説明

多層地盤における集排水制御構造

【目的】本発明は、礫間(粗粒物間)に砂(細粒物)が入り込むことを防ぎつつ、層厚をその砂層(細粒物層)が元来保有している保水性(サクション高)よりも薄くすることで、さらに砂層(細粒物層)の上部に位置する砂層(細粒物層)の保水性をも活用でき、多層からなる砂層群(細粒物層群)の全体の保水性を高めてCB効果を向上させることができる多層地盤における集排水制御構造の提供を目的とする。
【構成】粗粒物層の上部に細粒物層を構築し、粗粒層の上部には、粗粒物間に混入しない粒径で、粗粒物の粒径より小径の粒径をなす細粒物からなる第1細粒物層を構築すると共に、第1細粒物層の上部には、第1細粒物層の細粒物間に混入しない粒径をなし、第1細粒物の粒径より小さい粒径の細粒物からなる第2細粒物層を構築したことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、いわゆるキャピラリーバリア技術を利用した多層地盤における集排水制御構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
地盤分野において、例えば、浸出水制御のための表面遮水技術の1つとしては、キャピラリーバリア(以下CBと称する)という技術が一般に知られている。
【0003】
ここで、CBとは、上部排水層に砂層、すなわち細粒物層を、その下部に下部遮断層として礫層、すなわち粗粒物層を2層状に配し、これら2層の毛管力の差を利用して、両層の境界面上方で側方排水を促進させ、たとえば雨水の鉛直浸透を制御するとの技術を称するものである。
【0004】
すなわち、砂層とその下部に礫層を重ねた土層地盤では、両層の土粒子についての相対的な保水性の違いにより、砂層と礫層の境界面の上部で降下浸潤水が捕捉され、集積するのである。この機能が土の毛管障壁、すなわちCBと称されている。
【0005】
そして当該CBは、前記のごとく全体の地盤の保水性を高くすることができ、かつ側方排水に優れていること、ガス抜きや好気性微生物のために通気性がよいこと、砂や礫材など自然材料を使用しているため経済的であり、かつ地球環境保護に貢献していること、長耐久性、長安定性に優れていることなどのいくつもの特徴を有しており、従来より当該CB技術を利用した覆土構造などが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006−231156号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、従来のCB技術を利用した、例えば覆土構造などは、前記先行技術文献として提示した特許出願などに示されているように、上層に砂層、下層に礫層とした2層構造の覆土構造で提案されているに過ぎないものである。
【0008】
ところで、前記CBの効果は、砂と礫との保水性の違い(粒径の差異)が大きいほど好ましいとされている。しかしながら、砂径と礫径の差があまりに大きくなってしまうと、礫の間に砂が入り込んでしまい、層境界部の保水性に差がなくなってしまう。そして、その結果CB効果が全く発揮できず、逆に集排水性能が低下してしまうとの課題があった。
【0009】
また、特に例えば沿岸域などでの集排水構造構築に際しては、当該構築に際して適切な粒径からなる、特に礫材を探索するのは比較的困難でもあり、さらに海岸部近傍に多量にある貝殻を集排水構造の部材として利用できれば資源の有効利用推進、環境に配慮した自然材料の活用などがはかれるとの課題もある。
【0010】
かくして、本発明は前記従来の課題に鑑みて創案されたものであり、例えば、砂層(細粒物層)と礫層(粗粒物層)の粒径に大きな差をつけるのではなく、前記細粒物層を2層以上の多層に構成し、いわゆる細粒物の混入防止をも企図して徐々に粒径に差をつけて、礫間(粗粒物間)に砂(細粒物)が入り込むことを防ぎつつ、層厚をその砂層(細粒物層)が元来保有している保水性(サクション高)よりも薄くすることで、さらにその砂層(細粒物層)の上部に位置する砂層(細粒物層)の保水性をも活用でき、多層からなる砂層群(細粒物層群)の全体の保水性を高めて前記のCB効果を向上させることができる多層地盤における集排水制御構造の提供を目的とするものである。
【0011】
また、例えば、下部より礫層(粗粒物層)+中砂層(中粒物層)+細砂層(細粒物層)などのいわゆる2層構造以上の多層にした場合、上層と中間層および中間層と下層の2箇所以上で前述のCB効果が発揮されることから、充分なCB効果が得られる多層地盤における集排水制御構造を提供することを目的とするものである。
【0012】
さらには、特に沿岸域などで、廃棄されたあるいは多量に存するカキ殻、貝殻等を粉砕・分級して、砂層などの細粒物層の下に敷くことで、少なくとも空隙が大きな粗粒物(礫材)の代用となしえ、これにより、特に沿岸域に構築される集排水構造に最適な粗粒層が構築でき、しかも環境に配慮した粗粒物(礫材)の材料調達を容易にできる多層地盤における集排水制御構造を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明による多層地盤における集排水制御構造は、
粗粒物層の上部に細粒物層を構築し、前記両層の保水性の差異から前記粗粒物層の上層にある細粒物層の保水力が一定の高さとなるまで側方集排水が促進制御できる多層地盤における集排水制御構造であって、
前記粗粒層の上部には、粗粒物間に混入しない粒径で、前記粗粒物の粒径より小径の粒径をなす細粒物からなる第1細粒物層を構築すると共に、当該第1細粒物層の上部には、前記第1細粒物層の細粒物間に混入しない粒径をなし、前記第1細粒物の粒径より小さい粒径の細粒物からなる第2細粒物層を構築した、
ことを特徴とし、
【0014】
または、
粗粒物層の上部に細粒物層を構築し、前記両層の保水性の差異から前記粗粒物層の上層にある細粒物層の保水力が一定の高さとなるまで側方集排水が促進制御できる多層地盤における集排水制御構造であって、
前記粗粒層の上部には、粗粒物間に混入しない粒径で、前記粗粒物の粒径より小径の粒径をなす細粒物からなる第1細粒物層を構築すると共に、当該第1細粒物層の上部には、前記第1細粒物層の細粒物間に混入しない粒径をなし、前記第1細粒物の粒径より小さい粒径の細粒物からなる第2細粒物層を構築して多層地盤を形成し、
該多層地盤は、傾斜地盤として形成し、下り傾斜の側方方向に集排水促進させる、
ことを特徴とし、
または、
前記細粒物層は、少なくとも2層以上の複数層に構築される、
ことを特徴とし、
【0015】
または、
前記粗粒物層の上層にある第1細粒物層の層厚を、当該第1細粒物層の有する保水性が保持できる層厚より薄厚に構成し、当該第1細粒物層の上層に構築した前記第1細粒物層の細粒物間に混入しない粒径をなし、前記第1細粒物の粒径より小さい粒径の細粒物からなる第2細粒物層の保水性をも利用して集排水促進を行う、
ことを特徴とし、
【0016】
または、
前記細粒物層の層厚を、各々個々の有する保水性が保持できる層厚より薄厚に構成し、2層以上の多層に構成された細粒物層全体の保水性を高めて集排水促進を行う、
ことを特徴とし、
または、
前記細粒層の層厚は、保水性が保持できる層厚より薄厚に構成する際に、前記保水性が保持できる層厚は、横軸に体積含水率を示し、縦軸に負の圧力水頭を示したグラフで求めた該当細粒層のサクション高から決定され、前記保水性が保持できる層厚より薄厚にする厚み幅は、横軸に負の圧力水頭を示し、縦軸に体積含水率を示して形成された水分特性曲線のグラフから、該当細粒層における体積含水率が高い状態がほぼフラット状態に維持されてなる点から下降する分岐点のときの負の圧力水頭で示された厚みで決定される、
ことを特徴とし、
【0017】
または、
前記粗粒物層は礫層により構成され、前記細粒物層は砂層により構成された、
ことを特徴とし、
または、
粗粒物層の上部に細粒物層を構築し、前記両層の保水性の差異から前記粗粒物層の上層にある細粒物層の保水力が一定の高さとなるまでは側方集排水が促進制御できる多層地盤における集排水制御構造であって、
前記粗粒物間に混入しない粒径で、前記粗粒物の粒径より小径の粒径をなす細粒物からなる第1細粒物層を構築すると共に、当該第1細粒物層の上部には、前記第1細粒物層の細粒物間に混入しない粒径をなし、前記第1細粒物の粒径より小さい粒径の細粒物からなる第2細粒物層を構築してなり、
少なくとも前記各々の粗粒物は、貝殻を粉砕して代用した、
ことを特徴とし、
【0018】
または、
粗粒物層の上部に細粒物層を構築し、前記両層の保水性の差異から前記粗粒物層の上層にある細粒物層の保水力が一定の高さとなるまでは側方集排水が促進制御できる多層地盤における集排水制御構造であって、
前記粗粒層の上部には、粗粒物間に混入しない粒径の細粒物からなる第1細粒物層を構築すると共に、当該第1細粒物層の上部には、前記第1細粒物層の細粒物より粒径の小さい細粒物からなる第2細粒物層を構築してなり、
少なくとも前記各々の粗粒物の代用とすべく、貝殻を粉砕し、かつ分級し、最適な集排水制御構造構築がなされるよう、適切大の破砕貝殻を選択、決定した、
ことを特徴とし、
【0019】
または、
粗粒物層の上部に細粒物層を構築し、前記両層の保水性の差異から前記粗粒物層の上層にある細粒物層の保水力が一定の高さとなるまでは側方集排水が促進制御できる多層地盤における集排水制御構造であって、
前記粗粒層の上部には、粗粒物間に混入しない粒径の細粒物からなる第1細粒物層を構築すると共に、当該第1細粒物層の上部には、前記第1細粒物層の細粒物より粒径の小さい細粒物からなる第2細粒物層を構築してなり、
沿岸域での集排水制御構造構築に際しては、前記沿岸域にある貝殻を粉砕して分級し、前記沿岸域での集排水制御構造構築に適切な大きさをなす破砕貝殻を選択、決定して少なくとも前記粗粒物の代用とした、
ことを特徴とするものである。
【0020】
従来のような2層構造(礫層と砂層)ではなく、前述したように粒径に配慮した細粒物層(砂層)を2層以上積み重ねた複数層を粗粒物層(礫層)の上部に構築することで、礫間に砂が混入すること防ぎつつ、効果的なCB機能を発揮できるものとなる。
【0021】
また、
資源の有効利用推進、環境に配慮した自然材料の活用などの目的のため、海岸に大量に存する貝殻等を粉砕・分級(大きさを調整)して敷いた層を、CBの少なくとも粗粒物層(礫層)として代用できる。
【発明の効果】
【0022】
かくして、本発明による多層地盤における集排水制御構造によれば、
砂層(細粒物層)と礫層(粗粒物層)の粒径に大きな差をつけるのではなく、前記細粒物層を2層以上の多層に構成し、いわゆる細粒物の混入防止をも企図して徐々に粒径に差をつけて、礫間(粗粒物間)に砂(細粒物)が入り込むことを防ぎつつ、層厚をその砂層(細粒物層)が保有している保水性(サクション高)よりも薄くすることで、さらにその砂層(細粒物層)の上部に位置する砂層(細粒物層)の保水性をも活用でき、多層からなる砂層群(細粒物層群)全体の保水性をも高めて前記のCB効果を向上させることができるとの優れた効果を奏する。
【0023】
また、例えば、下部より礫層(粗粒物層)+中砂層(中粒物層)+細砂層(細粒物層)などのいわゆる2層構造以上の多層にした場合、上層と中間層および中間層と下層の2箇所以上で前述のCB効果が発揮されることから、充分なCB効果が得られるとの優れた効果を奏する。
【0024】
さらには、特に沿岸域などで、廃棄されたあるいは多量に存するカキ殻、貝殻等を粉砕・分級して、砂層などの細粒物層の下に敷くことで、少なくとも空隙が大きな粗粒物(礫材)の代用となしえ、これにより、特に沿岸域に構築される集排水構造に最適な粗粒層が構築でき、しかも環境に配慮した粗粒物(礫材)の材料調達を容易にできるとの優れた効果を奏するものである。

【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の該略構成を説明する概略構成説明図(その1)である。
【図2】本発明の該略構成を説明する概略構成説明図(その2)である。
【図3】CB構造構築に使用する砂や礫のサクション高を求めた値を示すグラフである。
【図4】CB構造構築に使用する砂や礫の水分特性曲線を求めた値を示すグラフである。
【図5】貝殻を「礫」などの代用とする手順を表した説明図(その1)である。
【図6】貝殻を「礫」などの代用とする手順を表した説明図(その2)である。
【図7】貝殻を「礫」などの代用とする手順を表した説明図(その3)である。
【図8】従来のCB構造の構成を説明する概略構成説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下本発明を図に示す実施例に基づいて説明する。
【実施例】
【0027】
本発明は、粗粒物層である礫層の上部に細粒物層である砂層を構築し、前記両層の保水性の差異から前記粗粒物層の上層にある細粒物層の保水力が一定の高さとなるまでは側方集排水が促進制御できる、いわゆるCB効果を発揮させた多層地盤における集排水制御構造に関している。
【0028】
図1から理解されるように、粗粒層、すなわち例えば、礫層1の上部には、礫2間に混入しない粒径の細粒物で前記礫2の粒径より小径の粒径からなる細粒物、すなわち、例えば砂3からなる第1砂層4が構築されている。
【0029】
次いで、前記第1砂層4の上部には、前記第1砂層4の砂3より粒径の小さい砂6からなり、かつ前記第1砂層4の砂3間に混入しない粒径の砂6からなる第2砂層5が構築されている。
【0030】
尚、図には示してはいないが、前述したように3層構造ではなく、細粒層を多層構造にし、4層構造、5層構造、6層構造に形成してもかまわないものである。しかし、これらの場合も、上層にある層の細粒層となる砂の粒径は、その下の層に形成された層の砂粒径より小径で、かつ当該砂の間に混入しない粒径に構成することが重要である。
【0031】
図2は、本発明による多層地盤に傾斜をもたせて形成したもので、例えばCBによる側方集排水となる集積流11は下り傾斜側に向って流れ、集排水促進されるものとなる。
【0032】
さらに、図2から理解されるように、それぞれの礫層1及び第1砂層4あるいは第2砂層5の層厚は、各々有している保水性を示すサクション高より薄厚の層厚に構成するものとする。
【0033】
一例を挙げて説明すると、通常では、礫層1の層厚は20cm乃至30cmに構成され、その上方の第1砂層4あるいは第2砂層5の層厚は50cm乃至60cm程度に構成されるが、本発明ではそれよりも薄厚に構成される。
【0034】
図4から理解されるように、前記所定の粒径の砂3からなる第1砂層4の水分特性曲線を検査してみると、この砂3の体積含水率はほぼ0.4の値で、横軸に示す負の圧力水頭hが1cmより略30cmに至るまでフラットの状態が維持されている。そして、前記負の圧力水頭hが30cmを過ぎたところから前記体積含水率が下降することが理解できる。
【0035】
よって、砂3の試験結果によって構成された第1砂層4の水分特性曲線を示すグラフ、図4を参照し、本来、図3に示すように第1砂層4のサクション高は50cm以上であるが、図4のグラフから、第1砂層4の層厚を30cmと前記のサクション高より薄厚に決定しているのである。
しかして、砂6により構成された第2砂層5の層厚についても、同様の決定がなされるものとなる。
【0036】
このように、第1砂層4及び第2砂層5の層厚を、各々有するサクション高(保水性の高さを示す。)より薄くすることにより、第2砂層5の有する保水性により第1砂層4の保水性をより高めることができ、ひいては多層に構成された砂層全体としての保水性を確保することができるものとなる。
【0037】
図2にはその具体例が示されており、第1砂層4及び第2砂層5内で、かつ第1砂層4及び第2砂層5と、それらの下に施工された下層との境界線上方位置に側方集排水の集積流が複数形成され、もって充分なCB効果が発揮できることになる。
【0038】
すなわち前述したように、各層の層厚を薄くすることで、各層の土粒子についての相対的な保水性の違いがより顕著となり、もってこの違いにより、第1砂層4と礫層1あるいは第2砂層5と第1砂層4との境界面の上部で各々降下浸潤水が捕捉され、集積され、集積流11が生じ、側方集排水が促進されているのである。
【0039】
以上において、本発明による多層地盤の形成は、まず、使用する各種の砂と礫の保水性を調査すべく、図4に示す水分特性曲線を室内試験よりあらかじめこれを求めておく。これにより、前記多層地盤を形成すべき箇所に最適な砂や礫の選択を容易にするものとなる。
【0040】
さらに、いわゆるフィルター層の設計を考慮し、例えば、D15(フィルターの15%径)/d85(排水される土の85%径)<4〜5 などとして、多層地盤を形成する上層、下層を形成する細粒物あるいは粗粒物の粒径を決定し、いずれを使用するか選定する。
【0041】
尚、前述したように、礫層1の上層に配置される第1砂層4の施工は、各砂層の保水性(サクション高)より薄い層厚で施工することがポイントである。
【0042】
次に、下部に位置する礫層1より上層の砂層を順次締め固めながらいわゆるCBを施工していく。
【0043】
尚、この際、前記CB構造に傾斜をつけることにより、前述した図2に示すように第1砂層4と礫層1の境界面上方で及び第2砂層5と第1砂層4との境界面上方で降下浸潤水が捕捉されやすくなり、集積したものを、下り傾斜方向に流下させることが可能となる。
【0044】
図5乃至図7に本発明における他の実施例を示す。
本実施例は前記粗粒物、すなわち少なくとも礫2について、貝殻7を粉砕して代用する実施例を示したものである。
【0045】
いわゆるCB構造を建設する際には、適切な粒径で、かつ充分に必要量が賄える「砂」や「礫」が準備されていなければならない。しかし、この「砂」や「礫」が多層地盤構造建設箇所の近傍で容易に調達できないことがままある。そこで、例えば沿岸域などの近傍位置における多層地盤構造建設箇所での「砂」、特に「礫」の調達に際しては、沿岸域に大量に存在する貝殻7を破砕し、これを「砂」や特に「礫」の代用とすることが考えられるのである。
【0046】
図5では、沿岸域に大量にある貝殻7を重機8で収集する状態の一例を示したものであるが決してこの図に限定されるものではない。そしてこれら貝殻7を一箇所に収集し、その後、収集した貝殻7を破砕機9に投入して所定の大きさに破砕していく(図6参照)。尚、図6に示した方法も一例であり、この方法に限定されるものではない。
【0047】
次に、図7に示すように破砕した貝殻7を分級、ふるい分けし、それぞれの大きさ別に収集する。この図7に示す分級、ふるい分け方法も一例に過ぎず、決してこの方法に限定されない。
しかして、これらの破砕物を「砂」や「礫」の代用として使用すればよいのである。
【0048】
ここで、貝殻7などを「砂」や「礫」の代用として使用する手順を説明すると、まず、前記説明したように、海岸部に多量にある貝殻7等を選択収集した上で、前述のように破砕機9等で破砕する。
【0049】
破砕した際には、細粒分を含む大きさの異なる破砕材となるため、特に、これを礫層1に代用するためには、例えば図7に示すようにふるい10などを用い、これにより分級・ふるい分けして、細粒分や大きな破砕片を取り除く必要がある。
しかして、分級し・ふるい分けしたカキの殻や貝殻7等を現地(斜面等)に礫2の代用として静的にほぼ等厚になるよう排水勾配を付けて構築する。
【0050】
その上方に、例えば3層をなす多層地盤の構築であれば、第1砂層4及び第2砂層5を所定の厚さにほぼ均等になるように構築し、いわゆるCB構造を完成させるのである。
【0051】
尚、前記第1砂層4及び第2砂層5の構築に際しては、沿岸域に大量の砂があるため、破砕した貝殻7をあえて代用しなくともよいが、前記破砕した貝殻7などを砂2あるいは6に代えて使用してもかまわないものである。
【産業上の利用可能性】
【0052】
本発明による多層地盤における集排水制御構造は、例えば埋め立て廃棄物の浸透水制御に、あるいは廃棄物処分場における覆土構造などに利用できる。すなわち、覆土等の上部に、本発明によるCB構造の多層地盤を構築した際には、雨水等の上部からの浸透を大幅に減少させることが可能になる(廃棄物処分場の閉鎖時に活用可能)。
【0053】
また、斜面近傍に本発明によるCB構造の多層地盤を構築した際には、雨水の浸透制御と共に、浸透した雨水等をすみやかに盛土等の外部へ排水させることが可能になる(斜面防災などへの活用可能)。
【0054】
そして、上記のCB構造の多層地盤を3層以上に重ね合わせることで、その効果を増大させることができるのである。
【符号の説明】
【0055】
1 礫層
2 礫
3 砂
4 第1砂層
5 第2砂層
6 砂
7 貝殻
8 重機
9 破砕機
10 ふるい
11 集積流

【特許請求の範囲】
【請求項1】
粗粒物層の上部に細粒物層を構築し、前記両層の保水性の差異から前記粗粒物層の上層にある細粒物層の保水力が一定の高さとなるまで側方集排水が促進制御できる多層地盤における集排水制御構造であって、
前記粗粒層の上部には、粗粒物間に混入しない粒径で、前記粗粒物の粒径より小径の粒径をなす細粒物からなる第1細粒物層を構築すると共に、当該第1細粒物層の上部には、前記第1細粒物層の細粒物間に混入しない粒径をなし、前記第1細粒物の粒径より小さい粒径の細粒物からなる第2細粒物層を構築した、
ことを特徴とする多層地盤における集排水制御構造。
【請求項2】
粗粒物層の上部に細粒物層を構築し、前記両層の保水性の差異から前記粗粒物層の上層にある細粒物層の保水力が一定の高さとなるまで側方集排水が促進制御できる多層地盤における集排水制御構造であって、
前記粗粒層の上部には、粗粒物間に混入しない粒径で、前記粗粒物の粒径より小径の粒径をなす細粒物からなる第1細粒物層を構築すると共に、当該第1細粒物層の上部には、前記第1細粒物層の細粒物間に混入しない粒径をなし、前記第1細粒物の粒径より小さい粒径の細粒物からなる第2細粒物層を構築して多層地盤を形成し、
該多層地盤は、傾斜地盤として形成し、下り傾斜の側方方向に集排水促進させる、
ことを特徴とする多層地盤における集排水制御構造。
【請求項3】
前記細粒物層は、少なくとも2層以上の複数層に構築される、
ことを特徴とする請求項1または請求項2記載の多層地盤における集排水制御構造。
【請求項4】
前記粗粒物層の上層にある第1細粒物層の層厚を、当該第1細粒物層の有する保水性が保持できる層厚より薄厚に構成し、当該第1細粒物層の上層に構築した前記第1細粒物層の細粒物間に混入しない粒径をなし、前記第1細粒物の粒径より小さい粒径の細粒物からなる第2細粒物層の保水性をも利用して集排水促進を行う、
ことを特徴とする請求項1、請求項2または請求項3記載の多層地盤における集排水制御構造。
【請求項5】
前記細粒物層の層厚を、各々個々の有する保水性が保持できる層厚より薄厚に構成し、2層以上の多層に構成された細粒物層全体の保水性を高めて集排水促進を行う、
ことを特徴とする請求項1、請求項2、請求項3または請求項4記載の多層地盤における集排水制御構造。
【請求項6】
前記細粒層の層厚は、保水性が保持できる層厚より薄厚に構成する際に、前記保水性が保持できる層厚は、横軸に体積含水率を示し、縦軸に負の圧力水頭を示したグラフで求めた該当細粒層のサクション高から決定され、前記保水性が保持できる層厚より薄厚にする厚み幅は、横軸に負の圧力水頭を示し、縦軸に体積含水率を示して形成された水分特性曲線のグラフから、該当細粒層における体積含水率が高い状態でほぼフラット状態に維持されてなる点から下降する分岐点のときの負の圧力水頭で示される厚みで決定される、
ことを特徴とする請求項4または請求項5記載の多層地盤における集排水制御構造。
【請求項7】
前記粗粒物層は礫層により構成され、前記細粒物層は砂層により構成された、
ことを特徴とする請求項1、請求項2、請求項3、請求項4、請求項5または請求項6記載の多層地盤における集排水制御構造。
【請求項8】
粗粒物層の上部に細粒物層を構築し、前記両層の保水性の差異から前記粗粒物層の上層にある細粒物層の保水力が一定の高さとなるまでは側方集排水が促進制御できる多層地盤における集排水制御構造であって、
前記粗粒物間に混入しない粒径で、前記粗粒物の粒径より小径の粒径をなす細粒物からなる第1細粒物層を構築すると共に、当該第1細粒物層の上部には、前記第1細粒物層の細粒物間に混入しない粒径をなし、前記第1細粒物の粒径より小さい粒径の細粒物からなる第2細粒物層を構築してなり、
少なくとも前記各々の粗粒物は、貝殻を粉砕して代用した、
ことを特徴とする請求項1、請求項2、請求項3、請求項4、請求項5または請求項6記載の多層地盤における集排水制御構造。
【請求項9】
粗粒物層の上部に細粒物層を構築し、前記両層の保水性の差異から前記粗粒物層の上層にある細粒物層の保水力が一定の高さとなるまでは側方集排水が促進制御できる多層地盤における集排水制御構造であって、
前記粗粒層の上部には、粗粒物間に混入しない粒径の細粒物からなる第1細粒物層を構築すると共に、当該第1細粒物層の上部には、前記第1細粒物層の細粒物より粒径の小さい細粒物からなる第2細粒物層を構築してなり、
少なくとも前記各々の粗粒物の代用とすべく、貝殻を粉砕し、かつ分級し、最適な集排水制御構造構築がなされるよう、適切大の破砕貝殻を選択、決定した、
ことを特徴とする請求項1、請求項2、請求項3、請求項4、請求項5、請求項6または請求項8記載の多層地盤における集排水制御構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−91148(P2012−91148A)
【公開日】平成24年5月17日(2012.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−242903(P2010−242903)
【出願日】平成22年10月29日(2010.10.29)
【出願人】(000235543)飛島建設株式会社 (132)
【出願人】(304027279)国立大学法人 新潟大学 (310)
【Fターム(参考)】