説明

多層の組織培養容器

【課題】本発明は細胞を培養するための容器を開示する。
【解決手段】容器は、基部を含み且つ基部の境界を少なくとも部分的になす上方に延びた壁を備える底部と、基部を含み且つ基部の境界を少なくとも部分的になす下方に延びた壁を備える頂部と、開口を画成する管状首部と、一以上の棚部とを含み、各棚部が基部と、基部の境界を少なくとも部分的になす上方に延びた壁とを備える。第1の棚部の上方に延びる壁が頂部の下方に延びる壁に隣接し、第1の棚部が底部と頂部の間に位置される。各棚部の基部がこれに形成された少なくとも一つの穴を有する。底部、頂部および一以上の棚部が、集合して、細胞を培養するための囲まれた容積を画成する。管状首部が容器から延び、囲まれた容積が、管状首部の開口によってアクセス可能である。有利には、この容器は、効率を高め且つ細胞培養のコストを減じる方法で、大量の細胞培養を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は実験用容器に関する。より詳細には、本発明は多層の組織培養容器に関する。
【背景技術】
【0002】
真核細胞等の細胞(セル)は、基礎研究および高スループットスクリーニングを含む様々な目的のために培養される。しかしながら、滅菌状態の下で細胞を培養することは面倒だし費用もかかる。よって、細胞を培養するためのより効率的で費用効果の高い実験用容器の要請がある。
【発明の概要】
【0003】
本発明は、細胞を培養するための容器を開示する。容器は、基部を含む底部であって、底部の基部の境界を少なくとも部分的になす上方に延びた壁を備える底部と、基部を含む頂部であって、頂部の基部の境界を少なくとも部分的になす下方に延びた壁を備える頂部と、開口を画成する管状首部と、一以上の棚部とを含み、各棚部が基部と、棚部の基部の境界を少なくとも部分的になす上方に延びた壁とを備える。第1の棚部の上方に延びる壁が、頂部の下方に延びる壁に隣接し、第1の棚部が底部と頂部の間に位置される。各棚部の基部が、これに形成された少なくとも一つの穴を有する。底部、頂部および一以上の棚部が、集合して、細胞を培養するための囲まれた容積を画成する。管状首部が容器から延び、囲まれた容積が、管状首部の開口によってアクセス可能である。有利には、この容器は、効率を高め且つ細胞培養のコストを減じる方法で、大量の細胞培養を提供する。
【0004】
本発明の容器は、培養容器の底面積(フットプリント;footprint)の表面積当たりの全培養面積を増加する。容器は、培養容器の底面積の表面積当たりの細胞の回収率(percent recovery)をも増加する。よって、容器は、効率的な大量細胞培養のための手段を提供する。このような容器は、手動および/または自動の方法で用いられる。例示的な実施形態は、限定されないが、標準的なBD Falcon T-175フラスコの総底面積を維持する容器を含み、よって、The Automation PartnershipのSelecT(商標)およびCompacT(商標)自動化細胞培養システム等の、自動化細胞培養システムと両立可能である。容器は、しかしながら、BD Falcon T-175フラスコ等の標準的フラスコの高さに比較して、拡大または縮小されることができる。特に、容器内における棚部の積み重なった配置は、細胞を培養するための表面積が拡大されるように高さが変更されることを可能にする。
【0005】
加えて、容器の設計は、媒体を満たし除去するのに必要な操作の数を最小にし、これにより、細胞を培養する効率を上げ、各移動による容器の汚染の機会を減少する。好ましくは、容器は、容器の後壁にピペットがアクセスするのに十分大きい開口を含み、これにより、良好な細胞培養技術のための良好な実験室活動を促進する。例示的な実施形態は、限定されないが、10mLピペットさらには50mLピペットが後壁にアクセスするのに十分大きい開口を持った容器を含む。
【0006】
また、容器の設計は、容器内の壁およびコーナーに沿って「引っ掛かった(hung up)」媒体さらには細胞の量を減少し、媒体および細胞の効率的な除去を可能にする。また、容器の設計は、液体(例えば媒体、燐酸緩衝生理食塩水(PBS)、トリプシン)を効率的に異なる細胞層に分配し、これにより、必要とされる液体の量を減少させ、液体のさらなる分配を促進し、シーディング(seeding)中の細胞のさらなる分配を促進する。これは、より一貫した栄養素の分配、栄養素消費速度、細胞成長速度、および細胞採取時の解離速度を提供し、これにより、より一定の細胞成長および/または分化、さらには全細胞のより健康的な個体群を促進する。また、このような容器は、細胞成長と細胞の解離それぞれに必要な媒体および解離剤(例えばトリプシン)の量に関して、多大なコスト抑制をもたらす。要するに、本発明の容器は、細胞を培養することに関する労働と出費の量を減少させる。
【0007】
本発明のこれらおよび他の特徴は、以下の詳細な説明と添付図面の検討を通じて、さらに良好に理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明に従って形成された容器の斜視図である。
【図2】図1の2−2線に沿った断面図である。
【図3】容器の平面図である。
【図4】図3の4−4線に沿った断面図である。
【図5】容器の側面図である。
【図6】本発明で使用可能な底部の斜視図である。
【図7】図6の7−7線に沿った断面図である。
【図8】本発明で使用可能な頂部の斜視図である。
【図9】図8の9−9線に沿った断面図である。
【図10】図8の10−10線に沿った断面図である。
【図11】本発明で使用可能な棚部の斜視図である。
【図12】図11の12−12線に沿った断面図である。
【図13】本発明に従って形成された容器の斜視図である。
【図14】図13の14−14線に沿った断面図である。
【図15】本発明で使用可能な棚部の斜視図である。
【図16】本発明に従って形成された容器中での細胞媒体の平衡を示す概略図である。
【図17】本発明に従って形成された容器中でのピペットアクセスを示す概略図である。
【図18】本発明に従って形成された容器中での、細胞媒体の層状配置を示す概略図である。
【図19】本発明で使用可能な棚部の平面図である。
【図20】図19の20−20線に沿った断面図である。
【図21】図20の区分21の拡大図である。
【図22】図20の区分22の拡大図である。
【図23】異なる格納壁形状を示す図である。
【図24】異なる格納壁形状を示す図である。
【図25】本発明で使用可能なキャップを示す図である。
【図26】本発明で使用可能なキャップを示す図である。
【図27】本発明で使用可能なキャップを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
図を参照すると、細胞培養のための容器10が描かれている。当業者によって理解されるように、容器10は種々の細胞培養で利用されることができる。容器10は概して、底部12、頂部14、管状首部16、および一以上の棚部20を含む。管状首部16は、これに画成された開口18を有する。一以上の棚部20は、底部12と頂部14の間に配置される。底部12、頂部14および棚部20は、集合して、細胞を培養するための囲まれた容積22を画成する。管状首部16は容器10から延び、囲まれた容積22は、管状首部16の開口18によってアクセス可能である。
【0010】
底部12は、概ね盆(トレイ)形状とされ、基部24を有する。基部24から上方に壁26が延びる。壁26は少なくとも部分的に基部24の境界をなす。好ましくは、壁26は周縁で完全に基部24の境界をなす。
【0011】
容器の望まれる全体サイズに依存して、一以上の棚部20が利用されることができる。棚部20の量が多いと、容器10の細胞培養容量が増加する。ガス流と分配における制限のため、過剰なサイズは望まれない。二つまたは四つの棚部20を利用する実施形態が考えられる。しかしながら、他の数量が利用されることもできる。それぞれの棚部20は、概ね盆形状とされ、基部28を有し、基部28から上方に延びる壁30を有し、壁30は少なくとも部分的に基部28の境界をなす。好ましくは、それぞれの棚部20に対し、壁30は周縁で完全に基部28の境界をなす。加えて、少なくとも一つの穴32が、それぞれの棚部20の基部28を通じて形成される。好ましくは、それぞれの棚部20は少なくとも二つの穴32、ガス伝達穴32aと流れ穴32bを含む。以下でさらに論じられるように、ガス流穴32aは、ガス流が容器10全体に行き渡れるように、棚部20を通したガス伝達を可能とする。流れ穴32bは、底部12および棚部20によって画成されるような容器10の種々の支持層の間に細胞媒体(セルメディア;cell media)を分配するよう、容器10内に配置された細胞媒体を平衡させるために設けられる。それぞれの棚部20のために二つ穴の構成を利用することが好ましいけれども、ガス伝達と平衡の両方の機能を実行することができる単一の穴32が、それぞれの棚部20に設けられてもよい。さらに、ガス伝達と平衡の一方または両方の機能のため、二つより多い穴32が利用されてもよい。それぞれの棚部20のガス伝達穴32aと流れ穴32bは離間されるのが好ましい。
【0012】
頂部14は、概して逆さ盆形状を有し、基部34と壁36を有し、壁36は、基部34から下方に延び、少なくとも部分的に基部34の境界をなす。好ましくは、管状首部16が頂部14に一体に形成され、頂部14から延びる。代替的に、頂部14に開口が形成され、管状首部16が別部品として形成され、溶着や接着等の任意の既知の技術を使って頂部14に固定されてもよい。頂部14から、管状首部16が取り付けられた一以上の棚部20内に延びる開口を形成することもさらに可能である。管状首部16の開口18は、楕円形(円形を含む)または半円形であってもよく、管状首部16の長さに沿って一定のあるいは可変の形状に形成されることができる(例えば、管状首部16の長さに沿って、開口18の一部が楕円形であり、一部が半円形である)。
【0013】
底部12、頂部14および一以上の棚部20は、集合して容器10を形成するよう、積み重ねられた方法で配置される。好ましくは、構成部品は、対象の細胞と両立可能な(compatible)熱可塑性材料から形成される。ポリスチレンが利用されてもよい。当業者に認識されるように、他の材料が利用されてもよい。構成部品は、透明に形成されたり、薄く色付けされたり(例えば青く)、あるいは着色されたり(例えば琥珀色に)することができる。加えて、底部12、頂部14および棚部20の種々の部分は、ある特定条件を高めるよう、変形され、あるいは処理されることができる。例えば、一以上の生物学的薬品が、底部12、頂部14および/または棚部20の一以上の部分に適用されることができる。一以上の生物学的薬品は、限定しないが、細胞外基質(extracellular matrix)、またはその成分、例えばラミニン(laminin)、フィブロネクチン、コラーゲン、およびこれらの任意の組み合わせを含む。加えて、あるいは代替的に、合成剤が適用されてもよい。表面は、例えば組織培養処理またはプラズマ重合法により、予め処理されることもできる。当業者に認識されるように、これらの種々の処理または変更は、種々の組み合わせで使用され、意図される目的に応じて利用される。
【0014】
底部12、頂部14および棚部20は、容器10を形成すべく隣接される。特に、頂部14の壁36は、頂部14に隣接して位置された棚部20の壁30に隣接される。全ての棚部20は、底部12と頂部14の間に位置される。隣接する複数の棚部20は、積み重ねられた方法で配置され、積み重ねられた下段の棚部20の壁30は、積み重ねられて隣接する上段の棚部20に隣接する。底部12は、底部12に隣接する棚部20に隣接され、当該棚部20は、複数の棚部20が用いられている場合、積み重ねられた最下段の棚部20でなければならない。底部12の壁26は、隣接する棚部20に隣接される。これらの境界における液密シールを提供するため、溶着(例えば超音波溶接による)、接着、および/または機械的接続(例えば噛み合う舌片および溝)等のあらゆる公知の技術が、任意の組み合わせで利用されることができる。ガスケット等のシール部材が、頂部14と隣接する棚部20との間などの、隣接部品の間に介設されることができる。ガスケット材料は、ガス透過性だが液体不透過性であるように選択されることができる。加えて、一以上の排気口37が、底部12、頂部14および/または一以上の棚部20に形成されてもよい。ガス透過性/液体不透過性の膜(メンブレン)が、一以上の排気口37を横切って延びるよう設けられてもよい。
【0015】
底部12、頂部14および棚部20は、細胞培養のための異なる表面積を提供するよう、様々な形状を持ったサイズとされることができる。したがって、容器10は、例えば図示されたフラスコ形状のような、異なったサイズおよび異なった形状で形成されることができる。代わりに、容器10は、長方形状を有してもよく、あるいは他の多角形またはその他の形状で形成されることができる。好ましくは、容器10は、棚部20が縦に整列される直立位置に容器10を支持するよう形成された第1の端部38を含む。これは、平衡を達成すべく細胞媒体を充填するのに好ましい状態である。より好ましくは、第1の端部38は、容器10の、管状首部16の開口18から反対側の位置に配置される。第1の端部38は、平坦面、または集合して着座面を画成する多点(a locus of points)であってもよい。
【0016】
底部12、頂部14および棚部20は容器10を形成する。底部12、頂部14および棚部20の壁26、36、30はそれぞれ、また底部12および頂部14の基部24、34はそれぞれ、容器10の外表面の部分を画成する。
【0017】
平衡を達成するため、流れ穴32bが第1の端部38に近接して位置されるのが好ましい。この方法において、図16に示されるように、細胞媒体Cが容器10内に配置され、容器10が第1の端部38の上に静止するという状態で、細胞媒体Cは流れ穴32bを通過し、底部12、棚部20および頂部14の間において平衡状態で分割された容積(V1、V2、V3・・・)を達成する。平衡状態から、容器10は、図18に示されるように、底部12の上に水平に静止するよう置かれる。細胞媒体Cの分割された量は、結局、底部12または棚部20によって画成される支持下層(supporting underlayer)に広がって分配させられる。
【0018】
好ましくは、細胞媒体Cは、底部12、棚部20および頂部14間の等しい容積の中に平衡化させられる。底部12、頂部14および棚部20それぞれの基部24、34、28の間の間隔zのような、等しい間隔が、特に容器10の第1の端部38に隣接した位置で、各層の間に等しい量を捕獲させる。
【0019】
図13−14に示されるように、頂部14の基部34は概ね全体が平坦に形成される。良好なピペットアクセスを可能とすべく、図14に示されるように、頂部14の基部34は、隣接する棚部20の基部28から離間された部分を有し、当該部分は、棚部20の基部28間に見られる間隔z、または底部12の基部24と隣接する棚部20の基部28との間に見られる間隔zよりも大きく離間されている。図17に示されるように、この増加された間隔(間隔q)は、容器10の全長を通じ第1の端部38に接触するピペットアクセスを向上する。こうして、ピペットアクセスを利用し、容器10を第1の端部38の上に静止させて、ポストセル培養(post cell culturing)、細胞媒体および細胞の効率的回収が行われる。頂部14の基部34と隣接棚部20の基部28との間隔を増すことは、しかしながら、頂部14と隣接棚部20との間に、棚部20同士の間に捕獲される量および底部12と隣接棚部20との間に捕獲される量と比べて、より多い量が捕獲されることに帰結する。
【0020】
好ましくは、頂部14の基部34には、第1、第2および第3の部分42、44、46がそれぞれ形成される。これらは、第1の端部38の付近において、頂部14の基部34と隣接棚部20の基部28との間に捕獲される量を減少する。特に、図18を参照して、第1の部分42は隣接棚部20の基部28から距離xだけ離れて位置され、第2の部分44は隣接棚部20の基部28から距離yだけ離れて位置され、距離xは距離yより大きい。第2の部分44は、第1の端部38に隣接した容積を部分的に取り囲むよう、第1の端部38から延びる。好ましくは、距離yは、各隣接棚部20間および底部12と隣接棚部20との間に設定された間隔zに等しい。第2の部分44が、第1の端部38から延びる所定長さLを有し、所定長さLが、目標平衡量を受け入れるのに必要な長さ以上であるのがさらに好ましい。この方法において、図16に示されるように、細胞媒体Cが平衡化された状態で、第2の部分44が細胞媒体Cの高さと同一にまたはそれを越えて延びる(容積V1、V2、V3・・・が平衡化されるように)。平衡状態において、細胞媒体Cの高さが第3の部分46の下にあるのが好ましい。第2の部分44の上にあり、第3の部分46に接する細胞媒体Cの高さは、平衡化から生じた不均等な量に帰結する。第1、第2および第3の部分42、44、46の配置により、第1の端部38への良好なピペットアクセスがもたらされる。これは、第1の部分42に隣接したより高い領域を通過するピペットによる、第1の端部38付近の第2の部分44に隣接した容積へのアクセスを含む。この配置は、種々の層間で平衡化されるべき等しい容積をも可能にする。第1および第2の部分42、44は、それぞれ平坦に形成され、平行に配置されることができるが、他の形状(例えば円弧状)も可能である。
【0021】
基部34の第3の部分46は、第1および第2の部分42、44の間に延びてこれらを接続する。好ましくは第3の部分46は平坦に形成されるが、円弧状などの他の形状に形成されてもよい。有利には、第3の部分46は、印刷またはバーコード等の他の指標の付加に適した表面を画成する。第2の部分44によって画成された平面に対し、第3の部分46は、約10〜90°の範囲の角度、より好ましくは約10〜30°の範囲の角度、より好ましくは約20°の角度で、配置される。第2の部分44に対し傾斜して配置された第3の部分46は、第1の端部38の上に容器10が静止している状態で、細胞媒体Cを第1の端部38に向けるテーパ面を提供する。90°の角度αが可能であるけれども、角度αは、いかなる細胞媒体または細胞も第1および第3の部分42、46の交差部に捕獲されることを避けるよう、90°より小さいのが好ましい。
【0022】
第2の部分44の使用により、図1に示されるように、凹部48が容器10に画成される。頂部14の壁36は部分的に凹部48との境界をなす。凹部48は、壁36の露出部分において、ユーザーがこれに把持アクセスすることができるハンドル機能を提供する。
【0023】
図2に示されるように、ガス伝達穴32aは、囲まれた容積22の中にガス流路40を画成するよう、直線状であるのが好ましい。好ましくは、ガス流路40は、管状首部16に画成された開口18の付近に延びる。ガス流路40は、棚部20を通じて延びることにより、ガス流が、囲まれた容積22の様々な部分に到達するのを許容する。
【0024】
上述されたように、また図18に示されるように、細胞培養使用状態において、容器10は底部12の上に静止するよう配置される。この位置で、細胞媒体Cは、その液体特性のため、対応する底部12または棚部20の基部24、28の面に広がって配置される。底部12に関し、壁26は、細胞媒体Cを基部24の上に維持する流体格納(fluid containment)を提供する。棚部20に関して、細胞媒体Cがいずれかの穴32(32a、32b)を通って通過するのを避ける格納を提供するため、格納壁50が、それぞれの穴32の端縁部に沿って配置され、堤防として機能する。好ましくは、棚部20の壁30の高さは、格納壁50の高さよりも大きい。この方法において、棚部20間の細胞媒体Cの各層の上にオープンスペースが維持されることができる。
【0025】
同一容器10内で同一量が各層に受け入れられるのが好ましいけれども、底部12と棚部20は、細胞媒体Cの異なる量を処理するよう構成されてもよい。底部12の基部24および壁26は、底部12上に細胞媒体Cを受け入れるための容積を画成する。各棚部20の基部28、壁30および格納壁50は、それらの上に細胞媒体Cを受け入れるための容積を画成する。底部12と棚部20は、4〜50ミリリットルの範囲で細胞媒体Cの量をそれぞれ受け入れるよう構成されることができる。底部12が、それに形成された穴32を有しないので、底部12の表面積は、各棚部20の表面積より大きい。こうして、底部12上の細胞媒体C層の高さは、棚部20上の細胞媒体C層の高さより僅かに小さい高さを有する。間隔zは、細胞媒体Cの層上に十分なヘッドスペースを確保し、適切にガス分配できるよう、各層の細胞媒体Cの容量を考慮して設定される。
【0026】
格納壁50によって対応する穴32に吸い入れられる(wicked)細胞媒体Cに関する関心が存在する。図11、15、19に示されるように、格納壁50は、円弧状の長手軸に沿って曲げられるのが好ましい。曲げられた形状は、毛細管引力に逆らって作用し、格納壁50に無吸引効果(anti-wicking effect)を提供する。
穴32(32a、32b)が円弧状に形成され、その端縁部に沿って格納壁50が配置されることができる。加えて、図11、15、19に示されるように、穴32は種々の形状を有することができる。特に、32aのガス伝達穴は、棚部20の側端縁部52の一部に沿って延びるよう形成され(図11、15)、または棚部20の側端縁部52の全長に沿って延びるよう形成され(図19)ることができる。
【0027】
格納壁50には、他の無吸引特徴が与えられることができる。例えば、各棚部20の基部28に対して傾斜して配置されること(図21);円弧状の断面が与えられること(図23);および/または対応する穴32から離れる方向に向く非平滑表面53を含むこと、である。図20〜24に示されるように、非平滑表面53は、種々の表面中断部または突起部を含むことができる。例えば出っ張り、小窪み、粗くされた領域、条痕等である。無吸引特徴は、毛細管引力を妨げることを意図される。
加えて、あるいは代わりに、格納壁50は、細胞媒体Cをはじくための疎水性部分を有するよう作製または準備されてもよい。例えば、格納壁50が終端する自由端縁54は、疎水性であるように準備されてもよい。格納壁50の他の部分が同様に扱われてもよい。この効果をさらに高めるため、棚部20の基部28の部分は、棚部20の基部28上における細胞媒体Cの保持を高めるため、親水性に形成されてもよい。これらの種々の無吸引特徴は様々な組み合わせで用いられることができる。
【0028】
容器10は、追加の特徴または変更が与えられることができる。例えば、図2、25を参照して、管状首部16は、容器10に対して異なった角度の向きで設けられることができる。図2に示されるように、管状首部16は、最上段の棚部20の基部28によって画成される平面に対して角度βで配置される長手軸に沿って延びる。
角度βは約0°〜90°の範囲内にあってもよい。0°において、管状首部16は、図2に示されるように、頂部14の側面から突出する。90°において、管状首部16は、図25に示されるように、鉛直の向きを有し、頂部14の基部34から突出する。この配置により、ガス流路40を通り、底部12の基部24付近に位置される容積に至るピペットアクセスが、細胞媒体または細胞の除去のために提供される。
角度βは代替的に鋭角であってもよい。
【0029】
容器10は、他の容器に積み重ねることができるよう形成されるのが好ましい。このような積み重ねを達成するため、頂部14が、底部12によって画成される着座面に平行な上部着座面を画成するのが好ましい。この方法において、二以上の容器10が積み重ねられ、上部に積み重ねられた容器の底部12は、下部に積み重ねられた容器10の頂部14によって支持される。安定性を高めるため、ビード56が、底部12の外面に画成されてもよい。これに対応して、頂部14の壁36は、基部34から僅かに突出するよう形成されてもよい。壁36は、ビード56を入れ子状に受け入れ、積み重ねられた状態において横の安定性を与える。留意すべきは、頂部14の壁36が、特に基部34から突出することにより、上部に積み重ねられた容器10の重量を主に支持するよう構成されることである。こうして、凹部48の存在による不安定性の問題は回避される。
【0030】
棚部20の基部28は好ましくは平坦に形成される。代わりに、基部28は、表面積を増すため、波状、起伏状または他の形状で形成されることができる。いかなる形状でも、棚部20によって支持される細胞媒体Cの層が、底部12上に静止する容器10と平行に配置されるのが好ましい。底部12の基部24は、同様に、増大された表面積を有するよう形成された、波状、起伏状または他の形状であるよう形成されることができる。いかなる形状でも、底部12によって支持される細胞媒体Cの層が、細胞媒体Cの他の層と平行であるのが好ましい。
【0031】
アッセンブリとしての容器10は、開口18をシールするような、管状首部16に取り付けられるように形成された対応するキャップ58を設けられることができる。摩擦嵌合、締まり嵌め、ねじ取り付けまたはバヨネット(差し込み)取り付けなどの、取り付けを可能とするあらゆる公知の構成が、利用可能である。キャップ58は、排気の無いよう固体で形成されることができる。代わりに、キャップ58は、ガス透過/液体不透過膜61を含む一以上の排気口60が設けられてもよい。さらに、キャップ58は、取り囲まれた容積22と外部固定物との間の選択的な無菌接続を可能とする一以上の調節弁62を含むことができる。さらに、キャップ58は、一以上の供給管T(例えばガス供給管)との直接的且つ連続的な連通を可能にする一以上の管継手64を含むことができる。
【0032】
使用において、容器10が第1の端部38の上に置かれ、十分な量の細胞媒体Cが、開口18を介して囲まれた容積22に導入され、底部12および各棚部20に対し目標容量を与える。ピペットが細胞媒体Cを導入するために用いられ、ピペットは開口18を通じて、頂部14と隣接棚部20の間の囲まれた容積22に挿入される。導入された細胞媒体Cは、第1の端部38に隣接した容積に集まり、流れ穴32bの間で平衡化し、底部12と各棚部20に対応した、細胞媒体Cの分割された量を提供する。平衡化されると、容器10は底部12上に静止するよう調整され、細胞媒体Cは、底部12と各棚部20に広がって分散される。キャップ58が、開口18をシールするために管状首部16に取り付けられてもよい。その後、容器10はインキュベーター(培養器)に置かれることができる。運搬のため、容器10が縦に保持され、細胞媒体Cが、第1の端部38に隣接した囲まれた容積22内に蓄積されるのが好ましい。培養の間、複数の容器10が積み重ねられてもよい。
【0033】
交換や細胞採取の目的で細胞媒体Cを抽出するため、容器10は第1の端部38の上に置かれる。ピペットまたは他の抽出器具が、第1の端部38に隣接した位置から細胞媒体Cを抽出するために導入される。これは完全な除去を可能にする。ピペットは、頂部14と隣接棚部20の間の囲まれた容積22に導入され、第1の端部38に隣接した容積に、抽出のためアクセスする。細胞媒体Cは、負圧下で、流れ穴32bを通じ、頂部14に隣接した容積へと、そこからの抽出のため吸引される。代わりに、細胞媒体Cは開口18を通じて注入されることができる。トリプシンまたは他の解離剤が、採取のため細胞を解放させるのに利用されることができる。
【符号の説明】
【0034】
10 容器
12 底部
14 頂部
16 管状首部
18 開口
20 棚部
22 囲まれた容積
24 基部
26 壁
28 基部
30 壁
32 穴
34 基部
36 壁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
細胞を培養するための容器であって、
基部を含む底部であって、前記底部の前記基部の境界を少なくとも部分的になす上方に延びた壁を備える底部と、
基部を含む頂部であって、前記頂部の前記基部の境界を少なくとも部分的になす下方に延びた壁を備える頂部と、
開口を画成する管状首部と、
一以上の棚部であって、各棚部が基部と、前記棚部の前記基部の境界を少なくとも部分的になす上方に延びた壁とを備える一以上の棚部と、
を備え、
前記一以上の棚部のうちの第1の棚部の前記上方に延びる壁が、前記頂部の前記下方に延びる壁に隣接し、
前記第1の棚部が前記底部と前記頂部の間に位置され、
前記各棚部の前記基部が少なくとも一つの穴を有し、
前記底部、前記頂部および前記一以上の棚部が、集合して、細胞を培養するための囲まれた容積を画成し、前記管状首部が前記容器から延び、前記囲まれた容積が、前記管状首部の前記開口によってアクセス可能である容器。
【請求項2】
前記少なくとも一つの棚部が第2の棚部を含み、前記第2の棚部が前記底部と前記第1の棚部の間に位置され、前記底部の壁が前記第2の棚部に隣接する、請求項1に記載の容器。
【請求項3】
前記容器が、第1の端部と、第1の容積と、第2の容積とを有し、前記第1の容積が、前記頂部と前記第1の棚部の間に画成され、前記第1の端部から所定長さ延び、前記第2の容積が、前記底部と前記第2の棚部の間に画成され、前記第1の端部から所定長さ延び、前記第1および第2の容積が実質的に等しい、請求項2に記載の容器。
【請求項4】
前記開口が、前記容器の前記第1の端部付近の前記第1の容積へのピペットアクセスを可能とするよう、整列されている、請求項3に記載の容器。
【請求項5】
前記各棚部に流れ穴が形成され、前記第1の容積が前記第1の棚部の前記流れ穴に連通され、前記第2の容積が前記第2の棚部の前記流れ穴に連通されている、請求項3に記載の容器。
【請求項6】
前記頂部の前記基部が、前記第1の棚部の前記基部から第1の距離だけ離れた第1の部分を有し、前記頂部の前記基部が、前記第1の棚部の前記基部から第2の距離だけ離れた第2の部分を有し、前記第1の距離が前記第2の距離より大きい、請求項3に記載の容器。
【請求項7】
前記開口が、前記容器の前記第1の端部付近の前記第1の容積へのピペットアクセスを可能とするよう、整列されている、請求項6に記載の容器。
【請求項8】
前記第2の部分が、前記容器の前記第1の端部から所定長さ延びる、請求項6に記載の容器。
【請求項9】
前記頂部の前記基部が第3の部分を含み、前記第3の部分が、前記頂部の前記基部の前記第1および第2の部分の間に延び、且つこれらを接続する、請求項6に記載の容器。
【請求項10】
前記頂部の前記基部の前記第1および第2の部分が略平行に配置されている、請求項9に記載の容器。
【請求項11】
前記第3の部分が、ほぼ平坦であり、前記基部の前記第2の部分によって画成される平面に対し角度を付けて配置され、前記角度が約10〜90°の範囲内にある、請求項10に記載の容器。
【請求項12】
前記角度が約10〜30°の範囲内にある、請求項11に記載の容器。
【請求項13】
前記角度が約20°である、請求項11に記載の容器。
【請求項14】
前記管状首部が前記頂部から延びる、請求項6に記載の容器。
【請求項15】
前記頂部が少なくとも一つの排気口をさらに含む、請求項1に記載の容器。
【請求項16】
ガス透過性膜が前記排気口を横切って延びる、請求項15に記載の容器。
【請求項17】
前記管状首部の前記開口が、前記管状首部の長さに沿った少なくとも一部において、楕円形または半円形である、請求項1に記載の容器。
【請求項18】
前記管状首部が長手軸に沿って延び、前記長手軸が、前記第1の棚部の前記基部によって画成される平面に対し角度を付けて配置され、前記角度が約0〜90°の範囲内にある、請求項1に記載の容器。
【請求項19】
前記角度が約0°である、請求項18に記載の容器。
【請求項20】
前記角度が約90°である、請求項18に記載の容器。
【請求項21】
前記角度が鋭角である、請求項18に記載の容器。
【請求項22】
ガス伝達穴が前記各棚部に形成され、前記複数の棚部の前記ガス伝達穴が、直線状とされてガス流路を画成する、請求項1に記載の容器。
【請求項23】
前記ガス流路が、前記管状首部に画成された前記開口の付近へと延びる、請求項22に記載の容器。
【請求項24】
流れ穴が前記各棚部に形成され、前記各棚部の前記流れ穴が、前記各棚部の前記ガス伝達穴から離間されている、請求項22に記載の容器。
【請求項25】
前記各棚部が、前記基部から上方に延びる格納壁を含み、前記格納壁が少なくとも一つの穴に沿って画成される、請求項1に記載の容器。
【請求項26】
前記格納壁が、円弧状の長手軸に沿って曲げられる、請求項25に記載の容器。
【請求項27】
前記格納壁が、前記各棚部の前記基部に対し傾斜して配置される、請求項25に記載の容器。
【請求項28】
前記格納壁が円弧状の断面を有する、請求項25に記載の容器。
【請求項29】
前記格納壁が、前記各穴から離れる方向に向く非平滑表面を含む、請求項25に記載の容器。
【請求項30】
前記格納壁が自由端縁で終端し、前記格納壁が少なくとも前記自由端縁に沿って疎水性である、請求項25に記載の容器。
【請求項31】
前記各棚部の前記基部が、前記格納壁から離間された親水性部分を有する、請求項30に記載の容器。
【請求項32】
請求項1に従って形成された容器と、
前記管状首部に取り付けられるよう形成されたキャップと、
を備えるアセンブリ。
【請求項33】
前記キャップに排気口が設けられる、請求項32に記載のアセンブリ。
【請求項34】
前記キャップに排気口が設けられない、請求項32に記載のアセンブリ。
【請求項35】
前記キャップが、前記囲まれた容積への選択的なアクセスを可能にするための弁を含む、請求項32に記載のアセンブリ。
【請求項36】
前記キャップが、一以上の管に接続するための手段を含む、請求項32に記載のアセンブリ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図17】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図16】
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【図18】
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【公開番号】特開2011−24577(P2011−24577A)
【公開日】平成23年2月10日(2011.2.10)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2010−164875(P2010−164875)
【出願日】平成22年7月22日(2010.7.22)
【出願人】(595117091)ベクトン・ディキンソン・アンド・カンパニー (539)
【氏名又は名称原語表記】BECTON, DICKINSON AND COMPANY
【住所又は居所原語表記】1 BECTON DRIVE, FRANKLIN LAKES, NEW JERSEY 07417−1880, UNITED STATES OF AMERICA
【Fターム(参考)】