説明

多利用型蒸気発生装置

【課題】 周辺を汚すことなく使用でき、水の補給頻度を最小限に抑え、しかも火災の虞れなく安全に使用可能とする。
【解決手段】 下部材2の上部開口を上部材3にて密閉し、中間仕切部15を介して当初は塩水を入れ、次回からは水だけを入れる水室2Aと、水蒸気を貯める蒸気室3Aとに分割した筐体1を形成する。下部材2内の塩水を電気分解するための電極部11を筐体1内に設け、この電気分解によって形成した水蒸気を外部に吐出する蒸気吐出部31を上部材3に形成する。上部材3に形成した水供給口7を密栓する栓体21を、水供給口7を密栓する摘子部22と、周面に複数の縦長スリット部26を形成して成るケーシング部27とから構成する。下部材2の上部開口側に上部材3が被着された際に、当該下部材2に形成した一対の前側仕切板4A,4Bの間に中間仕切部15の下面に形成した前側の中央仕切板5Aが離隔した状態で対向配置することで上下方向に蛇行した水蒸気流路を形成する。

【考案の詳細な説明】
【0001】
【考案の属する技術分野】
この考案は、例えばスチームアイロン用蒸気発生器、加湿器、調理用蒸し器、美容用蒸気発生器、掃除用蒸気発生器等の各種用途に利用される多利用型蒸気発生装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、例えばスチームアイロン用蒸気発生器としては、アイロン器具自体に気化室を設け、この中に発熱源として例えば発熱用ヒーター等を利用した蒸気発生装置を内蔵設置したものがある。これは、アイロン器具の上部給水口から気化室内に水を入れて閉蓋し、コンセントプラグを介して発熱用ヒーターに通電して発熱させ、当該発熱用ヒーターに接触する水を蒸発させるのである。そして、船底型のアイロン器具底面の例えば中央または先端には、気化室に連通する複数の吐出孔を設けてあり、そこから気化室内部の水蒸気圧により衣類に向けて勢い良く水蒸気を吐出させるのである。
【0003】
【考案が解決しようとする課題】
しかしながらこのような従来のスチームアイロン用蒸気発生器では、アイロン器具底面の先端部の吐出孔から水蒸気を吐出させているため、外気に触れて気化熱を奪われた水蒸気は瞬時に水滴化され、これがアイロン器具底面からぽたぽたと滴り落ちるため、周辺を汚してしまうことがある。しかもアイロン器具内部の水の消耗が早くなり、アイロン器具内部への水の供給を頻繁に行なわなければならないのである。また、アイロン器具内部の水が殆どなくなっても発熱用ヒーター自体は常時通電されているため、アイロン器具の気化室内部は空炊き状態となって火災を発生させる等の危険性がある問題点を有していた。さらに従来では、スチームアイロン用蒸気発生器として使用するのみであるので、このスチームアイロン用蒸気発生器自体をこれ以外に、例えば加湿器、調理用蒸し器、美容用蒸気発生器、掃除用蒸気発生器等の各種用途にも利用可能なものとする多利用型蒸気発生装置は存在しなかった。
【0004】
そこでこの考案は叙上のような従来存した諸事情に鑑み案出されたもので、スチームアイロン用蒸気発生器において、上部より水蒸気を吐出させ、下方に水滴が落下されないようにすることで周辺を汚すことなく使用でき、消耗する水の補給頻度を最小限に抑えるこができ、しかも発熱源自体は水がなくなれば通電されないものとすることができるため、火災の虞れなく安全に使用することができると共に、スチームアイロン用蒸気発生器以外に、例えば加湿器、調理用蒸し器、美容用蒸気発生器、掃除用蒸気発生器等の各種用途にも利用可能とした多利用型蒸気発生装置を提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
上述した課題を解決するため、この考案にあっては、栓体位置決め孔13および蒸気孔14を有する中間仕切部15を介して下部の水室2A、上部の蒸気室3Aに分割形成され、水室2A内に塩水の如き電気分解水を電気分解させる電極部11を設け、蒸気室3A上部に蒸気吐出部31を有する筐体1と、栓体位置決め孔13に対応して筐体1上部に形成された水供給口7に密栓させる栓体21とから構成したものである。
筐体1は、最初は塩水を入れておき、次回からは水のみを入れるようにした水室2Aを備えた下部材2と、下部材2の上部開口を密閉させて一体化され、水室2A内の塩水を電気分解させる電極部11を設け、この電気分解によって形成された水蒸気を外部に吐出するよう、蒸気吐出部31を有する蒸気室3Aを設けて成る上部材3とから構成することができる。
下部材2の内底部に前後一対の前側仕切板4A,4Bを突出形成し、中間仕切部15の下面には栓体位置決め孔13を挟むようにして前後一対の中央仕切板5A,5Bを突出形成し、下部材2の上部開口側に上部材3が被着された際に、当該下部材2の一対の前側仕切板4A,4Bの間に前側の中央仕切板5Aが離隔した状態で対向配置されることで上下方向に蛇行した水蒸気流路を形成すべく成したものとできる。
筐体1の先端位置に吐出開口を斜下方へ向けた蒸気案内口39が形成され、L型ノズル体36とL型案内筒38とを介して蒸気吐出部31と蒸気案内口39とを連結したものとできる。
電極部11は、上部材3の内面側に、正極・負極の電極材をそれぞれ垂下並置させて成るものとできる。
栓体21は、上部材3の水供給口を密栓させる摘子部22と、この摘子部22の下側に栓径よりも小径となって形成されたネジ突部24を捻じ込ませる雌ネジ部25を形成し、周面に複数の縦長スリット部26を形成し、内部に吸着剤を充填して成るケーシング部27とから構成することができる。
蒸気吐出部31は、周側面に横長スリット部33を形成し、且つ底部には小孔34を形成して成る凹部32と、凹部32の上方開口側を塞ぎ、頂上にL型ノズル体36を差し込み可能とする差込用筒部37が連通形成されたドーム部35とから構成することができる。
上部材3の水供給口7に対し、水の入った例えばペットボトルあるいは瓶等の供給容器41を倒立連結したものとできる。
上部材3の上に中央に蒸気外出孔51を有する蒸し器台52を蒸気吐出部31ごと被せ、底部に複数の蒸気導入孔53を有する蒸し器54を蒸し器台52の上に載せておくものとできる。
蒸気吐出部31にフレキシブルチューブ61を介して、内部に薬草66を入れた美顔用ノズル筐体62を連結可能としたものとできる。
【0006】
以上のように構成されたこの考案における多利用型蒸気発生装置1の電極部11は、下部材2における水室2A内の電気分解水を電気分解させ、この電気分解によって形成された水蒸気を、上部材3における蒸気室3Aの蒸気吐出部31より外部に吐出させるものとなって、スチームアイロン用蒸気発生器としての利用を可能にさせる。
下部材2の上部開口側に上部材3が被着された際に、当該下部材2の一対の前側仕切板4A,4Bの間に中間仕切部15の前側の中央仕切板5Aが離隔した状態で対向配置されて上下方向に蛇行した水蒸気流路が形成され、蒸気吐出部31からの筐体1内部の熱水の飛出を防止させ、水蒸気だけを平均的に外部へ吐出させる。
筐体1の先端位置に吐出開口を斜下方へ向けた蒸気案内口39は、蒸気吐出部31から吐出される水蒸気をL型ノズル体36とL型案内筒38とを介して蒸気案内口39を通って筐体1の先端下面側から斜下方へ吐出させる。
上部材3の内面側に正極・負極の電極材をそれぞれ垂下並置させて成る電極部11は、これら炭素電極に直流電源による電流を通じて電気分解水の電気分解を生じさせ、このときの発熱反応の熱エネルギーにより水蒸気を効率良く発生させる。 栓体21の摘子部22は、上部材3の水供給口7を密栓させると共に、ケーシング部27内部に吸着剤28を充填して、摘子部22の下側に形成されたネジ突部24をケーシング部27の雌ネジ部25に捻じ込ませられる。これによりケーシング部27内部の吸着剤28は、当該ケーシング部27周面の複数の縦長スリット部26を介して下部材2内部の電気分解水に浸漬される。
蒸気吐出部31におけるドーム部35の差込用筒部37には、L型ノズル体36が装着され、このL型ノズル体36と共に凹部32周側面の横長スリット部33、および底部の小孔34を介して下部材2内部の熱水の飛出を防止させ、水蒸気だけを平均して外部へ吐出させる。
上部材3の水供給口7に対し、水の入った供給容器41を倒立連結しておくことで加湿器としての利用を可能にさせる。
上部材3の上に蒸し器台52を蒸気吐出部31ごと被せ、内部に食品を入れた蒸し器54を蒸し器台52の上に載せておくことにより調理用蒸し器としての利用を可能にさせる。
蒸気吐出部31にフレキシブルチューブ61を介して、内部に薬草66を入れた美顔用ノズル筐体62を連結することにより、エステティック等での美容用蒸気発生器としての利用を可能にさせる。
【0007】
【考案の実施の形態】
以下、図面を参照してこの考案の実施の形態を説明すると、図1乃至図5に示される第1の実施の形態における符号1は、スチームアイロン用蒸気発生器として利用した場合の多利用型蒸気発生装置を構成する筐体である。この筐体1は、図1、図3に示すように、最初は所定の塩分濃度の塩水の如き電気分解水を入れておき、使用の際に水蒸気が発生されることによって減少した水を補給しておくための例えば耐熱合成樹脂製の略船底型箱形状を呈する下部材2と、下部材2の上部開口を蓋状に密閉させて一体化される例えば耐熱合成樹脂製の船底型箱形状を呈し、且つ中央に栓体位置決め孔13およびその隣に蒸気孔14を有する略漏斗形の中間仕切部15を形成した上部材3と、上部材3上面の略中央に形成した水供給口7を密栓させる吸着剤封入構造の栓体21とから形成されている。したがって、下部材2の上部開口を上部材3によって密閉させることで中間仕切部15を介して筐体1下部には、下部材に2に設けられる水室2A、上部には上部材3に設けられる蒸気室3Aが分割形成されるものとしてある。また、上部材3の一側端には突出枠部8を形成し、突出枠部8の上側に把手部9を設け、突出枠部8下側には塩水を電気分解させるための電極部11を設け、上部材3の上面他端には水蒸気を外部に吐出するための蒸気吐出部31を設けてある。
【0008】
この下部材2の内底部前側位置には、当該下部材2の周壁の高さよりも高くした一対の前側仕切板4A,4Bを突出形成してある。また、下部材2の内底部先端位置には筒部を設け、上部材3の先端位置に設けた筒部と連通することで筐体1の先端位置に吐出開口を斜下方へ向けた蒸気案内口39が形成され、蒸気吐出部31から吐出される水蒸気を後述するL型ノズル体36とL型案内筒38とを介して蒸気案内口39を通って筐体1の先端下面側から斜下方へ吐出させるものとしてある。
【0009】
一方、中間仕切部15の下面には栓体位置決め孔13を挟むようにして前後一対の中央仕切板5A,5Bを突出形成してある。この一対の中央仕切板5A,5Bは、前記下部材2の一対の前側仕切板4A,4B同士の幅間隔よりも大きな間隔を有し、しかも一対の前側仕切板4A,4Bの間に前側の中央仕切板5Aが対応位置するように形成されており、下部材2の上部開口側に上部材3が被着された際に、当該下部材2の一対の前側仕切板4A,4Bの間に前側の中央仕切板5Aが離隔した状態で対向配置されることで上下方向に蛇行した水蒸気流路を形成すべく成してある(図3参照)。尚、下部材2の上に上部材3が被せられた際に、上部材3と下部材2との互いに接合する周壁面同士は接着剤等により固着されるものとしてある。さらに、上部材3の上面には内側に僅かに窪ませた浅底の円形平面部6を形成し、その中央位置には前記中間仕切部15の栓体位置決め孔13に対向するように水供給口7を配し、粒剤封入構造の栓体21により密栓されるようにしてある。また、上部材3の円形平面部6の前側位置には、筐体1内部の蒸気室3Aの内部蒸気圧により水蒸気を外部前方に向けて吐出させるためのL型ノズル体36を差し込み可能とした蒸気吐出部31を設けてある。
【0010】
また、上部材3の後側は上面の円形平面部6に対し後方に向けて略矩形箱状に突出した突出枠部8が形成されており、下部材2の水室2A内底部に収容されている塩水を電気分解した際に発生する熱エネルギーにより水蒸気を形成するための正極・負極の電極材をそれぞれ対向配置して成る電極部11が当該突出枠部8の内側に付設されている。そして、突出枠部8の上側には、例えば電圧100〜110Vの交流あるいは直流電源によって電極部11に通電させるためのシーソーボタン型のスイッチ部10を付け根側に設け、全長を略逆U字型に湾曲形成させて成る例えば耐熱合成樹脂製の把手部9を形成してある。
【0011】
電極部11は、図3に示すように、上部材3の把手部9の位置する突出枠部8の内面側に、正極の例えば炭素電極材と、負極の例えば炭素電極材とをそれぞれ並行状態となるようにして垂下配置させてあり、また両電極の間にはスパーク防止用仕切板12を設け、両電極間の火花放電による火災等を防止してある。これら炭素電極に直流電源による電流を通じて塩水の電気分解を生じさせ、このときの発熱反応の熱エネルギーにより水蒸気を発生させるようにしてある。このように塩水等の電解質溶液や融解電解質等のイオン伝導体に電流を通じて化学変化を生じさせることにより、自由エネルギーの増加する反応を起こさせるものとしてある。
【0012】
栓体21は、図4に示すように、上部材3の上面略中央に雌ネジ孔を形成して成る水供給口7に捻じ込んで密栓させるための雄ネジ部23を形成し、例えば周囲4個所に摘み用の窪みを設けて成る摘子部22と、この摘子部22の雄ネジ部23下側に当該雄ネジ部23よりも小径となって形成されたネジ突部24を捻じ込ませるための雌ネジ部25を円柱箱体の開口側内周に形成し、円柱箱体の周面に複数の縦長スリット部26を形成した例えば耐熱性のある透明合成樹脂製のケーシング部27とから構成してある。そして、栓体21が水供給口7に取り付けられた際には、ケーシング部27は蒸気室3Aを通り、中間仕切部15の栓体位置決め孔13に貫挿されて筐体1下部の水室2A内に臨み込ませられるようにしてある。尚、摘子部22に雄ネジ部23を形成する代わりにゴム栓状に形成し、水供給口7に詰め込んで密栓させるものとしても良い。
【0013】
そして、ケーシング部27内部には、塩水のイオンを吸着置換することのできるように、あるいは電気分解水に適当な成分を溶融させる粒剤28として例えば麦飯石、セラミック材、イオン交換樹脂材等を充填してある。例えば、この粒剤28が塩分濃度の高い塩水に接触した際には、その塩水中のイオンを吸収し、逆に塩分濃度の低い塩水に接触した際には、吸収されているイオンを塩水中に放出するというような電離平衡上の可逆反応性を有するものである。これにより、塩水中の塩分を所定量だけ吸収して一定の塩分濃度の塩水を生成させると共に、塩水中の水が蒸発して減少しても最初の塩分濃度を常に維持できるようにしてある。
【0014】
具体的な蒸気吐出部31の構成としては、図5に示すように、上部材3上面の略前側位置に有底円筒状の凹部32を形成し、この凹部32周側面の下側には円周上に沿って直列した2個の横長スリット部33を形成し、且つ底部には4個の小孔34を形成してある。そして、凹部32の上方開口側にはこれを塞ぐように略逆倒椀型のドーム部35が形成され、ドーム部35の頂上には、L型ノズル体36を差し込み可能とする差込用筒部37が連通形成されている。これによって蒸気吐出部31から熱水が出ないようにし、水蒸気だけがL型ノズル体36を通って外部前方に向けて平均して吐出できるようにしてある。さらにL型ノズル体36にL型案内筒38の一端を連結し、L型案内筒38の他端を筐体1の先端位置に設けた蒸気案内口39の上側開口に連結することで、筐体1の蒸気室3A内の水蒸気を当該筐体1の先端下面側から斜下方へ吐出させるようにしてある。尚、この蒸気吐出部31において、図3、図7に示すように、有底筒状の凹部32を付設せずに、単に開口状に形成することもできる。
【0015】
次に以上のように構成された実施の形態についての使用の一例を説明すれば、図1に示すように、先ず、上部材3の円形平面部中央の水供給口7を密栓してある栓体21を外して、そこから筐体1(下部材2)の水室2A内部に最初は所定の塩分濃度の塩水を入れておき、栓体21で水供給口7を閉栓する。このとき、栓体21のケーシング部27は内部の吸着剤28と共に塩水に浸漬される。把手部9のスイッチ部10をONにして例えば電圧100Vの交流あるいは直流電源によって電極部11の正極・負極の電極材を通電する。こうすることで、炭素電極により塩水の電気分解を生じさせ、このときの発熱反応の熱エネルギーにより例えば温度約120℃前後の水蒸気を発生させる。この水蒸気は上部材3の中間仕切部15と下部材2とのそれぞれの前側仕切板4A,4B,中央仕切板5A,5Bにより形成される上下方向に蛇行した水蒸気流路を経て中間仕切部15の蒸気孔14を介して筐体1内上部の蒸気室3A内に送り込まれ、蒸気吐出部31のL型ノズル体36から外部に吐出される。また、塩水中の水だけが蒸発して減少すれば、水供給口7を開栓して水を補給すれば良い。
【0016】
したがって、例えばL型ノズル体36の前方位置に例えば衣類をハンガーに掛けたままにしておき、衣類を水蒸気に曝しておくことで衣類のケアーが容易に行なえるのである(図2参照)。一方、L型ノズル体36をL型案内筒38を介して筐体1の先端位置に設けた蒸気案内口39の上側開口に連結することで、筐体1の蒸気室3A内の水蒸気を当該筐体1の先端下面側から斜下方へ吐出させることができ、通常のアイロンのように筐体1を衣類の上に載せながら移動させることで衣類のケアーが容易に行なえるのである(図3参照)。しかも、使用中に下部材2の水室2A内部の塩水中の水が蒸発して塩だけが残れば、把手部9のスイッチ部10をON状態にしたままであっても、電気を導く媒質たる電解質溶液としての塩水が存在しないため、正極・負極の電極材相互は電気的に不導通状態となり、従来のように空炊き状態となるのを防止できるのである。
【0017】
また、図6には第2の実施の形態が示されており、第1の実施の形態を示した図1乃至図5と同一の構成部分については同一の符号が付されることでその詳細な説明は省略されている。この第2の実施の形態にあってはこの考案に係る多利用型蒸気発生装置を加湿器として利用しているものである。すなわち、上部材3の円形平面部6中央の水供給口7から下部材2内部に所定の塩分濃度の塩水を入れておき、水の入ったペットボトルあるいは瓶等の供給容器41を倒立させてこれの栓口部42を水供給口7にセットしておくようにしてある。これによって下部材2内部に水の補給を度々しなくても、長時間もの間、水蒸気を蒸気吐出部31のL型ノズル体36から外部に吐出させておけるのである。
【0018】
また、図7には第3の実施の形態が示されており、第1の実施の形態を示した図1乃至図5と同一の構成部分については同一の符号が付されることでその詳細な説明は省略されている。この第3の実施の形態にあってはこの考案に係る多利用型蒸気発生装置を調理用蒸し器54として利用しているものである。すなわち、上部材3の上に、中央に蒸気外出孔51を有する中間仕切部を形成した円筒形の蒸し器台52を蒸気吐出部31ごと被せておき、底部に複数の蒸気導入孔53を有する蓋付円筒鍋形の蒸し器54内部に例えば生卵等の食品を入れ、この蒸し器54を蒸し器台52の上に載せておく構成としてある。あるいは、上部材3の円形平面部6に生卵等の食品を直接載せておき、その上から中央に水蒸気を逃がすための蒸気外出孔51の開いた蓋体を蒸気吐出部31ごと被せておくようにしても良い。これによって、生卵は蒸気吐出部31から吐出される水蒸気により蒸し温められて温泉卵のような茹で卵ができるのである。この他、各種食品を蒸すためのセイロとして利用しても良い。さらに、蓋体自体は中央に蒸気外出孔51の開いた円形箱型となって複数に形成しておき、これらに食品を載せておいてから複数段に積み重ねるようにして使用すれば一度に多くの食品を蒸すことができるのである。
【0019】
また、図8には第4の実施の形態が示されており、第1の実施の形態を示した図1乃至図5と同一の構成部分については同一の符号が付されることでその詳細な説明は省略されている。この第4の実施の形態にあってはこの考案に係る多利用型蒸気発生装置を例えばエステティック等での美容用蒸気発生器として利用しているものである。すなわち、蒸気吐出部31に長尺なフレキシブルチューブ61の一端を連結し、フレキシブルチューブ61の他端に例えば美顔用ノズル筐体62を連結してある。この美顔用ノズル筐体62は、フレキシブルチューブ61の他端に連結するための細径パイプ状の差込部63を一端に有し、先端面側に複数の吐出孔64を有するシャワーノズル型に形成されており、側面には略L字型の把手部65を設けてある。そして美顔用ノズル筐体62の内部には、薬草66として例えばヨモギ等を入れてある。尚、この美顔用ノズル筐体62を蒸気吐出部31の差込用筒部37に装着したL型ノズル体36に直接連結しても良い。
【0020】
また、図示による説明を省略したが、この考案に係る多利用型蒸気発生装置を例えば衣類の染み取り、あるいは家具、車両等の汚れを取るための掃除用蒸気発生器として利用しても良いのである。すなわち、蒸気吐出部31のL型ノズル体36に長尺なフレキシブルチューブ61を介して前記美顔用ノズル筐体62を連結する替わりに、水蒸気の吐出圧力を高めるように先端に行くに従って次第に細径となった掃除用ノズル体を連結すれば良いのである。
【0021】
【考案の効果】
この考案は以上のように構成されているために、スチームアイロン用蒸気発生器において、上部より水蒸気を吐出させ、下方に水滴が落下されないようにすることで周辺を汚すことなく使用でき、消耗する水の補給頻度を最小限に抑えるこができ、しかも発熱源自体は塩水中の水が無くなれば通電されないものとすることができるため、火災の虞れなく安全に使用することができると共に、スチームアイロン用蒸気発生器以外に、例えば加湿器、調理用蒸し器54、美容用蒸気発生器、掃除用蒸気発生器等の各種用途にも利用可能とすることができる。
【0022】
すなわちこれはこの考案において、筐体1を中間仕切部15を介して下部の水室2A、上部の蒸気室3Aに分割形成し、水室2A内に電気分解水を電気分解させる電極部11を設け、蒸気室3A上部に蒸気吐出部31を設け、栓体位置決め孔13に対応して筐体1上部に形成された水供給口7に密栓させる栓体21を設けたからであり、これによって、下方に水滴が落下されず、周辺を汚すことなく使用でき、電気分解水中の消耗する水の補給頻度を最小限に抑えることができ、しかも発熱源自体は電気分解水中の水が無くなれば通電されないので火災の虞れなく安全に使用することができるスチームアイロン用蒸気発生器としての利用を可能にする。
【0023】
筐体1は、塩水を入れる水室2Aを備えた下部材2と、下部材2内の塩水を電気分解させる電極部11を設け、この電気分解によって形成された水蒸気を外部に吐出するよう、蒸気吐出部31を有する蒸気室3Aを設けて成る上部材3とから構成したので、下方に水滴が落下されないものとなり、周辺を汚すことなく使用できるスチームアイロン用蒸気発生器を容易に形成することができる。
【0024】
下部材2の上部開口側に上部材3が被着された際に、下部材2の一対の前側仕切板4A,4Bの間に前側の中央仕切板5Aが離隔した状態で対向配置されることで上下方向に蛇行した水蒸気流路を形成すべく成したので、これら前側仕切板4A,4B、および中央仕切板5A,5Bが防壁となって蒸気吐出部31からの下部材2内部の熱水の飛出を防止させ、水蒸気だけを均一に外部へ吐出させることができる。
【0025】
また、筐体1の先端位置に吐出開口を斜下方へ向けた蒸気案内口39が形成され、L型ノズル体36とL型案内筒38とを介して蒸気吐出部31と蒸気案内口39とを連結したので、筐体1の蒸気室3A内の水蒸気を当該筐体1の先端下面側から斜下方へ吐出させることができ、通常のアイロンのように筐体1を衣類の上に載せながら移動させることで衣類のケアーが容易に行なえる。
【0026】
電極部11は、上部材3の内面側に、正極・負極の電極材をそれぞれ垂下並置させて成るので、使用中に下部材2内部の塩水中の水が無くなった場合に、把手部9のスイッチ部10をON状態にしたままであっても、電気を導く媒質たる塩水が無いため、正極・負極の電極材相互は電気的に不導通状態となり、従来のように空炊き状態となるのを防止することができる。
【0027】
栓体21は、上部材3の水供給口を密栓させる摘子部22と、周面に複数の縦長スリット部26を形成し、内部に粒剤を充填して成るケーシング部27とから構成したので、栓体21で水供給口7を密栓させることにより、ケーシング部27内部の吸着剤28は、当該ケーシング部27周面の複数の縦長スリット部26を介して下部材2内部の塩水に浸漬されることとなって、当該下部材2内部の塩水を所定の塩分濃度となるように維持させておくことができ、しかもケーシング部27内部の粒剤28の補充も容易に行なえる。
【0028】
蒸気吐出部31は、周側面に横長スリット部33を形成し、且つ底部には小孔34を形成して成る凹部32と、凹部32の上方開口側を塞ぎ、頂上にL型ノズル体36を差し込み可能とする差込用筒部37が連通形成されたドーム部35とから構成したので、このL型ノズル体36と共に凹部32周側面の横長スリット部33、および底部の小孔34を介して下部材2内部の熱水の外部への飛出を防止させ、水蒸気だけを平均して外部へ吐出させることができ、使用中における利用者に対する火傷等を防止することができる。
【0029】
上部材3の水供給口7に対し、水の入った例えばペットボトルあるいは瓶等の供給容器41を倒立連結したので、長時間、水の補給を行なう必要のない加湿器として利用することが可能となる。
【0030】
上部材3の上に中央に蒸気外出孔51を有する蒸し器台52を蒸気吐出部31ごと被せ、底部に複数の蒸気導入孔53を有する蒸し器54を蒸し器台52の上に載せておくので、調理用蒸し器として利用することが可能となる。
【0031】
蒸気吐出部31にフレキシブルチューブ61を介して、内部に薬草66を入れた美顔用ノズル筐体62を連結可能としたので、エステティック等での美容用蒸気発生器として利用することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】この考案の第1の実施の形態における分解斜視図である。
【図2】同じく使用状態の斜視図である。
【図3】同じく縦断面図である。
【図4】栓体の一部切欠分解斜視図である。
【図5】蒸気吐出部の他例における分解斜視図である。
【図6】この考案の第2の実施の形態における使用状態の斜視図である。
【図7】この考案の第3の実施の形態における使用状態の斜視図である。
【図8】この考案の第4の実施の形態における使用状態の一部切欠斜視図である。
【符号の説明】
1…筐体 2…下部材
2A…水室 3…上部材
3A…蒸気室 4A,4B…前側仕切板
5A,5B…中央仕切板 6…円形平面部
7…水供給口 8…突出枠部
9…把手部 10…スイッチ部
11…電極部 12…スパーク防止用仕切板
13…栓体位置決め孔 14…蒸気孔
15…中間仕切部
21…栓体 22…摘子部
23…雄ネジ部 24…ネジ突部
25…雌ネジ部 26…縦長スリット部
27…ケーシング部 28…粒剤
31…蒸気吐出部 32…凹部
33…横長スリット部 34…小孔
35…ドーム部 36…L型ノズル体
37…差込用筒部 38…L型案内筒
39…蒸気案内口
41…供給容器 42…栓口部
51…蒸気外出孔 52…蒸し器台
53…蒸気導入孔 54…蒸し器
61…フレキシブルチューブ 62…美顔用ノズル筐体
63…差込部 64…吐出孔
65…把手部 66…薬草

【実用新案登録請求の範囲】
【請求項1】 栓体位置決め孔および蒸気孔を有する中間仕切部を介して下部の水室、上部の蒸気室に分割形成され、水室内に電気分解水を電気分解させる電極部を設け、蒸気室上部に蒸気吐出部を有する筐体と、栓体位置決め孔に対応して筐体上部に形成された水供給口に密栓させる栓体とから構成したことを特徴とする多利用型蒸気発生装置。
【請求項2】 筐体は、最初は塩水を入れておき、次回からは水のみを入れるようにした水室を備えた下部材と、下部材の上部開口を密閉させて一体化され、水室内の塩水を電気分解させる電極部を設け、この電気分解によって形成された水蒸気を外部に吐出するよう、蒸気吐出部を有する蒸気室を設けて成る上部材とから構成した請求項1記載の多利用型蒸気発生装置。
【請求項3】 下部材の内底部に前後一対の前側仕切板を突出形成し、中間仕切部の下面には栓体位置決め孔を挟むようにして前後一対の中央仕切板を突出形成し、下部材の上部開口側に上部材が被着された際に、当該下部材の一対の前側仕切板の間に中央仕切板の前側が離隔した状態で対向配置されることで上下方向に蛇行した水蒸気流路を形成すべく成した請求項1または2記載の多利用型蒸気発生装置。
【請求項4】 筐体の先端位置に吐出開口を斜下方へ向けた蒸気案内口が形成され、L型ノズル体とL型案内筒とを介して蒸気吐出部と蒸気案内口とを連結した請求項1乃至3のいずれか記載の多利用型蒸気発生装置。
【請求項5】 電極部は、上部材の内面側に、正極・負極の電極材をそれぞれ垂下並置させて成る請求項1乃至4のいずれか記載の多利用型蒸気発生装置。
【請求項6】 栓体は、上部材の水供給口を密栓させる摘子部と、この摘子部の下側に栓径よりも小径となって形成されたネジ突部を捻じ込ませる雌ネジ部を形成し、周面に複数の縦長スリット部を形成し、内部に吸着剤を充填して成るケーシング部とから構成した請求項1乃至5のいずれか記載の多利用型蒸気発生装置。
【請求項7】 蒸気吐出部は、周側面に横長スリット部を形成し、且つ底部には小孔を形成して成る凹部と、凹部の上方開口側を塞ぎ、頂上にL型ノズル体を差し込み可能とする差込用筒部が連通形成されたドーム部とから構成した請求項1乃至6のいずれか記載の多利用型蒸気発生装置。
【請求項8】 上部材の水供給口に対し、水の入った供給容器を倒立連結した請求項1乃至7のいずれか記載の多利用型蒸気発生装置。
【請求項9】 上部材の上に中央に蒸気外出孔を有する蒸し器台を蒸気吐出部ごと被せ、底部に複数の蒸気導入孔を有する蒸し器を蒸し器台の上に載せておくものとした請求項1乃至7のいずれか記載の多利用型蒸気発生装置。
【請求項10】 蒸気吐出部にフレキシブルチューブを介して、内部に薬草を入れた美顔用ノズル筐体を連結可能とした請求項1乃至7のいずれか記載の多利用型蒸気発生装置。
【請求項11】 栓体位置決め孔および蒸気孔を有する中間仕切部を介して下部の水室、上部の蒸気室に分割形成され、水室内に電気分解水を電気分解させる電極部を設け、蒸気室上部に蒸気吐出部を有する筐体と、栓体位置決め孔に対応して筐体上部に形成された水供給口に密栓させる栓体とから成り、筐体は、最初は塩水を入れておき、次回からは水のみを入れるようにした水室を備えた下部材と、下部材の上部開口を密閉させて一体化され、電極部、蒸気吐出部を有する蒸気室をそれぞれ設けて成る上部材とから構成し、また下部材の内底部に前後一対の前側仕切板を突出形成し、中間仕切部の下面には栓体位置決め孔を挟むようにして前後一対の中央仕切板を突出形成し、下部材の上部開口側に上部材が被着された際に、当該下部材の一対の前側仕切板の間に中央仕切板の前側が離隔した状態で対向配置されることで上下方向に蛇行した水蒸気流路を形成すべく成すと共に、筐体の先端位置に吐出開口を斜下方へ向けた蒸気案内口が形成され、L型ノズル体とL型案内筒とを介して蒸気吐出部と蒸気案内口とを連結可能にし、前記栓体は、上部材の水供給口を密栓させる摘子部と、この摘子部の下側に栓径よりも小径となって形成されたネジ突部を捻じ込ませる雌ネジ部を形成し、周面に複数の縦長スリット部を形成し、内部に吸着剤を充填して成るケーシング部とから構成したことを特徴とする多利用型蒸気発生装置。

【図1】
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【図4】
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【図6】
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【図2】
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【図3】
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【図7】
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【図5】
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【図8】
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【登録番号】実用新案登録第3076662号(U3076662)
【登録日】平成13年1月24日(2001.1.24)
【発行日】平成13年4月13日(2001.4.13)
【考案の名称】多利用型蒸気発生装置
【国際特許分類】
【評価書の請求】未請求
【出願番号】実願2000−7001(U2000−7001)
【出願日】平成12年9月28日(2000.9.28)
【出願人】(399037704)