説明

外部足場用治具

【課題】中間免震建物に設ける外部足場を、地震発生時の水平変位に対応して追従させることができる外部足場用治具を提供する。
【解決手段】中間免震建物14に沿って連設する外部足場17の上下の建枠同士19のジョイント部分20に介在させて、外部足場17を地震発生時の水平変位に追従させる外部足場用治具11であって、建枠19の下端19aに取り付けるスライド部材12と、保持部材13とから構成され、スライド部材12は、上部支柱21と、滑り板22と、当て板23とが一体に形成され、保持部材13は、建枠19の上端19bに挿入される下部支柱24と、下部支柱24の上端部に設けられ滑り板22を上下の板部25、26でスライド自在に保持すると共に上板部25に開口部28を有する保持体27とが一体に形成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、中間免震建物の外部足場用治具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
中間免震建物は、中間階に免震層を設けるので、建物の下層から上層に沿って複数段に連設する外部足場を、地震発生時の水平変位に対応して追従する構造にすることが困難である。
【0003】
そこで、図5に示すように、従来の中間免震建物1の外部足場2は、免震層3と上層4との間の位置で分離して設け、上層4の外側に張出足場5を設置し、張出足場5の上部に外部足場6を設けることで、下層7と上層4との縁を切る構造にしている。なお、図5中の符号8は、壁つなぎ金具を示す。
【0004】
なお、特開2002−4571号公報には、免震構造物用外部足場の支持構造に関する発明が開示されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−4571号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
この従来例の中間免震建物1の外部足場2においては、建物の途中に張出足場5を設けるので、その分の手間が掛かって作業コストが高くなるだけでなく、本設構造物に仮設部材を設けるので、強度的に問題がないかを検討する必要があるという種々の問題点を有している。
【0007】
従って、従来例における中間免震建物1の外部足場2においては、張出足場5を設ける手間を無くして作業コストを抑えることと、強度的な問題の検討を不要にすることに解決しなければならない課題を有している。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記従来例の課題を解決するための本発明の要旨は、中間免震建物に沿って連設する外部足場の上下の建枠同士のジョイント部分に介在させて、前記外部足場を地震発生時の水平変位に追従させる外部足場用治具であって、該外部足場用治具は、前記建枠の下端に取り付けるスライド部材と、前記建枠の上端に取り付ける保持部材とから構成され、前記スライド部材は、前記建枠の下端に挿入される上部支柱と、該上部支柱の下端部に設けられる滑り板と、該滑り板の上位置に隙間を開けて前記上部支柱に設けられ前記建枠の下端が当接する当て板とが一体に形成され、前記保持部材は、前記建枠の上端に挿入される下部支柱と、該下部支柱の上端部に設けられ前記滑り板を上下の板部でスライド自在に保持すると共に該上板部に開口部を有する保持体とが一体に形成されることである。
【0009】
また、前記スライド部材及び保持部材は、滑り板のスライドを阻止するストッパー構造を備えること、;
前記ストッパー構造は、滑り板に穿設される複数の挿入孔と、該挿入孔と対応する位置の下板部に穿設される連通孔と、前記挿入孔と前記連通孔とに挿入するストッパーピンとであること、;
前記ストッパー構造は、開口部における上部支柱と上板部との間に嵌合して、スライド部材の動きを阻止するストッパープレートであること、;
を含むものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係る外部足場用治具によれば、中間免震建物に沿って設ける外部足場を地震発生時の水平変位に対応して追従させることができるので、従来例のように建物の途中に張出足場を設ける必要がなく、その分の作業手間と作業コストとを抑えることができる。また、従来例のような強度的な問題の検討が不要であるという種々の優れた効果を奏する。
【0011】
スライド部材及び保持部材は、滑り板のスライドを阻止するストッパー構造を備えることによって、ストッパーを用いると外部足場用治具のスライド機能が停止することとなり、外部足場の組立時や解体時等に安全であるという優れた効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】(イ)本発明の第1実施例に係る外部足場用治具11の縦断面図である。(ロ)同外部足場用治具11の平面図である。(ハ)上板部25の一部を破断して示す、外部足場用治具11の平面図である。
【図2】本発明に係る外部足場用治具11を取り付けた外部足場17を示す、中間免震建物14の側面図である。
【図3】(ニ)(ホ)本発明の第2実施例に係る外部足場用治具11aの縦断面図である。(ヘ)図3(ホ)のA−A線断面図である。
【図4】(ト)本発明の第3実施例に係る外部足場用治具11bの縦断面図である。(チ)同外部足場用治具11aの平面図である。(リ)図4(ト)のB−B線断面図である。
【図5】従来例に係る外部足場2を説明する、中間免震建物1の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
次に、本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。なお、理解を容易にするため、従来例に対応する部分には従来例と同一の符号を付けて説明する。
【実施例1】
【0014】
まず、図1(イ)(ロ)(ハ)に示した第1実施例において、符号11は外部足場用治具示し、この外部足場用治具11は、スライド部材12と、保持部材13とから構成される。
【0015】
外部足場用治具11は、図2に示すように、中間免震建物14の下層7から上層4に沿って複数段に連設する外部足場17の、免震層3に対応する位置における上下の建枠19同士のジョイント部分20に介在させる。図2においては、外部足場用治具11を介在したジョイント部分20が、上下の2箇所に存在する。
【0016】
このようにジョイント部分20に介在させた外部足場用治具11は、地震発生時にスライドするので、中間免震建物14に沿って複数段に連設した外部足場17を、地震発生時の水平変位に追従させることが可能となる。
【0017】
スライド部材12は、パイプ材から成る建枠19の下端19aへ挿入される上部支柱21と、上部支柱21の下端部に設けられる滑り板22と、滑り板22の上方に設けられる当て板23とが一体的に形成される。
【0018】
滑り板22は、円盤状に形成される。また、後述する上板部25と下板部26との間でのスライドを良好にするために、例えば滑り板22にテフロン(登録商標)板を貼着したり、適宜な方法で滑り板22の滑面処理を施すことが望ましい。あるいは、滑り板22の下面又は上面に、図示しないベアリング機構を設けてもよい。
【0019】
当て板23は、滑り板22よりもやや小さめな円盤状に形成され、滑り板22と適宜の隙間を開けて上部支柱21に設けられる。この当て板23は、建枠19の下端19aを当接させて保持する部位である。
【0020】
保持部材13は、パイプ材から成る建枠19の上端19bへ挿入される下部支柱24と、滑り板22をスライド自在に保持する保持体27とが一体的に形成される。
【0021】
保持体27は、円盤状に形成されると共に、上板部25と下板部26とが、滑り板22を挟んだ状態で水平方向にスライド可能に保持し、かつ鉛直方向の動きを拘束する。
【0022】
滑り板22のスライド可能な長さは、具体例を上げると8cm程度である。何故ならば、震度5弱の地震では、免震建物が約15cm程度移動すると一般に言われているので、図2に示すように、外部足場用治具11を上下2箇所に設置すれば、対応が可能だからである。
【0023】
上板部25と下板部26との周縁には、周縁部29が設けられており、周縁部29と滑り板22との間は、隙間部30を有する。上板部25の中央部には、開口部28が形成されており、滑り板22のスライド時には上部支柱21が当該開口部28を移動できるようになっている。また、下板部26の下面で、下部支柱24を挿入した建枠19の上端19bを当接させて保持する。
【実施例2】
【0024】
次に、図3(ニ)(ホ)(ヘ)に第2実施例の外部足場用治具11aを示す。この第2実施例において、前記第1実施例と同一部分には同一符号を付してその詳細は省略する。
【0025】
スライド部材12及び保持部材13は、滑り板31のスライドを阻止するストッパー構造を備える。ストッパーを用いると外部足場用治具11aのスライド機能が停止することとなり、外部足場17の組立時や解体時等に安全である。
【0026】
第2実施例に係るストッパー構造を具体的に説明する。ストッパー構造は、滑り板31に穿設される複数の挿入孔32と、挿入孔32と対応する位置の下板部33に穿設される連通孔34と、挿入孔32と連通孔34とに連通させるストッパーピン(固定用ボルト)35とから成る。
【0027】
挿入孔32は、滑り板31の円周方向に沿って30度毎に複数穿設され、同様に、連通孔34は、下板部33の円周方向に沿って30度毎に複数穿設されている。多数の挿入孔32と連通孔34とを穿設することによって、孔同士の位置合わせとストッパーピン35の挿入とを容易にしている。
【0028】
このようなストッパー構造は、挿入孔32と連通孔34とを位置合わせして、ストッパーピン35を挿入(又は螺着)すると、滑り板31と下板部33とが固定状態に維持されて、外部足場用治具11のスライド機能が停止する。
【実施例3】
【0029】
次に、図4(ト)(チ)(リ)に第3実施例の外部足場用治具11bを示す。この第3実施例において、前記第1実施例と同一部分には同一符号を付してその詳細は省略する。
【0030】
第3実施例に係るストッパー構造は、開口部28における上部支柱21と上板部25の縁部との間に嵌合して、スライド部材12の動きを阻止するストッパープレート36である。
【0031】
ストッパープレート36は、扇形に形成されている。2個のストッパープレート36を開口部28に嵌め込むことで、スライド部材12が固定状態に維持されて、外部足場用治具11のスライド機能が停止する。
【0032】
以上のように構成される外部足場用治具11は、中間免震建物14に設ける外部足場17を地震発生時の水平変位に対応して追従させることができる。従って、従来例のように建物の途中に張出足場5を設ける必要がないので、その分の作業手間と作業コストとを抑えることができて、強度的な問題の検討も不要である。
【符号の説明】
【0033】
1 中間免震建物
2 外部足場
3 免震層
4 上層
5 張出足場
6 外部足場
7 下層
8 壁つなぎ金具
11 第1実施例に係る外部足場用治具
11a 第2実施例に係る外部足場用治具
11b 第3実施例に係る外部足場用治具
12 スライド部材
13 保持部材
14 中間免震建物
17 外部足場
19 建枠
19a 下端
19b 上端
20 ジョイント部分
21 上部支柱
22 滑り板
23 当て板
24 下部支柱
25 上板部
26 下板部
27 保持体
28 開口部
29 周縁部
30 隙間部
31 滑り板
32 挿入孔
33 下板部
34 連通孔
35 ストッパーピン(固定用ボルト)
36 ストッパープレート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
中間免震建物に沿って連設する外部足場の上下の建枠同士のジョイント部分に介在させて、前記外部足場を地震発生時の水平変位に追従させる外部足場用治具であって、
該外部足場用治具は、前記建枠の下端に取り付けるスライド部材と、前記建枠の上端に取り付ける保持部材とから構成され、
前記スライド部材は、前記建枠の下端に挿入される上部支柱と、該上部支柱の下端部に設けられる滑り板と、該滑り板の上位置に隙間を開けて前記上部支柱に設けられ前記建枠の下端が当接する当て板とが一体に形成され、
前記保持部材は、前記建枠の上端に挿入される下部支柱と、該下部支柱の上端部に設けられ前記滑り板を上下の板部でスライド自在に保持すると共に該上板部に開口部を有する保持体とが一体に形成されること
を特徴とする外部足場用治具。
【請求項2】
スライド部材及び保持部材は、滑り板のスライドを阻止するストッパー構造を備えること
を特徴とする請求項1に記載の外部足場用治具。
【請求項3】
ストッパー構造は、滑り板に穿設される複数の挿入孔と、該挿入孔と対応する位置の下板部に穿設される連通孔と、前記挿入孔と前記連通孔とに挿入するストッパーピンとであること
を特徴とする請求項2に記載の外部足場用治具。
【請求項4】
ストッパー構造は、開口部における上部支柱と上板部との間に嵌合して、スライド部材の動きを阻止するストッパープレートであること
を特徴とする請求項2に記載の外部足場用治具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−188849(P2012−188849A)
【公開日】平成24年10月4日(2012.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−52646(P2011−52646)
【出願日】平成23年3月10日(2011.3.10)
【出願人】(000166432)戸田建設株式会社 (328)