説明

多孔質シリコーン成形体の製造方法

本発明の主題は、
第1の工程において、溶媒L1及び溶媒L2からの混合物中のシリコーン化合物S又は出発シリコーン化合物SAからの溶液又は懸濁物を形成する、
第2の工程において、前記溶液又は懸濁物を成形する、
第3の工程において、溶媒L1及び溶媒L2からの混合物中でシリコーン化合物Sが溶解性でなくなるまで溶媒L1を前記溶液又は懸濁物から除去し、その際、シリコーン化合物Sが豊富な相A及びシリコーン化合物Sが乏しい相Bが形成され、これによって、この相Aを通じて構造形成が行われる、そして
第4の工程において、溶媒L2及び残分の溶媒L1を除去する、
その際、シリコーン化合物Sが出発シリコーン化合物SAから形成される場合には、これは、第1、第2及び第3の工程から選択される一又は複数の工程において起こる、
シリコーン化合物Sからの薄い多孔質成形体を製造する方法である。
同様に、本発明の主題は、前記方法により製造可能な成形体及びその使用である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多孔質シリコーン成形体の製造方法、並びに前記方法により得られる成形体及びその使用に関する。
【0002】
多孔質シリコーン成形体は、種々の領域において使用され、例えば航空機建造におけるシール材料として又は建築産業における絶縁材料として使用される。
【0003】
成形部品は、三次元構築物、好ましくはシート又は繊維であり、その際、この成形部品の厚さは通常10mmを上回らない。
【0004】
多孔質シリコーン成形体の製造は通常は、ヒドロゲンメチルポリシロキサン及びビニルポリシロキサンからの2成分システムを用いて行われる。ヒドロキシド源の添加により水素が発生し、これは本来のフォーム化を生じる。この種の方法は、例えばDE 1224040に記載されている。
【0005】
このようにして、大抵は厚い多孔質シリコーン成形体が、開放したか又は閉鎖したセル構造でもって製造される。
【0006】
しかし、薄い多孔質シリコーン成形体、例えば膜の製造には、この製造方法は適していない。
【0007】
膜は薄い多孔質成形体であり、混合物の分離のために使用される。更なる使用が、テキスタイル領域において、例えば通気性かつ撥水性の膜として明らかである。膜分離法の利点は、低温、例えば室温でも実施でき、したがって、熱分離方法、例えば蒸留に比較してエネルギー的により出費がより少ないことである。
【0008】
薄い多孔質成形体への酢酸セルロース又はポリビニリデンフッ化物の加工のための既知のプロセスは、蒸発による転相である。沈殿媒体又は更なるフォーム化反応は、この場合に必要でない。最も単純な場合には、ポリマー、易揮発性溶媒及び第2のより難揮発性溶媒からの三元混合物が製造される。湿式フィルム形成に応じて、この揮発性溶媒を蒸発させ、このことは、このポリマーが第2の溶媒中で沈殿して、多孔質構造を形成することを導く。この孔は、第2の溶媒を用いて充填される。第2の溶媒は、この後に、例えば洗浄又は蒸発によりこの成形部品から除去され、そして、最終的に多孔質成形部品が得られる。例えば、EP 363364には、この製造プロセスを基礎として構築される多孔質PVDF成形体の製造が記載されている。
【0009】
シリコーンのためのこのプロセスの使用は当業者に慣用でなく、というのも、通常は、実際に蒸発の際に孔が形成される場合に、孔はなお存在するシリコーン流動性のために崩壊し、これによって成形体がその多孔性を失うからである。
【0010】
Loeb−Sourirajan法に応じた多孔質シリコーン成形体の製造が知られている。そして、例えばJP 55225703には、シリコーン−カーボナート−コポリマーからの多孔質シリコーン膜の製造が教示されている。この方法によって、フィルム層厚に沿って異方性な孔サイズのみが得られる。この場合に、この他に、別個の沈殿浴も常に必要とされる。
【0011】
この場合に、この特許公報において言及されたシリコーンコポリマーの他に、なお更なるシリコーン又はシリコーンコポリマーが、薄い多孔質成形体の製造に使用できることが好ましいだろう。等方性の多孔質シリコーン成形体の製造は、同様に好ましいだろう。
【0012】
したがって、課題は、薄い多孔質シリコーン成形体を技術的に極めて簡易な方式で製造できるが、従来知られている製造プロセスの欠点をもはや示さず、そして、シリコーン並びにシリコーン−コポリマーを使用すること並びに簡易かつ経済的に実施することを可能にするプロセスを開発することにあった。
【0013】
本発明の主題は、シリコーン化合物Sからの薄い多孔質成形体の製造方法であって、
第1の工程において、溶媒L1及び溶媒L2からの混合物中のシリコーン化合物S又は出発シリコーン化合物SAからの溶液又は懸濁物を形成する、
第2の工程において、前記溶液又は懸濁物を成形する、
第3の工程において、溶媒L1及び溶媒L2からの混合物中でシリコーン化合物Sが溶解性でなくなるまで溶媒L1を前記溶液又は懸濁物から除去し、その際、シリコーン化合物Sが豊富な相A及びシリコーン化合物Sが乏しい相Bが形成され、これによって、この相Aを通じて構造形成が行われる、そして
第4の工程において、溶媒L2及び残分の溶媒L1を除去する、
その際、シリコーン化合物Sが出発シリコーン化合物SAから形成される場合には、これは、第1、第2及び第3の工程から選択される一又は複数の工程において起こる、
方法である。
【0014】
好ましくは、第3の工程においてシリコーン化合物Sをゲル化させるか又は沈殿させ、この場合に、薄い多孔質シリコーン成形部品を相Aから得る。この孔は相Bを通じて形成される。
【0015】
このプロセスは、この場合に、文献から知られている相応するプロセスよりも、顕著により簡易かつコスト有利である。
【0016】
意外なことに、この場合に、薄い多孔質シリコーン成形体が、溶媒L1の除去により誘導される、特に蒸発誘導される相分離によって製造されることが見出された。
【0017】
これは、シリコーンが通常、溶媒の簡易な除去、特に蒸発によっては多孔質成形体へと加工されないだけに、ますます意外である。通常、多孔性を有しない、緻密な(kompakt)シートが発生する。
【0018】
相Aの構造形成後に十分な機械的強度を提供するシリコーン化合物Sが特に適することが見出された。すなわち、この形成されるキャビティは、溶媒L2及び残分の溶媒1の除去後に安定なままでなくてはならない。これは、種々の方法で行われることができる。液状又はゲル状の出発シリコーン化合物SAは、シリコーン化合物Sの形成下で、第1、第2及び/又は第3の工程において、例えば縮合反応又は付加反応により共有的に連結するか、又は、シリコーン化合物Sは分子間相互作用、例えばイオン相互作用、水素架橋結合又はファンデルワールス相互作用を介して架橋する。
【0019】
特に好ましくは、シリコーン成形体の架橋は共有結合により、例えば縮合反応又はラジカル機構を介して発生する。特に好ましくは、液状の、すなわち、最大300000MPaまでの粘度を有する、ゲル状又は高粘性の、すなわち、2000000MPa超を有するシリコーン、例えばWacker Chemie AGが商標名ELASTOSIL(R)で販売しているシリコーンの架橋である。特にとりわけ好ましくは、水素架橋結合による架橋であり、例えばこれはWacker Chemie AGが商標名GENIOMER(R)で販売しているオルガノポリシロキサン−ポリ尿素−コポリマー中で発生する。
【0020】
この架橋は、この場合に、シリコーン化合物Sからの薄い多孔質成形体の構造形成とは別個に又はこれと同時に行われることができる。
【0021】
多孔質シリコーン成形体の製造のためのこの種のプロセスは、従来は記載されておらず、この分野では予期できなかった。
【0022】
多孔質シリコーン成形体は、この場合に、先行技術の緻密なシリコーンシートに比較して顕著により高い蒸気透過性を有する。さらに、液体、例えば水が、高圧で初めてこの多孔質シリコーン成形体を通じて進入する。
【0023】
シリコーン化合物Sとして適するのは、原則として、前述の特性を満たす全てのシリコーン含有ポリマーである。
【0024】
好ましくは、出発シリコーン化合物SAとして、官能化シリコーンであり、これは、架橋反応を介して機械的に安定な成形体へと加工される。
【0025】
適したシリコーン化合物Sの例は、EP 1884541 A1に見出される。
【0026】
本発明の使用可能なシリコーン化合物S及び出発シリコーン化合物SAとは、構造「Si−O−Si」の純粋なシロキサン、構造「Si−R″−Si」のシルカルバン[式中、R″は、場合によって置換されたか又はヘテロ原子で中断された、二価の炭化水素基を意味する]又は任意の有機ケイ素基を有するコポリマーであってよい。
【0027】
好ましくは、本発明により使用される出発シリコーン化合物SAは、有機ケイ素化合物であって少なくとも2つのSi結合した架橋可能な基を有するものであり、これは従来も架橋可能な材料において使用されていた。この場合に、有機ケイ素化合物は、一般式(I)
【化1】

[式中、
Rは、酸素原子又は窒素原子によって中断されていてよい、置換されたか又は非置換の炭化水素基である、
Zは、架橋可能な基である、
aは、0、1、2又は3、好ましくは1又は2の値である、及び
bは、0、1、2又は3、好ましくは0、1又は2、特に好ましくは0の値を意味する、
但し、a+bからの合計は3以下であり、一分子につき少なくとも2つの基Zが存在している]
の単位を含む。
【0028】
好ましくは、基Rは、1〜18個の炭素原子を有する一価の炭化水素基であり、これは、場合によって、ハロゲン原子、アミノ基、エーテル基、エステル基、エポキシ基、メルカプト基、シアノ基又は(ポリ)−グリコール基により置換されており、その際、この後者の基は、オキシエチレン単位及び/又はオキシプロピレン単位から構成されており、特に好ましくは1〜12個の炭素原子を有するアルキル基、特にメチル基である。
【0029】
しかし、基Rは、例えば2個のシリル基を相互に結合する二価の基であってもよい。
【0030】
基Rの例は、アルキル基、例えばメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、1−n−ブチル基、2−n−ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、t−ペンチル基、ヘキシル基、例えばn−ヘキシル基、ヘプチル基、例えばn−ヘプチル基、オクチル基、例えばn−オクチル基及びイソオクチル基、例えば2,2,4−トリメチルペンチル基、ノニル基、例えばn−ノニル基、デシル基、例えばn−デシル基、ドデシル基、例えばn−ドデシル基、オクタデシル基、例えばn−オクタデシル基;シクロアルキル基、例えばシクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基及びメチルシクロヘキシル基;アリール基、例えばフェニル基、ナフチル基、アントリル基及びフェナントリル基;アルカリール基、例えばo−、m−、p−トリル基、キシリル基及びエチルフェニル基;及びアラルキル基、例えばベンジル基及びフェニルエチル基である。
【0031】
置換された基Rの例は、メトキシエチル基、エトキシエチル基及びエトキシエトキシエチル基又はクロロプロピル基及びトリフルオロプロピル基である。
【0032】
二価の基Rの例は、エチレン基、ポリイソブチレンジイル基及びプロパンジイル末端ポリプロピレングリコール基である。
【0033】
使用され、架橋反応に関与する出発シリコーン化合物SAが有する、架橋可能な基Zとは、ヒドロキシル基及び、酸素原子又は窒素原子を介してケイ素原子に結合する、場合によって置換された任意の炭化水素基であってよく、又は、不飽和炭化水素基、例えばエテニル基又はエチニル基であってよい。さらに、架橋可能な基Zは、エポキシド、イソシアナート、アクリラート又はメタクリラートであってよく、その際、この末端基は出発シリコーン化合物SAのSi原子に、場合によって置換された炭化水素基(これは場合によってヘテロ原子、例えば酸素又は窒素で中断されていてよい)によって結合されていてよい。
【0034】
好ましくは、Zは、ヒドロキシル基、基−OR1、例えばメトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、i−プロポキシ基、n−ブトキシ基、i−ブトキシ基、s−ブトキシ基、tert−ブトキシ基及び2−メトキシエトキシ基[式中、R1は、酸素原子によって中断されていてよい、場合によって置換した炭化水素基を意味する]、アシルオキシ基、例えばアセトキシ基、アミノ基、例えばメチルアミノ基、ジ−メチルアミノ基、エチルアミノ基、ジエチルアミノ基及びシクロヘキシルアミノ基、アミド基、例えばN−メチルアセトアミド基及びベンズアミド基、アミノキシ基、例えばジエチルアミノキシ基、オキシモ基、例えばメチルエチルケトキシモ基及びメチルイソブチルケトキシモ基、及びエノキシ基、例えば2−プロペンオキシ基である。
【0035】
特に好ましくは、基Zは、ヒドロキシル基、基−OR1[式中、R1は、上記した意味合いと同じ意味合いを有する]及びアシルオキシ基、特にアセトキシ基、メトキシ基及びエトキシ基である。
【0036】
基R1の例は、Rについて挙げた一価の基である。
【0037】
好ましくは、基R1は、1〜12個の炭素原子を有するアルキル基、特に好ましくはメチル基又はエチル基である。
【0038】
同様に特に好ましくは、基Zは、不飽和炭化水素基−R2、C=CR22並びに−CCR2、例えばビニル、1−プロペニル基及び2−プロペニル基又は例えばエチニル基、1−プロピニル基又は2−プロピニル基又は例えばメタクリル基又はアクリル基であり、その際、この末端基は出発シリコーン化合物SAのSi原子に、場合によって置換した炭化水素基によって結合されていてよい。
【0039】
基R2の例は、Rについて挙げた一価の基並びに水素である。
【0040】
さらに、好ましくは基Zは、エポキシド、例えばグルシドキシプロピル基又はエポキシヘキシル基、又はイソシアナート基、例えば1−プロピルイソシアナート基である。
【0041】
この使用される出発シリコーン化合物SAは、シリコーン化合物Sの形成下で、第1、第2及び/又は第3の工程において共有的に連結していてよく、例えば当業者に慣用の方法により架橋していてよい。エテニル又はエチニル官能化した出発シリコーン化合物SAが使用される場合には、架橋性成分として、一般式(II)
【化2】

[式中、
4は、Rの前述の意味合いを有する、
eは0、1、2又は3の値を意味する、
fは0、1又は2の値を意味する、
並びに、e+1は0、1、2、3の値を意味する、
但し、一分子につき平均して少なくとも2個のSi結合した水素原子が存在する]
の単位からなるSi結合した水素原子を有する出発シリコーン化合物SAを、好ましくは鎖状、環式又は分枝状で使用する。
【0042】
本発明の使用可能なシリコーン化合物Sは、好ましくはコポリマーであり、その際、文献から知られている全てのシリコーンコポリマーが、シリコーン化合物Sとして使用可能である。この種のシリコーンコポリマーの例は、シリコーン−カーボナート−コポリマー、シリコーン−イミド−コポリマー、シリコーン−イミダゾール−コポリマー、シリコーン−ウレタン−コポリマー、シリコーン−アミド−コポリマー、シリコーン−ポリスルホン−コポリマー、シリコーン−ポリエーテルスルホン−コポリマー、シリコーン−ポリ尿素−コポリマー並びにシリコーン−ポリオキサリルジアミン−コポリマーの群を含む。
【0043】
特に好ましくは、一般式(III)
【化3】

のオルガノポリシロキサン/ポリ尿素/ポリウレタン/ポリアミド又はポリオキサリルジアミン−コポリマーの使用であり、
式中、構造要素Eは、一般式(IVa−f)から選択される
【化4】

構造要素Fは、一般式(Va−f)から選択される
【化5】

ここで、
3は、Rの意味合いを有する、
Hは、水素又はRの意味合いを有する、
Xは、相互に隣接していないメチレン単位が−O−基により置換されていてよい、1〜20個の炭素原子を有するアルキレン基、又は、6〜22個の炭素原子を有するアリーレン基を意味する、
Yは、場合によってフッ素又は塩素により置換されている、1〜20個の炭素原子を有する二価の炭化水素基を意味する、
Dは、場合によってフッ素、塩素、C1〜C6−アルキル−又はC1〜C6−アルキルエステル置換したアルキレン基であって1〜700個の炭素原子を有するもの、この場合に、相互に隣接していないメチレン単位は−O−、−COO−、−OCO−又は−OCOO−基により置換されていてよい、又は、6〜22個の炭素原子を有するアリーレン基、を意味する、
B、B′は、ポリマーに共有結合している、反応性又は非反応性の末端基を意味する、
mは、1〜4000の整数を意味する、
nは、1〜4000の整数を意味する、
gは、少なくとも1の整数を意味する、
hは、0〜40の整数を意味する、
iは、0〜30の整数を有する、そして
jは、0より大きい整数を意味する。
【0044】
好ましくは、基R3は、Rについて前述した基である。
【0045】
好ましくは、基RHは、水素又はRについて前述した基である。
【0046】
好ましくは、基Yは、場合によってハロゲン原子、例えばフッ素又は塩素で置換した炭化水素基であって3〜13個の炭素原子を有するもの、特に好ましくは3〜13個の炭素原子を有する炭化水素基、特に1,6−ヘキサメチレン基、1,4−シクロヘキシレン基、メチレン−ビス−(4−シクロヘキシレン)基、3−メチレン−3,5,5−トリメチルシクロヘキシレン基、フェニレン基及びナフチレン基、m−テトラメチルキシリレン基並びにメチレン−ビス−(4−フェニレン)基である。
【0047】
二価の炭化水素基Yの例は、アルキレン基、例えばメチレン基、エチレン基、n−プロピレン基、イソプロピレン基、n−ブチレン基、イソブチレン基、t−ブチレン基、n−ペンチレン基、イソペンチレン基、ネオペンチレン基、t−ペンチレン基、ヘキシレン基、例えばn−ヘキシレン基、ヘプチレン基、例えばn−ヘプチレン基、オクチレン基、例えばn−オクチレン基及びイソオクチレン基、例えば2,2,4−トリメチルペンチレン基、ノニレン基、例えばn−ノニレン基、デシレン基、例えばn−デシレン基、ドデシレン基、例えばn−ドデシレン基;シクロアルキレン基、例えばシクロペンチレン基、シクロヘキシレン基、シクロヘプチレン基、及びメチルシクロヘキシレン基、例えばメチレン−ビス−(4−シクロヘキシレン)−及び3−メチレン−3,5,5−トリメチルシクロヘキシレン基;アリーレン基、例えばフェニレン基及びナフチレン基;アルカリーレン基、例えばo−、m−、p−トリレン基、キシリレン基、例えばm−テトラメチレンキシリレン基及びエチルフェニレン基;アラルキレン基、例えばベンジレン基、フェニルエチレン基並びにメチレン−ビス−(4−フェニレン)基である。
【0048】
好ましくは、基Xは、酸素原子により中断されていてよい、1〜20個の炭素原子を有するアルキレン基であり、特に好ましくは酸素原子により中断されていてよい、1〜10個の炭素原子を有するアルキレン基であり、とりわけ好ましくはn−プロピレン基、イソブチレン基、2−オキサブチレン基及びメチレン基である。
【0049】
基Xの例は、基Yについて挙げた例並びに場合によって置換したアルキレン基(この炭素鎖は、酸素原子によって中断されていることができる)、例えば2−オキサブチレン基である。
【0050】
基Bは、この場合に、好ましくは水素原子、基OCN−Y−NH−CO、基H2N−Y−NH−CO、基R33Si−(O−SiR32n−又は基R33Si−(O−SiR32n−X−E−である。
【0051】
基B′は好ましくはBについて挙げた基である。
【0052】
基Dは、好ましくは二価のポリエーテル基及びアルキレン基、特に好ましくは二価のポリプロプレングリコール基並びに少なくとも2個〜最高20個の炭素原子を有するアルキレン基、例えばエチレン基、2−メチルペンチレン及びブチレン基、とりわけ2〜600個の炭素原子を有するポリプロプレングリコール基並びにエチレン基及び2−メチルペンチレン基である。
【0053】
nは好ましくは、少なくとも3,特に少なくとも10、好ましくは最高800、特に最高400の数を意味する。
【0054】
mは好ましくはnについて挙げた範囲を意味する。
【0055】
gは好ましくは最高100、特に好ましくは10〜60の数を意味する。
【0056】
hは好ましくは最高10、特に好ましくは0又は1、特に0の数を意味する。
【0057】
jは好ましくは最高400、特に好ましくは1〜100、特に1〜20の数を意味する。
【0058】
iは好ましくは最高10、特に好ましくは0又は1、特に0の数を意味する。
【0059】
ここに記載のシステムは当業者に慣用の方法全てで硬化されることができる。
【0060】
このシステムは、任意になお更なる典型的な添加剤、例えば官能性シランを包含する。
【0061】
シリコーン化合物Sとして適しているのは、この他に、文献から知られている全てのシリコーンコポリマーであり、これはシリコーン含分の他になお有機ポリマー単位、例えばポリイミド、ポリウレタン、ポリスルホン、ポリイミダゾール、ポリアミドを有する。
【0062】
方法においてシリコーン化合物S及び/又は出発シリコーン化合物SAの他に更に他のポリマー化合物が一緒に使用可能である。好ましくは、方法において製造した薄い多孔質成形体は少なくとも50%、特に好ましくは少なくとも80%、とりわけ少なくとも90%、より良好には少なくとも95%が、シリコーン化合物S及び/又は出発シリコーン化合物SAからなる。
【0063】
溶媒L1は、溶媒L2に比較して、第1の工程において製造した、シリコーン化合物S又は出発シリコーン化合物SAからの溶液又は懸濁物からより容易に除去可能である。この除去能はとりわけ、より容易な蒸発又は抽出に関する。
【0064】
溶媒L1との概念は、シリコーン化合物S及び/又は出発シリコーン化合物SAを大抵の温度で溶解する、全ての有機及び無機化合物を含む。この概念は、その他は同じ条件、例えば圧力及び温度で、シリコーン化合物S及び/又は出発シリコーン化合物SAを、溶媒L2よりもより高い割合で溶解できる、好ましくは全ての化合物を含む。
【0065】
すなわち、溶媒L1中のシリコーン化合物S及び/又は出発シリコーン化合物SAの最大限達成可能な濃度は、好ましくは、溶媒L2中のシリコーン化合物S及び/又は出発シリコーン化合物SAの最大限達成可能な濃度よりも高い。
【0066】
シリコーン化合物S及び/又は出発シリコーン化合物SAの最大限達成可能な濃度は、この場合に、溶媒L2におけるよりも溶媒L1において、好ましくは2倍、特に好ましくは10倍、しかし、特にとりわけ好ましくは100倍、より高い。
【0067】
溶媒L1との概念は、この場合に、さらに高分子量化合物、例えば液状ポリマーをも含む。
【0068】
溶媒L1及びシリコーン化合物S及び/又は出発シリコーン化合物SAに応じて、より高圧も溶解性に寄与できる。
【0069】
好ましくは、シリコーン含有ポリマーを20℃及び1barで少なくとも10質量%、特に好ましくは少なくとも15質量%、とりわけ少なくとも20質量%溶解する溶媒L1である。
【0070】
溶媒及びポリマーに応じて、高められた圧力も少ない溶解性に寄与できる。
【0071】
溶媒L2との概念は、この場合に、さらに高分子量化合物、例えば液状ポリマーをも含む。
【0072】
好ましくは、シリコーン含有ポリマーを20℃及び1barで最高20質量%、特に好ましくは最高10質量%、とりわけ最高1質量%溶解する溶媒L2である。
【0073】
溶媒L1及び溶媒L2は、それぞれ1又は複数の成分からなってよい。
【0074】
好ましくは、溶媒L1又は溶媒L1の全成分は20℃かつ1barで、溶媒L2又は溶媒L2の全成分よりもより高い蒸気圧を有する。
【0075】
好ましくは、溶媒L1又は溶媒L1の全成分の沸点は、1barで少なくとも30℃、特に好ましくは少なくとも40℃、とりわけ少なくとも50℃、溶媒L2又は溶媒L2の全成分の沸点よりも低い。
【0076】
第1の工程で、溶媒L1及び溶媒L2からの混合物中のシリコーン化合物S及び/又は出発シリコーン化合物SAからの懸濁物が発生する場合には、このことは、撹拌により部分的に停止できる、相分離の開始を示唆する。
【0077】
種々の方法で前記溶液又は懸濁物のシリコーン成形体への移行は行われることができる。例えば、シリコーン化合物S及び/又は出発シリコーン化合物SAからの均一な溶液が存在する場合には、第3の工程において相分離の際にまず懸濁物が形成されることができ、次に、ここから第1のゲル体が発生し、これは溶媒L1又は溶媒L2の更なる除去によりシリコーン化合物Sからの安定な成形体へと変換されることができる。
【0078】
既に第1の工程において懸濁物が存在する場合には、第3の工程において相分離の際にこのシリコーン化合物Sの懸濁物からゲル構造が発生することがある。これは大抵の場合に、シリコーン化合物Sの均一な溶液を用いた開始に比較してより迅速である。
【0079】
好ましくは、第3の工程後に、最高30質量%、特に好ましくは最高20質量%、とりわけ最高10質量%の、第1の工程において使用された溶媒L1が相A及びB中に存在する。
【0080】
溶媒L1は、第3の工程において、全ての技術的に知られた手段によって、このキャスティング溶液から除去されることができる。好ましくは溶媒L1の除去は、蒸発又は抽出による。
【0081】
好ましい技術的プロセスの例は、対流、強制対流、加熱又は蒸発(湿潤雰囲気中で)による蒸発、又は溶媒交換による抽出又は揮発性溶媒を用いた洗浄である。
【0082】
この方法は、この場合に、成形体の製造が許容可能な期間において行われるが、この構造も形成できるように常に選択されなくてはならない。
【0083】
蒸発の速度は好ましくは、液−液−相分離が熱力学的平衡条件下で発生しないように選択され、というのも、さもなければ多孔質構造が発生しないからである。
【0084】
使用される出発シリコーン化合物SAがなお架橋されなくてはならない場合には、典型的なシリコーン架橋反応の全てが使用される。シリコーンタイプに応じて、これは例えば加熱、圧力によって又はUV光を用いて行われる。
【0085】
例えば、アルコキシル又はアセトキシ官能性シリコーンの重縮合反応はSn触媒、例えばDBTL(ジブチルジスズラウラート)及び水(例えば周囲空気に由来する)を用いて行われる。
【0086】
例えばビニル官能性出発シリコーン化合物SAが使用される場合には、この架橋は特に、ラジカル開始剤として使用される過酸化物を用いて行われる。ラジカル開始剤の他になお更にHシロキサンが添加され、これは架橋したシステムの形成に必要である。さらに、ビニル官能性出発シリコーン化合物SAの硬化はPt触媒及びHシロキサンを用いても実施できる。
【0087】
溶媒L2は常に不活性である必要はない。
【0088】
場合によって、ポリマーは溶媒L2中で膨潤可能である。好ましくは10質量%以上の、特に好ましくは50質量%以上の吸着を有する溶媒L2が好ましい。
【0089】
溶媒L2の適切な選択は重要であり、というのも、これは、この構造が相分離後に維持されたままであるかそうでないかを決定するからである。
【0090】
溶媒L2は、第4の工程において当業者に慣用の全ての方法で成形体から除去されることができる。例は、溶媒L2の抽出、蒸発、逐次的溶媒交換又は単純な洗浄である。
【0091】
シリコーン化合物S及び/又は出発シリコーン化合物SAの溶液又は懸濁物は様々な経路で製造できる。本発明の好ましい一実施態様において、シリコーン化合物S及び/又は出発シリコーン化合物SAは、溶媒L1中で溶解され、溶媒L2が添加される。本発明の特に好ましい一実施態様において、ポリマーがL1及びL2からの溶媒混合物中で溶解される。
【0092】
溶媒L1中でのシリコーン化合物S及び/又は出発シリコーン化合物SAの溶解性は、当業者に良く知られているか、又は、記載を見出せない場合には、溶解性試験により容易に決定できる。
【0093】
このために適切な溶媒L2は、いくつかの試験において迅速に見つけ出されることができ、例えば単純な濁度滴定において見つけ出されることができる。このために、ポリマーの沈殿が観察されるまで、均一なポリマー溶液に第2の溶媒が添加される。
【0094】
シリコーン化合物S及び/又は出発シリコーン化合物SAの溶解性は強く相違し、溶媒L1は所定のシリコーン化合物S及び/又は出発シリコーン化合物SAのため、同時に、溶媒L2は他のシリコーン化合物Sのためであってよい。
【0095】
好ましい有機溶媒L1又は溶媒L2は、炭化水素、ハロゲン化炭化水素、エーテル、アルコール、アルデヒド、ケトン、酸、無水物、エステル、N含有溶媒及びS含有溶媒である。
【0096】
慣用の炭化水素の例は、ペンタン、ヘキサン、ジメチルブタン、ヘプタン、ヘキサ−1−エン、ヘキサ−1,5−ジエン、シクロヘキサン、テルペンチン、ベンゼン、イソプロピルベンゼン、キシレン、トルエン、しみ抜きベンゼン、ナフタレン並びにテトラヒドロナフタレンである。
【0097】
慣用のハロゲン化炭化水素の例は、フルオロホルム、ペルフルオロヘプタン、塩化メチレン、クロロホルム、テトラクロロ炭素、1,2−ジクロロエタン、1,1,1−トリクロロエタン、テトラクロロエテン、トリクロロエテン、塩化ペンチル、ブロモホルム、1,2−ジブロモメタン、ヨウ化メチレン、フロオロベンゼン、クロロベンゼン並びに1,2−ジクロロベンゼンである。
【0098】
慣用のエーテルの例は、ジエチルエーテル、ブチルエチルエーテル、アニソール、ジフェニルエーテル、エチレンオキシド、テトラヒドロフラン、フラン、トリエチレングリコール並びに1,4−ジオキサンである。
【0099】
慣用のアルコールの例は、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、オクタノール、シクロヘキサノール、ベンジルアルコール、エチレングリコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコール、ブチルグリコール、グリセロール、グリセリン、フェノール並びにm−クレゾールである。
【0100】
慣用のアルデヒドの例は、アセトアルデヒド及びブチルアルデヒドである。慣用のケトンの例は、アセトン、ジイソブチルケトン、ブタン−2−オン、シクロヘキサノン並びにアセトフェノンである。慣用の酸の例はギ酸及び酢酸である。慣用の無水物の例は酢酸無水物及び無水マレイン酸である。
【0101】
慣用のエステルの例は、酢酸メチルエステル、酢酸エチルエステル、酢酸ブチルエステル、酢酸フェニルエステル、グリセロールトリアセタート、シュウ酸ジエチルエステル、ジオクチルセバカート、安息香酸メチルエステル、フタル酸ジブチルエステル、DBE(R) (DuPont de nemours)並びにリン酸トリクレシルエステルである。
【0102】
慣用の窒素含有溶媒の例は、ニトロメタン、ニトロベンゼン、ブチロニトリル、アセトニトロル、ベンゾニトロル、マロノニトリル、ヘキシルアミン、アミノエタノール、N,N−ジエチルアミノエタノール、アニリン、ピリジン、N,N−ジメチルアニリン、N,N−ジメチルホルムアミド、N−メチルピペラジン並びに3−ヒドロキシプロピオニトリルである。
【0103】
慣用の硫黄含有溶媒の例は、硫化炭素(Schwefelkohlenstoff)、メタンチオール、ジメチルスルホン、ジメチルスルホキシド並びにチオフェンである。
【0104】
慣用の無機溶媒の例は、水、アンモニア、ヒドラジン、二酸化硫黄、四塩化ケイ素及び四塩化チタンである。
【0105】
高分子量溶媒L1又は溶媒L2として、反応性でないポリマー全てが使用できる。
【0106】
好ましくは、加工温度で液状の、工業的な量で提供可能な、反応性でないポリマーが使用される。
【0107】
この種の溶媒L1又は溶媒L2の例は、特に、非反応性末端基を有するポリジメチルシロキサン、例えばトリメチルシリル末端基を有する鎖状シリコーン、フェニルシロキサン、環式シロキサン、例えばシクロヘキサジメチルシロキサン又はシクロデカジメチルシロキサンを含む。この種の溶媒L1又は溶媒L2の更なる例は、ポリプロピレンオキシド、ポリエチレンオキシド、ポリアミド、ポリ酢酸ビニル、ポリイソブテン、ポリアクリラート、ポリブタジエン、ポリイソプレン及び列記した物質群のコポリマーを含む。
【0108】
シリコーン化合物S及び/又は出発シリコーン化合物SAとしてのシリコーンコポリマーのための特に好ましい溶媒L1は、アルコール、例えばイソプロパノールである。
【0109】
シリコーンのための特に好ましい溶媒L1は、例えばトルエン、キシレン、ベンジン(沸点80℃超)、ペンタン又はヘキサンである。シリコーン化合物S及び/又は出発シリコーン化合物SAとしてのシリコーンコポリマーのための特に好ましい溶媒L2は、例えばトルエン、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、トリエチレングリコール、DBE(R)、グリセリン又はNMPである。
【0110】
シリコーン化合物S及び/又は出発シリコーン化合物SAは、同様に、三元溶媒混合物中で溶解されることができる。三元溶媒混合物の適切な例は、例えば、1の溶媒L1及び2の溶媒L2からの混合物であってよい。三元溶媒混合物の例は、イソプロパノール(溶媒L1)、N−メチルピペラジン(溶媒L2)及びジメチルホルムアミド(溶媒L2)である。シリコーン化合物S及び/又は出発シリコーン化合物SAは、同様に、1より多くの溶媒L1と2より多くの溶媒L2からの溶媒混合物中に溶解されることができる。
【0111】
溶媒L1と溶媒L2との量比は広い範囲で変動できる。好ましくは、第1の工程で100質量部の溶媒L1に対して、少なくとも2質量部、特に少なくとも10質量部の溶媒L2及び最高5000質量部、特に最高1000質量部の溶媒L2が使用される。
【0112】
好ましくは、第1の工程で製造される溶液又は懸濁物は、95質量%までが、さらに好ましくは80質量%までが、特に好ましくは60質量%までが溶媒L1及び溶媒L2を含有する。
【0113】
好ましくは、第1の工程で製造される溶液又は懸濁液は、少なくとも1質量%、特に好ましくは少なくとも10質量%、とりわけ少なくとも15質量%、最高70質量%、特に好ましくは最高40質量%、とりわけ最高25質量%のシリコーン化合物S及び/又は出発シリコーン化合物SAを含有する。
【0114】
好ましくは、前記溶液又は懸濁物は、第2の工程において少なくとも0℃、特に好ましくは少なくとも10℃、とりわけ少なくとも20℃、最高60℃、特に好ましくは最高50℃の温度で成形される。
【0115】
本発明の一実施態様において、前記溶液又は懸濁物に更なる添加剤が添加される。典型的な添加剤は無機塩及びポリマーである。慣用の無機塩は、LiF、NaF、KF、LiCl、NaCl、KCl、MgCl2、CaCl2、ZnCl2及びCdCl2である。
【0116】
この添加される添加剤は、この製造後に成形体中に残存するか、又は抽出されるか若しくは他の溶媒を用いて洗い流されてよい。
【0117】
この場合に、様々な添加剤の混合物が溶液又は懸濁物へと一緒に導入されてもよい。この添加剤の濃度はポリマー溶液中で好ましくは少なくとも0.01質量%、特に好ましくは少なくとも0.1質量%、とりわけ少なくとも1質量%、最高15質量%、特に好ましくは最高5質量%である。そして、本発明の特に好ましい一実施態様において、この溶液又は懸濁物へと1〜3質量%のLiCl及び2〜5質量%のNaClが添加される。
【0118】
この溶液又は懸濁物は加えて、調製物中で通常の添加剤及び添加物を含有できる。ここで挙げることができるのは、特にレベリング助剤、表面活性物質、付着促進剤、光保護剤、例えばUV吸収剤及び/又はラジカル捕捉剤、チクソトロープ剤並びに更なる固形物質及び充填物質であろう。成形体のそのつど所望される特性プロファイルの作成には、この種の添加物が好ましい。
【0119】
本発明の同様に好ましい一実施態様において、この多孔質成形体は、なお粒子含分を含有する。適した粒子の列記は、EP 1940940に見出される。
【0120】
本発明の更に好ましい一実施態様において、この多孔質成形体は活性増強性粒子も含有する。増強性粒子の例は、処理したか又は処理していない表面を有する熱分解又は沈殿ケイ酸である。
【0121】
この場合に、前記溶媒又は懸濁物は、全質量に対して、好ましくは粒子の含有量0〜20質量%、特に好ましくは0〜10質量%、特にとりわけ好ましくは0〜5質量%を有する。
【0122】
この場合に、前記ポリマー溶液は1又は複数の様々な粒子タイプ、例えば二酸化ケイ素並びにリン酸アルミニウムを含有できる。
【0123】
製造可能な薄い多孔質成形体の好ましい幾何学的実施態様は、シート、チューブ、繊維、中空繊維、マットであり、その際、この幾何学的形状は、固定した形状には全くとらわれず、広く使用される基材に依存する。
【0124】
さらに好ましくは、三次元多孔質成形体であり、その際、この多孔質成形体は、コーティングとして設けられるか又は構造形成後に再度ここから除去される。
【0125】
成形体の製造には、前記溶液又は懸濁液が第2の工程において好ましくは基材に設けられるか又は紡糸される。基材に設けられた溶液又は懸濁物は、この場合に好ましくはシートへと再加工され、その一方で、紡糸された溶液又は懸濁物は好ましくはチューブ、繊維及び中空繊維へと加工される。
【0126】
特に好ましくはシリコーン化合物Sから本方法により多孔質シート及び3次元多孔質成形体が製造される。
【0127】
この基材は好ましくは、金属、金属酸化物、ポリマー又はガラスを含む群からの1種以上の物質を含む。この基材は、この場合に、根本的に幾何学的形態にはとらわれない。しかし好ましくは、この場合に、プレート、シート、テキスタイル平面基材、製織されたか又は好ましくは製織されていない網の形の又は特に好ましくは製織されていない不織布の形の基材の使用である。さらに特に好ましくは、シリコーン化合物Sからの多孔質成形体の形成の場合、特に浸漬コーティング又は吹付けコーティングの場合に、三次元構築物、例えばケース、石材、手袋又は他の成型体である。
【0128】
ポリマーを基礎とする基材は、例えば、ポリアミド、ポリイミド、ポリエーテルイミド、ポリカーボナート、ポリベンズイミダゾール、ポリエーテルスルホン、ポリエステル、ポリスルホン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリウレタン、ポリビニルクロリド、セルロースアセタート、ポリビニリデンフルオリド、ポリエーテルグリコール、ポリエチレンテレフタラート(PET)、ポリアリールエーテルケトン、ポリアクリルニトリル、ポリメチルメタクリラート、ポリフェニレンオキシド、ポリカーボナート、ポリエチレン又はポリプロピレンを含む。好ましくはこの場合に、ガラス転移温度Tg少なくとも80℃を有するポリマーである。ガラスを基礎とする基材は、例えば石英ガラス、鉛ガラス、フロートガラス又はソーダ石灰ガラスを含む。
【0129】
好ましい網基材又は不織布基材は、ガラス−、カーボン−、アラミド−、ポリエステル−、ポリエチレン−、ポリプロピレン−、ポリエチレン/ポリプロピレン−コポリマー又はポリエチレンテレフタラート−繊維を含む。
【0130】
この基材の層厚は、好ましくは≧1μm、特に好ましくは≧50μm、特にとりわけ好ましくは≧100μmであり、好ましくは≦2mm、特に好ましくは≦600μm、特にとりわけ好ましくは≦400μmである。基材の層厚についての最も好ましい範囲は、この前述の値から作成できる範囲である。
【0131】
シリコーン化合物Sからの多孔質成形体の厚さは、主として溶液又は懸濁液の量により決定される。本発明のプロセスでは好ましくは蒸発工程又は抽出工程が行われるので、比較的薄い成形体が好ましい。
【0132】
基材へ溶液又は懸濁物を設ける全ての技術的に知られている形式が、多孔質成形体の製造に使用できる。この溶液又は懸濁物を基材に設けることは、この場合に、好ましくはドクターを用いて、メニスカスコーティング、キャスティング、吹付け、浸漬、シルクスクリーン、凹版、トランスファーコーティング、グラビアコーティング又はスピンオンディスクを用いて行われる。このように設けられた溶液又は懸濁物は、好ましくは≧10μm、特に好ましくは≧100μm、とりわけ≧200μm、好ましくは≦10000μm、特に好ましくは≦5000μm、とりわけ≦1000μmのフィルム厚を有する。フィルム厚についての最も好ましい範囲は、この前述の値から作成できる範囲である。
【0133】
好ましくは、成形される溶液又は懸濁液から、第3の工程において溶媒L1が除去され、そして好ましくはこの後に第4の工程において溶媒L2及び残分の溶媒L1が蒸発により除去される。この蒸発は好ましくは少なくとも10℃、特に好ましくは少なくとも20℃、最高150℃、特に好ましくは最高200℃の温度で行われる。この蒸発は任意の圧力で、例えば減圧、加圧又は常圧で実施されることができる。蒸発は同様に定義された湿分条件で行われることができる。温度に応じて、相対湿度は0.5〜99%の範囲に特に好ましくはある。
【0134】
既に述べたように、この蒸発工程は定義された溶媒雰囲気下、例えばH2O蒸気、アルコール蒸気下でも行われることができる。この雰囲気の飽和含分は、この場合に、広い範囲で、例えば0%(乾燥雰囲気)〜100%(プロセス温度で完全な飽和)で変動できる。これによって、この雰囲気からの溶媒L1の蒸発速度又は溶媒又は溶媒L2の取り込みが、広い範囲で変動される。
【0135】
蒸発の好ましい期間は、そのつどのシステムについて、いくつかの試験において算出できる。好ましくは、この蒸発は少なくとも0.1秒〜数時間である。
【0136】
正確な蒸発時間の記載は行われることができない、というのも、決定は各システムのため及び各溶液又は懸濁物のため個々に行われなくてはならないからである。
【0137】
本発明の同様に好ましい実施態様において、第4の工程において溶媒L2及び残分の溶媒L1は抽出により除去される。
【0138】
この抽出は、この場合に好ましくは、形成される多孔質構造を崩壊させないが、溶媒L2と良好に混合可能である更なる溶媒を用いて行われる。特に好ましくは抽出剤としての水の使用である。抽出は好ましくは20℃〜100℃の温度で行われる。抽出の好ましい期間は、そのつどのシステムについて、いくつかの試験において算出できる。好ましくは、抽出の期間は少なくとも1秒〜数時間である。この場合に、この過程を数回繰り返すこともできる。
【0139】
蒸発期間も蒸発条件も、孔の種類、孔サイズ及び全多孔率に関してこの多孔質構造に影響を及ぼす。
【0140】
好ましくは、断面に沿って一様な孔分布を有する成形体の製造である。
【0141】
特に好ましくは、0.1μm〜20μmの孔径を有するミクロ孔成形体の製造である。
【0142】
この成形体は、好ましくは等方性孔分布を有する。
【0143】
狙った適用のために好ましい場合には、プロセスパラメーターの選択によって異方性の孔分布もが本発明の多孔質成形体中で達成できる。
【0144】
このプロセスに応じて製造される成形体は、一般的に多孔質構造を有する。この自由体積は好ましくは少なくとも5Vol%、特に好ましくは少なくとも20Vol%、とりわけ少なくとも35Vol%、最高90Vol%、特に好ましくは最高80Vol%、とりわけ最高75Vol%である。
【0145】
このようにして得られる生成物は、例えば直接的に膜として、好ましくは混合物の分離のために使用されることができる。代替的に、この成形体は基材から取り外され、次に直接的に更なる支持体なしに使用されるか、又は場合によっては他の基材、例えば不織布、織布又はシートに、好ましくは高められた温度及び圧力の使用下で、例えばホットプレス又は貼り合わせ装置中で、設けられることができる。他の基材に対する付着を改善するために、付着促進剤が使用されることができる。
【0146】
好ましい一実施態様において、前記溶媒又は懸濁物は第2の工程において紡糸される。これによって製造可能な成形体は、繊維及び中空繊維である。
【0147】
紡糸とは、繊維紡糸ノズルを通じてポリマー溶液がノズル噴霧される、繊維の製造を当業者は理解する。中空繊維は当業者に自体公知であり、一般的に筒状の繊維であり、これは断面において1以上の通過可能な中空室を有し、この種の中空室はカナルとも呼ばれる。
【0148】
この繊維の外径は、好ましくは少なくとも10μm、特に好ましくは少なくとも100μm、とりわけ少なくとも300μm、好ましくは最高5mm、特に好ましくは最高2mm、とりわけ最高1000μmである。
【0149】
中空繊維の内径、すなわち、カナルの直径は、好ましくは少なくとも8μm、特に好ましくは少なくとも80μm、とりわけ少なくとも280μm、好ましくは最高4.5mm、特に好ましくは最高1.9mm、とりわけ最高900μmである。
【0150】
この中空繊維は任意の長さであることができる。
【0151】
この中空繊維膜の製造の間に、この中空繊維の中空室中に通常はガス、ガス混合物又は液体、好ましくは空気、特に圧縮空気、又は窒素、酸素、二酸化炭素、水又は有機溶媒、例えば炭化水素、ハロゲン化炭化水素、エーテル、アルコール、ケトン、酸、エステル、窒素含有溶媒又は硫黄含有溶媒が存在する。このようにしてこの中空繊維の中空室の崩壊が妨げられることができる。
【0152】
この紡糸は好ましくは20〜150℃の温度で行われる。中空繊維の製造の場合には、場合によっては1以上の更なるポリマー層が共紡糸されることができる。このようにして多層の中空繊維が得られる。
【0153】
このようにして得られる中空繊維は、本発明のプロセスの第3及び第4の工程に応じて更に加工される。
【0154】
さらに本発明の好ましい一態様において、この多孔質シリコーン成形体は押出により自立式のシートへと又は基材上で製造される。
【0155】
完成して作製された成形体は、好ましくは少なくとも1μm、特に好ましくは少なくとも10μm、とりわけ少なくとも50μm、大抵は好ましくは100μm、好ましくは最高10000μm、特に好ましくは最高2000μm、とりわけ最高1000μm、特にとりわけ好ましくは最高500μmの層厚を有する。
【0156】
このようにして得られた成形体は直接的に膜として、好ましくは混合物の分離のために使用されることができるか、又は、更なる慣用の後処理、例えば熱処理、高圧プラズマ又は低圧プラズマを用いた処理、ガンマ線、レントゲン線、マイクロ波線又は化学線での照射、又は、表面改質、例えば表面コーティングに供されることができる。
【0157】
成形体の表面コーティング又は含浸された表面は好ましくは少なくとも10nm、特に好ましくは少なくとも100nm、とりわけ少なくとも500nm、好ましくは最高500μm、特に好ましくは最高50μm、とりわけ最高10μmの厚さを有する。コーティングには、例えば、ポリマー、例えばポリアミド、ポリイミド、ポリエーテルイミド、ポリカーボナート、ポリベンズイミダゾール、ポリエーテルスルホン、ポリエステル、ポリスルホン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリウレタン、シリコーン、ポリジメチルシリコーン、ポリメチルフェニルシリコーン、ポリメチルオクチルシリコーン、ポリメチルアルキルシリコーン、ポリメチルアリールシリコーン、ポリビニルクロリド、ポリエーテルグリコール、ポリエチレンテレフタラート(PET)、ポリアリールエーテルケトン、ポリアクリルニトリル、ポリメチルメタクリラート、ポリフェニレンオキシド、ポリカーボナート、ポリエチレン又はポリプロピレンが適している。このポリマーは、通常の方法を用いて、例えば貼り合わせ、吹付け、ドクター塗布又は接着により成形体に設けられることができる。好ましくはこの種のコーティングは10nm〜10μmの孔を有する成形体に設けられる。
【0158】
この成形体は、三次元構築物のためのコーティングとして、その表面特性を例えば防音、断熱、衝撃緩和に関して変化させるために適している。コーティングの際に達成可能な通気性は、この場合に、所望の付加的な特性を示すことができる。好ましくは、ケース、建材又はテキスタイルが本発明の成形体でコーティングされる。
【0159】
さらに、多孔質シリコーン成形体は絆創膏においても使用できる。同様に好ましいのは、包装材料における、とりわけ製造後になお更なる成熟プロセスを経過する食品の包装の場合の、多孔質シリコーン成形体の使用である。
【0160】
成形体は、膜としての使用のために、混合物の分離のための全ての慣用の方法、例えば逆浸透、ガス分離、透析蒸発、ナノ濾過、限外濾過又はマイクロ濾過に適している。成形体を用いて、固体−固体、ガス状−ガス状、固体−ガス状又は液状−ガス状、特に液状−液状及び液状−固体混合物が分離されることができる。
【0161】
そして、成形体は、膜としてのその使用の場合に高い分離性能を、粒子、細菌及びウィルスを水から分離する場合に示す。膜は、燃料、例えばガソリン、バイオエタノール又はディーゼル燃料からの水の除去にも適している。成形体の更なる使用領域は、エタノール−水−混合物の分離のための又は排水からの揮発性有機汚染物質(略してVOC(volatile organic Compounds)としても知られている)の分離のための、例えばベンゼン、アセトン、イソプロパノール、エタノール、メタノール、キシレン、トルエン、塩化ビニル、ヘキサン、アニリン、ブタノール、アセトアルデヒド、エチレングリコール、DMF、DMAC、メチル−エチル−ケトン並びにメチル−イソブチル−ケトンの分離のための蒸気通過設備である。
【0162】
成形体は、電着塗装の清浄化のため、例えば自動車産業、タンパク質精製、油−水−エマルションの精製において、例えば未完成製品の冷却及び潤滑化のために、並びに、粒子形状不純物、例えばラテックス残留物を有する排水の工業的水精製に適している。
【0163】
更なる典型的な適用は、細菌又はウィルスの水からの除去であり、これは、製薬学的製品の滅菌濾過、ワイン及びビールの滅菌、電子産業のための粒子不含の純水の製造並びにいわゆる膜−バイオリアクター−設備における清澄設備中での排水の処理である。
【0164】
本発明の成形体は、同様に被服物品、例えばジャケット、手袋、帽子又は靴において使用されるか、又は屋根テープ(Dachbahn)として使用される。この成形体は、この場合に撥水性かつ通気性である。
【0165】
成形体は、同様に血液濾過、例えば透析又は血液透析のために使用される。
【0166】
成形体のための更なる適用は、例えばMembrane Technologie and Applications, second Edition, R. W. Baker, New York, Wiley, 2004に記載されている。
【0167】
こうして製造される成形体は、セパレーターとしても、例えば一次バッテリーや二次バッテリーにおいて使用される。特に好ましくは、この場合に、リチウム−イオン−蓄電池における成形体の使用である。
【0168】
成形体は、慣用のモジュール、例えば中空繊維モジュール、スパイラル製織ロールモジュール(spiralgewundenen Wickelmodul)、プレート−モジュール、クロス−フロー−モジュール又はデッドエンドモジュールに使用されることができる。
【0169】
多孔質シリコーン成形体の更なる適用は、典型的な適用が知られているシリコーンフォーム、例えば熱間/冷間絶縁材、防音材及び衝撃緩和材又はシールリングに一致する。
【0170】
前記式の存在する記号の全ては、それらの意味をそれぞれ互いに無関係に有する。全ての式中でケイ素原子は四価である。
【0171】
以下の実施例では、そのつど、特に示されていなければ、全ての量及び%の記載は質量に対するものであり、全ての圧力は0.10MPa(abs.)であり、かつ全ての温度は20℃である。
【0172】
実施例1:N−メチル−2−ピロリドンを用いたキャスティング溶液の製造
イソプロパノール16g(沸点82℃)及びN−メチル−2−ピロリドン(NMP)(沸点203℃)16gに対して、オルガノポリシロキサン−ポリ尿素コポリマー(GENIOMER(R) 200、Wacker Chemie AG)2g及びオルガノポリシロキサン−ポリ尿素コポリマー(SLM TPSE 100、Wacker Chemie AG)6gからなるポリマー混合物8gを添加する。
【0173】
全バッチをこれに続いて16時間室温で垂直振盪器で溶解させる。
【0174】
わずかに濁った粘性溶液が20質量%の固形含有量で得られる。
【0175】
実施例2:多孔質シリコーン成形体の製造
実施例1からの溶液10gをテフロンシャーレへ注ぐ。イソプロパノールの蒸発の間この混合物は凝固し、わずかに濁る。イソプロパノール及びNMPが16時間のうちに蒸発した後、この多孔質シリコーン成形体は層厚500μmで残存する。
【0176】
走査電子顕微鏡において、両方のシートの約10μmの大きさの孔の均一かつ一様な分布を明らかに認識することができる。このシートの表面では、同様に約10μmの大きさの開口を認識できる。このシートの全多孔率は、約60Vol%である。
【0177】
実施例3:多孔質シリコーン成形体の製造
実施例1からの溶液2gをテフロンシャーレへ注ぐ。イソプロパノールの蒸発の間この混合物は凝固し、わずかに濁る。イソプロパノール及びNMPが16時間のうちに蒸発した後、この多孔質シリコーン成形体は層厚100μmで残存する。
【0178】
走査電子顕微鏡において、両方のシートの約10μmの大きさの孔の均一かつ一様な分布を明らかに認識することができる。このシートの表面では、同様に約10μmの大きさの開口を認識できる。このシートの全多孔率は、約60Vol%である。
【0179】
実施例4:イソプロパノールのより高い割合を有するキャスティング溶液の製造
イソプロパノール24g(沸点82℃)及びN−メチル−2−ピロリドン(NMP)(沸点203℃)8gに対して、オルガノポリシロキサン−ポリ尿素コポリマー(GENIOMER(R) 200)2g及びオルガノポリシロキサン−ポリ尿素コポリマー(SLM TPSE 100)6gからなるポリマー混合物8gを添加する。
【0180】
全バッチをこれに続いて16時間室温で垂直振盪器で溶解させる。
【0181】
わずかに濁った粘性溶液が20質量%の固形含有量で得られる。
【0182】
実施例5:異方性孔構造を有する多孔質シリコーン成形体の製造
実施例4からの溶液2gをテフロンシャーレへ注ぐ。イソプロパノールの蒸発の間この混合物は凝固し、わずかに濁る。イソプロパノール及びNMPが16時間のうちに蒸発した後、この多孔質シリコーン成形体は層厚150μmで残存する。
【0183】
走査電子顕微鏡において異方性孔分布を認識することができる。成形体下面で10μmの孔を認識でき、その一方で、シートの表面では孔はもはや認識できない。このカバー層は、この場合に約20μmの厚さを有する。このシートの全多孔率は、約60Vol%である。
【0184】
実施例6:トリエチレングリコールを有するキャスティング溶液の製造
イソプロパノール7.5g、及び、オルガノポリシロキサン−ポリ尿素コポリマー(GENIOMER(R) 200)0.625gとオルガノポリシロキサン−ポリ尿素コポリマー(SLM TPSE 100)1.875gからなるポリマー混合物2.5gからなる溶液に、トリエチレングリコール(沸点278℃)3.0gを添加する。
【0185】
全バッチをこれに続いて2時間室温で垂直振盪器で溶解させる。
【0186】
わずかに濁った粘性溶液が19質量%の固形含有量で得られる。
【0187】
実施例7:多孔質シリコーン成形体の製造
実施例6において製造されたドクター溶液からのシリコーン成形体の製造のために、ドクターアプリケーター装置(Coatmaster 509 MC−I, Erichson)を使用する。
【0188】
フィルムアプリケーターフレームとして、フィルム幅11cm及び間隙高さ600μmを有するチャンバー付きドクターを使用する。
【0189】
基材として使用されるガラスプレートを、真空吸気プレート(Vakuumsaugplatte)を用いて固定する。このガラスプレートをドクター塗布前にエタノールに含浸させたクリーンルームワイプを用いて拭き取る。このようにして、場合によって存在する粒子汚染物が除去される。
【0190】
これに続いて、このフィルムアプリケーターフレームを前記溶液で充填し、そして、一定のフィルム引き速度10mm/sでガラスプレート上で引く。
【0191】
この後に、なお液状の湿潤フィルムを20℃で空気に対して約30分間乾燥させる。この場合に、フィルムのわずかな濁りが示される。
【0192】
なおトリエチレングリコールを含有するこの成形体は、このトリエチレングリコールを除去するために、水中に約10分間挿入される。これに続き、この成形体を約30分間空気に対して乾燥させる。
【0193】
約140μmの厚さの、不透明な膜が得られる。走査電子顕微鏡において、約10μmの大きさの孔の均一かつ一様な分布を明らかに認識することができる。このシートの表面では、同様に約10μmの大きさの開口を認識できる。このシートの全多孔率は、約60Vol%である。
【0194】
実施例8:比較的大きな孔を有する多孔質シリコーン成形体の製造
実施例5と同様に、湿潤フィルムを作製する。
【0195】
これに続き、なお液状の湿潤フィルムをガラスシャーレでカバーし、20℃で約60分間乾燥させる。この場合に、フィルムのわずかな濁りが示される。
【0196】
なおトリエチレングリコールを含有するこの成形体は、この成形体からトリエチレングリコールを洗い流すために、水中に約10分間挿入させる。これに続き、この成形体を約30分間空気に対して乾燥させる。
【0197】
約140μmの厚さの、不透明な多孔質シリコーン膜が得られる。走査電子顕微鏡において、約20μmの大きさの孔の均一かつ一様な分布を明らかに認識することができる。このシートの表面では、同様に約20μmの大きさの開口を認識できる。このシートの全多孔率は、約60Vol%である。
【0198】
実施例9:(本発明によらない比較例)
多孔性のない緻密なフィルムの製造
緻密なフィルムの製造のために、イソプロパノール32gに、オルガノポリシロキサン−ポリ尿素コポリマー(GENIOMER(R) 200)2g及びオルガノポリシロキサン−ポリ尿素コポリマー(SLM TPSE 100)6gからなるポリマー混合物8gを添加する。
【0199】
全バッチをこれに続いて16時間室温で垂直振盪器で溶解させる。
【0200】
明澄な溶液が20質量%の固形含有量で得られる。
【0201】
フィルムアプリケーターフレームとして、フィルム幅11cm及び間隙高さ300μmを有するチャンバー付きドクターを使用する。
【0202】
基材として使用されるガラスプレートを、真空吸気プレートを用いて固定する。このガラスプレートをドクター塗布前にエタノールに含浸させたクリーンルームワイプを用いて拭き取る。このようにして、場合によって存在する粒子汚染物が除去される。
【0203】
これに続いて、このフィルムアプリケーターフレームを前記溶液で充填し、そして、一定のフィルム引き速度25mm/sでガラスプレート上で引く。
【0204】
この後でなお液状の湿潤フィルムを80℃で約3時間乾燥させる。
【0205】
透明なフィルムを層厚50μmで得る。
【0206】
製造される成形体の試験
実施例5及び9で製造した成形体及びフィルムのガス輸送特性
この異なる試料をガス透過性試験装置GPC(Brugger)を用いてN2及びO2のその異なるガス透過性に関して検査する。検査した試料の結果を第1表にまとめてある。この測定を一定のガス流100cm3/分及び一定の測定温度20℃で実施する。
【0207】
第1表:検査した試料のまとめ
【表1】

【0208】
第1表に基づき、この通過性が、実施例5からの本発明の成形体の異方性の多孔質構造によって、実施例9からの充実材料(Vollmaterial)から製造したフィルムに比較して、顕著により高いことが明らかに認識される。しかし、この場合に、N2/O2選択性は同じ位高いままである。
【0209】
この特性は、先行技術の材料よりも本発明の成形体を顕著により効率的にする。
【0210】
実施例2、4及び9で製造した成形体及びフィルムの水蒸気輸送特性
この試料を水蒸気透過性試験装置LYSSY L80−5000(Lyssy AG、Zollikon)を用いて、その水蒸気透過性について検査する(試験モードDIN EN ISO 15106−1、試験条件T=23℃、RH=10〜15%)。この結果を、第2表にまとめる。
【0211】
第2表:検査した試料のまとめ
【表2】

【0212】
第2表に基づき、この水蒸気透過性が、実施例2及び3からの本発明の成形体の多孔質構造によって、実施例9からの充実材料から製造したフィルムに比較して、顕著により高いことが明らかに認識される。
【0213】
この特性は、先行技術の材料よりも本発明の成形体を顕著により効率的にする。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の工程において、溶媒L1及び溶媒L2からの混合物中のシリコーン化合物S又は出発シリコーン化合物SAからの溶液又は懸濁物を形成する、
第2の工程において、前記溶液又は懸濁物を成形する、
第3の工程において、溶媒L1及び溶媒L2からの混合物中でシリコーン化合物Sが溶解性でなくなるまで、溶媒L1を前記溶液又は懸濁物から除去し、その際、シリコーン化合物Sが豊富な相A及びシリコーン化合物Sが乏しい相Bが形成され、これによって、この相Aを通じて構造形成が行われる、そして
第4の工程において、溶媒L2及び残分の溶媒L1を除去する、
その際、シリコーン化合物Sが出発シリコーン化合物SAから形成される場合には、これは、第1、第2及び第3の工程から選択される一又は複数の工程において起こる
シリコーン化合物Sからの薄い多孔質成形体を製造する方法。
【請求項2】
シリコーン化合物S及び出発シリコーン化合物SAが、構造「Si−O−Si」の純粋なシロキサン、構造「Si−R″−Si」のシルカルバン[式中、R″は、場合によって置換されたか又はヘテロ原子で中断された、二価の炭化水素基である]を意味するか、又は有機ケイ素基を有するコポリマーである、請求項1記載の方法。
【請求項3】
出発シリコーン化合物SAが、一般式(I)
【化1】

[式中、
Rは、酸素原子又は窒素原子によって中断されていてよい、置換されたか又は非置換の炭化水素基である、
Zは、架橋可能な基である、
aは、0、1、2又は3、好ましくは1又は2の値を意味する、そして
bは、0、1、2又は3、好ましくは0、1又は2、特に好ましくは0の値を意味する、
但し、a+bからの合計は3以下であり、一分子につき少なくとも2つの基Zが存在している]
の単位を有する有機ケイ素化合物である、請求項1又は2記載の方法。
【請求項4】
シリコーン化合物Sがコポリマーである、請求項1記載の方法。
【請求項5】
シリコーン化合物Sが、一般式(III)
【化2】

[式中、
構造要素Eは、一般式(IVa−f)から選択される
【化3】

構造要素Fは、一般式(Va−f)から選択される
【化4】

ここで、
3は、Rの意味合いを有する、
Hは、水素又はRの意味合いを有する、
Xは、相互に隣接していないメチレン単位が−O−基により置換されていてよい、1〜20個の炭素原子を有するアルキレン基、又は、6〜22個の炭素原子を有するアリーレン基を意味する、
Yは、場合によってフッ素又は塩素により置換されている、1〜20個の炭素原子を有する二価の炭化水素基を意味する、
Dは、場合によってフッ素、塩素、C1〜C6−アルキル−又はC1〜C6−アルキルエステル置換したアルキレン基であって1〜700個の炭素原子を有するもの、この場合に、相互に隣接していないメチレン単位は−O−、−COO−、−OCO−又は−OCOO−基により置換されていてよい、又は、6〜22個の炭素原子を有するアリーレン基、を意味する、
B、B′は、ポリマーに共有結合している、反応性又は非反応性の末端基を意味する、
mは、1〜4000の整数を意味する、
nは、1〜4000の整数を意味する、
gは、少なくとも1の整数を意味する、
hは、0〜40の整数を意味する、
iは、0〜30の整数を意味する、そして
jは、0より大きい整数を意味する]のオルガノポリシロキサン/ポリ尿素/ポリウレタン/ポリアミド又はポリオキサリルジアミンコポリマーである、
請求項4記載の方法。
【請求項6】
1barでの溶媒L1の沸点が、溶媒L2の沸点よりも少なくとも30℃より低い、請求項1から5のいずれか1項記載の方法。
【請求項7】
第3の工程において溶媒L1が、第4の工程において溶媒L2が、蒸発により、成形される溶液又は懸濁物から除去される、請求項1から6のいずれか1項記載の方法。
【請求項8】
第4の工程において溶媒L2及び残分の溶媒L1が、更なる溶媒を用いた抽出により、成形される溶液又は懸濁物から除去される、請求項1から6のいずれか1項記載の方法。
【請求項9】
請求項1から8のいずれか1項記載の方法により製造可能な、シリコーン化合物Sからの薄い多孔質成形体。
【請求項10】
膜としての請求項9記載の成形体の使用。

【公表番号】特表2013−518949(P2013−518949A)
【公表日】平成25年5月23日(2013.5.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−551571(P2012−551571)
【出願日】平成23年1月19日(2011.1.19)
【国際出願番号】PCT/EP2011/050659
【国際公開番号】WO2011/095393
【国際公開日】平成23年8月11日(2011.8.11)
【出願人】(390008969)ワッカー ケミー アクチエンゲゼルシャフト (417)
【氏名又は名称原語表記】Wacker Chemie AG
【住所又は居所原語表記】Hanns−Seidel−Platz 4, D−81737 Muenchen, Germany
【Fターム(参考)】