説明

多層プリント配線板用片面回路基板、および多層プリント配線板とその製造方法

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、多層プリント配線板用片面回路基板、および多層プリント配線板とその製造方法に関し、特に、インターステシャルバイアホール構造の多層プリント配線板を高い歩留りで効率良く製造するのに有効な多層プリント配線板用片面回路基板、およびこの片面回路基板から構成される多層プリント配線板とその製造方法について提案する。
【0002】
【従来の技術】従来の多層プリント配線板は、銅張積層板とプリプレグを相互に積み重ねて一体化してなる積層体にて構成されている。この積層体は、その表面に表面配線パターンを有し、層間絶縁層間には内層配線パターンを有している。これらの配線パターンは、積層体の厚さ方向に穿孔形成したスルーホールを介して、内層配線パターン相互間あるいは内層配線パターンと表面配線パターン間を電気的に接続するようにしている。
【0003】ところが、上述したようなスルーホール構造の多層プリント配線板は、スルーホールを形成するための領域を確保する必要があるために、部品実装の高密度化が困難であり、携帯用電子機器の超小型化や狭ピッチパッケージおよびMCMの実用化の要請に十分に対処できないという欠点があった。そのため、最近では、上述のようなスルーホール構造の多層プリント配線板に代えて、電子機器の小型化,高密度化に対応し易いインターステシャルバイアホール(IVH)構造を有する多層プリント配線板の開発が進められている。
【0004】このIVH構造を有する多層プリント配線板は、積層体を構成する各層間絶縁層に、導体層間を接続する導電性のバイアホールが設けられている構造のプリント配線板である。即ち、この配線板は、内層配線パターン相互間あるいは内層配線パターンと表面配線パターン間が、配線基板を貫通しないバイアホール(ベリードバイアホールあるいはブラインドバイアホール)によって電気的に接続されている。それ故に、IVH構造の多層プリント配線板は、スルーホールを形成するための領域を特別に設ける必要がなく、電子機器の小型化,高密度化を容易に実現することができる。
【0005】こうしたIVH構造の多層プリント配線板に関し、例えば、第9回回路実装学術講演大会予稿集(平成7年3月2日)の第57頁には、全層IVH構造を有する多層プリント配線板の開発に関する提案が報告されている。この提案の多層プリント配線板は、■炭酸ガスレーザによる高速微細ビア穴加工技術、■基板材料としてアラミド不織布とエポキシ樹脂のコンポジット材料の採用、■導電性ペーストの充填による層間接続技術、に基づいて開発されたものであり、以下のプロセスによって製造される(図1参照)。
【0006】まず、プリプレグとしてアラミド不織布にエポキシ樹脂を含浸させた材料を用い、このプリプレグに炭酸ガスレーザによる穴開け加工を施し、次いで、このようにして得られた穴部分に導電性ペーストを充填する(図1(a) 参照)。次に、上記プリプレグの両面に銅箔を重ね、熱プレスにより加熱、加圧する。これにより、プリプレグのエポキシ樹脂および導電性ペーストが硬化され両面の銅箔相互の電気的接続が行われる(図1(b) 参照)。そして、上記銅箔をエッチング法によりパターニングすることで、バイアホールを有する硬質の両面基板が得られる(図1(c) 参照)。
【0007】このようにして得られた両面基板をコア層として多層化する。具体的には、前記コア層の両面に、上述の導電性ペーストを充填したプリプレグと銅箔とを位置合わせしながら順次に積層し、再度熱プレスしたのち、最上層の銅箔をエッチングすることで4層基板を得る(図1(d),(e) 参照)。さらに多層化する場合は、上記の工程を繰り返し行い、6層、8層基板とする。
【0008】以上説明したような従来技術にかかるIVH構造の多層プリント配線板は、熱プレスによる加熱,加圧工程とエッチングによる銅箔のパターンニング工程とを何度も繰り返さなければならず、製造工程が複雑になり、製造に長時間を要するという欠点があった。しかも、このような製造方法によって得られるIVH構造の多層プリント配線板は、銅箔のパターンニング不良を製造過程で修正することが難しいために、製造過程で1個所でも(一工程でも)前記パターンニング不良が発生すると、最終製品である配線板全体が不良品となる。つまり、上記従来の製造プロセスは、各積層工程のうち1個所でも不良品を出すと、他の良好な積層工程のものまで処分しなければならず、製造効率あるいは製造歩留りの悪化を招きやすいという致命的な欠点があった。
【0009】これに対し、発明者は先に、IVH構造の多層プリント配線板を高い歩留りで効率良く製造するのに有効に用いられる多層プリント配線板用片面回路基板として、絶縁性硬質基板に対し、この基板の一方の面に導体回路を、そしてその他方の面には接着剤層をそれぞれ形成してなり、かつ前記基板および前記接着剤層にはこれらの層を貫通して導体に接する穴を設けて導電性ペーストを充填したバイアホールを形成したことを特徴とする多層プリント配線板用片面回路基板を提案し、IVH構造の多層プリント配線板として、IVHを介して電気的に接続された回路基板のうちの少なくとも一層が、上記片面回路基板で構成された多層プリント配線板を提案した。そして、上記片面回路基板を用いてIVH構造の多層プリント配線板を製造する方法として、■.絶縁性硬質基板の片面に貼着した金属箔をエッチングすることにより導体回路を形成する工程、■.上記基板の一方の面に形成した導体回路とは反対側の表面に接着剤層を形成する工程、■.上記絶縁性硬質基板と上記接着剤層を貫通して導体に接する穴を形成し、この穴に導電性ペーストを充填して片面回路基板を作製する工程、■.上記片面回路基板を2枚以上重ね合わせるか他の回路基板と共に重ね合わせ、次いで該基板が具える前記接着剤層を利用することによって、一度のプレス成形にて多層状に一体化させる工程、を経ることを特徴とする多層プリント配線板の製造方法を提案した。
【0010】この提案にかかる片面回路基板は、絶縁性硬質基板の貫通孔と接着剤層の貫通孔とを位置決めすることが難しいという点から、通常、導体回路とは反対側の絶縁性硬質基板表面に接着剤層を形成した後に、該基板と接着剤層を同時に穴開け加工して導体に接する穴を形成し、この穴内に導電性ペーストを充填することにより製造される。
【0011】しかしながら、穴内に充填した導電性ペーストが接する導体回路面を清浄化する目的で、上記片面回路基板をデスミア処理すると、未硬化状態の接着剤層も溶損されやすいという新たな問題があった。
【0012】
【発明が解決しようとする課題】本発明は従来技術が抱える上記問題を解消するためになされたものであり、その主たる目的は、デスミア処理による不具合を招くことなく、IVH構造の多層プリント配線板を高い歩留りで効率良く製造するのに有効に用いられる多層プリント配線板用片面回路基板を提供することにある。本発明の他の目的は、上記片面回路基板で構成されたIVH構造の多層プリント配線板を提供すること、即ち、凹凸の少ない平滑な片面回路基板を積層することにより、高い位置精度でかつ平坦性の良いIVH構造の多層プリント配線板を提供することにある。本発明のさらに他の目的は、上記片面回路基板を用いてIVH構造の多層プリント配線板を高い歩留りで効率良く製造する方法を提案することにある。
【0013】
【課題を解決するための手段】発明者は、上述した目的を実現するために鋭意研究を行った結果、以下に示す内容を要旨構成とする発明を完成するに至った。すなわち、(1)IVH構造の多層プリント配線板を高い歩留りで効率良く製造するのに有効に用いられる多層プリント配線板用片面回路基板として、本発明は、ガラス布エポキシ樹脂、ガラス不織布エポキシ樹脂、ガラス布ビスマレイミドトリアジン樹脂、アラミド不織布エポキシ樹脂のいずれかを、板状に硬化させてなる絶縁性硬質基板に対し、この基板の一方の面に導体回路と接着剤層をそれぞれ有すると共に、この基板の他方の面には、前記基板を貫通して導体回路に接し、かつ一端が閉塞された穴がレーザ照射により設けられ、かかる穴底に生じた樹脂残渣がデスミア処理されてなる穴内に導電性ペースト該基板面と平滑にまたは該基板面から突出する状態で充填されたバイアホールを有することを特徴とする多層プリント配線板用片面回路基板を提供する。ここで、上記導体回路は、絶縁性硬質基板の一面に銅箔が貼付されてなる片面銅張積層板の銅箔をエッチングして形成されたものであることが望ましい。また、上記接着剤層は、導体回路部分を含む絶縁性硬質基板の表面に接着剤を被覆形成した層からなることが望ましい。
【0014】(2)IVH構造の多層プリント配線板として、本発明は、回路基板の積層材がインタースティシャルバイアホールを介してそれぞれ電気的に接続されてなる構造の多層プリント配線板において、コア基板を除く内層回路基板のうちの少なくとも1つが、上記(1) に記載の片面回路基板で構成されていることを特徴とする多層プリント配線板を提供する。
【0015】上記(1) に記載の片面回路基板を用いてIVH構造の多層プリント配線板を高い歩留りで効率良く製造する方法としては、■.ガラス布エポキシ樹脂、ガラス不織布エポキシ樹脂、ガラス布ビスマレイミドトリアジン樹脂、アラミド不織布エポキシ樹脂のいずれかを、板状に硬化させてなる絶縁性硬質基板の一方の面に貼着された金属箔をエッチングすることにより導体回路を形成する工程、■.上記絶縁性硬質基板の他方の面から、前記基板を貫通して導体回路に接し、かつ一端が閉塞された穴をレーザ照射により形成し、その穴底の導体回路表面にデスミア処理を施した後、この穴に導電性ペーストを該基板面と平滑にまたは該基板面から突出する状態で充填してなるバイアホールを形成する工程、■.上記絶縁性硬質基板の導体回路形成面に接着剤層を設けて片面回路基板を作製する工程、■.上記片面回路基板を、コア基板に対して1枚以上重ね合わせるか他の回路基板と共に重ね合わせ、次いで当該片面回路基板が備える上記接着剤層を利用することによって、一度のプレス成形にて多層状に一体化させる工程、を経ることを特徴とする多層プリント配線板の製造方法を提案する。
【0016】
【発明の実施の形態】本発明の第1の実施形態は、デスミア処理による不具合を招くことなく、IVH構造の多層プリント配線板を高い歩留りで効率良く製造するために必要な多層プリント配線板用片面回路基板を提供することである。すなわち、本発明にかかる多層プリント配線板用片面回路基板は、ガラス布エポキシ樹脂、ガラス不織布エポキシ樹脂、ガラス布ビスマレイミドトリアジン樹脂、アラミド不織布エポキシ樹脂のいずれかを、板状に硬化させてなる絶縁性硬質基板の一方の面に導体回路と接着剤層をそれぞれ有すると共に、この基板の他方の面には、前記基板を貫通して導体回路に接し、かつ一端が閉塞された穴がレーザ照射により設けられ、かかる穴底に生じた樹脂残渣がデスミア処理されてなる穴内に導電性ペースト前記基板面と平滑にまたは基板面から突出する状態で充填されたバイアホールを有するものである。
【0017】ここで、本発明において、片面回路基板を構成する前記接着剤層は、IVH構造の多層プリント配線板を製造するに当たり、当該片面回路基板どうしを、または積層する他の回路基板と接着して多層化するときにその接着の役割を担うものである。
【0018】本発明において、片面回路基板を構成する前記導体回路は、IVH構造の多層プリント配線板を構成する表面配線パターンあるいは内層配線パターンとなる。このような導体回路は、絶縁性硬質基板の片面に貼着された金属箔をエッチングすることにより形成され、好ましくは、絶縁性硬質基板の片面に銅箔を形成してなる片面銅張積層板の該銅箔をエッチングすることにより形成される。
【0019】本発明において、片面回路基板を構成する前記バイアホールは、IVH構造の多層プリント配線板を製造するに当たり、当該片面回路基板の導体回路を、積層される他の回路基板上の導体回路と電気的に接続する役割を担う。即ち、絶縁性硬質基板の一方の面からその基板を貫通して導体回路に達する穴内に該基板面と平滑にまたは該基板面から突出する状態に充填された導電性ペーストが、隣接して積層される他の回路基板上の導体回路と熱硬化により密着し、それぞれの導体回路を電気的に接続するのである。
【0020】特に、当該片面回路基板どうしを、または積層する他の回路基板とを接着して多層化する場合、各積層材の密着強度と接続信頼性を向上させる目的で、片面回路基板の導体回路形成面に設けた接着剤層は、導体回路部分を含む絶縁性硬質基板の表面に接着剤を被覆形成した層で構成され、一方、該片面回路基板の導電性ペーストは、接続される他の回路基板の導体回路部分に被覆形成された接着剤層を突き破って面接触できるように基板面から突出する状態で穴内に充填されていることが望ましい。この導電性ペーストが基板面から突出している高さは、前記導体回路部分に被覆形成された接着剤層の膜厚よりも 0.5〜5μm大きいことが望ましい。
【0021】以上説明したような構成にかかる片面回路基板を利用すると、IVH構造の多層プリント配線板を高い歩留りで効率良く製造することができる。以下に、本発明にかかる上記片面回路基板を用いて多層プリント配線板を製造する方法について説明する。即ち、下記の各工程、■.ガラス布エポキシ樹脂、ガラス不織布エポキシ樹脂、ガラス布ビスマレイミドトリアジン樹脂、アラミド不織布エポキシ樹脂のいずれかを、板状に硬化させてなる絶縁性硬質基板の一方の面に貼着された金属箔をエッチングすることにより導体回路を形成する工程、■.上記絶縁性硬質基板の他方の面には、前記基板を貫通して導体回路に接し、かつ一端が閉塞された穴をレーザ照射により形成し、その穴底の導体回路表面にデスミア処理を施した後、この穴に導電性ペーストを該基板面と平滑にまたは該基板面から突出する状態で充填してなるバイアホールを形成する工程、■.上記絶縁性硬質基板の導体回路形成面に接着剤層を設けて片面回路基板を作製する工程、■.上記片面回路基板を、コア基板に対して1枚以上重ね合わせるか他の回路基板と共に重ね合わせ、次いで当該片面回路基板が備える上記接着剤層を利用することによって、一度のプレス成形にて多層状に一体化させる工程、を経ることを特徴とする。
【0022】この本発明にかかる多層プリント配線板の製造方法は、バイアホールのための穴を形成した後にデスミア処理を施す場合に特に有利に適用できる。というのは、絶縁性硬質基板に対し、導体回路とは反対側の面に接着剤層を設け、かつ前記基板および前記接着剤層を貫通して導体回路に接する穴を設けて導電性ペーストを充填することによりバイアホールを形成する先の提案にかかる構成では、バイアホールの接続信頼性を向上させるためにレジンスミアを除去すると、未硬化状態の接着剤層が溶損して接着剤層としての機能を果たせなくなるという問題があった。この点、本発明によれば、接着剤層を基板に対して導体回路と同じ側に設ける構成とし、接着剤層を形成する前にバイアホールを形成することにしたので、デスミア処理による上記問題点を解消することができ、接続信頼性に優れた片面回路基板を安定して提供することができるからである。なお、接着剤層を導体回路の反対側に設ける構成でも、接着剤層を形成する前にバイアホールを形成することができる。しかし、バイアホールに合わせた接着剤層の穴開けが難しい点で効率的な方法ではなく不利である。
【0023】また、本発明の方法によれば、所定の配線パターンを形成した導体回路を有する片面回路基板が予め個々に製造されるので、上記効果に加えて、片面回路基板における導体回路等の不良箇所の有無を積層する前に確認することができる。その結果、積層段階では、不良箇所のない片面回路基板のみを用いることとなる。従って、本発明方法によれば、製造段階で不良を発生することが少なくなり、IVH構造の多層プリント配線板を高い歩留りで製造することができるようになる。
【0024】さらに、本発明にかかる多層プリント配線板の製造方法によれば、プリプレグを積み重ねて熱プレスする工程を繰り返す必要はなく、片面回路基板を、コア基板に対して1枚以上重ね合わせるか他の回路基板と共に重ね合わせ、前記片面回路基板が具える接着剤層を利用することによって、一度の熱プレス成形にて積層一体化させることができる。また、本発明にかかる多層プリント配線板は、バイアホールの穴開けプロセス以外はサブトラクティブの量産基板と同じ手法で製造することができる。即ち、本発明の方法によれば、IVH構造の多層プリント配線板を複雑な工程を繰り返すことなく短時間で効率良く製造することができる。
【0025】ここで、本発明方法において、金属箔をエッチングすることにより導体回路を形成するのは、金属箔のエッチングによれば、極薄の導体回路パターンが、均一の膜厚で高密度に形成することができるからである。
【0026】本発明方法において、絶縁性硬質基板を貫通して導体に接する上記穴は、レーザの照射により形成することが望ましい。その理由は、片面回路基板のバイアホールを形成するための穴は、なるべく微小径の穴を高密度に形成することが有利であり、穴開け加工にレーザを適用することによって、微小径の穴を容易にかつ高密度に形成することができるからである。また、レーザによる穴開け加工によれば、導体回路を損傷することなく、絶縁性硬質基板を貫通する穴を開けることができる。その結果、従来技術のようにプリプレグ基板を貫通する孔を設けるのではなく、導体回路により一端が閉鎖された状態の穴を形成するので、その穴に導電性ペーストを充填することにより、バイアホールと導体回路が面接触するため、確実な導通が得られる。
【0027】本発明方法において、デスミア処理は、バイアホール底の導体回路面に残った樹脂残渣を除去するために、例えば、過マンガン酸カリウム液、クロム酸と硫酸の混液などに浸漬する処理である。本発明によれば、このデスミア処理を接着剤層の形成前に行うので未硬化状態の接着剤層が溶損されやすいという先の提案にかかる技術で抱えていた問題を招くことはない。
【0028】本発明において、コア基板としては従来既知のものを用いることができ、その製造方法はとくに限定されるものではない。また、本発明において、最外層の回路基板には、接着剤層の形成は必要ない。
【0029】このようにして製造される本発明にかかるIVH構造の多層プリント配線板は、回路基板の積層材がIVHを介してそれぞれ電気的に接続されてなる構造の多層プリント配線板において、コア基板を除く内装回路基板のうちの少なくとも1層が、本発明の片面回路基板で構成されていることを特徴とする。
【0030】ここで、本発明の多層プリント配線板を構成する片面回路基板は、接着剤層を介して他の回路基板と接着されている。このような他の回路基板としては、本発明の片面回路基板や従来知られたプリント配線基板のいずれも使用することができる。
【0031】なお、本発明の多層プリント配線板は、プリント配線板に一般的におこなわれている各種の加工処理、例えば、表面にソルダーレジストの形成、表面配線パターン上にニッケル/金めっきやはんだ処理、穴開け加工、キャビティー加工、スルーホールめっき処理等を施すことができる。また、本発明の多層プリント配線板は、ICパッケージやベアチップ、チップ部品等の電子部品を実装するために用いられる。
【0032】
【実施例】図2は、本発明の一実施例に係る多層プリント配線板の縦断面図である。この図において、多層プリント配線板1は、絶縁性硬質基板2a、2bと、この基板の片面に貼着された金属箔をエッチングして形成した導体回路3a、3bと、前記導体回路形成面に設けた接着剤層4a、4bとからなり、絶縁性硬質基板2a、2bを貫通して導体回路3a、3bに接する穴に導電性ペースト5が充填されたバイアホール6a、6bとを有する片面回路基板7a、7bを、コア基板8の両面にそれぞれ積層し、さらに、接着剤層を形成してない片面回路基板7c、7dをそれぞれ最外層に積層し、前記コア基板8が具える接着剤層と前記片面回路基板7a、7bがそれぞれ具える接着剤層4a、4bによって、相互に接合した4層基板である。
【0033】ここで、片面回路基板7aの導体回路3aおよび片面回路基板7bの導体回路3bは、それぞれ所定の配線パターン形状に形成され、多層プリント配線板1におけるコア基板8の上側表面または下側表面に内層配線パターンとして配置される。また、片面回路基板7cの導体回路3cおよび片面回路基板7dの導体回路3dは、それぞれ所定の配線パターン形状に形成され、多層プリント配線板1の上側表面または下側表面に表面配線パターンとして配置される。さらに、コア基板8は、例えば、絶縁性硬質基板に貫通孔をあけ、導電性ペースト5を充填した後に、両面に導体回路3eを形成することにより得られる。なお、前記導体回路3a、3b、3c、3dは、例えば絶縁性硬質基板2a、2b、2c、2dの片面に銅箔を形成してなる片面銅張積層板の該銅箔をエッチングすることにより形成されたものが好適である。
【0034】また、バイアホール6a、6bは、絶縁性硬質基板2a、2bを厚さ方向に貫通して形成されており、バイアホール6c、6dは、絶縁性硬質基板2b、2dを厚さ方向に貫通して形成されており、それぞれ導電性ペースト5が充填されいる。これらのバイアホールのうち6aは内層配線パターンとしての導体回路3aと3eの間を電気的に接続するベリードバイアホールであり、バイアホール6bは内層配線パターンとしての導体回路3bと3eの間を電気的に接続するベリードバイアホールであり、バイアホール6cは表面配線パターンとしての導体回路3cと内層配線パターンとしての3aとの間を電気的に接続するブラインドバイアホールであり、バイアホール6dは表面配線パターンとしての導体回路3dと内層配線パターンとしての3bとの間を電気的に接続するブラインドバイアホールであり、いずれもインターステシャルバイアホールを構成する。
【0035】前記の絶縁性硬質基板2a、2b、2c、2d、2eとしては、例えば、ガラス布エポキシ樹脂やガラス不織布エポキシ樹脂、ガラス布ビスマレイミドトリアジン樹脂、アラミド不織布エポキシ樹脂等を板状に硬化させた基板を用いることができる。
【0036】前記の接着剤層4a、4b、4eとしては、例えば、エポキシ系やポリイミド系、ビスマレイミドトリアジン系、アクリレート系、フェノール系などの樹脂接着剤で構成することができる。
【0037】前記の導電性ペーストとしては、例えば、銅や銀、金、カーボン等の導電性ペーストを使用することができる。
【0038】本発明の多層プリント配線板は、各種の電子部品を実装することができ、例えば、図2に二点鎖線で示すように、ICパッケージやベアチップ等のチップ部品9を表面配線パターン3cの所定部位に搭載し、はんだ10により固定することができる。
【0039】次に、図2に示した本発明の一実施例に係る多層プリント配線板の製造方法について説明する。
(1) 先ず、図2の多層プリント配線板1を構成する本発明の片面回路基板7a(17a)を作製する。以下具体的に、図3にしたがって説明する。
■.図3(a) に示すような金属箔13が片面に貼着された絶縁性硬質基板12aを用意する。この金属箔13が片面に貼着された絶縁性硬質基板12aとしては、例えば、片面銅張積層板を使用することが有利である。
■.次に、前記金属箔13をエッチングし、図3(b) に示すように、所定のパターン形状に加工する。これにより導体回路13aが形成される。なお、エッチング方法としては、公知の一般的な手段を採用することができる。この導体回路13aは、内層配線パターンとして配置されるものであるが、層間の接着性を向上させるために、導体回路の表面を、例えば、マイクロエッチングや粗化めっき、両面粗化銅箔の適用等の公知の手段を用いて粗面化することが有利である。
■.次に、図3(c) に示すように、絶縁性硬質基板12aの厚さ方向に貫通して導体に接する穴16を形成し、穴16の底の導体回路面18をきれいにする目的で、デスミア処理を施す。上記穴16は、絶縁性硬質基板12aの導体形成面とは反対側からレーザを照射することにより形成することが好ましい。このレーザを照射する穴開け加工機としては、例えば、パルス発振型炭酸ガスレーザ加工機を使用することができる。このような、炭酸ガスレーザ加工機を用いることにより60〜200 μmφの微小径の穴を高精度に形成することができる。この結果、バイアホールを高密度に形成することが可能になり、小型で高密度な多層プリント配線板を製造することができる。このような、レーザを照射する穴開け加工法によれば、導体回路13aを損傷させることなく絶縁性硬質基板12aの部分に穴開け加工することができるので、形成された穴16は、導体回路13a非形成面側のみが開口し、他端は導体回路により閉鎖されている。このことにより、バイアホールと導体回路13aとを電気的に確実に接続することができる。なお、上記デスミア処理は、穴16の底の導体回路18に残った樹脂残渣を完全に除去することにより、導体回路と導電性ペーストを電気的に確実に接続することを目的として、例えば、過マンガン酸カリウム液、クロム酸と硫酸の混液などに浸漬することにより実施される。
■.次に、他の基板の導体回路部分に被覆形成された接着剤層を突き破って面接触できるように、前記穴16内に、図3(d) に示すような基板面から突出する状態で導電性ペースト5を充填する。この導電性ペースト5の充填方法としては、例えば、メタルマスクを用いたスクリーン印刷法を採用することができる。充填時には、バイアホールを高精度に形成するために、穴16の周囲に保護マスクを形成しておくことが有利である。保護マスクは、絶縁性硬質基板12aにフィルムや紙をラミネートし、穴開け加工の際に一緒に穴開けすることにより、形成することができる。特に、導電性ペーストは、重ね合わされる他の回路基板の内層となる導体回路との接続性が良好なバイアホールを実現する上で、穴16より突出する状態で充填することが有利である。また、充填した導電性ペーストは、後の工程の作業性を高めるためにプレキュアしておくことが有利であり、保護マスクは積層前に剥離される。
■.次に、絶縁性硬質基板12aの前記導体回路13a形成面に、図3(e) に示すように、接着剤層14aを形成して片面回路基板17aを作製する。この接着剤層14aは、所定の樹脂接着剤をロールコータやカーテンコータ、スプレーコータ、スクリーン印刷などの手段で塗布してプレキュアする。このときの接着剤層の厚さとしては、導体回路上で1〜15μmの範囲が有利である。
【0040】(2)同様の工程で、絶縁性硬質基板12bに対し、この基板の一方の面に導体回路13bおよび接着剤層14bをそれぞれ形成してなり、かつ前記絶縁性硬質基板を貫通して導体に接する穴16を設けて導電性ペースト5を充填したバイアホールを形成した、図4に示すような片面回路基板17bを作製する。
【0041】(3)また同様に、絶縁性硬質基板12c,12dに対し、この基板の一方の面に導体回路13c,13dを形成してなり、かつ前記絶縁性硬質基板を貫通して該導体に接する穴16を設けて導電性ペースト5を充填したバイアホールを形成した、図4に示すような片面回路基板17c,17dを作製する。
【0042】(4)さらに、絶縁性硬質基板12eにレーザ加工やドリル加工などによって貫通孔をあけ、導電性ペースト5を充填した後に、両面に導体回路13eを形成し、接着剤層14eを形成してコア基板8を作製する。
【0043】(5)次に、前記の片面回路基板17a,17b,17c,17dおよびコア基板8を所定の順に、片面回路基板およびコア基板の周囲に設けられたガイドホールとガイドピンを用いて位置合わせしながら重ね合わせる。
【0044】(6)このようにして各片面回路基板をコア基板に重ね合わせた後、熱プレスを用いて 140℃〜200 ℃の温度範囲で加熱、加圧することにより、各片面回路基板とコア基板は一度のプレス成形にて多層状に一体化される。なお、熱プレスとしては、真空熱プレスを使用することが有利である。この工程では、接着剤層14a、14b、14eを介して重ね合わされた各片面回路基板17a、17b、17c、17dおよびコア基板8は、接着剤層14a、14b、14eが密着して熱硬化することにより、多層状に一体化される。同時に、導電性ペースト5もそれぞれ対応する導体回路に密着して熱硬化することにより、バイアホールを形成し、多層プリント配線板1が得られる。
【0045】〔他の実施例〕
(1) 前記実施例では、4層の片面回路基板がコア基板に重ね合わされた多層プリント配線板について説明したが、3層あるいは5層以上の高多層の場合も同様に本発明を実施できるし、従来の方法で作成された片面プリント基板、両面プリント基板、両面スルーホールプリント基板あるいは多層プリント基板に本発明の片面回路基板を積層して多層プリント配線板を製造することができる。
(2) 前記実施例では、バイアホールを形成するための穴開け加工をレーザを照射する手段で行ったが、ドリル加工やパンチング加工等の機械的手段を適用することもできる。
(3) 本発明の多層プリント配線板においては、表面配線パターンはチップ電子部品を実装するためのパッド形状のみに形成することもできる。
【0046】
【発明の効果】以上説明したように、本発明に係る多層プリント配線板用片面回路基板によれば、デスミア処理による不具合を招くことなく、一度のプレス成形にて多層状に一体化させることにより、IVH構造を有する高密度の多層プリント配線板を高い歩留りで効率的に製造することができる。また、本発明に係る多層プリント配線板の製造方法によれば、不良のない片面回路基板のみが、その基板が具える接着剤層によって接合されるので、従来技術のような繰り返し工程の多い複雑な製法を採ることなく、高い歩留りで効率的にIVH構造を有する高密度の多層プリント配線板を製造することができる。さらに、本発明の多層プリント配線板は、上記片面回路基板が接着剤層によって接合されている構造であるので、IVH構造を有する高密度の多層プリント配線板として、従来技術のような繰り返し工程の多い複雑な製法によらずに容易に提供され得る。
【図面の簡単な説明】
【図1】従来技術に係る多層プリント配線板の一製造工程を示す縦断面図である。
【図2】本発明に係る多層プリント配線板の一実施例を示す縦断面図である。
【図3】前記多層プリント配線板を製造するために用いられる片面回路基板の製造工程の一例を示す縦断面図である。
【図4】前記多層プリント配線板を製造する際の片面回路基板の組合せ工程の一例を示す縦断面図である。
【符号の説明】
1 多層プリント配線板
2a,2b,2c,2d,2e 絶縁性硬質基板
3a,3b,3c,3d,3e 導体回路
4a,4b,4e 接着剤層
5 導電性ペースト
6a,6b,6c,6d,6e バイアホール
7a,7b,7c,7d 片面回路基板
8 コア基板
9 チップ部品
10 はんだ
12a, 12b, 12c, 12d, 12e 絶縁性硬質基板
13 金属箔
13a, 13b,13c, 13d, 13e 導体回路
14a, 14b, 14e 接着剤層
16 穴
17a, 17b, 17c, 17d 片面回路基板
穴の底の導体回路面

【特許請求の範囲】
【請求項1】 ガラス布エポキシ樹脂、ガラス不織布エポキシ樹脂、ガラス布ビスマレイミドトリアジン樹脂、アラミド不織布エポキシ樹脂のいずれかを板状に硬化させてなる絶縁性硬質基板に対し、この基板の一方の面に導体回路と接着剤層をそれぞれ有すると共に、この基板の他方の面には、前記基板を貫通して導体回路に接し、かつ一端が閉塞された穴がレーザ照射により設けられ、かかる穴底に生じた樹脂残渣がデスミア処理されてなる穴内に導電性ペーストを該基板面と平滑にまたは該基板面から突出する状態で充填されたバイアホールを有することを特徴とする多層プリント配線板用片面回路基板。
【請求項2】 上記導体回路は、絶縁性硬質基材の一方の面に銅箔が貼付されてなる銅張積層板の銅箔をエッチングして形成されたものである請求項1記載の多層プリント配線板用片面回路基板。
【請求項3】 上記接着剤層は、導体回路部分を含む絶縁性硬質基板の表面に接着剤を被覆形成した層からなる請求項1記載の多層プリント配線板用片面回路基板。
【請求項4】 回路基板の積層材がインタースティシャルバイアホールを介してそれぞれ電気的に接続されてなる構造の多層プリント配線板において、コア基板を除く内層回路基板のうちの少なくとも1つが、上記請求項1または2に記載の片面回路基板で構成されていることを特徴とする多層プリント配線板。
【請求項5】 ■.ガラス布エポキシ樹脂、ガラス不織布エポキシ樹脂、ガラス布ビスマレイミドトリアジン樹脂、アラミド不織布エポキシ樹脂のいずれかを、板状に硬化させてなる絶縁性硬質基板の一方の面に貼着された金属箔をエッチングすることにより導体回路を形成する工程、■.上記絶縁性硬質基板の他方の面には、前記基板を貫通して導体回路に接し、かつ一端が閉塞された穴をレーザ照射により形成しその穴底の導体回路表面にデスミア処理を施した後、この穴に導電性ペーストを該基板面と平滑にまたは該基板面から突出する状態で充填してなるバイアホールを形成する工程、■.上記絶縁性硬質基板の導体回路形成面に接着剤層を設けて片面回路基板を作製する工程、■.上記片面回路基板を、コア基板に対して1枚以上重ね合わせるか他の回路基板と共に重ね合わせ、次いで当該片面回路基板が備える上記接着剤層を利用することによって、一度のプレス成形にて多層状に一体化させる工程、を経ることを特徴とする多層プリント配線板の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【特許番号】特許第3492667号(P3492667)
【登録日】平成15年11月14日(2003.11.14)
【発行日】平成16年2月3日(2004.2.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2001−353831(P2001−353831)
【分割の表示】特願平8−159800の分割
【出願日】平成8年6月20日(1996.6.20)
【公開番号】特開2002−198651(P2002−198651A)
【公開日】平成14年7月12日(2002.7.12)
【審査請求日】平成13年11月19日(2001.11.19)
【出願人】(000000158)イビデン株式会社 (856)
【参考文献】
【文献】特開 平6−283866(JP,A)
【文献】特開 平4−196290(JP,A)
【文献】特開 平7−94868(JP,A)
【文献】特開 平6−326438(JP,A)
【文献】特開 平5−291727(JP,A)
【文献】特公 昭45−13303(JP,B1)