説明

多孔質リン酸塩セラミック、その製造方法及び使用方法

本発明の実施形態は、特殊な工程を使用して形成され、特定の強度範囲、具体的には100ポンド・パー・スクエア・インチ(100psi、約0.69MPa)未満の圧縮強度を確保する多孔質リン酸塩体を提供する。更なる実施形態は、車両停止システムとしての様々なリン酸塩セラミックの使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、2010年1月14日に出願された、発明の名称が「多孔質化学的結合リン酸塩セラミック体」である、米国仮特許出願第61/294,986号の優先権を主張し、その開示全てをここに援用して本文の記載の一部とする。
【背景技術】
【0002】
本発明の実施形態は、概して、特定の強度範囲、具体的には、100ポンド/平方インチ(100psi:約0.69MPa)未満の圧縮強度を確保するための特殊な工程を用いて形成された多孔質リン酸塩体に関する。更なる実施形態は、車両停止システム及びその他の破砕可能又は変形可能な材料としての様々なリン酸塩セラミックの使用に関する。
【0003】
「リン酸塩セラミック」とも呼ばれる化学的結合リン酸塩セラミック(CBPC)は、セメント質又はセラミック質のいかなる化学的に結合したリン酸塩化合物であり、一般的に室温において最終強度を得るが、最終生成物の所望の用途に応じて、低加熱温度(40℃から600℃)、低焼成温度(500℃から1000℃)又は、高焼成温度(1000℃を超える)において、更なる処理が施されてもよい。リン酸塩セラミックは、様々な無機生成物/無機体を含んでよいが、共通の成分はリン酸塩化合物−金属酸化物バインダである。
【0004】
CBPCは、典型的には、無機酸化物と、リン酸溶液又はアルカリ性リン酸塩溶液のいずれかとの間の酸−塩基反応によって製造される。CBPCは、前硬化セラミック状物体を生成する発熱反応によって形成される。反応の一般例を以下に示す。

酸化物 + リン酸塩 + 水 → CBPC + 熱

【0005】
具体的な反応の一つの例を以下に示す。

【0006】
このセラミック状物体は室温において「固化物」となり(硬化し)、焼成する必要無しで固く、且つセラミックのように振る舞う。したがって、その生成物は、非公式に「セラミクリ−ト(Cerami−crete)」生成物と呼ばれている。このような生成物は、長年、知られているが、ここ数年において、水及び様々な産業界からの粉体状の副産物のいずれかと混合されることによって速硬化性セメントを製造できる良い候補として浮上している。粉体状の副産物を使用できるため、リサイクルの新たな手法がもたらされ、新たな「環境に優しい清潔な経済活動」の開発が促進される。例えば、アルゴンヌ国立研究所で行われたある研究プロジェクトは、練り土状材料であって、(金属ドラム内に入れた状態で)地中に投入可能であり且つ有害な成分を時間の経過と共に漏出することの無い、堅固で破壊不可能な練り土状材料内に放射性廃棄物を封じ込めた。
【0007】
セラミクリ−ト製品の他の例は、Bindan
社(例えば、道路修理セメントとして販売され使用されている Mono−patch(商標))、Grancrete社(例えば、保護コーティング又はコンクリートの代替物として使用可能なGrancrete(商標))、及びCeratech
Cement AB社(RediMax(商標)及びFireRok(商標))によって製造され販売されている。これらの材料は、一般的に、充填物として細砂及びフライ・アッシュC又はFを用いた、寒中用途の速硬化性セメントペーストとして販売されている。スチレンビーズに添加された同様のリン酸塩バインダは、天井用パネルに成形可能である。石膏及びケイ酸塩にバインダを添加して、煉瓦、パネル、及び他の建設材が形成可能である。
【0008】
リン酸塩結合性生成物の発泡混合物を、床タイル及び断熱パネル又は煉瓦を製造することにも使用し得る。これらの配合物は、混合物にフォーム(泡、foam)それ自体(例えば、調製フォーム(前もって泡立てられたもの))を加えない。代わりに、多孔質構造は、固体中に捕捉されたガスを放出する成分間の化学反応よってもたらされる。加えて、空隙率は、典型的には5%未満であり、その結果として、一般的に500psi(500ポンド/平方インチ:約3.45MPa)よりも高い強度を有する、堅固な固形物が得られる。これらの配合物も、いわゆる「多孔体」と称される構造をもたらさない。フライ・アッシュFと活性剤としてのアルカリとの混合物に、フォームを加えることによって、発泡したフライ・アッシュを生成することが提案されているが、結果として生じる構造は、セラミクレートではない。なぜならば、この構造では、リン酸塩化合物と、バインダ混合物としての金属酸化物(例えば、マグネシウム酸化物)とを使用していないからである。
【0009】
上記の他には、CBPCを用いた軽量複合材料を製造することを試みて実験が行われてきたが、これらの実験は、非常に高い圧縮強度(混合後24時間の時点で、全て概ね100psi(約0.69MPa)を超える)を有する、CBPC複合物をもたらしている。これらの試みは、過去の長年に渡り、好適なリン酸塩とみなされてきたリン酸アンモニウムも使用したが、リン酸アンモニウムは化学的工程の間にアンモニアガスを放出するため、環境へ悪影響を与える。それ故に、使用可能な他のリン酸塩材料であって、有害な気体類を環境に放出しないものを特定することが好ましい。
【0010】
軽量リン酸塩セメントの別の例として、重油及びCBM(炭層メタン)分野における封止剤として使用されるために製造されたものが挙げられる。例えば、米国特許第7,674,333号公報参照。このセメントは、混合後24時間の時点で、少なくとも500psi(約3.45MPa)という非常に高い圧縮強度を有するように意図されている。製造工程においても、フォームは使用されない。上記米国特許の開示は、混合工程中に組成物に添加可能な「発泡剤」について単に言及しているのみであり、既に調製された泡(調製フォーム)や事前に泡立てられた生成物については言及していない。
【0011】
封止材として使用されることに加えて、リン酸塩セラミック材料は、音響チャンネル特性を有するタイルを製造するための堅く、耐水性を有するリン酸塩セラミック材料の製造にも使用されてきた。例えば、米国特許第4,978,642号公報参照。これらのタイルを用意するための工程は、本文に記載したものとは異なるバインダ材料及び異なる方法を用いて、多孔構造を生成する。具体的には、二酸化炭素ガスを生成するために化学反応が用いられる。発泡生成物又は軽量生成物を提供することを模索する他の文献は多くの場合、発泡剤を添加するか、又は混合中に化学反応を起こして気泡を生成する(例えば、炭酸塩の化学反応を介して発泡させるか、過酸化水素分解の化学反応によって、及びフロン(環境的に有害である)などの液体発泡剤の蒸発によって気泡を生成させるか、機械的な混合を用いて気泡を生成するか、焼成工程において有機物質を燃焼させるか、又は、それ以外の環境的に好ましくない材料を混合物に使用する)。結果として得られる材料はまた、約140psi〜約350psi(約0.97MPa〜約2.41MPa)という高い引っ張り強度を有し、またそれらのいくつかは、500psi(約3.45MPa)以上という高い引っ張り強度を有する。
【0012】
従来技術により報告される強度の値の大部分から全ては、典型的には混合後24時間に測定されている。なぜならば、強度の大部分は、混合後24時間までには得られるからである。しかしながら、本発明者らは、これらの配合物における強度の有意な増加が、当該部分(部品)を一日を超えて硬化させるか又は乾燥することによって引き起こされることを見出した。この強度の有意な増加は、これらの用途にとって特に問題ではない。なぜならば、そのような材料に提案されている用途は断熱パネル、建設用煉瓦、耐火材、鋳造フィルタ、装飾的な構造用セラミック、構造材料、床タイルなどの、一般的に高強度が所望される材料を含むからである。そのような用途においては、混合後に複数日が経過した後の強度の増加は問題ではなく、実際に歓迎されるものである。
【0013】
対照的に、もしも材料が、安全且つ効果的な車両停止バリアとして使用されることを意図しているのならば、その材料の強度は設計値を超えることは出来ず、さもなければ、材料は車両にダメージを与えるか又は車両乗務員の生命を危険にさらすであろう。即ち、その他の用途に使用可能であり、そしてそれゆえに完全に硬化/乾燥した状態において、上述した材料よりも低い圧縮強度を有する、多孔質リン酸塩セラミック材料が提供されることが望ましい。前述のように、特定の圧縮強度を伴う材料が要求される具体的な使用の一つは、車両停止技術にある。そのような材料の圧縮強度は、動いている車両の運動エネルギーを吸収し、車両を停止させることにおいて効果的であるが、圧壊(破砕)し且つエネルギーを吸収して車両乗務員が重傷を負うこと又は死亡することを回避する上で効果的であることが好ましい。換言すれば、この材料は、衝突において圧壊又は変形するシステムの能力によって、車両のエネルギーを吸収して車両が安全に停止することを補助するのに十分な強さを有するべきであり、且つバリアに接触することで車両を崩壊させるほどの強さを有するべきではない。このシステムは、従来のバリアよりもより遅く車両を減速させ且つより衝撃を和らげるように意図されている。それゆえに、場合によっては、「非致命的な」車両停止システムと称することが出来る。これは、本願が、混合後一日又は二日経過後の材料ではなく、「完全硬化」材料に言及する理由の一つである。経時と共に強度を増すような車両停止バリアは、バリアの意図を無益なものとするであろうから、提供することは出来ない。
【0014】
非致命的な車両停止システム又は圧縮性車両停止システムの一つの例は、滑走路の末端に配置され、滑走路の末端から外れて進行する航空機の圧力を受けて、予測可能に且つ確実に圧壊(破砕)(あるいは変形する)材料又はバリアを含む。低強度材料により与えられる抵抗力は、航空機を減速させ、航空機をオーバーラン領域(過走領域)内にて停止させる。車輌停止システムの目的は、予測可能且つ特定の方法で破損することにより、車両が車両停止システムを変形させる際に、制御された予測可能な抵抗力をもたらすことにある。それゆえに所望される車両停止システムは一般的に、圧縮性、変形性、圧壊性(破砕性)を有するか又は適切な衝撃によって圧縮、変形、又は圧壊可能である。材料強度は、一定に保たれるべきであるか、又は少なくとも時間の経過と共に有意的に増加するべきではない。車両停止システムの具体的な例は、工学的材料停止システム(Engineered Materials Arresting Systems(EMAS))と称されており、EMASは今や、2005年9月30日付の米連邦航空局の勧告回状150/5220−22A「航空機のオーバーランのための特別設計材料停止システム(EMAS)」に記載されているアメリカ合衆国の飛行場設計の標準の一部である。EMAS及び滑走路の安全領域計画は米連邦航空局の指令5200.8及び5200.9において指導されている。
【0015】
あるいは、車両圧縮停止システム(又は、車両変形停止システム)を、車道又は歩行者用通路(又はその他の場所)に、例えば航空機以外の車両や物体を減速させる目的で設置してもよい。車両圧縮停止システム(又は、車両変形停止システム)は、自動車、列車、トラック、オートバイ、トラクター、モペッド(原付自転車)、自転車、ボート、又はその他の、スピードを得て制御不能となりその結果安全に停止される必要があるようないかなる車両を安全に停止させるために使用し得る。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
本文に記載する実施形態は、それゆえに、新規な方法を用いて製造され且つ特定の圧縮強度範囲を結果として有するリン酸塩セラミック材料を提供する。この材料は、多くの用途に使用し得るが、特に、非致命的車両停止システム又は、衝撃波減衰用複合材料としての使用に好適である。
【0017】
本発明の実施形態は、特殊な工程を使用して形成され、特定の強度範囲、具体的には100ポンド/平方インチ(約0.69MPa)未満の圧縮強度を確保する多孔質リン酸塩体を提供する。これらの多孔質リン酸塩体は、更に、調製フォームを用いた、そのような材料の製造方法に関する。更なる実施形態は、車両停止システム及びその他の圧壊可能な又は変形可能な材料としての様々なリン酸塩セラミックの使用に関する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】図1は、本文に記載される様々な実施形態に従って製造されたオープンセル(開放セル)リン酸塩セラミック構造を示す斜視図である。
【図2】図2は、本文に記載される様々な実施形態に従って製造されたクローズドセル(閉鎖セル)リン酸塩セラミック構造を示す斜視図である。
【図3】図3は、圧縮試験後の多孔質リン酸塩セラミック構造を示す斜視図である。
【図4】図4は、1日経過後に離型されたサンプルを示す。
【図5】図5は、本文に記載される様々な実施形態に従って製造された開放多孔質構造の顕微鏡写真を示す。
【図6】図6は、図5の近接写真を示す。
【発明を実施するための形態】
【0019】
多孔質リン酸塩セラミックは、無機生成物である。多孔質リン酸塩セラミックは、燃焼せず、水の吸収に耐性があり、溶解せず、そして、室温において固化しセラミックのような強度を有する。その結果、これらの材料はコンクリートの代わりに寒中の戸外で使用することができる。なぜならば、組成物にもよるが、固化工程は熱を放出して数時間以内に硬くなり、そして、一般的に1週間から1ヵ月以内に完全に硬化するからである。
【0020】
最終生成物として、多孔質構造のいかなる種類をも結果としてもたらす化学的結合リン酸塩セラミックの大部分は、材料中に気泡又は泡状の外観を生成するために、典型的には、製造工程中に発泡剤又は他の化学的若しくは機械的混合工程が組み込まれる。例えば、空気を導入して、発泡剤の添加及び機械的なスラリーの発泡により多孔質構造を生成してもよい。これは、界面活性剤又は食器用洗剤を水に添加し、それを攪拌してフォーム(foam、泡)を生成することに幾分似ている。意図は、凍結による亀裂の減少を促すために多孔質セラミック体を提供することであり、従って低温気候での使用に適した生成物を製造することである。しかしながら、これらの材料の報告されている圧縮強度は非常に高く、例えば、24時間経過時点で100psi(約0.69MPa)を超える圧縮強度であり、そして、この時点以降の圧縮強度は測定/報告がなされていない。これらの材料は、時間と共に更に硬くなり、硬化し続けると信じられており、そしてそれ故に最終的な圧縮強度は、報告されたこれらの値よりも更に高くなると信じられている。
【0021】
如何なる理論にも拘束されることを望まないが、この高強度が付与される原因は、少なくとも部分的には、添加した界面活性剤からフォームを生成するために必要な機械的な混合にあると信じられている。これは、パンが過剰な混練が原因で固くなることに類似する(このことは、当然ながら、添加される材料の選択及び組成に加えてである)。結果として得られる材料は、それ故に、エネルギー吸収材料としては有用では無いが、その代わりにタイル、パネル、煉瓦等の最終的な圧縮強度が重要でない(又は、一般的にとても高い)用途により好適である。
【0022】
これらの建築及び建設材料は高い圧縮強度を有しており、本文に記載される方法により製造される材料の圧縮強度をはるかに超える。このような建設関連材料は、建物の基礎、側面、及び他の構成要素としての強度を提供するために、このような高強度を有する必要がある。対照的に、本文に記載される方法により製造される材料の使用は、伝統的建築建設分野においては概して機能しないであろう。なぜならば、本文に記載される方法により製造される材料は、弱過ぎるか又は過度に圧壊され易すいであろう。即ち、典型的な建設材料及び混合方法を用いて製造されたいかなる材料の強度も、非致命的な車両停止システムが要求する最大強度を越えるであろう。
【0023】
出願人は、混合物に調製フォーム(前もって泡立てられたもの、perepared foam)を添加することにより、結果として得られる圧縮強度をより良く制御することが可能であることを特定した。食器用洗剤及び水との例え話で説明すれば、本文の記載は、シェービングクリーム又は気泡(例えば、調製フォーム)を水(例えば、スラリー)へ加えることにより似ており、フォームを形成するために混合は必要ではない。
【0024】
結果として得られる多孔質材料の強度及び軽量特徴によって、これらの材料は、衝撃波減衰材、車両停止システム、断熱及び防音材、圧壊可能安全バリア、及び/又は流動性充填材料のようなエネルギー吸収のための優れた材料となる。内部構造は、用いられる充填物及び用いられるバインダ成分の比率にもよるが、概して、結晶質及びアモルファスである。生成物の具体的な実施形態は、優れた耐水性を有しているため、地上における用途の良い候補となる。なぜならば、この材料は風解せず又は有害な生成物を地中に浸出しないからである。
【0025】
本発明の実施形態はそれ故に、概して(1)新規な多孔質リン酸塩セラミック及びその製造方法、並びに(2)非致命的車両停止システムとしての多孔質リン酸塩セラミックの使用方法に関連する。
【0026】
新規な材料及び製造方法に関して、一つの実施形態は以下の成分を含む多孔質リン酸塩セラミックを提供する。

2成分バインダ+充填物(又は複数の充填物)+水(スラリーを形成するため)+調製フォーム(perepared foam)

【0027】
[2成分バインダ]
2成分バインダ成分は、目的用途(最終用途)によるが、異なる比率の2成分から構成される。第1成分はリン酸塩化合物であり、第2の成分は金属酸化物化合物である。
【0028】
リン酸塩化合物は、リン酸一カリウム(KHP0)、リン酸一ナトリウム(NaHP0)、リン酸アンモニウム((NH)HP0)、リン酸(HP0)、又はいかなる他の(P)若しくは5価リンの誘導体、又はリン酸アルミニウム(AlP0)、リン酸カルシウム(CaHP0)のような、いわゆる過リン酸塩、オルトリン酸塩又はピロリン酸塩の誘導体のいずれかを含む、いかなる他のモノ(1)、ジ(2)若しくはトリ(3)アルカリリン酸塩であってもよい。
【0029】
金属酸化物化合物は、マグネシウム、カルシウム、ジルコニウム又はアルミニウムのようなアルカリ、アルカリ土類、遷移又はポスト遷移金属と、酸素とによって形成されてもよい。好適な金属酸化物の例は、酸化マグネシウム、酸化カルシウム、二酸化ジルコニウム、酸化アルミニウム、及び酸化マンガン(II)を含む。Al(OH) 及び Zr(OH)のような酸化物誘導体も使用可能な候補である。金属酸化物が酸化マグネシウムとして提供される場合には、可能な候補は、酸化マグネシウム粉、マグネシア、焼成マグネシア、焼成マグネサイト又はいかなる他の適切なマグネシウム組成物を含むが、これらには限定されない。組成物は、様々な精密度及び純度を有していてもよい。所望の特性にもよるが、様々な商業的、医療的及び/又は工業的等級の金属酸化物を使用してもよい。使用し得る、商業的に入手可能な酸化マグネシウムの一つの例は、Martin Marietta Magnesia Specialties社製のMagChem(登録商標)35であり、別の例は、American Element(商標)であり、これはスプレー・ドライされた酸化アルミナ粉である。
【0030】
[充填物(フィラー)]
充填物成分は、活性又は不活性、又は双方の混合物であってもよい。充填物は、フライ・アッシュC、フライ・アッシュF、スラグ、鋳造灰、赤泥、シリカ灰、粉砕ガラス、セノスフェア(浮灰)、珪灰石、発泡ポリスチレン、軽量有機凝集体、木材パルプ、再生プラスチック、空気、石膏、細砂、水硬性セメント若しくはセメント質混合物(但しポートランドセメントを含まない)のようないかなるカルシウム−アルミナ−シリカ粉、又はいかなる他の適切な粉体状若しくは充填物材料を含む、いかなる単一成分又は混合物であってもよいが、これらに限定されない。
【0031】
[フォーム(泡、foam)」
フォーム成分は、概して、スラリーと混合される前に、「調製フォーム」の状態で提供される。調製フォームは、上記の組成物/スラリーと混合する前に気泡(バブル、bubbles)を形成するために、適切な界面活性剤溶液、水、及び空気を混合することによって形成されてもよい。例えば、界面活性剤は、カチオン性(第4級アンモニウム化合物、アミン(第1、第2、第3、ジアミン、ポリアミン)及び/又はアミン塩を含むが、これらに限定されない)でもよい。又は、界面活性剤はアニオン性(ラウリル硫酸ナトリウム又はアルファ−オレフィン・スルホン酸塩を含むがこれらに限定されない)であってもよく、又は非イオン型(エーテル又は脂肪アルコールを含むがこれらに限定されない)であってもよい。使用するフォームは、バインダ及び/又は添加される充填物、結果として生じる目的用途、及び所望の多孔質構造に基づいて選択される。フォームは、スラリーに添加される前に発泡装置によって現場で形成される。使用し得るフォームの銘柄の例は、Mearlcrete(商標)、Geofoam(商標)、Cellufoam(商標)、GreenFroth(商標)及び/又はMaxFlow(商標)フォーム濃縮物(Foam Concentrate)を含むが、これらに限定されない。フォーム濃縮物の製造業者は、自分達の発泡設備を提供するであろう。
【0032】
調製フォームを使用することにより、結果として得られる生成物が、単に界面活性剤を水に添加して機械的にスラリーを混合して気泡を形成することによって製造される前出のセラミクリ−ト生成物と比較して、より低い強度を達成することが促進される。前出のセラミクリ−ト生成物は、空気を含んでいるが、多孔質材料となるようには設計されていない。具体的には、用いるスラリー/フォームの比率は、材料の圧縮強度が完全硬化状態において約100psi(約0.69MPa)未満となるように、さらに好ましくは約50psi(約0.34MPa)未満となるように、そしてよりさらに好ましくは約15psi(約0.10MPa)以下となるようにされる。より具体的な範囲の選択肢は本文に概要が記載される。フォームは本質的に最終生成物内で空気の気泡を捕捉する多孔質構造を創出する。前出のセラミクリ−ト生成物とは異なり、空気は最終生成物の主要な成分となる。
【0033】
本発明者らは、調製フォームをスラリーと組合せて使用することが、本文に記載された生成物が所望の低圧縮強度を得ることを可能にする工程のうちの一つであると信じるが、結果として得られる圧縮強度をより低くできる特殊な攪拌装置又は界面活性剤が将来、開発されるかもしれないと信じられている(そして、本開示の範囲内に包含されることが意図されている)ことが理解されるべきである。本文で提供される実施例は、調製フォームを使用しているが、界面活性剤、気泡生成材料、細孔生成材料、多孔質生成材料、又はいかなる他の種類の強度低下材料が開発され、記載された範囲内の完全硬化圧縮強度を有する結果として得られる生成物を得るために本発明に従って使用され得ることが理解されるべきである。
【0034】
要望に応じて、バインダ反応を遅延させるために、ホウ酸、ホウ砂又はいかなる他の適切な化合物のような、一つ以上の緩衝剤又は固化/硬化遅延剤を添加することも可能であろう。具体的な実施形態において、ホウ酸の添加量が多いほど、構造はゆっくり硬化するであろう。
【0035】
様々な使用において製造され且つ有益であることが見出されている例示的な配合物の例は本文に以下のように記載されるが、これらに限定されない。これらの例は、説明目的のみを意図しており、本発明の限定を何ら意図していないことが理解されるべきである。所望の用途及び特性によるが、様々な混合時間及び混合順序が使用可能なことは言うまでもない。
【0036】
一つの実施形態において、乾燥した材料が共に予混合され、次いで水に添加されてスラリーを生成してもよい。例えば、リン酸塩、酸化マグネシウム及び充填物(同様に、随意の固化/硬化遅延剤)が共に第1混合時間の間、混合され、次いで水に添加され、第2混合時間の間、混合されてもよい。あるいは、乾燥した材料が水に特定の順序で添加されてもよい。任意の混合物の組合せも可能であるが、例えば、充填物及び酸化マグネシウムが共に混合されてもよく、次いで、固化/硬化遅延剤(例えば、ホウ砂)及びリン酸塩が水に加えられてもよく、そして次いで2つの組成物が共に混合されてもよい。
【0037】
別の実施形態において、乾燥材料は共に予混合され、次いで水に添加されて専用高せん断バッチミキサー内でスラリーを生成してもよい。フォーム濃縮物は、次いで、専用高せん断バッチミキサーに加えられて、ミキサーによって泡立てられてもよい。例えば、リン酸塩、金属酸化物及び充填物(同様に、随意の固化/硬化遅延剤)は、第1混合時間の間、共に混合され、次いで水に添加され、第2混合時間の間、混合されてもよく、次いでフォーム濃縮物がミキサーに添加された後、第3混合時間の間、混合されてもよい。例示的な界面活性剤/水の比率は、約1/50、約1/45、約1/40、約1/35、約1/30を含むがこれらに限定されない。更に、例示的な最終空気体積百分率は、約70%から約95%、約75%から約85%、約85%から約95%、約80%、又は、約90%であるが、これらに限定されない。専用高せん断バッチミキサーの一つの例は、Silverson(登録商標)高せん断バッチミキサーである。
【0038】
別の実施形態において、乾燥材料は共に予混合され、次いで、粉体を均一化し且つ分散する専用高せん断連続ミキサー内に連続的に加えられてもよい。例えば、リン酸塩、金属酸化物及び充填物(同様に、随意の固化/硬化遅延剤)を共に混合し、次いでオーガー(オーガースクリュ)により専用ミキサーに供給されてもよい。界面活性剤は、空気を伴って又は空気を伴わずに系に投入され、連続的にミキサーにより泡立てられてもよい。例示的な界面活性剤/水の比率は、約1/50、約1/45、約1/40、約1/35、約1/30を含むがこれらに限定されない。更に、例示的な最終空気体積百分率は、約70%から95%、約75%から約85%、約85%から約95%、約80%又は、約90%であるが、これらに限定されない。専用高せん断連続ミキサーの一つの例は、IKA(登録商標)MHD2000シリーズである。
【0039】
特定の実施形態において、乾燥成分はリン酸塩化合物(具体的な実施形態において、リン酸カリウム)、金属酸化物(具体的な実施形態において、酸化マグネシウム)、フライ・アッシュ、シリカ、珪灰石及びホウ砂を含んでもよく、これらの乾燥成分は一体とされて十分に調合(ブレンド)された第1粉体を生成するまで、第1混合時間の間、混合される。第1混合時間は、材料を一体にして第1粉体を生成するために適切な、いかなる時間であってもよい。これらの成分は、(圧縮強度、セル構造、等のような)最終生成物の所望の特性によるが、いかなる所望の比率で提供されてもよい。潜在的なリン酸塩化合物対マグネシウム酸化物の比率の例は、約1対約1、約3対約1、約5対約1、約10対約1、約1対約3、約1対約5、約1対約10、又は、いずれか他のこれらの比率間における適切な比率のいずれかにすることができるが、上記に限定されない。下表に、例示的であるが限定的でない比率を示す。
【0040】
【表1】

【0041】
混合後、第1粉体は次いで水に添加され、スラリーを形成するために第2混合時間の間、混合される。混合時間は、使用される材料の比率及び種類、設備、温度及び他の要因によって決定される。典型的には、第2混合時間は約30秒から約45分の範囲内のいずれかであってもよいことが見出されており、そして、約1分から約10分又は約1分から約5分で概ね十分であるが、混合時間は上記よりも短くすることも長くすることも可能である。第2混合は、高せん断ミキサーを用いて遂行されてもよい。
【0042】
第2混合時間は、もしも固化/硬化遅延剤が使用されるのであれば、使用される固化/硬化遅延剤の量に基づいてもよい。もしも、スラリー及び/又は最終生成物の固化又は硬化時間を遅延させることが所望されるのであれば、固化/硬化遅延剤を添加してもよいが、そのような固化/硬化遅延剤の添加は必要ではない。適切な固化/硬化遅延剤の一つの例は、ホウ砂又はホウ酸であるが、これらに限定されない。固化/硬化遅延剤の添加量が多いほど、固化/硬化時間は長くなるであろう。これは、第1粉体/水スラリーを時期尚早に硬化させることなく、第1粉体/水スラリーをより長時間混合できることを意味する。十分な固化/硬化時間を確保する為に許容可能なことが見出されている、固化/硬化遅延剤対スラリーの比率の範囲の例は、約0(固化/硬化遅延剤の重量部)対約5(スラリーの重量部)、約0.1対約5、約0.1対約3、約0.1対約2、約0.25対約5、約0.25対約3、約0.25対約2、又は、これらの比率間のいずれかの比率であるが、上記に限定されない。
【0043】
別々の工程は、特別に選択された発泡剤及び空気を使用すること、且つ発泡装置(発泡設備)を使用することにより、調製フォームを生成することである。フォームは、フォーム濃縮物として、又は、水と混合してフォームを生成可能な他の界面活性剤として提供されてもよい。調製フォームは、次いで、パドル又はオーガー型ミキサーへ注入されてもよい。上述したスラリーは、次いで、フォームの中に緩やかに混ぜ込まれる(フォールドされる)。典型的には、スラリーはフォームの中に穏やかに混ぜ込まれるが、フォームがスラリーの中に穏やかに混ぜ込まれることも可能である事が理解されるべきである。いずれの方法であっても、成分は別々に形成され、次いで、別々の工程として、共に添加される。フォームの混入は、水と固体分/粉体が完全に混合された後で、且つ、生成物が固化し始める前に行う。このフォームの混入工程は、本文において、「混合(混和)する(mixing)」ではなく、「穏やかに混ぜ込む/フォールドする(folding)」又は「ブレンドする/調合する(blending)」と称される。なぜならば、フォームの構造が崩壊するのを避けるため、フォームの混合は激しすぎるべきではなく又はあまりに長時間にわたって行われるべきでは無い。
【0044】
この工程の理解に有益な比喩として、事前にホイップされた卵白又は事前にホイップされたクリームの中に、ケーキ練り粉(ケーキ・バッター)又は他の混合物をブレンドすること又は穏やかに混ぜ込むことが挙げられる。もしも、事前にホイップされた成分への練り粉(バッター)のブレンドが激しすぎるか又はあまりに長時間にわたって行われたのであれば、事前にホイップされた成分中に形成されたフォーム/気泡は崩壊するであろう。同様に、フォームの構造を保持するために、本文に記載されるスラリーは、調製フォームへの添加はあまりにも激しく行われるべきではなく、又は、あまりに長時間にわたってブレンドされるべきではない。
【0045】
スラリー/フォームのブレンド時間、ブレンド速度、及びブレンド設備を変化させて、所望の低強度材料を生成することができる。典型的に、スラリー/フォームのブレンド時間は、約10分までとしてもよいが、約30秒から約5分までの範囲内のいずれであってもよいことが見出されており、より具体的には、約2分から約3分で概ね十分であるが、上記に例示された時間よりもより短いか又はより長い混合時間は可能である。いずれにしても、ブレンド時間は、フォームとスラリーを一体とするために十分の長さであるべきだが、フォームの構造が著しく乱されるほどに長くするべきではない。もしも、ブレンド工程が、激し過ぎるか又は長すぎるならば、フォームの構造は崩壊するか又は不規則になるかもしれない。目標は、フォームの多孔質特性を維持するために、そして好ましくは最終材料全体において概ね均一な孔サイズを維持するために、フォームの構造的完全性を保持することである。ブレンドは、パドル・ミキサー、オーガー型ミキサー又はいかなる他の低せん断ミキサー又はブレンダ―のような低速機を用いて遂行してもよい。
【0046】
有益な最終生成物を生成するために許容される事が見出されているスラリー対フォームの比率の範囲の例は、約20(スラリーの重量部)対約1(調製フォームの重量部)、約15対約1、約12対約1、約7対約1、約5対約1、約4対約1、約2対約1、約1対約1、又は、これらの比率間の任意の比率であるが、これらには限定されない。フォームに対するスラリーの比率が高いほど、最終硬化における最終生成物の予想される圧縮強度は高くなる。
【0047】
所望の最終強度を目標のものとする一つの方法は、スラリー・フォーム混合物の湿潤密度を監視することによる。目標範囲は、所望の用途によって決まる。例示されるがこれに限定されない密度範囲は、約1lb/ft(ポンド/立方フィート)から約120lb/ft(約16kg/mから約1922kg/m)、約30lb/ft(約481kg/m)、約1lb/ftから約50lb/ft(約16kg/mから約801kg/m)、約40lb/ft(約641kg/m)、約50lb/ftから約100lb/ft(約801kg/mから約1602kg/m)、約80lb/ftから約120lb/ft(約1281kg/mから約1922kg/m)、約20lb/ftから約40lb/ft(約320kg/mから約641kg/m)、約40lb/ftから約60lb/ft(約641kg/mから約961kg/m)、約50lb/ft(約801kg/m)、約5lb/ftから約20lb/ft(約80kg/mから約320kg/m)、約60lb/ftから80lb/ft(約961kg/mから約1281kg/m)、約60lb/ft(約961kg/m)、約80lb/ftから約100lb/ft(約1281kg/mから約1602kg/m)、約70lb/ft(約1121kg/m)、約100lb/ftから約120lb/ft(約1602kg/mから約1922kg/m)、約90lb/ft(約1442kg/m)、約25lb/ftから約50lb/ft(約400kg/mから約801kg/m)、約35lb/ft(約561kg/m)、約50lb/ftから約75lb/ft(約801kg/mから約1201kg/m)、約65lb/ft(約1041kg/m)、約75lb/ftから約100lb/ft(約1201kg/mから約1602kg/m)、約10lb/ft(約160kg/m)、約5lb/ftから約15lb/ft(約80kg/mから約240kg/m)、又は、いかなる他の適切な範囲を含む。
【0048】
調製フォームの添加は、一般的に軽量で多孔質(発泡/気泡を有する)の懸濁液であって、数分間から数時間の前硬化物を有することが出来るであろう懸濁液を生成し、そしてこの懸濁液は数日又は数週間以内に(充填物にもよるが)完全に硬化して多孔質セラミック状材料となる。強度は、典型的には数週間経過した時点、通常は1ヵ月経過した時点で(又は、約28日後、これは、セメント質混合物に対するセメント産業における標準である)測定され、この時点において、材料は「完全に」硬化したとみなされる。大部分の材料は自然に硬化し続け、それ故に強度を得続けるので、例えば、生成物が作られた翌日の生成物の圧縮強度は、完全に硬化した生成物の強度の僅か1パーセントにしかなり得ないであろう。大部分の従来例は、24時間後の時点のみの強度を報告している。なぜなら、それらの意図する用途において、1日を超える強度の伸びは重要でないからである。しかしながら、本文に記載される用途にとって、強度の増加又は伸びは、予め設定され且つ考慮されなければならない。
【0049】
最終的な本体強度及び材料特性は、バインダ/充填物の比率、スラリーに添加されるフォームの量、充填物組成及び種類(反応性か、又は、非反応性か)及び量、粒子サイズ又は純度、混合手順(mixing procedures)、混合時間(mix time)、ブレンド手順(blending procedures)及び/又はブレンド時間(blend time)を変えることにより調整してもよい。固形分/水の比率は、添加されるバインダ(固化/硬化遅延剤)及び充填物の種類、バインダ/充填物の比率、及び材料の意図される目的用途に従った最終の所望の特性によって変化させてもよい。水の添加量が多くなるほど、泡立てられた生の(加工前の)構造(グリーン構造)はより流動性を増すであろう、そして、より低強度が達成されるであろう。スラリー/フォームの比率は、密度及び強度において所望される最終的な硬化特性を満たすように調整されてもよい。本体の乾燥密度は、所望の最終強度によって決定される。所望に応じて、所望の色合いの顔料を添加することよって、装飾の目的のために色(色相)を付してもよい。
【0050】
最終生成物の最終的な完全硬化圧縮強度は、使用される充填物、多孔度、密度及び水/固形分比率及びスラリー/フォーム比率によるが、5psi(約0.034MPa)位に低くてよく、100psi(約0.69MPa)位に高くてよい。最終的な所望の圧縮強度は、典型的には数時間以内又は1日の時点では測定されず、代わりに、典型的には数週間後に測定され、最終的な硬度には混合後約28日の時点で達する(そして測定される)であろう。例示される圧縮強度範囲は、以下に記載する例のいずれかであってもよいが、これらには限定されない。すなわち、約100psi(約0.69MPa)以下、約5psiから約95psi(約0.034MPaから約0.66MPa)。具体的な用途の要求にもよるが、圧縮強度範囲はより狭い範囲内に入るように適合されることができる。例えば、以下の範囲である。
【0051】
約10psi(約0.07MPa)から約90psi(約0.62MPa)、約50psi(約0.34MPa)未満、約50psi(約0.34MPa)、約20psi(約0.14MPa)から約80psi(約0.55MPa)、約60psi(約0.41MPa)未満、約60psi(約0.41MPa)、約30psi(約0.21MPa)から約70psi(約0.48MPa)、約40psi(約0.28MPa)未満、約40psi(約0.28MPa)、約40psi(約0.28MPa)から約60psi(約0.41MPa)、約45psi(約0.31MPa)未満、約45psi(約0.31MPa)、約50psi(約0.34MPa)から約70psi(約0.48MPa)、約65psi(約0.45MPa)、約15psi(約0.10MPa)から約85psi(約0.59MPa)、約25psi(約0.17MPa)から約75psi(約0.52MPa)、約35psi(約0.24MPa)から約65psi(約0.45MPa)、約45psi(約0.31MPa)から約55psi(約0.38MPa)、約50psi(約0.34MPa)から約100psi(約0.69MPa)、約60psi(約0.41MPa)から約90psi(約0.62MPa)、約65psi(約0.45MPa)から85psi(約0.59MPa)、約70psiから約80psi(約0.48MPaから約0.55MPa)、約75psi(約0.52MPa)未満、約75psi(約0.52MPa)、約50psi(約0.34MPa)未満、約60psi(約0.41MPa)未満、約75psi(約0.52MPa)未満、約55psi(約0.38MPa)、約60psi(約0.41MPa)、約75psi(約0.52MPa)、約60psi(約0.41MPa)から85psi(約0.59MPa)、約70psi(約0.48MPa)から約85psi(約0.59MPa)、約40psiから約90psi(約0.28MPaから約0.62MPa)、約45psiから90psi(約0.31MPaから約0.62MPa)、約50psiから約90psi(約0.34Mpaから約0.62MPa)、約55psiから90psi(約0.38Mpaから約0.62MPa)、約60psiから90psi(約0.41MPaから約0.62MPa)、約65psiから90psi(約0.45MPaから約0.62MPa)、約70psiから約90psi(約0.48MPaから約0.62MPa)、約75psiから約90psi(約0.52MPaから約0.62MPa)、約80psiから約90psi(約0.55MPaから約0.62MPa)、約85psi(約0.59MPa)、約85psi(約0.59MPa)未満、約10psiから約60psi(約0.07MPaから約0.41MPa)、約40psi(約0.28MPa)、約40psi(約0.28MPa)未満、約10psiから50psi(約0.07MPaから約0.34MPa)、約30psi(約0.21MPa)、約30psi(約0.21MPa)未満、約10psiから約45psi(約0.07MPaから約0.31MPa)、約35psi(約0.24MPa)、約35psi(約0.24MPa)未満、約5psiから約50psi(約0.034MPaから約0.34MPa)、約25psi(約0.17MPa)、約25psi(約0.17MPa)未満、約5psiから30psi(約0.034MPaから約0.21MPa)、約20psi(約0.14MPa)、約20psi(約0.14MPa)未満、約10psiから約30psi(約0.07MPaから約0.21MPa)、約10psiから25psi(約0.07MPaから約0.17MPa)、約15psiから約85psi(約0.10MPaから約0.59MPa)、約15psiから約50psi(約0.10MPaから約0.34MPa)、約15psiから約40psi(約0.10MPaから約0.28MPa)、約15psiから約35psi(約0.10MPaから約0.24MPa)、約20psiから約65psi(約0.14MPaから約0.45MPa)、約20psiから約55psi(約0.14MPaから約0.38MPa)、約20psiから約40psi(約0.14MPaから約0.28MPa)、約20psiから約35psi(約0.14MPaから約0.24MPa)、約20psiから約30psi(約0.14MPaから約0.21MPa)、約25psiから約35psi(約0.17MPaから約0.24MPa)、約30psiから約40psi(約0.21MPaから約0.28MPa)、又は上記範囲内の、他のいかなる適切な範囲。
【0052】
泡立てられたスラリーは、最終生成物としての1個以上の成形部品を生成するために、1個以上の型に注入されてもよく、又は、泡立てられたスラリーは、他の多孔質充填物として大量にポンプにより汲み上げられてもよい。一つの具体的な例において、発明者は、フォームをGrancrete(商標)(Grancereteは、ポンプによって汲み上げ可能なスラリーとして販売されている商業的な混合物である)に加えることによって、安定した形状と低強度を有する多孔質構造を生成した。
【0053】
本文に記載される多孔質リン酸塩セラミック体の最終生成物は、多様な目的であって、共有されている米国特許第5,885,025号又は米国特許出願公開第2007/0077118号公報に記載された材料のうちいかなる材料の代替として使用されることを含むが、それには限定されない多様な目的に使用されてもよい。具体的には、これらの文献には、航空機の停止、特定の車両交通の抑制又はそれ以外の運動エネルギー(そして、特に、動いている車両の運動エネルギー)の吸収のための、車両停止床用途における多孔質コンクリートの使用が記載されている。このような用途において使用されることが所望されている材料は、好適には、衝突時に少なくともいくらかの構造を維持する一方で、予測可能に圧壊又は変形するのに十分な強固さを有するが、この材料は動いている車両を衝突時に崩壊させるほど強固ではない。
【0054】
様々な車両に対する、例示的であるが限定的ではない強度範囲は、以下に記載される範囲を含むが、当然ながらそれらに限定されない。大型航空機は、材料の最終特性のみならず、航空機の設計、衝突スピード、気候条件、航空立地、航空交通等にもよるが、典型的により高い強度範囲(約15psi〜90psi(約0.10Mpa〜0.62MPa))を要求する。小型及び中型の航空機は、上で列挙したものと同様の要因によるが、典型的には、より低い強度範囲(約5psiから70psi(約0.034MPaから0.48MPa))を要求する。路上走行車両は、車両設計、速度、運転状況、具体的な道路の立地及び大きさ、道路交通パターン、交通の便、及び気候条件等によるが、より広い範囲(約5psiから90psi(約0.034MPaから0.62MPa))を要求し得る。最も重要な、考慮すべき点は、車両車輪を停止するが望ましくは車両乗務員に対する致命的な衝突(崩壊)を防ぐ、車両停止システムバリアの制御された安全な変形を提供することである。
【0055】
この材料はまた、変形に対する抵抗においても均一であることが望ましい。なぜならば、停止させられる車両の接触部材の表面に生じる力が予測出来るため、許容可能な性能が確実に得られるようなやり方で、床(車両停止床)を設計し、大きさを決定し、そして構成することが可能となる。このような均一性を得るために、材料が加工(処理)される条件及び硬化の形態が考慮されるべきである。本文に記載される調製フォームの添加によって提供される、空気のような比較的小さい内部セル又は流体の気泡を伴う材料を用意することによって、所望の圧縮強度の提供が促進される。
【0056】
車両停止システムの構成は、主要な製造設備において多孔質材料を製造する(そして、次いで製造した部分を設置場所へ移動する)こと、又は、多孔質材料を(泡立てたスラリーを適切な寸法の型に注入して所望の幾何学形状を得ることによって)、所望のシステムを取り付ける現場で用意することによって、完成させることができる。
【0057】
本文に記載される材料が使用され得る2つの他の主要な分野は、軽量な環境に優しい建設材料成分及び低強度の遊離(固定されていない)充填物を含み、これらのどちらも、弱い(壊れやすい)構造の充填材料が要求されるか又は所望されるであろうオープン又はクローズドセル構造を伴う。例えば、この材料は、軽量構造物、ブロック、断熱パネル、壁パネル、チルトアップパネル、防音壁、ガードレール、低強度浸水性コンクリート天井、埋め立て材料、炭鉱及び井戸の縦坑充填材(shaft filling)、又は、いかなる他の軟弱地盤用の遊離の(固定されていない)環境に優しい又は一時的な充填材(soft ground loose environmental or tenporary fillings)の製造に使用されてもよい。
【0058】
ここで図面を参照すると、多孔質構造は図1に示すように「オープンセル」構造であってもよい。オープンセルは、その構造を通して、蒸気又は液体状態の水を浸透させるであろう。代替的には、多孔構造は、図2に示すように「クローズドセル」であってもよい。この実施形態では、孔は流路を形成するようには互いに「連通して」おらず、そしてそれ故に、孔を通過して水を浸透させないであろう。いずれの場合においても、材料は一般的な多孔質コンクリート構造、セラミックフィルタ、又は、多孔質セメント質体のように見えてもよい。
【0059】
最終構造が「オープンセル」又は「クローズドセル」材料のいずれかとしてみなされるかどうかは、一般的には使用されるフォームの種類及び使用される出発粉体の純度によって決定される。「オープンセル構造」が言及されていることは、全てのセルが開放であることを含意するものではなく、単にオープンセルがクローズドセルよりも多く存在していることを含意しているものと理解されるべきである。同様に、「クローズドセル構造」が言及されていることは、全てのセルが閉鎖していることを含意するものではなく、単にオープンセルよりもクローズドセルが多く存在していることを含意している。事実、全てオープンセルである又は全てクローズドセルである構造は稀であり、構造の大半はオープンセルとクローズドセルの組合せであって、クローズドセルよりもオープンセルが多い(又は、その逆である)。
【0060】
図5は、オープンセル構造の顕微鏡的構造を示し、より明るい(薄い)色で示されるバインダと、充填物を表す濃い色の粒子とを有している。フォームによって生成されたセルもまた示されている。図6は、より近接した写真であり、結合したセルによって形成された開放流路が示される。
【0061】
本発明の更なる利点は、フライ・アッシュ、ボトム・アッシュ、スラグ、又はいかなる他の粉状材料のような廃材のリサイクルの可能性であり、これらの生成物を利用することは環境経済において有益なものとなる。潜在的な充填物の大部分は、ポートランドセメントより低コストであるという利点があり、製造中にCOが生成されて高排出されるという性質を受け継いでいない。
【0062】
加えて、主要な意図は上述の配合物が自然に硬化することであるが(即ち、焼成無しで)、所望に応じては、リン酸塩セラミック配合物は焼成され、「多孔質ガラス」を生成することができる。換言すれば、同一の配合物は、室温において最終生成物を生成でき、又は、所望の用途及び使用される出発原材料によるが、緩やかな焼成(1000℃未満)若しくは、ガラスや一般的なセラミックのような高温焼成をすることもできる。ある焼成技術を用いて、結果として得られる材料は、周知の、Pittsburgh Corning社製Foam Glas(登録商標)、又は、欧州における類似品であるMisapor(商標)と類似の構造及び特性を有してもよい。これらの材料は、異なる、よりコスト高のプロセス(高エネルギー焼成を必要とする)、及び事前処理された原材料を用いて製造される。これらの製造業者は、焼成中に二酸化炭素(CO)、酸化硫黄(SO)若しくは水素(H)のようなガスを放出する、カルシウムカーバイト(CaCO)、硫酸カルシウム(CaS0)及び/又は炭酸ナトリウム(NaC0)、及びアルミニウム粉(A1)が混入されたスラリーを焼成することによって、クローズドセル・ガラス質構造を生成する。これらのガスは、焼成時に固形分スラリー中に「捕捉され」て、「発泡ガラス」と呼ばれる多孔質構造を生成する。
【0063】
しかしながら、この工程は従来の焼成よりも費用がかかる。なぜならば、特殊な不活性ガス雰囲気及び/又は追加の前焼成及び後工程が必要かもしれないからである。加えて、最終部品に形成される気泡は、後に放出されるかもしれない毒性ガスを含むかもしれない。サンプルの大きさ、特に最終部品の高さ又は壁の厚みについての制限もまた存在する。したがって、上述したように、発明者らは、市場において現在入手可能な従来の発泡ガラスの製造方法よりも望ましい、多孔質セラミック又は発泡ガラスを提供するための製造方法を特定した。
【0064】
より具体的には、リン酸塩セラミック「多孔質発泡ガラス」は、生の段階(グリーン段階)のスラリーに、調製フォームを添加することによって製造されてもよい。多孔質構造は、焼成前の生の段階(グリーン段階)において形成される。ひとたびそれらの部品は乾燥された後に、所望の最終的な特性に従って必要とされる温度及びサイクルまで、一般的な空気雰囲気の炉において焼成される。大きさの制限はより少なくなり、そして焼成中に有毒ガスは生成されない。このように生成された発泡ガラスは、開放又は閉鎖構造を有してもよい。もしもいかなるガスが内部に捕捉されたとしても、そのようなガスは空気又は二酸化炭素であり、毒性を有するものではないであろう。古典的な発泡ガラス製造方法では、本文に記載される調製フォームを用いるのではなく、焼成中に反応して気泡を形成する化学化合物を添加して、原材料に機械的に混合しており、結果として不均一な多孔質構造を得るかもしれない(例えば、もしも材料が十分にブレンドされず、及び/又は、スラリー全体にわたって、粒子サイズが均一に分布されない場合)。しかしながら、上述の古典的な発泡ガラス製造方法とは異なり、生の本体(素地の本体、グリーン体)の製造時にスラリー/フォームの比率を制御することで、最終部品の圧縮強度を制御することもより容易になる。
【0065】
本発明の範囲又は精神、及び以下の請求項から逸脱しない限りにおいて、上に記載され且つ図面に示される構造及び方法に対して、変形及び修正、追加及び削除が行われてもよい。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
多孔質リン酸塩セラミック材料であって、
リン酸塩化合物及び金属酸化物を含むバインダと、
フォーム生成物とを含み、
前記多孔質リン酸塩セラミック材料は、約0.69MPa未満の完全硬化圧縮強度を有する多孔質リン酸塩セラミック材料。
【請求項2】
前記リン酸塩化合物が、リン酸カリウムである請求項1に記載の材料。
【請求項3】
前記金属酸化物が、酸化マグネシウムである請求項1に記載の材料。
【請求項4】
前記フォーム生成物が、調製フォームである請求項1に記載の材料。
【請求項5】
前記調製フォームが、前記リン酸塩化合物及び前記金属酸化物のスラリーとは別に生成される請求項4に記載の材料。
【請求項6】
前記完全硬化圧縮強度が、約0.034Mpaから約0.62MPaの間である請求項1に記載の材料。
【請求項7】
更に、1つ以上の固化/硬化遅延剤を含む請求項1に記載の材料。
【請求項8】
更に、1つ以上の充填物を含む請求項1に記載の材料。
【請求項9】
前記多孔質リン酸塩セラミック材料が、オープンセル材料又はクローズドセル材料である請求項1に記載の材料。
【請求項10】
前記多孔質リン酸塩セラミック材料が、車両停止システムとして使用される請求項1に記載の材料。
【請求項11】
多孔質リン酸塩セラミック材料の製造方法であって、
フォーム生成物を用意すること又は生成することと、
リン酸塩化合物及び金属酸化物粉を用意することと、
前記リン酸塩化合物と、前記金属酸化物粉を第1混合時間の間混合して、粉体ブレンドを生成することと、
前記粉体ブレンドを水と第2混合時間の間混合して、スラリーを形成することと、
前記スラリーを前記フォーム生成物に、ブレンド時間の間緩やかに混ぜ込んで多孔質リン酸塩セラミック材料を形成すること、とを含む製造方法。
【請求項12】
更に、1つ以上の固化/硬化遅延剤を添加することを含む請求項11に記載の方法。
【請求項13】
更に、1つ以上の充填物を添加することを含む請求項11に記載の方法。
【請求項14】
前記粉体ブレンドを水と混合する工程が、高せん断ミキサーを用いて行われる請求項11に記載の方法。
【請求項15】
前記スラリーを前記フォーム生成物に穏やかに混ぜ込む工程が、低せん断ミキサー、パドル又はオーガー型ミキサーを用いて行われる請求項11に記載の方法。
【請求項16】
前記ブレンド時間は、約45分未満である請求項11に記載の方法。
【請求項17】
前記多孔質リン酸塩セラミック材料が、約0.69MPa未満の圧縮強度を有する請求項11に記載の方法。
【請求項18】
前記フォーム生成物が、前記スラリーと混合される前に形成される請求項11に記載の方法。
【請求項19】
前記リン酸塩化合物が、リン酸カリウムである請求項11に記載の方法。
【請求項20】
前記金属酸化物粉が酸化マグネシウムである請求項11に記載の方法。
【請求項21】
前記フォーム生成物が、カチオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、非イオン型界面活性剤、空気、水、又は、これらの任意の組合せを含む請求項11に記載の方法。
【請求項22】
前記フォーム生成物が、フォーム発生装置により泡立てられた、Mearlcrete(商標)、Geofoam(商標)、Cellufoam(商標)、GreenFroth(商標)、MaxFlow(商標)フォーム濃縮物、水及び空気、又は、これらの任意の組合せを含む請求項11に記載の方法。
【請求項23】
前記1つ以上の充填物は、フライ・アッシュC、フライ・アッシュF、スラグ、鋳造灰、赤泥、発泡ポリスチレン、軽量有機凝集体、木材パルプ、再生プラスチック、空気、シリカ灰、粉砕ガラス、浮灰、珪灰石、石膏、細砂、カルシウム−アルミナ−シリカ粉、水硬性セメント、又は、セメント質混合物、又は、これらの任意の組合せを含むが、ポートランドセメントを含まない、請求項11に記載の方法。
【請求項24】
車両停止システムとしての多孔質リン酸塩セラミック材料の使用であって、前記多孔質リン酸塩セラミック材料が、約0.69MPa未満の圧縮強度を有する使用。
【請求項25】
車両停止システムとしての多孔質リン酸塩セラミック材料の使用であって、前記多孔質リン酸塩セラミック材料が、調製フォームを用いて形成される使用。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2013−517205(P2013−517205A)
【公表日】平成25年5月16日(2013.5.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−549104(P2012−549104)
【出願日】平成23年1月14日(2011.1.14)
【国際出願番号】PCT/US2011/021240
【国際公開番号】WO2011/088286
【国際公開日】平成23年7月21日(2011.7.21)
【出願人】(504097650)エンジニアード・アレスティング・システムズ・コーポレーション (7)
【氏名又は名称原語表記】ENGINEERED ARRESTING SYSTEMS CORPORATION
【住所又は居所原語表記】2550 Market Street, Aston, PA 19014, United States of America
【Fターム(参考)】