャンプーを水で50倍に希釈した洗浄液を用いて耐洗車性試験(耐洗浄性試験)を行った。ブラシで20000回往復した後に、表面を水ですすぎ、残った水滴を紙で軽く押し当てて吸い取った後、表面に水道水を掛けて目視で撥水性が高く保持されているものを「優良」として◎で表し、撥水性は保持されているがやや低下したものを「良好」として○で表し、撥水性は低下したものの許容できるものを「可」として△で表し、撥水性が低下しているものを「不良」として×で表した。
【0079】
撥油性は、塗布面上に灯油を滴下して、油を弾く様子を目視観察した。油をよく弾くものを「良好」として○で表し、油をかろうじて弾くものを「やや弾く」として△で表し、油を弾かずに拡がって表面に付着するものを「不良」として×で表す。
【0080】
さらにJIS K2396に規定の方法で暴露試験台に試験片を固定して6ヶ月間の屋外暴露試験を行った後、表面を50倍に希釈した中性カーシャンプーで洗浄、水洗、水拭き取りした後に、水を掛けて目視評価した。撥水性が保持されているものを「優良」として◎で表し、撥水性は保持されているがやや低下したものを「良好」として○で表し、撥水性が低下しているものを「不良」として×で表した。
【0081】
水汚れの洗いやすさ試験として、25℃で2週間の養生後に、表面に水:カーボンブラック=2:1のモデル汚れを付け、24時間養生後、水洗でスポンジを10往復させ、その表面を観察して評価した。汚れが落ちるものは「良好」として○で表し、汚れが一部残っているものは「一部可」として△で表し、汚れが全体に残っているのを「不可」として×で表した。
【0082】
持続性試験は、25℃で2週間養生した後に、JIS K5400に規定の方法で中性カーシャンプーを水で50倍に希釈した洗浄液を用いて耐洗車性試験を行い、ブラシで20000回往復した後に、表面を水ですすぎ、上記にある水汚れのモデル汚れを付け、洗いやすさ試験と同様の試験、観察方法を用いて、表面を観察してこれを評価した。
【0083】
油汚れの評価として、まず、油汚れのつきにくさ試験を行った。25℃で2週間の養生後に、表面に色を付けた灯油を均一に塗り、その表面を観察し、表面に灯油が非常につきにくくなっている状態のものを「良好」として○で表し、灯油がつきにくくなっているものを「可」として△で表し、明らかに灯油が付いているものを「不可」として×で表した。
【0084】
また、油汚れの洗いやすさ試験として、25℃で2週間の養生後に、表面に灯油:カーボンブラック=2:1のモデル汚れを付け、24時間養生後、水洗でスポンジを10往復させ、その表面を観察し評価した。汚れが極めて簡単に落ちてしまうものを「良好」として○で表し、汚れが落ちるが残りやすいものは「可」として△で表し、汚れが全体に残っているのを「不可」として×で表した。
【0085】
油汚れの持続性は、25℃で2週間養生した後に、JIS K5400に規定の方法で中性カーシャンプーを水で50倍に希釈した洗浄液を用いて耐洗浄性試験を行い、ブラシで20000回往復した後に、表面を水ですすぎ、上記にある油汚れのつきにくさ、洗いやすさと同様のモデル汚れを付け、試験、観察方法を用いて、表面を観察して評価した。
【0086】
これらの試験の結果、本発明の組成物を用いることにより、外観では、本発明の実施例は、専用スポンジによる塗布、エアガンによる塗布の両方ともに全て良好な結果が得られた。他方、比較例では、比較例4の成績が悪く、比較例4は専用スポンジによる塗布は良好に作業が進められたものの、拭き取りが重く困難であったため、塗布面の外観の仕上がりにムラが発生した。また、貯蔵安定性については、揮発性フッ素溶剤を(D)成分に含まない実施例10は沈殿等がみられたので、貯蔵安定性は低下しており、△であった。他の実施例、比較例は○であった。
【0087】
耐洗車性の試験では、実施例1、2、3、7、8、9はいずれも◎で優れており、実施例4、5、6は○で良好で、実施例10は可であった。他方、比較例では、比較例9のみが△で可であったものの、他の比較例1、2、3、5、6、7では、いずれも×で不良であった。比較例4は、拭き取り不良の問題があったので均一な塗布面に仕上がらなかったので、その後の塗布面の性能評価は実施しなかった。
【0088】
耐候性の試験では、実施例の2、4、5、6、7、8、10は優れており◎の優良、実施例1、3、9は○の良好であった。他方、比較例では、比較例1、8のみが○の良好であったが、残りの比較例2、3、5、6、7はいずれも×で不良であった。
【0089】
撥油性を確認したところ、実施例1〜10はいずれもよく油を弾き、○の良好であった。他方、比較例は5はよく弾いたものの、比較例1、2はかろうじて弾く程度で△でやや弾くであり、比較例3、6、7、8は油を弾かず×で不良であった。撥油性が×で不良のものは、油の防汚性が不良であり、油汚れが付きやすくなった。
【0090】
水汚れ性の洗いやすさでは、実施例1〜10、比較例1〜8のいずれもが○の良好であった。
【0091】
水汚れ性の洗いやすさの持続性の有無については、実施例1〜10は良好で○、比較例1、8は良好で○だったが、比較例2、3は一部可で△、比較例5、6、7は×で不良だった。
【0092】
油汚れ性のつきにくさでは、実施例1〜10のいずれもが○の良好であった。これらは実施例の塗布面が撥油性を有することで得られた性能である。一方、比較例では、比較例2および5が○の良好で、残りの比較例1、3、7、8、9はいずれも×で不良であった。
【0093】
油汚れ性の洗いやすさは、実施例1〜10のいずれもが○の良好であった。一方、比較例では、比較例2および5が○の良好で、比較例8のみが一部可の△で、残りの比較例1、3、6、7はいずれも×で不良であった。
【0094】
持続性の油汚れ性の付きにくさ、洗いやすさは、実施例1〜9はいずれも○の良好であった。実施例10は△で可であった。一方、比較例では、比較例1〜8のいずれもが×で不良であった。
【0095】
次に、図1に示したのは、洗浄試験を繰り返した後の塗布面の撥水性の変化を観察した試験結果である。
まず、実施例7の溶液と、A社市販品の溶液を用意した。A社市販品とは、撥水型の車両ボディ用のガラスコート剤として販売されているものであり、その成分は、ケイ素化合物・石油系溶剤と記載された、ケイ素系の溶液である。
試験片としては、塗装鋼板片の片面に、実施例7、A社市販品の溶液を専用スポンジで塗布して拭き上げた後、25℃高湿条件下で2週間養生して塗布面を安定させたものを使用した。また、対比のために、未塗布の試験片も用意した。
次に、JIS K5400に規定の方法に基づいて、Washability testerを用いて、試験片に対して豚毛ブラシによる洗浄を規定回数繰り返し付与した。洗浄液には、水で50倍に希釈した中性のカーシャンプー液を用いた。洗浄後の接触角の測定は、試験片に精製水を滴下して、協和界面科学株式会社製の自動接触角計 DM−501を用いて計測した。
【0096】
洗浄試験の結果、本発明の実施例7を用いた場合には、初期接触角が104°と高い撥水性を示し、その後のブラシの往復回数が10000回でも100°20000回でも99°と以前として高い撥水性を示した。すなわち、洗車を繰り返しても、撥水性が極めて高い状態で保持されるという持続性の高い特性が確認された。
他方、比較に用いたA社市販品は、初期の接触角こそ100°あったが、ブラシの往復回数が500回では接触角が88°と、90°を下回っり撥水性が大きく低下した。さらに、2000回では接触角が86°となり、これは未塗布の試験片の初期接触角の85°とあまりかわらない状態といえるものであり、持続性が十分ではないことが確認された。
【0097】
以上のように、本願発明の実施例1〜9は、耐洗車性、耐候性、水汚れ油汚れの防汚性およびこれらの防汚性の持続性、などの全般において、優良◎もしくは良好○といった優れた特性を示した。(D)成分中に揮発性フッ素溶剤を含まない実施例10は、耐洗車性や油の防汚性における持続性の面で一部に可△となるものがみられたが、それ以外は良好○や優良◎であり、不可×となった項目はなかった。
他方、これに対して比較例1〜8では、耐洗浄性および耐候性に欠けており、長期の使用では性能を保持できないことが確認された。また、比較例1〜8はいずれも耐汚性に劣っており、とりわけ油分に対する性能が悪く、油汚れが付着しやすく、かつ洗い落しにくいなど、油分に対する防汚性の持続性に劣ることが確認された。
比較例との対比からも明らかなように、本発明の表面撥水保護剤を塗布したものは、塗布ムラのない好ましい外観が得られ、初期撥水、撥油性に優れ、また、防汚性、耐洗車性、耐候性、とりわけ耐油汚れ性に優れるものであり、さらにそれらの特性の持続性に優れた外装面用の表面撥水保護剤であることが確認された。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
湿気硬化性液状シリコーンオリゴマーからなる基材(A)100質量部に対して、硬化触媒(B)を0.1〜40質量部有し、湿気硬化性フッ素含有シラン化合物(C)としてパーフルオロポリエーテルシランを0.1〜100質量部有し、(A)(B)(C)の各成分を溶解または分散し得る揮発性溶剤(D)としてシリコーン系揮発性溶剤、炭化水素系揮発性溶剤、極性基含有揮発性溶剤、揮発性フッ素溶剤の少なくとも1種または2種以上を(A)(B)(C)の各成分の合計1質量部に対して1000質量部以下の割合で含有することを特徴とする外装面用の表面撥水保護剤。
【請求項2】
湿気硬化性フッ素含有シラン化合物(C)は実質的に炭素数1〜3のアルコキシ基であることを特徴とする請求項1に記載の外装面用の表面撥水保護剤。
【請求項3】
湿気硬化性フッ素含有シラン化合物(C)は数平均分子量が500〜10000のパーフルオロポリエーテルシランであって、かつ、揮発性溶剤(D)として揮発性フッ素溶剤を(D)成分中に5〜100質量%を含むことを特徴とする請求項1または2に記載の外装面用の表面撥水保護剤。
【請求項4】
湿気硬化性フッ素含有シラン化合物(C)は、湿気硬化性液状シリコーンオリゴマーからなる基材(A)100質量部に対して1〜50質量部で含有することを特徴とする請求項1〜3に記載の外装面用の表面保護剤。

【図1】
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