説明

多モード閉塞・狭窄治療装置およびその使用方法

多モード閉塞・狭窄治療装置は、遠位領域を有する細長部材と、細長部材の遠位領域に固定されたエンクロージャとを備え、このエンクロージャが、フロー修復セグメントと、フロー修復セグメントの遠位側にある開セグメントと、開セグメントの遠位側にある捕捉セグメントとを備える。使用中、カテーテルの遠位端が血管内の閉塞または狭窄の病変よりも遠位側に配置されるまで、選択された血管内にカテーテルが挿入される。多モード閉塞・狭窄治療装置はカテーテル内に挿入され、フロー修復セグメントが病変の位置に合わせられるとともに、カテーテルの遠位端がフロー修復セグメントよりも近位側に至るまで、装置に対してカテーテルが引き戻されて、それにより、フロー修復セグメントが半径方向に拡張して血管の内面に病変を押し付けることが可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の技術分野は、一般に、人間または獣医患者の血管における急性虚血性脳卒中または狭窄を治療するための装置および方法に関する。より具体的には、本発明は、血管閉塞または狭窄を治療するための血管内装置およびその使用方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
血管閉塞および狭窄は、心筋梗塞および発作を引き起こすことにより、患者の死亡数および死亡率に深く関与する。血管は、様々な形のうちの何れかで閉塞(閉鎖)または狭窄した状態となり得る。例えば、狭窄は、アテロームまたはプラークにより形成されることがあり、それには、血管疾患の進行に応じて、血管の内腔壁に堆積した、コレステロール結晶(LDL)、マクロファージおよび石灰化が含まれる。また、狭窄は、塞栓または血栓により引き起こされて、動脈の内腔を閉塞することがある。塞栓は、しばしば心室に形成され、そこでは、それらがやがて病巣または低流動性領域に蓄積することがある。塞栓は、後で解放されて、遠位側に進み、神経循環に突発性の閉塞を引き起こすことがある。この突然発症は、有害な急性虚血性事象の最も一般的な原因となることが多く、その場合、脳への血流および酸素供給の減少または完全停止が生じる。内在するアテロームから形成される、あるいはこれに隣接して形成される塞栓または血栓は、アテロームが時間とともに蓄積してプラークの不安定性を増加させるときに生じ、それは、病変の潰瘍形成時に分解することがある。プラーク破裂は、凝固因子の放出を引き起こし、それは、不安定なアテローム上に血栓形成を生じさせる。この覆っている血栓は、動脈の狭窄または完全閉鎖を引き起こし、かつ/または後で離脱して、遊離した塞栓として遠位側に進み、第二の虚血性事象を引き起こすことがある。血栓は、先の石灰化沈着により、塞栓よりも一般に硬い。破裂および再破裂事象は、血栓の連続的な層形成と下部のアテロームを組み合わせ、やがて圧縮の増大および更なる硬化をもたらすことがある。塞栓は、血栓よりも一般に柔らかいが、それでもなお、血管内腔の血流の制限または完全停止を引き起こすことがあり、急性虚血性事象の最も一般的な原因である。
【0003】
血管系の閉塞性および狭窄性の病変(“病変”)を治療するために、2つの異なる処置が開発されている。そのうちの一つは、病変を変形させて血管の内腔内の制限を減少させるというものである。この種の変形(あるいは拡張)は、バルーン血管形成術を使用して、一般的に行なわれる。閉塞および狭窄した血管系の別の治療方法は、病変全体を完全に取り除くか、あるいは血管内の制限を低減するのに十分な病変を取り除こうとするものである。病変の除去は、導体を介して送信された無線周波数(RF)信号の使用により、あるいはレーザの使用により行われ、それら治療はともに、病変を除去する(すなわち、過熱して蒸発させる)ものとなっている。また、病変の除去は、吸引、血栓除去術またはアテローム切除術を使用することによっても行われている。血栓除去術またはアテローム切除術中、病変は機械的に切り分けられるか、あるいは血管から削り取られる。
【0004】
血栓除去術またはアテローム切除術中、ある問題に直面することがある。病変部から分離される残屑は、血管の内腔に自由に流入する。残屑が遠位側に流れる場合、遠位の血管系を塞いで、重大な問題を引き起こす可能性がある。そのような問題には、大脳動脈の閉塞による虚血性脳梗塞が含まれる。残屑が近位側に流れる場合、それが別の血管に入って、それまで健全であった領域に血栓/閉塞を形成する。この残屑は、脳血管系に留まって脳卒中を引き起こしたり、あるいは肺に留まって肺塞栓症を引き起こしたりすることがある。それら病変の残屑に関連する疾病はともに、極めて望ましくない。また、血管形成術は、残屑の放出をもたらすこともある。
【0005】
残屑または断片に対処するこれまでの試みには、残屑を(およそ血液細胞と同じ大きさを有する)小片に切断して、それらが問題の部分で血管を閉塞しないようにすることが含まれる。切断される病変の断片の大きさを制御することは難しく、誤って、より大きな断片が切離されることもある。また、血栓はアテロームよりも遥かに柔軟であるため、切断器具に機械的に噛み合ったときにより容易に崩壊する傾向がある。このため、血栓が機械的に噛み合うとすぐに、血管系を閉塞する可能性がある大きな断片に血栓が遊離される危険性がある。
【0006】
病変から切り離された残屑に対処する別の試みは、吸引を使用して切り離されるときに残屑を除去するというものである。しかしながら、病変から切り離された断片すべてを取り除くためには、相対的に高い真空を引き込む必要があり、それは血管系を破壊する可能性がある。病変から切り離された残屑に対処するさらに別の試みは、アテローム切除術中に病変よりも遠位にデバイスを配置して、病変の断片が切り離されたときにそれらを捕捉し、血栓除去術またはアテローム切除術が終了したときに、捕捉デバイスとともにそれら断片を取り除くというものである。そのような捕捉/ろ過デバイスには、膨張性フィルタが含まれ、それらは、病変の断片を捕捉するために病変の遠位側に配置される。また、そのようなデバイスは、血管形成術中に放出される病変断片を捕獲するためにも使用されている。
【0007】
一例として、そのような捕捉/ろ過デバイスは、Khosraviに付与された米国特許第6,129,739号に記載されている。現在の捕捉デバイスに関する認識されている問題には、血栓除去術、アテローム切除術または血管形成術のデバイスが血管に導入され、血管内で操作され、血管から取り除かれるときの捕捉デバイスの動きが含まれる。そのような動きは、捕捉デバイスの不適当な配置、病変の断片の遠位の漏出に繋がることがある。現在の捕捉デバイスに関する別の認識されている問題は、捕捉デバイス、および血栓除去術、アテローム切除術または血管形成術のデバイスを互いに、かつ病変に対して正確に位置決めする必要があるということである。
【発明の概要】
【0008】
本明細書に記載の本発明の一実施形態においては、多モード閉塞・狭窄治療装置が、遠位領域を有する細長部材と、細長部材の遠位領域に固定されたエンクロージャ(enclosure)とを備え、このエンクロージャが、フロー修復セグメント(flow restoring segment)と、フロー修復セグメントの遠位にある開セグメント(open segment)と、開セグメントの遠位にある捕捉セグメント(capture segment)とを備える。使用中、カテーテルの遠位端が血管内の病変(病巣)の遠位側に配置されるまで、選択された血管内にカテーテルが挿入される。多モード閉塞・狭窄治療装置は、カテーテル内に挿入されて、フロー修復セグメントが病変の位置に合わせられるとともに、カテーテルの遠位端がフロー修復セグメントよりも近位に至るまで、上記装置に対してカテーテルが引き戻され、それにより、フロー修復セグメントが半径方向に拡張して、血管の内面に病変を押し付けることが可能となる。
【0009】
多モード閉塞・狭窄治療装置の別の実施形態では、細長部材が、カテーテル内にスライド可能に配置されるように構成されるとともに、非侵襲的でフレキシブルな遠位先端を有する。さらに別の実施形態では、遠位先端が操縦可能である。一実施形態では、治療装置が、エンクロージャの近位端を細長部材に連結する近位のカラーと、エンクロージャの遠位端を細長部材に連結する遠位のカラーとを備える。
【0010】
多モード閉塞・狭窄治療装置の実施形態では、エンクロージャのフロー修復セグメントが中程度から高程度の穴密度を有し、エンクロージャの開セグメントが低い穴密度を有し、エンクロージャの捕捉セグメントが高い穴密度を有する。フロー修復セグメント、開セグメントおよび捕捉セグメントは、別個の構成要素であっても、一体的に形成されるものであってもよい。エンクロージャは、好ましくは、長手軸に沿って半径方向に圧縮可能であって、半径方向に圧縮されないときは、予め設定されたサイズを有するものであり、フロー修復セグメントが、捕捉セグメントとは実質的に独立に半径方向に圧縮可能となっている。一実施形態では、エンクロージャが、ニチノールのような形状記憶合金により形成される。代替的な実施形態では、エンクロージャのフロー修復セグメントが、低い穴密度と中程度の穴密度が交互に生じるパターンを有する。
【0011】
捕捉セグメントは、好ましくは、閉塞または狭窄した血管の内面にシールを形成するように構成され、捕捉セグメントが(一実施形態では)、直径20ミクロン乃至750ミクロンの範囲内の穴寸法を有する。一実施形態では、フロー修復セグメントが、血管形成術を行うために構成され、一方、開セグメントおよび捕捉セグメントが、血栓除去術およびアテローム切除術をそれぞれ行うように構成されている。
【0012】
本発明の更なる実施形態では、血管閉塞または狭窄の治療方法が提供され、この方法が、カテーテルの遠位端が血管内の病変の遠位に配置されるまで、選択された血管内にカテーテルを挿入するステップと、その後に、多モード閉塞・狭窄治療装置をカテーテル内に挿入するステップとを含む。ここで、多モード閉塞・狭窄治療装置は、細長部材と、細長部材の遠位領域に固定された圧縮エンクロージャとを備え、圧縮エンクロージャが、フロー修復セグメントと、フロー修復セグメントの遠位にある開セグメントと、開セグメントの遠位にある捕捉セグメントとを備える。この方法はさらに、フロー修復セグメントを病変の位置に合わせるステップと、その後に、カテーテルの遠位端がフロー修復セグメントよりも近位に至るまで、上記装置に対してカテーテルを引き戻し、それにより、フロー修復セグメントが半径方向に拡張して、血管の内面に病変を押し付けることを可能にするステップとを含む。
【0013】
一実施形態では、上記装置に対してカテーテルを近位側に引き戻すことにより、捕捉セグメントが半径方向に拡張して、血管の内面を実質的にシールすることが可能になる。一実施形態では、上記方法がさらに、上記装置に対してカテーテルを遠位側に進めて、カテーテルの遠位端をフロー修復セグメントの遠位端の位置に合わせ、それによりフロー修復セグメントを半径方向に圧縮することにより、エンクロージャの拡張した捕捉セグメント内に塞栓を捕捉するステップと、カテーテルおよび上記装置を近位側に引き戻して、開セグメントの開口部を病変が通過することを可能にするステップと、捕捉セグメントの内部に病変を捕捉するステップとを備える。
【図面の簡単な説明】
【0014】
ここで図面を参照する。これら図面において、同様の符号は、全体を通して、対応する部分を示している。
【図1】図1は、一実施形態に従い構成された多モード閉塞・狭窄治療装置の斜視図である。
【図2】図2A乃至図2Eは、図1に記載の多モード閉塞・狭窄治療装置を使用して血管閉塞または狭窄の治療において実行される様々なステップを示す概略図である。
【図3】図3は、別の実施形態に従い構成された多モード閉塞・狭窄治療装置の斜視図である。
【図4】図4は、さらに別の実施形態に従い構成された多モード閉塞・狭窄治療装置の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1は、多モード閉塞・狭窄治療装置10の一実施形態を示している。この装置10は細長部材12を含み、この細長部材は遠位領域14を有する。エンクロージャ16は、細長部材12の遠位領域14に取り付けられている。このエンクロージャは、患者の血管40中の病変42を治療するように構成されている(図2A乃至図2Eを参照)。また、この装置10は、カテーテル24を含み、このカテーテルにおいて、細長部材12および縮小態様のエンクロージャ16がスライド可能に配置されている。
【0016】
細長部材12は、導入部位から病変42まで患者の血管を通り抜けるのに十分な強度と剛性を有するガイドワイヤであってもよい。代替的には、細長部材12は、十分な強度と剛性を有するチューブであってもよい。細長部材12は、ステンレス鋼から形成することができる。この装置10の使用中、細長部材12の近位端(図示省略)は、導入部位から延びて、それにより、細長部材12とそれに取り付けられたエンクロージャ16をユーザが操作することが可能となっている。細長部材12の遠位端50には、可動遠位先端26が取り付けられている。可動遠位先端26は、患者の血管系を介して細長部材12をガイドする既知の機構を使用して動作させることができる。
【0017】
エンクロージャ16は、当該エンクロージャ16の近位端30における近位カラー28と、当該エンクロージャ16の遠位端34における遠位カラー32とによって、細長部材12の遠位領域14に連結されている。エンクロージャ16、カラー28,32および細長部材12は、スポット溶接および接着剤の使用を含む既知の方法により結合させることができる。代替的には、カラーの一方、例えば遠位カラー32は、エンクロージャ16に結合させるようにしてもよいが、細長部材12にスライド可能に取り付けるようにしてもよい。そのような構造によって、半径方向に圧縮されるように、エンクロージャ16を遠位に延ばすことが可能になる。
【0018】
エンクロージャ16は、装置10の部品数を最小にするために一体的に形成されている。エンクロージャ16は、織り方の密度およびパターンにより決定される穴(cell)密度および穴寸法で、ワイヤにより織られている。ニチノールのような形状記憶合金でエンクロージャ16を織ることにより、エンクロージャ16を半径方向に圧縮させて、血管系を介して導入することができ、圧縮力が除去されたときは、予め設定された構成およびサイズに戻るようにすることができる。エンクロージャ16の異なるセグメントは、織り方の密度およびパターンを変えることにより形成することができる。
【0019】
エンクロージャ16は、構造上および機能上異なる3つのセグメントに分割される。フロー修復セグメント18は、エンクロージャ16の近位端30に配置されている。フロー修復セグメント18は、中程度から高程度の穴密度を有するとともに、中程度から小程度の穴寸法を有し、すなわち円周セクション(circumferential section)あたり約5乃至約10の穴を有している。その拡張した態様では、フロー修復セグメント18が概して管状に形成されている。エンクロージャ16の近位端30では、フロー修復セグメント18が、近位カラー28に連結されるため、錐体に先細となっている。フロー修復セグメントの遠位端は開放されている。フロー修復セグメント18は、図2Cに示すように、血管40の内面38に対して半径方向に病変42を押し付けるように構成されている。
【0020】
開セグメント20は、フロー修復セグメント18の遠位側であって、エンクロージャ16の中央に配置されている。開セグメント20は、低い穴密度、すなわち円周セクションあたり約2乃至約5個の穴を有するとともに、大きい穴寸法、すなわち約2mm乃至約6mmの長手方向の長さを有する。開セグメント20は、極めて少ないワイヤ(すなわち、約2乃至約5本のワイヤ)を有し、それは、拡張態様において開放した近位端および遠位端を有する管状に近い。開セグメント20の穴は開口部46を形成し、それによって、病変42がエンクロージャ16に入り込んで捕捉セグメント22の内部48に流入するのが可能になる。
【0021】
捕捉セグメント22は、開セグメント20よりも遠位側であって、エンクロージャ16の遠位端34に配置されている。捕捉セグメント22は、高い穴密度と小さい穴寸法を有し、例えば、円周セクションあたり約6乃至約25個の穴を有する。捕捉セグメント22は、概して円錐形である。捕捉セグメント22は、近位端で開放されるとともに、エンクロージャ16の遠位端34で遠位カラー32に連結されるように先細となっている。その開放した近位端では、捕捉セグメント22は、血管40の断面形状および寸法に近く、拡張したときに血管40の内面38を実質的に密封する。捕捉セグメント22は、塞栓をろ過するとともに、血管40の内面38から病変42を機械的に切断するか、削るように構成されている。
【0022】
エンクロージャ16は、カプセル状に形成されて、近位端30および遠位端34で先細となり、近位および遠位のカラー28,32にそれぞれ連結されている。中程度から高程度の穴密度と、中程度から小程度の穴寸法のため、閉塞また狭窄血管における圧縮されたフロー修復セグメント18は、図2Bおよび図2Cに示すように、血管形成術において、半径方向に拡張して血管の内腔断面積を増加させる。開セグメント20の開口部46は、フィルタセグメント22の内部48を含むエンクロージャ16の内部へのアクセスを可能にする。血管形成術中、残屑または塞栓は下流に流れて、開セグメント20の開口部46を介してエンクロージャ16に入る。その後、残屑または塞栓は、捕捉セグメント22の内部48に捕捉される。エンクロージャ16は、フロー修復セグメント18と捕捉セグメント22の相対位置が残屑または塞栓の捕捉を最大化するように、形成されている。それは、拡張したときに血管40の内面38を実質的に密封するため、捕捉セグメント22は、図2Dおよび図2Eに示すように、血栓除去術またはアテローム切除術において病変42を通るように捕捉セグメント22を近位側に引っ張ったときに、内面38および血管40から病変42を機械的に取り除くこともできる。
【0023】
赤血球(直径5ミクロン)が捕捉セグメント22を容易に通り抜けることができるようにするために、捕捉セグメント22の織りパターンおよび密度は、直径約20乃至約750ミクロンの範囲内の穴寸法を生じさせる。この寸法は、赤血球の自由な流れを許容しながらも、残屑または塞栓の流れを制限する。開セグメント20においてはワイヤおよび穴の数が少ないため、フロー修復セグメント18は、図2Dおよび図2Eに示すように、捕捉セグメント22とは実質的に関係無く、圧縮可能である。幾つかの実施形態では、X線不透過性マーカ36がフロー修復セグメント18の近位端および遠位端に固定されて、病変42に隣接するフロー修復セグメント18のX線透視位置決めが可能となっている。
【0024】
フロー修復セグメント18は、最初に血流バイパスを提供して、脳の虚血領域への血流を早急に回復させるとともに、長時間の虚血の影響を軽減するように構成されている。これは永続的な治療を提供することはないため、病変42を除去して捕捉する手段には、開セグメント20および捕捉セグメント22が設けられてる。開セグメント20は、完全に拡張している間、あるいは部分的に再び納められた間の何れかで、装置10を引き戻すときに(フロー修復セグメント18が再び納められて、残りのセグメント20,22が病変42および残屑を捕捉するために使用される場合に)、エンクロージャ16の内部への病変42の移動を許容するように構成されている。
【0025】
一実施形態では、エンクロージャ16は、2以上のフロー修復セグメント18、2以上の開セグメント20、および/または2以上の捕捉セグメント22を含むことができる。
【0026】
一例として、図3のエンクロージャ16は、第1フロー修復セグメント18aを含み、それに続いて遠位側に、第1開セグメント20a、その後に、第2フロー修復セグメント18b、第2開セグメント20b、最後に、捕捉セグメント22を含む。また、一例として、図4のエンクロージャ16は、第1フロー修復セグメント18aを含み、それに続いて遠位側に、第1開セグメント20a、その後に、フロー修復セグメントとそれに続く開セグメントの4回の繰り返し(18b,20b,18c,20c,18d,20d,18e,20e)、第1捕捉セグメント22a、第6開セグメント20f、最後に、第2捕捉セグメント22bを含む。
【0027】
カテーテル24は、ほぼ管状で、導入部位から病変42に患者の血管系を介して延びる。使用中、カテーテル24の近位端(図示省略)が導入部位から延び、ユーザがカテーテル24を操作することが可能となっている。カテーテル24は、病変42よりも先に進んで、細長部材12および圧縮した態様のエンクロージャ16を運ぶように、サイズ設定されている。テフロン(登録商標)のような潤滑コーティングは、カテーテル24の内面および外面に塗布することができ、それにより、血管系を介したカテーテル24の挿入、並びに、カテーテル24を介した細長部材12およびエンクロージャ16の挿入を容易に行うことができる。幾つかの実施形態では、X線不透過性マーカ36がカテーテル24の遠位端44に固定されて、病変42およびエンクロージャ16に対するカテーテル24の遠位端44のX線透視位置決めが可能となっている。
【0028】
図2A乃至図2Eは、多モード閉塞・狭窄治療装置10を使用した血管閉塞または狭窄の治療を示している。図2Aでは、血管40は、当該血管40の内面38に付着した病変42によって著しい閉塞が引き起こされているものとして示されている。図2Aに示す例示的な病変42は、血管40の一壁面のみに付着しているが、本装置および方法は、様々な種類の病変の治療に使用することもでき、それには、血管40の断面の内面38全体を覆うリング状の病変も含まれる。
【0029】
図2Aでは、カテーテル24は、当該カテーテル24の遠位端44が病変42よりも遠位側に至るまで、導入部位を介して血管40内に挿入される。カテーテル24の外面上の潤滑コーティングは、挿入中の摩擦抵抗を低減する。カテーテル24の遠位端44は、圧縮態様のエンクロージャ16の長さと大凡同じ距離分、病変42の遠位側に配置される。上述したように、カテーテル24の遠位端44と病変42の相対位置は、X線透視法で観察することができる。
【0030】
図2Bでは、カテーテル24は、その内部に設けられた細長部材12および(圧縮態様にある)エンクロージャ16が当該カテーテル24の近位端を介して病変42へと進む際に、静止状態で保持される。カテーテル24の内面38上の潤滑コーティングは、細長部材12およびエンクロージャ16がカテーテル24を通って進むときの摩擦抵抗を低減する。可動遠位先端26は、細長部材12およびエンクロージャ16それぞれが蛇行血管系を介して移動するのを補助する。カテーテル24およびエンクロージャ16に固定されたX線不透過性マーカ36の補助によるX線透視法を使用して、可動遠位先端26がカテーテル24の遠位端44から延出しながらもエンクロージャ16全体がカテーテル24の内部で圧縮された状態を保つように、細長部材12およびエンクロージャ16がカテーテル24内に配置される。カテーテル24およびこれに収容される細長部材12およびエンクロージャ16は、フロー修復セグメント18が病変42と並ぶように、血管40内に配置される。
【0031】
図2Cでは、細長部材12およびエンクロージャ16は、カテーテル24の遠位端44がエンクロージャ16の近位端30よりも近位側に至るまでカテーテルが近位側に引き抜かれる際に、細長部材12の近位端の使用により、血管40に対して静止状態で保持される。その相対位置はX線透視法によって判定される。エンクロージャはニチノールのような形状記憶合金から形成されるため、カテーテル24の圧縮力が一旦取り除かれると、エンクロージャ16は、半径方向に拡張して、拡張態様となる。相対的な弾性材料は、十分な弾性力を提供し、その結果、フロー修復セグメント18が病変42を押し付けるとともに、捕捉セグメント22が血管40の内面38を実質的に密封して、血管形成術中に生じるあらゆる残屑または塞栓を捕捉する。残屑または塞栓は病変42で生成されるため、それらは、フロー修復セグメント18および開セグメント20を介してエンクロージャに流入して、捕捉セグメント22の内部48で捕捉される。
【0032】
図2Dでは、細長部材12およびエンクロージャ16は、X線透視法で判定されるようにカテーテル24の遠位端44がフロー修復セグメント18の直近位に至るまでカテーテルが遠位側に進む際に、細長部材12の近位端の使用により、血管40に対して静止状態で保持される。エンクロージャ16のフロー修復セグメント18に対するカテーテル24の相対的な遠位の動作は、半径方向に圧縮して圧縮態様に戻すことにより、フロー修復セグメント18を再び納めた状態とする。フロー修復セグメント18は捕捉セグメント22とは実質的に独立して圧縮可能であるため、再び納める間に生じた残屑または塞栓は、遠位側に配置されて完全に拡張した捕捉セグメント22により捕捉される。フロー修復セグメント18が再び納められた後、圧縮された病変42は、血管40の内面38に付着したままである。
【0033】
図2Eでは、カテーテル24、細長部材12およびエンクロージャ16が互いに対して静止状態に保たれ、3つのすべてが血管40の外部へと近位側に同時に引き抜かれる。開セグメント20が圧縮された病変42を通るときに、病変42は開セグメント20の開口部46を介してエンクロージャ16に入る。拡張した捕捉セグメント22が圧縮された病変42を通るときに、捕捉セグメント22は、内面38および血管40から圧縮された病変42を機械的に切断するか、削り取る。その後、切り離された病変42は、捕捉セグメント22の内部46に捕捉されて、カテーテル24、細長部材12およびエンクロージャ16とともに、血管40から取り除かれる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
多モード閉塞・狭窄治療装置であって、
遠位領域を有する細長部材と、
前記細長部材の遠位領域に固定されたエンクロージャとを備え、
前記エンクロージャが、
フロー修復セグメントと、
前記フロー修復セグメントの遠位側にある開セグメントと、
前記開セグメントの遠位側にある捕捉セグメントとを備えることを特徴とする治療装置。
【請求項2】
請求項1に記載の治療装置において、
カテーテルをさらに備え、前記細長部材が、前記カテーテル内にスライド可能に配置され、前記細長部材が、非侵襲的でフレキシブルな遠位先端を有することを特徴とする治療装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の治療装置において、
前記エンクロージャの近位端を前記細長部材に連結する近位のカラーと、前記エンクロージャの遠位端を前記細長部材に連結する遠位のカラーとをさらに備えることを特徴とする治療装置。
【請求項4】
請求項1乃至3の何れか一項に記載の治療装置において、
前記エンクロージャのフロー修復セグメントが中程度の穴密度から高い穴密度を有し、前記エンクロージャの開セグメントが低い穴密度を有し、前記エンクロージャの捕捉セグメントが高い穴密度を有することを特徴とする治療装置。
【請求項5】
請求項1乃至4の何れか一項に記載の治療装置において、
前記フロー修復セグメント、前記開セグメントおよび前記捕捉セグメントがそれぞれ一体的に形成されていることを特徴とする治療装置。
【請求項6】
請求項1乃至5の何れか一項に記載の治療装置において、
前記エンクロージャが、長手軸に沿って半径方向に圧縮可能であり、半径方向に圧縮されないときは、予め設定されたサイズを有することを特徴とする治療装置。
【請求項7】
請求項6に記載の治療装置において、
前記フロー修復セグメントが、前記捕捉セグメントとは実質的に独立に半径方向に圧縮可能であることを特徴とする治療装置。
【請求項8】
請求項1乃至7の何れか一項に記載の治療装置において、
前記エンクロージャが、形状記憶合金を含むことを特徴とする治療装置。
【請求項9】
請求項1乃至8の何れか一項に記載の治療装置において、
前記捕捉セグメントが、血管の内面に対してシールを形成するように構成されていることを特徴とする治療装置。
【請求項10】
請求項1乃至9の何れか一項に記載の治療装置において、
前記捕捉セグメントが、直径20ミクロン乃至750ミクロンの範囲内の穴寸法を有することを特徴とする治療装置。
【請求項11】
請求項1乃至10の何れか一項に記載の治療装置において、
前記フロー修復セグメントが、血管形成術を行うために構成され、前記開セグメントおよび前記捕捉セグメントが、血栓除去術およびアテローム切除術をそれぞれ行うように構成されていることを特徴とする治療装置。
【請求項12】
請求項1乃至11の何れか一項に記載の治療装置において、
前記エンクロージャが、1またはそれ以上の追加的なフロー修復セグメントをさらに備えることを特徴とする治療装置。
【請求項13】
請求項1乃至12の何れか一項に記載の治療装置において、
前記エンクロージャが、1またはそれ以上の追加的な開セグメントをさらに備えることを特徴とする治療装置。
【請求項14】
請求項1乃至13の何れか一項に記載の治療装置において、
前記エンクロージャが、1またはそれ以上の追加的な捕捉セグメントをさらに備えることを特徴とする治療装置。
【請求項15】
多モード閉塞・狭窄治療装置であって、
カテーテルと、
前記カテーテル内にスライド可能に配置され、遠位領域を有する細長部材と、
前記細長部材の遠位領域に固定されたエンクロージャとを備え、
前記エンクロージャが、
中程度の穴密度から高い穴密度を有するフロー修復セグメントと、
前記フロー修復セグメントの遠位側に配置され、低い穴密度を有する開セグメントと、
前記開セグメントの遠位側に配置され、高い穴密度を有する捕捉セグメントとを備えることを特徴とする治療装置。
【請求項16】
請求項15に記載の治療装置において、
前記エンクロージャが、長手軸に沿って半径方向に圧縮可能であり、半径方向に圧縮されないときは、予め設定されたサイズを有し、
前記フロー修復セグメントが、前記捕捉セグメントとは実質的に独立に半径方向に圧縮可能であることを特徴とする治療装置。
【請求項17】
血管閉塞または狭窄の治療方法であって、
カテーテルの遠位端が血管内の閉塞または狭窄の病変よりも遠位側に配置されるまで、選択された血管内にカテーテルを挿入するステップと、
多モード閉塞・狭窄治療装置を前記カテーテル内に挿入するステップであって、前記装置が、細長部材と、前記細長部材の遠位領域に固定された圧縮エンクロージャとを備え、前記圧縮エンクロージャが、フロー修復セグメントと、前記フロー修復セグメントの遠位側にある開セグメントと、前記開セグメントの遠位側にある捕捉セグメントとを備えるものであるステップと、
前記フロー修復セグメントを前記病変の位置に合わせるステップと、
前記カテーテルの遠位端が前記フロー修復セグメントよりも近位側に至るまで、前記装置に対して前記カテーテルを引き戻し、それにより、前記フロー修復セグメントが半径方向に拡張して、前記血管の内面に前記病変を押し付けることを可能にするステップとを備えることを特徴とする方法。
【請求項18】
請求項17に記載の方法において、
前記装置に対して前記カテーテルを近位側に引き戻すことにより、前記捕捉セグメントが半径方向に拡張して、前記血管の内面に対して実質的にシールすることが可能になることを特徴とする方法。
【請求項19】
請求項18に記載の方法において、
前記エンクロージャの拡張した捕捉セグメント内に塞栓を捕捉するステップをさらに備えることを特徴とする方法。
【請求項20】
請求項19に記載の方法において、
前記装置に対して前記カテーテルを遠位側に進めて、前記カテーテルの遠位端を前記フロー修復セグメントの遠位端の位置に合わせ、それにより前記フロー修復セグメントを半径方向に圧縮するステップと、
前記カテーテルおよび装置を近位側に引き戻して、病変が前記開セグメントの開口部を通過することを可能にするステップと、
前記捕捉セグメントの内部に病変を捕捉するステップとをさらに備えることを特徴とする方法。

【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【図2C】
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【図2D】
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【図2E】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2013−518678(P2013−518678A)
【公表日】平成25年5月23日(2013.5.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−552087(P2012−552087)
【出願日】平成23年2月3日(2011.2.3)
【国際出願番号】PCT/US2011/023636
【国際公開番号】WO2011/097402
【国際公開日】平成23年8月11日(2011.8.11)
【出願人】(511087006)ストライカー エヌヴイ オペレイションズ リミテッド (6)
【氏名又は名称原語表記】STRYKER NV OPERATIONS LTD.
【出願人】(595148888)ストライカー コーポレイション (52)
【氏名又は名称原語表記】STRYKER CORPORATION
【Fターム(参考)】