説明

多入力多出力通信システム

送信機及び受信機を備える、無線通信システム、並びにそのようなシステムを構成する方法。その送信機は、波長λを有する搬送波で多重化される第1のデータストリームを送信するための第1の手段と、その搬送波で多重化される第2のデータストリームを送信するための第2の手段とを備える。その受信機は、第1及び第2のデータストリームを受信すると共に、第1の出力信号を提供するための第3の手段と、第1及び第2のデータストリームを受信すると共に、第2の出力信号を提供するための第4の手段とを備える。第1、第2、第3及び第4の手段は式(I)を実質的に満たすように配置される。ただし、d1,1は第1の手段と第3の手段との間の間隔であり、d1,2は第2の手段と第3の手段との間の間隔であり、J2,2は第2の手段と第4の手段との間の間隔であり、J2,1は第1の手段と第4の手段との間の間隔である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は多入力多出力(MIMO)通信システムに関し、詳細には、見通し線(line-of-sight)内の構成に関する。本発明はさらに、そのようなシステムを構成する方法に関する。
【0002】
[背景]
SISO(1入力1出力)は、発信源(送信機)において1つのアンテナを使用し、宛先(受信機)において1つのアンテナを使用する無線通信システムを指している。SISOは最も簡単なアンテナ技術である。環境にもよるが、SISOシステムは、マルチパス効果によって引き起こされる問題を免れない。電磁界が丘陵、峡谷、建物及び電線等の障害物に遭遇するとき、波面が散乱し、多数の経路を通って宛先に達する。信号の散乱した部分が遅れて到達することによって、フェージング、遮断(クリフ効果)及び断続的な受信(ピケットフェンシング)のような問題が生じる。デジタル通信システムでは、それにより、データ速度が低下し、誤りの数が増加する恐れがある。
【0003】
マルチパス波伝搬によって引き起こされる問題を最小限に抑えるか、又は解消するために、スマートアンテナ技術が用いられる。SIMO(1入力多出力)、MISO(多入力1出力)及びMIMO(多入力多出力)として知られている、3つの形態のスマートアンテナがある。
【0004】
MIMOは、発信源及び宛先の両方において多数のアンテナが用いられる、無線通信のためのアンテナ技術である。通信回路の各端部にあるアンテナが組み合わされて、誤りを最小限に抑え、且つデータ速度を最適化する。発信源及び宛先において多数の信号(アンテナ毎に1つ)が送信されると共に、2つ以上のアンテナを使用することによって、マルチパス波伝搬によって引き起こされる障害が解消されるだけでなく、この効果を利用することすらできる。
【0005】
MIMO技術は、デジタルテレビ、無線ローカルエリアネットワーク(WLAN)、メトロポリタンエリアネットワーク及び移動通信において応用できる可能性があるので、関心を呼び起こしてきた。
【0006】
無線セルラーネットワークのためのスペクトル要件の予測によれば、遅くとも2010年までにかなり不足するであろうことがわかっている。同時に、WLANが急速に増加する結果として、おそらく、WLANに適用するためのスペクトルも同様に不足するであろう。スペクトルが益々混雑していくことは、新たなチャネルを利用可能にすることが益々困難になり、それゆえ、無線システムのスペクトル効率を高めることができなければ、需要が満たされないことを意味する。
【0007】
Emre Telatarによる「Capacity of Multi-antenna Gaussian Channels」(European Transactions on Telecommunications, Vol. 10, No. 6, pp. 585-595, Nov/Dec 1999)、並びにD. Gesbert、H. Boelcskei、D. A. Gore及びA. J. Paulrajによる「MIMO wireless channels: Capacity and performance prediction」(IEEE Globecom 2000, San Francisco, CA, pp. 1083-1088, Nov. 2000)において、リンクの両端においてマルチ素子アンテナアレイが用いられるMIMO無線チャネルは、原理的には、従来の単一アンテナシステムで利用可能な効率よりも1桁高いスペクトル効率を提供することができることが示されている。基本的に、MIMOチャネルは、多重化を利用することによって、無線帯域幅及び無線範囲を広げるための技法を提供する。MIMOアルゴリズムは、2つ以上のアンテナを介して情報を送信する。それらの信号は物体から反射して多数のパスを生成し、その多数のパスにより、従来の無線通信では、干渉及びフェージングが引き起こされる。MIMO技法では、これらのパスを用いてより多くの情報を搬送し、その情報が、MIMOアルゴリズムによって受信側で再び合成される。
【0008】
その概念は、固有の(しかし適切に符号化された)データが各送信アンテナから送信され、受信アレイの後段において、適切なアルゴリズムを適用して、多数の観測信号を復号化して、元のデータストリームを再生するものと仮定する。この手法は、少なくとも原理的には、ダイバーシティが改善されると共に、容量を(送信素子及び受信素子の数に応じて)線形に増加させることができるという点で、これまでに知られているダイバーシティアンテナとは異なる。しかしながら、環境又は状況によっては、数多くの要因が、これらの能力を制限し、MIMOが適切に機能しないようにすることがある。MIMOシステムが独立一様分布(independent identically distributed)(i.i.d.)のレイリーフェージングモデルに基づいて理論値に近い能力を達成するためには、送信機と受信機との間に比較的多くの異なるパスが必要とされるので、その潜在能力は、そのシステムが配置される環境に強く依存する。
【0009】
MIMO無線通信システムの利点を定量化するために、多数の研究が行われているが、大抵の場合に2GHz帯及び5GHz帯に重点が置かれている。60GHz(短距離屋内通信に適している)において動作するとき、伝搬の観点からの2GHz〜5GHzの周波数帯と60GHz周波数帯との間の大きな違いは、60GHz周波数帯では、自由空間経路損失及び反射に起因する損失がはるかに高いことである。さらに、60GHzにおける酸素吸収の影響が、受信信号電力にさらなる損失をもたらす。これらの特徴によって、60GHzシステムの無線範囲は、受信機において十分に強い信号を提供するためには見通し線内(LOS)伝搬がほぼ不可欠である程度にまで制限される。しかしながら、従来の調査は、LOS信号が、MIMOシステムの容量を劇的に減少させる恐れがあることを示している。これは、システムの空間ダイバーシティを最小にし、MIMOチャネルの実効的なランクを1に低減するLOS信号の決定論的特性によるものと考えることができる。
【0010】
図1は、NTx個の送信アンテナ素子及びNRx個の受信アンテナ素子を有する典型的なMIMOシステムを示す(NTx×NRxMIMO)。MIMOシステムでは、以下のデータが送信アンテナ素子から並列的に送信される。
【0011】
【数1】

【0012】
送信素子pと受信素子qとの間の狭帯域インパルス応答はhq,pによって表される。nが受信素子q上の雑音であるとすると、受信信号yは、以下の式から求めることができる。
【0013】
【数2】

【0014】
行列形式では、以下の式に等価である。
【0015】
【数3】

【0016】
チャネル行列Hをモデル化することによって、システムの容量を最大にする方法を実効的に探求することができる。MIMOチャネルモデル化に関して、かなりの数の一連の論文があるが、大部分のモデルは数多くの仮定を行っており、それは、具体的な状況下でのMIMOシステムの性能に関する洞察を制限することがある。
【0017】
非LOS環境では、2つのアンテナ素子間の応答は、レイリーランダム変数(r.v.)によってモデル化することができる。それゆえ、チャネル行列を構成するための1つの簡単な方法は、全ての応答が独立一様分布(i.i.d.)のレイリーr.v.であると仮定することである。この方法の背景にある仮定は、信号間に相関がないこと、及びそれゆえ、これを理想的なシステム(すなわち、達成可能な最大容量を提供するシステム)に相当するものと見なすことができることである。i.i.d.レイリー容量に近い容量は、多数(NTx及びNRx以上)の散乱体があり、且つ両方のアレイにおいて十分に大きな素子間間隔がある非LOS環境において観測されている。
【0018】
送信アレイ及び受信アレイがLOS内にある環境では、信号はライス(Rician)r.v.によって確率的にモデル化することができる。刊行物の大部分は、MIMOシステムの容量が、LOS信号の電力が増加するのに応じて減少することを報告している。この予測は、大部分のチャネルモデルが、アンテナアレイが電気的に小さく、それゆえ全ての受信素子におけるLOS信号の位相が等しい、すなわち統計的に従属していると仮定するという事実によるものと考えることができる。結果として、それらの受信素子によるダイバーシティはなく、システムの容量は、多入力1出力(MISO)システムの容量まで低下する。
【0019】
ランク低下の問題は、結果として全ての素子間のLOS信号が互いに直交し、それにより最大限可能な容量を提供する位置に送信及び受信アンテナ素子を的確に配置することによって克服することができる。図2は、信号対雑音比(SNR)を20dBと仮定して、LOS信号の電力をマルチパスの電力で割った比(すなわち、ライスKファクタ)の関数としてランク1システム及びフルランクシステムの容量を示す。容量に関する後続の結果も同様に、20dBのSNRを仮定することに留意されたい。フルランクLOSシステムが、非常に高い(i.i.d.レイリーよりもはかるに高い)容量を達成できることが明らかである。図2は、マルチパスの存在によって、フルランクLOSシステムの容量が制限されることがあるが、結果として生成される容量は常にi.i.d.よりも高くなることを示す。
【0020】
条件によっては、LOS MIMOシステムでも依然として高い容量が可能である。固定された送信アレイ及び受信アレイを有するシステムの場合に、最大のMIMO容量を達成することができる数多くのMIMO構成が、「On the capacity formula for multiple input multiple output wireless channels: a geometric interpretation」(IEEE Trans. Comm., vol. 47, pp. 173-176, Feb. 1999)において、P. F. Driessen及びG. J. Foschiniによって特定されている。J-S Jiang及びM. A. Ingramは、「Distributed Source Model (DSM) for Short-Range MIMO」(IEEE Vehicular Tech. Conf., Orlando, FL, Oct. 2003)において、LOSにおけるシステムの容量を推定するのに適したモデルを提示した。LOS MIMOシステムでも高い容量が可能であるが、これらのシステムの性能を達成するには、アンテナ素子を厳密に位置決めすることに細心の注意を要することが、この2つの研究において確認されている。結果として、そのようなシステムは、大部分の現実的な応用形態には適していないことがわかるであろう。
【0021】
当該技術分野において、上記の諸問題を解決するか、又は少なくとも緩和する、改善されたMIMOシステムが必要とされている。
【0022】
[発明の概要]
本発明の第1の態様によれば、送信機と受信機とを備える無線通信システムが提供される。送信機は、波長λを有する搬送波で多重化される第1のデータストリームを送信する第1の手段と、この搬送波で多重化される第2のデータストリームを送信する第2の手段とを備える。受信機は、第1のデータストリーム及び第2のデータストリームを受信すると共に、第1の出力信号を提供する第3の手段と、第1のデータストリーム及び第2のデータストリームを受信すると共に、第2の出力信号を提供する第4の手段とを備える。第1の手段、第2の手段、第3の手段及び第4の手段は、以下の式を実質的に満たすように配置され、
【0023】
【数4】

【0024】
ただし、d1,1は、第1の手段と第3の手段との間の間隔であり、
1,2は、第2の手段と第3の手段との間の間隔であり、
2,2は、第2の手段と第4の手段との間の間隔であり、
2,1は、第1の手段と第4の手段との間の間隔である。
【0025】
第1の実施の形態においては、第1の手段及び第2の手段は距離sだけ離隔して配置され、第3の手段及び第4の手段は距離sだけ離隔して配置され、第1の手段及び第2の手段は、第3の手段及び第4の手段に対して平行に、且つ距離dだけ離隔して配置される。この実施形態では、s、s及びdは、式
【0026】
【数5】

【0027】
を実質的に満たすような値を有してもよい。
N×N MIMOの場合、以下のようになることに留意されたい。
【0028】
【数6】

【0029】
=s=sの場合は、2×2MIMOについて、以下のようになる。
【0030】
【数7】

【0031】
この場合、sは好ましくは7.9cmであり、dは好ましくは2.5mであり、第1のデータストリーム及び第2のデータストリームの周波数は好ましくは60GHzである。
【0032】
第2の態様によれば、送信機と受信機とを備える無線通信システムが提供される。送信機は、波長λを有する搬送波で多重化される第1のデータストリームを送信する第1の手段と、この搬送波で多重化される第2のデータストリームを送信する第2の手段と、この搬送波で多重化される第3のデータストリームを送信する第3の手段とを備える。受信機は、第1のデータストリーム、第2のデータストリーム及び第3のデータストリームを受信すると共に、第1の出力信号を提供する第4の手段と、第1のデータストリーム、第2のデータストリーム及び第3のデータストリームを受信すると共に、第2の出力信号を提供する第5の手段と、第1のデータストリーム、第2のデータストリーム及び第3のデータストリームを受信すると共に、第3の出力信号を提供する第6の手段とを備える。第1の手段、第2の手段、第3の手段、第4の手段、第5の手段及び第6の手段は以下の式を実質的に満たすように配置され、
【0033】
【数8】

【0034】
ただし、d1,1は第1の手段と第4の手段との間の間隔であり、
1,2は第2の手段と第4の手段との間の間隔であり、
2,2は第2の手段と第5の手段との間の間隔であり、
2,1は第1の手段と第5の手段との間の間隔であり、
1,3は第3の手段と第4の手段との間の間隔であり、
2,3は第3の手段と第5の手段との間の間隔であり、
3,3は第3の手段と第6の手段との間の間隔であり、
3,1は第1の手段と第6の手段との間の間隔であり、
3,2は第2の手段と第6の手段との間の間隔である。
【0035】
好ましくは、第2の態様による送信機の第1の手段、第2の手段及び第3の手段は、第1の平面において三角形を構成するように配置され、受信機の第4の手段、第5の手段及び第6の手段は、第2の平面において三角形を構成するように配置される。好ましくは、第1の平面及び第2の平面は平行であり、その場合、第1の手段と第2の手段との間の間隔、第2の手段と第3の手段との間の間隔、第1の手段と第3の手段との間の間隔、第4の手段と第5の手段との間の間隔、第5の手段と第6の手段との間の間隔、及び第4の手段と第6の手段との間の間隔は、好ましくは7.9cmであり、第1の平面と第2の平面との間の距離は好ましくは2.5mであり、第1のデータストリーム及び第2のデータストリームの周波数は60GHzである。
【0036】
さらなる実施の形態によれば、第2の態様によるシステムは、送信機が、上記の搬送波で多重化される第4のデータストリームを送信する第7の手段をさらに備え、第4の手段、第5の手段及び第6の手段が、第4のデータストリームを受信するように構成され、受信機が、第1のデータストリーム、第2のデータストリーム、第3のデータストリーム及び第4のデータストリームを受信すると共に、第4の出力信号を提供する第8の手段をさらに備えるように適合される。この実施の形態の第1の手段、第2の手段、第3の手段及び第7の手段は好ましくは、第1の四面体を形成するように配置され、第4の手段、第5の手段、第6の手段及び第8の手段は好ましくは、第2の四面体を形成するように配置される。より好ましくは、第1の手段と第2の手段との間の間隔、第1の手段と第3の手段との間の間隔、第2の手段と第3の手段との間の間隔、第7の手段と第1の手段との間の間隔、第7の手段と第3の手段との間の間隔、及び第7の手段と第2の手段との間の間隔は10cmであり、第4の手段と第5の手段との間の間隔、第4の手段と第6の手段との間の間隔、第5の手段と第6の手段との間の間隔、第4の手段と第8の手段との間の間隔、第5の手段と第8の手段との間の間隔、及び第6の手段と第8の手段との間の間隔は5cmであり、第1の四面体および第2の四面体は、頂点が向かい合うようにして、底面が2.5mだけ離隔して配置され、第1のデータストリーム及び第2のデータストリームの周波数は60GHzである。
【0037】
受信機が3つ以上の受信素子を備える場合、その受信機は、信号の全数のサブセットを合成することができるように、出力信号のうちの2つ以上の信号を選択的に合成する手段を備えることが好ましい。
【0038】
第3の態様によれば、通信システムを構成する方法が提供される。通信システムは、送信機であって、波長λを有する搬送波で多重化される第1のデータストリームを送信する第1の手段と、この搬送波で多重化される第2のデータストリームを送信する第2の手段とを有する送信機と、受信機であって、第1のデータストリーム及び第2のデータストリームを受信すると共に、第1の出力信号を提供する第3の手段と、第1のデータストリーム及び第2のデータストリームを受信すると共に、第2の出力信号を提供する第4の手段とを有する受信機とを備えている。方法は、以下の式を実質的に満たすように第1の手段、第2の手段、第3の手段及び第4の手段を配置することを含み、
【0039】
【数9】

【0040】
ただし、d1,1は、第1の手段と第3の手段との間の間隔であり、
1,2は、第2の手段と第3の手段との間の間隔であり、
2,2は、第2の手段と第4の手段との間の間隔であり、
2,1は、第1の手段と第4の手段との間の間隔である。
【0041】
第4の態様によれば、多入力多出力通信システムのための受信機であって、第1のデータストリーム及び第2のデータストリームを受信するための第1の手段と、第1のデータストリーム及び第2のデータストリームを受信するための第2の手段とを備え、第1のデータストリーム及び第2のデータストリームは波長λを有する搬送波で多重化されている、受信機が提供される。第1の手段及び第2の手段は、以下の式を満たすように配置され、
【0042】
【数10】

【0043】
ただし、d1,1は、第1のデータストリームの発信源と第1の手段との間の間隔であり、
1,2は、第2のデータストリームの発信源と第1の手段との間の間隔であり、
2,2は、第2のデータストリームの発信源と第2の手段との間の間隔であり、
2,1は、第1のデータストリームの発信源と第2の手段との間の間隔である。
【0044】
第5の態様によれば、多入力多出力通信システムのための送信機であって、波長λを有する搬送波で多重化される第1のデータストリームを第1の受信手段及び第2の受信手段に送信する第1の手段と、この搬送波で多重化される第2のデータストリームを第1の受信手段及び第2の受信手段に送信する第2の手段とを備える、送信機が提供される。第1の送信手段及び第2の送信手段は、以下の式を実質的に満たすように配置され、
【0045】
【数11】

【0046】
ただし、d1,1は、第1の送信手段と第1の受信手段との間の間隔であり、
1,2は、第2の送信手段と第1の受信手段との間の間隔であり、
2,2は、第2の送信手段と第2の受信手段との間の間隔であり、
2,1は、第2の送信手段と第2の受信手段との間の間隔である。
【0047】
第6の態様によれば、受信機であって、複数の受信素子であって、各アンテナ素子が複数のデータストリームを受信するように作動し、各アンテナ素子が1つの出力信号を提供するように動作する、複数の受信素子と、出力信号に基づいて素子のサブセットを選択する手段とを備える、受信機が提供される。以下の式が実質的に満たされるように、選択されたサブセットを変更する制御手段が提供される。
【0048】
【数12】

【0049】
ただし、d1,1は、サブセットの第1の素子と複数のデータストリームのうちの第1のデータストリームを送信する第1の手段との間の間隔であり、
1,2は、サブセットの第2の素子と第1の送信手段との間の間隔であり、
2,2は、第2の素子と複数のデータストリームのうちの第2のデータストリームを送信する第2の手段との間の間隔であり、
2,1は、第1の素子と第2の送信手段との間の間隔である。
【0050】
第7の態様によれば、第4若しくは第6の態様の受信機及び/又は第5の態様の送信機を備える、MIMOシステムが提供される。
【0051】
本発明の特徴、目的及び利点は、図面と共に取り上げられるときに、以下に述べられる詳細な説明からさらに明らかになるであろう。なお、図面全体を通じて、類似の参照符号は、対応する構成要素を特定する。
【0052】
[詳細な説明]
本発明は特に、5.2GHz帯及び60GHz帯における通信を対象とする。しかしながら、本発明の範囲はこれらの帯域に限定されるべきではなく、本発明の実施形態を他の周波数帯にも適用することができることは、当業者であれば承知しているであろう。
【0053】
以下の説明では、純粋なLOSチャネルにおけるMIMOシステムの性能(容量及び誤り率に関する)をアンテナ素子の位置に関連付ける、多数の閉じた形の式が導出される。これらの式から、LOS MIMOシステムの性能を最大にするための判定基準が導出され、それにより、最大の性能をもたらす無数の構成が定義される。これらの判定基準を用いて、MIMO構成を設計し、アンテナアレイの厳密な向き及び位置にほとんど影響を受けない性能を提供することができる。さらに、本発明の実施形態を使用することによって、チャネル内で散乱がないときに(自由空間MIMOチャネル)、理論上最大の(i.i.d.レイリー容量よりも高い)MIMO容量を達成することができる。マルチパス信号が存在する場合でも、そのシステムは、非常に良好な容量を提供し続ける。
【0054】
MIMOシステムの容量を調べるために、チャネルモデルを確立する必要がある。今日用いられているチャネルモデルの大部分は、2つのカテゴリ、すなわち物理モデル及び非物理モデルに分類される。これらの2つのカテゴリのモデルは、LOS環境内のMIMO容量が非常に小さいことを予め予測している。この予測は、アレイにおいて素子間の間隔が小さく、送信機と受信機との(T−R)距離が長い場合には正しい。これらの条件下では、送信アレイは、点発信源と見なすことができる。結果として、全ての素子において受信信号の位相は、線形従属である(図3aを参照)。それゆえ、これらの受信信号は相関が高く、容量性能は、多入力1出力(MISO)システムと同様である。しかしながら、アレイのうちの1つの間隔が大きくなる(又は、T−R距離が減少する)場合には、点発信源の仮定はもはや有効ではなく(図3bを参照)、従来技術のモデルではシステムの容量を正確に予測できなくなる。既存のモデルのこの制約を克服するために、分散発信源モデル(DSM)を用いることができる。
【0055】
図4は、送信機に素子p、pがあり、受信機に素子q、qがある2×2MIMOシステムを示す。このシステムのための狭帯域チャネル応答行列は以下の通りである。
【0056】
【数13】

【0057】
図5は、送信間隔がλ/2に等しく一定であり、T−R距離が5mで一定である場合に、受信機素子間間隔の関数としての容量を調べるために実行されたシミュレーションの結果を示す。図5は、LOSシステム内の容量が電気的に大きなアンテナを用いることにより高められることを示す。さらに、最大点において達成される容量は、単に従来のシステムよりも改善されるだけでなく、全てのアンテナ素子間の信号が完全に直交し、フェージングを受けない最適なMIMOシステムを表す。最適な点における容量(13.3bps/Hz)は、i.i.d.レイリー容量(11.4bps/Hz)よりも高く、従来のモデルから予測される容量(7.6bps/Hz)の概ね2倍である。しかしながら、これは、一端における素子間間隔がT−R距離と同じ桁(order)(500λ=2.5m)になることを犠牲にして成り立つ。
【0058】
大部分の応用形態の場合に、システムが最大容量を達成するために必要とされる一方のアレイの素子間間隔は実用的でない。より現実的な構造で同じ容量を達成するための1つの可能な方法は、通信リンクの両端において電気的に大きなアレイを用いることである。図6は、両方のアレイにおける間隔の関数として容量を計算した第2のシミュレーションの結果を示す。図6から、最大容量がわずか22λ(すなわち、11cm)の間隔で達成することができることが明らかである。これは、高い周波数において(言い換えると、短い波長において)、最大容量を達成できる現実的なシステムを構築できることを示す。
【0059】
図5及び図6に示される容量は、散乱が存在しない環境に対応する。これは、種々の量の散乱が存在する現実的な状況を表さない。これらのタイプの環境の場合の容量をシミュレートするために、DSM及び他のモデルの組み合わせを用いることができる。ライスKファクタ(すなわち、LOS信号の電力をマルチパス信号の電力で割った比)の関数として生成される容量が図2に示される。図2では、LOS信号が容量に及ぼす影響が、2つのシステムについて示される。すなわち、小さな間隔及びランダムな向きを有するアンテナアレイを用いるシステムと、特定の間隔及び向きを有するアンテナ素子を備えるシステムである。
【0060】
図2から、Kファクタが高い場合には、特定の間隔及び向きを有するアンテナ素子を備えるシステムが、小さな間隔及びランダムな向きを有するアンテナアレイを用いるシステムよりも性能が優れていることと、Kファクタが非常に低い場合には、いずれのシステムもi.i.d.レイリー容量に漸近的に到達することが明らかである。
【0061】
DSMを用いて、アンテナにおける素子間間隔の関数として2×2MIMOシステムの容量を上記のように解析することは有用であるが、チャネル応答は実際には決定論的であり、閉じた形の式を導出して、システムの容量を4つのアンテナ素子の位置に関連付けることができる。
【0062】
再び、図4の自由空間における2×2MIMOシステムを参照し、さらに図9も合わせて参照すると、全ての素子間の距離がわかっている場合には、そのシステムの容量は以下の式から計算することができる。
【0063】
【数14】

【0064】
ただし、Iは2×2恒等行列に対応し、ρはチャネルの信号対雑音比(SNR)に対応し、はエルミート共役を示す。
【0065】
N×N MIMOの場合に一般化すると、以下の式になることに留意されたい。
【0066】
【数15】

【0067】
ただし、IはN×N恒等行列である。
【0068】
LOS伝搬だけが生じる(すなわち、マルチパスが生じない)ものと仮定すると、各送信素子及び受信素子対間の正規化された応答は以下の通りである。
【0069】
【数16】

【0070】
その際、容量は以下の通りである。
【0071】
【数17】

【0072】
φ及びθの相対的な位相は、容量に影響を及ぼさないことに留意されたい。したがって、以下の式が成り立つ。
【0073】
【数18】

【0074】
そして、最後に、その式は以下のようになる。
【0075】
【数19】

【0076】
この閉じた形の式は、4つのアンテナ素子の位置をシステムの容量に直に関連付けており、それゆえ、最大容量を得るための以下の判定基準を定義する。
【0077】
【数20】

【0078】
ただし、dq,pは、受信素子qと送信素子pとの間の距離に対応し、rは正の整数を表す。
【0079】
N×N MIMOシステムのための正規化されたチャネル行列は以下の通りである。
【0080】
【数21】

【0081】
また、
【0082】
【数22】

【0083】
最後に、以下の式が成り立つ。
【0084】
【数23】

【0085】
その対角線上の素子は全てNに等しい。対角線以外の素子は、チャネル係数の従属性を示しており、それゆえ、これらの素子が0に等しいとき、最大容量が生じる。各e−jkd指数関数は、位相k*dを有する単位長ベクトルであり、それゆえ、最大容量を達成するために、対角線以外の各素子におけるこれらのベクトルは相殺する必要がある。
【0086】
これらの素子のための範囲は、ベクトル長がN未満(たとえば、N/2)であれば好ましく、ベクトル長がNよりもはるかに短ければ(たとえば、N/4以下)、さらに好ましいであろう。
【0087】
一例として、2×2システムの場合、最大容量を達成するために、以下の式が成り立つ必要がある。
【0088】
【数24】

【0089】
ただし、r=0,1,2,…である。また、3×3システムの場合、最大容量を達成するために、以下の式が成り立つ必要がある。
【0090】
【数25】

【0091】
距離に関しては、これらの式は以下のように書くことができる。
【0092】
【数26】

【0093】
同じ原理が、全てのN×Nアレイの場合に当てはまるが、同時に満たされる必要がある判定基準の数は、HHの対角線以外の素子の数を2で割った値に等しい(HHの下三角部分行列は、上三角部分行列の共役である)。たとえば、4×4の場合には6個の式を必要とし、5×5の場合には10個の式を必要とする、等である。
【0094】
或る特定の仮定を行うものとすると、式(5)は、2×2MIMOシステムの場合に簡略化することができる。たとえば、2つのアレイが平行であり、且つ同じ間隔sを有する場合には(図7を参照)、d1,1=d2,2及びd1,2=d2,1であるので、容量の第1の最大値が、以下の条件のときに生じるように計算することができる。
【0095】
【数27】

【0096】
(d2,1=(d1,1+sを代入すると(ピタゴラスの定理から)、以下の式が得られる。
【0097】
【数28】

【0098】
しかしながら、λ/16は、λd1,1/2に比べて小さい。それゆえ、以下の式が成り立つ。
【0099】
【数29】

【0100】
この関係は、所与の搬送波周波数及びT−R距離について最大容量を達成するために必要とされる最小間隔を与える。図8は、対象とする3つの周波数の場合に、必要とされる最小間隔をT−R距離の関数として示す。
【0101】
送信機及び受信機において間隔が異なるアレイの場合には、sの代わりに、sを用いることができることに留意されたい。さらに、各端部において一様に直線的なアレイを有するN×N MIMOシステムの場合、この式をさらに一般化して、以下のように表すことができる。
【0102】
【数30】

【0103】
それらのアレイが互いに平行ではないとき(図9の場合と同様)、LOS信号の伝搬から与えられるダイバーシティを利用するために、さらに広い間隔が必要とされる。その際、最大容量を達成するために必要とされる間隔を求めるための式は、以下のようになる。
【0104】
【数31】

【0105】
この式は、以下のように書き直すことができる。
【0106】
【数32】

【0107】
ただし、s及びsは、送信アレイの素子間の間隔および受信アレイの素子間の間隔であり、これらは異なる。
【0108】
これらの式は、比較的広いエリアにわたって、最大限に近い能力を提供することができるMIMOシステムを設計するのに有用である。たとえば、アクセスポイント(AP)が屋内オフィスの天井に設置され、多数の移動端末(MT)がAPの下5mのところにあり、APの周囲の半径5mのエリア内で高い容量が必要とされる状況を考える。最大アレイサイズが20cmに制限される必要があるものと仮定すると、その最大容量判定基準は、角度に関して、以下のように書き表すことができる。
【0109】
【数33】

【0110】
λ=5mm、d=5m及びs=20cmの場合、角度θ及びφ−θは、最大容量を達成するために34度未満である必要がある。この判定基準を満たすことができる構造は、両端において三角形のアレイを有する適応的な3×3MIMOシステムである。なぜなら、そのシステムでは、一対の送信素子と一対の受信素子との間で、角度θ及びφ−θが常に34度以下であるためである。
【0111】
実際には、ある程度の散乱が常に存在する。現実的なLOS状況における性能を評価するために、散乱が容量に及ぼす影響を調べる必要がある。LOS状況におけるMIMOシステムのチャネル行列は、以下のようにモデル化することができる。
【0112】
【数34】

【0113】
ただし、HLOSは、自由空間チャネル行列に対応し、HNLOSはi.i.d.レイリーチャネル行列であり、KはライスKファクタ(すなわち、LOS信号と散乱信号との電力比)である。
【0114】
図10は、本発明の第1の実施形態による2×2MIMOシステム10を示す。第1の実施形態では、送信アレイ12、14及び受信アレイ16、18はそれぞれ、一定の間隔sを有する。2つのアレイ間の距離がdであり(図9も参照)、及びアレイが互いに横向きに存在する場合には、式(5)を用いて、距離dと間隔sとの間の簡単な関係を見つけることができる。
【0115】
【数35】

【0116】
これは次のように近似できる。
【0117】
【数36】

【0118】
60GHzの動作周波数、並びに距離2.5mだけ離隔して配置される送信アレイ及び受信アレイの構成の場合に、最大容量を達成するために必要とされる間隔は、60GHzの搬送波周波数の場合に7.9cmである。
【0119】
再び、さらに一般化すると、式(7)は以下のように表すことができる。
【0120】
【数37】

【0121】
図11は、第1の実施形態の場合のx−y平面上での受信アレイの位置の関数としての容量の変化のグラフを示す。最適な点(0,0)の近くで非常に高い容量を達成することができるが、その点の上下に、容量が低いいくつかの場所が存在する。しかしながら、このシステムの大きな欠点は、2つのアレイの向きに影響を受けやすいことである。この影響を調べるために、第1の実施形態と同じ基本構成であるが、受信アレイが送信アレイに対して90度の角度を成す、図12に示されるような2×2MIMOシステムの構成を考える。
【0122】
2つのアレイのうちの一方の位置が変化するとき、式(4)に従って容量が変化する。x−y平面上の受信アレイの位置の関数としての図12のシステムの容量が、図13のグラフに示される(再び、s=7.9cm、d=2.5m及び搬送波周波数は60GHzである)。このシステムによって提供される容量は、図10の実施形態の容量に比べて非常に低く、これは、ポイント・ツー・マルチポイント又はポイント・ツー・ポイントの応用形態の場合に適した非固定アレイを有するシステムの場合に、異なる手法がとられる必要があることを意味する。現実的な解決策は、送信アレイ及び受信アレイが3つ以上の素子を用いるシステムになるであろう。そのようなシステムは、対象となるエリアにわたる平均容量の改善を提供し、システムがアンテナの向きの影響を受けやすくなるのを避けるであろう。
【0123】
図14は、送信アレイが受信アレイの上方にある3×3MIMOシステムの一実施形態を示す(素子間間隔は再び7.9cmであり、2つのアレイは2.5mだけ離隔して配置され、搬送波周波数は60GHzである)。x−y平面上の受信アレイの位置の関数としてのこの実施形態の容量が図15に示される。図14の実施形態の容量は、図12の実施形態の場合の容量よりも明らかに高い。これは、両側にあるアンテナ素子の数が多いことによる。3×3MIMOシステムのこの実施形態の最も重要な利点は、そのシステムが2つのアレイの向きにほとんど影響を受けないことである。しかしながら、これは、システムが複雑になることを犠牲にする。さらに、そのようなシステムは、y−z平面上でのアレイの回転に影響を受けやすい。
【0124】
図16は、MIMOシステムのさらに別の実施形態を示す。この実施形態では、2つの4素子アレイが用いられ、それぞれ四面体を形成するように配列される。アンテナ素子間の間隔は、送信機において10cm、受信機において5cmである。搬送波周波数は60GHzである。この構成は、4×4MIMOシステムとして用いることができるが(結果として、複雑になる)、2×2システムとしても用いることができ、その場合には、容量を最大にする2つの素子が、それらのアレイから選択される。信号を合成する等の他の処理方法を用いて、システムの性能を最大にすることができる。これらの方法は、(4×4システムに比べて)複雑性を緩和するが、同時に、非常に高い容量を提供し、2つのアレイの向きに対して影響を受けにくくする。
【0125】
容量を最大にする2つの素子を選択する、図16の実施形態によるシステムの容量が図17に示される。エリア上で達成される平均容量は、最大容量よりも9%だけ低い。さらに、最適な点(0,0)を中心とした5mの半径において達成される容量は、i.i.d.レイリー容量よりも高い。これは、最大限に近い容量が達成され、x−y又はz−yの方向のいずれかにおけるアレイの向きに対してほとんど影響を受けないので、この構成が、送信アレイ及び受信アレイが固定されていないシステムの場合に適していることを意味する。
【0126】
上記の理論的な予測を確かめるために、2セットの測定、すなわち無響室内での測定及び屋内オフィス環境での測定が実施された。先に導出された式は、任意の搬送波周波数の場合に成り立つので、5.2GHz帯において測定を実施し、システムが複雑になるのを最小限に抑えることにした。
【0127】
用いられる測定プラットフォームは、MEDAV RUSK BRIベクトルチャネルサウンダを基にした。これは、5.2GHzを中心にして120MHzの最大帯域幅を有する周期的なマルチトーン信号を用いる。送信アンテナ及び受信アンテナは、38cmだけ離隔される4つの偏波共用(dual-polarized)パッチ素子から構成される一様な直線アレイ(ULA)であった。チャネルのフル「ベクトルスナップショット」を12.8μsで記録するために、高速マルチプレクシングシステムが、これらの素子を繰り返し切り替えた。送信機において同一の一様な直線アレイを制御するために、切り替え回路及び同期回路を追加で用いて、MIMOチャネルサウンディングが実行された。
【0128】
次々に切り替わる送信素子毎に、受信機において、チャネルのベクトルスナップショットが記録された。このようにして、8つの連続したベクトルスナップショットが、偏波共用の4つの送信素子及び受信素子の、64個の組み合わせ全ての複素チャネル応答を含む。それゆえ、そのチャネルのそれぞれの完全な「MIMOスナップショット」が、102.4μsで記録され、それは、屋内チャネルのコヒーレンス時間内で十分であることを示すことができる。アンテナの位置について言うと、5mのT−R距離について、且つ、垂直位置と水平位置との間の7つの角度について(すなわち、仰角0度、15度、30度、45度、60度、75度及び90度について)、各測定が実行された。
【0129】
無響室内の測定の目的は、自由空間チャネルにおける容量の理論的な予測を検証することである。これまでの研究は、アンテナ間隔を小さくすることに伴って生じる高い相関量に起因して、自由空間内のMIMOの可能性を見落としてきた。本発明の利点は、LOS MIMOチャネルが常にランク1であるとは限らないことを示すだけでなく、実際に、LOS信号の存在から実質的な利益を得ることを示すことによって、証明することができる。
【0130】
先に述べられたように、用いられた2つのアレイは、38cmの間隔を有する同一の4素子ULAであった。5.2GHzにおいて、且つ5mのT−R距離において最大の2×2MIMO容量を提供するために、式(5)を用いて、この間隔が求められた。アレイを回転させることによって、且つ各アレイにおいて4つのアンテナ素子を用いることによって、4×4MIMOシステムの異なる4つのサブセット毎に、最適及び準最適の両方の位置におけるシステムの性能を解析することができる。入手されたチャネル応答が処理され、全チャネル行列が、2×2、3×3及び4×4の行列に分解された。その後、これらの行列が、単位利得を維持するように正規化された。結果として生成された容量が、図18、図19及び図20において示される。
【0131】
本発明によって容量が高められることはこの無響測定から明らかであるが、本発明の実施形態の有用性は、現実的な環境内のシステムの性能によってのみ決定することができる。それゆえ、同じアンテナを用いて、オフィス環境において第2の測定のセットが実行された。この測定の場合、送信アレイは地面から1.6mの高さの水平位置に配置され、受信アレイは上記の角度で回転する三脚に取り付けられた。
【0132】
得られたチャネル応答は、同じく、全チャネル行列を2×2、3×3及び4×4の行列に分解し、単位利得を維持するように正規化することによって処理された。それらの結果を再び、図18、図19及び図20に示すことができる。
【0133】
無響測定は、達成された容量が、その容量及びDSMについて閉じた形の式から予測される容量に非常によく類似することを示す。2×2、3×3及び4×4の場合に、最大容量の99.7%、99.5%及び97%の大きさの容量を達成することができた。一方、達成された最小容量は、上記の場合に、そのモデルから予測された容量よりも17.6%、39.1%及び79.1%だけ高かった。これは、アレイの向きがランダムであるものと仮定するときに、LOS電磁波が強め合うように加算される確率が、完全に相殺する確率よりもはるかに高いという事実によるものと考えることができる。それは、アレイが電気的に大きいときに、ランク1容量を達成する確率が非常に低いことを示唆するので、実用的なシステムでは、これはさらに有利に働く。
【0134】
屋内測定の場合の大部分の角度において達成される容量は、強いLOS成分が存在することに起因して、無響測定に類似の傾向に従う。しかしながら、マルチパスの存在が、図2の予測に一致するi.i.d.レイリー容量の周囲の容量の分散を制限した。これは、その環境内に存在する反射によって引き起こされる屋内チャネルの確率的な性質に起因する。詳細には、2×2、3×3及び4×4の場合にそれぞれ、最大容量の96.5%、92.6%及び89.3%の容量が達成された。しかしながら、達成された最小容量は、そのモデルから予測される容量よりも37.9%、75.1%及び136.4%だけ高かった。これは、前の段落において説明された理由と、マルチパスがチャネルランクに及ぼす影響との組み合わせに起因した。
【0135】
2セットの測定からの結果は、本発明が、従来のMIMOシステムに対して容量に関して固有の利点を有することを明らかに示す。無響測定の結果は、アンテナ素子が最適に配置され、環境における散乱の量が少ないときに、非常に大きな容量を達成することができることを証明する。一方、屋内測定の結果は、その環境内に存在する散乱量の関数としての最適な場所の容量と準最適な場所の容量との間のトレードオフを示す。それゆえ、いずれの場合も、本発明の実施形態によるMIMOシステムが、全てではないが、大部分の環境において著しく容量を高めることができることを示した。しかしながら、システムの厳密な性能は、配置方法にも大きく依存することになり、その設計は、種々のパラメータを考慮に入れるべきである。すなわち、その環境内の散乱量と共に、アレイの位置、向き及び移動性を考慮する必要がある。最後に、準最適な場所において容量が下がることを避けるために、応用形態によっては、各時に送信素子及び受信素子の全数のうちのサブセットが用いられることになる適応的なMIMO構造を用いることが必要であると判明することもある。
【0136】
その容量性能に基づいてシステムを比較することは、システムの現実的な容量の上限を提供するだけであり、実際の送信技法を用いて達成可能な性能を必ずしも反映しない。リンクレベルにおいて本発明の実施形態の性能を調べるために、変調方法及び検出方法が用いられる必要がある。2進位相シフトキーイング(BPSK)による変調方法及び2つの検出方法(ゼロフォーシング(ZF)及び最尤(ML))の場合のBER性能が以下に示される。
【0137】
最初にZF法を考えると、対象となるシステムが狭帯域で、非周波数選択性であり、他の発信源からの干渉がない場合には、そのシステムに対する入力−出力関係は、式(1)と同様に書くことができる。ただし、2×2MIMOシステムの場合、受信信号ベクトルは、以下の通りである。
【0138】
【数38】

【0139】
また送信信号ベクトルは以下の通りである。
【0140】
【数39】

【0141】
また雑音ベクトルは以下の通りである。
【0142】
【数40】

【0143】
最後に、チャネル応答行列は以下の通りである。
【0144】
【数41】

【0145】
そのようなシステムでは、送信信号を検出するための最も簡単な方法のうちの1つは(チャネルは受信機において完全にわかっているものと仮定する)、受信ベクトルをチャネル逆行列(H−1)と乗算することである。その結果は、以下のような、送信信号に、雑音とH−1との積を加えたものである。
【0146】
【数42】

【0147】
それは、以下の式に等価である。
【0148】
【数43】

【0149】
上記の式は、各受信機ブランチにおいて受信される信号毎に、以下のように展開することができる。
【0150】
【数44】

【0151】
その雑音が付加白色ガウス雑音(AWGN)(すなわち、n1、n2〜N(0,σ))であり、|hn,m|=1(純粋なLOSシステムと同様)であると仮定すると、このMIMOシステムは、雑音電力が以下の式に等しい、2つの並列SISOシステムに等価である。
【0152】
【数45】

【0153】
それゆえ、この雑音電力を、SISOシステム内の雑音と比較することによって、
【0154】
【数46】

【0155】
であるときに、上記のシステムはSISOシステムよりも性能が優れていることが明らかである。ZF法の誤りの確率をチャネル行列に関連付ける閉じた形の式(BPSKによる変調を仮定する)は、以下の通りである。
【0156】
【数47】

【0157】
その性能はチャネル行列の行列式に直に関連付けられるので、ZF検出を用いて最小のBERを達成するための判定基準は、最大容量判定基準と同じであることが明らかである。さらに、これらのシステムのための設計方法は、最大容量を達成するシステムのための設計方法と同じである。
【0158】
上記の節において提供される受信方法は、現在用いられている最も簡単なMIMO受信機のうちの1つである。しかしながら、複雑性を低減することは、雑音を増幅することを犠牲にして達成される。この問題に陥らない代替的な受信機の1つはML受信機であり、それは実際に最適なMIMO受信機である。以下の導出過程は、準最適な場所における素子の位置の関数としてビット誤り率を推定する際の手段としての役割を果たす。同様に、時間的に符号化されない送信シンボルを仮定すると、ML受信機は、以下の式を解くベクトルsを選択する。
【0159】
【数48】

【0160】
ただし、最適化は、全ての候補ベクトルシンボルsにわたって包括的に探索することを通じて果たされる。
【0161】
確率的なチャネル行列Hの場合、ML受信機におけるBERを求めるための解析的な式は存在しない。しかしながら、本発明の実施形態によれば、チャネル行列は決定論的であり、BPSKによる変調を用いる2×2MIMO構造の最も簡単な事例を仮定すると、チャネル行列の要素の関数として、BERを求めるための解析的な式を見つけることができる。
【0162】
完全なチャネルがわかっているものと仮定すると、式(8)は以下の式に展開することができる。
【0163】
【数49】

【0164】
その式は、4つの可能な結果を提供する。
【0165】
=x且つs=xの場合、
【0166】
【数50】

【0167】
=−x且つs=xの場合、
【0168】
【数51】

【0169】
=x且つs=−xの場合、
【0170】
【数52】

【0171】
=−x且つs=−xの場合、
【0172】
【数53】

【0173】
検出ステージにおいて、最も低い計量を提供するビット対が、送信対として受け入れられる。それゆえ、誤りが生じるためには、m、m、mの計量のうちの少なくとも1つがmよりも小さくなる必要があり、その際、誤りの確率は以下の式によって表すことができる。
【0174】
【数54】

【0175】
ただし、以下の式が成り立つ。
【0176】
【数55】

【0177】
これらの確率を計算するために、ランダム変数(r.v.)m、m、m、mの結合分布を調べる必要がある。簡単にするために、以下のように、4つの計量を展開して、実数部及び虚数部に分けることができる(その導出過程全体を通じて、複素数n、hp,q、sに対して以下の表記が用いられることに留意されたい)。
【0178】
【数56】

【0179】
ただし、
【0180】
【数57】

【0181】
である。
【0182】
【数58】

【0183】
上記のr.v.はχ分布に従い、それゆえ、その結合分布を調べることは非常に難しい。この問題を避けるために、且つ本発明の導出過程を簡単にするために、等価なr.v.φa,b≡m−mを定義し、その後、次のような等価な確率を計算することができる。
【0184】
【数59】

【0185】
この確率P(m=min(m))のための等価なr.v.は、以下のようになることがわかる。
【0186】
【数60】

【0187】
上記の式は全て正規分布である(それらが、正規r.v.の一次関数であるため)。その際、以下の式が定義される場合、
【0188】
【数61】

【0189】
上記のr.v.の平均及び分散は以下の通りである。
【0190】
【数62】

【0191】
φ2,1はHには依存せず、φ2,3及びφ2,4からも独立していることが明らかである。それゆえ、P(m=min(m))は以下のように書き表すことができる。
【0192】
【数63】

【0193】
ただし、以下の式が成り立つ。
【0194】
【数64】

【0195】
また、P((σ2,3<0)∩(φ2,4<0))は、2変量正規分布の確率であり、以下の式から求めることができる。
【0196】
【数65】

【0197】
ただし、以下の式が成り立つ。
【0198】
【数66】

【0199】
その際、ρは相関係数であり、cov(φ2,3,φ2,4)は2つの正規分布の共分散であり、以下の式に等しいことがわかる。
【0200】
【数67】

【0201】
この確率P(m=min(m))のための等価なr.v.は、以下のようになることがわかる。
【0202】
【数68】

【0203】
再び、これらの式は正規分布に従い、以下の平均及び分散を有する。
【0204】
【数69】

【0205】
しかしながら、上記の式は、φ2,1、φ2,3及びφ2,4の式と同じであるので、以下の式が成り立つ。
【0206】
【数70】

【0207】
この確率P(m=min(m))のための等価なr.v.は、以下のようなることがわかる。
【0208】
【数71】

【0209】
それは正規分布に従い、以下の平均及び分散を有する。
【0210】
【数72】

【0211】
φ4,3はφ4,2と同じ分布を有するので、P(m=min(m))は以下のように書き表すことができる。
【0212】
【数73】

【0213】
2変量分布の確率は以下の式から求めることができる。
【0214】
【数74】

【0215】
ただし、以下の式が成り立つ。
【0216】
【数75】

【0217】
再び、ρは相関係数であり、cov(φ4,1,φ4,2)は2つの正規分布の共分散であり、以下の式に等しくなることがわかる。
【0218】
【数76】

【0219】
先に述べられたように、ML計量を最小にするx及びxの値が、検出された信号として受け入れられる。m=mであるので、このシステムでは、h1,1=±h1,2及びh2,1=±h2,2であるときに、最大BERが生じることが明らかである。最小BERを達成するために、以下の判定基準が満たされる必要がある。
【0220】
【数77】

【0221】
及び
【0222】
【数78】

【0223】
それらの判定基準は(純粋なLOSシステムの場合に)以下に等価である。
【0224】
【数79】

【0225】
これらの判定基準は、最大容量判定基準よりも自由度が高いことは明らかであり、それゆえ、最小BERが、最大容量のエリアよりも大きなエリアにおいて達成することができることを示す。さらに、それは、情報理論の性能及びリンクレベルの性能が異なることがあることを示す。この判定基準からの別の重要な結果は、容量の場合とは異なり、送信位相間の位相差がBERを変更する可能性があることである。これは、そのようなシステムでは、全ての素子の送信位相が注意深く較正されることが不可欠であることを意味する。しかしながら、システムに有利に働くように、すなわち、特定の送信位相を選択して、空間内の所与の点において低いBERを達成することによって、この特徴を利用できることもある。
【0226】
LOS内のMIMOシステムの容量が調べられた。これらの条件下では、チャネルは、LOS電磁波の位相が受信素子に線形従属することに起因して、通常はランク不足(rank deficient)である。この問題を克服するために、特別に設計されたアンテナアレイを用いることができ、そのアンテナアレイでは、アンテナ素子が、チャネルランクを最大にするように配置される。自由空間内の最大MIMO容量を、アレイの距離、向き及び間隔の関数として達成するために、本発明の実施形態は、そのようなシステムを設計するのに役に立つ。
【0227】
当業者は、実施することができる種々の変更形態及び等価形態に気が付いているであろう。これまでの説明は、例示と見なされ、添付の特許請求の範囲に従って定義されるべきである本発明の範囲を限定するものとは見なされない。詳細には、本発明の実施形態は、説明された間隔及び波長には限定されないばかりか、結果を生成する際に用いられる具体的な20dBのSNRにも限定されない。
【図面の簡単な説明】
【0228】
【図1】典型的なMIMOシステムの構成を示す図である。
【図2】LOSチャネルの容量の変化を示す図である。
【図3a】点発信源構成を示す図である。
【図3b】分散発信源構成を示す図である。
【図4】2×2MIMOシステムを示す図である。
【図5】搬送波周波数が5.2GHzである場合の受信アレイにおける間隔の関数としての容量のグラフである。
【図6】搬送波周波数が5.2GHzである場合の両方のアレイにおける間隔の関数としての容量のグラフである。
【図7】長方形2×2MIMOシステムを示す図である。
【図8】T−R距離の関数としての最大容量を達成するために必要とされる間隔のグラフである。
【図9】送信アレイ及び受信アレイがランダムな角度を成す場合の2×2MIMOシステムを示す図である。
【図10】本発明の第1の実施形態による2×2MIMOシステムを示す図である。
【図11】x−y平面上での受信アレイの位置の関数としての第1の実施形態によるシステムの容量の変化のグラフである。
【図12】送信アレイ及び受信アレイが垂直である場合の2×2MIMOシステムを示す図である。
【図13】x−y平面上での受信アレイの位置の関数としての図12によるシステムの容量の変化のグラフである。
【図14】本発明の第2の実施形態による3×3MIMOシステムを示す図である。
【図15】x−y平面上での受信アレイの位置の関数としての第2の実施形態によるシステムの容量の変化のグラフである。
【図16】本発明の第4の実施形態によるMIMOシステムを示す図である。
【図17】x−y平面上での受信アレイの位置の関数としての第3の実施形態によるシステムの容量の変化のグラフである。
【図18】搬送波周波数が5.2GHzである場合の2×2サブチャネルのための角度の関数としての容量の変化のグラフである。
【図19】搬送波周波数が5.2GHzである場合の3×3サブチャネルのための角度の関数としての容量の変化のグラフである。
【図20】搬送波周波数が5.2GHzである場合の4×4サブチャネルのための角度の関数としての容量の変化のグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
無線通信システムであって、
送信機であって、
波長λを有する搬送波で多重化される第1のデータストリームを送信する第1の手段と、
前記搬送波で多重化される第2のデータストリームを送信する第2の手段と
を備える、送信機と、
受信機であって、
前記第1のデータストリーム及び前記第2のデータストリームを受信すると共に、第1の出力信号を提供する第3の手段と、
前記第1のデータストリーム及び前記第2のデータストリームを受信すると共に、第2の出力信号を提供する第4の手段と
を備える、受信機と
を備え、
前記第1の手段、前記第2の手段、前記第3の手段及び前記第4の手段は、以下の式を実質的に満たすように配置され、
【数1】

ただし、d1,1は、前記第1の手段と前記第3の手段との間の間隔であり、
1,2は、前記第2の手段と前記第3の手段との間の間隔であり、
2,2は、前記第2の手段と前記第4の手段との間の間隔であり、
2,1は、前記第1の手段と前記第4の手段との間の間隔である、無線通信システム。
【請求項2】
N個の送信手段及びN個の受信手段を備え、Nは2以上であり、
前記第1の手段及び前記第2の手段は距離sだけ離隔して配置され、
前記第3の手段及び前記第4の手段は距離sだけ離隔して配置され、
前記第1の手段及び前記第2の手段は、前記第3の手段及び前記第4の手段に対して平行に、且つ距離dだけ離隔して配置され、
、s及びdは、式
【数2】

を実質的に満たすような値を有する、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
=s=sであり、
N=2であり、
s及びdは、式
【数3】

を実質的に満たすような値を有する、請求項2に記載のシステム。
【請求項4】
s=7.9cmであり、d=2.5mであり、前記第1のデータストリーム及び前記第2のデータストリームの周波数は60GHzである、請求項3に記載のシステム。
【請求項5】
無線通信システムであって、
送信機であって、
波長λを有する搬送波で多重化される第1のデータストリームを送信する第1の手段と、
前記搬送波で多重化される第2のデータストリームを送信する第2の手段と、
前記搬送波で多重化される第3のデータストリームを送信する第3の手段と
を備える、送信機と、
受信機であって、
前記第1のデータストリーム、前記第2のデータストリーム及び前記第3のデータストリームを受信すると共に、第1の出力信号を提供する第4の手段と、
前記第1のデータストリーム、前記第2のデータストリーム及び前記第3のデータストリームを受信すると共に、第2の出力信号を提供する第5の手段と、
前記第1のデータストリーム、前記第2のデータストリーム及び前記第3のデータストリームを受信すると共に、第3の出力信号を提供する第6の手段と
を備える、受信機と
を備え、
前記第1の手段、前記第2の手段、前記第3の手段、前記第4の手段、前記第5の手段及び前記第6の手段は以下の式を実質的に満たすように配置され、
【数4】

ただし、d1,1は前記第1の手段と前記第4の手段との間の間隔であり、
1,2は前記第2の手段と前記第4の手段との間の間隔であり、
2,2は前記第2の手段と前記第5の手段との間の間隔であり、
2,1は前記第1の手段と前記第5の手段との間の間隔であり、
1,3は前記第3の手段と前記第4の手段との間の間隔であり、
2,3は前記第3の手段と前記第5の手段との間の間隔であり、
3,3は前記第3の手段と前記第6の手段との間の間隔であり、
3,1は前記第1の手段と前記第6の手段との間の間隔であり、
3,2は前記第2の手段と前記第6の手段との間の間隔である、無線通信システム。
【請求項6】
前記送信機の前記第1の手段、前記第2の手段及び前記第3の手段は、第1の平面において三角形を構成するように配置され、
前記受信機の前記第3の手段、前記第4の手段及び前記第6の手段は、第2の平面において三角形を構成するように配置され、
前記第1の平面及び前記第2の平面は平行である、請求項5に記載のシステム。
【請求項7】
前記第1の手段と前記第2の手段との間の間隔、前記第2の手段と前記第3の手段との間の間隔、前記第1の手段と前記第3の手段との間の間隔、前記第4の手段と前記第5の手段との間の間隔、前記第5の手段と前記第6の手段との間の間隔、及び前記第4の手段と前記第6の手段との間の間隔は、7.9cmであり、
前記第1の平面と前記第2の平面との間の距離は2.5mであり、
前記第1のデータストリーム及び前記第2のデータストリームの周波数は60GHzである、請求項6に記載のシステム。
【請求項8】
前記送信機は、前記搬送波で多重化される第4のデータストリームを送信する第7の手段をさらに備え、
前記第4の手段、前記第5の手段及び前記第6の手段は、前記第4のデータストリームを受信するようにさらに構成され、
前記受信機は、前記第1のデータストリーム、前記第2のデータストリーム、前記第3のデータストリーム及び前記第4のデータストリームを受信すると共に、第4の出力信号を提供する第8の手段をさらに備える、請求項5に記載のシステム。
【請求項9】
前記第1の手段、前記第2の手段、前記第3の手段及び前記第7の手段は、第1の四面体を形成するように配置され、
前記第4の手段、前記第5の手段、前記第6の手段及び前記第8の手段は、第2の四面体を形成するように配置される、請求項8に記載のシステム。
【請求項10】
前記第1の手段と前記第2の手段との間の間隔、前記第1の手段と前記第3の手段との間の間隔、前記第2の手段と前記第3の手段との間の間隔、前記第7の手段と前記第1の手段との間の間隔、前記第7の手段と前記第3の手段との間の間隔、及び前記第7の手段と前記第2の手段との間の間隔は10cmであり、
前記第4の手段と前記第5の手段との間の間隔、前記第4の手段と前記第6の手段との間の間隔、前記第5の手段と前記第6の手段との間の間隔、前記第4の手段と前記第8の手段との間の間隔、前記第5の手段と前記第8の手段との間の間隔、及び前記第6の手段と前記第8の手段との間の間隔は5cmであり、
前記第1の四面体および第2の四面体は、頂点が向かい合うようにして、底面が2.5mだけ離隔して配置され、
前記第1のデータストリーム及び前記第2のデータストリームの周波数は60GHzである、請求項9に記載のシステム。
【請求項11】
前記受信機は、前記出力信号のうちの2つ以上を選択的に合成する手段をさらに備える、請求項5〜10のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項12】
通信システムを構成する方法であって、
前記通信システムは、
送信機であって、
波長λを有する搬送波で多重化される第1のデータストリームを送信する第1の手段と、
前記搬送波で多重化される第2のデータストリームを送信する第2の手段と
を有する送信機と、
受信機であって、
前記第1のデータストリーム及び前記第2のデータストリームを受信すると共に、第1の出力信号を提供する第3の手段と、
前記第1のデータストリーム及び前記第2のデータストリームを受信すると共に、第2の出力信号を提供する第4の手段と
を有する受信機と
を備え、
前記方法は、以下の式を満たすように前記第1の手段、前記第2の手段、前記第3の手段及び前記第4の手段を配置することを含み、
【数5】

ただし、d1,1は、前記第1の手段と前記第3の手段との間の間隔であり、
1,2は、前記第2の手段と前記第3の手段との間の間隔であり、
2,2は、前記第2の手段と前記第4の手段との間の間隔であり、
2,1は、前記第1の手段と前記第4の手段との間の間隔である、通信システムを構成する方法。
【請求項13】
多入力多出力通信システムのための受信機であって、
波長λを有する搬送波で多重化される第1のデータストリーム及び第2のデータストリームを受信する第1の手段と、
前記搬送波で多重化される前記第1のデータストリーム及び前記第2のデータストリームを受信する第2の手段と
を備え、
前記第1の手段及び前記第2の手段は、以下の式を満たすように配置され、
【数6】

ただし、d1,1は、前記第1のデータストリームの発信源と前記第1の手段との間の間隔であり、
1,2は、前記第2のデータストリームの発信源と前記第1の手段との間の間隔であり、
2,2は、前記第2のデータストリームの発信源と前記第2の手段との間の間隔であり、
2,1は、前記第2のデータストリームの発信源と前記第2の手段との間の間隔である、受信機。
【請求項14】
多入力多出力通信システムのための送信機であって、
波長λを有する搬送波で多重化される第1のデータストリームを第1の受信手段及び第2の受信手段に送信する第1の手段と、
前記搬送波で多重化される第2のデータストリームを前記第1の受信手段及び前記第2の受信手段に送信する第2の手段と
を備え、
前記第1の送信手段及び前記第2の送信手段は、以下の式を満たすように配置され、
【数7】

ただし、d1,1は、前記第1の送信手段と前記第1の受信手段との間の間隔であり、
1,2は、前記第2の送信手段と前記第1の受信手段との間の間隔であり、
2,2は、前記第2の送信手段と前記第2の受信手段との間の間隔であり、
2,1は、前記第2の送信手段と前記第2の受信手段との間の間隔である、送信機。
【請求項15】
受信機であって、
複数の受信素子であって、各アンテナ素子が複数のデータストリームを受信するように動作すると共に、前記各アンテナ素子が1つの出力信号を提供するように動作する、複数の受信素子と、
前記出力信号に基づいて前記素子のサブセットを選択する手段と、
以下の式が実質的に満たされるように、前記選択されたサブセットを変更する制御手段と
を備え、
【数8】

ただし、d1,1は、前記サブセットの第1の素子と前記複数のデータストリームのうちの第1のデータストリームを送信する第1の手段との間の間隔であり、
1,2は、前記サブセットの第2の素子と前記第1の送信手段との間の間隔であり、
2,2は、前記第2の素子と前記複数のデータストリームのうちの第2のデータストリームを送信する第2の手段との間の間隔であり、
2,1は、前記第1の素子と前記第2の送信手段との間の間隔である、受信機。
【請求項16】
請求項13若しくは15に記載の受信機、及び/又は、
請求項14に記載の送信機
を備える、MIMOシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3a】
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【図3b】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【公表番号】特表2008−541639(P2008−541639A)
【公表日】平成20年11月20日(2008.11.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−511774(P2008−511774)
【出願日】平成18年5月11日(2006.5.11)
【国際出願番号】PCT/GB2006/001729
【国際公開番号】WO2006/123106
【国際公開日】平成18年11月23日(2006.11.23)
【出願人】(501253316)ミツビシ・エレクトリック・インフォメイション・テクノロジー・センター・ヨーロッパ・ビーヴィ (77)
【氏名又は名称原語表記】MITSUBISHI ELECRIC INFORMATION TECHNOLOGY CENTRE EUROPE B.V.
【住所又は居所原語表記】20 Frederick Sanger Road, The Surrey Research Park, Guildford, Surrey GU2 5YD, Great Britain
【Fターム(参考)】