説明

多孔性担体および少なくとも一つのピロリンドンより成る骨移植材料、その製造方法ならびにインプラント

骨移植材料、その製造方法およびインプラント。骨移植材料はセラミックまたはガラスセラミックもしくはガラス材料の多孔性担体、および担体中に仕込まれた少なくとも一つのピロリドンを含んでいる。


【発明の詳細な説明】
【発明の分野】
【0001】
本発明は、セラミックまたはガラスセラミックもしくはガラス材料の多孔性担体より成る骨移植材料に関するものである。
【0002】
本発明はさらに、骨移植材料を製造する方法に関するものである。
【0003】
本発明はさらに、多孔性セラミックまたはガラスセラミックもしくはガラス材料より成るインプラントに関するものである。
【発明の背景】
【0004】
外科および整形外科処置において、骨折または骨腫瘍の外科的除去の結果として生じる骨の欠損または空洞部分の充填のために、人工器官手術がしばしば必要とされる。また歯科外科の分野において、上顎または下顎中の歯槽膿漏によって失われた空洞部位の充填のために、同様の歯科手術がしばしば必要とされる。骨の欠損または空洞部分を満たし、それによって骨組織の再生を促進するために、ドナーの部位から、例えば患者の腸骨稜から骨を得ることが一般に行われてきた。しかしながら、そのような手術を行うためには、正常で損傷していない骨組織を損傷のない部分から取り出さねばならない。この手術は患者に更なる苦痛を生み、加えて非常に手間のかかる技法である。さらに、患者の骨の欠損または空洞の体積が大きい場合は、患者自身の身体から取られる骨の量は、必ずしもその欠損または空洞を十分に満たすのに適しているとはかぎらない。そのような場合には、患者自身の骨組織の代替物を用いることが必須となる。
【0005】
同じ種類の骨組織を代替物として用いたとしても、移植された代替物は異物拒否反応に基づいて生体組織によって(免疫系によって)拒絶されるであろう。これらの理由のために、欠損の術後回復は必ずしも満足のいくものではない。したがって、そのような手術は実用で十分満足のいくものとしてはまだ認められていない。
【0006】
近年、損傷を修復するために人体中に導入するための、生体材料と呼ばれる人口材料について集中的な研究が行われてきた。種々の金属合金および有機材料が、生体中の硬組織のための代替物として用いられてきた。しかしながら、これらの材料は生体組織の環境中で溶解、さもなければ劣化する傾向があり、またこれらの材料は生体に対して毒性があり、またいわゆる異物拒絶反応を起こすことが認められている。生体との優れた適合性および前述の困難が概して無いという理由でセラミック材料が用いられてきた。人工骨および歯が、生体との適合性に優れたセラミック材料、とくにアルミナ、炭素またはリン酸三カルシウム、またはヒドロキシアパタイトの焼結塊または単純結晶より開発されてきている。これらの実施形態は一般の注意をかなり引き付けた。しかしながら、従来のセラミック材料は、骨形成作用または骨充填過程が比較的低いという欠点を持っている。
【0007】
もし空の空間が、新しく形成された骨の足場として働く多孔性材料によって満たされているならば、この骨充填過程は骨伝導の原則によって促進できる[Reddi, H.,Cytokine & Growth Factor Reviews 8 (1997) 11 - 20]。あるいは、間葉幹細胞を骨芽細胞に分化することができる、適切な成長因子の適用を含む骨誘導によって、骨修復を加速することができる[Wozney, J. M. and Rosen, V., Clin Orthop Rel Res 346 (1998) 26 - 37]。
【0008】
骨誘導で最も有用な成長因子は、分化因子であり骨形成を誘導する能力に基づいて分離された骨形成蛋白質(BMP類)である[Wozney, J. M., et al., Science 242 (1988) 1528 - 1534]。それらはTGF-β-スーパーファミリに属する30以上のメンバを持つBMPファミリを形成する。BMPファミリは、BMP-2およびBMP-4などのBMP類、OP-1またはBMP-7、OP-2またはBMP-8、BMP-5、BMP-6またはVgr-1などのオステオジェニック蛋白質(OP類)、CDMP-1またはBMP-14またはGDF-5などの軟骨由来骨形成蛋白質(CDMP類)、GDF-1、GDF-3、GDF-8、GDF-9、GDF-11またはBMP-11、GDF-12およびGDF-14などの成長/分化因子(GDF類)を含むサブファミリ、およびBMP-3またはオステオジェニン、BMP-9またはGDF-2およびBMP-10などの他のサブファミリに分けられる(Reddi et al., 1997, 上記)。
【0009】
とくに動物モデルにおいては、BMP類は骨形成および修復の強力な誘導剤であることがわかっている。しかしながら、BMP類は生体液に接触すると速やかに分解すること、およびBMP類の強力な骨形成作用のために、BMP類の非生理学的な高用量が骨誘導の生物活性作用のために必要とされる[Weber, F. E., et al., Int J Oral Maxillofac Surg 31 (2002) 60 - 65;Rose, F. R. A. and Oreffo, R. O. C. Biochem Biophys Res Com 292 (2002) 1 - 7]。担体系の選択が決定的であり、また適切な担体系が今のところ手に入らない局所投与経路を用いなければならない。BMP類は通常遺伝子組み換え技術によって製造され、それ故、高価で限られた量でしか入手できないため、その認められた作用にもかかわらず、BMP類は患者の医学的治療に大きな影響を与えていないし、現在臨床的には適用されていない。
【発明の簡単な説明】
【0010】
本発明の目的は、上記の欠点を軽減するような新しい骨移植材料、インプラント、および骨移植材料の製造方法を提供することである。
【0011】
本発明のその目的は、独立請求項に記載の事項を特徴とする骨移植材料、および骨移植材料およびインプラントの製造方法によって達成される。本発明の好ましい実施形態は従属請求項に開示されている。
【0012】
本発明の骨移植材料は、セラミックまたはガラスセラミックもしくはガラス材料の多孔性担体、および担体の中に仕込まれた少なくとも一つのピロリドンを含むという考えに基づいている。
【0013】
骨移植材料を製造する本発明の方法は、セラミックまたはガラスセラミックもしくはガラス材料の多孔性担体を作り、多孔性担体に少なくとも一つのピロリドンを添加する段階を含むという考えに基づいている。
【0014】
本発明のインプラントは、多孔性セラミックまたはガラスセラミックもしくはガラス材料の担体、および担体中に仕込まれた少なくとも一つのピロリドンを含むという考えに基づいている。
【0015】
本発明の利点は、ピロリドンの投与が新しい骨または軟骨組織の形成を促進し加速することである。
【0016】
本発明の一つの実施形態においては、骨移植材料は少なくとも一つの骨形成蛋白質(BMP)を含んでいる、この実施形態の利点はピロリドンと併用してBMP類を投与することが、相乗的に骨形成を促進することである。このことは望ましい効果のために必要な材料の量をより少なくするという点において利点を持っていて、このことはとくにrBMP類の手間のかかる製造を考えると非常に重要なことである。
【0017】
本発明の骨移植材料の別の実施形態においては、多孔性担体はヒドロキシアパタイト(HA)、β-リン酸三カルシウム(β-TCP)およびブラッシュ石などのリン酸カルシウムセラミック(CPC類)から出来ている。
【0018】
本発明の骨移植材料の別の実施形態においては、多孔性の足場を生物活性ガラス繊維を焼結することにより製造し、ガラス表面にCaPおよびSiに富む層の担体を形成するために、それをさらに模擬体液中に浸す。材料を骨欠損中に移植する前に、ピロリドンを前記Ca-S層に適用する。
【0019】
骨移植材料を製造する本発明の方法の一つの実施形態においては、牛起源の無機質骨マトリックスを移植する前にピロリドンで重層する。
【0020】
本発明のインプラントの一つの実施形態においては、インプラントの材料は押出、射出成型または他の製造方法によって作られるバイオポリマとバイオセラミックの合成物で、該合成物を製造する前に、多孔性バイオセラミックをピロリドンで重層する。
【0021】
本発明の一つの実施形態においては、その表面上に多孔性バイオセラミックのコーティングを持つ金属股関節インプラントを移植前にピロリドンで重層する。
【0022】
次に、本発明を好ましい実施形態を用い、添付図面を参照にしてより詳細に説明する。
【発明の詳細な説明】
【0023】
図1(110 x 倍率)および図2(850 x 倍率)は、ガラス表面の上部に多孔性のCaP/Si層を作成するために、生物活性ガラス繊維を焼結し、さらにその足場を模擬体液中(SBF)に浸すことにより作成した多孔性足場の構造を示している。生物活性ガラスは組成物Aで作成された(表1参照)。
【0024】
ここで、バイオセラミックは、生体材料として用いられ、移植時に可溶性の少ない無機物に変形するセラミック、ガラスまたはガラスセラミックであることに注目すべきである。
【0025】
生物活性材料は骨または軟骨などの生体組織に結合できる材料である。
【0026】
担体はポリピロリドンを吸収できる多孔性構造である。
【0027】
足場は担体のための基材または基質として働く多孔性または非多孔性構造である。
【実施例1】
【0028】
Pt-Auるつぼ中で約1360℃で2〜3時間原材料を融解することによって、表1に示す組成物を持つ生物活性ガラスの2個のバッチを最初に形成した。
【表1】

【0029】
生物活性ガラスの両方のバッチから、その後融解紡糸により約75 μmの直径を持つ繊維を形成した。その繊維をさらに約3 mmの長さの切片に切断した。得られた繊維切片から、オープンネットワークにより3次元の足場を作成した。最初に繊維切片を鋳型の中にいれ、その後温度を上昇させてその繊維を焼結することにより成型を行った。
【0030】
その後、足場の表面にSiに富む層およびリン酸カルシウム(CaP)の沈殿を形成させるために、得られた足場を模擬体液中に1週間浸した。その後、担体層としてCaP表面を含む足場に水を吹きかけ、最初に空気中で約24時間乾燥し、その後真空炉中で約24時間乾燥した。足場の質量を天秤で測った。その後、足場を10 dm3の全容量を持ち、チャンバの底に1dm3の1-メチル-2-ピロリドン(NMP)を含むチャンバ中に入れた。NMP液の上に溜まった金属残渣の上に足場を置いた。チャンバをしっかりと閉じ、チャンバの内側でNMPが気化するように真空ポンプでチャンバより空気抜いた。材料に吸収されたNMPの量を調べるために、チャンバ中での保存の1,3,5および7日後にその材料の質量を測定した。材料へのNMPの取り込みを表2に示す。
【表2】

【0031】
7日以内に、組成物“A”を持つ構造の中に吸収されたNMPの量は、構造物の全重量の約1.7重量パーセントに達し、組成物“B”を持つ構造の中に吸収されたNMPの量は、構造物の全重量の約6重量パーセントに達する。
【0032】
ピロリドンは気化チャンバの圧力を下げることによっても気化するが、気化チャンバの温度と十分に高く上げることによっても気化できる。
【0033】
本発明で有用である適切な多孔性担体は、一つ以上のピロリドン類の十分な量を吸収できるバイオセラミック類を含んでいる。好ましくは、多孔性担体は高い表面エネルギー、および大きい特徴的な表面積を持っている。多孔性担体は、例えばリン酸カルシウム類、ヒドロキシアパタイト類、シリカゲル類、ゾル・ゲルガラス、無機質骨マトリックス類、キセロゲル類、ヒドロキシアパタイト/ポリエチレン合成物類、リン酸三カルシウム/ポリ乳酸、CaP/ポリウレタン、バイオガラス/ポリ乳酸などのセラミック・ポリマ合成物類または、多孔性バイオセラミック相を含む他のバイオポリマ合成物などでよい。
【0034】
足場は粉砕した形または球形顆粒の生物活性ガラスでもよい。この種の生物活性ガラスは、例えば米国特許第6,054,400号に開示されている。
【0035】
本発明で有用な多孔性担体を得る別の方法は、ゾル・ゲル法を用いることである。すべての目的でここに参照して全体を取り込む、米国特許第5,861,176号、第5,871,777号および第5,874,109号に記載されているように、ピロリドンはすでに生産段階にあるセラミックゾル・ゲル由来の材料の中に導入することができる。
【0036】
“Effect of aging time of sol on structure and in vitro calcium phosphate formation of sol-gel-derived titania films”, Peltola et al., J Biomed Mater Res. 2000 Aug; 51 (2): 200 – 208に記載されているように、もう一つの方法は浸漬法により生物医学インプラント上に、多孔性セラミックコーティングを作成することである。インプラント中のゾル・ゲルコーティングはさらにピロリドンまたはピロリドン類によって重層することができる。
【0037】
すべての目的でここに参照して全体を取り込む米国特許第6,632,412号に記載されているように、本発明で有用な多孔性担体を得る別の方法は、ゾル・ゲル法で製造された多孔性生物活性繊維を用いることである。これらの多孔性繊維をさらにピロリドンまたはピロリドン類によって、例えば、実施例1で記載されているような真空チャンバを用いて重層することができる。
【0038】
足場はまた、担体としてヒドロキシアパタイトなどの合成リン酸塩の表面層を持つ炭酸カルシウムを含むことができる。そのような構造は、例えばすべての目的でここに参照して全体を取り込む米国特許第4,976,736号に開示されている。
【0039】
別の可能な足場または担体材料はキセロゲルガラスである。例えば、Santos et al.は骨形成蛋白質(BMP)のための担体としてキセロゲルガラスを記載している。担体は数週間かけて機能的な骨成長因子を持続的な様式で放出する[J. Biomed. Mater. Res. (1998) Jul; 41 (1): 87 - 94]。
【0040】
米国特許第5,861,176号は、生物学的に活性のある分子を制御放出するために提供されたシリカをベースとするガラスを含む担体を開示している。生物学的に活性のある分子は、製造している間にガラスのマトリックス中に取り込まれる。担体はゾル・ゲル由来の工程を用いて作成される。すべての目的でここに参照して全体を取り込む米国特許第5,861,176号に記載されているものに類似した方法を用いて、ピロリドンを多孔性ゾル・ゲル材料の中に取り込むことができる。
【0041】
本発明による骨移植材料は足場構造のない担体として、実施することができる。例えば、ピロリドンを重層したCaPより成る骨移植材料で実施することができる。また、ヒドロキシアパタイト類、シリカゲル類、ゾル・ゲルガラス、無機質骨マトリックス類、キセロゲル類、ヒドロキシアパタイト/ポリエチレン合成物類などのセラミック・ポリマ合成物類、リン酸三カルシウム/ポリ乳酸、CaP/ポリウレタン、バイオガラス/ポリ乳酸、または多孔性バイオセラミック相を含む他のバイオポリマ合成物は、足場構造なして実施することができる。
【0042】
本発明で有用なピロリドン類は、組織障害作用または毒性作用を持たずに、可塑性または可溶性作用を持たせるための、当該化学技術で知られているいずれのピロリドンをも含んでいる。そのようなピロリドン類は、例えば、1-メチル-2-ピロリドン(NMP)、1-エチル-2-ピロリドン(NEP)、2-ピロリドン(PB)および1-シクロシキシル-2-ピロリドン(CP)などのアルキルまたはシクロアルキル置換ピロリドン類を含んでいて、NMPおよびNEPは好ましい例である。加えて、ポリビニルピロリドン類などのピロリドンをベースとするポリマ類はまた、本発明の材料として有用である。好ましくは、ピロリドンは化学結合、例えばイオン結合または静電結合によって、担体に結合している。
【0043】
驚くべきことに、ピロリドンのセラミック骨移植材料との併用投与はより速い骨形成過程を生じ得ることが発見された。
【実施例2】
【0044】
多孔性生物活性ガラス足場“A”または“B”(組成物は実施例1と同じである)を含み、そのガラス表面の上にCaP層を持つ6片の骨移植材料を、実施例1に記載したように製造した。すべてのサンプルをトップバランスで秤量し、その後そのサンプルを高圧チャンバ(全体容量0.37 dl)中に2mlのNMPと共に入れた。サンプルは金属サンプルホルダの上に置いた。高圧チャンバを閉じ、そのチャンバを最初に室温でCO2ガスで満たした。その後、チャンバの内側の圧力が120 barまで上昇するように、チャンバを60℃の温度まで加熱した。これらの条件を24時間維持し、正常な空気圧に達するように15分以内で圧力をゆっくり下げた。その後サンプルの重量を測定した。
【表3】

【実施例3】
【0045】
種々のバイオセラミックおよび一つのバイオセラミック合成物を入手した、すなわち、
1)合成リン酸カルシウム(CaP)、CaP粉末を焼結して製造した三次元足場。
2)Bio-Oss(登録商標)、牛起源の無機質骨マトリックス、および
3)4μmの粒子サイズのヒドロキシアパタイト(HA)粉末。
【0046】
サンプルを真空中で乾燥し、さらに実施例1に記載したように、1-メチル-2-ピロリドン(NMP)を含むチャンバの中に入れた。チャンバ中にサンプルを置く前およびチャンバ中に置いた5および7日後に、サンプルの質量をモニタした。吸収されたNMPの量を重量%として表4に示した。
【表4】

【0047】
表4はNMPの吸収はバイオセラミック材料の組成および構造に依存してかなり変化することを示している。Bio-Ossによって最も高い量のNMPが吸収され、それは約40重量%であった。焼結したCaP足場は約1重量%のNMPを吸収し、粒子状HAは0.2重量%のNMPを吸収した。
【0048】
本発明のある側面から見ると、本発明の骨移植材料は、多孔性ピロリドン重層担体の全重量の約0.1から約50重量%の間の量で、さらに好ましくは約1から約20重量%の間の量でピロリドンを含んでいる。
【0049】
担体はセラミック部分およびポリマ部分より成る合成物の材料である。例えばすべての目的でここに参照して全体を取り込む米国特許第5,468,544号および第6,328,990号に可能性のある適切な担体が記載されている。米国特許第5,468,544号は骨生物活性ガラスおよびセラミック繊維を用いる合成物の材料を開示している。さらに詳しくは、該特許は構造繊維と共にポリママトリックス中に生物活性材料を取り込む、合成物の構造を開示している。用いられたポリママトリックスは非生体吸収性ポリママトリックス、例えばポリスルホン(PSU)、ポリエーテル・エーテル・ケトン(PEEK)、またはポリエーテル・ケトン・ケトン(PEKK)であり、構造繊維は炭素繊維である。米国特許第6,328,990号は、合成物が修飾した生物活性ガラス粉末とポリ(乳酸-co-グリコール酸)ポリママトリックスとを混ぜることによって作られた、生物活性、生分解性合成物材料を開示している。
【0050】
担体はまた粉砕した多孔性焼結ガラス繊維マトリックスの互いに結合した粒子の多孔性物体で成り立っていてもよい。例えば、国際公開公報第WO86/04088号は、酵素および微生物などの活性材料を固定化するためのそのような担体を開示している。好ましくは、ポリアクリレート、ポリビニルアセテートおよびポリビニルアセタールなどの炭化有機結合剤はお互いの接触点で粒子を一つにして保持している。
【0051】
なお別の適切な担体は、ポリ(ラクチド-co-グリコール酸)および脱塩骨マトリックスで出来た合成物インプラントでもよい[Gombotz et al., J. App. Biomat., (1994) 5: 141 – 150]。
【実施例4】
【0052】
多孔性生物活性ガラス足場“A”および“B”(組成物は実施例1と同じである)を含み、そのガラス表面の上にCaP層を持つ6片の骨移植材料を、実施例1に記載したように製造した。すべてのサンプルをトップバランスで重量を測った。その後、グループ1のサンプルを個別にアルミニウムのポーチに入れた。NMPが骨移植材料の中に吸収されるように、各ポーチの中にさらに5滴のNMPを加えた。NMPを加えた後、ポーチまたはシールを通して液体またはガスが拡散しないように、ポーチをヒートシールでしっかりと閉じた。サンプルを通常の部屋の条件で5日間保管した。5日間の保管の後、ポーチを開き、サンプルの質量を測定した。最初の質量および保管後の質量の結果を表5に示す。
【表5】

【0053】
表5中に見るように、数滴のNMPを含むポーチの中に骨移植材料を入れることによっても、NMPを担体の中に重層することができる。滴下法によってNMPは担体中に吸収されるが、骨移植材料もまたその構造中に液体の形でNMPを含んでいる。
【0054】
本発明の骨移植材料は外科、整形外科および歯科処置などで使用することができる。本発明の一つの実施形態においては、本発明の材料は前もって成型したインプラントに取り込まれている。インプラントは例えば、大腿骨に人工器官を確実に結合させるために、本発明の骨移植材料で出来たコーティングを含む股関節人工器官になり得る。本発明の材料は膝関節インプラントまたは同様の関節人工器官中でも同様の機能を有する。インプラントは根の表面が本発明の骨移植材料でコーティングされている歯科インプラントでもよい。加えて、インプラントは、好ましくはセラミック繊維または合成物で出来たGBR(誘導骨再生)フィルムまたはシートでもよい。
【0055】
本発明の材料でコーティングされたインプラント材料または足場は、セラミック、金属およびポリマインプラント、例えば金属関節インプラント、例えば腰および膝インプラントまたは同様のインプラントを含んでいる。
【0056】
一つの可能性はKokubo et al.による方法を用いることであり、その中ではSi-OH、Ti-OHおよび/またはTa-OHグループを含むセラミック、金属またはポリマ表面上に核のあるアパタイトを作るために、生体に似た溶媒を用いる。これらのグループはアパタイトの核生成を誘導する。Kokubo et al.はシリコン、チタンおよびその合金類などの金属類、タンタルおよびポリ(エチレンテレフタレート)、ポリエーテルスルホンおよびポリエチレンなどの有機ポリマ類の上にアパタイトのような骨を作成した[Kokubo et al., Acta mater., 46, 7: (1998) 2519 – 2527]。
【0057】
とくにセラミック材料をコーティングするために用いられる別の方法は、熱間静水圧プレス成型である。この方法の1例がWei et al.によって記述されている。Wei et al.はヒドロキシアパタイト・ジルコニア生物材料を140 MPaの圧力下で、1100℃で熱間静水圧プレス成型によって作成する工程を記載している[Wei et al., Key Engineering Materials, 240 – 242: (2003) 591 – 594]。
【0058】
本発明による骨移植材料よって足場をコーティングするために用いられる、さらに別の方法は電気化学的コーティングである。例えば、Becker et al.はより少ないヒドロキシアパタイト(Bonit(登録商標))を有するCaP相ブラッシュ石の合成物によるチタンをコーティングする方法を記述している。
【0059】
金属インプラントもまた、インプラント上に骨移植材料をスパタリングすることによってコーティングすることができる。
【0060】
さらに、米国特許第5,861,176号で開示されているゾル・ゲル由来の工程は、例えばシリカゲルをベースとするガラス足場をコーティングするために用いられる。
【0061】
本発明に従って骨移植材料を持つ足場をコーティングするために用いられるさらに別の方法が、すべての目的でここに参照して全体を取り込む米国特許第5,108,436号および第5,207,710号に記載されている。これらの方法は、コーティング、浸潤、穴の中に材料を入れるために真空力を適用すること、足場上の材料を空気乾燥または凍結乾燥することを含んでいる。
【0062】
本発明の骨移植材料は、治療効果を拡大できる生物学的に活性のある物質または薬剤を含んでいてもよい。生物学的に活性のある薬剤は次のものより成るグループから選ぶことができる、すなわち、抗炎症剤、抗菌剤、抗寄生虫剤、抗真菌剤、抗ウイルス剤、抗腫瘍剤、鎮痛剤、麻酔剤、ワクチン、中枢神経系薬剤、成長因子、ホルモン、抗ヒスタミン剤、骨誘導剤、心臓血管薬、抗潰瘍剤、気管支拡張薬、血管拡張薬、避妊薬、不妊治療剤およびポリペプチド。好ましくは、生物活性薬剤はOP-1、BMP-2、BMP-4、BMP-6およびBMP-7などの骨形成蛋白質(BMP)である。
【0063】
技術の進歩に伴い、本発明の概念を多様に実現できることは、当業者に明白であろう。本発明およびその実施形態は上述した実施例に制限されるものではなく、請求項の範囲内で変化し得るものである。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】および
【図2】は、本発明による骨移植材料のための多孔性足場の構造を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
セラミックまたはガラスセラミックもしくはガラス材料の多孔性担体、および該担体に仕込まれた少なくとも一つのピロリドンより成ることを特徴とする骨移植材料。
【請求項2】
請求項1に記載の骨移植材料において、前記ピロリドンは、化学結合で前記担体に結合していることを特徴とする骨移植材料。
【請求項3】
請求項1に記載の骨移植材料において、前記ピロリドンは、任意にアルキルまたはシクロアルキル基で置換されたピロリドン類およびポリピロリドン類から選ばれることを特徴とする骨移植材料。
【請求項4】
請求項3に記載の骨移植材料において、前記ピロリドンは1-メチル-2-ピロリドン(NMP)、1-エチル-2-ピロリドン(NEP)、2-ピロリドン(PB)および1-シクロヘキシル-2-ピロリドン(CP)より選ばれることを特徴とする骨移植材料。
【請求項5】
請求項4に記載の骨移植材料において、前記ピロリドンは1-メチル-2-ピロリドン(NMP)であることを特徴とする骨移植材料。
【請求項6】
請求項1に記載の骨移植材料において、ピロリドンの量は、ピロリドン重層多孔性担体の全重量の約0.1から約50重量%の間にあることを特徴とする骨移植材料。
【請求項7】
請求項1に記載の骨移植材料において、該骨移植材料はさらに、少なくとも一つの生物活性薬剤を含んでいることを特徴とする骨移植材料。
【請求項8】
請求項7に記載の骨移植材料において、前記生物活性薬剤は、抗炎症剤、抗菌剤、抗寄生虫剤、抗真菌剤、抗ウイルス剤、抗腫瘍剤、鎮痛剤、麻酔剤、ワクチン、中枢神経系薬剤、成長因子、ホルモン、抗ヒスタミン剤、骨誘導剤、心臓血管薬、抗潰瘍剤、気管支拡張薬、血管拡張薬、避妊薬、不妊治療剤およびポリペプチドより成る群から選ばれることを特徴とする骨移植材料。
【請求項9】
請求項8に記載の骨移植材料において、生物活性薬剤は少なくとも一つの骨形成蛋白質(BMP)であることを特徴とする骨移植材料。
【請求項10】
請求項1に記載の骨移植材料において、前記担体は、リン酸カルシウム類、ヒドロキシアパタイト類、シリカゲル類、無機質骨マトリックス類、キセロゲル類およびゾル・ゲルガラス類より成る群から選ばれることを特徴とする骨移植材料。
【請求項11】
請求項1に記載の骨移植材料において、前記担体は、セラミック/ポリマ合成物を含んでいることを特徴とする骨移植材料。
【請求項12】
請求項11に記載の骨移植材料において、前記ポリマは、ポリスルホン類、ポリアリルエーテルケトン類、ポリオレフィン類および生分解性ポリマ類より成る群から選ばれることを特徴とする骨移植材料。
【請求項13】
リン酸カルシウムの多孔性担体および該リン酸カルシウム中に仕込まれた1-メチル-2-ピロリドン(NMP)を含むことを特徴とする骨移植材料。
【請求項14】
リン酸カルシウムの多孔性担体、該リン酸カルシウム中に仕込まれた1-メチル-2-ピロリドン(NMP)、および少なくとも一つの骨形成蛋白質(BMP)を含むことを特徴とする骨移植材料。
【請求項15】
セラミックまたはガラスセラミックまたはガラスの多孔性担体を作り、該担体に少なくとも一つのピロリドンを加える段階を含むことを特徴とする骨移植材料の製造方法。
【請求項16】
請求項15に記載の方法において、前記ピロリドンは、任意にアルキルまたはシクロアルキル基で置換されたピロリドン類およびポリピロリドン類から選ばれることを特徴とする方法。
【請求項17】
請求項16に記載の方法において、前記ピロリドンは、1-メチル-2-ピロリドン(NMP)、1-エチル-2-ピロリドン(NEP)、2-ピロリドン(PB)および1-シクロヘキシル-2-ピロリドン(CP)より選ばれることを特徴とする方法。
【請求項18】
請求項17に記載の方法において、前記ピロリドンは、1-メチル-2-ピロリドン(NMP)であることを特徴とする方法。
【請求項19】
請求項15に記載の方法において、前記ピロリドンを液体の形で前記担体に加えることを特徴とする方法。
【請求項20】
請求項15に記載の方法において、前記ピロリドンを気化した形で前記担体に加えることを特徴とする方法。
【請求項21】
多孔性セラミックまたはガラスセラミックもしくはガラス材料の担体、および該担体中に仕込まれた少なくとも一つピロリドンを含むことを特徴とするインプラント。
【請求項22】
請求項21に記載のインプラントにおいて、前記ピロリドンは、任意にアルキルまたはシクロアルキル基で置換されたピロリドン類およびポリピロリドン類より選ばれることを特徴とするインプラント。
【請求項23】
請求項22に記載のインプラントにおいて、前記ピロリドンは、1-メチル-2-ピロリドン(NMP)、1-エチル-2-ピロリドン(NEP)、2-ピロリドン(PB)および1-シクロヘキシル-2-ピロリドン(CP)より選ばれることを特徴とするインプラント。
【請求項24】
請求項21に記載のインプラントにおいて、ピロリドンの量は、ピロリドン重層多孔性担体の全重量の約0.1から約50重量%の間であることを特徴とするインプラント。
【請求項25】
請求項21に記載のインプラントにおいて、該インプラントはさらに、少なくとも一つの生物活性薬剤を含んでいることを特徴とするインプラント。
【請求項26】
請求項25に記載のインプラントにおいて、前記生物活性薬剤は、抗炎症剤、抗菌剤、抗寄生虫剤、抗真菌剤、抗ウイルス剤、抗腫瘍剤、鎮痛剤、麻酔剤、ワクチン、中枢神経系薬剤、成長因子、ホルモン、抗ヒスタミン剤、骨誘導剤、心臓血管薬、抗潰瘍剤、気管支拡張薬、血管拡張薬、避妊薬、不妊治療剤およびポリペプチドより成る群から選ばれることを特徴とするインプラント。
【請求項27】
請求項26に記載のインプラントにおいて、前記生物活性薬剤は、少なくとも一つの骨形成蛋白質(BMP)であることを特徴とするインプラント。
【請求項28】
請求項21に記載のインプラントにおいて、該インプラントは、その表面上に前記担体が仕込まれている足場を含むことを特徴とするインプラント。
【請求項29】
請求項28に記載のインプラントにおいて、前記足場は、セラミックまたはガラスセラミックもしくはガラス材料で出来ていることを特徴とするインプラント。
【請求項30】
請求項28に記載のインプラントにおいて、前記足場は、金属で出来ていることを特徴とするインプラント。
【請求項31】
請求項28に記載のインプラントにおいて、前記足場は、ポリマ材料で出来ていることを特徴とするインプラント。
【請求項32】
請求項28に記載のインプラントにおいて、前記足場は、多孔性であることを特徴とするインプラント。
【請求項33】
請求項21に記載のインプラントにおいて、前記担体は、リン酸カルシウム類、ヒドロキシアパタイト類、シリカゲル類、無機質骨マトリックス類、キセロゲル類およびゾル・ゲルガラス類より成る群から選ばれることを特徴とするインプラント。
【請求項34】
請求項21に記載のインプラントにおいて、前記担体は、セラミック/ポリマ合成物を含むことを特徴とするインプラント。
【請求項35】
請求項34に記載のインプラントにおいて、前記ポリマは、ポリスルホン類、ポリアリルエーテルケトン類、ポリオレフィン類および生分解性ポリマ類より成る群から選ばれることを特徴とするインプラント。


【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2007−527760(P2007−527760A)
【公表日】平成19年10月4日(2007.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−502360(P2007−502360)
【出願日】平成17年3月8日(2005.3.8)
【国際出願番号】PCT/FI2005/050067
【国際公開番号】WO2005/084727
【国際公開日】平成17年9月15日(2005.9.15)
【出願人】(506037700)
【氏名又は名称原語表記】INION OY
【Fターム(参考)】