説明

多層ろうそく

【課題】
本発明は、多色・多層であって、カービングやカッティング等の細工を施すことで装 飾性や視覚的効果を高め、火を灯したときに蝋が内から外へと順番に溶けていくにつれ て灯りが外側へ照射されて細工模様が浮かび、灯篭や行灯又は影絵のような癒し効果を 与えるろうそくを提供する。
【解決手段】
本発明は上記課題を解決するために、所定の形状からなるろうそく中央部に芯材を固 定したものを基台として、これの外周面を被う形で内側から外側へと基台よりも融点が 徐々に高くなるようにしてしかも異なる色で着色された蝋を順次幾重にも塗り重ねて厚 みを持たせた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、装飾性や視覚的効果を高めると同時に従来にない癒しを与える効果をねら った多色・多層のろうそくであって、カービングやカッティング等の細工を施すことが できるようにしたろうそくに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、ろうそくは色数も少なく、模様は印刷や凹凸で施されていた。なお、関連技術に下記物件がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実開昭33−19474号公報
【特許文献2】実開昭48−80377号公報
【特許文献3】実開昭56−28055号公報
【特許文献4】実開昭58−34938号公報
【特許文献5】実開昭58−97150号公報
【0004】
上記特許文献1は、芯1を埋装した空気が混入したクリーム状固体の蝋或いは油脂2の外面に蝋或いは固体油脂3を被着してなる蝋燭の構造が示され、特許文献2は、パラフィン、ステアリン等の1種又は2種以上のろうそく原料に芯体を埋装し、上記ろうそく原料の外周面にポリエチレンとマイクロワックスの融合材の如き上記ろうそく原料より融点の高い皮膜層を融着し、上記皮膜層の外表面には一部模様面を形成したマイクロワックスの外被層を一体に被装し、上記皮膜層及び上記外被層又はその何れか一方に着色してなることを特徴とする美術ろうそくが示されている。また、特許文献3は、蝋燭1の表面3に接着力の強い合成樹脂皮膜層21を形成し、該合成樹脂皮膜層21の上に蛍光顔料等を混入した難燃性印刷インキで所要の文字、図形、模様などを施した印刷層22を形成すると共に、該印刷層22を湿気吸収性と難燃性を有する合成樹保護皮膜層23でコーティングしたことを特徴とする美匠皮膜を有する蝋燭装置が示され、特許文献4は、蝋燭本体を内層および外層の二層で形成し、外層を形成する蝋が内層を形成する蝋の融点よりも高いものからなるドリップ防止蝋燭が示されている。また、特許文献5は、蝋燭本体(1)の外側表面に凹凸模様の家紋(2)を形成せしめたことを特徴とする家紋付き蝋燭が示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
以上に述べた従来のろうそくでは、次のような問題点があった。
特許文献1は油脂を使うので油煙や煤を生じ蝋が垂れて外観を損ね模様も施されていないために装飾性が低い。特許文献2では樹脂のポリエチレンを使うため油煙や煤が生じ、蝋がポタポタと垂れてだまになり受け皿にこびりつきやすく美観を損ねる。ろうそく原料と皮膜層と外被層の3層構造であり皮膜層か外被層の何れか一方に着色するので2色である。模様は一部に凹面状に成形するので装飾性は低い。特許文献3では蝋燭表面に合成樹脂皮膜を形成し難燃性印刷インキで模様等を形成し合成樹脂保護皮膜層でコーティングしているため装飾性は高いが、特許文献2と同様の問題点がある。特許文献4では内層と外層の2層で模様がないために装飾性が低い。特許文献5では内層と外層の2層で凹凸模様の家紋を入れて祭礼用にしているため装飾的効果はない。また、特許文献1〜5のろうそくに共通して、多色多層でなく細工を施すことができない。
本発明は、以上の問題点を解決するために、装飾性を高め視覚的効果に優れており、細工を施すことができ、且つ従来にない癒しを与える効果を狙っている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は上記課題を解決するために、所定の形状からなるろうそく中央部に芯材を固 定したものを基台として、これの外周面を被う形で内側から外側へと基台よりも融点が 徐々に高くなるようにし、しかも異なる色で着色された蝋を順次幾重にも塗り重ねて厚 みを持たせ、カービングやカッティング等の細工を施せるようにした。
【発明の効果】
【0007】
本発明は上記構成からなるので以下に示す効果が期待できる。
1、基台を形成するろうそく原料より外被層を形成する蝋の融点を内から外に徐々に高く したために、火を灯したときに蝋燭の内から外へと順々に溶けていくので蝋がこぼれず 美観に優れている。
2、異なる色で着色された蝋を順次幾重にも塗り重ねるので、多色・多層となる。
3、所定の厚みを持たせることで、カービングやカッティング等の立体的な細工を施すことができるようになる。カービングやカッティングデザインの華やかさとカット面から覗く色のグラデーションが美しく装飾性が高くなる。
4、火を灯すと、炎の周りの蝋が溶けるにつれドーナツ状にグラデーションの色模様が現 れ視覚と色彩効果に優れている。また、基台が溶けて無色透明となった溶液の中に着色 された蝋が溶けて流れ込みどんな色になるのだろうという期待感を得られる。
5、蝋が内側から順々に溶けていくにつれ、灯りが外へと照射されて外被層に施した細工模様が浮かびあがり影絵のようである。また、ろうそく口部やカットされて薄くなった部分はひときわ明るく厚みの残る部分はやや暗く見えて灯篭や行灯のようでオレンジ色の暖かで柔らかな光と炎のゆらめきに癒される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の使用前の球状ろうそく正面図
【図2】本発明の球状ろうそく断面図(図1のA・A線)
【図3】カービングやカッティング等で細工後、使用中の本発明の球状ろうそく斜視図
【図4】本発明の他の形態を示す図で、カービングやカッティング等を細工後、使用前 の本発明の直方体ろうそく正面図
【図5】本発明の直方体ろうそくの断面図(図4のB・B線)
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。
図1は本発明の使用前の球状ろうそく1の正面図である。3は芯材である。図2は図1のA・A線断面図である。図3はカービングやカッティング等で細工を施した球状ろうそくを使用中している状態を示す斜視図である。図1〜3の球状ろうそく1を形成するには、第一工程として球状型枠中央に芯材3を固定しパラフィン主体の蝋を流し入れ固めて型枠からはずし基台とする基台ろうそく4を作る。ろうそく原料としてはパラフィンワックス、マイクロワックス、ステアリン酸ワックス、木蝋、バームオイル、ソイオイル、蜜蝋、鯨
蝋等がある。本発明の場合の基台ろうそく4を作る一例としてはパラフィンワックスに硬度を増し型離れを良くするためにステアリン酸ワックスを少々加えている。芯材3としては毛細管現象を良くするため薬品で晒した絹糸を用いている。他に芯材としては木綿糸などのより糸や和紙とイグサの燈芯に真綿を薄く巻きつけたものやこより等がある。
第二工程として、基台4の外周面を被う形で外被層を形成する。基台4よりも融点が内から外へ徐々に高くなるように融点の異なる2種類の蝋例えばパラフィンワックスとマイクロワックスを別々に溶かして少しづつ配合割合を変えて混ぜ合わせそれぞれに異なる色で着色して塗り重ねる。パラフィンワックスの融点は50℃〜60℃である。マイクロワックスの融点は77℃以上である。マイクロワックスは粘度が高く手の平の温度で自由に形をとることができる特性を持ち、加えることでろうそくの斑点や亀裂を防止できる。図2に一例を示すが、内から順番に5は赤色に6は黄色に7は緑色に8は桃色に9は青色に10は橙色に着色する。着色する色の選択や組み合わせは、幾通りもある。尚、着色剤としては自然素材のものや合成したもの等があるので目的によって最適のものを使う。
【0010】
塗り重ねる方法は長めにした芯糸3を持ち溶かした赤色蝋に漬けては引き上げて乾かすことを数回繰り返す。次に黄色蝋、緑色蝋、桃色蝋、青色蝋、橙色蝋を順次幾重にも塗り重ねて厚みを付ける。こうして塗り重ねた厚みの部分にカービングやカッティング等の細工を施す。パラフィンワックスとマイクロワックスを別々に溶かしてそれを配合する際にマイクロワックスが多すぎるとできたろうそくは粘りが強すぎてナイフにくっつきカットしにくい。逆にパラフィンワックスが多すぎると蝋が堅すぎてナイフでカットできない。更に粘りが少ないために塗り重ねた層と層がくっつかずに剥離しやすい。このため、粘りが強くなりすぎず、また堅くなりすぎないような配合を工夫する必要がある。重ねる層の数と色と厚み等は自在に変えることができる。
【0011】
図3は本発明の球状ろうそくに細工を施して、火を灯した状態を示すものである。細工の例として、外被層にすり鉢状に彫った三角孔12a、四角孔12b、丸孔12cのように形の異なる穴を彫ったことで装飾的効果が期待できる。カットしたナイフの深さによって表に見える層の色数が異なり、色のグラデーションが綺麗であり、外皮に表れている色(このろうそくでは橙色)との対比が意外性を与えて面白い。細工の模様は花や小鳥模様、幾何学模様、切子ガラス風等、使用者の好みで施すことができる。熱い季節や場所ではそのままで細工できるが寒い季節や場所では熱源で温めながら施すと細工しやすい。火を灯すと炎11の周りから溶け始め、塗り重ねた逆の順番に色が見え始めてドーナツ状に色の層が現れた状態も示している。
【0012】
図4は本発明の直方体ろうそくの正面図で細工を施した例を示すものである。四角孔12b、丸孔12c、ハート孔12d、細長い三角孔12e等である。図5は図4のB・B線断面図である。
本発明は以上の形態からなるので、多色・多層のろうそくであり、カービングやカッティング等の細工を施すと、ナイフでカットされた深さによって色が異なる層があらわれる。更に、火を灯して周りの蝋が溶けるにつれ色の層があらわれる。
【産業上の利用可能性】
【0013】
(イ)照明として。
柔らかく暖かな灯りである。蝋が垂れず細工された模様などを汚すことがなく美観 に優れている。
(ロ)素材として。
カービングやカッティング等の素材として、細工をする楽しみを提供する。
(ハ)キャンドル・アートとして。
(ロ)を使ったデモンストレーション・キャンドル作り体験・キャンドル細工体験を 催すことによりキャンドルの新しい楽しみ方を提供できる。また、デザインやカッテ ィング技術を教授できる。それに関連した細工用のナイフや型などの備品販売ができ る。以上のことより、アートとして確立できる。
(ニ)製品として
個人や教室等で、素材として購入したろうそくに思い思いのデザインを細工して販売 することができる。また、工房や工場などの規模の大きい設備で大量生産に向くデザ インを選んでたくさん作り販売することもできる。
(ホ)演出効果として。
細工が施されたキャンドルを結婚式や各種パーティーのアレンジメントやテーブル デコレーション等に用いることで、会場を華やかに飾る視覚的・装飾的効果が得ら れる。更に、火をともして蝋が溶けるにつれ内部のドーナツ状のグラデーションと着 色した蝋が融合し色が変化する様や柔らかで温かな灯りを眺めることで心を穏やかに する従来にない癒し効果を与える。
(ヘ)神仏用途として。
デザインによって、お正月・お盆の灯明・祭礼のイベント等の行事に対応できる。
(ト)ろうそく以外の用途として。
額などの型枠に異なる色に着色した軟らかい蝋を順々に流し入れて層状に重ねたものに カッティングやカービング等の細工を施して、絵画のように壁掛けとして用いることも 出来る。(ロ)(ハ)と同様の効果を持つ。
(チ)ろうそく製造方法。
基台を作る工程と外被層を作る工程の二工程である。
基台は型枠に入れて作る。外被層は基台を被う形で形成する。
基台を作る際に長めに出しておいた芯糸を持ち、容器に溶融した蝋に漬けては引き上 げ乾いたら又漬けるというように数回繰り返して塗り重ねて厚みをつけていく製造方法 のため、色の数や配列、層の数や厚みが自在に調整でき製造が容易で設備も簡単で経済 的である。
基台を形成する蝋に融点が低い蝋を用い、これに融点の高い蝋を配合して内から外へ と徐々に高くなるように調整するので、蝋の特徴や融点等を調べるとパラフィンワック スとマイクロワックス以外の組み合わせも可能である。
【0014】
本発明に係る多層ろうそくは、以上に述べた球状、直方体のほか円錐、円柱、三角錐、三角柱、四角錐、立方体、洋ナシ型等の様々な形状に対応できることは説明するまでもない。
【符号の説明】
【0015】
1球状ろうそく
2直方体ろうそく
3芯材
4基台
5赤色蝋の層
6黄色蝋の層
7緑色蝋の層
8桃色蝋の層
9青色蝋の層
10橙色蝋の層
11炎
12a三角孔
12b四角孔
12c丸孔
12dハート孔
12e細長い三角孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の形状からなるろうそく中央部に芯材を固定したものを基台として、これの外周面 を被う形で内側から外側へと基台よりも融点が徐々に高くなるようにし、しかも異なる 色で着色された蝋を順次幾重にも塗り重ねて厚みを持たせ、カービングやカッティング 等の細工を施せるようにしたことを特徴とする多層ろうそく。
【請求項2】
型枠中央に芯材を固定し蝋を流しいれ固めて型枠からはずし基台を作る工程と、基台よ りも融点が内側から外側へ徐々に高くなるように、且つ、異なる色に着色し溶融した蝋 に基台を浸漬し引き上げて乾燥することを数回繰り返し、更に色の異なる蝋を順々に塗 り重ねて厚み付けする工程とを備えた多層ろうそくの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−195928(P2010−195928A)
【公開日】平成22年9月9日(2010.9.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−42150(P2009−42150)
【出願日】平成21年2月25日(2009.2.25)
【出願人】(308039517)
【Fターム(参考)】