説明

多層体

本発明は、透明な第1層(13)を有する多層体(2)に関する。透明な第1層(13)の第1領域(31)において、複数の微小レンズ(21)が形成され、微小レンズグリッドに従って設けられる。更に、前記多層体(2)は、前記第1層(13)の下側で第1層(13)に対して固定位置に設けられた第2層(12)を有し、前記第2層は、第1光学的可変情報を生じさせるために、微小画像グリッドに従って配置され、いずれの場合も、少なくとも微小レンズグリッドの微小レンズ(21)のエリアでは重なっている、複数の微小画像(22)を有する。前記微小画像グリッド及び微小レンズグリッドのグリッド幅(41,42)は、少なくとも1つの空間方向では、それぞれ300μmより小さい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に紙幣などのセキュリティ文書を保護するセキュリティエレメントとして、製品保護のため又は包装用途のための、例えば紙幣,重要書類,身分証明書類などのセキュリティ文書として、特に使用され得る多層体に関する。
【背景技術】
【0002】
セキュリティ文書を保護するセキュリティ機能として、モアレ効果を使用することが知られている。つまり、例えば特許文献1は、メイングリッドとベースグリッドとを上下に重ねて配置することで、特有の明暗形状のモアレが得られる方法を開示している。メイン及びベースグリッドが上下に重ねて配置されることの結果として現れる“隠された情報”は、この場合、ベース及びメイングリッドのそれぞれのグリッドエレメントのデザインにコード化される。ベース及びメイングリッドを互いにずらすことで、ここに人的観察者に対して光学的可変模様が現れる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】欧州特許第1238373号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、光学的可変模様を伝達する、より改良された多層体を明らかにするという目的に基づいている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記目的は、微小レンズグリッドに従って設けられた多数の微小レンズがその第1領域に型押しされた、透明な第1層を備え、微小画像グリッドに従うと共に、いずれの場合でも、第1の光学的可変情報を生じさせる微小レンズ及び微小レンズグリッドのうち1つと、少なくとも局所的に重なり合うように配置された多数の微小画像を有し、前記第1層の下側で第1層に対して固定位置に設けられた第2層を備えた、多層体によって達成される。該多層体において、前記微小画像グリッド及び前記微小レンズグリッドのグリッド間隔は、いずれの場合でも、少なくとも1つの空間方向において300μm未満である。このような配置であるために、多層体が傾くと、多層体を正面から見ている人的観察者に対して、第1層の正面側、すなわち第2層の反対側の部分には、奥行き効果を伴う又は伴わない、具体的には2次元又は3次元の、興味深い光学的可変効果が現れる。
【0006】
本発明の有利な構成は、従属請求項に明示されている。
【発明の効果】
【0007】
本発明の1つの望ましい実施例によれば、第1の空間方向における微小レンズグリッドのそれぞれのグリッド間隔は、各微小レンズの各寸法より、少なくとも50%、特に100%以上大きい。この場合、微小レンズグリッドのグリッド間隔は、微小レンズの面重心の間隔によって決定される、各微小レンズと隣接する微小レンズの間の各微小レンズ間の距離と理解される。従って、微小レンズグリッドは、第1座標軸と、望ましくはそれに対して直交する第2座標軸とを有する座標系に架かる。微小レンズグリッドの微小レンズは、第1座標軸の方向及び/又は第2座標軸の方向に連続し、その微小レンズの面重心は、前記座標軸の1つと平行な線上に並ぶことが望ましく、かつ第1空間方向に平行であることが望ましい。第1空間方向における各微小レンズの寸法は、第1空間方向を向き、各微小レンズの面重心を通る直線と、各微小レンズの外部境界線との交差の結果として現れる、各微小レンズの基点間の距離である。
【0008】
こうした手段の場合は、光学的可変効果を生じさせるために必要な多層体の層厚さを、大幅に減らせることが判った。つまり、微小レンズの焦点距離は、まず初めに、微小レンズを型押しするために必要な第1層の層厚さに、また、第1層の、第2層と反対側の外側表面から第2層までの間隔にも影響する。焦点距離が拡がると、結果として、型押しのために必要な第1層の層厚さは減少するものの、微小レンズの基点と、微小レンズの焦点距離との範囲内にあることが望ましい第2層の間の距離は、それに応じて拡がる。上述した対策により、第1光学的可変情報の光量が若干減少するとはいえ、多層体の層厚さは、上述の効果にもかかわらず大幅に減少させることができる。
【0009】
更に、その最大構造高さが、第1空間方向における各微小レンズの寸法の少なくとも35%、特に少なくとも50%である微小レンズを使用することが、有利であることが証明された。各微小レンズの最大構造高さは、微小レンズの基点に架かる微小レンズの基点面上の、微小レンズの最大標高であると理解される。
【0010】
本発明の更に望ましい例示的実施例によれば、第1空間方向における微小画像の各寸法は、第1空間方向において、それぞれが隣り合う微小レンズの寸法の50%より大きく、特に100%より大きくなるように選択される。意外にも、微小画像がこのような寸法である場合、光学的可変外観は更に改善され得る、特に、傾いた状態で光学的可変効果が可視となる角度範囲において、更に改善され得ることがわかっている。
【0011】
前記微小画像は、300μmより小さい、特に100μmより小さい最小寸法を有することが望ましい。最小寸法とは、この最小寸法が、微小画像の圧縮された最小範囲であり、圧縮されない範囲では、微小画像は最小寸法より大幅に大きくなり得ると考えられることを意味する。ゾーンの、イメージの、又は微小画像の最小寸法は、従って、より小さい長さと幅から選択された寸法と理解される。より複雑な形状の場合は、幅と長さを決定するために、対応する仮の矩形が決定され、その矩形は、前記複雑な形状が前記矩形の内部に配置され、その複雑な形状の可能な限り多くの境界線がその矩形の縁に接触するように選択される。
【0012】
本発明の更に望ましい例示的実施例によれば、微小画像は、平坦な表面ではなく、むしろ湾曲した表面に塗着される。このことは、各微小画像が、微小レンズの焦点距離のおおよそ範囲内のかなり広い角度範囲に亘って設けられ、その結果として、多層体の光学的外観が改善される、特に、大きく傾けた角度でのコントラストの鮮明さが大幅に向上する、という利点をもたらす。
【0013】
この場合、前記湾曲は多層体の微小画像層の上又は下に設けられた層に型押しされる。微小レンズグリッドの方向から見ると、前記湾曲は、各微小画像の中央領域にその最深点を有する。前記湾曲は、微小画像の全領域に広がることが望ましい。しかしながら、湾曲の領域内に全ての微小画像を設けないこともまた可能である。湾曲の最深点は、その最高点(湾曲の境界領域)に対して、各微小画像の幅の5〜25%の範囲の高低差を有することが望ましい。
【0014】
各微小画像領域内に湾曲を作るために、微小画像層の上又は下に設けられた層に表面構造が型押しされ、その上に微小画像層が塗着されることが望ましい。前記表面構造は、各微小レンズと似た形状、すなわち、適切には、多層体の長手方向及び横断方向に広がった平面上に、各微小レンズ21の形状を反転させ、前記平面において歪み係数fで変形させた形状を有することが望ましい。特に表面構造が微小画像層の下に設けられた層に型押しされた場合は、望ましくは、上述した条件が満たされるように、前記平面への反転が行われるべきである。従って、微小レンズが球形の微小レンズである場合は、前記湾曲は、球形の表面形状を有する。微小レンズが円筒形のレンズである場合は、前記湾曲は円筒形状の表面を有する。この場合、歪み係数fは、望ましくは、上記に規定の微小画像の大きさに対する、湾曲の境界部と最深部の間の高低差に従うように選択される。
【0015】
本発明の更に望ましい例示的実施例によれば、前記多層体は、6μmより大きい、特に12μmより大きい層厚さを備えた担持基板を備える。該担持基板は、次に、第2領域では透明形状で具体化されるか、又は、望ましくは第1領域を全て覆う第2領域に、窓形の穿孔を有する。次に、第1層は担持基板の正面に設けられ、第2層は担持基板の背面に設けられる。この手段は数々の利点をもたらす。つまり、初めに、第1層及び第2層が通常の担持基板に、互いに精密な見当合わせで行われる、2つの塗着ステップの手段によって塗着されなければならないので、セキュリティエレメントの安全性は更に向上する。偽造者によるかかる多層体の複製、多層体からのフィルムエレメントの除去及び更なる多層体への塗着が、特に、そのための達成可能な見当精度が約0.5mmという点で大変困難、かつ偽造を直接見分けられるように、塗着プロセスにおける見当ずれ、特にこの塗着プロセスの手段により担持基板の正面及び背面に設けられたエレメント同士のわずかな傾きでさえも、モアレ効果が生じることで直ちに明らかになる。更に、担持基板自体が、第1層と第2層との間の光学的スペーサー層の役割をするために、結果として、担持基板に塗着される層の層厚さを、大幅に減少させることができる。結果として、紙幣などの重要書類の触覚特性は、第1の光学的可変情報を生じる層の導入による影響をほんのわずかしか受けず、また、使用するうちに生じる重要書類の機械的負荷に対する抵抗性が改善される。上述したように、この場合の多層体は重要書類であり、担持基板は、紙幣の基材など重要書類の担持基板を構成することが望ましい。担持基板は従って、紙,プラスチック,又は一連の、例えば紙とプラスチック層のラミネートなどから成り、望ましくは30〜200μmの層厚さを有する、紙幣の担持基板などを構成する。
【0016】
望ましくは、この場合の多層体は、第1領域に、第2層の下に設けられた第3層を有し、該第3層は、多層体が背面から見られたときに、人的観察者が多層体を正面から見た場合には見えず、第1光学的可変情報とは異なる、第2の光学的可変情報を生じさせる。この場合、少なくとも反射光で見るときの人的観察者に対して不透明な層が、また第2層と第3層との間に設けられ、第1及び第2の光学的可変情報の確実な光学的分離を可能にすることが望ましい。この手段は、複製に関する安全性を更に高め、観察者が簡単に見分けられるような簡明な保安機能を提供する。
【0017】
更なる利点は、第1領域に隣接する、望ましくは第1領域を取り囲む領域内の第1層及び/又は第2層において、望ましくは不透明形状で具体化された更なるセキュリティエレメントが形成され、該セキュリティエレメントは、透過光視では相互に作用し、例えば、透過光視では、光学的可変情報を形成するために互いを補完する、ということから生じる。更に、担持基板の正面又は背面に塗着された印刷層が、同様に、第1層,第2層,又は第3層に備えられたセキュリティエレメントと一緒に、透過光視で認識可能な情報を形成するために、透過光視において互いを補完し合うセキュリティエレメントを備えることが有利である。このことは偽造に対する安全性を高める。
【0018】
本発明の更に望ましい例示的実施例によれば、前記多層体は、第1層と第2層との間に設けられた半透明層を有する。更に興味深い光学的可変効果が、この方法によって得られる。従って、その結果、第1の光学的可変効果が、透過光視によってのみ透かしとして可視となることが可能である。一方、反射光では、第1の光学的可変効果は不可視である。この実施例では、微小画像は、いずれの場合でも、背景領域の正面に設けられた1又は複数のイメージ領域によって形成されることが望ましく、該1又は複数のイメージ領域は不透明形状で具体化され、背景領域は透明形状で具体化される、又はその逆である。この場合、不透明なイメージ領域又は不透明な背景領域は、例えば不透明なラッカー層,不透明な金属層で形成されてもよい。不透明な領域及び/又は透明な領域は、光学的及び/又は機械的に読み取り可能な追加的機能を有し得る、UV活性素材,IR活性素材、又は、磁気素材から成ってもよい。更に、この実施例では、前記多層体は、第1領域が透明形状で具体化され、又は、第1領域に窓形の穿孔を有する、担持基板を備えることが望ましい。前記多層体は、従って、背景領域では半透明層,少なくとも1つの不透明層,及び任意に1又は複数の透明層から成り、イメージ領域では半透明層及び1又は複数の透明層から成る、又はその逆であることが望ましい。
【0019】
半透明層は、散乱特性を有することが望ましい。半透明層は、人的観察者が見ることのできる平均の波長帯を超える、1%〜50%、更に望ましくは、5%〜30%の透過率を有することが望ましい。更に、半透明層は、5°より大きい散乱角において、人的観察者が見ることのできる平均の波長帯を超える、入射光の5%〜50%の比率の散乱特性を有することが望ましい。
【0020】
本発明の更に望ましい例示的実施例によれば、第2層は第1領域に、微小画像を備えた少なくとも1つの第1ゾーンを有し、また、第3の光学的可変情報を生じる光学活性表面構造を備えた少なくとも1つの第2ゾーンを有し、前記第3の光学的可変情報は、第1の光学的可変情報とは異なる。この場合、光学活性表面構造は、例えば第2ゾーンに、第3の光学的可変情報として、ホログラム又はキネグラム(キネグラム(登録商標)=見る角度の変化及び/又は照明条件の変化により、色彩変化効果及び/又はイメージ変化効果を持つ光学的可変効果)を生じる、回折表面構造であることが望ましい。その結果、この場合の微小レンズは、第1ゾーンだけに設けられ、第2ゾーンには設けられないことが可能である。更に、微小レンズは、第1ゾーンと第2ゾーンの両方に設けられることもまた可能であり、従って微小レンズグリッドは、第1ゾーンと第2ゾーンの両方を覆うことが可能である。この場合、少なくとも1つの第2ゾーンにおいて、第1層がラッカー層を備え、特にラッカー層を刷り重ねられ、その屈折率と第1層の屈折率との差が0.3より少なければ特に有利である。この追加的ラッカー層は、微小レンズが、少なくとも1つの前記第2ゾーンに設けられた光学活性表面構造の光学的外観に影響を与えられないように、少なくとも1つの前記第2ゾーンにおける微小レンズの光学的効果を消す。この手段は、偽造及び複製に対する多層体の安全性を更に改善する。第1層と第2層の精密な見当合わせにおける相互の配置の誤差は、第1及び第3の光学的可変情報の混乱に直結し、又は、第1及び第3の光学的可変情報の境界領域が目に見えるようになり、人的観察者がすぐに識別できる明らかな阻害効果を示す。その結果、第1層と第2層の間のわずかな見当ずれでも、人的観察者にとって識別可能となる。
【0021】
少なくとも1つの前記第2ゾーンが300μmより大きい最小寸法を有し、第4の情報を生じさせるために、模様付きの形状に形成されることが望ましい。従って、少なくとも1つの前記第2ゾーンは、例えば、文字、数字、シンボル、又は第4の情報を表す図的記述などの形状で形成される。
【0022】
更に、第1領域が更に多数の第1及び第2ゾーンに分割され、該第1及び第2ゾーンは、少なくとも1つの空間方向において300μmより小さいグリッド間隔を有する、規則的なグリッドに従って設けられれば有利である。結果として、多層体の単一かつ同一の表面領域において、第1及び第3の光学的可変情報を人的観察者に対して見えるようにし、従って、この領域において、光学的外観にはっきりと認識できる急激な変化を得ることが可能である。更に、このタイプの実施例においては、経験の乏しい観察者であってもわずかな見当ずれさえ直に識別できるように、第1及び第3の光学的可変情報はどちらも、小さな見当ずれの場合でもはっきりと阻害されるので、多層体の偽造又は複製は更に著しく難しくなる。
【0023】
本発明の更に望ましい例示的実施例によれば、微小画像は、いずれの場合でも、背景領域の正面に設けられた、又は取り囲まれた、1又は複数のイメージ領域により形成される。微小画像は、例えば、いずれの場合でも、1又は複数のイメージ領域を形成し、背景領域の正面において可視である、すなわち、背景領域に対するコントラストの結果として見える、例えば文字,数字,文章,シンボル,又はイメージなどの形状のモチーフから成る。この場合、モチーフは、モチーフの境界線に隣接した背景領域に取り囲まれていても、あるいは、背景領域によって隔てられた、又は後者で満たされた、部分的なモチーフ又は切り抜きを備えてもよい。この場合、第2層の色彩,反射特性及び/又は吸収特性が、イメージ領域において変化することもまた可能である。
【0024】
既に上述したように、微小画像の1又は複数のイメージ領域が不透明であり、1又は複数の背景領域が透明であることも、またその逆も可能である。更に、1又は複数のイメージ領域及び背景領域が、異なる透過又は反射特性を有することもまた可能である。イメージ領域及び背景領域が、異なる偏光特性、例えば、異なる線状偏光又は異なる円形偏光あるいは異なる楕円形偏光状態を有していれば、更に有利である。
【0025】
前記第2層は、単一の層又は、イメージ領域においては第1層に設けられ背景領域には設けられない、またその逆の、特に金属層,着色ラッカー層,及び/又はフォトレジスト層を有する複数の部分的な層から成り得る。この場合、フォトレジスト層は、ポジ型又はネガ型のフォトレジストから成ることが望ましく、更に望ましくは、染料又は顔料で着色されていてもよい。
【0026】
更に、イメージ領域及び/又は背景領域が光学的可変要素で覆われる、特に、一方でイメージ領域が、もう一方で背景領域が、異なる光学的可変要素で覆われることが有利である。光学的可変要素は、例えば、光学活性表面レリーフ、特に回折構造、例えばホログラムやキネグラム(登録商標)のような回折構造、異方性又は等方性のマット構造、モスアイ構造、非対称又は対称の格子構造、線状格子構造、交差格子構造、六角格子構造、ゼロ次数回折構造、又はこれらの回折構造の組み合わせで形成されてもよい。特に、望ましくは金属反射層に覆われ、入射光の大部分を吸収する回折構造、特に100nm〜500nmの範囲、特に望ましくは200nm〜400nmの範囲の格子周期と、50nm〜2000nmの範囲、特に望ましくは200nm〜1000nmの範囲の構造深さを有する、線状格子構造、交差格子構造、又は六角格子構造を使用することが有利になり得る。光学的可変要素が、λ/2又はλ/4(λは可視光の波長帯である)の光学的層厚さを有し、視角に依存した色彩シフト効果を示す、薄いフィルム層エレメントで形成されるか、又は、異なる領域では異なる偏光特性を示し、又は同様に視角に依存した色彩シフト効果を示す、液晶層によって形成されれば更に有利である。第2層は従って、複製ラッカー層の表面に、型押しされた表面レリーフを有する複製ラッカー層を有することもまた有利である。上述したように、一方でイメージ領域に、もう一方で背景領域に型押しされた表面レリーフは異なる。
【0027】
本発明の更に望ましい例示的実施例によれば、微小レンズグリッドは、多層体の長手方向軸線に対して45°傾いた状態で設けられる。特に興味深い光学的効果が、1次元の微小レンズグリッドが使用されたときに、結果として特に生じ得ることがわかっている。例えば、微小レンズの望ましくは互いに平行な焦点ラインが、多層体の長手方向軸線に対して45°の角度で設けられた、1次元の微小レンズグリッドがこうして使用された場合、その結果、0〜360°のどの角度でも、すなわち所望のどの方向でも生じ得る所定の動きの効果は、略水平軸と略垂直軸の両方に対する多層体の傾きにより現れる。更に、非線形経路に沿った動作、例えば湾曲した曲面に沿った動作もまた生じ得る。多層体の長手方向軸線は、この場合は、多層体の長さ方向の座標軸のことと理解される。
【0028】
更に、ここで、多層体は、矩形の、特にストリップ又はテープの形状を有することが望ましい。
【0029】
この場合、微小レンズを備えた第1領域が、多層体の全体を覆う又は多層体の全体の長さの領域を完全に覆う、あるいは多層体の部分的領域のみを覆うことが可能である。従って、例えば、第1領域、更に微小レンズで覆われていない領域と、他の、望ましくは前記領域に設けられている光学的可変セキュリティエレメントとが、多層体に一緒に設けられることが可能である。一方で、望ましくは他の光学的可変セキュリティエレメントもまた、第1領域の全体に又は局所的にのみ設けられることが可能であり、またこの場合は、微小レンズによって完全に又は局所的にのみ覆われる。微小レンズによる覆いにもかかわらず、他のセキュリティエレメントは、知覚可能及び/又は読み取り可能になり得、その効果又は機能が、光学的及び/又は機械的に十分に読み取り可能な形状であることが望ましい。
【0030】
本発明の更に望ましい例示的実施例によれば、微小レンズグリッド及び/又は微小画像グリッドは、2次元の微小レンズグリッド及び/又は微小画像グリッドである。この場合、微小レンズグリッド及び/又は微小画像グリッドは、望ましくは互いに直角な2つの座標軸を有する座標系に架かり、微小レンズ及び/又は微小画像は、第1の空間方向、特に1つの座標軸の方向、及び、第2の空間方向、特にもう1つの座標軸の方向の両方向へ、それぞれ5μm〜150μmのグリッド間隔で連続する。この場合、隣り合う微小画像及び/又は微小レンズの間隔は、微小画像及び/又は微小レンズの面重心の間隔によって決定されることが望ましく、また、それぞれのグリッド間隔に対応することが望ましい。
【0031】
しかし、更に、微小レンズグリッド及び/又は微小画像グリッドが、2以上の微小レンズ及び/又は微小画像が1つの空間方向にそれぞれ5μm〜300μmのグリッド間隔で連続する、1次元の微小レンズグリッド及び/又は微小画像グリッドであることもまた可能である。
【0032】
この場合、微小画像グリッド及び/又は微小レンズグリッドは、一定のグリッド間隔を有する規則的なグリッドであっても、さまざまなグリッド間隔を有する不規則なグリッドであってもよい。更に、微小レンズグリッド及び/又は微小画像グリッドにより架けられた座標系が、幾何学的に変換され、従って、座標軸が直線形状を有さず、むしろ、波線の形状又は円弧形状などに形成されることもまた可能である。
【0033】
微小画像グリッド及び微小レンズグリッドのグリッド間隔は、隣接する微小画像及び微小レンズに対して、いずれの場合でも10%未満で互いに異なり、特に0.5〜5%の間で互いに異なることが望ましい。このタイプの形状では、同一の微小レンズが使用された場合、モアレの拡大効果がもたらされる、すなわち、特定の視角において可視である第1光学的可変情報は、(同一の)微小画像の拡大された像に対応する。しかしながら、異なる微小画像を用いても、多層体が傾くと更に複雑な動き及び変形効果をもたらすこの方法は、有利であることが判っている。
【0034】
更に、微小画像グリッド及び微小レンズグリッドが、互いに0.05°〜5°傾けて設けられること、すなわち、微小画像グリッド及び微小レンズグリッドに架かる座標系の、互いに割り当てられた座標軸の軸がそのような角度を形成することが重要であることが判っている。
【0035】
本発明の更に望ましい例示的実施例によれば、第1領域において、微小レンズグリッドのグリッド間隔、微小画像グリッドのグリッド間隔、及び/又は、微小画像グリッドと微小レンズグリッドの互いに対する傾きは、パラメータ変動関数に従い、少なくとも1つの空間方向に向かって連続的に変化する。結果として、傾けたときに、上述した拡大,縮小及び変形効果が得られる。
【0036】
更に、微小画像グリッドが、第1領域に、少なくとも2つの互いに異なる微小画像を有していれば有利である。この場合、第1領域において、微小画像の形状及び/又は色彩が、変形関数に従って連続的に変化し、例えば、多層体を傾けたときに、拡大,縮小及び変形効果と結合された動きの効果がもたらされると、特に有利である。
【0037】
更に望ましい実施例によれば、第1領域の、第1の部分的領域において、微小レンズグリッドのグリッド間隔、微小画像グリッドのグリッド間隔、及び/又は、微小画像グリッドに対する微小レンズグリッドの傾きは、これらのパラメータが、第1領域の第2の部分的領域における、対応するパラメータに対して異なるように選択される。このことは、光学的可変外観が、第1及び第2の部分的領域において互いに異なるという効果を有し、偽造に対する安全性が更に高まる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
本発明は、例えば、いくつかの例示的実施例に基づいて、添付した下記の図面を用いて説明される。
【図1a】多層体の略断面図である。
【図1b】多層体の略平面図である。
【図1c】多層体の略平面図である。
【図1d】図1cに準じて、多層体の機能原則を明らかにする図である。
【図1e】多層体の略平面図である。
【図1f】多層体の一部の略断面図である。
【図2】多層体の略断面図である。
【図3】多層体の略断面図である。
【図4】多層体の略断面図である。
【図5】多層体の略断面図である。
【図6】多層体の略断面図である。
【図7】多層体の略断面図である。
【図8】多層体の略断面図である。
【図9】多層体の略平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0039】
図1aは担持基板10と、該担持基板上に設けられ、接着層11,装飾層12及び透明層13を備えたフィルムエレメントとを有する、多層体1を示している。
【0040】
担持基板10は、望ましくは10μm〜200μmの層厚さを有する紙基材である。多層体1が梱包材である場合は、担持基板は(厚い)ボール紙又はプラスチックの基材であってもよい。しかし、前記担持基板10は、1又は複数の層を有する基材であってもよい。前記担持基板10は、望ましくは紙幣などの重要書類の担持基板を形成し、従って、例えば、正面及び/又は背面に、1又は複数の層が任意に印刷されることが望ましい。
【0041】
層11,12及び13を備えた前記フィルムエレメントは、担持基板10に、パッチ又はストリップの形態で塗着される。前記フィルムエレメントは、従って、例えば、セキュリティスレッド又はセキュリティストリップであり、特に、窓開きセキュリティスレッド又は窓開きセキュリティストリップである。しかしながら、前記フィルムエレメントは、担持基板10の全領域を全域に亘って完全に覆うこともまた可能である。層11,12及び13を有する前記フィルムエレメントは、転写フィルムの転写層として、特に基材10に対する熱エンボスフィルムとして用いられることが望ましい。また一方、フィルムエレメントが、ラミネートフィルムとして、又はセキュリティスレッドとして具体化されることも、また、それ自体が担持基板10として用いられる、又は担持基板10に組み込まれることもまた可能である。
【0042】
層11は、0.5〜10μm、望ましくは1〜5μmの層厚さを有する接着層である。
【0043】
装飾層12は、微小画像グリッドに従って、極めて多数の微小画像22を有する層である。装飾層12は、従って、例えば、はっきりと部分的に設けられた金属層、特に、微小画像22を形成するために、局所的に模様をつけた形で形成された、10nm〜5000nmの層厚さを有する金属層から成る。この場合は、微小画像22は、いずれの場合も、異なる光学的外観を示す、1又は複数のイメージ領域と1又は複数の背景領域23とのコントラストによって形成されたモチーフを表す。従って、装飾層12の構造において、上述したように、部分的な金属層として、例えば、微小画像22がイメージ領域と背景領域23とのコントラストによって現れるように、金属層の金属がイメージ領域に設けられ、背景領域23には設けられない。前記背景領域が透明又は半透明の形状で、例えば、透明又は半透明のラッカーによって具体化された場合、接着層11は背景部分23を通して可視であり、前記接着層はその結果、イメージ領域に対して対比的な背景平面の役目をする。この場合、従って、背景領域23をも着色させるためには、接着層11を着色顔料及び/又は染料で着色することが有利であると判っている。結果として、例えば、金属のイメージ領域と着色された背景領域から成る、高コントラストのモチーフが得られる。同様に、イメージ領域と背景領域23の対比効果を、照明条件によって変化させるために、選択的に又は追加的に、接着層11を、UV活性又はIR活性の顔料及び/又は染料で着色することも可能である。
【0044】
更に、微小画像22が、装飾層12によってだけでなく、担持層10に直接印刷された装飾層によって、及び/又は、装飾層12と担持基板10に直接塗着された層とを重ね合わせることによって形成されることもまた可能である。従って、例えば、微小レンズグリッドのグリッドに対して小さな位相変化を有する外観に印刷することが可能である。更に、例えば、オフセット印刷は、幅広い周波数を有する背景色及びイメージ色のグリッドを有し得る一方、レンズグリッドは一定の周波数を有する。
【0045】
オフセット印刷の代わりに、ここで他の印刷方法、例えばグラビア印刷法,スクリーン印刷法,パッド印刷法,凹版印刷法,あるいはインクジェット印刷法を用いることもまた可能である。
【0046】
更に、層12が、着色されたラッカー層若しくは着色されたフォトレジスト層で形成されることも、又は、複数の(着色された)ラッカー層,フォトレジスト層及び/若しくは、イメージ領域及び背景領域において装飾層12の異なる光学的外観をもたらし、従って装飾層12に微小画像22を形成する、金属層から構成されることも可能である。更に、装飾層が、光学活性表面レリーフが型押しされた複製ラッカー層を有することも可能である。この場合、イメージ領域若しくは背景領域のどちらかに、又は、イメージ領域及び背景領域に、前記表面レリーフが型押しされ、別の表面レリーフが複製ラッカー層に型押しされることによって、イメージ領域と背景領域との光学的コントラストが生じ得る。複製ラッカー層と、特に、それぞれに表面レリーフが型押しされた複製ラッカー層の表面には、例えばHRI(高反射率)層、又は、望ましくはアルミニウム,銀,銅,金,クロム,又はこれらの金属を含む合金などから成る金属層、などの反射増幅層が設けられている。この場合、装飾層12は、従って、型押しされた表面レリーフを備えた複写ラッカー層と、望ましくは複製ラッカー層の下に設けられた反射層を有する。この場合、使用される光学活性表面レリーフは、300LP/mmより大きい、望ましくは500〜4500LP/mmの空間周波数を有し、回折を生じるレリーフ構造であることが望ましい。前記回折レリーフ構造は、望ましくは、ドットマトリクス又は電子ビームホログラムなどのCG回折格子であり、前記回折格子は、イメージ領域と背景領域では、例えば方位角,空間周波数,形状成形又はレリーフ深さの点で異なる。更に、前記表面レリーフが、異方性の又は等方性の艶消し構造,モスアイ構造,非対称又は対称の格子構造,線形格子構造,交差格子構造,六角格子構造,ゼロ次回折構造,又はこれらの回折構造の組み合わせに用いられることもまた可能である。
【0047】
更に、装飾層11 は、追加として、又は上述した層の代わりとして、視点によって色彩が変化する効果を生じさせるための薄膜層構造,液晶層又は、光学活性色素,例えばUV色素,液晶色素又は干渉層色素を有する層を備えることも可能である。この層も、背景領域又はイメージ領域のどちらかに設けられ、その結果、イメージ領域と背景領域のコントラストをもたらすように構造化されることが望ましい。更に、前記微小画像は、イメージ領域の領域において、カラープロファイル又は異なる輝度値を有することもまた可能であり、対応する装飾層の対応する層は、それに応じて輝度又はカラープロファイルを認識するために構成される。
【0048】
前記微小画像22は、上述したように、1次元又は2次元の微小画像グリッドに従って設けられ、該微小画像グリッドのグリッド間隔は、すなわち、隣り合う微小画像22のそれぞれの間隙は、一定であっても、あるいはさまざまであってもよい。図1aは、例えば、図1aに示す、隣り合う微小画像22の微小画像間隔、すなわち、それらの互いの面重心の間隔により決定される、微小画像グリッドのグリッド間隔42を表している。
【0049】
層13は、人的観察者に対して透明な物質から成り、望ましくは、5〜150μmの層厚さを有する。図1aに示すように、微小レンズ21は、層12から見て外方を向いた層13の表面に型押しされる。微小レンズは球形の微小レンズであってよいが、また他のいかなる形状のレンズでも、特に円筒形状のレンズであってもよい。この場合、円筒形状のレンズは、球面状に、非球面状に、又は求められるいかなる位相関数を有する回折レンズとして具体化されてもよい。最も単純な場合は、レンズの焦点距離はそれらの曲率半径によりここで決定される。前記微小レンズの焦点距離は、微小レンズ21から微小画像22までの間隔46が、おおよそ微小レンズ21の焦点距離範囲内になるように、ここで選択されることが望ましい。
【0050】
前記レリーフの奥行き、すなわち微小レンズの最も高い箇所と最も深い箇所との距離は、この場合は2〜50μmであることが望ましい。微小レンズ21は、例えば型押し具の手段により、例えば機械的に作動する型押しローラー又は型押しスタンプなどの手段により、又はレーザー研磨などの手段により、層13の表面に組み込まれてもよい。この場合、透明層13は、例えばラッカー層、例えばPET(ポリエチレンテレフタレート),PEN(ポリエチレンナフタレート),BOPP(二軸延伸ポリプロピレン)などから成るプラスチックフィルム、又は、例えば、複製ラッカー層をPETフィルムなどの透明なキャリアフィルムの下に配設して複数貼り合わせた層、などから成る。前記透明層13への微小レンズの型押しは、この場合、UV複製手段、すなわち、まだ硬化していない又はわずかに硬化した柔らかい複製ラッカー層に、微小レンズ構造を型押しし、続いて高エネルギー放射線、望ましくは紫外線を用いて複製ラッカー層を硬化させることにより、達成されることが望ましい。しかし、微小レンズ21を作るために、ラッカーが、透明層に塗着され、また、それに対応して、例えば成形用具又は物理的工程により、微小レンズグリッドに対応した表面を設けられることもまた可能である。更に、微小レンズ21は回折レンズであってもよい。
【0051】
更に、多層体1には、層12と層13との間に更なる透明層が設けられることも、又は、多層体1において、層11と層12との間若しくは層13の上に、他の更なる層が設けられることもまた可能である。
【0052】
微小レンズ21は、上記で説明したように、1次元又は2次元のレンズグリッドに従って設けられ、該レンズグリッドのグリッド間隔は、一定であっても、あるいは局所的にさまざまであってもよい。従って図1は、例えば、図1に示す、隣り合う微小レンズの微小レンズ間隔、すなわち、それらの面重心の間隔に相当するグリッド間隔41を示している。
【0053】
微小画像22から微小レンズ21の間隔46は、おおよそ微小レンズ21の焦点距離の範囲内であることが望ましく、微小レンズ21の焦点距離から10%より多く逸脱しないことが望ましい。
【0054】
この場合の、図1で示された断面の切断線に沿った微小レンズグリッドのグリッド間隔は、5〜300μmであることが望ましく、切断線の方向の微小画像グリッドのグリッド間隔は、5〜300μmであることが望ましい。微小画像22の成形、微小画像グリッド及び微小レンズグリッドのグリッド間隔の構成、並びに微小レンズグリッド及び微小画像グリッド相互の向きについては、先の説明で言及がなされている。
【0055】
微小レンズ21は、例えば図1b〜図1eの図を参照して以下に説明するように、1次元のレンズグリッドに従って設けられることが望ましい。
【0056】
従って、図1bは層13の一部の平面図を表し、円筒レンズ形状の中に形成される微小レンズ21の前記焦点ラインは、図1b内に線で示されている。微小レンズ21は、軸50及び51を有する座標系に架かる、1次元の微小レンズグリッドに従って配設される。前記座標系の軸50は、多層体1の横軸に対して平行かつ、微小レンズ21の焦点ラインと並行する方向を向いており、また、座標軸51は、座標軸50に対して垂直方向を向いている。この場合、微小レンズ21は望ましくは1mmより長く、隣り合う微小レンズ21の間隔であるグリッド間隔41は300μmより小さく、望ましくは10〜200μmである。図1bによる実施例では、微小画像22の面重心線は、望ましくは座標軸50に対して略並行又は平行であり、微小画像グリッドと微小レンズグリッドのグリッド間隔は、互いに、特に0.5〜5%異なる。
【0057】
更に望ましい例示的実施例を、図1c及び図1dの図を参照して、ここで説明する。図1cは、層3の平面図を表しており、図1bと同様、微小レンズ21の焦点ラインは、対応する線によって識別される。ここで、微小レンズ21もまた、10μm〜300μm、ここでは35μmのグリッド間隔41を有する、1次元微小グリッドに従って設けられた円筒状レンズで形成される。微小レンズの焦点距離は、10μm〜500μmである。図1dで示すように、微小レンズ21の焦点ラインは、この場合、多層体1の長手方向軸線に対して45°の角度で傾き、互いに略平行に設けられる。この場合、座標軸51は、多層体1の長手方向を表し、座標軸50は該多層体1の横断方向を表し、該多層体1は、望ましくはストリップ形状又はスレッド形状のセキュリティエレメントである。図1bで説明したように、微小画像22は、上述の通り、微小レンズグリッドに対して傾いた状態で(特に45°傾いて)、又は上述の通りグリッド間隔の点で異なるように設けられた、微小画像グリッドに従って設けられる。このことは、図1dに表された光学的外観60をもたらし、その光学的外観の最前面エレメント61が、多層体1を水平軸に向かって傾けると左右の動きを、また、垂直軸の周囲へ傾けると左右の動きを描く。
【0058】
図1dによる例示的実施例では、多層体1は、例えば、100mmの長さ及び10mmの幅、すなわち長手方向の寸法100mm及び横断方向の寸法10mm、を有する。
【0059】
更なる実施例が図1eによって説明される。図1eは、同様に、層13の平面図を示し、微小レンズ21の焦点ラインが、同様に線で示されている。この場合、微小レンズ21は、それぞれが円形状を有し、図1d に示すように、互いにグリッド間隔41の間隔で設けられ、互いに同心円状に設けられた円筒状レンズによって形成される。更に、微小レンズ21は、幾何学的に変換された1次元微小レンズグリッドに従って設けられることも、つまり、例えば、座標軸50及び51に架かる平面上の微小レンズの焦点ラインが、いずれの場合にも、波線形状を有することもまた可能である。
【0060】
更なる例示的実施例が、図1fを参照することで説明される。図1fは、微小レンズ21及び割り当てられた微小画像22を備えた多層体1の一部を示す。微小レンズ21は、半径47及び最大構造高さ44を有する円筒状レンズである。図1fによる例示的実施例において、図1aで示したものと対照的に、微小画像22は平坦な平面には設けられず、むしろ、各微小画像22の領域において湾曲した、層13の表面上に設けられる。このために、層13の上面及び底面の両方に表面構造が再現され、微小画像22の領域に設けられる前記表面構造は、図1fに示すように、レンズ型形状を有することが望ましい。既に上述したように、層13の微小画像22の領域に型押しされた微小構造は、微小レンズ21に似た形状を有し、従って、図1fで示すように、円筒状表面の切り込みの形状に湾曲を形成する。
【0061】
ここで、この場合は、微小レンズ21は、半径47を有する球面状円筒状レンズとして具体化され、次の数式がおおよそ当てはまる。
【数1】

【0062】
この場合、rは微小レンズ21の半径であり、xは、層13の表面に対するイメージの垂直位置であり、寸法46に相当する。半径r=50μmでは、結果として、150μmの焦点視差を、またイメージ境界の最外部では122.75μmの値、すなわち18%のずれをもたらす。微小画像22のための湾曲は、微小画像22の最深部分が、微小画像から見て外方を向いた上面から150μmの距離にあり、すなわち寸法46は150μmであり、また、イメージの境界領域では微小画像は層13の上面から122.75μmの距離に設けられるように、しかるべく選択される。
【0063】
図2は、多層体1に対して以下のように改良及び修正を加えた、多層体2を示す。
【0064】
多層体2は、担持基板10と、層11,12,及び13を備えたフィルムエレメントとを備える。層13は、図1a〜図1fによる層13のように具体化されるが、図1による具体例の場合とは異なり、領域31における微小レンズ21が互いに直接連続せず、むしろ微小レンズ21同士の間に、微小レンズの一部ではなく微小レンズの偏向機能に何も貢献しない“平坦な”領域を備える、という差を有する。図2に示すように、レンズは、図2で示された断面の切断線の方向に寸法43を有し、該寸法43は、切断線に沿った微小レンズグリッドの各グリッド間隔よりも、少なくとも30%、特に50%以上小さい、すなわち、寸法43≦0.5グリッド間隔41である。更に微小レンズ21は、最大構造高さ、すなわち、微小レンズの寸法43の少なくとも25%、特に少なくとも50%の寸法44を有する。微小レンズのこの形状は、層13の層厚さを相応に減少させることを可能にし、また、図2に示すように、多層体2の層厚さを、多層体1の層厚さに比べて著しく減少させることができる。既に図1aを用いて述べたように、微小レンズ21の基底面と装飾層12の間の距離は、この場合、微小レンズ21の焦点距離におおよそ(偏差±10%)相当するように選択される。一方、微小レンズ21が、領域31のエリアのうち著しく小さな割合しか被覆せず、微小レンズ21の焦点距離の減少に対応して、微小レンズ21の最大構造高さも減少するので、これら2つの効果によって、多層体2の特に薄い形状が得られる。
【0065】
装飾層12は、図1a〜図1fによる装飾層12と同様に具体化される。図2は、その装飾層が、透明な複製ラッカー層122及び全域の金属層121から成る、装飾層12の実施例を示し、そこで、微小画像22のイメージ領域を形成する領域においては、複製ラッカー層122の表面に回折レリーフ構造123が型押しされ、このようなレリーフ構造は背景領域23には型押しされない、すなわち、これらの領域はミラー領域として具体化される。また、ここで言及するに値することであるが、更に、図2による実施例において、第1空間方向、ここでは図2に示す断面の切断線の方向における微小画像21の寸法45は、第1空間方向においてそれぞれ隣り合う微小レンズ21の寸法43の、50%より大きく、特に100%より大きい。既に上記で開示した利点が、その結果として得られる。
【0066】
図2に表された模範的例示的実施例の場合は、前記寸法43は5μm〜100μmであることが望ましく、微小レンズ21の最大構造高さ44は3μm〜50μm、また、微小画像22の寸法45は3μm〜50μmであることが望ましい。多層体2の他の形状に関しては、図1a〜図1fによる多層体1に関する説明を参照されたい。
【0067】
図3は、紙幣を構成する多層体3を表している。多層体3は、領域31内に、キャリア層10,接着層11,微小画像22を備えた装飾層12及び微小レンズ21を備えた透明層13を有する。この場合、透明層13はキャリア層10と一体的に結合することができる、すなわち、別個の層13を使用することなく、微小レンズ21もまた表面レリーフとしてキャリア層10に直接組み込まれる、望ましくは、エンボス加工されることができる。前記別個の層13がキャリア層10に塗着される場合、該層13は放射線硬化ラッカーであってよく、そこへエンボスローラー手段により微小レンズ21がエンボス加工され、続いて該ラッカーが例えば紫外線を用いて硬化されることが有利である。これらの層の形状に関しては、図1a〜図2による上記の説明を参照されたい。
【0068】
担持基板10は紙幣の担持基板である。領域32において、担持基板10は透明形状で具体化される。担持基板10が、例えば、プラスチックフィルム又は複数のプラスチック層の多層ラミネートから成る場合は、これらのプラスチック層は、領域32においては人的観察者に対して透明であるように具体化される。紙の基材が含まれる場合は、担持基板10は領域32において、図3に示すように、両面を層で覆われた窓形の穿孔を有することが望ましい。前記領域32の外側においては、担持基板10は不透明形状で具体化される、すなわち、不透明層に相応した印刷をされる、又は対応して着色層を設けられることが望ましい。前記担持基板10に対して、次に、層11と13とを備えるフィルムエレメントが正面に設けられ、また、層11,12及び層15を備えるフィルムエレメントが、背面に設けられる。前記層15は追加的な保護ラッカー層である。担持基板10へのこれらのフィルムエレメントの塗着は、例えば、担持基板10へ、転写フィルムの転写層を転写すること、又はラミネートフィルムをラミネートすることなど、上記で説明した方法のうち1つの手段によって行われてもよい。
【0069】
図3に示すように、ここでの担持基板が、第1の光学的可変効果を形成する追加的スペーサー層として有利に用いられ、その結果として、層13の層厚さを特に薄くすることを選択できるため、担持基板10に塗着される前記フィルムエレメントは、この場合特に薄く作られる。
【0070】
更に、ここでは、装飾層12が担持基板10に設けられるフィルムエレメントの一部となるのではなく、装飾層12が印刷方式の手段によって、担持基板10に直に塗着されることも可能である。
【0071】
既に上述した利点は、多層体3の手段によって得られる。
【0072】
図4は、図3による多層体3の改良形を構成する多層体4を示している。多層体4は、担持基板10,接着層11,微小画像22を備えた装飾層12,微小レンズ21を備えた透明層13,保護ラッカー層15を有する。多層体4は、図3による多層体3と同様に構成されるが、担持基板10が完全に透明形状で具体化され、また、複製ラッカー層14が透明層13の上に設けられ、前記複製ラッカー層の屈折率は層13の物質の屈折率とは異なるという差を有する。担持基板10の正面に塗着されるフィルムエレメントは、この場合は以下のように作られることが望ましい。
【0073】
前記複製ラッカー層14が、追加的キャリア層及びリリース層(転写フィルムの場合)に塗着され、また、その複製ラッカー層14に、微小レンズ21を備えた微小レンズグリッドに相当する表面レリーフが、エンボス加工される。その後、前記表面レリーフは、更なるラッカー層,層13で埋められ、次に、更なる層、特に接着層11が塗着される。その後、フィルムエレメントが担持基板10へ塗着される。図4による実施例は、ここで、微小レンズ21の表面構造が多層体の正面、すなわち上面に型押しされないので、コンタクトコピー手段による複製ができないという更なる利点を有する。更に、従って、多層体の耐久性が増すように、微小レンズは、層14によって擦過傷などの機械的損耗に対して保護される。
【0074】
図5は、それぞれ図3及び図4による多層体3及び多層体4の更なる改良型を構成する、多層体5を示す。多層体5は、担持基板10,層11,微小画像22を備えた装飾層12,微小レンズ21を備えた層13,及び層14を有する。多層体5は、図4による多層体4と同様に具体化されるが、担持基板10の正面に塗着されるフィルムエレメントが、更にセキュリティエレメント16を備え、フィルム体 の底面に塗着されるフィルムエレメントは、セキュリティエレメント18及び被覆層17を備え、また、担持基板10は底面に刻印9 を備える、という差を有する。
【0075】
被覆層17は、装飾層12の光学的効果とセキュリティエレメント18の光学的効果とを互いに分離する、不透明層によって形成される。この層は省略してもよい。セキュリティエレメント16及び18は、それぞれ、光学活性表面レリーフを型押しされた複製ラッカー層,反射層,金属層,着色ラッカー層,光学活性顔料が入った層,液晶層,体積ホログラム層,及び薄膜層構造を含むグループから選択された、1又は複数の層から成る。この場合、セキュリティエレメント18は、層13,15,及び12によって領域31内に生じる第1の光学的可変情報とは異なる、第2の光学的可変情報を形成することが望ましい。正面から見ると、層12及び13によって生じる光学的可変効果は、従って領域31内に見え、また、背面から見ると、セキュリティエレメント18によって生じる光学的可変効果が見える。
【0076】
セキュリティエレメント16は、セキュリティエレメント18と同様に構成されてよい。セキュリティエレメント16は、従って、正面から見たときに、担持基板10の正面に塗着されたフィルムエレメント内に設けられた領域33内に、対応する光学的可変模様を生じることが望ましい。更に、セキュリティ機構16は、セキュリティエレメント18に対して精密な見当合わせで配置される。透過光視におけるセキュリティエレメント16と18は、更なるセキュリティエレメントを形成するため、例えば、透過光で見たときに結合して全体モチーフを形作る相互補完的な画像などを形成するために、互いに補完する。更に、前記全体モチーフの一部は、セキュリティエレメント16及び18に対して同様に精密な見当合わせで設けられた、刻印19である。正面及び背面から反射光で見ると、セキュリティエレメント16によって生じる光学的可変効果は、従って領域33内に現れ、また、透過光で見ると、刻印19,セキュリティエレメント16及びセキュリティエレメント18によってもたらされる“透かし効果” は、領域31,33,及び34内に現れることが望ましく、前記“透かし効果”は、セキュリティエレメント16及び18の層と、刻印19の、相互に精密に見当合わせした配置によって決定される。
【0077】
図6は、担持基板10,接着層11,領域31内に微小画像22を備えた装飾層12,及び、領域31内に微小レンズ21を備えた透明層13,を有する多層体6を示す。上述した層は、図1a〜図2による多層体1又は2に準じて指定された層と同様に具体化されるが、領域31内において、担持基板10に窓形の穿孔が追加的に設けられるという差を有する。これらの層の構成に関しては、従って、上記の説明を参照されたい。更に、装飾層12と透明層13との間に半透明層20が設けられる。該半透明層20は、着色ラッカー層から成ることが望ましく、1μm〜30μmの層厚さを有することが望ましい。
【0078】
更に、前記装飾層は、例えば、背景領域は完全に透明形状に構成され、イメージ領域は不透明形状に構成されるなど、装飾層の透明度がイメージ領域と背景領域とで異なるように具体化される。
【0079】
多層体6の上述の構成によって達成されることとは、層12及び13によって領域31に生じる光学的可変効果が、透過光視においてのみ現れること、また、反射光視においては、半透明層20及び後者 によってもたらされる散乱効果によって消されることである。
【0080】
図7は、担持基板10,接着層11,装飾層12,及び透明層13を有する多層体7を示す。これらの層は、下記の相違を除き、図1a〜図2に準じて指定された層と同様に具体化される。
【0081】
装飾層12は、領域31においてゾーン34及び33を備える。ゾーン33において、装飾層12は、図1又は図2について上述したように構成される。ゾーン33において、装飾層12は、ゾーン34内で生じる第1の光学的可変情報とは異なる、更なる光学的可変情報を生じさせるために設けられた光学活性表面構造24を備えた、複製ラッカー層を有する。更に、ゾーン33において、透明層13の表面にラッカー層30が印刷される。ラッカー層30は、透明層の材料の屈折率とは異なる、0.3を超えない屈折率の材料から成るラッカー層である。このことは、人的観察者に対して、ゾーン33においては微小レンズ21の光学的効果が消失し、従って人的観察者からは、ゾーン33内には光学活性表面構造24によって生じる光学的可変効果のみが見えるようになるという効果を有する。
【0082】
次に、多層体7によって生じる光学的効果を得るための更なる変形が、図8を用いて説明される。
【0083】
図8は、担持基板10,接着層11,装飾層12,及び透明層13を有する多層体8を示す。これらの層は、以下の相違以外は図7に準じて指定された層と同様に構成される。ゾーン33における微小レンズ21の光学的効果を消す代わりに、ここで、まず初めに、ゾーン33の領域に層13が設けられていない変形が示される。層13は、従って、微小レンズ21を備えた層13が、ゾーン33又はゾーン33の一部の中に設けられないように、部分的に形成される。光学的可変効果に他の層による覆いが無いか、又は部分的な覆いしかないために、結果として、光学活性表面構造24の光学的可変効果が、これら領域33において特に鮮やかに現れる。加えて別の可能性として、微小レンズが、層13へ部分的にのみ型押しされることも可能である。図8に示すように、微小レンズは、つまりゾーン33には型押しされず、また、例えば図8に示すように、平坦な表面形状、又はおおむね滑らかな若しくは光学的歪み関数のない平坦な表面形状に置き換えられる。
【0084】
あるいは、調査によって、ラッカー層30を省いた場合、又は、上述の2つの方法のうち1つを実行する場合でも、表面構造の光学的模様は、特にキネグラム(登録商標)が使用された場合は、レンズによってわずかに不鮮明になるだけであるため、適切であれば、図7による例示的実施例において概説された光学的可変効果を得るために、ラッカー層30又は2つの上述した選択肢のうち1つを省くことは可能であることが判っている。
【0085】
更に、ゾーン34として、異なって具体化され、及び/又は方向付けられた、微小画像グリッド及び微小構造グリッドを有する領域と、図1b,図1c,図1d,図1eで既に説明されたように、更なる光学的可変情報を生じさせるためのゾーン33とが、互いに隣接し互いに平行に設けられることが可能である。
【0086】
この文脈で“隣接する”とは、互いに平行して並べられた領域が、それぞれ通常の境界線又は境界域を有することを意味する。各ゾーンの位置の製造公差の存在を相殺できるように、ゾーンが、重なった部分が境界域となるように互いにわずかに重なって、それぞれ互いに平行に並べられることは可能である。前記境界域は、いずれの場合でも、最大の製造公差よりわずかに幅広く、例えば10μm〜5mmの幅を有することが望ましい。境界域は、ゾーンの全ての前面又は前面の一部、例えば、隣接するゾーンとの境界線の領域だけなどに設けることができる。このような製造公差は、例えば、微小画像グリッド及び/又は微小構造グリッドの、望ましくはロールツーロール法において、個々の層を異なる製造過程で塗着した場合に生じることがあり、結果として、相互の層の相対的配置における小さな補正が起こり得る。
【0087】
図9は、領域35,36並びに領域37及び38を有する多層体9を示す。領域35〜38においては、微小画像グリッド及び微小構造グリッドは、特に、微小画像間隔,微小構造間隔並びに、微小構造グリッド及び微小画像グリッドに架かる座標軸の向き、を含むグループから選択されたパラメータの1つにおいて、それぞれ互いに異なる。微小画像グリッド又は微小構造グリッドは、個々の領域35〜38において均質でもよいが、それぞれの他の領域について位相シフトしてもよい。領域37及び38において、例えば、ゾーン21,22及び23は、従って、微小構造グリッド及び微小画像グリッドに従って設けられ、その微小画像間隔と微小構造間隔の差は、領域134 ではプラスであり領域135 ではマイナスである。例えば、このことは、傾けたときに領域37及び38内に現れるモチーフに、逆の動きをもたらす。
【0088】
加えて、例えば、モチーフ全体の中の個々のモチーフとして、ゾーン33が、ゾーン34における光学的可変情報に対する対比的光学基準として機能を果たせるように、光学的可変情報を有するゾーン34と、それと対照的な光学的可変情報を有する、隣りあうゾーン33との、有利な結合が可能である。例えば、領域35〜38における動きの効果と、動きの効果がない周囲領域39、又は、領域38における動きの効果と、動きの効果がない後者を取り囲み又は隣接し、例えばホログラムを有する、及び/又は、光学可変色素、あるいはいずれの場合でも領域35〜38と逆の動きの効果を有する領域37、が存在し得る。例えば、領域35〜38のうち1又は複数の領域において、微小構造グリッドは微小画像グリッドの上又は他の光学可変モチーフの上に設けられ、また、そこへ直接又は間接に隣接する領域35〜38内の他の領域においては、微小構造グリッドは、例えば同様の屈折率を有するラッカー層などの手段により消されるか、又は設けられないかであるために、対比的な光学的可変情報もまた生じ得る。同様に、領域35〜38内に、光学的可変情報を光学的干渉情報に隣接して、例えば、単色又は多色の領域、非光学的可変モチーフなどを互いに隣接して設けることも可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
微小レンズグリッドに従って配置された多数の微小レンズ(21)が、第1の領域(31)に設けられた透明な第1層(13)と、
前記第1層(13)の下側で第1層(13)に対して固定位置に設けられ、微小画像グリッドに従って配置され、且つ第1の光学的可変情報を生じさせるために、いずれの場合でも、微小レンズグリッドの微小レンズ(21)のうち1つと少なくとも局所的に重なり合って配置された多数の微小画像(22)を有する第2層(12)とを備え、
前記微小画像グリッド及び前記微小レンズグリッドのグリッド間隔(41,42)は、いずれの場合でも、少なくとも1つの空間方向において、300μmより小さい、
多層体(1,2,3,4,5,6,7,)。
【請求項2】
第1の空間方向における微小レンズグリッドの各グリッド間隔(41)が、第1の空間方向における微小レンズ(21)の各寸法(43)の、少なくとも50%、特に100%より大きいことを特徴とする、
請求項1に記載された多層体(2)。
【請求項3】
各微小レンズ(21)の最大構造高さ(44)が、第1の空間方向における各微小レンズ(21)の寸法(43)の、少なくとも35%、特に、少なくとも50%であることを特徴とする、
請求項1又は2のいずれかに記載された多層体(2)。
【請求項4】
第1の空間方向における微小画像(22)の各寸法(45)が、第1の空間方向において、それぞれ隣り合う微小レンズ(21)の各寸法(43)の、50%より大きい、特に100%より大きいことを特徴とする、
請求項1から3のいずれかに記載された多層体(2)。
【請求項5】
前記多層体(3,4,5)が、6μmより大きい層厚さを有する担持基板(10)を備え、該担持基板(10)は、第2領域(32)においては透明形状で具体化され、又は窓型の穿孔を有し、前記第2領域(32)は第1領域(31)を被覆し、第1層(13)が担持基板(10)の正面に設けられ、第2層(11)が担持基板(10)の背面に設けられることを特徴とする、
請求項1から4のいずれかに記載された多層体(3,4,5)。
【請求項6】
前記多層体(3,4,5)は重要書類、特に紙幣であり、担持基板(10)は重要書類の担持基板を形成し、30μm〜200μmの層厚さを有することを特徴とする、
請求項5に記載された多層体(3,4,5)。
【請求項7】
前記多層体(5)は、第1領域(31)に、第2層(11)の下に設けられた第3層(18)を有し、多層体(5)を背面から見ると、多層体を正面から見た人的観察者には見えず、第1の光学的可変情報とは異なる、第2の光学的可変情報が現れることを特徴とする、
請求項5又は6のいずれかに記載された多層体(5)。
【請求項8】
前記多層体(6)が、第1層(13)と第2層との間に設けられた半透明層(20)を有することを特徴とする、
請求項1から7のいずれかに記載された多層体(6)。
【請求項9】
前記多層体(6)が、第1領域においては透明形状で具体化され、又は窓型の穿孔を備えた、担持基板(10)を有することを特徴とする、
請求項8に記載された多層体(6)。
【請求項10】
前記第2層(12)は、第1領域(31)に、微小画像(22)を備えた少なくとも1つの第1ゾーン(34)及び、第3の光学的可変情報を生じさせるための光学活性表面構造を備えた少なくとも1つの第2ゾーン(33)を有し、前記第3の光学的可変情報は第1の光学的可変情報とは異なることを特徴とする、
請求項1から9のいずれかに記載された多層体(7)。
【請求項11】
第1及び第2ゾーン(33,34)に微小レンズ(21)が設けられることを特徴とする、
請求項10に記載された多層体(7)。
【請求項12】
少なくとも1つの第2ゾーンにおいて、第1層にラッカー層(30)が設けられ、特に、印刷され、前記ラッカー層の屈折率は第1層の屈折率と0.3未満で異なることを特徴とする、
請求項10又は11のいずれかに記載された多層体(7)。
【請求項13】
少なくとも1つの第2ゾーンが、300μmより大きな最小寸法を有し、第4の情報を生じさせるために、模様付きの形状に形成されることを特徴とする、
請求項10から12のいずれかに記載された多層体。
【請求項14】
前記第1領域が、多数の第1及び第2ゾーンに分割され、該第1及び第2ゾーンは、少なくとも1つの空間方向において300μmより小さいグリッド間隔を有する、規則的なグリッドに従って設けられることを特徴とする、
請求項10から12のいずれかに記載された多層体。
【請求項15】
微小画像(22)が、いずれの場合でも、背景領域(23)に囲まれた1又は複数のイメージ領域によって形成されることを特徴とする、
請求項1から14のいずれかに記載された多層体。
【請求項16】
1又は複数のイメージ領域が不透明であり、背景領域が透明である、又はその逆であることを特徴とする、
請求項15に記載された多層体。
【請求項17】
一方で1又は複数のイメージ領域が、もう一方で背景領域が、異なる反射特性を有することを特徴とする、
請求項15又は16のいずれかに記載された多層体。
【請求項18】
第2層が、金属層、着色ラッカー層及び/又はフォトレジスト層を有し、これらの層はイメージ領域の第1領域に設けられ、背景領域には設けられない、又はその逆であることを特徴とする、
請求項15から17のいずれかに記載された多層体。
【請求項19】
1又は複数のイメージ領域及び/又は背景領域が、光学的可変要素で被覆され、特に、一方でイメージ領域が、もう一方で背景領域が、異なる光学的可変要素で被覆されることを特徴とする、
請求項15から18のいずれかに記載された多層体。
【請求項20】
第2層(12)が、複製ラッカー層(122)の表面に型押しされた表面レリーフ(123)を備えた複製ラッカー層(122)を有することを特徴とする、
請求項19に記載された多層体。
【請求項21】
1又は複数のイメージ領域及び背景領域が、異なる偏光特性を有することを特徴とする、
請求項15から20のいずれかに記載された多層体。
【請求項22】
第2層の色彩、反射特性及び/又は吸収特性が、イメージ領域において変化することを特徴とする、
請求項15から21のいずれかに記載された多層体。
【請求項23】
微小レンズグリッドが、多層体の長手方向軸線に対して45°傾いた状態で設けられることを特徴とする、
請求項1から22のいずれかに記載された多層体。
【請求項24】
微小レンズグリッドが、1次元の微小レンズグリッドであり、微小レンズ(21)の焦点ラインが、多層体(1)の長手方向軸線に対して45°傾いた状態で設けられることを特徴とする、
請求項23に記載された多層体。
【請求項25】
微小画像(22)が、いずれの場合でも、湾曲した表面に設けられることを特徴とする、
請求項1から24のいずれかに記載された多層体。
【請求項26】
微小レンズグリッド及び/又は微小画像グリッドが、2次元の微小レンズグリッド及び/又は微小画像グリッドであり、いずれの場合でも、2以上の微小レンズ及び/又は微小画像が、5μm〜150μmの各グリッド間隔で、第1空間方向及び第2空間方向へ連続することを特徴とする、
請求項1から25のいずれかに記載された多層体。
【請求項27】
微小レンズグリッド及び/又は微小画像グリッドが、1次元の微小レンズグリッド及び/又は微小画像グリッドであり、いずれの場合でも、2以上の微小レンズ及び/又は微小画像が、5μm〜300μmの各グリッド間隔で、第1空間方向へ連続することを特徴とする、
請求項1から25のいずれかに記載された多層体。
【請求項28】
微小画像グリッド及び微小レンズグリッドのグリッド間隔が、隣接する微小画像及び微小レンズに対して、いずれの場合でも互いに10%未満異なる、特に、互いに0.5〜5%異なることを特徴とする、
請求項1から27のいずれかに記載された多層体。
【請求項29】
微小画像グリッド及び微小レンズグリッドは、互いに0.5°〜50°傾いた状態で設けられることを特徴とする、
請求項1から28のいずれかに記載された多層体。
【請求項30】
第1領域において、微小レンズグリッド及び/又は微小画像グリッドのグリッド間隔、及び/又は、微小画像グリッド及び微小レンズグリッドの互いに対する傾きが、少なくとも1つの空間方向において、パラメータ変化関数に従って連続的に変化することを特徴とする、
請求項1から29のいずれかに記載された多層体。
【請求項31】
微小画像グリッドが、第1領域に、少なくとも2つの互いに異なる微小画像を有することを特徴とする、
請求項1から30のいずれかに記載された多層体。
【請求項32】
第2領域において、微小画像の形状及び/又は色彩が、変形関数に従って連続的に変化することを特徴とする、
請求項1から31のいずれかに記載された多層体。
【請求項33】
第1領域の第1の部分的領域における、微小レンズグリッドのグリッド間隔、微小画像グリッドのグリッド間隔、及び/又は、微小画像グリッド及び微小レンズグリッドの互いに対する傾きは、第1領域の第2の部分的領域における、微小レンズグリッドのグリッド間隔、微小画像グリッドのグリッド間隔、及び/又は、微小画像グリッドの、及び微小レンズグリッドの互いに対する傾きとは異なる、
ことを特徴とする、請求項1から32のいずれかに記載された多層体。

【図1a】
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【図1b】
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【図1c】
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【図1d】
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【図1e】
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【図1f】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公表番号】特表2013−504451(P2013−504451A)
【公表日】平成25年2月7日(2013.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−528274(P2012−528274)
【出願日】平成22年9月9日(2010.9.9)
【国際出願番号】PCT/EP2010/005552
【国際公開番号】WO2011/029602
【国際公開日】平成23年3月17日(2011.3.17)
【出願人】(506151626)オーファウデー キネグラム アーゲー (30)
【Fターム(参考)】