多孔質膜の製造方法および精密ろ過膜
【課題】耐薬品性に優れ、濾過流量と分画性能に優れた多孔質膜を提供する。
【解決手段】塩素化ポリ塩化ビニルを、塩素化ポリ塩化ビニルに対して良溶媒で、かつ水に対して相溶性を有する溶媒に溶解させ、好ましくはさらに該溶媒および水の両方に対して可溶性の化合物(A)を溶解させて製膜原液を得る製膜原液調製工程と、該製膜原液を膜状に形成して未凝固膜を得る製膜工程と、前記未凝固膜を、水蒸気を含む空気中に保持して吸湿させる吸湿工程と、前記吸湿工程の後に、前記未凝固膜を凝固液中で凝固させる凝固工程を有する、多孔質膜の製造方法。
【解決手段】塩素化ポリ塩化ビニルを、塩素化ポリ塩化ビニルに対して良溶媒で、かつ水に対して相溶性を有する溶媒に溶解させ、好ましくはさらに該溶媒および水の両方に対して可溶性の化合物(A)を溶解させて製膜原液を得る製膜原液調製工程と、該製膜原液を膜状に形成して未凝固膜を得る製膜工程と、前記未凝固膜を、水蒸気を含む空気中に保持して吸湿させる吸湿工程と、前記吸湿工程の後に、前記未凝固膜を凝固液中で凝固させる凝固工程を有する、多孔質膜の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塩素化ポリ塩化ビニルからなる多孔質膜の製造方法、および塩素化ポリ塩化ビニルからなる精密ろ過膜に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、環境汚染に対する関心の高まりと規制の強化により、分離の完全性やコンパクト性などに優れた分離膜を用いた膜法による水処理が注目を集めている。
膜法による水処理においては、膜表面・内部に閉塞した有機物、無機物を分解除去するために、次亜塩素酸ナトリウム、過酸化水素の様な酸化剤、あるいは酸・アルカリ等で膜の洗浄を行うため、分離膜には高い耐酸化劣化性および耐酸・耐アルカリ性が求められる。
【0003】
この様な背景のもと、ポリフッ化ビニリデン等のフッ素系ポリマー;塩化ビニル系ポリマー(ポリ塩化ビニル、塩素化ポリ塩化ビニル等)、ポリ塩化ビニリデン等の塩素系ポリマー;等が膜形成ポリマーとして用いられてきている。
特に、塩化ビニル系ポリマーは耐薬品性に優れ、かつ安価であり、またフッ素系ポリマーの様に焼却時に有害なフッ化水素を発生しないため分離膜素材として好適である。
【0004】
従来の塩化ビニル系ポリマー分離膜の製造方法として、例えば特許文献1には、ポリ塩化ビニル、塩化ビニル−酢酸ビニル−無水マレイン酸の共重合体、熱安定剤、および制孔剤を、有機溶媒に懸濁させたスラリーを用い、ドライ・スプレー湿式紡糸プロセスで製膜し、凝固液中で凝固させて中空ろ膜を製造する方法が記載されている。
特許文献1に記載の方法は、塩化ビニル樹脂の湿式プロセスで用いる溶媒への溶解性が低いため、スラリーを調製するために高温で長時間の溶解、攪拌が必要であり、かつ熱安定剤を添加する必要があるため、コスト面で問題があり、工業生産上望ましくない。また表面直下に膜欠陥の要因となる数10μm以上の粗大なマクロボイドが形成される傾向にある。
【0005】
特許文献2には、ポリ塩化ビニルまたは塩素化ポリ塩化ビニルと、親水性高分子(例えばヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート)を、溶剤(例えばテトラヒドロキシフラン)に溶解した後、該溶剤と相溶する非溶剤(例えばイソプロピルアルコール)を加えた溶液を、不織布に塗布し、溶剤を乾燥する方法が記載されている。
また特許文献3には、厚さ方向に段階的な孔径の差を有する非対称膜の製造方法として、塩素化ポリ塩化ビニルをテトラヒドロキシフランに溶解した後、イソプロピルアルコールを加えた溶液を、不織布を2枚重ねた多孔質基体に含浸し、溶媒を乾燥した後、該多孔質基体を2枚に分割する方法が記載されている。
しかしながら、特許文献2,3の方法では、非溶剤を加えて混合する工程において長時間の撹拌を必要とし、溶媒の乾燥にも時間がかかる。また揮発性が高い溶剤を使用する必要がある点でも、工業生産上望ましくない。
また特許文献3に記載されている方法で得られる分離膜は、本質的には内部方向に孔径の段階的な変化が小さく、透水性を高めるために傾斜型の構造とするためには、孔径の異なる多孔質膜材を重ね合わせる必要があった。また、膜表面の平均孔径が2μm以上あり、大腸菌などの細菌類を透過する懸念がある。
【0006】
特許文献4には、例えば、塩素化ポリ塩化ビニルとポリエチレングリコールとを含むジメチルアセトアミド溶液を、中空糸ノズルより連続的に吐出させ、水浴槽中で凝固させて中空糸膜を製造する方法が記載されている。
この特許文献4には分画分子量150,000以下の塩素化ポリ塩化ビニル限外ろ過膜が記載されているが、精密ろ過に適した孔径0.05〜1μmの表面孔径を有する多孔質膜については記載されていない。
【0007】
特許文献5には、塩素化ポリ塩化ビニルとメチルセルロースを含むN−2−メチルピロリドン溶液を、水蒸気下に保持した後、凝固液に浸漬することにより表面孔径0.3から0.5μmの精密ろ過膜を製造する方法が記載されている。
しかしながら特許文献5の方法では、製膜後次亜塩素酸により酸化処理を行わない状態では透水性が発現しない。
【0008】
次亜塩素酸の様な酸化剤を用いた場合、薬剤使用コストに加え、製膜装置が腐食されるため、耐食性の高い材質の装置を用いる必要があるなど、製造コストが高くなりがちであった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特許第4243293号公報
【特許文献2】特許第4395904号公報
【特許文献3】特公平1−41653号公報
【特許文献4】国際公開第2011/004786号パンフレット
【特許文献5】特表2010−527290号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
特許文献1〜4に記載の方法で得られる分離膜は、例えば精密ろ過などの高度な膜処理を行うには十分ではなく、孔径を制御して分画性能を向上させること、および孔径を小さくしても良好な濾過流量が得られるようにすることが望まれる。
また、特許文献1に記載の方法では、高温での溶解、熱安定化剤の添加が必要であり、特許文献5に記載の方法では透水性を発現するために酸化剤での処理が必要であり、より容易で安価な方法で透水性を有する膜が得られるようにすることが望まれる。
本発明は前記事情を鑑みてなされたもので、耐薬品性に優れ、濾過流量と分画性能に優れた多孔質膜を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の多孔質膜の製造方法は、塩素化ポリ塩化ビニルを、塩素化ポリ塩化ビニルに対して良溶媒で、かつ水に対して相溶性を有する溶媒に溶解させて製膜原液を得る製膜原液調製工程と、該製膜原液を膜状に形成して未凝固膜を得る製膜工程と、前記未凝固膜を、水蒸気を含む空気中に保持して吸湿させる吸湿工程と、前記吸湿工程の後に、前記未凝固膜を凝固液中で凝固させる凝固工程を有する。
【0012】
前記製膜原液調製工程において、前記製膜原液に、前記溶媒および水の両方に対して可溶性の化合物(A)を溶解させることが好ましい。
前記吸湿工程において、前記水蒸気を含む空気の、単位体積当たりの水蒸気量をV(単位:g/m3)、吸湿時間をt(単位:秒)とするとき、V×tの値が30〜600(単位:g/m3・秒)であることが好ましい。
前記化合物(A)が、塩化リチウムまたは臭化リチウムであることが好ましい。
前記多孔質膜が精密ろ過膜であることが好ましい。
前記化合物(A)が、重量平均分子量50,000以下のポリビニルピロリドンであることが好ましい。
本発明は、塩素化ポリ塩化ビニルからなり、膜内部の最大孔径が0.1μm以上〜5μm以下の傾斜型3次元網目構造を有する精密ろ過膜を提供する。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、次亜塩素酸ナトリウム等の酸化剤による処理を行うことなく、透湿性を有し、耐薬品性に優れ、傾斜型3次元網目構造を有する多孔質膜を製造できる。
本発明で言う3次元網目構造とは、多孔質膜を形成するポリマーが、フィブリル状となって3次元的に相互に連通した網目構造のことである。また傾斜型3次元網目構造とは3次元網目構造のサイズが厚さ方向に連続的に変化する構造である。被処理水と接する膜表面近傍から膜内層に向かって孔径が漸次大きくなる傾斜構造を有していると、分画性能と透水性に優れる。
すなわち、本発明によれば、耐薬品性に優れ、濾過流量と分画特性に優れた多孔質膜が得られる。
例えば、精密ろ過膜として好適な塩素化ポリ塩化ビニル多孔質膜が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】例1で得られた多孔質膜の表面SEM観察写真である。
【図2】例1で得られた多孔質膜の断面SEM観察写真である。
【図3】例2で得られた多孔質膜の表面SEM観察写真である。
【図4】例2で得られた多孔質膜の断面SEM観察写真である。
【図5】例3で得られた多孔質膜の表面SEM観察写真である。
【図6】例3で得られた多孔質膜の断面SEM観察写真である。
【図7】例4で得られた多孔質膜の断面SEM観察写真である。
【図8】例6で得られた多孔質膜の表面SEM観察写真である。
【図9】例6で得られた多孔質膜の断面SEM観察写真である。
【図10】例7で得られた多孔質膜の表面SEM観察写真である。
【図11】例7で得られた多孔質膜の断面SEM観察写真である。
【図12】例8で得られた多孔質膜の表面SEM観察写真である。
【図13】例8で得られた多孔質膜の断面SEM観察写真である。
【図14】例9で得られた多孔質膜の表面SEM観察写真である。
【図15】例9で得られた多孔質膜の断面SEM観察写真である。
【図16】例10で得られた多孔質膜の表面SEM観察写真である。
【図17】例10で得られた多孔質膜の断面SEM観察写真である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の多孔質膜の製造方法について詳しく説明する。本発明における多孔質膜は、好ましくは精密ろ過膜である。精密ろ過膜とは、分画層の平均孔径が0.05μm以上、1μm以下の多孔質膜である。
該平均孔径が1μmより大きい場合、大腸菌等の有害な菌の流出が起こり好ましくない。一方、該平均孔径が0.05μm以上であると、良好な透水性が得られやすい。より好ましくは0.05〜0.4μmの範囲である。
なお、多孔質膜が上述の傾斜型3次元網目構造を有する場合、分画層の孔径は、被処理水と接する表面における孔径で表される。
本発明において、膜の表面における平均孔径の値は、膜表面を電子顕微鏡により撮影した画像について、画像処理ソフト等により孔部の平均径を求めることにより算出される。
【0016】
本発明において、膜内部の最大孔径は0.1μm以上〜5μm以下が好ましい。膜内部の最大孔径が0.1μm以上であると、良好な透水性が得られやすい。より好ましくは0.2μm以上である。膜内部の最大孔径が5μmより大きい場合、膜の機械的強度が低下しやすく好ましくない。膜内部の最大孔径は、膜表面に対して垂直な断面を電子顕微鏡により撮影した画面について、画像処理ソフト等により孔部の最大径を求めることにより算出される。
本発明における膜内部の最大孔径の値は、膜表面に対して垂直な断面を電子顕微鏡により300倍以上の倍率で断面に沿う方向に連続的に撮影した画像について、画像処理ソフト等により膜内部の各空孔の最大径を求め、得られた各孔の最大径のうち最も大きい値を「膜内部の最大孔径」とする方法で得られる値である。
【0017】
本発明において、多孔質膜の形態は特に限定されず、例えば平膜であってもよく、中空状であってもよい。また膜強度を高めるために支持体の上に多膜質膜を積層した複合膜の形態でも構わない。
多孔質膜の厚みは特に限定されないが、例えば10〜1000μmの範囲が好ましく、20〜500μmの範囲がより好ましい。
【0018】
本発明において使用される塩素化ポリ塩化ビニルは、ポリ塩化ビニルの水素原子の一部が塩素化されたポリマーである。塩化ビニルモノマーを公知の方法で塩素化したものを重合させたポリマーであってもよく、ポリ塩化ビニルを公知の方法で塩素化して得られるものであってもよい。市販品からも入手可能である。
本発明において使用される塩素化ポリ塩化ビニルにおける塩化ビニルの重合度は特に限定されないが、原液の粘度が調整しやすく、かつ得られる膜の強伸度が高くなる傾向から500〜1500の範囲が好ましく、600〜1200の範囲がより好ましい。
塩素化塩化ビニル系樹脂の塩素化度は特に限定されないが、製膜に用いる溶媒への溶解度が高くなることから62質量%以上が好ましく、65質量%以上がより好ましい。
本明細書において、塩素化度とは、塩素化塩化ビニル系樹脂の単位質量当たりの、該塩素化塩化ビニル系樹脂に付加している塩素の質量分率を指す。
【0019】
本発明では、まず、塩素化ポリ塩化ビニルに対して良溶媒で、かつ水に対して相溶性を有する溶媒に、塩素化ポリ塩化ビニルを溶解させて、もしくは塩素化ポリ塩化ビニルを、塩素化ポリ塩化ビニルに対して良溶媒で、かつ水に対して相溶性を有する溶媒に溶解させた製膜原液に前記溶媒および水の両方に対して可溶性の化合物(A)を溶解させ製膜原液を調製する(製膜原液調製工程)。
かかる溶媒としては、N−メチル−2−ピロリドン、N、N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシドなどが挙げられる。特に低温においても塩素化ポリ塩化ビニルの溶解性が高い、N−メチル−2−ピロリドン、N、N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミドが好ましい。
これらの溶媒は1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0020】
製膜原液における塩素化ポリ塩化ビニルの含有量は10〜30質量%が好ましく、12〜25質量%がより好ましい。上記範囲の下限値以上であると透過性に優れた三次元網目構造が形成されやすいため好ましく、上記範囲の上限値以下であると製膜原液のゲル化が発生し難いため好ましい。
製膜原液は、塩素化塩化ビニル系樹脂を良好に溶解させるために加熱することが好ましい。製膜原液の加熱温度は、該製膜原液に含まれる成分が熱分解しない温度範囲であればよい。例えば10〜60℃が好ましく、20〜50℃がより好ましい。
【0021】
本発明において、空孔率の向上のために、製膜原液中の溶媒と水の両方に対して可溶性の化合物(A)を、孔形成剤として製膜原液に含有させることができる。
かかる化合物(A)(孔形成剤)の例としては、塩化リチウム、臭化リチウムなどのリチウム塩;ポリビニルピロリドン、ポリエチレングリコールなどの水溶性ポリマー:などが挙げられる。
凝固後の膜において、該化合物(A)(孔形成剤)が残存している場合、ろ過水への溶出や孔閉塞による透水性低下が起こるおそれがあるため、凝固工程の後に化合物(A)(孔形成剤)を水で洗浄除去する。
化合物(A)の重量平均分子量は、化合物(A)がポリマーの場合、ポリオキシエチレンを標準物質として、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定されるポリオキシエチレン換算分子量である。
【0022】
特に化合物(A)として、臭化リチウム、塩化リチウム、または重量平均分子量50,000以下、より好ましくは40,000以下のポリビニルピロリドンが、孔形成性および洗浄性の観点から好ましく用いられる。特に製膜原液の調製の容易さ、製膜後の洗浄除去の容易さ、マクロボイド発生抑制の点で、臭化リチウムまたは塩化リチウムが好ましい。
製膜原液における化合物(A)の含有量は1〜30質量%が好ましく、2〜20質量%がより好ましい。上記範囲の下限値以上であると表面の開孔率が高くなる傾向にあるため好ましく、上記範囲の上限値以下であると製膜後の洗浄除去の容易さの点で好ましい。
【0023】
マクロボイドとは膜内部に形成される粗大な孔であり、特に湿式、乾湿式法により製造された膜に形成されやすい。この様なマクロボイドは膜表面の欠陥と連結し、リークの要因となる、あるいは膜強度の低下を引き起こす傾向があることから、膜内部に存在しないことが望ましい。本発明におけるマクロボイドとは最大径が5μmより大きい空孔を示す。
膜内部の空孔の最大径は、前記膜内部の最大孔径の求め方と同様にして、膜表面に対して垂直な断面を電子顕微鏡により撮影した画像について、画像処理ソフト等により各孔の最大径を求める方法で得られる。
【0024】
次に、製膜原液を膜状に形成して未凝固膜とする(製膜工程)。すなわち、得ようとする多孔質膜の形態に応じて、製膜を行う。
膜状に形成する方法は、公知の製膜の手法を適宜用いて行うことができる。平膜の場合、例えばガラス板等の平滑な基材上に、製膜原液を所望の厚さで塗布する方法でもよい。
【0025】
続いて、未凝固膜を、水蒸気を含む空気中に保持して吸湿させる(吸湿工程)。
該吸湿工程は、例えば、水蒸気を含む空気からなる環境下に、未凝固膜を静置して所定の時間(吸湿時間)保持する方法で行うことができる。または、中空糸膜を連続して製造する場合には、製膜原液を連続的に紡糸した後、水蒸気を含む空気中を所定の速度で走行させる方法で行うことができる。
水蒸気を含む空気の、単位体積当たりの水蒸気量をV(単位:g/m3)、吸湿時間(保持時間)をt(単位:秒)とするとき、V×tの値が30〜600(単位:g/m3・秒)であることが好ましく、35〜300(g/m3・秒)がより好ましい。
該V×tの値が上記の範囲内であると、精密ろ過に適した表面孔径が得られやすい。
該水蒸気量(V)は、水蒸気を含む空気の温度と相対湿度から求められる。
水蒸気を含む空気の温度は特に限定されないが、水蒸気量が少ない場合吸湿時間を長くする必要があるため、生産性の点から10〜100℃が好ましく、20〜100℃がより好ましい。
吸湿時間(保持時間)は、生産性の点からは0.01〜60秒が好ましく、0.01〜30秒がより好ましい。
【0026】
次いで、吸湿工程を終えた未凝固膜を凝固液中に浸漬して凝固させることにより多孔質膜が得られる(凝固工程)。
凝固液は、水、または水と製膜原液の調製に用いた溶媒との混合物(溶媒の水溶液)が好ましい。該溶媒と水の混合物において、溶媒の濃度は特に限定されないが、溶媒の比率が高くなると、凝固に要する時間が長くなる傾向にあることから50質量%以下が好ましく、30質量%以下がより好ましい。
【0027】
凝固工程後の多孔質膜を水で洗浄して、残存する溶媒及び添加した化合物(A)を除去する。洗浄は水中に浸漬させる方法で行うことができる。化合物(A)の洗浄が不十分である場合、膜表面に残存し孔を閉塞し透水性が得られない傾向にある。
【0028】
本発明によれば、後述の実施例に示されるように、塩素化ポリ塩化ビニルを、塩素化ポリ塩化ビニルに対して良溶媒でかつ水に対して相溶性を有する溶媒に溶解した製膜原液、もしくは塩素化ポリ塩化ビニルを、塩素化ポリ塩化ビニルに対して良溶媒で、かつ水に対して相溶性を有する溶媒に溶解させ、さらに該溶媒および水の両方に対して可溶性の化合物(A)を溶解させた製膜原液を用い、吸湿工程を経て凝固させ、溶媒及び添加した孔形成剤(化合物(A))を水で洗浄する方法で多孔質膜を製造することにより、被処理水と接する膜表面近傍から膜内層に向かって孔径が漸次大きくなる傾斜型3次元網目構造を有する多孔質膜が得られる。
本発明の多孔質膜の製造方法は、膜を凝固させた後に水で洗浄するだけで、透湿性を有する多孔質膜が得られる。すなわち、例えば次亜塩素酸ナトリウム等の酸化剤を用いた処理は行わない。
本発明の多孔質膜は塩素化ポリ塩化ビニルからなるので、耐薬品性に優れる。
本発明において「塩素化ポリ塩化ビニルからなる」とは、多孔質膜に含まれる高分子化合物(分子量1万以上の化合物)が塩素化ポリ塩化ビニルのみであることを意味する。
【実施例】
【0029】
以下に実施例を用いて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
[例1]
市販の塩素化ポリ塩化ビニル(徳山積水工業社製、製品名:HA−53K、塩素化度:67質量%、塩化ビニルの重合度:1000)を用いた。
製膜原液の溶媒として、N−メチル−2−ピロリドン(和光純薬社製、試薬特級、以下、NMPと記載することもある。)を用い、化合物(A)として臭化リチウム(和光純薬社製、試薬特級)を用いた。
下記の組成で、40℃の水浴上で、溶媒であるNMPに塩素化ポリ塩化ビニルおよび臭化リチウムを溶解して、製膜原液を調製した。
塩素化ポリ塩化ビニル:20質量%、
臭化リチウム:4質量%、
NMP:76質量%。
【0030】
次いで、上記で得た製膜原液を、ガラス板上に約75μmの厚みで均一に塗布して未凝固膜を形成した後、温度19.3℃、相対湿度30.4%の空気中に8秒間静置する条件で吸湿工程を行った。
この後、ガラス板とともに凝固液に1分間浸漬し、多孔質膜を得た。凝固液としては、濃度8質量%のNMP水溶液(NMP8質量%と水92質量%の混合物)を用いた。
19.3℃における飽和水蒸気量は16.6g/m3であり、本例におけるV×tの値は40.4g/m3・秒である。
【0031】
得られた多孔質膜をガラス板から取り外した後、20℃の水中に1時間浸漬して洗浄し、残存する溶剤及び化合物(A)を除去した。
洗浄後の多孔質膜の表面構造を、走査型電子顕微鏡(日立ハイテクノロジー社製、製品名:S−3400N、以下SEMという。)により10,000倍の倍率で観察した。得られた画像を図1に示す。得られた画像より求めた表面の平均孔径は0.11μmであった。
洗浄後の多孔質膜の断面構造を、前記SEMで5,000倍の倍率で観察した。すなわち、洗浄後の多孔質膜を液体窒素中に約1分間浸漬させて凍結させた後に、カミソリで、表面に対して垂直方向に切断したときの断面について、観察を行った。得られた画像を図2に示す。
図2の結果より、得られた多孔質膜は表面から厚さ方向に向かって孔径が漸次大きくなる傾斜型3次元網目構造を有することがわかる。また図1、2の結果より、粗大なマクロボイドは形成されなかったことがわかる。膜内部の最大孔径は0.3μmであった。
【0032】
[透水性の測定]
得られた多孔質膜を乾燥後直径25mmの円状に切りとり、ミリポア社製のフィルターホルダー(製品名:スウィネクス25、適応フィルターサイズ25mm)にセットし、30kPaの加圧下で超純水をろ過し1分間の流量から透水量(m3/m2/hr/MPa)を求めた。
得られた膜の透水性は、21m3/m2/hr/MPaであった。
【0033】
[例2]
例1において、吸湿工程の条件を下記の通りに変更したほかは、例1と同様に多孔質膜を製造し、観察を行った。
すなわち、未凝固膜を温度19.2℃、相対湿度29.0%の空気中に14秒間静置した。19.2℃における飽和水蒸気量は16.5g/m3であり、本例におけるV×tの値は67.0g/m3・秒である。
例1と同様にして、多孔質膜の表面構造を観察して得られた画像を図3に示し、断面構造の画像を図4に示す。図3の画像より求めた表面の平均孔径は0.14μmであった。
図4の結果より、得られた多孔質膜は表面から厚さ方向に向かって孔径が漸次大きくなる傾斜型3次元網目構造を有することがわかる。また図3、4の結果より、粗大なマクロボイドは形成されなかったことがわかる。膜内部の最大孔径は0.4μmであった。
【0034】
得られた多孔質膜の透水量(m3/m2/hr/MPa)を例1と同様の方法で求めた。 得られた膜の透水性は、30m3/m2/hr/MPaであった。
【0035】
[例3]
例1において、吸湿工程の条件を下記の通りに変更したほかは、例1と同様に多孔質膜を製造し、観察を行った。
すなわち、未凝固膜を温度19.3℃、相対湿度33.0%の空気中に5秒間静置した。19.3℃における飽和水蒸気量は16.6g/m3であり、本例におけるV×tの値は27.4g/m3・秒である。
例1と同様にして、多孔質膜の表面構造を観察して得られた画像を図5に示し、断面構造の画像を図6に示す。図5の画像より求めた表面の平均孔径は0.05μm未満であった。
図6の結果より、得られた多孔質膜は表面から厚さ方向に向かって孔径が漸次大きくなる傾斜型3次元網目構造を有することがわかる。また図5、6の結果より、粗大なマクロボイドは形成されなかったことがわかる。膜内部の最大孔径は0.5μmであった。
【0036】
[例4]
本例は、吸湿工程を行わず、また凝固液を用いない乾式の製法で多孔質膜を製造した比較例である。
塩素化ポリ塩化ビニルおよび製膜原液の溶媒であるNMPは、例1と同じものを用いた。
まず下記の組成で、30℃の水浴上で、NMPに塩素化ポリ塩化ビニルを溶解し、さらにイソプロピルアルコールを加えて混合し、製膜原液を調製した。
塩素化ポリ塩化ビニル:9質量%、
イソプロピルアルコール:27質量%、
NMP:64質量%。
次いで、上記で得た製膜原液を、ガラス板上に約75μmの厚みで均一に塗布して未凝固膜を形成した後、温度30℃、相対湿度60%の空気中に30分間静置して、NMPおよびイソプロピルアルコールを乾燥除去し、多孔質膜を得た。
得られた多孔質膜の断面構造を、例1と同様にしてSEMで5,000倍の倍率で観察した。得られた画像を図7に示す。
図7の結果に示されるように、得られた多孔質膜は断面において孔径が均一な網目構造を有していた。すなわち、孔径は厚さ方向において均一であり、傾斜型3次元網目構造は形成されなかった。
【0037】
[例5]
本例は、塩素化ポリ塩化ビニルの代わりに、塩素化されていない塩化ビニル樹脂(徳山積水化学社製、製品名:TS−1000)を用いた比較例である。
塩化ビニル樹脂を用いた以外は実施例1と同様にして製膜原液の調製を試みたが、液がゲル化してしまい、製膜を行うことができなかった。
【0038】
[例6]
本例は、臭化リチウム(化合物(A))を用いずに、多孔質膜を製造した実施例である。
まず、本例においては、原液組成を以下の割合とした以外は、例1と同様の方法により、製膜原液を調製した。
塩素化ポリ塩化ビニル:21質量%、
NMP:79質量%。
【0039】
次いで、上記で得た製膜原液を、ガラス板上に約75μmの厚みで均一に塗布して未凝固膜を形成した後、温度19.6℃、相対湿度60.6%の空気中に10秒間静置する条件で吸湿工程を行った。
この後、ガラス板とともに凝固液に1分間浸漬し、多孔質膜を得た。凝固液としては、濃度8質量%のNMP水溶液(NMP8質量%と水92質量%の混合物)を用いた。
19.6℃における飽和水蒸気量は16.9g/m3であり、本例におけるV×tの値は102g/m3・秒である。
得られた多孔質膜をガラス板から取り外した後、20℃の水中に1時間浸漬して洗浄し、残存する溶剤を除去した。
例1と同様にして、20000倍で多孔質膜の表面構造を観察して得られた画像を図8に示し、断面構造の画像を図9に示す。図8の画像より求めた表面の平均孔径は0.06μmであった。
図9の結果より、得られた多孔質膜は表面から厚さ方向に向かって孔径が漸次大きくなる傾斜型3次元網目構造を有することがわかる。また図8、9の結果より、粗大なマクロボイドは形成されなかったことがわかる。膜内部の最大孔径は0.3μmであった。
【0040】
得られた多孔質膜の透水量(m3/m2/hr/MPa)を例1と同様の方法で求めた。
得られた膜の透水性は、8m3/m2/hr/MPaであった。
【0041】
[例7]
本例は、化合物(A)として塩化リチウムを用い、多孔質膜を製造した実施例である。
まず、本例においては、原液組成を以下の割合とした以外は、例1と同様の方法により、製膜原液を調製した。
塩素化ポリ塩化ビニル:20質量%、
塩化リチウム:4質量%
NMP:76質量%。
【0042】
次いで、上記で得た製膜原液を、ガラス板上に約75μmの厚みで均一に塗布して未凝固膜を形成した後、温度19.8℃、相対湿度60.3%の空気中に14秒間静置する条件で吸湿工程を行った。
この後、ガラス板とともに凝固液に1分間浸漬し、多孔質膜を得た。凝固液としては、濃度8質量%のNMP水溶液(NMP8質量%と水92質量%の混合物)を用いた。
19.8℃における飽和水蒸気量は17.1g/m3であり、本例におけるV×tの値は144g/m3・秒である。
得られた多孔質膜をガラス板から取り外した後、20℃の水中に1時間浸漬して洗浄し、残存する溶剤及び化合物(A)を除去した。
例1と同様にして、20000倍で多孔質膜の表面構造を観察して得られた画像を図10に示し、断面構造の画像を図11に示す。図10の画像より求めた表面の平均孔径は0.10μmであった。
図11の結果より、得られた多孔質膜は表面から厚さ方向に向かって孔径が漸次大きくなる傾斜型3次元網目構造を有することがわかる。また図10、11の結果より、粗大なマクロボイドは形成されなかったことがわかる。膜内部の最大孔径は1.0μmであった。
【0043】
得られた多孔質膜の透水量(m3/m2/hr/MPa)を例1と同様の方法で求めた。
得られた膜の透水性は、31m3/m2/hr/MPaであった。
【0044】
[例8]
本例は、化合物(A)としてポリビニルピロリドン(シグマアルドリッチ社製ポリビニルピロリドンK16−18:重量平均分子量4000)を用い、多孔質膜を製造した実施例である。
まず、本例においては、原液組成を以下の割合とした以外は、例1と同様の方法により、製膜原液を調製した。
塩素化ポリ塩化ビニル:20質量%、
ポリビニルピロリドンK16−18:4質量%
NMP:76質量%。
【0045】
次いで、上記で得た製膜原液を、ガラス板上に約75μmの厚みで均一に塗布して未凝固膜を形成した後、温度19.5℃、相対湿度59.6%の空気中に30秒間静置する条件で吸湿工程を行った。
この後、ガラス板とともに凝固液に1分間浸漬し、多孔質膜を得た。凝固液としては、濃度8質量%のNMP水溶液(NMP8質量%と水92質量%の混合物)を用いた。
19.5℃における飽和水蒸気量は16.8g/m3であり、本例におけるV×tの値は300g/m3・秒である。
得られた多孔質膜をガラス板から取り外した後、20℃の水中に8時間浸漬して洗浄し、残存する溶剤及び化合物(A)を除去した。
例1と同様にして、20000倍で多孔質膜の表面構造を観察して得られた画像を図12に示し、断面構造の画像を図13に示す。図12の画像より求めた表面の平均孔径は0.05μmであった。図13の結果より、得られた多孔質膜は表面から厚さ方向に向かって孔径が漸次大きくなる傾斜型3次元網目構造を有することがわかる。また図13の結果より、表面から数10μm下に最大径が5μmを超える大きさのマクロボイドが形成されていることがわかる。
【0046】
得られた多孔質膜の透水量(m3/m2/hr/MPa)を例1と同様の方法で求めた。
得られた膜の透水性は、11m3/m2/hr/MPaであった。
【0047】
[例9]
本例は化合物(A)として水により洗浄され難い、高分子量のポリビニルピロリドン(日本触媒社製ポリビニルピロリドンK79:重量平均分子量400,000)を用い、多孔質膜を製造した後、十分な洗浄を行わなかった比較例である。
まず、本例においては、原液組成を以下の割合とした以外は、例1と同様の方法により、製膜原液を調製した。
塩素化ポリ塩化ビニル:20質量%、
ポリビニルピロリドンK79:4質量%
NMP:76質量%。
【0048】
次いで、上記で得た製膜原液を、ガラス板上に約75μmの厚みで均一に塗布して未凝固膜を形成した後、温度19.5℃、相対湿度59.8%の空気中に14秒間静置する条件で吸湿工程を行った。
この後、ガラス板とともに凝固液に1分間浸漬し、多孔質膜を得た。凝固液としては、濃度8質量%のNMP水溶液(NMP8質量%と水92質量%の混合物)を用いた。
19.5℃における飽和水蒸気量は16.8g/m3であり、本例におけるV×tの値は140g/m3・秒である。
得られた多孔質膜をガラス板から取り外した後、20℃の水中に24時間浸漬して洗浄した。
【0049】
例1と同様にして、5000倍で多孔質膜の表面構造を観察して得られた画像を図14に示し、断面構造の画像を図15に示す。図14の画像より約0.6μmの凹状の構造が形成されているが未洗浄のポリビニルピロリドンに閉塞され、明確な孔が観察されなかった。図15の結果より、得られた多孔質膜は表面から厚さ方向に向かって孔径が漸次大きくなる傾斜型3次元網目構造を有することがわかる。また図15の結果より、表面から数10μm下に最大径が5μmを超える大きさのマクロボイドが形成されていることがわかる。
【0050】
得られた多孔質膜の透水量(m3/m2/hr/MPa)を例1と同様の方法で測定したが、0.2m3/m2/hr/MPaと非常に低い透水性となった。
【0051】
[例10]
本例は化合物(A)として水により洗浄され難い、メチルセルロース(アクロスオーガニクス社製メチルセルロース:2%水溶液粘度 3000−5600cP)を用い、多孔質膜を製造した後、十分な洗浄を行わなかった比較例である。
まず、本例においては、原液組成を以下の割合とした以外は、例1と同様の方法により、製膜原液を調整した。
塩素化ポリ塩化ビニル:19質量%、
メチルセルロース:3質量%
NMP:78質量%。
【0052】
次いで、上記で得た製膜原液を、ガラス板上に約75μmの厚みで均一に塗布して未凝固膜を形成した後、温度19.5℃、相対湿度59.7%の空気中に14秒間静置する条件で吸湿工程を行った。
この後、ガラス板とともに凝固液に1分間浸漬し、多孔質膜を得た。凝固液としては、濃度8質量%のNMP水溶液(NMP8質量%と水92質量%の混合物)を用いた。
19.5℃における飽和水蒸気量は16.8g/m3であり、本例におけるV×tの値は140g/m3・秒である。
得られた多孔質膜をガラス板から取り外した後、20℃の水中に72時間浸漬して洗浄した。
例1と同様にして、多孔質膜の表面構造を観察して得られた画像を図16に示し、断面構造の画像を図17に示す。図16の画像から膜表面が未洗浄のメチルセルロースにより閉塞されており明確な孔が観察されなかった。得られた多孔質膜は表面から厚さ方向に向かって孔径が漸次大きくなる傾斜型3次元網目構造を有することがわかる。また図17の結果より、表面から数10μm下に最大径が5μmを超える大きさのマクロボイドが形成されていることがわかる。
【0053】
得られた多孔質膜の透水量(m3/m2/hr/MPa)を例1と同様の方法で測定したが、透水が確認されなかった。
【技術分野】
【0001】
本発明は、塩素化ポリ塩化ビニルからなる多孔質膜の製造方法、および塩素化ポリ塩化ビニルからなる精密ろ過膜に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、環境汚染に対する関心の高まりと規制の強化により、分離の完全性やコンパクト性などに優れた分離膜を用いた膜法による水処理が注目を集めている。
膜法による水処理においては、膜表面・内部に閉塞した有機物、無機物を分解除去するために、次亜塩素酸ナトリウム、過酸化水素の様な酸化剤、あるいは酸・アルカリ等で膜の洗浄を行うため、分離膜には高い耐酸化劣化性および耐酸・耐アルカリ性が求められる。
【0003】
この様な背景のもと、ポリフッ化ビニリデン等のフッ素系ポリマー;塩化ビニル系ポリマー(ポリ塩化ビニル、塩素化ポリ塩化ビニル等)、ポリ塩化ビニリデン等の塩素系ポリマー;等が膜形成ポリマーとして用いられてきている。
特に、塩化ビニル系ポリマーは耐薬品性に優れ、かつ安価であり、またフッ素系ポリマーの様に焼却時に有害なフッ化水素を発生しないため分離膜素材として好適である。
【0004】
従来の塩化ビニル系ポリマー分離膜の製造方法として、例えば特許文献1には、ポリ塩化ビニル、塩化ビニル−酢酸ビニル−無水マレイン酸の共重合体、熱安定剤、および制孔剤を、有機溶媒に懸濁させたスラリーを用い、ドライ・スプレー湿式紡糸プロセスで製膜し、凝固液中で凝固させて中空ろ膜を製造する方法が記載されている。
特許文献1に記載の方法は、塩化ビニル樹脂の湿式プロセスで用いる溶媒への溶解性が低いため、スラリーを調製するために高温で長時間の溶解、攪拌が必要であり、かつ熱安定剤を添加する必要があるため、コスト面で問題があり、工業生産上望ましくない。また表面直下に膜欠陥の要因となる数10μm以上の粗大なマクロボイドが形成される傾向にある。
【0005】
特許文献2には、ポリ塩化ビニルまたは塩素化ポリ塩化ビニルと、親水性高分子(例えばヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート)を、溶剤(例えばテトラヒドロキシフラン)に溶解した後、該溶剤と相溶する非溶剤(例えばイソプロピルアルコール)を加えた溶液を、不織布に塗布し、溶剤を乾燥する方法が記載されている。
また特許文献3には、厚さ方向に段階的な孔径の差を有する非対称膜の製造方法として、塩素化ポリ塩化ビニルをテトラヒドロキシフランに溶解した後、イソプロピルアルコールを加えた溶液を、不織布を2枚重ねた多孔質基体に含浸し、溶媒を乾燥した後、該多孔質基体を2枚に分割する方法が記載されている。
しかしながら、特許文献2,3の方法では、非溶剤を加えて混合する工程において長時間の撹拌を必要とし、溶媒の乾燥にも時間がかかる。また揮発性が高い溶剤を使用する必要がある点でも、工業生産上望ましくない。
また特許文献3に記載されている方法で得られる分離膜は、本質的には内部方向に孔径の段階的な変化が小さく、透水性を高めるために傾斜型の構造とするためには、孔径の異なる多孔質膜材を重ね合わせる必要があった。また、膜表面の平均孔径が2μm以上あり、大腸菌などの細菌類を透過する懸念がある。
【0006】
特許文献4には、例えば、塩素化ポリ塩化ビニルとポリエチレングリコールとを含むジメチルアセトアミド溶液を、中空糸ノズルより連続的に吐出させ、水浴槽中で凝固させて中空糸膜を製造する方法が記載されている。
この特許文献4には分画分子量150,000以下の塩素化ポリ塩化ビニル限外ろ過膜が記載されているが、精密ろ過に適した孔径0.05〜1μmの表面孔径を有する多孔質膜については記載されていない。
【0007】
特許文献5には、塩素化ポリ塩化ビニルとメチルセルロースを含むN−2−メチルピロリドン溶液を、水蒸気下に保持した後、凝固液に浸漬することにより表面孔径0.3から0.5μmの精密ろ過膜を製造する方法が記載されている。
しかしながら特許文献5の方法では、製膜後次亜塩素酸により酸化処理を行わない状態では透水性が発現しない。
【0008】
次亜塩素酸の様な酸化剤を用いた場合、薬剤使用コストに加え、製膜装置が腐食されるため、耐食性の高い材質の装置を用いる必要があるなど、製造コストが高くなりがちであった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特許第4243293号公報
【特許文献2】特許第4395904号公報
【特許文献3】特公平1−41653号公報
【特許文献4】国際公開第2011/004786号パンフレット
【特許文献5】特表2010−527290号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
特許文献1〜4に記載の方法で得られる分離膜は、例えば精密ろ過などの高度な膜処理を行うには十分ではなく、孔径を制御して分画性能を向上させること、および孔径を小さくしても良好な濾過流量が得られるようにすることが望まれる。
また、特許文献1に記載の方法では、高温での溶解、熱安定化剤の添加が必要であり、特許文献5に記載の方法では透水性を発現するために酸化剤での処理が必要であり、より容易で安価な方法で透水性を有する膜が得られるようにすることが望まれる。
本発明は前記事情を鑑みてなされたもので、耐薬品性に優れ、濾過流量と分画性能に優れた多孔質膜を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の多孔質膜の製造方法は、塩素化ポリ塩化ビニルを、塩素化ポリ塩化ビニルに対して良溶媒で、かつ水に対して相溶性を有する溶媒に溶解させて製膜原液を得る製膜原液調製工程と、該製膜原液を膜状に形成して未凝固膜を得る製膜工程と、前記未凝固膜を、水蒸気を含む空気中に保持して吸湿させる吸湿工程と、前記吸湿工程の後に、前記未凝固膜を凝固液中で凝固させる凝固工程を有する。
【0012】
前記製膜原液調製工程において、前記製膜原液に、前記溶媒および水の両方に対して可溶性の化合物(A)を溶解させることが好ましい。
前記吸湿工程において、前記水蒸気を含む空気の、単位体積当たりの水蒸気量をV(単位:g/m3)、吸湿時間をt(単位:秒)とするとき、V×tの値が30〜600(単位:g/m3・秒)であることが好ましい。
前記化合物(A)が、塩化リチウムまたは臭化リチウムであることが好ましい。
前記多孔質膜が精密ろ過膜であることが好ましい。
前記化合物(A)が、重量平均分子量50,000以下のポリビニルピロリドンであることが好ましい。
本発明は、塩素化ポリ塩化ビニルからなり、膜内部の最大孔径が0.1μm以上〜5μm以下の傾斜型3次元網目構造を有する精密ろ過膜を提供する。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、次亜塩素酸ナトリウム等の酸化剤による処理を行うことなく、透湿性を有し、耐薬品性に優れ、傾斜型3次元網目構造を有する多孔質膜を製造できる。
本発明で言う3次元網目構造とは、多孔質膜を形成するポリマーが、フィブリル状となって3次元的に相互に連通した網目構造のことである。また傾斜型3次元網目構造とは3次元網目構造のサイズが厚さ方向に連続的に変化する構造である。被処理水と接する膜表面近傍から膜内層に向かって孔径が漸次大きくなる傾斜構造を有していると、分画性能と透水性に優れる。
すなわち、本発明によれば、耐薬品性に優れ、濾過流量と分画特性に優れた多孔質膜が得られる。
例えば、精密ろ過膜として好適な塩素化ポリ塩化ビニル多孔質膜が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】例1で得られた多孔質膜の表面SEM観察写真である。
【図2】例1で得られた多孔質膜の断面SEM観察写真である。
【図3】例2で得られた多孔質膜の表面SEM観察写真である。
【図4】例2で得られた多孔質膜の断面SEM観察写真である。
【図5】例3で得られた多孔質膜の表面SEM観察写真である。
【図6】例3で得られた多孔質膜の断面SEM観察写真である。
【図7】例4で得られた多孔質膜の断面SEM観察写真である。
【図8】例6で得られた多孔質膜の表面SEM観察写真である。
【図9】例6で得られた多孔質膜の断面SEM観察写真である。
【図10】例7で得られた多孔質膜の表面SEM観察写真である。
【図11】例7で得られた多孔質膜の断面SEM観察写真である。
【図12】例8で得られた多孔質膜の表面SEM観察写真である。
【図13】例8で得られた多孔質膜の断面SEM観察写真である。
【図14】例9で得られた多孔質膜の表面SEM観察写真である。
【図15】例9で得られた多孔質膜の断面SEM観察写真である。
【図16】例10で得られた多孔質膜の表面SEM観察写真である。
【図17】例10で得られた多孔質膜の断面SEM観察写真である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の多孔質膜の製造方法について詳しく説明する。本発明における多孔質膜は、好ましくは精密ろ過膜である。精密ろ過膜とは、分画層の平均孔径が0.05μm以上、1μm以下の多孔質膜である。
該平均孔径が1μmより大きい場合、大腸菌等の有害な菌の流出が起こり好ましくない。一方、該平均孔径が0.05μm以上であると、良好な透水性が得られやすい。より好ましくは0.05〜0.4μmの範囲である。
なお、多孔質膜が上述の傾斜型3次元網目構造を有する場合、分画層の孔径は、被処理水と接する表面における孔径で表される。
本発明において、膜の表面における平均孔径の値は、膜表面を電子顕微鏡により撮影した画像について、画像処理ソフト等により孔部の平均径を求めることにより算出される。
【0016】
本発明において、膜内部の最大孔径は0.1μm以上〜5μm以下が好ましい。膜内部の最大孔径が0.1μm以上であると、良好な透水性が得られやすい。より好ましくは0.2μm以上である。膜内部の最大孔径が5μmより大きい場合、膜の機械的強度が低下しやすく好ましくない。膜内部の最大孔径は、膜表面に対して垂直な断面を電子顕微鏡により撮影した画面について、画像処理ソフト等により孔部の最大径を求めることにより算出される。
本発明における膜内部の最大孔径の値は、膜表面に対して垂直な断面を電子顕微鏡により300倍以上の倍率で断面に沿う方向に連続的に撮影した画像について、画像処理ソフト等により膜内部の各空孔の最大径を求め、得られた各孔の最大径のうち最も大きい値を「膜内部の最大孔径」とする方法で得られる値である。
【0017】
本発明において、多孔質膜の形態は特に限定されず、例えば平膜であってもよく、中空状であってもよい。また膜強度を高めるために支持体の上に多膜質膜を積層した複合膜の形態でも構わない。
多孔質膜の厚みは特に限定されないが、例えば10〜1000μmの範囲が好ましく、20〜500μmの範囲がより好ましい。
【0018】
本発明において使用される塩素化ポリ塩化ビニルは、ポリ塩化ビニルの水素原子の一部が塩素化されたポリマーである。塩化ビニルモノマーを公知の方法で塩素化したものを重合させたポリマーであってもよく、ポリ塩化ビニルを公知の方法で塩素化して得られるものであってもよい。市販品からも入手可能である。
本発明において使用される塩素化ポリ塩化ビニルにおける塩化ビニルの重合度は特に限定されないが、原液の粘度が調整しやすく、かつ得られる膜の強伸度が高くなる傾向から500〜1500の範囲が好ましく、600〜1200の範囲がより好ましい。
塩素化塩化ビニル系樹脂の塩素化度は特に限定されないが、製膜に用いる溶媒への溶解度が高くなることから62質量%以上が好ましく、65質量%以上がより好ましい。
本明細書において、塩素化度とは、塩素化塩化ビニル系樹脂の単位質量当たりの、該塩素化塩化ビニル系樹脂に付加している塩素の質量分率を指す。
【0019】
本発明では、まず、塩素化ポリ塩化ビニルに対して良溶媒で、かつ水に対して相溶性を有する溶媒に、塩素化ポリ塩化ビニルを溶解させて、もしくは塩素化ポリ塩化ビニルを、塩素化ポリ塩化ビニルに対して良溶媒で、かつ水に対して相溶性を有する溶媒に溶解させた製膜原液に前記溶媒および水の両方に対して可溶性の化合物(A)を溶解させ製膜原液を調製する(製膜原液調製工程)。
かかる溶媒としては、N−メチル−2−ピロリドン、N、N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシドなどが挙げられる。特に低温においても塩素化ポリ塩化ビニルの溶解性が高い、N−メチル−2−ピロリドン、N、N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミドが好ましい。
これらの溶媒は1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0020】
製膜原液における塩素化ポリ塩化ビニルの含有量は10〜30質量%が好ましく、12〜25質量%がより好ましい。上記範囲の下限値以上であると透過性に優れた三次元網目構造が形成されやすいため好ましく、上記範囲の上限値以下であると製膜原液のゲル化が発生し難いため好ましい。
製膜原液は、塩素化塩化ビニル系樹脂を良好に溶解させるために加熱することが好ましい。製膜原液の加熱温度は、該製膜原液に含まれる成分が熱分解しない温度範囲であればよい。例えば10〜60℃が好ましく、20〜50℃がより好ましい。
【0021】
本発明において、空孔率の向上のために、製膜原液中の溶媒と水の両方に対して可溶性の化合物(A)を、孔形成剤として製膜原液に含有させることができる。
かかる化合物(A)(孔形成剤)の例としては、塩化リチウム、臭化リチウムなどのリチウム塩;ポリビニルピロリドン、ポリエチレングリコールなどの水溶性ポリマー:などが挙げられる。
凝固後の膜において、該化合物(A)(孔形成剤)が残存している場合、ろ過水への溶出や孔閉塞による透水性低下が起こるおそれがあるため、凝固工程の後に化合物(A)(孔形成剤)を水で洗浄除去する。
化合物(A)の重量平均分子量は、化合物(A)がポリマーの場合、ポリオキシエチレンを標準物質として、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定されるポリオキシエチレン換算分子量である。
【0022】
特に化合物(A)として、臭化リチウム、塩化リチウム、または重量平均分子量50,000以下、より好ましくは40,000以下のポリビニルピロリドンが、孔形成性および洗浄性の観点から好ましく用いられる。特に製膜原液の調製の容易さ、製膜後の洗浄除去の容易さ、マクロボイド発生抑制の点で、臭化リチウムまたは塩化リチウムが好ましい。
製膜原液における化合物(A)の含有量は1〜30質量%が好ましく、2〜20質量%がより好ましい。上記範囲の下限値以上であると表面の開孔率が高くなる傾向にあるため好ましく、上記範囲の上限値以下であると製膜後の洗浄除去の容易さの点で好ましい。
【0023】
マクロボイドとは膜内部に形成される粗大な孔であり、特に湿式、乾湿式法により製造された膜に形成されやすい。この様なマクロボイドは膜表面の欠陥と連結し、リークの要因となる、あるいは膜強度の低下を引き起こす傾向があることから、膜内部に存在しないことが望ましい。本発明におけるマクロボイドとは最大径が5μmより大きい空孔を示す。
膜内部の空孔の最大径は、前記膜内部の最大孔径の求め方と同様にして、膜表面に対して垂直な断面を電子顕微鏡により撮影した画像について、画像処理ソフト等により各孔の最大径を求める方法で得られる。
【0024】
次に、製膜原液を膜状に形成して未凝固膜とする(製膜工程)。すなわち、得ようとする多孔質膜の形態に応じて、製膜を行う。
膜状に形成する方法は、公知の製膜の手法を適宜用いて行うことができる。平膜の場合、例えばガラス板等の平滑な基材上に、製膜原液を所望の厚さで塗布する方法でもよい。
【0025】
続いて、未凝固膜を、水蒸気を含む空気中に保持して吸湿させる(吸湿工程)。
該吸湿工程は、例えば、水蒸気を含む空気からなる環境下に、未凝固膜を静置して所定の時間(吸湿時間)保持する方法で行うことができる。または、中空糸膜を連続して製造する場合には、製膜原液を連続的に紡糸した後、水蒸気を含む空気中を所定の速度で走行させる方法で行うことができる。
水蒸気を含む空気の、単位体積当たりの水蒸気量をV(単位:g/m3)、吸湿時間(保持時間)をt(単位:秒)とするとき、V×tの値が30〜600(単位:g/m3・秒)であることが好ましく、35〜300(g/m3・秒)がより好ましい。
該V×tの値が上記の範囲内であると、精密ろ過に適した表面孔径が得られやすい。
該水蒸気量(V)は、水蒸気を含む空気の温度と相対湿度から求められる。
水蒸気を含む空気の温度は特に限定されないが、水蒸気量が少ない場合吸湿時間を長くする必要があるため、生産性の点から10〜100℃が好ましく、20〜100℃がより好ましい。
吸湿時間(保持時間)は、生産性の点からは0.01〜60秒が好ましく、0.01〜30秒がより好ましい。
【0026】
次いで、吸湿工程を終えた未凝固膜を凝固液中に浸漬して凝固させることにより多孔質膜が得られる(凝固工程)。
凝固液は、水、または水と製膜原液の調製に用いた溶媒との混合物(溶媒の水溶液)が好ましい。該溶媒と水の混合物において、溶媒の濃度は特に限定されないが、溶媒の比率が高くなると、凝固に要する時間が長くなる傾向にあることから50質量%以下が好ましく、30質量%以下がより好ましい。
【0027】
凝固工程後の多孔質膜を水で洗浄して、残存する溶媒及び添加した化合物(A)を除去する。洗浄は水中に浸漬させる方法で行うことができる。化合物(A)の洗浄が不十分である場合、膜表面に残存し孔を閉塞し透水性が得られない傾向にある。
【0028】
本発明によれば、後述の実施例に示されるように、塩素化ポリ塩化ビニルを、塩素化ポリ塩化ビニルに対して良溶媒でかつ水に対して相溶性を有する溶媒に溶解した製膜原液、もしくは塩素化ポリ塩化ビニルを、塩素化ポリ塩化ビニルに対して良溶媒で、かつ水に対して相溶性を有する溶媒に溶解させ、さらに該溶媒および水の両方に対して可溶性の化合物(A)を溶解させた製膜原液を用い、吸湿工程を経て凝固させ、溶媒及び添加した孔形成剤(化合物(A))を水で洗浄する方法で多孔質膜を製造することにより、被処理水と接する膜表面近傍から膜内層に向かって孔径が漸次大きくなる傾斜型3次元網目構造を有する多孔質膜が得られる。
本発明の多孔質膜の製造方法は、膜を凝固させた後に水で洗浄するだけで、透湿性を有する多孔質膜が得られる。すなわち、例えば次亜塩素酸ナトリウム等の酸化剤を用いた処理は行わない。
本発明の多孔質膜は塩素化ポリ塩化ビニルからなるので、耐薬品性に優れる。
本発明において「塩素化ポリ塩化ビニルからなる」とは、多孔質膜に含まれる高分子化合物(分子量1万以上の化合物)が塩素化ポリ塩化ビニルのみであることを意味する。
【実施例】
【0029】
以下に実施例を用いて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
[例1]
市販の塩素化ポリ塩化ビニル(徳山積水工業社製、製品名:HA−53K、塩素化度:67質量%、塩化ビニルの重合度:1000)を用いた。
製膜原液の溶媒として、N−メチル−2−ピロリドン(和光純薬社製、試薬特級、以下、NMPと記載することもある。)を用い、化合物(A)として臭化リチウム(和光純薬社製、試薬特級)を用いた。
下記の組成で、40℃の水浴上で、溶媒であるNMPに塩素化ポリ塩化ビニルおよび臭化リチウムを溶解して、製膜原液を調製した。
塩素化ポリ塩化ビニル:20質量%、
臭化リチウム:4質量%、
NMP:76質量%。
【0030】
次いで、上記で得た製膜原液を、ガラス板上に約75μmの厚みで均一に塗布して未凝固膜を形成した後、温度19.3℃、相対湿度30.4%の空気中に8秒間静置する条件で吸湿工程を行った。
この後、ガラス板とともに凝固液に1分間浸漬し、多孔質膜を得た。凝固液としては、濃度8質量%のNMP水溶液(NMP8質量%と水92質量%の混合物)を用いた。
19.3℃における飽和水蒸気量は16.6g/m3であり、本例におけるV×tの値は40.4g/m3・秒である。
【0031】
得られた多孔質膜をガラス板から取り外した後、20℃の水中に1時間浸漬して洗浄し、残存する溶剤及び化合物(A)を除去した。
洗浄後の多孔質膜の表面構造を、走査型電子顕微鏡(日立ハイテクノロジー社製、製品名:S−3400N、以下SEMという。)により10,000倍の倍率で観察した。得られた画像を図1に示す。得られた画像より求めた表面の平均孔径は0.11μmであった。
洗浄後の多孔質膜の断面構造を、前記SEMで5,000倍の倍率で観察した。すなわち、洗浄後の多孔質膜を液体窒素中に約1分間浸漬させて凍結させた後に、カミソリで、表面に対して垂直方向に切断したときの断面について、観察を行った。得られた画像を図2に示す。
図2の結果より、得られた多孔質膜は表面から厚さ方向に向かって孔径が漸次大きくなる傾斜型3次元網目構造を有することがわかる。また図1、2の結果より、粗大なマクロボイドは形成されなかったことがわかる。膜内部の最大孔径は0.3μmであった。
【0032】
[透水性の測定]
得られた多孔質膜を乾燥後直径25mmの円状に切りとり、ミリポア社製のフィルターホルダー(製品名:スウィネクス25、適応フィルターサイズ25mm)にセットし、30kPaの加圧下で超純水をろ過し1分間の流量から透水量(m3/m2/hr/MPa)を求めた。
得られた膜の透水性は、21m3/m2/hr/MPaであった。
【0033】
[例2]
例1において、吸湿工程の条件を下記の通りに変更したほかは、例1と同様に多孔質膜を製造し、観察を行った。
すなわち、未凝固膜を温度19.2℃、相対湿度29.0%の空気中に14秒間静置した。19.2℃における飽和水蒸気量は16.5g/m3であり、本例におけるV×tの値は67.0g/m3・秒である。
例1と同様にして、多孔質膜の表面構造を観察して得られた画像を図3に示し、断面構造の画像を図4に示す。図3の画像より求めた表面の平均孔径は0.14μmであった。
図4の結果より、得られた多孔質膜は表面から厚さ方向に向かって孔径が漸次大きくなる傾斜型3次元網目構造を有することがわかる。また図3、4の結果より、粗大なマクロボイドは形成されなかったことがわかる。膜内部の最大孔径は0.4μmであった。
【0034】
得られた多孔質膜の透水量(m3/m2/hr/MPa)を例1と同様の方法で求めた。 得られた膜の透水性は、30m3/m2/hr/MPaであった。
【0035】
[例3]
例1において、吸湿工程の条件を下記の通りに変更したほかは、例1と同様に多孔質膜を製造し、観察を行った。
すなわち、未凝固膜を温度19.3℃、相対湿度33.0%の空気中に5秒間静置した。19.3℃における飽和水蒸気量は16.6g/m3であり、本例におけるV×tの値は27.4g/m3・秒である。
例1と同様にして、多孔質膜の表面構造を観察して得られた画像を図5に示し、断面構造の画像を図6に示す。図5の画像より求めた表面の平均孔径は0.05μm未満であった。
図6の結果より、得られた多孔質膜は表面から厚さ方向に向かって孔径が漸次大きくなる傾斜型3次元網目構造を有することがわかる。また図5、6の結果より、粗大なマクロボイドは形成されなかったことがわかる。膜内部の最大孔径は0.5μmであった。
【0036】
[例4]
本例は、吸湿工程を行わず、また凝固液を用いない乾式の製法で多孔質膜を製造した比較例である。
塩素化ポリ塩化ビニルおよび製膜原液の溶媒であるNMPは、例1と同じものを用いた。
まず下記の組成で、30℃の水浴上で、NMPに塩素化ポリ塩化ビニルを溶解し、さらにイソプロピルアルコールを加えて混合し、製膜原液を調製した。
塩素化ポリ塩化ビニル:9質量%、
イソプロピルアルコール:27質量%、
NMP:64質量%。
次いで、上記で得た製膜原液を、ガラス板上に約75μmの厚みで均一に塗布して未凝固膜を形成した後、温度30℃、相対湿度60%の空気中に30分間静置して、NMPおよびイソプロピルアルコールを乾燥除去し、多孔質膜を得た。
得られた多孔質膜の断面構造を、例1と同様にしてSEMで5,000倍の倍率で観察した。得られた画像を図7に示す。
図7の結果に示されるように、得られた多孔質膜は断面において孔径が均一な網目構造を有していた。すなわち、孔径は厚さ方向において均一であり、傾斜型3次元網目構造は形成されなかった。
【0037】
[例5]
本例は、塩素化ポリ塩化ビニルの代わりに、塩素化されていない塩化ビニル樹脂(徳山積水化学社製、製品名:TS−1000)を用いた比較例である。
塩化ビニル樹脂を用いた以外は実施例1と同様にして製膜原液の調製を試みたが、液がゲル化してしまい、製膜を行うことができなかった。
【0038】
[例6]
本例は、臭化リチウム(化合物(A))を用いずに、多孔質膜を製造した実施例である。
まず、本例においては、原液組成を以下の割合とした以外は、例1と同様の方法により、製膜原液を調製した。
塩素化ポリ塩化ビニル:21質量%、
NMP:79質量%。
【0039】
次いで、上記で得た製膜原液を、ガラス板上に約75μmの厚みで均一に塗布して未凝固膜を形成した後、温度19.6℃、相対湿度60.6%の空気中に10秒間静置する条件で吸湿工程を行った。
この後、ガラス板とともに凝固液に1分間浸漬し、多孔質膜を得た。凝固液としては、濃度8質量%のNMP水溶液(NMP8質量%と水92質量%の混合物)を用いた。
19.6℃における飽和水蒸気量は16.9g/m3であり、本例におけるV×tの値は102g/m3・秒である。
得られた多孔質膜をガラス板から取り外した後、20℃の水中に1時間浸漬して洗浄し、残存する溶剤を除去した。
例1と同様にして、20000倍で多孔質膜の表面構造を観察して得られた画像を図8に示し、断面構造の画像を図9に示す。図8の画像より求めた表面の平均孔径は0.06μmであった。
図9の結果より、得られた多孔質膜は表面から厚さ方向に向かって孔径が漸次大きくなる傾斜型3次元網目構造を有することがわかる。また図8、9の結果より、粗大なマクロボイドは形成されなかったことがわかる。膜内部の最大孔径は0.3μmであった。
【0040】
得られた多孔質膜の透水量(m3/m2/hr/MPa)を例1と同様の方法で求めた。
得られた膜の透水性は、8m3/m2/hr/MPaであった。
【0041】
[例7]
本例は、化合物(A)として塩化リチウムを用い、多孔質膜を製造した実施例である。
まず、本例においては、原液組成を以下の割合とした以外は、例1と同様の方法により、製膜原液を調製した。
塩素化ポリ塩化ビニル:20質量%、
塩化リチウム:4質量%
NMP:76質量%。
【0042】
次いで、上記で得た製膜原液を、ガラス板上に約75μmの厚みで均一に塗布して未凝固膜を形成した後、温度19.8℃、相対湿度60.3%の空気中に14秒間静置する条件で吸湿工程を行った。
この後、ガラス板とともに凝固液に1分間浸漬し、多孔質膜を得た。凝固液としては、濃度8質量%のNMP水溶液(NMP8質量%と水92質量%の混合物)を用いた。
19.8℃における飽和水蒸気量は17.1g/m3であり、本例におけるV×tの値は144g/m3・秒である。
得られた多孔質膜をガラス板から取り外した後、20℃の水中に1時間浸漬して洗浄し、残存する溶剤及び化合物(A)を除去した。
例1と同様にして、20000倍で多孔質膜の表面構造を観察して得られた画像を図10に示し、断面構造の画像を図11に示す。図10の画像より求めた表面の平均孔径は0.10μmであった。
図11の結果より、得られた多孔質膜は表面から厚さ方向に向かって孔径が漸次大きくなる傾斜型3次元網目構造を有することがわかる。また図10、11の結果より、粗大なマクロボイドは形成されなかったことがわかる。膜内部の最大孔径は1.0μmであった。
【0043】
得られた多孔質膜の透水量(m3/m2/hr/MPa)を例1と同様の方法で求めた。
得られた膜の透水性は、31m3/m2/hr/MPaであった。
【0044】
[例8]
本例は、化合物(A)としてポリビニルピロリドン(シグマアルドリッチ社製ポリビニルピロリドンK16−18:重量平均分子量4000)を用い、多孔質膜を製造した実施例である。
まず、本例においては、原液組成を以下の割合とした以外は、例1と同様の方法により、製膜原液を調製した。
塩素化ポリ塩化ビニル:20質量%、
ポリビニルピロリドンK16−18:4質量%
NMP:76質量%。
【0045】
次いで、上記で得た製膜原液を、ガラス板上に約75μmの厚みで均一に塗布して未凝固膜を形成した後、温度19.5℃、相対湿度59.6%の空気中に30秒間静置する条件で吸湿工程を行った。
この後、ガラス板とともに凝固液に1分間浸漬し、多孔質膜を得た。凝固液としては、濃度8質量%のNMP水溶液(NMP8質量%と水92質量%の混合物)を用いた。
19.5℃における飽和水蒸気量は16.8g/m3であり、本例におけるV×tの値は300g/m3・秒である。
得られた多孔質膜をガラス板から取り外した後、20℃の水中に8時間浸漬して洗浄し、残存する溶剤及び化合物(A)を除去した。
例1と同様にして、20000倍で多孔質膜の表面構造を観察して得られた画像を図12に示し、断面構造の画像を図13に示す。図12の画像より求めた表面の平均孔径は0.05μmであった。図13の結果より、得られた多孔質膜は表面から厚さ方向に向かって孔径が漸次大きくなる傾斜型3次元網目構造を有することがわかる。また図13の結果より、表面から数10μm下に最大径が5μmを超える大きさのマクロボイドが形成されていることがわかる。
【0046】
得られた多孔質膜の透水量(m3/m2/hr/MPa)を例1と同様の方法で求めた。
得られた膜の透水性は、11m3/m2/hr/MPaであった。
【0047】
[例9]
本例は化合物(A)として水により洗浄され難い、高分子量のポリビニルピロリドン(日本触媒社製ポリビニルピロリドンK79:重量平均分子量400,000)を用い、多孔質膜を製造した後、十分な洗浄を行わなかった比較例である。
まず、本例においては、原液組成を以下の割合とした以外は、例1と同様の方法により、製膜原液を調製した。
塩素化ポリ塩化ビニル:20質量%、
ポリビニルピロリドンK79:4質量%
NMP:76質量%。
【0048】
次いで、上記で得た製膜原液を、ガラス板上に約75μmの厚みで均一に塗布して未凝固膜を形成した後、温度19.5℃、相対湿度59.8%の空気中に14秒間静置する条件で吸湿工程を行った。
この後、ガラス板とともに凝固液に1分間浸漬し、多孔質膜を得た。凝固液としては、濃度8質量%のNMP水溶液(NMP8質量%と水92質量%の混合物)を用いた。
19.5℃における飽和水蒸気量は16.8g/m3であり、本例におけるV×tの値は140g/m3・秒である。
得られた多孔質膜をガラス板から取り外した後、20℃の水中に24時間浸漬して洗浄した。
【0049】
例1と同様にして、5000倍で多孔質膜の表面構造を観察して得られた画像を図14に示し、断面構造の画像を図15に示す。図14の画像より約0.6μmの凹状の構造が形成されているが未洗浄のポリビニルピロリドンに閉塞され、明確な孔が観察されなかった。図15の結果より、得られた多孔質膜は表面から厚さ方向に向かって孔径が漸次大きくなる傾斜型3次元網目構造を有することがわかる。また図15の結果より、表面から数10μm下に最大径が5μmを超える大きさのマクロボイドが形成されていることがわかる。
【0050】
得られた多孔質膜の透水量(m3/m2/hr/MPa)を例1と同様の方法で測定したが、0.2m3/m2/hr/MPaと非常に低い透水性となった。
【0051】
[例10]
本例は化合物(A)として水により洗浄され難い、メチルセルロース(アクロスオーガニクス社製メチルセルロース:2%水溶液粘度 3000−5600cP)を用い、多孔質膜を製造した後、十分な洗浄を行わなかった比較例である。
まず、本例においては、原液組成を以下の割合とした以外は、例1と同様の方法により、製膜原液を調整した。
塩素化ポリ塩化ビニル:19質量%、
メチルセルロース:3質量%
NMP:78質量%。
【0052】
次いで、上記で得た製膜原液を、ガラス板上に約75μmの厚みで均一に塗布して未凝固膜を形成した後、温度19.5℃、相対湿度59.7%の空気中に14秒間静置する条件で吸湿工程を行った。
この後、ガラス板とともに凝固液に1分間浸漬し、多孔質膜を得た。凝固液としては、濃度8質量%のNMP水溶液(NMP8質量%と水92質量%の混合物)を用いた。
19.5℃における飽和水蒸気量は16.8g/m3であり、本例におけるV×tの値は140g/m3・秒である。
得られた多孔質膜をガラス板から取り外した後、20℃の水中に72時間浸漬して洗浄した。
例1と同様にして、多孔質膜の表面構造を観察して得られた画像を図16に示し、断面構造の画像を図17に示す。図16の画像から膜表面が未洗浄のメチルセルロースにより閉塞されており明確な孔が観察されなかった。得られた多孔質膜は表面から厚さ方向に向かって孔径が漸次大きくなる傾斜型3次元網目構造を有することがわかる。また図17の結果より、表面から数10μm下に最大径が5μmを超える大きさのマクロボイドが形成されていることがわかる。
【0053】
得られた多孔質膜の透水量(m3/m2/hr/MPa)を例1と同様の方法で測定したが、透水が確認されなかった。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
塩素化ポリ塩化ビニルを、塩素化ポリ塩化ビニルに対して良溶媒で、かつ水に対して相溶性を有する溶媒に溶解させて製膜原液を得る製膜原液調製工程と、
該製膜原液を膜状に形成して未凝固膜を得る製膜工程と、
前記未凝固膜を、水蒸気を含む空気中に保持して吸湿させる吸湿工程と、
前記吸湿工程の後に、前記未凝固膜を凝固液中で凝固させる凝固工程を有する、多孔質膜の製造方法。
【請求項2】
前記製膜原液調製工程において、前記製膜原液に、前記溶媒および水の両方に対して可溶性の化合物(A)を溶解させる、請求項1に記載の多孔質膜の製造方法。
【請求項3】
前記吸湿工程において、前記水蒸気を含む空気の、単位体積当たりの水蒸気量をV(単位:g/m3)、吸湿時間をt(単位:秒)とするとき、V×tの値が30〜600(単位:g/m3・秒)である、請求項1〜2のいずれか一項に記載の多孔質膜の製造方法。
【請求項4】
前記化合物(A)が、塩化リチウムまたは臭化リチウムである、請求項2又は3のいずれか一項に記載の多孔質膜の製造方法。
【請求項5】
前記多孔質膜が精密ろ過膜である、請求項1〜4のいずれか一項に記載の多孔質膜の製造方法。
【請求項6】
前記化合物(A)が、重量平均分子量50,000以下のポリビニルピロリドンである、請求項2〜5のいずれか一項に記載の多孔質膜の製造方法。
【請求項7】
塩素化ポリ塩化ビニルからなり、膜内部の最大孔径が0.1μm以上〜5μm以下の傾斜型3次元網目構造を有する精密ろ過膜。
【請求項1】
塩素化ポリ塩化ビニルを、塩素化ポリ塩化ビニルに対して良溶媒で、かつ水に対して相溶性を有する溶媒に溶解させて製膜原液を得る製膜原液調製工程と、
該製膜原液を膜状に形成して未凝固膜を得る製膜工程と、
前記未凝固膜を、水蒸気を含む空気中に保持して吸湿させる吸湿工程と、
前記吸湿工程の後に、前記未凝固膜を凝固液中で凝固させる凝固工程を有する、多孔質膜の製造方法。
【請求項2】
前記製膜原液調製工程において、前記製膜原液に、前記溶媒および水の両方に対して可溶性の化合物(A)を溶解させる、請求項1に記載の多孔質膜の製造方法。
【請求項3】
前記吸湿工程において、前記水蒸気を含む空気の、単位体積当たりの水蒸気量をV(単位:g/m3)、吸湿時間をt(単位:秒)とするとき、V×tの値が30〜600(単位:g/m3・秒)である、請求項1〜2のいずれか一項に記載の多孔質膜の製造方法。
【請求項4】
前記化合物(A)が、塩化リチウムまたは臭化リチウムである、請求項2又は3のいずれか一項に記載の多孔質膜の製造方法。
【請求項5】
前記多孔質膜が精密ろ過膜である、請求項1〜4のいずれか一項に記載の多孔質膜の製造方法。
【請求項6】
前記化合物(A)が、重量平均分子量50,000以下のポリビニルピロリドンである、請求項2〜5のいずれか一項に記載の多孔質膜の製造方法。
【請求項7】
塩素化ポリ塩化ビニルからなり、膜内部の最大孔径が0.1μm以上〜5μm以下の傾斜型3次元網目構造を有する精密ろ過膜。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【公開番号】特開2013−31832(P2013−31832A)
【公開日】平成25年2月14日(2013.2.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−124488(P2012−124488)
【出願日】平成24年5月31日(2012.5.31)
【出願人】(000006035)三菱レイヨン株式会社 (2,875)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年2月14日(2013.2.14)
【国際特許分類】
【出願日】平成24年5月31日(2012.5.31)
【出願人】(000006035)三菱レイヨン株式会社 (2,875)
【Fターム(参考)】
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