説明

多孔性薄膜、その製造方法、気体センサーおよび水晶振動子微量天秤

【課題】高感度の分子認識能を備えた多孔性薄膜、その製造方法、この多孔性薄膜を用いた気体センサーおよび水晶振動子微量天秤を提供することを目的としている。
【解決手段】下記の一般式(I)
【化1】


(一般式(I)中、R1は親水性置換基、R2は水素あるいはアルキル基、nは3〜10の整数である。)であらわされるカリックスアレーン誘導体を少なくとも含む製膜材料からなることを特徴としている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高感度気体センサー等の分子認識薄膜などの機能性薄膜材料として有用な多孔性薄膜およびその製造方法、この多孔性薄膜を用いた気体センサーおよび水晶振動子微量天秤に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体やディスプレイなどの電子デバイス、光学材料、記録材料などへの応用を目指した有機薄膜材料の開発が活発に行われている。これらの技術の中で、基盤表面へのパターン化技術として高分子の希薄溶液を高湿度雰囲気下でキャストすることによりミクロンオーダーでの細孔(ハニカムパターン)を有する薄膜を作製することが報告されている(たとえば、特許文献1および非特許文献1参照)。これらの多孔性薄膜はリソグラフィーなどと異なり、大がかりな装置を必要とせずに溶媒の蒸発に伴う表面に凝集した微少水滴の充填、さらに高分子の自己組織化を利用することにより作製されることが特徴である。しかし、多孔性薄膜の作製には、表面上に凝集した微少水滴を安定化し、微少水滴の融合を防ぐ必要があるため、両親媒性の高分子や、高分子と界面活性剤などを組み合わせた混合物などの限られた組成によるものであった。このようにして得られる微細構造を有する多孔性薄膜の用途としては、細胞培養、分離、マイクロリアクターなど数えるほどの研究が行われているにすぎず、薄膜の特性を活かした応用がなされていないのが現状である。
【0003】
一方、環状4量体のカリックス[4]アレーン、環状6量体のカリックス[6]アレーン、環状8量体のカリックス[8]アレーン等のカリックスアレーン類は、分子認識物質・機能材料創製の物質として注目されている。
すなわち、カリックスアレーンはp-tert-ブチルフェノールなどのパラ置換フェノールとホルムアルデヒドの縮合によって得られる環状化合物である.合成方法に関してはアメリカのC.D.Gutscheらにより構造の確定とともに確立され(たとえば、非特許文献2参照)、環状4量体のカリックス[4]アレーン、環状6量体のカリックス[6]アレーン、環状8量体のカリックス[8]アレーン等のカリックスアレーン類についてはワンポットでの合成が可能で、反応条件により作り分けることができる。そして、たとえば、機能性基の導入により期待する性質を有する化合物の合成が可能である。また、単一の分子量を持つオリゴマーとしての性質を有し、熱的安定性を得ることができるため、高度な物性を要求される材料として利用することが期待できる。
【0004】
【特許文献1】特開平8−311231号公報
【非特許文献1】O. Karthaus, et al. Langmuir, 16, 6071(2000).
【非特許文献2】C. D. Gutsche, et al., J. Am. Chem. Soc., 103, 3782(1981).
【非特許文献3】C. D. Gutsche, et al.,. Org. Synth., Coll. Vol.8., pp75-81(1993).
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで、本発明の発明者らは、上記多孔性薄膜の製造方法を用いる等してカリックスアレーン類からなる多孔性薄膜を形成すれば、優れた選択性や高感度を必要とされるセンサー用薄膜として、半導体センサーや水晶振動子微量天秤などへ付与できるのではないかと考え、鋭意検討を重ねた結果、本発明を完成するに到った。
【0006】
すなわち、本発明は、高感度の分子認識能を備えた多孔性薄膜、その製造方法、この多孔性薄膜を用いた気体センサーおよび水晶振動子微量天秤を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明の請求項1に記載の多孔性薄膜(以下、「請求項1の多孔性薄膜」と記す)は、 下記の一般式(I)
【化1】

(一般式(I)中、R1は親水性置換基、R2は水素あるいはアルキル基、nは3〜10の整数である。)であらわされるカリックスアレーン誘導体を少なくとも含む製膜材料からなることを特徴としている。
【0008】
本発明の請求項2に記載の多孔性薄膜(以下、「請求項2の多孔性薄膜」と記す)は、請求項1の多孔性薄膜において、親水性置換基R1が、−COOR3あるいは−SO33(但し、R3は水素あるいはアルキルアンモニウム塩)であることを特徴としている。
【0009】
本発明の請求項3に記載の多孔性薄膜の製造方法は、カリックスアレーン誘導体と溶媒とを少なくとも含む製膜材料溶液を基盤上に展開させるとともに、展開された製膜材料溶液表面を水蒸気雰囲気に保ちながら前記溶媒を蒸発させて、溶媒の気化熱によって水蒸気を冷却して結露させる工程を含むことを特徴としている。
【0010】
本発明の請求項4に記載の気体センサーは、請求項1または請求項2の多孔性薄膜を分子認識膜として備えることを特徴としている。
【0011】
本発明の請求項5に記載の水晶振動子微量天秤は、請求項1または請求項2の多孔性薄膜を分子認識膜として備えることを特徴としている。
【0012】
本発明の多孔性薄膜に用いるカリックスアレーン誘導体は、上部に親水性置換基R1を備えているが、親水性置換基R1としては、例えば、請求項2の多孔性薄膜のように、−COOR3あるいは−SO33(但し、R3は水素あるいはアルキルアンモニウム塩)であることが好ましい。
因みに、親水性置換基R1としてカルボキシル基を有するカリックスアレーン誘導体の場合、原料であるp-t-ブチルカリックス[n]アレーンから以下の反応式Aのように合成される。
【0013】
【化2】

(反応式A中、R2がアルキル基で表される置換基、nは3〜10の整数を示す。)
【0014】
また、スルホン酸基を有するカリックスアレーン誘導体は、たとえば、非特許文献4(Shinkai et al., J. Am. Chem. Soc., 108, 2409(1986))に記載されているように下記反応式Bのように合成される。
【0015】
【化3】

(反応式B中、R2がアルキル基で表される置換基、nは3〜10の整数を示す。)
【0016】
また、上記R3がアルキルアンモニウム塩であるカリックスアレーン誘導体は、上記合成したこれらの反応式Aあるいは反応式Bで合成したカリックスアレーン誘導体からアルキルアンモニウム塩やアルキルアミンなどとの錯体形成により得ることができる。
【0017】
上記アルキルアンモニウム塩としては、特に限定されないが、具体的には、例えば、トリエチルアミン、モノメチルジオクチルアミン、ジメチルラウリルアミン、ジメチル-n-オクチルアミン、ジメチルジ-n-オクチルアンモニウム塩、ジメチルジラウリルアンモニウム塩、ジメチルジ-n-オクタデシルアンモニウム塩等が挙げられ、窒素原子に結合するアルキル基が長いほどまた、2本の長鎖アルキル基を有する方が有機溶媒への溶解性の向上や多孔性薄膜作製時の微少水滴の安定化に寄与することから好ましい。この場合、カリックスアレーン下部の疎水性アルキル基は必ずしも必要ではなくR2がHの水酸基のままでもよい。
【0018】
カリックスアレーン下部のアルキル基としては、特に限定されないが、具体的には、例えば、メチル、エチル、プロピル、ブチル、sec-ブチル、ペンチル、tert-ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、tert-オクチル、ノニル、デシル、ウンデシル、ドデシル、トリデシル、テトラデシル、ペンデシル、ヘキサデシル、ヘプタデシル、オクタデシルなど炭素数が1から18のアルキル基が挙げられ、クロロホルムなどの有機溶媒への溶解性が必要であることから炭素数8から18の直鎖のアルキル基が好ましい。
【0019】
薄膜作製に用いる溶媒としては、比較的低い沸点を持ち且つカリックスアレーン誘導体およびバインダー樹脂を溶解させ、水の溶解性が低い溶媒であれば特に限定するものではないが、例えば、ジクロロメタン、クロロホルム、1,2−ジクロロエタン、四塩化炭素、二硫化炭素などが挙げられ、溶解性の高いクロロホルムの使用が好ましい。
【0020】
本発明の多孔性薄膜の作製に用いるカリックスアレーン誘導体とバインダー樹脂との配合割合および溶媒中での濃度は、特に限定するものではないが、溶液中に含まれるカリックスアレーン誘導体とバインダー樹脂との重量比は1:9〜9:1が好ましく、カリックスアレーン誘導体およびバインダー樹脂の溶媒中の濃度は、0.1〜100mg/mLが好ましく、特にカリックスアレーンとバインダー樹脂との重量比が2:8〜7:3のとき、濃度を1〜10mg/mLとすることがより好ましい。
さらに、上記R3がアルキルアンモニウム塩であるカリックスアレーン誘導体は、バインダー樹脂を配合させなくても多孔性薄膜を得ることができる。
【0021】
薄膜作製に用いるバインダー樹脂としては、特に限定はしないが、例えば、ポリスチレン、ポリエチレン、シリコン系ポリマー、シロキサン系ポリマーおよびそれらの混合物や共重合体を用いることができる。バインダー樹脂の分子量は、クロロホルムなどの溶媒に溶解する程度の重合物を用いることができ、薄膜化後固体として熱的に安定であることが必要である。
【0022】
本発明の多孔性薄膜の製造方法において、展開された製膜材料溶液表面を水蒸気雰囲気に保つ方法としては、相対湿度50〜90%程度に保てれば特に限定されないが、たとえば、恒湿状態のキャビネット内や、高湿度の空気あるいは不活性ガスを製膜する基盤表面に吹き付ける方法が挙げられる。
【0023】
本発明の多孔性薄膜の用途としては、カリックスアレーンの分子認識能を利用する気体センサーである。すなわち、半導体センサーや水晶振動子微量天秤(以下、「QCM」と記す)への薄膜付与により高感度で選択性の高いセンサー用薄膜として利用することができる。特に、シックハウス症候群などで有害とされる芳香族化合物やハロゲン化合物の高感度検出に有効である。
【発明の効果】
【0024】
本発明の多孔性薄膜は、以上のように構成されているので、平滑薄膜に比べ、カリックスアレーンの分子認識能をより有効に利用することができ、たとえば、気体センサーへの応用を提供することにより、高感度で有害な揮発性有機化合物の検出に用いることができる。
【0025】
本発明の多孔性薄膜の製造方法は、以上のように構成されているので、多孔性薄膜が効率よく形成される。
すなわち、上記一般式(I)で示されるカリックスアレーン誘導体は、上部に親水性置換基としてカルボキシル基、スルホン酸基あるいはそれらのアンモニウム塩を有し、また、下部に疎水性置換基としてアルキル基を有し、両親媒性化合物として機能するので、製膜材料溶液から溶媒が蒸発することによってその気化熱によって冷却された表面に凝集した微少水滴が安定化され微少水滴の融合が阻害される。したがって、微小な孔がハニカム状に安定して形成される。さらに、アルキル基は有機溶媒への溶解性を向上させる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下、本発明の詳細について実施例によって具体的に説明するが、本発明の範囲はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0027】
(実施例1)
一般式(I)で示され、n=4、R1=COOH,R2=(CH211CH3であるカリックスアレーン誘導体およびバインダー樹脂としてのポリスチレン(分子量1000000)をそれぞれ0.5mg/mLの濃度となるように溶媒としてのクロロホルムに溶解させたクロロホルム溶液を製膜材料溶液として用意した。
【0028】
このクロロホルム溶液をガラス基盤上へ5μL滴下するとともに、滴下されたクロロホルム溶液表面に相対湿度70〜80%の空気を0.5L/分で吹き付けた。すなわち、相対湿度70〜80%の空気を0.5L/分で吹き付けることによって、クロロホルム溶液表面を水蒸気雰囲気とするとともに、クロロホルムを蒸発させた。
クロロホルムの蒸発に伴って基盤上にカリックスアレーン誘導体およびバインダー樹脂からなる混合物が膜化するとともに、この膜化物表面に溶媒の蒸発に伴って微少水滴が凝集した。溶媒と水滴の蒸散した後に薄膜が形成された。得られた薄膜について光学顕微鏡を用いて表面を観察すると図1に示したように孔径約1μmのハニカム構造を有する薄膜が観察された。
【0029】
(実施例2)
分子量1000000ポリスチレンの代わりに分子量2500のポリスチレン用いた以外は実施例1と同様にして基盤上に薄膜を形成した。得られた薄膜について光学顕微鏡を用いて表面を観察すると図1と同様な孔径約2μmのハニカム構造を有する薄膜が観察された。
【0030】
(実施例3)
分子量1000000ポリスチレンの代わりにポリジメチルシロキサン−グラフト−ポリアクリレート(アルドリッチ社製)用いた以外は実施例1と同様にして基盤上に薄膜を形成した。得られた薄膜について光学顕微鏡を用いて表面を観察すると図1と同様な孔径約2μmのハニカム構造を有する薄膜が観察された。
【0031】
(実施例4)
クロロホルム溶液中のカリックスアレーン誘導体およびバインダー樹脂の濃度をそれぞれ1mg/mLとするとともに、カリックスアレーン誘導体とポリスチレンとの重量比を9:1、8:2、7:3、6:4、5:5、4:6、3:7、2:8、1:9で含有するカリックスアレーン誘導体およびバインダー樹脂の配合割合が異なる10種類のクロロホルム溶液を用いる以外は実施例1と同様にして得られた10種類の薄膜について光学顕微鏡を用いて表面を観察すると、いずれも、図1と同様な孔径約0.5〜3μmのハニカム構造を有する薄膜が観察された。
【0032】
(実施例5)
カリックスアレーン誘導体として、一般式(I)で示され、n=4、R1=SO3N(CH3)2(C18H37)2、R2=Hであるカリックスアレーン誘導体を用いた以外は実施例1と同様にして基盤上に薄膜を形成した。得られた薄膜について光学顕微鏡を用いて表面を観察すると図1と同様な孔径約1〜2μmのハニカム構造を有する薄膜が観察された。
【0033】
(実施例6)
カリックスアレーン誘導体として、一般式(I)で示され、n=4、R1=SO3N(CH3)2(C18H37) 2、R2=(CH211CH3であるカリックスアレーン誘導体を用いた以外は実施例1と同様にして基盤上に薄膜を形成した。得られた薄膜について光学顕微鏡を用いて表面を観察すると図1と同様な孔径約1〜2μmのハニカム構造を有する薄膜が観察された。
【0034】
(実施例7)
カリックスアレーン誘導体として、一般式(I)で示され、n=6、R1=SO3N(CH3)2(C18H37) 2、R2=Hであるカリックスアレーン誘導体を用いた以外は実施例1と同様にして基盤上に薄膜を形成した。得られた薄膜について光学顕微鏡を用いて表面を観察すると図1と同様な孔径約1〜2μmのハニカム構造を有する薄膜が観察された。
【0035】
(実施例8)
カリックスアレーン誘導体として、一般式(I)で示され、n=6、R1=SO3N(CH3)2(C18H37) 2、R2=(CH211CH3であるカリックスアレーン誘導体を用いた以外は実施例1と同様にして基盤上に薄膜を形成した。得られた薄膜について光学顕微鏡を用いて表面を観察すると図1と同様な孔径約1〜2μmのハニカム構造を有する薄膜が観察された。
【0036】
(実施例9)
カリックスアレーン誘導体として、一般式(I)で示され、n=4、R1=SO3N(CH3)2(C18H37)2、R2=(CH2)11CH3であるカリックスアレーン誘導体を1mg/mLの濃度となるように溶媒としてのクロロホルムに溶解させたクロロホルム溶液を用いた以外は実施例1と同様にして基盤上に薄膜を形成した。得られた薄膜について光学顕微鏡を用いて表面を観察すると図1と同様な孔径約1〜3μmのハニカム構造を有する薄膜が観察された。
【0037】
(実施例10)
カリックスアレーン誘導体として、一般式(I)で示され、n=6、R1=SO3N(CH3)2(C18H37) 2、R2=(CH2)11CH3であるカリックスアレーン誘導体を1mg/mLの濃度となるように溶媒としてのクロロホルムに溶解させたクロロホルム溶液を用いた以外は実施例1と同様にして基盤上に薄膜を形成した。得られた薄膜について光学顕微鏡を用いて表面を観察すると図1と同様な孔径約1〜3μmのハニカム構造を有する薄膜が観察された。
【0038】
(実施例11)
一般式(I)で示され、n=4、R1=COOH,R2=(CH211CH3であるカリックスアレーン誘導体とバインダー樹脂としてのポリスチレン(分子量1000000)とを重量比で1:9の割合で含有し、カリックスアレーン誘導体およびバインダー樹脂のトータル濃度が1.0mg/mLとなるように溶媒としてのクロロホルムに溶解させたクロロホルム溶液を製膜材料溶液として用意した。
このクロロホルム溶液を用いて実施例1と同様にして9MHzのQCMの金電極表面に多孔性薄膜を製膜した。
【0039】
(比較例1)
乾燥雰囲気下で水蒸気の結露が生じないようにクロロホルム溶液のクロロホルムを蒸発させた以外は、上記実施例11と同様にして平滑薄膜をQCMの金電極表面に製膜した。
【0040】
実施例11および比較例1で得られた多孔性薄膜あるいは平滑薄膜が金電極表面に形成されたQCMを22℃の一定の温度に保ったガラス容器にQCMを挿入し、以下の混合溶媒A〜Dを1μLずつそれぞれマイクロシリンジを用いてガラス容器内に注入(各溶媒の気体濃度は100ppmになるように調製)し、平衡に達した10分後の振動数の変化を調べその結果を図2に示した。なお、振動数の変化量は薄膜の単位重量(ng)あたりの変化量で示した。
【0041】
図2から、本発明の多孔性薄膜を付与したQCMは通常の平滑な薄膜を付与したQCMと比較して大きな変化量を示し、より高感度なセンサーとして機能することがわかる。特にクロロベンゼン系の気体に対して大きな変化量を示すことからクロロベンゼン系化合物に対し優れた分子認識機能を備えていると思われる。
・混合溶媒A(塩素系炭化水素):ジクロロメタン、クロロホルム、四塩化炭素、
1,2−ジクロロエタン、テトラクロロエチレン、
エーテル
・混合溶媒B(芳香族系):ベンゼン、エチルベンゼン、トルエン、キシレン、スチレン 、エーテル
・混合溶媒C(クロルベンゼン系):モノクロロベンゼン、o-ジクロロベンゼン、
m−ジクロロベンゼン、p−ジクロロベンゼン、
エーテル
・混合溶媒D(アルコール系):メタノール、シクロヘキサノール、2−プロパノール、
1−ブタノール、エーテル
【0042】
(実施例12)
一般式(I)で示され、n=4、R1=COOH,R2=(CH211CH3であるカリックスアレーン誘導体とバインダー樹脂としてのポリスチレン(分子量1000000)とを重量比で3:7の割合で含有し、カリックスアレーン誘導体およびバインダー樹脂のトータル濃度が1.0mg/mLとなるように溶媒としてのクロロホルムに溶解させたクロロホルム溶液を製膜材料溶液として用意した。
この製膜材料溶液を用いて実施例1と同様にして9MHzのQCMの金電極表面に多孔性薄膜を製膜した。
【0043】
(比較例2)
乾燥雰囲気下で水蒸気の結露が生じないようにクロロホルム溶液のクロロホルムを蒸発させた以外は、上記実施例12と同様にして平滑薄膜をQCMの金電極表面に製膜した。
【0044】
実施例12および比較例2で得たQCMを用いて、実施例11および比較例1と同様にして、混合溶媒A〜Dに対する振動数の変化量を調べ、図3に示した。
図3から、本発明の多孔性薄膜を付与したQCMは通常の平滑な薄膜を付与したQCMと比較して大きな変化量を示し、より高感度なセンサーとして機能することがわかる。
【0045】
(実施例13)
一般式(I)で示され、n=4、R1=COOH,R2=(CH211CH3であるカリックスアレーン誘導体とバインダー樹脂としてのポリスチレン(分子量1000000)とを重量比で88:12の割合で含有し、カリックスアレーン誘導体およびバインダー樹脂のトータル濃度が1.0mg/mLとなるように溶媒としてのクロロホルムに溶解させたクロロホルム溶液を製膜材料溶液として用意した。
このクロロホルム溶液を用いて実施例1と同様にして30MHzのQCMの金電極表面に多孔性薄膜を製膜した。
【0046】
(比較例3)
乾燥雰囲気下で水蒸気の結露が生じないようにクロロホルム溶液のクロロホルムを蒸発させた以外は、上記実施例11と同様にして平滑薄膜をQCMの金電極表面に製膜した。
【0047】
実施例13および比較例3で得たQCMを用いて、実施例11および比較例1と同様にして、混合溶媒A〜Dに対する振動数の変化量を調べ、図4に示した。
図4から、本発明の多孔性薄膜を付与したQCMは通常の平滑な薄膜を付与したQCMと比較して大きな変化量を示し、より高感度なセンサーとして機能することがわかる。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】実施例1で作製した多孔性薄膜の光学顕微鏡写真である。
【図2】実施例11および比較例1で作製した多孔性薄膜を付与したQCMの分子認識機能を比較するグラフである。
【図3】実施例12および比較例2で作製した多孔性薄膜を付与したQCMの分子認識機能を比較するグラフである。
【図4】実施例13および比較例3で作製した多孔性薄膜を付与したQCMの分子認識機能を比較するグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の一般式(I)
【化1】

(式中、R1は親水性置換基、R2は水素あるいはアルキル基、nは3〜10の整数である。)であらわされるカリックスアレーン誘導体を少なくとも含む製膜材料からなる多孔性薄膜。
【請求項2】
親水性置換基R1が、−COOR3あるいは−SO33(但し、R3は水素あるいはアルキルアンモニウム塩)である請求項1に記載の多孔性薄膜。
【請求項3】
カリックスアレーン誘導体と溶媒とを少なくとも含む製膜材料溶液を基盤上に展開させるとともに、展開された製膜材料溶液表面を水蒸気雰囲気に保ちながら前記溶媒を蒸発させて、溶媒の気化熱によって水蒸気を冷却して結露させる工程を含む請求項1または請求項2に記載の多孔性薄膜の製造方法。
【請求項4】
請求項1または請求項2に記載の多孔性薄膜を分子認識膜として備える気体センサー。
【請求項5】
請求項1または請求項2に記載の多孔性薄膜を分子認識膜として備える水晶振動子微量天秤。

【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図1】
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【公開番号】特開2007−56055(P2007−56055A)
【公開日】平成19年3月8日(2007.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−239547(P2005−239547)
【出願日】平成17年8月22日(2005.8.22)
【出願人】(591023594)和歌山県 (62)
【Fターム(参考)】