説明

多孔性フィルム付きメンブレンバイオセンサー及びこれを用いた免疫反応又は酵素反応の測定方法

【課題】本発明は、多孔性フィルム付きメンブレンセンサー及びこれを用いた免疫反応又は酵素反応の測定方法に関するものであり、より詳しくは、レセプターが固定されているメンブレン上に多孔性フィルムが結合されているメンブレンセンサー及びこれを用いた免疫反応又は酵素反応の測定方法に関するものである。
【解決手段】本発明によると、多孔性フィルムの孔の大きさを調節してメンブレンバイオセンサーの感度を調節でき、これにより少量の試料だけを用いて高感度で分析対象物質を測定でき、メンブレンセンサーに様々な種類のレセプターを付けて多様な種類の分析対象物質を同時に測定できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、メンブレンセンサー及びこれを用いた免疫反応又は酵素反応の測定方法に関するものであり、より詳しくは、抗原−抗体反応を迅速に測定するメンブレンセンサー及びこれを用いた免疫反応又は酵素反応の測定方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
抗体−抗原反応を迅速に測定する方法として、LFA(lateral flow assay)システムが多く用いられる。LFAは、一般的に液体試料が毛細管現象によって流れ得るメンブレンに抗体が固定されており、メンブレンの上流層には接合体パッドと試料パッドが連結されており、メンブレンの下流層に吸収パッドが連結されている。前記接合体パッドには試料物質と選択的に結合し得る抗体が固定化された金ナノ粒子接合体が乾燥されている。前記メンブレンには、試料物質と選択的に反応する抗体及び金ナノ粒子に固定化された抗体と結合し得る物質がそれぞれ他の位置に固定化されている。前記試料物質と選択的に結合し得る、メンブレンに固定化された抗体と金ナノ粒子に固定化された抗体は、試料物質に対してサンドイッチ形態で結合されるように構成される。前記吸収パッドは、液体試料をよく吸収できる物質で構成される。このようなLFA装置に液体試料溶液をサンプルパッドに落とすと、試料が存在する場合は、試料に選択性を有する抗体−金ナノ粒子と、メンブレンに固定化された抗体がサンドイッチ形態で結合して前記抗体が固定化されたメンブレン位置に肉眼で確認できるバンドを形成するようになる。
【0003】
しかし、従来のLFA方法で測定できる感度は、抗原蛋白質約1ng/mL程度であり、より高い感度を要求する試料は測定し難いという短所がある。また、より簡便に測定するために試料の体積を減らし、測定時間をより減らす必要がある。
【0004】
メンブレン型センサーとして、現場診断用メンブレンストリップバイオセンサーシステム(特許文献1);複合センサーメンブレン(特許文献2);電気化学メンブレンストリップバイオセンサー(特許文献3);Method for Determining Concentration of Multiple Analytes in a Single Fluid Sample(特許文献4);メンブレンを有するセンサー及びその製造方法(特許文献5);Test Device for Simultaneous Measurement of Multiple Analytes in a Single Sample(特許文献6)等のように様々な形態が公開されている。しかし、前記の公開された特許では、多孔性フィルムを用いてセンサーの感度を調節することによりセンサーの感度を向上させ、多成分の物質を同時に検出し、試料の垂直注入によって試料の使用量及び分析対象物質の検出時間を減少させることができる技術の提示はなかった。
【0005】
そこで本発明者等は、従来技術で具現できなかった技術を用いて高感度のメンブレンバイオセンサーを製作するために鋭意努力した結果、レセプターが固定されているメンブレンに多孔性フィルムを結合させたメンブレンバイオセンサーを製作した後、それを用いて試料を分析すれば少量の試料だけでも早い時間内に試料分析ができるということを確認し、本発明を完成するに至った。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】韓国登録特許599420号公報
【特許文献2】日本公開特許2006−507511号公報
【特許文献3】韓国登録特許348351号公報
【特許文献4】米国登録特許7494818号公報
【特許文献5】韓国登録特許591390号公報
【特許文献6】米国公開特許2005−214161号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、様々な種類の免疫反応又は酵素反応を同時に検出できる高感度のメンブレンバイオセンサーを提供する。本発明は、前記高感度のメンブレンバイオセンサーを利用した免疫反応又は酵素反応の測定方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するために、本発明は、メンブレン上に多数の孔を有する多孔性フィルムが付いており、各孔の位置に該当するメンブレン上にレセプターが固定されていることを特徴とするメンブレンバイオセンサーを提供する。
【0009】
本発明はまた、メンブレン上に多数の孔を有する多孔性フィルムが付いており、各孔の位置に該当するメンブレン上にレセプターが固定されていて、前記多孔性フィルム上に接合体パッドが形成されていることを特徴とするメンブレンバイオセンサーを提供する。
【0010】
本発明はまた、前記メンブレンバイオセンサーを用いるが、前記メンブレンバイオセンサーに試料を垂直に注入することを含む免疫反応の測定方法を提供する。
【0011】
本発明はまた、前記メンブレンバイオセンサーを用いるが、前記メンブレンバイオセンサーに試料を垂直に注入することを含む酵素反応の測定方法を提供する。
【発明の効果】
【0012】
本発明によると、多孔性フィルムの孔の大きさを調節してメンブレンバイオセンサーの感度を調節でき、少量の試料だけを用いて高感度で分析対象物質を測定でき、メンブレンセンサーに様々な種類のレセプターを付けて様々な種類の分析対象物質を同時に測定できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明にかかるメンブレンバイオセンサーの一例である。
【図2】本発明にかかるメンブレンバイオセンサーの他の例である。
【図3】本発明にかかるメンブレンバイオセンサーに3種類の異なるレセプターを固定した後、試料を注入して分析した結果を示した写真である。
【図4】本発明にかかるメンブレンバイオセンサーを用いてCRPを検出した結果を示した写真である(Control:anti−mouse IgG固定、Test:anti−CRPポリクローナル抗体固定)。
【図5】本発明にかかるメンブレンバイオセンサーを用いてCRPの濃度及び時間による吸光度を測定した結果を示すグラフである。
【図6】比較例としてLFAバイオセンサーを用いてCRPを検出した結果を示した写真である。
【図7】本発明にかかるメンブレンバイオセンサーとLFAバイオセンサーを用いてCRPの濃度による吸光度を測定した比較結果を示すグラフである(FTH:本発明にかかるメンブレンバイオセンサー、LFA:LFAバイオセンサー)。
【図8】本発明にかかるメンブレンバイオセンサーを用いて酵素−化学発光反応によりCRPを検出した結果を示した写真である(Control:anti−mouse IgG固定、Test:anti−CRPポリクローナル抗体固定)。
【図9】本発明にかかるメンブレンバイオセンサーを用いて酵素−化学発光反応によりCRPの濃度及び時間による発光度を測定した結果を示すグラフである。
【図10】本発明にかかるメンブレンバイオセンサーを用いて酵素−化学発光反応によりD−グルコースを検出した結果を示した写真である(Control:ペルオキシダーゼのみ固定、Test:グルコースオキシダーゼ及びペルオキシダーゼ固定)。
【図11】本発明にかかるメンブレンバイオセンサーを用いて酵素−化学発光反応によりD−グルコースの濃度による発光度を測定した結果を示すグラフである。
【図12】本発明にかかるメンブレンバイオセンサーを用いて酵素−発色反応により対照血清の総コレステロールを測定した結果を示す写真である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明は、一観点において、レセプターが固定されているメンブレン上に多孔性フィルムが付いていることを特徴とするメンブレンバイオセンサーに関するものである(図1)。
【0015】
本発明は、他の観点において、レセプターが固定されているメンブレン上に多孔性フィルムが付いており、前記多孔性フィルム上に接合体パッドが形成されていることを特徴とするメンブレンバイオセンサーに関するものである(図2)。
【0016】
本発明は、メンブレンに多孔性フィルムを付けてバイオセンサーを製造することにより、前記多孔性フィルムの孔の大きさによってセンサーの感度を調節し、前記多孔性フィルムの孔の個数によって多成分の分析対象物質を測定できることを特徴とする。また、本発明にかかるメンブレンバイオセンサーは、免疫反応又は酵素反応測定時に試料を垂直に落として測定するFlow Through Hole(FTH)方式を用いるため、少量の試料で短時間内に反応を測定できる。
【0017】
本明細書で用いる用語「多孔性」は、多数の孔を有するという意味であり、「多孔性フィルム」は多数の孔が形成されているフィルムを意味する。本明細書で用いる用語「孔」は、同孔内で試料とレセプターが反応するように反応ウェル(well)の役割をする程度の大きさを有する孔を意味する。
【0018】
本発明において、前記メンブレンは、試料溶液を吸収できるメンブレンを使用でき、具体的なメンブレンの種類は当業者によって適切に選択できる。
【0019】
本発明の一具体例において、前記メンブレンは、ニトロセルロースメンブレン(nitrocellulose membrane)であることを特徴とし得る。前記ニトロセルロースメンブレンに試料、例えば、蛋白質を落とすと、蛋白質は初期に落とした位置から大きく拡散せず固定される。よって、前記ニトロセルロースメンブレン上に結合されている多孔性フィルムの孔に試料を注入すると、各孔の下のメンブレンでレセプターと試料との選択的な反応を起こして信号を測定するようにする。
【0020】
本発明において、レセプターをメンブレン上に固定化させる方法は、物理的な吸着方法及び化学的方法を共に用いることができ、具体的な固定化方法は当業者によって適切に選択できる。
【0021】
本発明において、前記多孔性フィルムの孔の大きさは、10μm〜5000μmであることを特徴とし得るが、これに制限されるのではなく、10〜4000μm、10〜3000μm、10〜2000μm、10〜1000μm、50〜5000μm、50〜4000μm、50〜3000μm、50〜2000μm、50〜1000μm、100〜5000μm、100〜4000μm、100〜3000μm、100〜2000μm、100〜1000μm、200〜5000μm、200〜4000μm、200〜3000μm、200〜2000μm又は200〜1000μmであり得る。前記多孔性フィルムの孔の大きさが小さい程試料が狭い領域でレセプターと反応してセンサーの感度は高く出るが、10μm未満の場合は孔の大きさがより小さくなると試料の流れに障害が生じ得、5000μmを超えるとセンサーの感度が著しく低くなるという問題点がある。よって、多孔性フィルムの孔の大きさを10μm〜5000μmにし、センサーの感度を調節することが好ましい。
【0022】
本発明において、前記多孔性フィルムは孔の加工が容易な材質でなり得、例えば、ポリマー、ガラス、エラストマー、シリコン等の材質からなり得るが、これに制限されるのではない。具体的に、ポリイミド、アルミニウム、ポリアクリル、ポリジメチルシロキサン(PDMS)、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリスチレン(PS)、ポリカーボネート(PC)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)等であり得るが、これに制限されるのではない。
【0023】
本発明において、前記多孔性フィルムは、フィルムの厚さが0.01〜1mmであり得、0.01〜0.8mm、0.01〜0.6mm、0.01〜0.4mm、0.01〜0.2mm、0.05〜1mm、0.05〜0.8mm、0.05〜0.6mm、0.05〜0.4mm又は0.05〜0.2mmであり得るが、これに制限されるのではない。
【0024】
本発明において、前記多孔性フィルムは、メンブレンと接触する面に接着剤が塗布されている接着フィルムであり得る。この場合、多孔性フィルムを適当な大きさに切った後、前記メンブレン上に覆い被せることにより簡単に多孔性フィルムを付けることができる。しかし、これに制限されるのではなく、多孔性フィルムとメンブレンを付ける様々な方法が当業界に公知されていて当業者によって適切に選択できる。
【0025】
本発明において、前記レセプターは分析対象物質と選択的に反応することが好ましく、具体的には、抗体、抗原、酵素、ペプチド、蛋白質、DNA、RNA、PNA(peptide nucleic acids)及びアプタマー(aptamer)で構成された群から選ばれることを特徴とし得る。
【0026】
本明細書において「選択的」という用語は、特定の二つの物質が相互特異的に結合しようとする性質を意味し、「特異的」という用語と混用し得る。
【0027】
本発明において、前記メンブレンバイオセンサーに使用される試料は、分析対象物質に選択的に結合する物質と信号発生物質の接合体をさらに含むことを特徴とし得る。
【0028】
つまり、本発明のメンブレンバイオセンサーに使用される試料は、例えば、分析対象物質が含まれたり含まれない任意の試料であり得、このような分析対象物質が含まれたり含まれない試料に分析対象物質に選択的に結合する物質と信号発生物質の接合体が混合された試料でもあり得る。前者の場合、分析対象物質に選択的に結合する物質と信号発生物質の接合体は、試料と別途に試料注入後にメンブレンバイオセンサーに注入してもよく、接合体パッド又はサンプルパッドに塗布した後、乾燥させて利用してもよい。後者の場合は、別途の接合体パッド又はサンプルパッドを用いずメンブレン及び多孔性フィルムだけで構成されたバイオセンサーに適用でき、試料内で予め分析対象物質−分析対象物質に選択的に結合する物質−信号発生物質の接合体が生成されてメンブレン上に固定されたレセプターと選択的に結合することにより、分析対象物質の検出ができる。
【0029】
前記の「分析対象物質に選択的に結合する物質」は、分析対象物質と特異的な結合反応をする物質であって、例えば、抗体、抗原、酵素、ペプチド、蛋白質、DNA、RNA、PNA(peptide nucleic acids)及びアプタマー(aptamer)で構成された群から選ばれ得る。前記の「分析対象物質に選択的に結合する物質」は、バイオセンサーのメンブレンに固定されたレセプターと同一な物質でもよく、レセプターとは相違する物質でもよい。
【0030】
本発明において、前記信号発生物質は、金属ナノ粒子、量子ドット(quantum dot)ナノ粒子、磁気ナノ粒子、酵素、酵素基質、酵素反応生成物質、吸光物質、蛍光物質又は発光物質であることを特徴とし得る。
【0031】
前記信号発生物質が金属ナノ粒子の場合は、レセプターと分析対象物質の選択的な反応による金属ナノ粒子の色変化を通じて分析対象物質を検出でき、メンブレン上でレセプターに選択的に結合された分析対象物質と金属ナノ粒子の結合体の吸光度、電気伝導度等を測定することにより分析対象物質を定量的に分析することもできる。このような金属ナノ粒子は、例えば、金ナノ粒子、銀ナノ粒子、銅ナノ粒子等であり得るが、これに制限されるのではない。
【0032】
前記信号発生物質が量子ドットナノ粒子の場合は、レセプターと分析対象物質の選択的な反応による量子ドットナノ粒子の蛍光を通じて分析対象物質を検出できる。
【0033】
前記信号発生物質が磁気ナノ粒子の場合は、レセプターと分析対象物質の選択的な反応による磁気場の変化を通じて分析対象物質を検出できる。
【0034】
前記信号発生物質が、酵素、酵素基質又は酵素反応生成物質の場合は、レセプターと分析対象物質の選択的な反応によって分析対象物質又はレセプターと前記酵素、酵素基質又は酵素反応生成物質が反応して酸化還元反応等のような酵素反応を起こすことになるが、このとき前記酵素反応による生成物の吸光、蛍光、発光等を測定することにより、分析対象物質を検出できる。このような酵素は、例えば、グルコースオキシダーゼ、グルコース脱水素酵素、アルカリホスファターゼ、ペルオキシダーゼ等であり得るが、これに制限されるのではなく、酵素基質は、例えば、グルコース、過酸化水素等であり得るが、これに制限されるのではない。
【0035】
これ以外にも、前記信号発生物質として当業界に公知の吸光物質、蛍光物質又は発光物質を使用でき、具体的な種類は当業者によって適切に選択され得る。本発明の一実施例によると、ルミノール(luminol)を使用できるが、これに制限されるのではない。
【0036】
本発明において分析対象物質が蛋白質抗原の場合、レセプターとして前記蛋白質に選択的な抗体がメンブレンに固定され、試料は前記蛋白質抗原と前記蛋白質抗原に選択的な抗体−金ナノ粒子接合体の混合物を使用することができる。前記接合体の抗体とメンブレンに固定された抗体は、それぞれ分析対象物質である蛋白質抗原と選択的に結合し、メンブレンに固定された抗体の位置でサンドイッチ形態(メンブレンに固定された抗体−蛋白質抗原−接合体の抗体−接合体の金ナノ粒子)で金ナノ粒子が結合され、前記金ナノ粒子の色変化によって分析対象物質を検出できる。このとき、多孔性フィルムの各孔毎に異なるレセプターを固定させると、各孔毎に異なる分析対象物質を検出できるため、孔の個数によって多成分の分析対象物質を測定できる。
【0037】
本発明において、前記多孔性フィルム上に接合体パッドが形成されており、前記接合体パッドには信号発生物質;又は分析対象物質に選択的に結合する物質と信号発生物質の接合体が塗布されて乾燥されていることを特徴とし得る。
【0038】
前記接合体パッドに信号発生物質が塗布されて乾燥されている場合は、例えば、前記信号発生物質が、酵素、酵素基質又は化学発光物質の場合、メンブレン上にレセプターと共に前記信号発生物質に反応する酵素基質又は酵素等を予め注入又は吸着させた後、試料を注入することにより酵素反応による信号発生物質の信号で分析対象物質を測定できる。前記接合体パッドに、分析対象物質に選択的に結合する物質と信号発生物質の接合体が塗布されて乾燥されている場合は、メンブレンセンサーに分析対象物質だけを垂直に落とすと、「レセプター−分析対象物質−接合体パッドに塗布されて乾燥されている分析対象物質に選択的に結合する物質と信号発生物質の接合体」の順序で結合されて、レセプターと分析対象物質の選択的な反応による信号発生物質の信号で分析対象物質を測定できる。
【0039】
本発明において、前記接合体パッドとしては、接合体を塗布して乾燥した後、前記接合体パッドが液体にぬれると、接合体が接合体パッドから離れ易くなる物質であれば何れも使用でき、LFAシステムで一般的に使用される接合体パッドであれば全て使用できる。
【0040】
本発明において、前記接合体パッド上にサンプルパッドが形成されていることを特徴とし得る。サンプルパッドは分析対象物質の異物質を取り除く役割をしてセンサーによるものより正確な測定を可能にする。例えば、分析対象物質が血液の場合、サンプルパッドは血液に含まれている血球又は血小板を取り除く役割をする(図2)。本発明においてサンプルパッドは、LFAシステムで使用するサンプルパッドを何れも使用できる。
【0041】
本発明において、前記サンプルパッドには、信号発生物質;又は分析対象物質に選択的に結合する物質と信号発生物質の接合体が塗布されて乾燥されていることを特徴とし得る。
【0042】
本発明において、メンブレンバイオセンサーは前記接合体パッドと多孔性フィルム間に流体の流れを良くするメンブレンを嵌めることを特徴とし得る。本発明の一実施例によると、例えば、スクリーンメッシュ(Zonyl FSN 100,SEFAR)、vividメンブレン(Pall,Vivid Plasma Separation−GR)等を使用できるが、これに制限されるのではなく、当業者によって適切に選択できる。
【0043】
本発明において、メンブレンバイオセンサーは前記メンブレンを多孔性フィルムの各孔を含む領域に区画することを特徴とし得る。つまり、多孔性フィルムの各孔の下に流れる試料の流れを相互妨害しないために一つのメンブレン領域が一つの孔を含むようにメンブレンを区画できる。このような領域の区画によって多孔性フィルムの各孔の下にあるメンブレンの領域を相互分離するようにして、各孔の下に流れる試料が相互領域を与えないようにして測定の再現性を高めることができる。
【0044】
前記メンブレンに領域を区画する方法は、当業界に公知の如何なる方法を用いても構わなく、当業者によって適切に選択できる。本発明の一実施例によると、前記メンブレンの領域を区画するためにレーザー加工機を使用できる。
【0045】
本発明は、他の観点において、前記メンブレンバイオセンサーを用いるが、前記メンブレンバイオセンサーに試料を垂直に注入する段階を含む免疫反応測定方法に関するものである。
【0046】
本発明は、また別の観点において、前記メンブレンバイオセンサーを用いるが、前記メンブレンバイオセンサーに試料を垂直に注入する段階を含む酵素反応の測定方法に関するものである。
【0047】
例えば、グルコースを測定するために、多孔性フィルム下のメンブレンにレセプターとしてグルコース酸化酵素とペルオキシダーゼを固定し、ペルオキシダーゼの発色基質(例えば、ルミノール)が塗布されて乾燥された接合体パッドを前記多孔性フィルム上に形成した後、グルコースが含まれている試料を垂直に落とすと、グルコース酸化酵素によって生成された過酸化水素水と前記発色基質がペルオキシダーゼによって発光を誘発しグルコースを測定できる。
【0048】
本発明にかかるメンブレンバイオセンサーは、前記メンブレンバイオセンサーに試料を垂直に注入することにより、少量の試料だけを利用して高感度で分析対象物質を測定できるだけでなく、早い時間内に分析対象物質を検出することができる。
【0049】
本発明において、前記メンブレンバイオセンサーは各孔毎に相違する種類のレセプターが固定されていることを特徴とし得る。試料を前記メンブレンバイオセンサーに垂直に落とすと、各孔に固定された相違する種類のレセプターにそれぞれ選択的に結合する様々な分析対象物質を同時に検出できる。
【0050】
以下、実施例を通じて本発明をより詳しく説明する。これら実施例は、単に本発明を例示するためのものであり、本発明の範囲がこれら実施例によって制限されると解釈してはならないということは当業界で通常の知識を有する者において自明である。
【実施例1】
【0051】
メンブレンバイオセンサーの製造及びこれを用いたcTnI分析
【0052】
1−1.金ナノ粒子−抗体接合体の合成
【0053】
金ナノ粒子コロイド溶液(20nm,BBInternational,GB)1mLに0.1MのBorate
buffer(pH8.5)0.1mLを入れ、1mg/mLのanti−cTnI抗体(Hytest,FIN)10μlを入れて30分間反応させた。前記反応後、1%(w/v)のBSA(Bovine serum albumin,Sigma,DE)をリン酸緩衝食塩水(PBS,Gibco,USA)に溶かした溶液0.1mLを添加して15分常温で反応させた。前記反応後、10,000rpm、4℃で20分間遠心分離して3回に亘って10mMのPBSに溶かした1mg/mLのBSA溶液1mLを入れて精製・回収し、金ナノ粒子−抗体接合体を合成した。
【0054】
1−2.メンブレンバイオセンサーの製造
【0055】
ニトロセルロースメンブレン(Millipore,180sec Nitrocellulose)を横、縦約2.5cm大の正方形に切断した。その後、0.1mm厚のポリアクリル両面テープを横、縦約1cm大の正方形に切断し、直径約0.4mm大の孔3つを開けて孔を形成し多孔性フィルムを製造した後、前記メンブレンに付けた。
【0056】
前記メンブレンに結合された多孔性フィルムの3つの孔を通じて、レセプターとしてcTnI抗体(anti−troponin Iポリクローナル抗体,Hytest,FIN)0.1mg/mL、anti−mouse IgG(Sigma,DE)0.1mg/mL及びBSA 1.0mg/mLをそれぞれ0.5μlずつ注入して乾燥した。1.0mg/mL濃度のBSAで前記多孔性フィルムが結合されたメンブレンを濡らして再度乾燥することにより、多孔性フィルムを含むメンブレンバイオセンサーを製造した。
【0057】
1−3.cTnI分析
【0058】
0、0.1、1及び10ng/mLの濃度でcTnIを溶かした仮想血漿(10mM PBS,1mg/mL HSA,10mM EDTA−2Na)15μlと、前記1−1で製造された金ナノ粒子−抗体接合体溶液10μlを混合して10分間静置し試料溶液を製造した。前記試料溶液を1−2で製造されたメンブレンバイオセンサーの多孔性フィルムに垂直に注入した。前記多孔性フィルムの孔を通じて試料溶液が注入され、3分程度過ぎたらほぼ全ての試料溶液が孔を通じて注入された。
【0059】
図3は、試料を注入し3分経過後に測定した試料注入面(イ)、試料注入反対面(ロ)及び試料注入反対面の拡大イメージ(ハ)であり、B(レセプターとしてBSAが固定された部分)、C(レセプターとしてanti−mouse IgGが固定された部分)は一定であるのに対し、T(レセプターとしてcTnI抗体ポリクローナル抗体が固定された部分)はcTnI濃度が増加することにより濃くなることが確認できた。
【0060】
これに対して、次のように吸光度分析を行った。反応完了後、イメージを得てイメージ分析プログラム(Multi gauge,Fuji Photo Film Co.,Ltd)を用いて結果値を分析した。信号分析は、反応部(Signal)と反応部周囲(back
ground)の画素明暗度(pixel intensity)の平均値を求め、二つの値の差を最終結果値として用いた。吸光度分析結果は表1の通りだった。
【0061】
【表1】

【実施例2】
【0062】
メンブレンバイオセンサーの製造及びこれを用いたC−reactive protein(CRP)濃度分析
【0063】
2−1.金ナノ粒子−抗体接合体の合成及び接合体パッドの製造
【0064】
金ナノ粒子コロイド溶液(20nm,BBInternational,GB)1mLに0.1Mのホウ酸バッファ(pH8.5)0.1mLを入れ、1mg/mLのanti−CRP抗体(Abcam)10μlを入れて30分間反応させた。前記反応後、1%(w/v)のBSA(protease free Bovine serum albumin,Fitzerald)をリン酸緩衝食塩水(PBS,Gibco,USA)に溶かした溶液0.1mLを添加して60分間4℃で反応させた。前記反応後、10,000rpm、4℃で20分間遠心分離して3回に亘り10mMのPBSに溶かした1mg/mLのBSA溶液1mLを入れて精製・回収し金ナノ粒子−抗体接合体を合成した。合成された金ナノ粒子−抗体接合体を2.5倍濃縮させた後、約7.5×3.5mmに切断された接合体パッド(fusion 5,whatman)に10uLずつ注入して乾燥した。
【0065】
2−2.メンブレンバイオセンサーの製造
【0066】
ニトロセルロースメンブレン(Millipore,240sec Nitrocellulose)を約15×15mmの大きさに切断し、レーザー加工機でメンブレンにI字形の線を引いた。0.1mm厚のポリアクリル両面接着剤テープを10×10mm大に切断し、0.5mm大の孔を左、右に2つ開けて孔を形成するようにフィルムを製造した後、前記メンブレンに付けた。この場合、接着剤の二つの孔が前記メンブレンに刻まれたI字形の左右それぞれに配置されるようにした。このようなことを行う理由は、二つの孔を通じて液体試料が流れるとき、各流れに影響を与え合わないようにするためである。前記メンブレンに結合された接着フィルムの一つの孔には、レセプターとしてanti−CRPポリクローナル抗体(Abcam)0.2mg/mLを、また別の孔にはanti−mouse IgG(Sigma)0.2mg/mLをそれぞれ5μlずつ注入し、PBSバッファに10mg/mLの濃度に溶かしたBSAを5μl、PBSバッファを10μlの順で注入し乾燥した。乾燥されたニトロセルロースメンブレンに6×3mm大に切断したスクリーンメッシュ(Zonyl FSN 100,SEFAR)、7.5×3.5mm大のvividメンブレン、2−1で製造された金ナノ粒子−抗体接合体が乾燥された接合体パッド(fusion 5,whatman)、7.5×3.5mm大のサンプルパッド(Millipore)の順でメンブレンの孔を覆うように積層してバイオセンサーを製造した。
【0067】
2−3.CRPの分析及び信号の分析
【0068】
0、0.01、0.1、1、5及び10μg/mLの濃度にCRPを溶かしたヒト血漿(CRP free serum)50μlをセンサーに注入し、反応時間の経過による吸光度を測定した。
【0069】
図4のControl領域(左側、anti−mouse IgGが固定された部分)の場合、CRP濃度と関係なく全て高い反応を示しているのに対し、Test領域(右側、anti−CRPポリクローナル抗体が固定された部分)はCRP濃度が0〜5μg/mLの範囲では濃度増加によって信号が増加することが確認できた。
【0070】
これに対して実施例1−3と同様な方法で吸光度分析をした結果、表2のようになった。
【0071】
【表2】

【0072】
図5において、測定時間の経過により信号の大きさは増加するが、反応初期の3分が経過した後は反応が終了し、約10分経過後にもその最終完了した反応吸光度がほぼ変化しないことが観察された。これは、反応開始後約3分以内の早い時間に測定結果を導出でき、反応終了後にも一定時間最終完了した反応信号が維持されるという事実を表している。
【0073】
さらに、図6のように一般的なLFAセンサーの測定領域に比べて本発明のセンサーの方がより広い測定可能範囲を有するということがわかる。このような結果は、本発明のセンサーが有する特性により早い時間に安定した測定結果を得ることができ、既存のセンサーと比較してより広い測定範囲を有するという長所がある。
【0074】
比較例1:LFAバイオセンサーの製造及びこれを用いたC−reactive protein(CRP)濃度分析
【0075】
1−1.金ナノ粒子−抗体接合体の合成及び接合体パッドの製造
【0076】
前述の実施例2の2−2と同様な方法で金ナノ粒子−抗体接合体の合成及び接合体パッドを製造した。
【0077】
1−2.LFAバイオセンサーの製造
【0078】
ニトロセルロースメンブレン(Millipore,180sec Nitrocellulose)を25mm×300mmに切断した後、接着性のある300mm×60mmのプラスチックカード(Millipore)に付けた。ディスペンサー(zeta co.)を用いてニトロセルロースメンブレン内にcontrolラインに1mg/ml anti−mouse IgG(sigma)、ベッドスピード7.0cm/秒、ポンプスピード0.8ul/cm、体積50ulを塗布し、testラインには1mg/ml anti−CRPポリクローナル抗体(abcam)、ベッドスピード7.0cm/秒、ポンプスピード0.8ul/cm、体積50ulを塗布した。ニトロセルロースメンブレン上側方向には0.2mm程度重なるように吸収パッド(Millipore)をプラスチックカードに付けた後、3.5mm×60mmに切断した。切断された構造体のニトロセルロースメンブレン下側方向に3.8mm×60mm大のインターパッド(MF1,whatman)、金ナノ粒子−抗体接合体が乾燥された接合体パッド(fusion 5,whatman)、サンプルパッド(Millipore)の順でそれぞれ0.2mm程度重なるようにプラスチックカードに付けた。この完成した構造体をLFAケース(インフォピア)に挿入してLFAバイオセンサーを製造した。
【0079】
1−3.CRP分析及び信号分析
【0080】
前述の実施例2の2−3と同様な方法でCRP信号を分析した。
図6は、LFAバイオセンサーを用いたCRP分析の結果、CRP濃度が0.1〜10μg/mLの範囲でCRPが検出されたことを示している。これに対して、実施例1−3と同様の方法で吸光度分析をした結果は、下記の表3に示した通りである。
【0081】
【表3】

【0082】
図7に示したように、LFAセンサーはCRP濃度が0.1〜10μg/mLの場合に吸光度の違いが濃度に比例して表れないのに対し、本発明にかかるメンブレンセンサーはCRP濃度が0〜5μg/mLの場合に濃度の増加によって吸光度も一緒に増加するため、LFAセンサーに比べて本発明のセンサーが分析対象物質の濃度に対してより広い測定可能範囲を有し、よって、分析対象物質をより正確に優れた感度で定量的に測定できるということが分かる。従って、本発明のセンサーは早い時間に安定した測定結果を得ることができるだけでなく、既存のLFAセンサーに比べて検出範囲が広く、感度が高いため正確な定量分析ができるという長所がある。
【実施例3】
【0083】
メンブレンバイオセンサーの製造及び酵素−化学発光(Enzymatic Chmemiluminescence)を用いたC−Reactive Protein(CRP)濃度分析
【0084】
3−1.バイオセンサーの製造
【0085】
D−グルコース(Duchefa Biochemie)とルミノール(Sigma)をそれぞれ50mMになるように0.1Mカーボネートバッファ(pH9.0)に溶かした後、7.5×3.5mmに切断したサンプルパッド(Milipore)に20μlずつ注入して乾燥した。anti−CRP抗体−ペルオキシダーゼ複合体(Abcam)をPBSバッファに20μg/mLの濃度に溶かした後、約7.5×3.5mmの大きさに切断したVividメンブレン(Pall,Vivid Plasma Separation−GR)に約7μlを注入して乾燥した。
【0086】
ニトロセルロースメンブレン(Millipore,240sec Nitrocellulose)を約15×15mmの大きさに切断し、レーザー加工機でメンブレンにI字形の線を引いた。0.1mm厚のポリアクリル両面接着剤テープを10×10mm大に切断し、0.5mm大の孔を左・右に2つ開けて孔を形成するようにフィルムを製造した後、前記メンブレンに付けた。この場合、接着剤の二つの孔が前記メンブレンに刻まれたI字形の左右それぞれに配置されるようにした。前記メンブレンに結合されたフィルムの2つの孔を通じて一方の孔にはレセプターとしてanti−CRPポリクローナル抗体(Abcam)0.5mg/mLと250U/mLのグルコースオキシダーゼ(Sigma)混合液を、他方の孔には0.5mg/mL、anti−mouse IgG(Sigma,DE)と250U/mLのグルコースオキシダーゼ混合液を1μlずつ注入し、PBSバッファに10mg/mLの濃度に溶かしたBSAを5μl、PBSバッファを10μlの順に注入して乾燥した。乾燥されたニトロセルロースメンブレンに6×3mm大に切断したスクリーンメッシュ(Zonyl FSN 100,SEFAR)、前記の製造されたanti−CRP抗体−ペルオキシダーゼ複合体が乾燥されたvividメンブレン、前記の製造されたD−グルコース、ルミノールが乾燥されたサンプルパッドの順でメンブレンの孔を覆うように積層してバイオセンサーを製造した。
【0087】
3−2.発光反応を用いたCRP信号分析
【0088】
0、0.01、0.1、1、5及び10μg/mLの濃度にCRPを溶かしたPBSバッファを50μlをセンサーに垂直に注入し、発光測定器(LAS−3000,FUJI PHOTO FILM CO.,LTD)を用いて時間経過による発光信号を測定した。
【0089】
図8のControl領域(左側,anti−mouse IgGとグルコースオキシダーゼが固定された部分)の場合、CRP濃度と関係なく全て高い反応を示しているのに対し、Test領域(右側,anti−CRPポリクローナル抗体とグルコースオキシダーゼが固定された部分)の場合、CRP濃度が0〜1μg/mLの範囲では濃度の増加によって発光信号が増加することが確認できた。
【0090】
これに対して発光度を分析し、その結果を図9及び下記表4に示した。測定時間の経過によって信号の大きさは増加するが、信号傾向性自体は3分と15分にほぼ同一なことが分かり、よって試料注入後、約5分以内に測定結果を確認できると判断できる。
【0091】
【表4】

【実施例4】
【0092】
メンブレンバイオセンサーの製造及び酵素−化学発光(Enzymatic Chmemiluminescence)を用いたヒト血清におけるD−グルコース濃度分析
【0093】
4−1.バイオセンサーの製造
【0094】
ルミノール(Sigma)をそれぞれ50mMになるように0.1M Carbonateバッファ(pH9.0)に溶かした後、7.5×3.5mmに切断されたサンプルパッド(Milipore)に20μLずつ注入して乾燥した。
【0095】
ニトロセルロースメンブレン(Millipore,240sec Nitrocellulose)を約15×15mmの大きさに切断し、レーザー加工機でメンブレンにI字形の線を引いた。0.1mm厚の両面接着剤テープを10×10mm大に切断し、0.5mm大の孔を左・右に2つ開けて孔を形成するようにフィルムを製造した後、前記メンブレンに付けた。この場合、接着剤の二つの孔が前記メンブレンに刻まれたI字形の左右それぞれに配置されるようにした。前記メンブレンに結合されたフィルムの2つの孔を通じて一方の孔にはグルコース分解酵素として250U/mLのグルコースオキシダーゼ(Sigma)と250U/mLのペルオキシダーゼ(Toyobo)混合液を、他方の孔には250U/mLのペルオキシダーゼ溶液を1μLずつ注入して乾燥した。乾燥されたニトロセルロースメンブレンに6×3mm大に切断されたスクリーンメッシュ(Zonyl FSN 100,SEFAR)、約7.5×3.5mmの大きさに切断されたVividメンブレン(Pall,Vivid Plasma Separation−GR)、前記の製造されたルミノールが乾燥されたサンプルパッドの順でメンブレンの孔を覆うように積層してバイオセンサーを製造した。
【0096】
4−2.発光反応を用いたD−グルコース信号分析
【0097】
0、0.04、0.2、1、5及び30mMの濃度にD−グルコースを溶かした正常ヒト血清(NHS)(Fitzgerald)50μLをセンサーに垂直に注入し、発光測定器(LAS−3000,FUJI PHOTO FILM CO., LTD)を用いて測定試料注入後、1分後にD−グルコースの発光信号を測定した。
【0098】
図10のControl領域(左側,ペルオキシダーゼだけ固定された部分)の場合、D−グルコース濃度と関係なく全ての反応が表れないのに対し、Test領域(右側、グルコースオキシダーゼとペルオキシダーゼが固定された部分)の場合、D−グルコース濃度測定範囲(0〜30mM)で濃度増加によって発光信号が増加することが確認できた。図11は、D−グルコース濃度増加による発光信号の増加を表すグラフである。
【実施例5】
【0099】
メンブレンバイオセンサーの製造及び酵素−発色反応(Enzymatic Color reaction)を用いた対照血清のレベル1,レベル2の総コレステロール(Total cholesterol)反応の比較
【0100】
5−1.バイオセンサーの製造
【0101】
ニトロセルロースメンブレン(Millipore,240sec Nitrocellulose)を約15×15mmの大きさに切断し、レーザー加工機でメンブレンに直径が2mmになるように正三角形配列で3つの円を描いた。レーザー加工が完了したニトロセルロースメンブレンに、総コレステロールを測定するための反応溶液を製造してそれぞれの円に2μLずつ注入して乾燥した。
【0102】
総コレステロール測定のために使用された反応溶液の組成及び含量は下記表5の通りである。
【0103】
【表5】

【0104】
乾燥されたメンブレンの上に、0.1mm厚の両面接着剤テープを10×10mm大に切断し、1mm大の孔をそれぞれの円の中央に位置するように3つ開けて孔を形成するようにフィルムを製造した後、前記メンブレンに付け、5×5mm大に切断されたサンプルパッド(Milipore)を積層して製造した。
【0105】
5−2.対照血清レベル1、レベル2を用いた酵素発色反応の確認
【0106】
製造されたバイオセンサーに50μLのLipids control human serum レベル1とレベル2(LiquichekTM,BIO−RAD)をそれぞれ注入してレベル1とレベル2の発色の程度を比較した。使用されたレベル1とレベル2のControl serumは精度管理用血清であり、レベル1は正常範囲、レベル2は非正常範囲の高濃度コレステロールを含む。
【0107】
図12のように、発色反応を通じてレベル1、レベル2の発色反応程度の差を確認した。総コレステロール濃度がより高いレベル2試料の色がより濃いことを確認した。
【0108】
以上にて、本発明の内容の特定部分を詳しく記述したが、当業界の通常の知識を有する者において、このような具体的な技術は単に好ましい実施様態であるだけで、これによって本発明の範囲が制限されるのではない点は明らかである。よって、本発明の実質的な範囲は添付の請求項とそれらの等価物によって定義されると言える。
【符号の説明】
【0109】
1:メンブレン、11:多孔性フィルム、21,31:レセプター、41:試料、51:接合体パッド、61:サンプルパッド、T:レセプターとしてcTnI抗体が固定された部分、C:レセプターとしてanti−mouse IgGが固定された部分、B:レセプターとしてBSAが固定された部分

【特許請求の範囲】
【請求項1】
メンブレン上に多数の孔を有する多孔性フィルムが付いており、各孔の位置に該当するメンブレン上にレセプターが固定されていることを特徴とするメンブレンバイオセンサー。
【請求項2】
前記多孔性フィルム上に接合体パッドがさらに形成されていることを特徴とする請求項1に記載のメンブレンバイオセンサー。
【請求項3】
前記レセプターは、抗体、抗原、酵素、ペプチド、蛋白質、DNA、RNA、PNA及びアプタマーで構成された群から選ばれることを特徴とする請求項1又は2に記載のメンブレンバイオセンサー。
【請求項4】
前記多孔性フィルムの孔の大きさは、10〜5000μmであることを特徴とする請求項1又は2に記載のメンブレンバイオセンサー。
【請求項5】
前記メンブレンは、ニトロセルロースメンブレン(nitrocellulose membrane)であることを特徴とする請求項1又は2に記載のメンブレンバイオセンサー。
【請求項6】
前記メンブレンバイオセンサーに用いられる試料は、分析対象物質に選択的に結合する物質と、信号発生物質の接合体をさらに含むことを特徴とする請求項1又は2に記載のメンブレンバイオセンサー。
【請求項7】
前記信号発生物質は、金属ナノ粒子、量子ドットナノ粒子、磁気ナノ粒子、酵素、酵素基質、酵素反応生成物質、吸光物質、蛍光物質又は発光物質であることを特徴とする請求項6に記載のメンブレンバイオセンサー。
【請求項8】
前記接合体パッドには、信号発生物質;又は分析対象物質に選択的に結合する物質と信号発生物質の接合体が塗布されていることを特徴とする請求項2に記載のメンブレンバイオセンサー。
【請求項9】
前記接合体パッド上にサンプルパッドが形成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載のメンブレンバイオセンサー。
【請求項10】
前記接合体パッドと多孔性フィルム間に流体の流れを良くするメンブレンを嵌めることを特徴とする請求項1又は2に記載のメンブレンバイオセンサー。
【請求項11】
前記メンブレンを多孔性フィルムの各孔を含む領域に区画することを特徴とする請求項1又は2に記載のメンブレンバイオセンサー。
【請求項12】
請求項1又は2に記載のメンブレンバイオセンサーを用いるが、前記メンブレンバイオセンサーに試料を垂直に注入することを含む免疫反応測定方法。
【請求項13】
前記メンブレンバイオセンサーの各孔毎に相違する種類のレセプターが固定されていることを特徴とする請求項12に記載の測定方法。
【請求項14】
請求項1又は2に記載のメンブレンバイオセンサーを用いるが、前記メンブレンバイオセンサーに試料を垂直に注入することを含む酵素反応の測定方法。
【請求項15】
前記メンブレンバイオセンサーの各孔毎に相違する種類のレセプターが固定されていることを特徴とする請求項14に記載の測定方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公表番号】特表2013−512429(P2013−512429A)
【公表日】平成25年4月11日(2013.4.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−541017(P2012−541017)
【出願日】平成22年11月24日(2010.11.24)
【国際出願番号】PCT/KR2010/008363
【国際公開番号】WO2011/065751
【国際公開日】平成23年6月3日(2011.6.3)
【出願人】(509328113)インフォピア カンパニー,リミテッド (8)
【氏名又は名称原語表記】INFOPIA CO.,LTD.
【住所又は居所原語表記】891,Hogye−dong,Dongan−gu,Anyang−si,Gyeonggi−do,431−080 Republic of Korea
【出願人】(501245997)コリア リサーチ インスティテュート オブ バイオサイエンス アンド バイオテクノロジー (15)