説明

多価ヒト−ウシ・ロタウイルス・ワクチン

【課題】本発明は、ヒトロタウイルス性疾患に対する防御のための、有意の反応原性を伴わないワクチン組成物を提供する。
【解決手段】ヒトロタウイルスの4つの臨床的に最も重要なVP7血清型の各々を包含するヒトxウシ再類別体ロタウイルスは、一過性有熱性症状を生じることなく高度の感染性および免疫原性を提供する多価処方物中に併合される。一過性有熱性症状の発生を伴わずに免疫原性応答を生成するための方法も提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の背景
ロタウイルスは、乳児および幼児の急性脱水性下痢の主因である。ロタウイルス疾患は、開発途上国における乳児および幼児の胃腸炎死の25%〜30%を占め、そして米国における5歳未満の小児の約50,000〜100,000件の入院を引き起こしている。このため、乳児および幼児における重症ロタウイルス疾患を予防するための安全な有効ワクチンが必要とされている。
ロタウイルスワクチン開発のための主な戦略は、ヒトおよび動物ロタウイルスの抗原関連性およびヒトにおける動物ロタウイルス系統のビルレンス低減を利用する「ジェンナー」法に基づいている(Kapikian et al., inVaccines, Chanock et al., eds., Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor,New York, pp.151-159(1987))。このアプローチを用いていくつかの候補経口ロタウイルス生ワクチンが開発されてきたが、この場合、非ヒト宿主に由来する抗原的関連生ウイルスはそのヒトウイルス対応物に対する免疫感作のためのワクチンとして用いられる。ヒトにワクチン接種するために用いられてきた動物ロタウイルスの例としては、ウシロタウイルスNCDV系統(RIT4237, Vesikari et al., Lancet, 2:870-811(1983))、ウシロタウイルスWC3系統(Clark et al., Am. J.Dis. Child., 140:350-356(1986))およびアカゲザルロタウイルス(RRV)MMU18006系統(米国特許第4,571,385号、Kapikian et al., Vaccine 85, eds., Lerner et al.,Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, New York, pp.357-367(1985))が挙げられる。
【0002】
異なる一価ウシおよび一価サルロタウイルスワクチンの間の防御効力は、可変性であることが立証されている(Vesikari in Viral Infections of the Gastrointestinal Tract (Kapikian, Ed., Marel Dekker, Inc., pp.419-442(1994); Kapikian (同上)pp.443-470(1994))。さらに、ヒトでの満足のいく免疫応答(107〜108プラーク形成単位(pfu))を産生するために、高濃度のウシロタウイルスが必要とされてきた(Vesikari et al., Ped. Inf. Dis. 4:622-625(1985); Bernstein et al., J. Infect. Dis. 162:1055-1062(1990))。これらの組成物の可変性効力は、一部は、生後2〜5ヶ月の乳児の標的集団がワクチン接種後にホモタイプ免疫応答を特徴的に発現する、という事実によると考えられる(Kapikian et al., Adv. Exp. Med. Biol., 327:59-69(1992); Bernstein et al., J. Infect. Dis., 162:1055-1062(1990); Green et al., J. Infect. Dis., 161:667-679(1990);およびVesikari, Vaccine, 11:255-261(1993))。
【0003】
臨床的に関連のあるヒトロタウイルスは、A群ロタウイルスの成員である。これらのウイルスは、ウイルス中間殻上に位置するタンパク質であるVP6により媒介される共通群抗原を共有する。さらに、血清型特異性は、ウイルス外殻(しばしばウイルスキャプシドとも呼ばれる)上に位置するVP4(プロテアーゼ感受性またはP型)およびVP7(糖タンパク質またはG型)タンパク質の存在によっており、これらはともに、別々に中和抗体を誘導する(Kapikian et al.,In Virology, Fields, ed. pps.1353-1404(1995))。
【0004】
ヒトに感染するA群ロタウイルスは、中和検定により10種類の異なるVP7血清型に分類されている。アミノ酸配列分析は、各血清型内では、2つの主要可変部内のアミノ酸同一性は高い(85〜100%)が、しかしながら、異なる血清型の系統間のアミノ酸同一性は有意に低い(Green et al., Virol. 168:429-433(1989); Green et al., Virol. 161:153-159(1987);およびGreen et al., J. Virol. 62:1819-1823(1988))、ということを示している。ウイルス中和検定またはVP7の配列分析により確定した場合のロタウイルス間の関係における一致が実証されている。したがって、臨床試験では、その血清型内の代表的ロタウイルス系統として参照系統がルーチンに用いられ得る。
【0005】
4つの疫学的および臨床的に重要なG血清型(VP7)(1、2、3および4と番号を付けた)の各々に対する防御を達成するために、再類別体ロタウイルスの産生により、ジェンナー法が修正された。再類別体ロタウイルス系統は、動物起源のロタウイルス(即ちアカゲザルまたはウシロタウイルス)およびヒトロタウイルス系統で組織培養細胞を同時感染させることにより構築された。動物系統のVP7に向けられる一組のモノクローナル抗体に同時感染の子孫を曝露することにより、ヒト系統殻のVP7をコードする単一ヒトロタウイルス遺伝子および動物系統殻の10の残りのロタウイルス遺伝子を含有する同時感染中に産生される再類別体ウイルスが選択された(例えば、米国特許第4,571,385号;Midthun et al., J. Clin. Microbiol.24:822-826(1986);およびMidthun et al., J. Virol. 53:949-954(1985)参照)。
【0006】
ヒト系統殻のVP遺伝子を含有するヒトxアカゲザルロタウイルス再類別体およびヒトxウシ再類別体の研究は、動物ロタウイルス親のVP4中和タンパク質がこれらのヒトx動物ロタウイルス再類別体をワクチン接種された乳児における免疫応答を支配する、ということを実証した。これは、おそらくは、子宮内で母親から子供に譲渡された抗体の中に動物ロタウイルスVP4が存在しないことを反映する。それにもかかわらず、母親由来VP7抗体により部分的に鈍化されるヒトロタウイルスVP7に対する免疫応答は、防御を提供するのに十分であり、したがって、VP7抗体は変法ジェンナー法の基礎を形成する(Flores et al., J.Clin.Microbiol. 27:512-518(1989); Perez-Schael et al., J. Clin. Microbiol. 28:553-558(1990); Flores et al., J. Clin. Microbiol. 31:2439-2445(1993); Christy et al., J. Infect. Dis. 168:1598-1599(1993); Clark et al., Vaccine 8:327-332(1990); Treanor et al., Pediatr. Infect. Dis. J. 14:301-307(1995); Madore et al., J. Infect. Dis. 166:235-243(1992);and Clark et al., J. Infect. Dis. 161:1099-1104(1990))。
【0007】
単一ヒトロタウイルス遺伝子、即ちVP7をコードする遺伝子を保有する単一アカゲザル再類別体を用いた試験において、このような再類別体の防御免疫学的応答が生後6ヶ月未満の乳児においては特徴的にホモタイプであるということが観察された(Green et al., J. Inf. Dis. 161:667-679(1990))。この観察は、ロタウイルス疾患に対する免疫感作におけるVP7関連免疫の重要性に関するさらなる証拠を提供した。
【0008】
一価および四価ヒトxアカゲザルロタウイルス再類別体ワクチンを用いた一般的経験は、一過性低レベル有熱性エピソードがワクチン接種後3〜4日目に年少幼児の約3分の1に起こるというものであった(Bernstein et al., JAMA 273:1191-1196(1995); Flores et al., Lancet 336:330-334(1995); Perez-Schael et al., J. Clin. Microbiol. 28:553-558(1990); Flores et al., J. Clin. Microbiol. 31:2439-2445(1993); Halsey et al., J. Infect. Dis. 158:1261-1267(1988); Taniguchi et al., J. Clin. Microbiol. 29:483-487(1991); Simasathien et al., Pediatr. Infect. Dis. J. 13:590-596(1994); Madore et al., J. Infect. Dis. 166:235-243(1992);and Joensuu et al., Lancet 350:1205-1209(1997))。
【0009】
ウシロタウイルスNCDVおよびWC3系統(VP7血清型6)を用いたヒトにおける研究の結果は、これらの特定のウシロタウイルス系統が発熱またはその他の反応を引き起こすとは考えられないことを示す。血清型6 VP7は、ヒトロタウイルス疾患において重要であるヒトロタウイルス上に存在することが知られているということに留意すべきである。さらに、ウシロタウイルスは、ヒトに投与された場合にアカゲザルロタウイルスと同様に免疫原性であることは見出されなかった。ウシロタウイルスNCDV系統(RIT4237ワクチン)は、乳児および幼児において5つより多い効能試験で評価された。これらの試験では、ウシRIT4237ワクチンが107.8〜108.3組織培養感染用量50(TCID50)の用量範囲で、通常は108.0TCID50を上回る投与量で、投与された。さらに、用量−応答試験において、Vesikari等(Ped. Infect. Dis., 4:622-625(1995))は、106.3TCID50の用量でワクチンを投与された場合に生後4〜6ヶ月の乳児の15%(2/13)がホモタイプ抗体応答を発現し、107.2TCID50の用量では71%(10/14)、そして108.3TCID50の用量では100%が発現したことを観察した。したがって、最適免疫原性を生じるこのウシロタウイルス系統の用量は、108.0TCID50の範囲であることが確定された。
【0010】
ヒトにおけるアカゲザルロタウイルスとウシロタウイルスの感染性および免疫原性の直接比較では、105プラーク形成単位(pfu)のアカゲザルロタウイルス(RRVワクチン)または108.3pfuのRIT4237が生後6〜8ヶ月の小児に投与された(Vesikari et al., J. Infect. Dis. 153:832-839(1986))。RRVワクチンは、被ワクチン接種者の81%にホモタイプ中和抗体応答を誘導し、一方2000倍より多い用量のウシRIT4237ワクチンは被ワクチン接種者の45%にホモタイプ中和抗体を誘導しただけであった(これは統計学的有意差であった)。
【0011】
効能試験は、WC3ウシロタウイルス系統を用いても実施された。これらの試験では、WC3系統は、107.0〜107.3pfuの用量範囲で乳児および幼児に投与された(Clark et al., Am. J. Dis. Child. 140:350-356(1986))。有意の免疫原性に必要とされる用量に関するデータは提供されなかったが、Clark等は、WC3系統がRIT4237の場合と同様の安全特性を保有すると考えられることに、さらに、ウシRIT4237とともに用いた場合の少なくとも5分の1の用量で免疫原性であったが、しかしこの免疫原性は、アカゲザルロタウイルスワクチンよりかなり高い用量を必要としたことに注目した。
【0012】
WC3ロタウイルス系統は、種々のヒトロタウイルス系統を用いて再類別体を生成するための親系統の1つとして用いられてきた(Clark et al., J. Infect. Dis.(補遺)174:73-80(1996))。一効能試験では、WC3およびヒトロタウイルスVP7血清型1の107.3pfuの一価再類別体が3用量計画で乳児および幼児に投与された(Treanor et al., Ped. Inf. Dis. J. 14:301-307(1995))。免疫原性データは、この試験に関しては報告されなかった。別の効能試験では、ヒトロタウイルスVP7血清型1、2または3を有するウシロタウイルスWC3の3つのヒトVP7再類別体を、そして第四番目の構成成分として、ウシロタウイルスWC3由来の残りの遺伝子を有するヒトロタウイルスVP4タンパク質を保有するヒトxウシ再類別体を含有する四価処方物が用いられた。3つのVP7再類別体の各々は107.0pfuの量量で用いられたが、一方VP4再類別体は5 x 106.0pfuの投与量で投与された(Clark et al., Arch. Virol.(補遺)12:187-198(1996); Clark et al., J. Infect. Dis.(補遺)174:73-80(1996); Vesikari et al., Arch. Virol.(補遺)12:177-186(1996))。この試験に関する免疫原性データは報告されていないが、しかしこれらの試験は、アカゲザルロタウイルスまたはヒトxアカゲザル再類別体ワクチンを用いて得られたものと同様の防御応答を特徴的に生じるためには、107〜108.3pfuの投与量を要したことを示す(Clark et al., Arch. Virol.(補遺)12:187-198(1996); Vesikari et al., Arch. Virol.(補遺)12:177-186(1996))。この投与量は、アカゲザルロタウイルスおよびヒトxアカゲザルロタウイルス再類別体ワクチン処方物に関する値の10〜100倍である。
【0013】
多価ロタウイルスワクチン組成物が開発された。特に、ヒト血清型1、2および3を示す三つのヒトxアカゲザルロタウイルス再類別体はアカゲザルロタウイルス系統(RRV)と併合されて(後者はヒト血清型3と中和特異性を共有する)、四価ワクチン組成物を生成する(Perez-Schael et al., J. Clin. Microbiol. 28:553-558(1990); Flores et al., J. Clin. Microbiol. 31:2439-2445(1993))。一価アカゲザルロタウイルスを用いた場合と同様に、ヒトxアカゲザル再類別体ロタウイルスワクチン組成物は、ワクチン接種された乳児の約15%〜33%に一過性低レベル有熱性症状を生じることが判明した(Perez-Schael et al.,同上)。この一過性有熱性エピソードまたは症状は、一般的には親および臨床試験のヘルスケアプロバイダーに許容可能であるとみなされるけれども、ある状況では、例えばロタウイルスに対する低レベルの受動的獲得母親抗体等を有し得る未熟乳児においては、おそらくは妨害物であり得る。
米国食品医薬品局により現在認可されている動物ロタウイルスベースのロタウイルスワクチン組成物は、ロタウイルス感染に対するヒトにおける重要レベルの防御を提供するが、しかし高感染性を有し、ほとんどまたは全く有熱性応答を生じない多価ワクチン組成物が、特にある種の臨床状況に関しては望ましい。
【発明の概要】
【0014】
発明の要約
本発明は、ヒトxウシ再類別体ロタウイルスの免疫原性組成物を提供する。ヒトxウシ再類別体は、ヒト宿主における一過性低レベル発熱を引き起こすことなく当業界の従来の実際的制限を克服するのに十分な感染性を有する用量での現在および将来的臨床的重要性を有するヒトロタウイルスの各血清型に対する免疫応答を誘導するのに十分な量で多価組成物中に提供される。免疫原性組成物のさらに別の構成成分としては、生理学的に許容可能な担体および任意に宿主の免疫応答を増強するためのアジュバントが含まれ得る。ある実施態様では、ヒトxウシ再類別体ロタウイルスVP7抗原は、ヒト親ロタウイルス系統から、例えば血清型1、血清型2,血清型3,血清型4,血清型5,血清型9のヒトロタウイルスから、または血清型10のウシ親ロタウイルス系統から得られる。その他のロタウイルスタンパク質をコードする残りの遺伝子は、ウシロタウイルス系統から得られる。好ましい実施態様では、ウシロタウイルスUK-Compton系統が用いられる。VP血清型1、2、3および4に関する適用範囲を提供する特に好ましい免疫原性組成物は、それぞれヒトxウシロタウイルス再類別体DxUK、DS−1xUK、PxUKおよびST3xUKを含む四価組成物を包含する。
【0015】
さらに別の実施態様では、ヒトロタウイルスVP7血清型5および/または9に対応する付加的ヒトxウシロタウイルス再類別体、あるいはヒトロタウイルスVP7血清型10と交差反応性のウシxウシ再類別体、あるいはヒトロタウイルスVP4血清型1Aを含有するヒトxウシ再類別体ロタウイルスが、広範囲の用途を有する免疫原性組成物を提供するために含まれ得る。中でも特に興味深いのは、ロタウイルス再類別体DxUK、DS−1xUK、PxUK、ST−3xUKおよびWa(VP4)xUK系統を包含する五価組成物;前記の五価組成物+VP7血清型9xUK系統を包含する六価組成物、ならびに前記の六価組成物+VP7血清型5xUKを包含する七価組成物、または前記の七組成物+VP7血清型10xUK系統である。それらがヒトにおける有意の疾患を生じることが認識されている場合のロタウイルスのさらに別の系統は、ウシロタウイルス再類別体に作製されて、本発明の免疫原性組成物に付加され得る。本発明の免疫原性組成物は、典型的には、各ロタウイルスVP7またはVP4再類別体の約106.0プラーク形成単位未満の用量で処方される。投与量が約105〜約106未満プラーク形成単位であるのが特に好ましい。
【0016】
他の実施態様では、本発明は、一過性低レベル発熱をほとんどまたは全く伴わずにヒトロタウイルス抗原に対する免疫原応答を生じるために免疫系を刺激するための方法を提供する。これらの方法は、ヒトロタウイルスの少なくとも4つのVP7血清型を包含する免疫原的に十分な量の多価ヒトxウシ再類別体ロタウイルス組成物を個体に投与することを包含する。好ましい実施態様では、組成物を包含するヒトxウシ再類別体ロタウイルスとしては、ヒトロタウイルス血清型1xウシロタウイルスUK系統、ヒトロタウイルス血清型2xウシロタウイルスUK系統、ヒトロタウイルス血清型3xウシロタウイルスUK系統およびヒトロタウイルス血清型4xウシロタウイルスUK系統が挙げられる。多価組成物としては、即ち、血清型5および/または血清型9のヒトxウシ再類別体ロタウイルス、あるいはヒトロタウイルスVP7血清型10特異性を有するウシxウシ再類別体ロタウイルス、あるいはヒトロタウイルス血清型VP4 1AxウシロタウイルスUK再類別体等が挙げられるが、これらに限定されない。さらに、付加的ロタウイルス血清型はヒト疾患において重要であると認識されているので、それらは、臨床的意義を有する現在認識されておりそして新たに認識されたロタウイルスに対する免疫原性応答を生成するために本発明の免疫原性組成物に付加され、免疫系を刺激するための方法にも用いられ得る。
【発明を実施するための形態】
【0017】
特定の実施態様の説明
本発明は、ヒトに用いるための免疫原性ロタウイルス組成物を提供する。本明細書中に記載した組成物は、付随する一過性低レベル発熱応答を伴わずにロタウイルス特異的抗体応答を誘導する処方物中にA群ヒトロタウイルスのほとんどの臨床的に関連する血清型の各々のうちの1つを提供するために、一価再類別体ヒトx動物等尾多得るを併合することにより生成される。
【0018】
したがって、本発明の免疫原性組成物は、特に、多価組成物を生成するために、再類別体ヒトxウシロタウイルスと生理学的に許容可能な担体の組合せを包含する。特定の実施態様では、多価免疫原性組成物は、四価組成物を生成するために、世界中で最も流布しているヒトロタウイルスの臨床的に関連のある血清型の4つの再類別体ヒトxウシロタウイルスの組合せを包含する。免疫原性組成物は、ロタウイルスに対する免疫学的防御を必要とする個体、例えば乳児、小児または成人に、免疫学的に十分な量で投与される。個体がその後に野生型ヒトロタウイルス系統に感染した場合に、組成物は、重症ロタウイルス疾患、例えば重症下痢および脱水の症状に対して少なくとも部分的に防御性である免疫応答の生成を引き出す。免疫原性組成物の再類別化ウイルスは宿主栄養路に感染するので、ワクチン接種の結果、何らかの軽症疾患が起こり得るが、しかし典型的には本発明の免疫原性組成物は、被ワクチン接種者において臨床的に関連する発熱または反応を引き起こさない。ワクチン接種後、免疫原生組成物を構成する血清型のロタウイルスを中和し得る検出可能レベルの宿主産生血清抗体が存在する。特に、本発明の多価免疫原性組成物は、異なる環境において流布している臨床的に関連するA群ヒトロタウイルスの、すべてではないとしても、ほとんどに対して免疫学的応答を生じる。本発明の教示は、臨床的に関連することが現在認識されているヒトロタウイルス血清型に限定されず、将来、臨床的に関連があるとして出現するヒトロタウイルスの血清型も含む。
【0019】
本発明の多価免疫原性組成物の一構成成分である再類別化ロタウイルスは、単離化、そして典型的には精製化形態である。単離化とは、細胞培養またはその他の系の野生型ウイルスおよびその他の異種構成成分のような、その製造のその他の細胞およびウイルス生成物から単離された再類別化ロタウイルスを指す。
【0020】
一般に、ロタウイルス再類別体は、組織培養適応動物ロタウイルス、即ちウシ、アカゲザル等と、組織培養適応ヒトロタウイルスとを用いた培養中の哺乳類細胞の同時感染により生成される。典型的には、アフリカミドリザル腎臓(AGMK)細胞が、同時感染のための宿主細胞として用いられる。動物およびヒトロタウイルス系統による同時感染後、所望の再類別体の選択は、典型的には、同時感染化培養の増殖収量を、ヒトロタウイルス遺伝子に置き換えられるものである動物ロタウイルス遺伝子のタンパク質生成物に特異的な中和抗体に曝露することにより成し遂げられる(米国特許第4,571,385号(この記載内容は、参照により本明細書中に含まれる)参照)。特に、ウシロタウイルスVP7および/またはVP4タンパク質に特異的なポリクローナル血清またはモノクローナル抗体が用いられ得る。数回のプラーク精製および継代培養後、選定再類別体が、血清型および遺伝子型に関して特性化される。血清型は、典型的には、プラーク低減中和(PRN)検定または酵素イムノアッセイにより確定される。遺伝子型は、典型的には、ウイルスゲノムのゲル電気泳動およびRNA−RNAハイブリダイゼーションにより確定される。ヒトVP7またはVP4遺伝子のみを有するロタウイルス再類別体は、典型的には、本発明の多価免疫原性組成物のために選択される。多数のヒトロタウイルス遺伝子を包含する再類別体も用いられ得る。この点では、当該再類別体ロタウイルスは、特に、ヒトロタウイルスVP7および/またはヒトロタウイルスVP4遺伝子生成物をコードするものである。
【0021】
本発明において、特に好ましいロタウイルス再類別体(reassortants)は、VP7をコードするヒトロタウイルス遺伝子およびウシロタウイルス起源の残りの10個のロタウイルス遺伝子を包含するヒトロタウイルスおよびウシロタウイルス再類別体である。ウシロタウイルスUK系統(Woode et al., Res. Vet. Sci. 16:102-105(1974); Bridger and Woode, Br. Vet. J., 131:528-535(1975))は、その由来のために、そして本発明により実証されるように、ヒトにおけるその高レベルの感染性のために、特に好ましい。本明細書中で実証されるUKウシロタウイルス再類別体の高感染レベルは、より低レベルの用量が必要とされることを意味し、したがって、用量当たりの製造コストはその他の現在知られているウシロタウイルス再類別体ワクチンより有意に低くされるはずである。他の動物ロタウイルス系統も、各ロタウイルスに関して106.0プラーク形成単位未満の投与量で投与された場合に、組成物が被ワクチン接種者において血清学的応答を誘導し得る、そして一過性低レベル発熱応答を生じない限り、再類別体ロタウイルスを製造するために用いられ得る。例えば、ある実施態様では、再類別体ロタウイルスは、ヒトVP7血清型10と免疫学的に交差反応性である動物VP7抗原を包含する。この再類別体ロタウイルスは、ウシxウシ再類別体であり得る。
【0022】
代替的実施態様では、特定血清型の再類別体ロタウイルスは、予め得られた再類別体を用いて生成され得る。例えば、付加的ウシUK再類別体を生成するためには、ヒトロタウイルスVP7血清型1D系統xウシUK再類別体HD/BRV−1(ATCC VR-2069)を用いて、ヒトVP7血清型2、3、4、9および/またはウシロタウイルスVP7血清型10を有するヒトロタウイルスxウシUK再類別体を生成し得る。用いられる方法は前記のものと同様であるが、但し、親ヒトロタウイルス再類別体のVP7血清型に特異的なポリクローナルまたはモノクローナル中和抗体を用いて、所望のヒト(および/またはウシ)ロタウイルスVP7血清型の新規の再類別体を選択する。他の臨床的に関連するヒトVP4またはVP7血清型が単離および同定される場合、新規に発見される血清型の再類別体ロタウイルスが所望の方法により生成され得るということも、本発明の一部として意図される。
【0023】
再類別化ロタウイルスの増殖は、ロタウイルス増殖を支持する多数の細胞培養中で生じ得る。ワクチン用途のためのロタウイルス再類別体の増殖のために好ましい細胞培養としては、一次または二次サルアフリカミドリザル腎細胞(AGMK)、定性化二倍体サルFRhL−2細胞および定性化サル異数体ベロ(Vero)細胞が含まれる。細胞は、典型的には、約0.1〜1.0/細胞またはそれ以上の範囲の感染多重度でロタウイルス再類別体を接種され、ウイルス複製に適した条件下で約3〜5日間、あるいはウイルスが適切な力価に達するのに必要な期間培養される。ロタウイルス再類別体は感染細胞培養から収穫され、典型的には周知の清澄化手法により、例えば遠心分離によって細胞構成成分から分離され、そして所望により当業者に周知の手法を用いて精製され得る。
【0024】
免疫原性組成物として用いるための好ましい実施態様では、血清型1、血清型2、血清型3および血清型4のヒトxウシ再類別体ロタウイルスは四価ワクチンとして用いられる。典型的には、4つの血清型の各々のヒトxウシ再類別体ロタウイルスは混和されて、同時投与のための併合組成物を形成する。各ロタウイルス血清型の最終比率は、個々のロタウイルス再類別体の免疫原性により確定される。好ましくはないけれども、ヒトxウシ再類別体の各々またはそれらの組合せも、逐次方式で投与されて、有効ワクチン処方物を提供し得る。
その他の好ましい実施態様では、血清型1、血清型2、血清型3および血清型4のヒトxウシ再類別体ロタウイルスは、VP7血清型5および/または9のヒトxウシ再類別体ロタウイルス、VP7血清型10のウシxウシ再類別体ロタウイルス、および/またはVP4血清型1Aのヒトxウシ再類別体ロタウイルスと組合されて、多価免疫原性組成物を産生する。今記載した付加的再類別体ロタウイルスは、六価、七価または八価免疫原性組成物として用いるためにあらゆる組合せで用いられ得る。
【0025】
本発明のヒトxウシ再類別体ロタウイルス多価免疫原性組成物は、活性成分として、本明細書中に記載したようなヒトロタウイルスの免疫学的有効量の少なくとも4つの臨床的に最も重要なVP7血清型の各々を含有する。特に、抗原的に異なる比とロタウイルス再類別体の各々は、106.0プラーク形成単位未満の投与量で投与される。免疫原性組成物は、生理学的に許容可能な担体および/またはアジュバントとともに、宿主、特にヒト中に導入され得る。有用な担体としては、例えばクエン酸塩−重炭酸塩緩衝液、緩衝化水、正規食塩水等が挙げられる。その結果生じる水性溶液は、現状のままで、または所望により、当業者に周知の凍結乾燥プロトコールを用いて凍結乾燥されて、使用のために包装され得る。凍結乾燥化ウイルスは、典型的には、約4℃で保持される。使用する準備ができたら、前記のように、投与前に凍結乾燥調製物は滅菌溶液と併合される。
【0026】
組成物は、生理学的条件に近づけるために必要な場合に、製薬上許容可能な補助物質例えばpH調整剤および緩衝剤等、例えば酢酸ナトリウム、乳酸ナトリウム、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム、ソルビタンモノラウレート、トリ−エタノールアミンオレエート、クエン酸塩−重炭酸塩等を含有し得る。組成物が経口的に投与される場合、胃酸を部分的に中和し、腸を通過する間再類別体ロタウイルスを防御するために緩衝溶液を個体に提供することも必要である。この使用に適した緩衝溶液としては、重炭酸ナトリウム、クエン酸塩重炭酸塩等が挙げられる。本発明のヒトxウシ再類別体ロタウイルス組成物による免疫感作時に、特に経口経路を介して、宿主の免疫系は、ロタウイルスタンパク質に特異的な局所分泌および血清抗体の両方を産生することにより組成物に応答する。組成物の投与の結果、免疫感作血清型(単数または複数)に対応する野生型系統により引き起こされるヒトロタウイルス疾患に対して、宿主は少なくとも部分的にまたは完全に免疫になる。野生型ウイルス感染が起きた場合には、宿主は、特に消化管の中等度または重症ロタウイルス疾患の発症に耐性である。
【0027】
ヒトxウシ再類別体ロタウイルスを含有する本発明の多化免疫原性組成物は、ロタウイルス疾患に罹り易いか、そうでなければその危険性のあるヒト、特に乳児に投与されて、個体自身の免疫応答能力を誘導する。このような量は、「免疫学的有効用量」と定義される。免疫原性または「免疫学的有効用量」とは、本発明で用いる場合、ワクチン組成物に対する細胞性および/または抗体媒介性免疫応答の被ワクチン接種者における発現を意味する。通常は、このような応答は、本発明のワクチン組成物中に含まれる単数または複数の抗原に特異的に向けられる被ワクチン接種者産生血清抗体、B細胞、ヘルパーT細胞、サプレッサーT細胞および/または細胞傷害性T細胞から成る。ロタウイルス群特異的またはロタウイルス血清型特異的検定により測定される免疫感作後の接種前抗体を4倍またはそれ以上上回る上昇は、有意の応答であるとみなされる。
【0028】
この使用において、特定の免疫原性組成物中の各ヒトxウシ再類別体ロタウイルス血清型の的確な量は、患者の年齢、健康状態および体重、投与方式、処方物の性質等によっているが、しかし一般に、その範囲は、約104〜約106プラーク形成単位、好ましくは約105〜約106プラーク形成単位(pfu)の各血清型/患者であった。
【0029】
あらゆる場合に、免疫原性組成物のための処方は、ロタウイルス疾患に対する個体の免疫応答を誘導するのに十分な量の本発明の各ヒトxウシ再類別体ロタウイルスを提供する必要がある。好ましくは、この免疫応答は、「反応原性」にならないよう、重症のまたは致命的ロタウイルス疾患に対して個体を有効に防御する。本明細書中で用いる場合、「反応原性の」または反応原性とは、免疫原性組成物の投与後、その週の間に生じる軽症一過性発熱を意味する。発熱は、本発明の情況では、成人では、38℃以上の口腔温度の、または小児科被ワクチン接種者においては38.1℃以上の直腸温度の発症と定義される。
【0030】
いくつかの場合には、本発明の好ましい四価ヒトxウシ再類別体ロタウイルス組成物を人ロタウイルスのその他の血清型またはその他の感染性作因、特にその他の胃腸性ウイルスと併用するのが有益であり得る。例えば、本発明の四価ヒトxウシ再類別体ロタウイルス組成物は、例えば血清型5(Timenetsky et al., J. General Virol. 78:1373-1378(1997))および/または血清型9(Nakagomi et al., Microbiol. Immunol. 34:77-82(1990))のヒトxウシ再類別体ロタウイルス、および/またはヒトロタウイルス血清型10と交差反応性のウシxウシ再類別体濾多得る、および/またはVP4血清型1Aのヒトxウシ再類別体ロタウイルスをさらに含み得る。投与は、別の考え得る胃腸ウイルスワクチン、例えばヒトカリシウイルス(例えば、ノーウォーク(Norwalk)ウイルス)または関連ワクチンと同時的(しかし典型的には別々に)または逐次的であり得る。
【0031】
本発明の免疫原性組成物の1回または多数回投与が実行され得る。新生児および乳児においては、特にロタウイルスに対する高レベルの母親由来抗体が存在する場合に、十分レベルの免疫性を引き出すためには多数回投与が必要とされ得る。投与は、生後2〜4ヶ月以内に開始し、初回免疫感作後、またはヒトロタウイルス感染に対して十分レベルの免疫性を誘導および保持する必要がある場合に、1〜2ヶ月またはそれ以上の間隔で継続すべきである。同様に、反復性または重症ロタウイルス疾患に特に罹り易い成人、例えばヘルスケア従事者、デイケア従事者、年少小児の家族成員、老齢者等は、有効免疫応答を確立および/または保持するために多数回投与が必要である。誘導免疫のレベルは、血清または分泌物中のロタウイルス群特異的抗体または血清型特異的中和抗体の量を測定することによりモニタリングされ、そして投与量が調整され、あるいは望ましいレベルの免疫性を保持する必要がある場合には本発明の多価再類別体ロタウイルス組成物の1つ又はそれ以上の血清型を用いてワクチン接種が反復され得る。
以下の実施例は説明のために提示されるものであり、本発明を限定するものではない。
【実施例】
【0032】
実施例I
本実施例は、ヒトロタウイルスD(VP7:1)、DS−1(VP7:2)、P(VP7:3)おyびST3(VP7:4)系統、およびウシUKコンプトン(UK)ロタウイルス由来のロタウイルス再類別体の製造、ならびに成人、小児および乳児における各再類別体の安全性、免疫原性および反応原性の評価を記載する。
【0033】
VP7血清型1、2、3および4を示すヒトxウシ再類別体ロタウイルス系統を、ウシUKコンプトン(UK)系統から、およびヒトロタウイルスD(VP7血清型1、ATCC VR-970)、DS−1(VP7血清型2;Wyatt et al., Perspect. Virol. 10:121-145(1978))およびP(VP7血清型3;Wyatt et al., Science 207:189-171(1983))ならびにST3(VP7血清型4;Banatvala et al., J. Am. Vet. Med. Assoc. 173:527-530(1978))系統から得た。ヒトロタウイルスD、DS−1およびP系統を、下痢で入院した小児の便から回収した。DおよびDS−1系統を増殖させて、ノトバイオート仔ウシ中で継代させ(Wyatt et al., 1978,同上;およびMidthun et al., 1985, J. Virol. 53:949-954)、その後組織培養中でのみ増殖させたが、一方P系統はAGMK組織培養中でのみ増殖させた。ヒトロタウイルスST3系統を無症候性新生児の便から単離し、AGMK細胞中で増殖させた。ウシUKコンプトンロタウイルス系統を、下痢を有する初乳剥奪仔ウシの糞から一次仔ウシ腎細胞中に単離した(Woode et al., Res. Vet. Sci. 16:102-105(1974))。一次仔ウシ腎細胞中でのこのウイルスのさらなる継代は、Flewett等により英国バーミンガムのRegional Virus Laboratory, East Birmingham Hospitalで実行され、National Institutes of Health(Bethesda, MD)に送られた。NIHでは、一次ウシ胎仔腎細胞、一次AGMK細胞および二倍体サルDBS−FRhL細胞中で、ウイルスを連続的に継代させた。シードプールは、AGMK細胞中で精製され、一次仔ウシ腎細胞培養中で継代されたプラークであるウイルスを含有した。
【0034】
ヒトロタウイルスD、DS−1、PまたはST3系統から得られる単一VP7コード遺伝子およびウシUK系統から得られる残りの10遺伝子を有する個々のヒトxウシロタウイルス再類別体(ロットBR-3、クローン22)が記載されている(Midthun et al., J. Clin. Microbiol. 24:822-826(1986)およびMidthun et al., J. Viol. 53:949-954(1985)、米国特許第4,571,385号)(これらの記載内容は、参照により本明細書中に含まれる)。これらの臨床試験に用いられたDxUK、DS−1xUK、PxUKおよびST3xUKワクチン懸濁液、即ち、それぞれロットHD BRV-1、クローン47-1-1(ATCC VR-2069およびATCC VR-2617)、105.8pfu/ml;ロットHDS1 BRV-1、クローン66-1-1(ATCC VR-2616)、105.3pfu/ml;ロットHP BRV-2、クローン22-1-1(ATCC VR-2611)、105.3pfu/ml;およびロットST3 BRV-2、クローン52-1-1(ATCC VR-2612)、105.8pfu/mlを調製し、安全性を首尾よく検査して、当業者に周知のように米国食品医薬品局のガイドラインにしたがって、外因性作因が含まれていないことを確証した。
【0035】
DxUKヒトxウシ再類別体ロタウイルスを用いたすべての小児科試験および成人における一試験を、無作為プラセボ対照法で実行して、各候補ロタウイルスワクチン系統の安全性および免疫原性を査定した。各ヒトxウシ再類別体ロタウイルスの安全性を、18〜45歳の成人、生後6〜60ヶ月の小児、そして最後に生後1.5〜5.9花月の乳児において、引き続き評価した。Johns Hopkins University Center for Immunization Research, Baltimore, MDまたはVaccine Clinic, Vanderbilt University, Nashville, TNで、種々の試験を実行した。
【0036】
ロタウイルスワクチン試験のための成人および小児科被験者の選択の判定基準は、Halsey et al., J. Infect. Dis. 158:1261-1267(1988)に記載されている。非稀釈用量の各ロタウイルス再類別体を、最初に成人で評価した。その後、各再類別体の1:10稀釈物を、その後、未稀釈用量(105.3pfu)のPxUKを、生後6〜60ヶ月の小児で評価した。各再類別体の安全性がこれらの小児で実証された後、1:10用量および未稀釈用量のDxUKおよびDS−1xUKも、生後6ヶ月未満の乳児でその後評価した。未稀釈用量のこれらの再類別体は年少乳児の大多数を感染させるために必要であったため、PxUKまたはST3xUK再類別体を6ヶ月未満の乳児に未稀釈投与した。
【0037】
最初に、105.8pfuのDxUK再類別体ロタウイルス系統の安全性を、その血清中に低レベルのVP7血清型1特異的中和抗体を有する5名の健常成人志願者で評価した。成人に関する試験のための臨床的手法は、2〜3の例外を除いて、Halsey等(上記)に前記されたものであった。要するに、全被験者が、ロタウイルスの各々の摂取の前後少なくとも1時間、絶食した。各成人志願者は、120 mlの蒸留水を2 gのNaHCO3とともに、その1分後に、30 mlの緩衝溶液中に懸濁した1 mlの未稀釈候補ワクチンまたは31 mlのプラセボ(ワクチンを含有しない緩衝溶液)を飲んだ。口腔温度を1日2回記録し、あらゆる温度上昇を20分以内に再点検した。ロタウイルス投与後7日間、便試料を収集し、便の粘稠度および回数を記録して、いかなる症状も、ワクチン接種後7日間毎日記録した。
【0038】
小児科試験のための臨床手法のほとんどが、これも2〜3の例外を除いて、Halsey等(上記)に前記された手法と同一であった。要するに、小児の年齢に適したルーチン小児免疫感作を、時間表通りに、そしてロタウイルスまたはプラセボ投与の少なくとも2週間前および投与後に施した。1時間絶食後、各小児科被験者を無作為化して、2:1の比でロタウイルスまたはプラセボを摂取させた。各小児は、0.4 gのNaHCO3を混合した30 mlの乳児処方物(Similac; Ross Laboratories, Columbus, OH)を飲み、その後1 mlのロタウイルス再類別体またはプラセボ(緩衝化処方物またはイーグル最小必須培地)を飲んだ。105.8pfuのDxUKロタウイルス再類別体を摂取した生後6ヶ月未満の乳児は、免疫原性を増大するための試験における最初の投与後4〜12週目に、このウイルスの二回目の投与を受けた。
【0039】
DxUKおよびDS−1xUK再類別体の試験では、直腸温度を1日1回または2回検温し、症状を、もしあれば、毎日記録した。親たちは、便試料を毎日収集し、彼等の小児が毎日排出する便の回数および粘稠度を記録するよう教えられた。PxUKおよびST−3xUKの小児科試験のための手法は、わずかな修正を有して、同一であった。
【0040】
被験者は、彼等が下痢を有する場合、またはロタウイルスの経口投与後7日間、明白な嘔吐または発熱のあらゆるエピソードを有する場合に、「ロタウイルス様疾病」(即ち、おそらくロタウイルスにより引き起こされたと思われる疾病)を有するとみなされた。下痢は、48時間以内に3回またはそれ以上の非定形便と定義した。発熱は、10〜20分以内に確証された成人における≧37.8℃の口腔温度または小児科被験者における≧38.1℃の直腸温度と定義した。
【0041】
ロタウイルス特異的抗体および血清アラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)レベルの測定のために、ロタウイルス投与前および投与後4〜6週目に、各試験参加者から血液を採取した。血清レベル測定血液を用いて、ワクチンが肝機能に悪影響を及ぼすか否かを確かめた。成人においては、ロタウイルス投与後1週目に付加的血液検体も採取し、ALTレベルの測定のために用いた。
【0042】
Midthun et al., J. Clin. Microbiol. 27:2799-2804(1989)およびHoshino et al., J. Clin. Microbiol. 21:425-430(1985)(これらの記載内容は、参照により本明細書中に含まれる)に記載されているように群特異的抗原としてアカゲザルロタウイルスを用いて、ELISAにより、ロタウイルス特異的IgAおよびIgG抗体に関して、ワクチン接種前およびワクチン接種後血清を検査した。 Midthun et al., J. Clin. Microbiol. 27:2799-2804(1989)に記載されているように、プラーク低減中和(PRN)抗体検定により、対合血清も検査した。PRN検定に用いられたロタウイルスには、Wa(血清型1)、DS−1(血清型2)、P(血清型3)およびST3またはVA70(血清型4)ヒトロタウイルス系統+:DxUK、DS−1xUK、PxUKおよびST3xUK再類別体系統ならびにUK(コンプトン)ウシロタウイルス系統が含まれた。ELISA IgAまたはELISA IgG、あるいはPRN抗体検定により測定したワクチン接種前血清と比較したワクチン接種後血清中の抗体力価の4倍以上の上昇は、有意の応答とみなされた。
【0043】
凍結便試料を解氷し、仔ウシ肉注入ブロス中の10%便懸濁液とした。便懸濁液をサルMA104細胞培養管に摂取して、回転ドラム中で37℃で7日間インキュベートした。細胞培養からの上清を新鮮なサルMA104細胞培養管上に盲検継代させて、37℃で7日間インキュベートした。その後それらを解氷し、ELISAによりロタウイルスに関して検査するときまで、10%便懸濁液および各組の培養からの上清を-20℃で保存した。ワクチン接種後に収集した選定ロタウイルス陽性便検体をポリメラーゼ連鎖反応により血清型化して、流出したロタウイルスの血清型を確定した(Gouvea et al., J. Clin. Microbiol. 28:276-282(1990)およびGouvea et al., J. Clin. Microbiol. 32:1333-1337(1994))(これらの記載内容は各々、参照により本明細書中に含まれる)。
【0044】
卵および寄生虫に関して被験者の下痢便を調べた。それらを、サルモネラ(salmonella)属、赤痢菌(shigella)属、キャンピロバクター(campylobacter)属、アエロモナス(aeromonas)属、エルジニア(yersinia)属、エンテロウイルス(enterovirus)属、アデノウイルス(adenovirus)属およびロタウイルス(rotavirus)属に関して検査した。ロタウイルスおよびその他のウイルス粒子に関して電子顕微鏡によっても、下痢便を調べた。介入性疾患に関連した外因性作因を検出するために、PxUKおよびST3xUK再類別体の試験において7日間観察期間中に発熱および呼吸器症状を有した被験者から鼻腔スワブまたは鼻腔洗浄検体を収集して、これらの検体を呼吸器ウイルスに関して細胞培養で検査した。
【0045】
被ワクチン摂取者とプラセボレシピエントの疾病の比率および年齢群内のおよび各試験におけるこれらの群に関する血清学的応答の比率を、両側フィッシャー精密検定を用いて比較した。
VP7血清型特異的ヒトxUKウシロタウイルス再類別体の各々の1回経口投与後にその便中に検出されたロタウイルスを有した、または血清抗体力価の4倍以上の上昇を発現した成人、小児および乳児のパーセンテージを、表1に示す。成人被ワクチン接種者、未稀釈PxUK再類別体を摂取した生後6ヶ月未満の乳児、またはプラセボレシピエントのいずれかの便からの細胞培養中に、ロタウイルスは回収されなかった。(i)DxUK、DS−1xUKまたはPxUK再類別体の1:10稀釈物を投与された生後6〜60ヶ月の小児、あるいは(ii)DxUKまたはDS−1xUK系統の未稀釈用量を投与された生後6ヶ月以下の乳児の小部分のみがロタウイルスを流出した。ほとんどの場合、ロタウイルスは、1つまたは2つの便試料のみの二次細胞培養継代後に検出された。これに対比して、ST3xUKウイルスは、乳児および幼児の便から、より高頻度に、そしてより長期間回収された(通常は、特にワクチン接種後5〜7日目に3日以上の期間に亘って収集された便)。ワクチン接種後30日目の生後23ヶ月の小児1名の便からST3xUKウイルスを単離し、PCRにより確証した。ST3xUKロタウイルス再類別体レシピエント9名の便から回収されたウイルスの定量は、最大量の流出ウイルスは、10%便懸濁液1 ml当たり4.7 x 102プラーク形成単位(pfu)であった。
【0046】
10名のワクチンレシピエントからの10%便懸濁液(9例中9例)または便の組織培養継代(1例中1例)のPCRによる検査は、10名の被ワクチン接種者全員におけるST3xUKロタウイルス再類別体の流出を確証した。しかしながら、これらの被ワクチン接種者のうち3名は、野生型ロタウイルスも流出した:VP7血清型1一ロタウイルス毛糸(乳児1名)またはVP7血清型3系統(小児1名および乳児1名)。ロタウイルス様疾患を有さなかったこれら3名の小児患者からのデータは、血清学的分析から除外した。
【0047】
ロタウイルスに対する血清学的応答は、成人および年長小児(おそらく以前に野生型ロタウイルスに感染したことがある)においては年少乳児よりしばしば少なく検出された(表1)。血清学的応答は、それぞれDxUK、DS−1xUKまたはST3xUK再類別体を摂取した成人の23%、18%および15%に検出されたが、しかしPxUKを接種された成人においては全く検出されなかった。1:10稀釈物を摂取した生後6〜60ヶ月の小児では、ロタウイルスに対する血清学的応答は、DxUKレシピエントの33%、DS−1xUKレシピエントの40%およびST3xUKレシピエントの57%に検出された。104.3pfu用量のPxUK再類別体は、生後6〜60ヶ月の小児においてはいかなる抗体応答も引き出せなかったが、しかしこの組成物の10倍用量は中等度に免疫原性で、この再類別体を経口的に投与されたこの年齢群の小児11名のうち5名(45%)において、抗体応答が検出された。
【0048】
【表1】

【0049】
ロタウイルスを摂取した生後6ヶ月未満の乳児では、血清学的応答(免疫原性の測定値)は、D(50〜63%)、DS−1(82%)またはP(63〜80%)ヒトロタウイルス系統から得られる1:10用量または未稀釈用量のヒトxウシUK再類別体を摂取した者よりもST3ヒトロタウイルスから得られる未稀釈用量のヒトxウシUK再類別体のレシピエントにおいてより高頻度(93%)に検出された。用量に関するこれらの差は、統計学的に有意でなかった。全体的に、抗体応答は、抗体応答がIgA ELISAにより最も高頻度に検出されたDxUKワクチン群を除いて、すべてのワクチン群において、ELISA IgAまたはIgG検定(群特異的抗原としてアカゲザルロタウイルスを使用)によるよりも、プラーク低減中和(PRN)検定(抗原として同種再類別体ウイルスを使用)による法がより高頻度に検出された。3つの再類別体に関しては、ワクチン接種乳児の免疫感作後血清中の中和抗体は、ヒトロタウイルス親系統より再類別体ロタウイルスに対してより高頻度に向けられたが、これは、ウシロタウイルスのVP4中和抗原が免疫優性であったことを示唆する。これは、105.3pfuのDS−1xUKを摂取した、そしてそれぞれ55%および82%の割合でUKウシロタウイルス親系統(データは示されていない)またはDS−1xUK再類別体に対する中和抗体の有意の増大を発現した11名の乳児の免疫感作後血清に関するPRN検定の結果において特に明白であり、一方、それらはどれも、DS−1ヒトロタウイルス親系統に対する中和抗体の有意の増大を発現しなかった。
【0050】
しかしながら、1(D)型ヒトxウシロタウイルス再類別体の1回投与を受容した小児被ワクチン接種者は、50%の症例でヒトロタウイルス血清型1親に対するVP7特異的中和抗体応答を発現したため、VP7およびVP4応答のこの絶対解離は常態ではなかった。さらに、ヒトロタウイルス3型(10%)および4型(8%)に関して、低頻度にもかかわらず、ホモタイプVP7中和抗体応答も観察された。四価処方物に関して下記の実施例IIにおけると同様に、ヒトxウシロタウイルス再類別体の免疫原性は、再類別体の3つの連続用量が2ヶ月間隔で投与された場合、かなり高くなる、ということに留意すべきである。したがって、この拡大免疫感作計画は、血清型2、3および4の場合には再類別体の1回投与後に観察される応答を有意に卓越する再類別体のヒトロタウイルス親の各々に対するVP7特異的中和抗体応答を誘導した。特に、乳児被ワクチン接種者の32%が血清型2に対して、33%が血清型3に、そして42%が血清型4に応答した。この再類別体の1回投与後に免疫原性がすでに高い血清型1に関しては、改善は認められなかった。
【0051】
ロタウイルスがプラセボレシピエントの便中に流出されるという証拠はなく、この群におけるロタウイルス血清学的応答に関する証拠もないが、但し、生後6ヶ月のプラセボレシピエントはELISA IgG抗体の力価の4倍の上昇を示したが、他の検定においては、その他の血清学的応答は認められなかった。
成人における胃腸疾患の非存在、ならびに各ワクチン群および年齢群における小児被ワクチン接種者とプラセボレシピエントとの間の「ロタウイルス様疾患」の比率における統計学的有意の増大の欠如により立証されているように、ロタウイルス再類別体の各々は、安全で且つ良好に耐容されると考えられた(表2)。3名の成人志願者(PxUKまたはST3xUKワクチンのレシピエント)だけは、「ロタウイルス様疾患」に関する判定基準を満たす何らかの症状(発熱)を有したが、しかしながら、これらの疾病被ワクチン接種者のうち、ロタウイルス感染の証拠を有したものはなかった。ロタウイルスの投与後に発熱を発症した3名の成人はすべて、共在呼吸器疾患を有するか、または鼻咽頭吸わずの組織培養検定により検出された呼吸器ウイルスを流出した。副鼻腔炎、咳および鼻漏を有する1名のPxUKレシピエントは、A型インフルエンザウイルスに関して陽性培養を有した。別のPxUKレシピエントは、呼吸器シンシチウムウイルス(RSV)に関して陽性培養を有し;1名のST3xUKレシピエントは咳、鼻漏および嗄声を有した。これらの志願者における共在呼吸器疾患、呼吸器病因の回収およびロタウイルス感染の証拠の欠如は、これらの発熱が、おそらくは介入性気道感染によるものであったことを示唆する。
【0052】
介入性疾患は、小児被験者における4つのロタウイルスワクチン候補のほとんどの研究中にも起きた。咳に関連した嘔吐、および中耳炎または呼吸器症候群に関連した発熱が一般的であった。介入性疾患の高バックグラウンドにもかかわらず、各ワクチン群内の生後6〜60ヶ月の小児および生後6ヶ月未満の乳児における「ロタウイルス様疾患」(発熱、下痢または嘔吐)の比率は、プラセボレシピエントの場合と統計学的有意に異ならなかった(表2)。全体的に、再類別体ロタウイルスを投与された生後6〜60ヶ月の小児48名中8名、およびプラセボのレシピエント27名中3名は、接種後7日以内に「ロタウイルス様疾患」を経験した。これらのロタウイルス様疾患のうち、2例のみがロタウイルス感染に関連していた。DS−1xUK再類別体の経口投与後に起きた両疾患は、軽症で且つ自己制限性であった。1名の小児は2日目に発熱した(最高38.5℃)。他の小児は2および3日目に3回嘔吐した。
【0053】
【表2】

【0054】
【表3】

【0055】
ST3xUKを摂取した生後6〜60ヶ月の小児2名から、コクサッキーB5またはエコーウイルスおよびサイトメガロウイルスを単離した。さらに、同一試験においてプラセボレシピエント3名から、アデノウイルスまたはパラインフルエンザ3型ウイルスを単離した。
【0056】
生後6ヶ月未満の被験者では、ワクチンレシピエント71名中23名およびプラセボレシピエント36名中8名が、ロタウイルス再類別体の初回用量の経口投与後7日以内に「ロタウイルス様疾患」を経験した。呼吸器症候群または中耳炎を伴わない乳児の発熱(38.2〜38.3℃の範囲)は、呼吸器症候群または中耳炎を伴う場合(38.4〜40℃の範囲)より低かった。嘔吐した乳児の大多数(12名中8名)は、1つまたは2つのエピソードのみを有した。摂食を妨げたり、または脱水を引き起こした嘔吐を有するものはいなかった。乳児(感染被ワクチン接種者、非感染被ワクチン接種者またはプラセボレシピエントとして分類)における「ロタウイルス様疾患」および気道疾患または中耳炎の比率を、表3に示す。感染被ワクチン接種者は、ワクチン接種後にロタウイルス感染の証拠を有するワクチンレシピエントであった。非感染被ワクチン接種者は、ワクチン接種後にロタウイルス感染の証拠が認められなかったワクチンレシピエントであった。感染被ワクチン接種者の間では症状に一貫したパターンは認められず、各ワクチン群に関して感染被ワクチン接種者または非感染被ワクチン接種者またはプラセボレシピエントにおける疾患率の間に有意差は認められなかった。観察された症状は、下記で詳述するような介入性疾患の発現を示唆した。
【0057】
ロタウイルス様疾患を有する生後6ヶ月未満の被ワクチン接種者のうち、14名がワクチン応答者であった。ワクチン応答者のうち3名以外は全員、軽症ロタウイルス様疾患を有し、1つまたは2つの症状を示した:2名が発熱単独、3名は呼吸器疾患または中耳炎を伴う発熱を有した:9名は1回またはそれ以上(最高6回)嘔吐し、そのうち3名は咳の後に嘔吐した。3名のワクチン応答者は、105.8pfuのST3xUKの摂取後に中等度〜重症の「ロタウイルス様疾患」を有したが、しかし彼等は介入性呼吸器ウイルス感染も有した。鼻腔洗浄検体からアデノウイルスおよびサイトメガロウイルスを単離した。さらに、3日間高熱(最高40℃)を発症した小児1名の便から適切なロタウイルス再類別体を回収したが、この小児は鼻漏、咳および中耳炎も5日間有した。この小児を入院させ、敗血症が除外されるまで、経験的にバンコマイシンおよびセファロスポリンで処置した。彼女は無事に回復した。発熱(最高39.3℃)および中耳炎を2日間有した乳児1名の鼻腔検体から、パラインフルエンザウイルスおよびアデノウイルスを培養した。この小児も便中に適切なロタウイルス再類別体を流出した。発熱(最高38.6℃)、下痢(水様便9回)を3日間、喘鳴、咳および鼻漏を3〜4日間有した別の乳児から、A型インフルエンザウイルス(しかしロタウイルスではない)を単離した。
【0058】
【表4】

【0059】
表3に示すように、ロタウイルス感染の証拠を有さなかった生後6ヶ月未満の被ワクチン接種者22名中9名は、「ロタウイルス様疾患」を経験した。105.3pfuのDS−1xUKを摂取後に発熱し、34回の赤痢便を有した乳児1名から、キャンピロバクター属のCampylobacter jejuniを単離した。105.3pfuのDxUKを摂取後に発熱および中耳炎を有した別の乳児1名の下痢便から、アエロモナス属のAeromonas hydrophilaを単離した。DxUK再類別体を摂取した乳児2名から、ならびにプラセボレシピエント1名から、呼吸器シンシチウムウイルスを単離した。彼等は各々、鼻漏を有し、喘鳴を伴うこともあった。
【0060】
ロタウイルス再類別体による感染に起因する肝臓損傷の証拠は認められなかった。接種後4〜6週目にALT上昇を示した小児参与者の割合は、プラセボレシピエントより被ワクチン接種者の方が多くなかった。2名の小児被ワクチン接種者(1名の乳児はST3xUKを1回接種され、もう1名は2回目投与のDxUKを摂取した)は、ALT値の上昇を示した。この値は正常値の2倍未満で、1週間以内に反復すると正常になった。2名のプラセボレシピエントも、接種後4〜6週目に軽度のALT値上昇を示した。ALT値の一過性の軽度の増大は、DxUKまたはST3xUK再類別体の摂取後、成人志願者(そのうちの何名かは、アルコール消費を報告した)で時折検出された。これらの志願者で、ロタウイルス感染の証拠を有したものはいなかった。4名の成人がDxUK投与後1週間目にALT上昇を示した。彼等のALTレベルは、3週間後に反復した場合、清浄化または正常値の2倍未満(2名の志願者)になった。他の2名の成人は、ST3xUK再類別体摂取後1週間目にALTレベルの上昇を示した。彼等のALT値は、ロタウイルス投与後4週間目には正常であった。
【0061】
105.3pfuのDxUK再類別体ロタウイルスを摂取した乳児20名のうち10名(50%)のみが1回投与後にロタウイルス特異的抗体を発現したが、この再類別体を用いの14名の乳児のブースター免疫感作は、4〜12週間後に、14名(86%)の乳児のうちの12名に抗体力価の4倍以上の増大を引き出した。このうち7名の乳児は、初回投与後に抗体応答を増していた。両投与を摂取した14名の乳児の間では、2回目投与の正味作用は、14名の被ワクチン接種者全員に抗体を引き出すこと、そしてロタウイルス再類別体に対する中和抗体のレベルを、初回投与後の1:66の幾何学平均力価から2回目投与後の1:336に押し上げることであった。
DxUKによるブースター免疫感作後、ロタウイルス再類別体レシピエント1名のみがロタウイルスを流出し、これは1日間だけで、その後ウイルスは小児からは回収され得なかった。14名の乳児(そのうち5名は初回投与後に感染していなかった)のうち2名のみが2回目投与後にロタウイルス様疾患を経験した。初回投与後にロタウイルス再類別体に感染していなかった小児1名は、2回目投与後に軽症発熱(最高38.1℃)を鼻漏とともに有した。初回投与後再類別体ウイルスに感染していた別の小児は、2回目投与摂取後に4回嘔吐した。この群における被ワクチン接種者のうちの1名は、ブースター投与後に高ALT値を有したが、これは反復すると正常になった。
【0062】
実施例II
本実施例は、成人、年少小児および乳児におけるその臨床的安全性および免疫原性に関して評価した四価ヒトxウシ再類別体ロタウイルス免疫原性組成物を記載する。
実施例Iで記載した4つのヒトxウシ再類別体ロタウイルスを等容量で併合して、単一四価ワクチン組成物を生成した。試験はすべて、プラセボ対照方式で実施して、併合組成物の安全性および免疫原性を査定した。血清学的および微生物学的試験はすべて、実施例Iと同様に実行した。
【0063】
Johns Hopkins University Center for Immunization Researchで、再類別体当たり105.3〜105.8PFUを含有する非稀釈ヒト(VP7血清型1、2、3および4)−ウシUKロタウイルスワクチンの1回投与を、17名の成人(ワクチンレシピエント11名、プラセボレシピエント6名)で評価した。被験者は、ワクチンまたはプラセボの投与前後少なくとも1時間、絶食した。彼等は120 mlの緩衝溶液(重炭酸ナトリウム)を摂取して、胃の酸性度を中和し、その1分後に、緩衝液と混合した四価免疫原性組成物またはプラセボを摂取した。成人被ワクチン接種者11名のうちの1名は、ワクチン接種後2および3日目に嘔吐の1回エピソードと、3回の下痢便を、そして4〜5日目に咽頭炎および鼻漏を報告した。この志願者はロタウイルス感染の証拠を有さず、彼の便は、培養および電子顕微鏡検査によりロタウイルスに関して陰性で、ロタウイルスに対する血清学的応答は検出されなかった。下痢便の細菌培養も陰性であった。他の10名の被ワクチン接種者および6名のプラセボレシピエントは、ワクチン摂取後、無症候性であった。ワクチンまたはプラセボレシピエントの誰もワクチン摂取後にALT上昇を示さず、彼等の便中にロタウイルスは検出されなかった。ロタウイルス抗体応答は、11名の被ワクチン接種者(5名はELISA IgA検定そして4名はELISA IgG検定による)のうち6名(55%)の血清中に検出された。したがって、四価ワクチンは安全且つ免疫原性であって、生後6〜60ヶ月の小児におけるさらなる評価を可能にすると考えられた。
【0064】
その後の試験中に、生後6〜60ヶ月の乳児および小児20名は、緩衝化処方物を、その後非稀釈四価ヒトVP7血清型1xUK、ヒトVP7血清型2xUK、ヒトVP7血清型3xUKおよびヒトVP7血清型4xUKロタウイルス再類別体ワクチン(12名の小児)およびプラセボ(8名の小児)の1回投与を、個体の年齢に適したルーチン小児期免疫感作の前後少なくとも2週間に摂取した。「ロタウイルス様疾患」は、被ワクチン接種者1名(ウイルス摂取後最初の24時間中に発熱、そして4日目に嘔吐1回)と、プラセボレシピエント1名(2日目に発熱、ならびに2〜7日目に鼻漏および咳)に観察された。別の被ワクチン接種者は7日目に鼻漏を有した。疾病小児でロタウイルス感染の証拠を示したものはなかった。ロタウイルスは、単一日に、2名の無症候性被ワクチン接種者から収集した2つの便検体中に検出されただけであった。ロタウイルスは、電子顕微鏡により、または他の被ワクチン接種者またはプラセボレシピエントの便の培養によっては、検出されなかったが、この中にはワクチンレシピエントの同胞である小児4名が含まれた。四価ロタウイルス再類別体の投与後にALT上昇を示した被ワクチン接種者またはプラセボレシピエントはいなかった。ロタウイルス抗体応答は、被ワクチン接種者12名(4名はELISA IgA検定そして6名はELISA IgG検定による)のうち6名で検出された。被ワクチン接種者12名のうち7名はともにロタウイルス感染の証拠を有した。したがって、候補ワクチンは安全且つ免疫原性で、ワクチンの3回投与を受けた生後6ヶ月未満の乳児の標的集団への進行を可能にする。
【0065】
次に、3回投与の非稀釈四価ヒトxウシロタウイルス再類別体ワクチンまたはプラセボの安全性および免疫原性を、生後約2、4および6ヶ月で同時にそのルーチン小児免疫感作を受けた年少乳児30名で評価した。20名の乳児を無作為化して、候補ロタウイルスワクチンを投与し、10名の乳児にはプラセボを投与した。医学的理由のために、2回目のワクチン接種前に、被ワクチン接種者1名およびプラセボレシピエント1名を、試験から撤退させた。ルーチン小児期免疫感作(全細胞百日咳予防接種を含む)を伴うワクチンまたはプラセボの初回、2回目または3回目投与後、発熱が、被ワクチン接種者20名中1名、19名中6名、19名中6名およびプラセボレシピエント10名中2名、9名中0名、9名中3名でそれぞれ報告された。発熱のエピソードはすべて、多数のルーチン小児免疫感作と同時発生させた四価ロタウイルス処方物の経口投与後最初の48時間以内に起きたが、但し、3つの有熱性エピソードのうち2つは被ワクチン接種者において呼吸器疾患に伴うもので、第三のエピソードはプラセボレシピエントで起きた。下痢は、プラセボレシピエント1名で報告されたが、しかし被ワクチン接種者では誰も報告されなかった。被ワクチン接種者1名は、嘔吐を2回、ならびに呼吸器症候群および結膜炎を、2回目投与後7日目に有した。別の小児は、ワクチン接種後最初の24時間中に咳により引き起こされた嘔吐を1回有した。軽度の発熱(38.2℃)を有する患者1名だけが、便試料中に検出可能なロタウイルスを有したが、これは、発熱がロタウイルス感染に関連したことを示唆する。呼吸器症候群または発疹は、2回目投与後および3回目投与後に被ワクチン接種者19名のうち4名に、そして初回投与後プラセボレシピエント10名のうち1名に、ならびに2回目および3回目投与後のプラセボレシピエント9名のうちの1名に観察された。報告された疾病はすべて、軽症であった。ALTは、それぞれ被ワクチン接種者20名のうち5名、および20名のうちの2名において、そしてプラセボレシピエント10名のうちの1名および10名のうちの2名において、初回ワクチン接種の前および後にわずかに上昇した。ロタウイルスは、初回投与後の被ワクチン接種者20名のうちの2名で、2回目投与後の被ワクチン接種者19名のうち0名で、ならびに3回目投与後の被ワクチン接種者19名のうち2名に関して、細胞培養での検定により、便中に検出された。
【0066】
ロタウイルス流出および/またはウイルス特異的血清抗体応答の証拠に基づいて、被ワクチン接種者19名のうち12名(63%)が1回目投与後に、19名のうち19名(100%)が3回投与を受けた後にロタウイルスに感染した。2〜3名の乳児だけが、初回投与後3、5および7日目に、そして2回目および3回目投与後4日目に収集された彼等の便中に検出されたロタウイルスを有した。特に、20名のうち3名(15%)が、ワクチンの初回投与後に、そして19名のうち1名(11%)が3回目投与後にロタウイルスを流出した。初回投与前後のALTの上昇のために試験から撤退させた2名の乳児(被ワクチン接種者1名、プラセボレシピエント1名)はいずれも、ロタウイルス感染のいかなる証拠も有さなかった。ワクチンの3回投与を受けた被ワクチン接種者19名の間では、抗体応答はワクチンの初回および/または3回目投与後に以下の検定により検出された:ELISA IgA(50%)、ELISA IgG(63%)およびUKウシ系統(100%)、あるいはヒトロタウイルス1型(Wa、32%)、2型(DS−1、32%)、3型(P、32%)または4型(VA70、32%)に対するプラーク低減中和検定(表4)。
【0067】
【表5】

【0068】
試験終了時に、生後8.25〜9.25ヶ月のプラセボレシピエント7名に四価ロタウイルスワクチンを1回投与した。このワクチンは、良好に耐容されると思われた。ロタウイルス様疾患は、3、4および7日目に発熱を、3〜7日目に鼻漏を有した乳児1名においてのみ観察された。呼吸器疾患(発熱および胃腸炎を伴わない)は、他の5名の被ワクチン接種者で観察された。この年長年齢群におけるウシUKロタウイルスベースのワクチンに関する有意の発症の非存在は、一価アカゲザルロタウイルスワクチンが、すべてではないにしてもほとんどが受動的に獲得されたロタウイルスに対する母親抗体が失われる時期である生後6〜8ヶ月の乳児における有熱性応答を引き出す傾向がかなり大きいことが示されたために、かなりの重要性を有する。
【0069】
ウシUKベースの四価組成物に対するこれらの血清学的応答を、105.0pfuの各構成成分で投与されたアカゲザルロタウイルスベースの四価ワクチンを生後2、4および6ヶ月に接種された乳児において誘導された中和抗体応答と比較した場合(Rennels et al., Pediatrics 97:7-13(1996))、いくつかの重要な特徴が認められた。アカゲザルロタウイルスベースのワクチンにより誘導される中和抗体応答としては、ワクチン接種された乳児の90%における、再類別体の親系統の1つであるアカゲザルロタウイルスに対する応答が挙げられる。さらに、中和抗体応答は、小児の14%でヒトロタウイルス血清型1に対して、31%でヒト血清型2に対して、29%でヒト血清型3に対して、そして14%でヒト血清型4に対して誘導された。したがって、ウシUKロタウイルスベースのヒト再類別体免疫原性組成物は、血清型1(P<0.005,フィッシャー精密検定)に対する、そして血清型4( P<0.05,フィッシャー精密検定)に対する、アカゲザルロタウイルス四価組成物よりも有意に高頻度の中和抗体応答を含有した。ヒトロタウイルス血清型2および3系統に、ならびにホモタイプ動物ロタウイルス親系統に対する応答は、有意に異ならなかった。
【0070】
ヒトxアカゲザルロタウイルス再類別体ワクチンと比較した場合の四価ヒトxウシUKロタウイルス再類別体ワクチンの免疫原性の等価性および考え得る優位性は、アカゲザルロタウイルスベースのワクチンにより付与される高レベルの防御効力の状況において検討した場合、有意であると思われる。
【0071】
米国における多施設効力試験において、アカゲザルロタウイルスワクチンは、非常に重症のロタウイルス下痢に対して80%の効力を、そしてロタウイルスにより引き起こされる脱水症状に対しては100%の効力を有することが立証された(Rennels et al. Pediatrics 97:7-13(1996))。このワクチンは、その臨床プロフィールがFDAAdvisory Committeeにより1997年12月に承認された後、1998年8月に食品医薬品局により認可された。このワクチンは、U.S. Advisory Committee for Immunization Practiceにより、1997年6月に生後2、4および6ヶ月目の乳児のルーチン免疫感作のために推奨され、認可係属中であった。それは、1999年5月、欧州共同体の15の国々で認可された。
【0072】
ウシUKロタウイルスベースの多価免疫原性組成物は、ヒトにおいて一過性低レベル発熱を誘導するとは思えない。ウシUKロタウイルスベースの多価組成物は、いくつかの臨床的状況では好ましい。したがって、本発明のウシUKロタウイルスベースの多価免疫原性組成物は、独特の型の特性、例えば(1)認可四価アカゲザルロタウイルスワクチンと同様の感染性および免疫原性、(2)一過性低レベル発熱を誘導する能力の低減、(3)ウシロタウイルスベースのワクチン組成物に関して前記したのと同様の、しかし必要とされる低用量から判断した場合に有意に大きい感染性および免疫原性を伴う弱毒化、そして(4)重症ロタウイルス性疾患において大きい臨床的重要性を有するヒトロタウイルス血清型のすべてに関する抗原性適用範囲を提供する。
【0073】
実施例III
本実施例では、本発明の好ましい四価ヒト−ウシ再類別体ロタウイルス組成物と認可済四価アカゲザル−ヒトロタウイルス再類別体ワクチンROTASHIELDとの比較を可能にする進行中の臨床試験からのデータの予備暫定分析についての要約を提示する。分析は、2つの組成物の低レベル発熱応答とロタウイルス性下痢に対する防御効力の比率を検査する。
【0074】
安全性およびロタウイルス性下痢に対する防御効力に関して、本発明の四価ヒト−ウシロタウイルス組成物と四価アカゲザル−ヒトロタウイルス再類別体ワクチン(ROTASHIELD、米国ならびに欧州共同体の15カ国において用いるために、近年認可された)とを比較するための暫定2年臨床試験が目下進行中である。本試験はフィンランドで実施中であり、172名の四価ヒト−ウシロタウイルス再類別体レシピエント、86名の対応するプラセボ対照、161名のROTASHIELD被ワクチン接種者および79名の対応するプラセボレシピエントを含む。論理学的理由のために、本試験はフィンランドの隣接する2つの小都市TampereとLahtiで実施され、したがって、2つのプラセボ群を用いる必要があった。2つのプラセボ群は、組成物用容器が外見が異なったために、両試験群の個体が同一位置である場合にも必要であった。
【0075】
本試験は、組成物に対する有熱性応答の発生率低減(30%から15%への)を80%パワーで検出し得る各組成物に十分な被験者を補充するために、両都市で同時に実行するよう確立された(プラセボ群間の非有意差を仮定。0.05有意レベルおよび10%脱落での両側検定)。四価ヒト−ウシロタウイルス再類別体組成物およびその対応するプラセボは、Tampereにおいてのみ無作為化され、一方、ROTASHIELDワクチンおよびその対応するプラセボは、LahtiとTampereの両方で無作為化された。
【0076】
各組成物投与に関して、免疫感作後7日間、直腸温度として定義して38℃以上の発熱に関して、被験者をモニタリングした。免疫感作後7日間の嘔吐エピソード、軟便、被刺激性およびその他の全身性事象に関しても、モニタリングを保持した。胃腸炎、重症副作用または入院に関するモニタリングは、2年試験の全期間、保持されるべきことであった。2シーズンの胃腸炎を含むよう試験を計画した。
【0077】
試験チームの非盲検成員を含まずに、各四価再類別体組成物またはプラセボの初回投与後の有熱性応答に関して予備データが得られている。さらに、各群に関するデータだけが、全体として、発熱の発生および防御効力に関して、2つの組成物、即ち四価ヒト−ウシロタウイルス再類別体組成物とROTASHIELDを比較するために分析された。試験群間の比較可能性を、定性二倍体サル胎仔アカゲザルはい(FRhL)細胞中で増殖したロタウイルスを含有するよう両組成物を処方することにより、細胞培養基質に関して保持した。
【0078】
無作為化後、四価ヒト−ウシロタウイルス再類別体組成物(105.3〜105.8pfu/構成成分)、ROTASHIELD(105pfu/構成成分)またはプラセボを健常2ヶ月乳児に、そして2ヶ月後に再び、経口投与した。乳児の親は、1日1回または2回、直腸温度を記録し、症状を毎日記録した。便試料を収集し、便通回数および便の粘稠度の記録を保持した。ロタウイルス再類別体組成物の初回投与後7日間に起きた発熱の累積率を要約する利用可能データおよびロタウイルス性胃腸炎の最初のシーズン中の防御効力を要約する予備データを、表5および表6に提示し、以下に要約する。
【0079】
ROTASHIELDレシピエントの中で、46.2%が、再類別体組成物の初回用量投与後1週間に、低レベル一過性有熱性応答(≧38℃(100.4゜F))を発現した(表5)。この頻度は、その発熱率が11.4%(p<0.0001)であったそのプラセボ群の場合より有意に大きかった。これに対比して、四価ヒト−ウシロタウイルス再類別体組成物レシピエントに関して観察された発熱(≧38℃)率(15.2%)は、そのプラセボ群(11.0%)と有意に異ならなかった。ROTASHIELDワクチンに関する>38.4℃(101.1゜F)という発熱の頻度は、依然として評価可能な程度(20.3%)で、そのプラセボ群(1.3%)より有意に大きかった(P<0.0001)。これに対比して、四価ヒト−ウシロタウイルス再類別体組成物のレシピエントが経験した>38.4という発熱の頻度は1.8%で、これはそのプラセボ群(0%)と有意に異ならなかった。したがって、これら2つの比較において、 ROTASHIELDはそのプラセボ群より有意に高い評価可能な頻度を有する発熱を誘導し、一方、四価ヒト−ウシロタウイルス再類別体組成物に対する有熱性応答はそのプラセボの場合とは異ならず、ROTASHIELDに関して観察されたより有意に低かった。全体的に、ROTASHIELDは、発熱が≧38℃と定義されようと、>38.4℃と定義されようと、四価ヒト−ウシロタウイルス再類別体組成物より有意に多く免疫感作後7日間の発熱に関連した(p<0.0001)。親鸞度試験におけるヒトxウシ再類別体組成物に対する有熱性応答の本質的に全体的な欠如は、試験群におけるバックグラウンド疾患の非存在を反映する。これは、バックグラウンド疾患が非常に高頻度であった実施例IおよびIIと鮮明に対比する。フィンランド試験では、バックグラウンド疾患の相対的非存在が、早期臨床試験において可能であったより高い精度での発熱の発症の、または有熱性応答の評価を可能にした。
【0080】
四価ヒト−ウシロタウイルス再類別体組成物とROTASHIELDとのロタウイルス性下痢に対する比較可能な防御効力に関する予備データも得られた。このデータは、前者組成物の観察された有熱性応答の欠如および前記のウシロタウイルスおよびヒト−ウシ再類別体組成物の場合の10〜100分の1のウイルス用量の使用により、現在の組成物は弱毒化されすぎて天然ロタウイルス疾患に対する防御を誘導し得ないと考えられるため、このデータは特に重要であった。一方、ヒト−aかげざるロタウイルス再類別体ワクチンROTASHIELDは、重症ロタウイルス性疾患に対して80%〜100%の防御効力を示すことが、特徴的に判明した。
防御効力に関する概算は、監視の最初のシーズン中に被験者間で実証されたあらゆる重症度のロタウイルス性胃腸炎の計48のエピソードの分布を分析することにより、本試験から得られる。ロタウイルス性胃腸炎の診断は、胃腸炎を有する被験者の大便中のロタウイルスの同定により確定された。同定は、(1)ロタウイルス群特異的および血清型特異的抗血清を用いた標準免疫学的方法であるELISA法(Joensuu et al., Lancet 350:1205-1209(1997);およびHoshino et al., J. Clin. Microbiol. 21:425-430(1985))、ならびに(2)ロタウイルス群特異的保存配列またはロタウイルス血清型特異的保存配列を認識するプライマーを用いるPCR(Gouvea et al., J. Clin. Microbiol. 28:276-282(1990))により実行した。
【0081】
最初のシーズン中の防御効力の分析は、場所試験チーム、ならびに臨床および試験モニタリングスタッフは個々の被験者の試験群(即ち、四価ヒト−ウシロタウイルス再類別体組成物、ROTASHIELDまたは対応するプラセボ群)への割当に対してブラインドされたままで、彼等は、試験の残りのチームに関してもブラインドされたままであるような方法で実行した。この制限は、第二胃腸炎シーズンの終了時の試験終結まで、継続監視およびデータ収集を可能にするためにこの予備分析に適用した。その結果、疾患の重症度によるワクチン効力の分析は、2年の監視の終結後に実行されるため残されている。それでも、最初のシーズン中の各試験群に関するあらゆる重症度のロタウイルス性胃腸炎の比率を確定し、盲検にすることなく多の試験と比較し得た。
【0082】
最初のシーズン中の2つのプラセボ群に関するあらゆる重症度のロタウイルス胃腸炎エピソードの比率は、顕著に同様で、17.7%と17.4%であって、これは、2つの試験場所の、そしてこれらの場所でのロタウイルス感染の疫学的知見の比較可能性を示す。そのプラセボ群と比較した場合、ROTASHIELDは、あらゆる重症度のロタウイルス性胃腸炎に関して65%の防御効力を示した。四価ヒト−ウシロタウイルス再類別体組成物に関して匹敵する概算は70%で、防御効力は認可済ワクチンと同様であった。このレベルの防御効力は、その効力は疾患の重症度によっては分析できなかったという事実を考慮すると、十二分に満足できるものであった。重症疾患に対するヒト−ウシロタウイルス再類別体組成物の防御効力は、ロタウイルスワクチン効力が疾患の重症度の増大に伴って増大した従来のROTASHIELD臨床試験中に得られた経験を基礎にして70%より有意に高いと考えられる。ROTASHIELDに関しては特徴的に、80%〜100%の防御効力がほとんどの重症疾患に関して観察されたが、一方あらゆる重症度のあらゆる疾患に関して算出した防御効力は、48〜68%に達するに過ぎなかった。
【0083】
【表6】

【0084】
【表7】

【0085】
本発明のワクチンは、免疫原性および防御効力に関して、四価アカゲザルロタウイルス処方物のすべての有益な特性を示す。同様に、本発明の多価免疫原性組成物は、前記のウシロタウイルス処方物により示される有意の有熱性応答の欠如という有益な特性を共有する。しかしながら、それは、一過性低レベル有熱性応答の発現に関する四価アカゲザルロタウイルスワクチンの、そしてそれらの低感染性に関する前記のウシロタウイルス処方物の不利益な特徴を示さない。
【0086】
微生物寄託情報
ヒトロタウイルス系統は、アメリカ培養細胞コレクション、10801 University Boulevard, Manassas, Virginia 20110-2209に、1998年6月4日に、ブダペスト条約の条件下で、以下のように命名されて、寄託された。
再類別体名 ATCC寄託番号
HDxBRV,クローン47-1-1(VP7:1[D]) ATCC VR-2617
HDS1XBRV-1,クローン66-1-1(VP7:2[DS-1])ATCC VR-2616
HPxBRV,クローン22-1-1(VP7:3[P]) ATCC VR-2611
HST3XBRV-2,クローン52-1-1(VP7:4[ST3]) ATCC VR-2612
IAL28XUK,クローン33-1-1(VP7:5[IAL28]) ATCC VR-2613
AU32XUK,クローン27-1-1(VP7:9[AU32]) ATCC VR-2614
KC-1xUK,クローン32-1-1(VP7:10[KC-1]) ATCC VR-2615
【0087】
前記では本発明を、理解を容易にするために説明および実施例により多少詳細に記載したが、しかし添付の特許請求の範囲内ではある種の変更および修正が成され得ることは明らかである。したがって、本発明の範囲は、前記の説明を参照するのではなく、添付の特許請求の範囲をそれらの十分な範囲の等価物とともに参照することにより確定されるべきである。
本出願中に引用した出版物および特許文書はすべて、個々の出版物または特許文書が個別に意味するのと同程度に、すべての目的に関して、その記載内容は参照により本明細書中に含まれる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも4つのヒトxウシ系統再類別体(reassortant)ロタウイルス及び生理学的に許容可能な担体を含む多価免疫原性組成物であって、該各ヒトxウシ再類別体ロタウイルスは、血清型1、2、3又は4の抗原的に異なるヒトVP7血清型を含み、かつ、該各再類別体ロタウイルスの残りの10個の遺伝子は、ウシロタウイルスがUK系統に由来し、そして上記組成物は、該ロタウイルス再類別体の構成成分の各々が106.0プラーク形成単位未満の用量で投与されるとき、一過性低レベル発熱を引き起こすことなく抗原的に異なるヒトロタウイルスVP7血清型の各々に対して免疫原性応答を誘導する前記組成物。
【請求項2】
前記親ヒトロタウイルスが、ヒトロタウイルスVP7血清型1、VP7血清型2、VP7血清型3、VP7血清型4、VP7血清型5、及びVP7血清型9から成る群から選択される、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記ヒトxウシUK系統ロタウイルスのVP7血清型抗原が、再類別体ロタウイルスにより与えられる、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
VP7血清型10のヒトロタウイルスと免疫学的に交差反応性であるウシロタウイルスxウシUKロタウイルス再類別体をさらに含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
前記ウシxウシ再類別体ロタウイルスが、ウシロタウイルスKC−1系統からのVP7血清型10抗原を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
前記ウシxウシUK再類別体ロタウイルスが、寄託番号ATCC VR−2615を持つKC−1xUKクローン32−1−1である、請求項1に記載の組成物。
【請求項7】
VP7血清型1、VP7血清型2、VP7血清型3、VP7血清型4、及びVP7血清型5のヒトxウシUK再類別体ロタウイルスを含む多価組成物である、請求項1に記載の組成物。
【請求項8】
VP7血清型1、VP7血清型2、VP7血清型3、VP7血清型4、及びVP7血清型9のヒトxウシUK再類別体ロタウイルスを含む多価組成物である、請求項1に記載の組成物。
【請求項9】
VP7血清型1、VP7血清型2、VP7血清型3、VP7血清型4、VP7血清型5、及びVP4血清型1AのヒトxウシUK再類別体ロタウイルスを含む多価組成物である、請求項1に記載の組成物。
【請求項10】
VP7血清型1、VP7血清型2、VP7血清型3、VP7血清型4、VP7血清型9、及びVP4血清型1AのヒトxウシUK再類別体ロタウイルスを含む多価組成物である、請求項1に記載の組成物。
【請求項11】
VP7血清型1、VP7血清型2、VP7血清型3、VP7血清型4、VP7血清型5、及びVP7血清型9のヒトxウシUK再類別体ロタウイルスを含む多価組成物である、請求項1に記載の組成物。
【請求項12】
VP7血清型1、VP7血清型2、VP7血清型3、VP7血清型4、VP7血清型5、VP7血清型9、及びVP4血清型1AのヒトxウシUK再類別体ロタウイルスを含む多価組成物である、請求項1に記載の組成物。
【請求項13】
VP7血清型10のウシxウシUK再類別体ロタウイルスをさらに含む、請求項7〜12のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項14】
前記ウシxウシUK再類別体ロタウイルスが、ウシロタウイルスKC−1系統からのVP7血清型10抗原を含む、請求項13に記載の組成物。
【請求項15】
前記再類別体ロタウイルスが、寄託番号ATCC VR−2617を持つHDxBRV−1クローン47−1−1;寄託番号ATCC VR−2616を持つHDS1xBRV−1クローン66−1−1;寄託番号ATCC VR−2611を持つHPxBRVクローン22−1−1;寄託番号ATCC VR−2612を持つHST3xBRV−2クローン52−1−1;寄託番号ATCC VR−2613を持つIALSxUKクローン33−1−1;寄託番号ATCC VR−2614を持つAU32xUKクローン27−1−1;又は寄託番号ATCC VR−2615を持つKC−1xUKクローン32−1−1である、請求項7〜14のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項16】
前記親ヒトロタウイルスが、血清型1を持つD系統、血清型2を持つDS−1系統、血清型3を持つP系統、及び血清型4を持つST3系統である、請求項1に記載の組成物。
【請求項17】
前記ヒトxウシUK再類別体ロタウイルスが、寄託番号ATCC VR−2617を持つHDxBRV−1クローン47−1−1;寄託番号ATCC VR−2616を持つHDS1xBRV−1クローン66−1−1;寄託番号ATCC VR−2611を持つHPxBRVクローン22−1−1;又は寄託番号ATCC VR−2612を持つHST3xBRV−2クローン52−1−1である、請求項16に記載の組成物。
【請求項18】
前記生理学的に許容可能な担体が、クエン酸塩緩衝液である、請求項1〜16のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項19】
前記免疫応答を増強するためのアジュバントをさらに含む、請求項1〜18のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項20】
前記組成物が凍結乾燥形態である、請求項1〜19のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項21】
ヒトxウシUK再類別体の各々が、103〜105プラーク形成単位の用量を提供するよう処方される、請求項1〜20のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項22】
ヒトxウシUK再類別体の各々が、10〜106プラーク形成単位の用量を提供するよう処方される、請求項1〜20のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項23】
ヒトxウシUK再類別体の各々が、10〜106プラーク形成単位の用量を提供するよう処方される、請求項1〜20のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項24】
有意な一過性の低レベル発熱を伴わずにヒトロタウイルスVP7血清型抗原に対する免疫原性応答を生成するよう免疫系を刺激するための方法に使用されるための、請求項15〜23のいずれか1項に記載の多価免疫原性組成物であって、該方法は、前記多価免疫原性組成物を投与することを含み、ここで、各VP7血清型は、106.0プラーク形成単位未満の用量で投与される、前記多価免疫原性組成物。
【請求項25】
前記組成物が、4つのヒトxウシ再類別体ロタウイルスを含む、請求項24に記載の組成物。
【請求項26】
前記ヒトxウシ再類別体ロタウイルスが、ヒトロタウイルスVP7血清型1xウシロタウイルスUK系統、ヒトロタウイルスVP7血清型2xウシロタウイルスUK系統、ヒトロタウイルスVP7血清型3xウシロタウイルスUK系統、及びヒトロタウイルスVP7血清型4xウシロタウイルスUK系統を含む、請求項24に記載の組成物。
【請求項27】
前記組成物が、前記免疫応答を増強するためのアジュバントをさらに含む、請求項24に記載の組成物。
【請求項28】
前記組成物が、103〜105プラーク形成単位の用量で投与される、請求項24に記載の組成物。
【請求項29】
前記組成物が、105〜106プラーク形成単位の用量で投与される、請求項24に記載の組成物。
【請求項30】
ヒトxウシ再類別体ロタウイルスの各々が逐次個体に投与される、請求項24に記載の組成物。

【公開番号】特開2009−209161(P2009−209161A)
【公開日】平成21年9月17日(2009.9.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−148918(P2009−148918)
【出願日】平成21年6月23日(2009.6.23)
【分割の表示】特願2000−562050(P2000−562050)の分割
【原出願日】平成11年7月27日(1999.7.27)
【出願人】(501086013)アメリカ合衆国 (1)
【Fターム(参考)】