説明

多地点で頭蓋を励起する方法とシステム

【課題】 脳を非線形結合された振動システムと見做し、多地点で頭蓋を励起する方法を提供する。
【解決手段】 本発明の多地点で頭蓋を励起する方法は、(A)個々の励起を、頭の複数の領域に加えるステップと、前記(A)ステップは、特定の励起信号を、前記脳の領域近傍に配置された励起要素に加えることにより、行われ、(B)前記脳或いはその一部の単純化モデルを構築するステップと、(C)前記脳又はその一部を、非線形結合された振動システムと見なすステップと、(D)前記励起信号を、それ等が前記非線形結合振動システムの自然振動モードを励起するよう、決定するステップと、を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多地点で頭蓋を励起する方法とこの方法を実行するシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
本発明の多地点で頭蓋を励起する方法は、個々の励起を頭蓋の複数の領域に加える。これは、特定の励起信号を前記脳の領域近傍に配置された励起要素に加えることにより、行われ、非線形結合された振動システムと見做した脳又はその一部を、励起する。
本発明は、本発明の方法を実行する多地点で頭蓋を励起するシステムである。
【0003】
頭蓋内を励起するあるいは頭蓋を通して励起する方法とシステムに対し、様々な提案がなされている。これ等の励起は、励起すべき領域の近傍に磁気パルスを加えることにより、或いは、TMS励起即ちtDCS、ENS、TES励起を含む電気信号を印加することにより、行われている。これ等のあるものは、頭蓋を多地点で励起する技術思想を含む。即ち、複数の励起要素(電極或いは磁気コイル)を様々な神経領域に配置して、複数の励起信号を与える。別のある技術は、フィードバックのコンセプトを用いている。即ち、被監視信号により印加する励起信号の制御を実行して、脳の活動をモニタしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許第2006161219号明細書
【特許文献2】米国特許第7257439号明細書
【特許文献3】ヨーロッパ特許第1703940A号
【特許文献4】米国特許出願2004138578A1号
【特許文献5】米国特許6488617号公報
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Wanger et al,Noninvasive Human Brain Stimulation,Ann.biomed.Eng.2007.9:19.1-19.39
【非特許文献2】see ray C,Ruffini G,MarcoPallare's J,Fuintemilla LI,Grau C.,Complex networks in brain electrical activity, Europysics letter. 2007
【非特許文献3】Buzaki G,Draguhn A (2004) Neuronal oscillations in cortical networks. Science 304:1926-19293
【非特許文献4】Engel AK. Fries P, Singer W (2001) Dynamic prediction: Oscillations and synchrony in topdown processing. Nature Reviews Neuroscience 2:704-7164
【非特許文献5】Varela F, Lachaux JP, Rodriguez E, Martinerie J (2001) The brainweb: Phase synchronization and large-scale integration. Nature Reviews Neuroscience
【非特許文献6】Bar Yam and Epstein 2004
【0006】
磁気励起信号又は電気信号の直接的印加による頭蓋励起に関する幾つかの提案を以下に紹介する。
【0007】
特許文献1は、人間の脳内の神経組織を励起するシステムと方法を開示する。これは、電気パルスを複数の場所に印加して、複数の状態(病変)の処理(そして治療)を目的としている。前記文献1は、上記の励起信号を加える電極を人の頭蓋骨内に移植している。この方法は、電極を頭蓋骨内に移植する前に、TMSの手段により磁気励起信号を印加して、患者が電極の移植に適しているか否かを決定する。電極を複数の場所に移植(配置)する目的は、複数の状態を一度に処理(そして治療)することである。それ等の応答信号は、それぞれ対応するプログラムにより解析される。しかし特許文献1は、複数の場所に励起信号を印加して、単一の状態を得て処理することについては、開示していない。
【0008】
特許文献2は、神経組織例えば脳細胞近傍の血管内に、複数の極小電極或いはそれ等のアレイを配置して、神経活動をこの複数の電極でモニタする技術を開示する。即ち、電気的励起信号を他の電極を介して印加して現在の神経活動を監視し、それを以前に監視した神経活動と比較するシステムと方法を開示する。応用例では、脳とマシンとのインタフェースの開発、或いは人工関節制御を可能としている。
【0009】
一連のアルゴリズムを用いて、それぞれ機能状態にある複数の神経から得られるモニタされた信号を、空間−時間パターンに応じて分類することは、公知である。しかし、神経励起を実行するアルゴリズムや特殊のプログラムは、特許文献2には提案されていない。特許文献2は、モニタされた信号を使用するアルゴリズムに基づいて、応答信号を様々な方法で解析し、それに基づいて決定することを示唆しているにすぎない。
【0010】
更に特許文献3は、電気励起(ENS electorical stimulation)と磁気励起(TMS magnetic stimulation)を患者の体の様々な領域に一緒に、或いは別々に印加し管理するシステムと方法を開示する。特許文献3は、モニタされた励起信号に応答して励起パラメータを合わせる。例えばEEGの手段により適合することを提案している。TMS励起の場合では、変化するパラメータの一例は、パルス幅、周波数、磁界の強度と方向性である。
【0011】
特許文献4は、生体電気信号(EEG)に依存して、患者の脳の励起を行うシステムと方法を開示する。特許文献4は、複数の脳領域に加えられるTMS励起のリアルタイムの適用を開示する。これは、生体電気信号の双方向のフィードバックを用いて行う。これにより、TMSコイルのパルスのパラメータ(持続時間等)を変化させている。初期状態においては、励起は、以前にモニタした状態に応じて、生体電気信号を加えることにより行われる。これにより患者のcognitive-emotive profile を決定する。しかし特許文献4は、生体電気信号の印加時、又は印加開始時の何れに於いても、患者のcognitive-emotive profile と称する変数或いは場所に応じて、励起を行ってはいない。
【0012】
特許文献5は、EEGモニタリング・システムの出力とTMSシステムの制御出力との間を閉鎖ループフィードバックして、所望の状態に達するまで、脳状態を変化させる構成を開示する。特許文献5は、TMS励起のパラメータ(振幅、動き、持続時間等)の制御を開示する。更に、単一周波数で単一磁界を生成するよう、磁石又はコイルを独立して制御することを開示する。しかし特許文献5は、励起を実行するために、前記制御の適用については何ら開示せず、個々の励起と他の励起とを組み合わせて、且つ以前に決定した個々の励起の特性に基づいて、合成(組合せ)結果を如何に達成するかについての開示はない。
【0013】
最新技術を分析した結果、最重要な結論は、TMS励起とtDCSの励起は、具体性に欠け、限定された解析結果しか得られないことである(非特許文献1)。
【0014】
最新の研究によれば、脳活性の構造的サポートは、例え特定の周波数や位相に基づいても、様々に離間した異なる脳領域の活動(アクティビティ)の調整に関連する(非特許文献2)。神経科学における最も重要な挑戦的事項は、多くの神経のアクティビティの空間−時間パターンをマッピングし解析することである。これにより、人間の脳の情報を処理する。多数の神経網は、人間の脳の情報の処理をつかさどる。脳は、多数の緻密に相互接続された神経網を具備し、その情報処理は、時間と空間の様々なスケールに基づいて行われる。これは、全ての複雑なシステムの内で最も興味あるシステムである(非特許文献3)。
【0015】
脳は、パターンモデル化されたツールとして研究されている。このツールにおいては、環境入力は、ボディ・センサーによるトランスレーションにより変換されると、解析される。環境入力をモデル化する能力は、より高級な生体センサの生き残りに必須である。ニューラルネットワーク(神経網)は、、応答も効率的に行う為に、このモデル化するタスクを実行する。しかし、これは、入力情報が脳をダイナミックに変更するのに必要である場合、或いはそれらを修正するのに必要である場合で、しかもダイナミックにする必要である場合である(非特許文献6)。
【0016】
一例として、初期の発見では、瞬間的な先端領域は、音の間の差を決定するために、データ処理と共に機能するいう概念をサポートしている。このフレームワークに於いては、コヒーレントに活性化し同一の表示の一部を形成するような空間的に分散した神経グループの組が、関連性を形成する(非特許文献4)。言い換えると、脳は、局部的に分布した一連の神経網として記述できる。この神経網は、双方向の接続手段によりダイナミックに一時的にリンクされ、これが、機能的な一体化を達成する(非特許文献5)。
【0017】
脳は、非線形に結合された振動システムと見做すことができる。このシステムに於いては、様々な領域が同時に様々な処理に寄与する。
【0018】
以下の多地点頭蓋励起に関連する提案は知られていない。即ち、上記のアプローチを考慮にいれて、非線形に結合された振動システムとして脳を解析し、加えられるべき個々の励起信号を決定することについては、いまだ開示されていない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
本発明の目的は、従来の頭蓋励起方法に代わるさらに好ましい頭蓋励起方法を提供することである。これは、上記のアプローチを、非線形に結合された振動システムと見做した脳に、適用して、共振概念を用いて加えるべき励起信号を決定し、脳全体をより良く励起する方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0020】
本発明の第1態様の多地点で頭蓋を励起する方法は、(A)個々の励起を、頭の複数の領域に加えるステップを有する。前記(A)ステップは、特定の励起信号を、前記脳の領域近傍に配置された励起要素に加えることにより、行われる。
【0021】
従来技術とは異なり、本発明の第1態様の多地点で頭蓋を励起する方法は、更に、
(B)前記脳或いはその一部の単純化モデルを構築するステップと、
(C)前記脳又はその一部を、非線形結合された振動システムと見なすステップと、
(D)前記励起信号を、それ等が前記非線形結合振動システムの自然振動モードを励起するよう、決定するステップと、を有する。
【0022】
本発明の第1態様の多地点で頭蓋を励起する方法は、(E)前記励起信号を、空間と時間を調整して、印加するステップを更に有する。一実施例においては、更に、(F)前記励起信号の一部を同時に印加するステップを有する。前記(F)ステップにより、前記脳又はその一部の自然振動モードの励起を引き起こす。
【0023】
前記励起すべき領域は、前記脳の大脳皮質を通って伸びる。一実施例においては、この領域は、脳の大脳皮質を貫通して伸びる。
【0024】
本発明の第1態様の多地点で頭蓋を励起する方法は、励起信号の印加中あるいはその後に、(G)前記脳の活動を監視するステップを更に有する。前記(G)ステップは、脳の特定の領域に配置された電子生体センサーを用いて行われる。
【0025】
上記の監視は、従来公知の技術を適用することにより、例えば電子脳造影法又は磁気脳造影法を適用することにより、行われる。
【0026】
上記の監視の目的は、監視信号と被監視信号の結果として得られた信号を提供すること、励起信号を被監視信号に応じて制御することである。かくして励起は、リアルタイムで脳のアクティビティで得られた変化に合うよう自己校正される。これは、励起要素の信頼できない配置位置に基づく不正確さを回避するためである。患者或いはユーザの頭の形状がわからない場合には、脳の電界又は磁界の第一分布に悪影響を及ぼすからである。
【0027】
前記励起信号を変化さえるために、(I)前記励起信号の位相、周波数、振幅を独立して制御するステップを有する。これにより、誘導された電気信号の位相、周波数、振幅を変化させる。
【0028】
適用すべき多地点頭蓋励起に関しては、特に一実施例に於いては、頭蓋横断磁気励起である。この場合励起要素は、磁気コイル或いはエミッタである。それ等に加えられる電気信号に依存して磁界を生成する。他の実施例に於いては、多地点頭蓋励起は、電気励起である。この場合励起要素は電極である。この電気励起は、従来の直流励起即ちtDCSとは異なり、汎用化された電流励起或いはTCSである。即ち本発明は、直流/交流の信号に限定されず、0−200Hzの範囲の周波数の電流が使用可能である。
【0029】
一実施例に於いては、本発明の第一態様の方法は、励起信号を決定する。その結果、非線形に結合された振動システムの複数個の自然振動モードを励起する。これは、直接に或いは外部から、同時に或いは別時間で、励起信号を急速に決定する手段で行う。その結果、それ等は、前記の自然振動モードを直接励起する。この場合励起信号は、一次自然振動モードを励起するよう決定し、残り(二次、三次−−)は、前記一次自然振動モードを励起するような特定の励起信号の調和モード或いは準調和モードで自己励起する手段により、励起する。
【0030】
一実施例に於いては、本発明の第一態様の方法は、(J)前記脳の複数の領域に対応する複数の単純化したモデルを構築するステップと、(K)前記励起信号を決定し制御するステップとを更に有する。前記励起信号は、前記脳の部分の単純化したモデルに対応する非線形結合振動システムの1つの自然振動モードを励起するよう、選択される。
【0031】
言い換えると、本発明の一態様の方法は、脳全体或いは脳の様々な部分を、干渉、アプリケーションに応じて、励起する。脳全体或いは脳の部分を、特定の共振周波数を有する非線形に結合された振動システムと見做す。これを考慮にいれて、印加すべき励起信号の決定を行う。
【0032】
本発明の一実施例によれば、多地点頭蓋励起は頭蓋内の励起であり、この場合励起要素は侵襲性である。
本発明の一実施例に於いては、多地点頭蓋励起は頭蓋を横断する励起である。この場合の励起要素は非侵襲性である。好ましい実施例においては、上記のモニタリングでは、これは、スペイン特許出願2289948号に提案された極小構造の導体の電子生体センサである。励起信号は電気信号である。
【0033】
一実施例に於いては、提案された本発明の方法は、多地点の脳頭蓋横断モニタリングを実行する。励起は電流で行う(MtCSとして公知である)。その際に脳内に流れる電流を微妙に制御する。本発明の方法は、電極を順番に並べたアレイで実行し、その際、位相、振幅、周波数を独立して制御する。これにより、脳内の様々な部分を流れる電流の様々な空間−時間の変調を提供する。
【0034】
本発明の他の実施例に於いては、本発明の方法は、電極の幾つかのサブグループを、各サブグループに共通の制御信号で制御する方法を含む。
脳の電気励起に関するこれまでの研究成果(この場合、tDCS)によれば、頭蓋骨の抵抗率は高いために、皮質に達する電流は減衰し、大部分の電流は頭皮に沿って廻り込む。頭の形状と生体組織の電磁特性と電極の配置位置は、最終の電界分布の決定に大きな役目を果たす。このような感受性は、励起システムの校正サブシステムのデザインとそれを使用することが必要となり、更に脳の単純化したモデルの構築が必要となる。
【0035】
本発明の一態様による方法は、上記の要件を考慮に入れる。その結果、本発明の方法は、校正サブシステムの機能を実行するガイドステップと校正ステップとを有し、上記の脳のアクティビティのモニタリングの結果として、実行される。
【0036】
本発明の一態様による方法は、個々の励起をフォーカスする為に、ガイドステップを有する。前記ガイドステップにおいて、前記励起要素に加えられる励起信号は、脳の領域(三次元空間)に依存して、決定され制御される。
【0037】
本発明の一態様による方法は、個々の励起のフォーカスを効率化する為に、校正ステップを更に有する。この校正ステップにおいて、前記励起信号の変化は、被監視信号に応じて、行われる。即ち、何が、良好な調整を行うために電気励起又は磁気励起を引き起こすのかに基づいて、行われる。
【0038】
上記の得られた監視信号は、励起により誘導された不要な信号を含む。この励起信号は、アプリケーションから直接的に得られた励起信号、或いはそれから抽出された信号のいずれかである。上記の信号を適切にフィルタリングすることにより、不要な信号即ちノイズを除去して、脳活性(アクティビティ)を実際に示す信号を得る必要がある。それは、自然のアクティビティ、或いは加えられた励起の応答結果である。
【0039】
一実施例に於いては、本発明の第一態様の方法は、(M)前記被監視信号に適用される解析技術(例、EEG)を用いるステップを有する。これにより、前記励起により誘導された電気信号と、自然生体電気信号或いは前記励起の応答信号とを区別する。
【0040】
一実施例に於いては、本発明の第一態様の方法の解析技術は、周波数分離技術、時間分離技術、断層撮影技術或いはその組み合わせを含むグループから選択される技術である。
【0041】
一実施例に於いては、本発明の第一態様の方法は、(N)前記被監視信号に適用される拡散スペクトラム技術を用いるステップをさらに有する。これにより、前記各励起要素内の励起に関連するアクティビティを特定する。
【0042】
一実施例に於いては、本発明の第一態様の方法は、(O)マーキング信号を各励起信号に関連付けるステップを更に有する。具体的には、マーキング信号を各励起要素内の励起信号に重ねることにより、行われる。これにより、前記励起信号の印加により誘導される各電気信号の位置を改善し、前記励起により誘導される電気信号と脳のアクティビティ(自然アクティビティ又は印加された励起の結果)を表す信号との区別を、前記被監視信号を解析することにより、明確にする。
【0043】
一実施例に於いては、前記のマーキング信号は、純粋なサイン波形信号の直接シーケンス拡散スペクトラム(direct sequence spread spectrum DSSS)である。この純粋なサイン波形信号は、前記信号のノイズレベル以下のパワー密度を具備した信号(EEG(脳波Electroencephalogram:EEG))を生成する。
【0044】
各断層撮影ボクセル(tomography voxel)における信号分散を回復するプロセスにより、各ボクセルにおける各励起要素による寄与分を回復(重ね合わせ原理を用いて)できる。更に本発明の第一態様に提案された方法を用いることにより、様々な励起要素に加えられる励起信号の強度を調整する手段により、前記のガイド・ステップを改善することができる。
【0045】
他の実施例に於いては、本発明の方法は、断層撮影を実行する前に分散を回復するプロセスを含む。これはプロセスが線形プロセスだから可能である。
一実施例に於いては、マーキング信号は、励起信号を供給する励起要素内に於いて同一である。そのスペクトラムは、疑似ランダム・ノイズを用いて拡散される。疑似ランダム・ノイズは、CDMA(携帯電話およびGPSシステムで使用されている)でも使用されている。
【0046】
モニタリング信号を獲得するのに用いられるセンサは、EEGの手段により、励起信号に起因する全ての寄与分を受領する。この励起信号のパワーは、被監視信号内に存在する脳のアクティビティを表す信号のパワーレベル以下である。本発明の第一態様により提案された方法のアプリケーションにより、脳の複合アクティビティ・パターンが、モデルを介して制御され再生される。本発明の方法により行われる多地点頭蓋励起方法により、以下のことを行うことができる。
*振動する脳内の特定のリズムとパターンを調節できる自由度、
*特定の部位に焦点を当てのを改善すること、
*皮質全体を通して時間と空間をコーディネートした励起、
*各部位における周波数と位相の関係の制御、
*被監視信号のリアルタイムのフィードバックの結果として励起の自己校正と適用、
【0047】
第2の態様において、本発明の多地点で頭蓋を励起するシステムは、
(A)脳の複数の領域に配置される励起要素と、
(B)前記複数の励起要素に接続される電子システムと、
を有する。
前記電子システムは、前記励起要素に励起信号を印加して、前記脳の複数の領域を個別に励起する。しかし、これは、個々の励起の結果として各領域の局部的な結果を達成するのではなく、個々の励起の合成に起因する全体的な結果を得るものである。
【0048】
前記の全体的な結果を得る為に、本発明のシステムの電子システムは、脳又はその一部の単純化したモデルへのアクセスを有する処理ユニットを有する。前記脳又はその一部は、非線形に結合された振動システムと見なされる。前記処理ユニットは、前記非線形に結合された振動システムの自然振動モードを励起するよう、前記励起信号を決定する。
【0049】
前記電子システムは、一連の電子生体センサを有する。前記電子生体センサは、前記脳の特定の領域に配置され、前記電子システムの処理ユニットに接続されて、前記脳の活動をモニタする。
【0050】
一実施例に於いて、前記電気生態学センサは、前記励起要素と空間的に一致させて配置される。更にこの実施例の変形として、各励起要素と各電気生物学センサは、励起機能と監視機能の両方を実行できる同一の要素でもよい。
【0051】
使用される配置システムは、標準のシステム、例えば電極配置の10/30システムである。上記の処理ユニットは、前記監視される脳アクティビティに依存して、前記励起信号を制御する。
【0052】
本発明の第二態様により提案されるシステムは、上記の多地点頭蓋励起を本発明の第一態様により提案された方法を適用することにより、実行する。このため、上記の処理ユニットは、一連のアルゴリズムを実行する、すなわち、本発明の方法の様々なステップを実行する。特に脳を単純化したモデル(とこのモデルの構造)へのアクセスとその解析に関連するステップを実行して、前記モデルに基づいて励起信号を決定し、被監視信号の解析を実行し、頭蓋励起の動作期間の間リアルタイムで励起信号の適応のためにそれ等を使用し、初期状態においては様々なガイド・ステップ、更に校正ステップを実行する。
【0053】
一実施例に於いては、本発明の方法は、2つの励起要素の間で双方向に生成された電流の計算値から、励起信号を決定する。これは、特定の励起信号を与えた後、行われ、重ね合わせ技術を用いて生成された多地点電流の計算を実行する。前記技術は、励起要素の組みにより適用される励起効果は、各対の励起要素により生成される励起効果の重ね合わせであるという仮定に基づいている。本発明の一態様により提案される方法は、前記励起信号を決定して、特定の脳アクティビティを減らしたり、抑制したりする。
【0054】
本発明の方法とシステムは、例えば以下のものに適用可能である。
研究:認識心理学/神経科学。これにより因果関係が決定できる。人間の脳の柔軟性は、TMS励起の繰り返し(と、シータ・バースト励起、或いは対の関連する励起のような技術の変形例)により測定できる。
診断:TMS励起を診断レベルで用いて、人間の脳の特定の脳回路のアクティビティと機能を測定する。
治療:TMS励起を用いて複数の神経状態を治療する。例えば、偏頭痛、脳卒中、癲癇、パーキンソン病、失調症、耳鳴り、精神異常、うつ病或いは幻覚。
脳/機械のインターフェイス:マシンから脳への通信及びその逆方向への通信。
知覚合成:データソースを直接人間の脳に結合して、新たな検知を得る。
【0055】
上記のアプリケーションのあるものについては文献があるが、本発明の方法とシステムのアプリケーションは、得られた結果を改善し且つ励起システムに固有の様々なパラメータを調整したり適合したりする機能と自由度を改善する。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】本発明の第二の態様により提案されたシステムのブロック図。
【発明を実施するための形態】
【0057】
図1は、患者Hに対し実施された本発明の第二態様のシステムを表す。患者Hには複数の励起要素E1,E2....Enが配置される。これ等の励起要素は、患者の脳の複数の領域に対応して、その近傍に配置される。
【0058】
上記したように本発明のシステムは、一連の電気生体センサS1,S2...Snを有する。これの電気生体センサは、人間の脳の特定の領域に隣接して配置され、電気システムの処理ユニットと接続されて、脳の活性状態を監視する。前記電気生体センサS1,S2....Snは、患者Hの脳近傍に配置される。
【0059】
本発明のシステムは更に電子システムを有する。この電子システムは、複数の励起要素E1,E2....Enに接続されて、この励起要素にそれぞれ励起信号を与えて、脳の複数の領域を個別に励起する。本発明のシステムの目的は、各励起領域で得られる個別の結果ではなく、特定の励起信号で各領域を励起することにより生成される出力を合成した結果である。これにより、脳或いは脳の一部の自然振動モードの励起を得る。脳或いはその一部は、非線形に結合された振動システムとして考えることができる。
【0060】
前記の電子システムは、局部的に配置されるSCMシステムを有する。これは、励起要素E1,E2....Enと前記電気生体センサS1、S2....Snとをサポートする支持部材(図示せず)により支持されている。前記支持部材は、図1では示していないが、スペイン実用新案出願1067908の図4a−4cに示したもの(参照記号C)である。これは患者Hの頭部に取り付けられる。脳の特定の領域近傍の領域内に、励起要素E1,E2...Enと一連の電気生体センサS1,S2....Snが、配置される。
【0061】
本発明の一実施例によれば、本発明のシステムは表示手段を有する。表示手段は、特定の励起信号からプログラムされた励起のリアルタイムのマップと、モニタされた脳のアクティビティのマップとを同時に示す。
【0062】
本発明のシステムは、上記したものに限定されず、本発明のシステムにより実行される励起は、頭蓋を横断するタイプで、非侵襲性の励起要素を用いて行われる。
【0063】
図1に示すように、ローカル電子システムSCMは、前記電子システムに含まれるリモート電子システムSRと無線で通信する。そのため、本発明のシステムは通信モジュールを含む。この通信モジュールは、IEEE8002.15.4仕様に従って動作する。しかし、別の通信技術又はプロトコルでも動作可能である。
【0064】
ローカル電子システムSCMは、スペイン実用新案ES1067908Uに記載されたSCMとして示すローカルシステム用に記載された機能を実行し、2つの電位の信号をコンディショニングする。
【0065】
更に、励起信号を決定し適用し、それをコンディショニング(例えばD/A変換を行う)し、この励起信号を励起要素E1,E2....Enに印加し、センサS1、S1....Snを介した被監視信号を受信し、解析し、単純化したモデルにアクセスし、ガイドし、校正する。
【0066】
前記ローカル電子システムSCMは、バッテリーを具備し、最終的な要件によっては、様々な周波数、位相、振幅を持った信号を様々な励起要素に印加する。
【0067】
要するに、ローカル電子システムSCMは、励起要素と監視センサを制御し、リモート電子システムSRと無線で通信して、携帯用の完全なデジタルシステムを構成する。
【0068】
一実施例に於いては、ローカル電子システムSCMは、メモリを有し、オンボードのデータを記憶し、ローカル電子システムSCMを自律的に機能させる。一実施例に於いては、前記リモート電子システムSRは、励起/監視のアプリケーションを実行する。これは、TCP/IPプロトコルを介して双方向にアクセス可能であり、処理ユニットPDPUにUSBコントローラを介して接続される。
【0069】
前記処理ユニットPDPUはパーソナルデータ処理ユニットPDPUであり、電子システムSCMの対応する通信モジュールと無線で双方向に通信できる通信モジュールを組み込んでいる。これは、システムSCMとリモート電子システムSRとの間のインターフェイスとして機能する。
【0070】
一実施例に於いては、ローカル電子システムSCMと処理ユニットPDPUとの間の無線通信は、低速の無線パーソナル・エリア・ネットワーク(LR−WPANs)に基づいて行われ、モニタリングは、スペイン実用新案ES1067908Uに記載した回路に基づいて行われる。
【0071】
上記したDSSS処理と、マーキング信号の同期化と、励起信号を適用する励起要素の制御と、サンプリングと、マーキング信号の分散を回復するプロセスと、マーキング信号の位相の追跡に用いられる位相ロックループPLLアルゴリズムとは、デジタル信号処理プロセスを必要とし、これはローカル電子システムSCMでリアルタイムで実行できる。このため、デジタル処理は、現場でのフィールドプログラミングゲートアレイ即ちFPGAで実施され集積されたプロセッサと共に実行され、電力必要要件を最低限に維持する。
【0072】
以上の説明は、本発明の一実施例に関するもので、この技術分野の当業者であれば、本発明の種々の変形例を考え得るが、それらはいずれも本発明の技術的範囲に包含される。特許請求の範囲の構成要素の後に記載した括弧内の番号は、図面の部品番号に対応し、発明の容易なる理解の為に付したものであり、発明を限定的に解釈するために用いてはならない。また、同一番号でも明細書と特許請求の範囲の部品名は必ずしも同一ではない。これは上記した理由による。用語「又は」に関して、例えば「A又はB」は、「Aのみ」、「Bのみ」ならず、「AとBの両方」を選択することも含む。特に記載のない限り、装置又は手段の数は、単数か複数かを問わない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
多地点で頭蓋を励起する方法において、
(A)個々の励起を、頭の複数の領域に加えるステップと、
前記(A)ステップは、特定の励起信号を、前記脳の領域近傍に配置された励起要素に加えることにより、行われ、
(B)前記脳或いはその一部の単純化モデルを構築するステップと、
(C)前記脳又はその一部を、非線形結合された振動システムと見なすステップと、
(D)前記励起信号を、それ等が前記非線形結合振動システムの自然振動モードを励起するよう、決定するステップと、
を有する
ことを特徴とする多地点で頭蓋を励起する方法。
【請求項2】
(E)前記励起信号を、空間と時間を調整して、印加するステップ
を更に有する
ことを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項3】
(F)前記励起信号の一部を同時に印加するステップと、
前記(F)ステップにより、前記脳又はその一部の自然振動モードの励起を引き起こす
を更に有する
ことを特徴とする請求項2記載の方法。
【請求項4】
前記励起すべき領域は、前記脳の大脳皮質を通って伸びる
ことを特徴とする請求項2記載の方法。
【請求項5】
(G)前記脳の活動を監視するステップと、
(H)前記励起信号を制御するステップと、
前記(H)ステップは、前記監視信号或いは被監視信号に依存して、前記励起信号を変化させることにより行う
ことを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項6】
(I)前記励起信号の位相、周波数、振幅を独立して制御するステップ、
これにより、誘導された電気信号の位相、周波数、振幅を変化させる
を更に有する
ことを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項7】
(J)前記脳の複数の領域に対応する複数の単純化したモデルを構築するステップと、
(K)前記励起信号を決定し制御するステップと、
を更に有し、
前記励起信号は、前記脳の部分の単純化したモデルに対応する非線形結合振動システムの1つの自然振動モードを選択的に励起するよう選択され、
ことを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項8】
前記頭蓋の励起は、以下から選択された励起である
(X)多地点の頭蓋横断型の磁気励起
前記励起要素は、印加される電気信号励起に応答して磁界を生成するのに適した磁気コイル又はエミッターである
(Y)頭蓋横断型の電気励起(transcranial electrical stimulation)
前記励起要素は非侵襲性である
(Z)頭蓋内の電気励起(intracranial electrical stimulation)
前記励起要素は侵襲性である
ことを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項9】
(L)個々の励起をフォーカスするステップと、
を更に有し、前記(L)ステップは、
(L1)ガイドステップと、
前記ガイドステップにおいて、前記励起要素に加えられる励起信号は、脳の領域に依存し決定され制御され、
(L2)校正ステップと、
前記校正ステップにおいて、前記励起信号の変化は、被監視信号に応じて、行われる
を有する
ことを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項10】
(M)前記被監視信号に適用される解析技術を用いるステップと、
これにより、前記励起により誘導された電気信号と、自然生体電気信号或いは前記励起の応答信号とを区別する
をさらに有する
ことを特徴とする請求項5記載の方法。
【請求項11】
前記解析技術は、周波数分離技術、時間分離技術、断層撮影技術或いはその組み合わせを含むグループから選択される技術である
ことを特徴とする請求項10記載の方法。
【請求項12】
(N)前記被監視信号に適用される拡散スペクトラム技術を用いるステップ
をさらに有し、
これにより、前記各励起要素内の励起に関連するアクティビティを特定する
を更に有する
ことを特徴とする請求項5記載の方法。
【請求項13】
(O)マーキング信号を各励起信号に関連付けるステップ
を更に有し、
これにより、前記励起信号の印加により誘導される各電気信号の位置を改善し、
前記励起により誘導される電気信号と前記励起への応答信号との区別を、前記被監視信号を解析することにより、明確にする
ことを特徴とする請求項10記載の方法。
【請求項14】
(P)特定の励起信号が加えられたことに応じて、2つの前記励起要素の間で、二極電流の計算値から前記励起信号を決定するステップと、
(R)生成された多地点電流を計算するために、重ね合わせ技術を用いるステップ
を更に有する
ことを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項15】
(S)特定の脳アクティビティを抑制するために、前記励起信号を決定するステップ
を更に有する
ことを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項16】
多地点で頭蓋を励起するシステムにおいて、
(A)脳の複数の領域に配置される励起要素(E1,E2....En)と、
(B)前記複数の励起要素に接続される電子システムと、
を有し、
前記電子システムは、前記励起要素に励起信号を印加して、前記脳の複数の領域を励起し、
前記電子システムは、脳又はその一部の単純化したモデルへのアクセスを有する処理ユニットを有し、
前記脳又はその一部は、非線形に結合された振動システムと見なされ、
前記処理ユニットは、前記非線形に結合された振動システムの自然振動モードを励起するよう、前記励起信号を決定する
ことを特徴とする多地点で頭蓋を励起するシステム。
【請求項17】
前記電子システムは、一連の電子生体センサ(S1,S2....Sn)を有し、
前記電子生体センサは、前記脳の特定の領域に配置され、前記電子システムの処理ユニットに接続されて、前記脳の活動をモニタする
ことを特徴とする請求項16記載のシステム。
【請求項18】
前記電子システムは、ローカルシステム(SCM)を有し、
前記ローカル電子システムは、前記励起要素と前記電子生体センサをサポートし、
前記ローカル電子システムは、患者の頭に取り付けられ、前記励起要素と前記電子生体センサを前記脳の特定の領域に配置する
ことを特徴とする請求項17記載のシステム。
【請求項19】
前記ローカル電子システムは、オンボードのデータ記憶装置を有する
ことを特徴とする請求項18記載のシステム。
【請求項20】
前記ローカル電子システムは、通信モジュールを有し、
前記通信モジュールは、前記電子システムが有するリモート電子システムと無線で通信する
ことを特徴とする請求項18記載のシステム。

【図1】
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【公表番号】特表2013−507146(P2013−507146A)
【公表日】平成25年3月4日(2013.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−522525(P2011−522525)
【出願日】平成21年10月13日(2009.10.13)
【国際出願番号】PCT/ES2009/000427
【国際公開番号】WO2010/018275
【国際公開日】平成22年2月18日(2010.2.18)
【出願人】(511038709)スターラボ バルセロナ,エスエル (1)
【Fターム(参考)】