説明

多層型光ディスク

【課題】 多層型光ディスクに記録されている信号の読み出し動作を行う場合に信号の読み出し動作を行っている信号記録層以外の信号記録層から反射されるレーザー光である迷光がフォーカシング制御動作に悪影響を与えるという問題がある。
【解決手段】 少なくとも3層以上の信号記録層が設けられ、信号の読み取り動作を行うレーザー光が入射される面側から連続して配置されている2層の信号記録層に付される偏光反射コートの偏光方向と隣接する信号記録層に付される偏光反射コートの偏光方向とが逆の関係になるように構成したことを特徴とするものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光ピックアップ装置から照射されるレーザー光によって信号の記録再生動作を行うように構成されているとともに複数の信号記録層が設けられている多層型の光ディスクに関する。
【背景技術】
【0002】
光ピックアップ装置から照射されるレーザー光を光ディスクに設けられている信号記録層に照射することによって信号の読み出し動作を行うことが出来る光ディスク装置が普及している。
【0003】
信号記録層に記録されている信号の光ピックアップ装置による読み出し動作は、レーザーダイオードから放射されるレーザー光を信号記録層に照射させ、該信号記録層から反射されるレーザー光の変化を光検出器によって検出することによって行われている。
【0004】
レーザー光によって信号記録層に記録されている信号を読み出すためには、レーザー光を信号記録層に集光させるフォーカシング制御動作及び信号記録層に渦巻き状に設けられている信号トラックにレーザー光を追従させるトラッキング制御動作を正確に行う必要がある。
【0005】
斯かるフォーカシング制御動作を行う方法としては、種々あるが非点収差の発生を利用した非点収差法が一般的に行われている。また、トラッキング制御方法としても種々あるが、メインビームと2つのサブビームを使用する3ビーム法が一般的に行われている。
【0006】
更に、最近では正確なフォーカシング制御動作を行うためにメインビームだけでなくサブビームも使用する差動非点収差法が採用されている。斯かるフォーカシング制御動作に利用される非点収差法、差動非点収差法及びトラッキング制御動作に利用される3ビーム法は、2つのサブビームが各々照射される2つのサブビーム用受光部とメインビームが照射されるメインビーム用受光部が組み込まれている光検出器を設け、この光検出器から得られる信号によりフォーカスエラー信号やトラッキングエラー信号を生成させることによって各制御動作を行うように構成されているが、斯かる技術は、周知であるのでその説明は省略する。
【0007】
また、最近では、信号記録層が1層ではなく2層設けられている光ディスクが製品化されており、斯かる光ディスクに設けられている信号記録層に記録されている信号の読み出し動作を行うことが出来る光ピックアップ装置も製品化されている。
【0008】
2層式の光ディスクに記録されている信号の読み出し動作を行う場合、読み出し動作が行われている方の信号記録層へのフォーカシング制御動作及びトラッキング制御動作が行われるが、読み出し動作が行われていない方の信号記録層からもレーザー光が反射されることになる。読み出し動作が行われていない方の信号記録層から反射されるレーザー光は、一般に迷光と呼ばれており、斯かる迷光が差動非点収差法によるフォーカシング制御動作に使用されるフォーカスエラー信号を生成する光検出器に照射され、この迷光によってフォーカスエラー信号にオフセットが発生したり、振幅変動が発生し、フォーカシング制御動作を正確に行うことが出来ないという問題がある。
【0009】
斯かる迷光による問題を解決する方法として光検出器の形状を迷光による影響を排除する形状にしたものが提案されている。(特許文献1参照。)
【特許文献1】特開2007−42236号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
前述した特許文献に開示されている従来技術は、信号記録層が複数設けられている多層型光ディスクにおける迷光による影響を抑制するものであるが、メインビームを受光する受光部の面積とサブビームを受光する受光部の面積とが略同一にされているので、メインビームから発生する迷光による影響を受けやすいという問題がある。
【0011】
斯かる問題を解決するために最近の光ピックアップ装置の中には、メインビームを受光する受光部の面積に対してサブビームを受光する受光部の面積を小さくして迷光による影響を抑えるようにした技術が開発されている。
【0012】
また、光ディスク装置におけるフォーカシング制御動作は、まず光ピックアップ装置に組み込まれている対物レンズを動作位置、即ちレーザー光を信号記録層に集光させる位置まで大きく変位させる動作を行った後光ディスクの平面振動に伴うフォーカシングのずれを補正するために対物レンズの位置を細かく変位させる動作の組み合わせによって行われる。
【0013】
斯かるフォーカシング制御動作において、対物レンズを動作位置に変位させるとき、光検出器に設けられているサブビーム用受光部及びメインビーム用受光部に照射されるレーザースポットが大きく広がるため、不要なレーザー光、特に光強度が強いメインビームのスポットがサブビーム用受光部に照射され、フォーカシング制御動作に悪影響を与えるという問題が発生する。
【0014】
前述した迷光による問題は、信号の読み出し動作を行っている信号記録層の奥にある信号記録層から反射されるレーザー光の方が信号の読み出し動作を行っている信号記録層の手前にある信号記録層から反射されるレーザー光よりも大きいという特性がある。
【0015】
従って、斯かる迷光による影響を少なくする方法として信号記録層と信号記録層との間に設けられる透明な保護層の厚みを大きくする方法があるが、斯かる方法では保護層の厚みに起因して発生する球面収差量が大きくなるという問題があるだけでなく信号記録層の数を多くすることが出来ないという問題がある。
【0016】
また、前述した光検出器を構成する受光部の形状や面積を変更することによって迷光による影響を改善するように構成された光ピックアップ装置は、信号の読み出し動作を行っている信号記録層の奥に配置されている信号記録層から反射される迷光に対して改善効果が最大になるように設計されるので、更に奥に配置されている信号記録層から反射される迷光による影響を避けることが出来ないという問題がある。
【0017】
即ち、斯かる迷光対策が成された光ピックアップ装置は、2層の信号記録層を備えた光ディスクを想定して設計しているので、3層以上の信号記録層を備えた多層型光ディスクにおける迷光による影響は避けられないという問題がある。更に3層以上の信号記録層を備えた多層型光ディスクにおける迷光対策を光検出器を構成する受光部の形状を変更して対応することは困難である。
【0018】
本発明は、3層以上の信号記録層が設けられている多層型光ディスクから信号を読み出す場合に生じる迷光による問題を解決することが出来る多層型光ディスクを提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明は、少なくとも3層以上の信号記録層が設けられている多層型光ディスクにおいて、信号の読み取り動作を行うレーザー光が入射される面側から連続して配置されている2層の信号記録層に付される偏光反射コートの偏光方向と隣接する信号記録層に付される偏光反射コートの偏光方向とが逆の関係になるように構成したことを特徴とするものである。
【0020】
また、本発明は、少なくとも4層以上の偶数層の信号記録層が設けられている多層型光ディスクにおいて、信号の読み取り動作を行うレーザー光が入射される面側から連続して配置されている2層の信号記録層に付される偏光反射コートの偏光方向と隣接する2層の信号記録層に付される偏光反射コートの偏光方向とが逆の関係になるように構成したことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0021】
本発明の多層型光ディスクは、信号の読み取り動作を行うレーザー光が入射される面側から連続して配置されている2層の信号記録層に付される偏光反射コートの偏光方向と隣接する信号記録層に付される偏光反射コートの偏光方向とが逆の関係になるように構成したので、光ピックアップ装置から照射されるレーザー光の偏光方向を切り換えることによって読み出し動作を行う信号記録層を選択するように構成すれば迷光による影響を無くすることが出来る。
【実施例】
【0022】
図1、図2、図3及び図4は各々本発明に係る多層型光ディスクと対物レンズとの異なる動作状態を示す断面図、図5は本発明の多層型光ディスクに記録されている信号の読み出し動作を行う光ピックアップ装置の一実施例を示す構成図である。
【0023】
図1に示す断面図のように本発明に係る多層型光ディスクDは、例えば光ピックアップ装置から照射されるレーザー光が入射される入射面D1側から第1信号記録層L1、第2信号記録層L2、第3信号記録層L3及び第4信号記録層L4の4つの信号記録層が設けられており、入射面D1と第1信号記録層L1との間、第1信号記録層L1と第2信号記録層L2との間、第2信号記録層L2と第3信号記録層L3との間及び第3信号記録層L3と第4信号記録層L4との間には夫々透明な保護層G1、G2、G3及びG4が設けられている。
【0024】
また、本発明に係る多層型光ディスクDは、前述した第1信号記録層L1、第2信号記録層L2、第3信号記録層L3及び第4信号記録層L4の各信号記録層におけるレーザー光が入射される側の面には、夫々第1偏光反射コートP1、第2偏光反射コートP2、第3偏光反射コートP3及び第4偏光反射コートP4が付されている。
【0025】
そして、斯かる構成において、入射面D1側に設けられている第1信号記録層L1及び第2信号記録層L2に付されている第1偏光反射コートP1及び第2偏光反射コートP2の偏光方向と奥側に設けられている信号記録層である第3信号記録層L3及び第4信号記録層L4に付されている第3偏光反射コートP3及び第4偏光反射コートP4の偏光方向とが逆になるようにされている。
【0026】
即ち、例えば第1信号記録層L1及び第2信号記録層L2に付されている第1偏光反射コートP1及び第2偏光反射コートP2の偏光方向を直線偏光光のP方向になるように設定し、第3信号記録層L3及び第4信号記録層L4に付されている第3偏光反射コートP3及び第4偏光反射コートP4の偏光方向を直線偏光光のS方向になるように設定されている。
【0027】
斯かる構成の多層型光ディスクDにおいて、第1信号記録層L1に付されている第1偏光反射コートP1及び第2信号記録層L2に付されている第2偏光反射コートP2は、P偏光光を反射させるが、S偏光光は透過させるように作用することになる。また、第3信号記録層L3に付されている第3偏光反射コートP3及び第4信号記録層L4に付されている第4偏光反射コートP4は、S偏光光を反射させるが、P偏光光は透過させるように作用することになる。
【0028】
また、斯かる構成の多層型光ディスクDにおいて、第1信号記録層L1及び第1偏光反射コートP1より構成される信号層は入射されるP偏光光の全てを反射させるものではなく、第2信号記録層L2に記録されている信号の読み出し動作を行うために必要なレベルのレーザー光を透過させることが出来るように構成されている。そして、第3信号記録層L3及び第3偏光反射コートP3より構成される信号層は入射されるS偏光光の全てを反射させるものではなく、第4信号記録層L4に記録されている信号の読み出し動作を行うために必要なレベルのレーザー光を透過させることが出来るように構成されている。
【0029】
以上に説明したように本発明の多層型光ディスクDは構成されているが、次に斯かる構成の多層型光ディスクDの各信号記録層に記録されている信号の読み出し動作を行うことが出来る光ピックアップ装置について、図5に示す実施例を参照にして説明する。
【0030】
図5において、1はレーザー駆動回路から供給される駆動信号に対応した出力のレーザー光を放射するレーザーダイオードであり、例えばS偏光光のレーザー光を放射するように構成されている。斯かる構成において、信号の読み出し動作を行う信号記録層に応じてレーザーダイオード1に供給される駆動信号の大きさを変更制御するように構成されている。
【0031】
2は前記レーザーダイオード1から放射されるレーザー光が入射される回折格子であり、メインビームである0次光とサブビームである+1次光及び−1次光より成るレーザー光を生成出射する作用を成すものである。
【0032】
3は前記回折格子2から出射されるレーザー光が入射される偏光ビームスプリッタであり、多層型光ディスクDに照射されるレーザー光を透過させるとともにレーザー光の出力を制御するべく設けられているフロントモニター用ダイオード4へ照射されるモニター用レーザー光を反射させる制御膜3aが設けられている。また、前記制御膜3aは後述するように多層型光ディスクDに設けられている各信号記録層から反射される戻り光を制御用レーザー光として反射させる作用も成すように構成されている。
【0033】
前記偏光ビームスプリッタ3に設けられている制御膜3aは、例えばS偏光光の半分の光量のレーザー光を透過させるとともに半分の光量のレーザー光を反射させるように構成されている。
【0034】
5は前記偏光ビームスプリッタ3の制御膜3aを透過したレーザー光が入射されるコリメートレンズであり、入射されるレーザー光を平行光であるレーザー光に変更する作用を成すものである。6は前記レーザー光が入射される反射ミラーであり、入射されたレーザー光の全てを多層型光ディスクD方向へ反射させる作用を成すものである。斯かる反射ミラー6は、一般的には立ち上げミラーと呼ばれている。
【0035】
7は前記反射ミラー6から反射されたレーザー光が入射される対物レンズであり、多層型光ディスクDに設けられている各信号記録層に絞ったレーザー光として集光させる作用を成すものである。また、前記対物レンズ7は、多層型光ディスクDの信号面に対して垂
直方向への変位動作によってフォーカシング制御動作を行うとともに多層型光ディスクDの径方向への変位動作によってトラッキング制御動作を行うように構成されている。斯かる動作を行う対物レンズは、例えば4本の支持ワイヤーにてフォーカシング制御方向及びトラッキング制御方向への変位動作を可能に支持されているレンズホルダーと呼ばれる部材上に固定されているが、斯かる構成は周知であるので、その説明は省略する。
【0036】
前記対物レンズ7の集光動作によって多層型光ディスクDの各信号記録層に照射されたレーザー光は前記信号記録層から反射された戻り光として光ディスクD側から前記対物レンズ7に入射される。前記対物レンズ7に入射された戻り光は、反射ミラー6及びコリメートレンズ5を通して前記偏光ビームスプリッタ3に入射される。
【0037】
このようにして、前記偏光ビームスプリッタ3に入射された戻り光は該偏光ビームスプリッタ3に形成されている制御膜3aによって制御用レーザー光として反射されるように構成されている。
【0038】
8は前記偏光ビームスプリッタ3の制御膜3aにて反射された制御用レーザー光が入射されるセンサーレンズであり、該制御用レーザー光をPDICと呼ばれる光検出器9に設けられている受光部に集光レーザー光として照射させる作用を有している。また、前記センサーレンズ8にはシリンドリカルレンズ等が組み込まれており、非点収差法によるフォーカシング制御動作を行うために非点収差を発生させるように構成されているが、斯かる点は周知であるので、その説明は省略する。
【0039】
10は前記コリメートレンズ5と反射ミラー6との間の光路内に設けられているとともに直線偏光光の偏光方向を選択的に切換える偏光方向制御板であり、矢印A方向へ変位した第1動作位置とB方向へ変位した第2動作位置との間を変位可能に設けられている。11は前記偏光方向制御板10に設けられている1/2波長板であり、該偏光方向制御板10が図示した第1動作位置にあるとき光路内に配置されるように構成されている。12は前記偏光方向制御板10に設けられている透孔であり、該偏光方向制御板10が図示した状態より矢印B方向に変位した第2動作位置にあるとき光路内に配置されるように構成されている。
【0040】
斯かる構成の光ピックアップ装置において、光検出器9に組み込まれているメインビームを受光する受光部及びサブビームを受光する受光部の形状は、信号の読み出し動作を行う信号記録層の奥、即ち隣接して配置されている信号記録層から反射される戻り光、即ち迷光による悪影響を最大限排除するように設計されている。
【0041】
以上に説明したように本発明の多層型光ディスクDに設けられている複数の信号記録層に記録されている信号の読み出し動作を行うことが出来る光ピックアップ装置は構成されているが、次にその読み出し動作について説明する。
【0042】
まず、第1信号記録層L1に記録されている信号を読み出す場合の動作について説明する。第1信号記録層L1にはP方向の偏光光を反射させる第1偏光反射コートP1が付されているので、偏光方向制御板10は図5に示す第1動作位置に変位保持された状態にある。即ち、前記偏光方向制御板10に設けられている1/2波長板11がレーザー光の光路内に配置された状態にある。
【0043】
斯かる状態において、光ディスク装置に組み込まれている制御回路から第1信号記録層L1に記録されている信号の読み出し動作を行うための命令信号が出力されると、光ピックアップ装置に組み込まれているレーザーダイオード駆動回路からレーザーダイオード1に対して第1信号記録層L1に記録されている信号の読み出し動作を行うために必要な大
きさのレーザー光を放射させるための駆動信号が供給される。
【0044】
斯かる駆動信号がレーザーダイオード1に供給されると該レーザーダイオード1からS偏光光であるとともに第1信号記録層L1に記録されている信号を読み出すために必要な大きさのレーザー光が放射される。前記レーザーダイオード1から放射されたレーザー光は、回折格子2に入射され、該回折格子2によってメインビームとサブビームより成るレーザー光として出射される。
【0045】
前記回折格子2から出射されたレーザー光は、偏光ビームスプリッタ3に入射され、該偏光ビームスプリッタ3に設けられている制御膜3aによって透過レーザー光と反射レーザー光とに分離される。前記制御膜3aはS偏光光レーザー光の半分の光量を透過させるとともに半分の光量を反射させるように構成されているので、入射されるレーザー光の半分を信号の読み出し動作を行うためのレーザー光としてコリメートレンズ5の方向へ透過させるとともに残りの半分をモニター用のレーザー光としてフロントモニター用ダイオード4方向へ反射させることになる。
【0046】
前記偏光ビームスプリッタ3に設けられている制御膜3aによってモニター用のレーザー光として反射されたレーザー光はフロントモニター用ダイオード4に照射されるので、該フロントモニター用ダイオード4からレーザー光のレベルに対応した大きさの信号、即ちモニター信号が得られることになる。従って、斯かるモニター信号をレーザーダイオード1に駆動信号を供給するべく設けられているレーザーダイオード駆動回路に帰還させることによってレーザー光の強度を所望の値になるように制御することが出来る。斯かる動作を行う回路等は周知であるのでその説明は省略する。
【0047】
前記偏光ビームスプリッタ3に設けられている制御膜3aを信号の読み出し動作を行うためのレーザー光として透過したレーザー光はコリメートレンズ5に入射され、該コリメートレンズ5によって平行光に変更される。前記コリメートレンズ5によって平行光に変更されたレーザー光は、偏光方向制御板10に設けられている1/2波長板11を透過して反射ミラー6に入射され、該反射ミラー6にて対物レンズ7方向へ反射されることになる。
【0048】
前記反射ミラー6にて反射されて対物レンズ7に入射されるレーザー光の偏光方向は前記1/2波長板11による偏光方向の変換作用よってS偏光光からP偏光光に変換されている。図1は斯かるP偏光光のレーザー光が前記対物レンズ7によって第1信号記録層L1に集光された状態を示すものであり、同図より明らかなように第1信号記録層L1にレーザー光が集光されるとともに一部のレーザー光は破線で示すように該第1信号記録層L1を透過することになる。
【0049】
前記第1信号記録層L1に集光されたレーザー光はP偏光光であるため、該第1信号記録層L1に付されている第1偏光反射コートP1にて反射される。前記第1偏光反射コートP1にて反射されたレーザー光は、対物レンズ7に光ディスクD側から入射されるので、反射ミラー6、偏光方向制御板10に設けられている1/2波長板11及びコリメートレンズ5を介して偏光ビームスプリッタ3に入射される。
【0050】
前記偏光ビームスプリッタ3に入射される第1信号記録層L1からの反射光であるレーザー光の偏光方向は前記1/2波長板11の偏光作用によってP偏光光からS偏光光に変換されているので、該偏光ビームスプリッタ3に設けられている制御膜3aによって光量の半分がセンサーレンズ8側に反射されることになる。
【0051】
前記制御膜3aにて反射されて前記センサーレンズ8に入射されたレーザー光は、該セ
ンサーレンズ8によって非点収差を付加されて光検出器9に照射される。このようにしてレーザー光が光検出器9に照射されると、該光検出器9に組み込まれている4分割センサー(図示せず)等によるフォーカシングエラー信号、トラッキングエラー信号及びデータ信号の生成動作が行われ、斯かる信号に基づくフォーカシング制御動作、トラッキング制御動作及びデータ信号の復調動作が行われるが、斯かる動作は周知であるのでその説明は省略する。
【0052】
斯かる動作によって多層型光ディスクDに設けられている第1信号記録層L1に記録されている信号の光ピックアップ装置による読み出し動作は行われるが、斯かる動作が行われるとき、前述したように第1信号記録層L1に集光されるレーザー光の一部が該第1信号記録層L1を透過する。
【0053】
前記第1信号記録層L1を透過したP偏光光であるレーザー光は、第1信号記録層L1の奥に隣接して配置されている第2信号記録層L2に照射される。前記第2信号記録層L2にはP偏光反射コートである第2偏光反射コートP2が付されているので、該レーザー光は該第2偏光反射コートP2によって図1の破線で示すように第1信号記録層L1側に反射されることになる。
【0054】
前記第2信号記録層L2に付されている第2偏光反射コートP2から第1信号記録層L1側に反射された戻り光は、該第1信号記録層L1を透過した後対物レンズ7に光ディスクD側から入射される。斯かる戻り光は、前述した第1信号記録層L1から反射されるレーザー光と同様に反射ミラー6、偏光方向制御板10に設けられている1/2波長板11及びコリメートレンズ5を介して偏光ビームスプリッタ3に入射される。
【0055】
このようにして偏光ビームスプリッタ3に入射される第2信号記録層L2からの反射光であるレーザー光の偏光方向は前記1/2波長板11の偏光作用によってP偏光光からS偏光光に変換されているので、該偏光ビームスプリッタ3に設けられている制御膜3aによって光量の半分がセンサーレンズ8側に反射されることになる。
【0056】
前記制御膜3aにて反射されて前記センサーレンズ8に入射されたレーザー光は、迷光と呼ばれるレーザー光であり、斯かるレーザー光は、該センサーレンズ8によって非点収差を付加されて光検出器9に照射されることになる。このようにして迷光であるレーザー光が光検出器9に組み込まれている受光部に照射されるが、斯かる受光部は隣接する信号記録層から反射されて該受光部に照射される迷光による悪影響を最大限排除するように設計されているので、フォーカシング制御動作、トラッキング制御動作及びデータ信号の復調動作を支障なく行うことが出来る。
【0057】
このようにして第2信号記録層L2から反射されるレーザー光である迷光に対する対策は行われるが、次に前記第2信号記録層L2を透過するレーザー光について説明する。前記第2信号記録層L2に照射されるレーザー光は、図1の破線で示すように該第2信号記録層L2にて反射されるとともに一部は透過する。
【0058】
前記第2信号記録層L2を透過したレーザー光は、第3信号記録層L3に照射されるが、該第3信号記録層L3にはS偏光反射コートである第3偏光反射コートP3が付されているので、該レーザー光は図1の破線で示すように第3信号記録層L3を透過することになる。従って、前記第3信号記録層L3からレーザー光が反射されないので、対物レンズ7に対して迷光と呼ばれる不要な戻り光が入射されることはない。
【0059】
また、第3信号記録層L3を透過したレーザー光は第4信号記録層L4に照射されるが、該第4信号記録層L4にもS偏光反射コートである第4偏光反射コートP4が付されて
いるので、該レーザー光は第3信号記録層L3と同様に第4信号記録層L4を透過することになる。従って、前記第4信号記録層L4からレーザー光が反射されないので、対物レンズ7に対して迷光と呼ばれる不要な戻り光が入射されることはない。
【0060】
前述したように第1信号記録層L1に記録されている信号の読み出し動作を行う場合に第3信号記録層L3及び第4信号記録層L4に照射されるレーザー光は、該第3信号記録層L3及び第4信号記録層L4を透過するため迷光による悪影響を確実に排除することが出来るので、該第1信号記録層L1に記録されている信号の読み出し動作を正確に行うことが出来る。
【0061】
以上に説明したように第1信号記録層L1に記録されている信号の読み出し動作は行われるが、次に第2信号記録層L2に記録されている信号を読み出す場合の動作について説明する。
【0062】
第2信号記録層L2にはP方向の偏光光を反射させる第2偏光反射コートP2が付されているので、光ピックアップ装置に組み込まれている偏光方向制御板10は、第1信号記録層L1に記録されている信号の読み出し動作時と同様に図5に示す第1動作位置に変位保持された状態にある。
【0063】
斯かる状態において、光ディスク装置に組み込まれている制御回路から第2信号記録層L2に記録されている信号の読み出し動作を行うための命令信号が出力されると、光ピックアップ装置に組み込まれているレーザーダイオード駆動回路からレーザーダイオード1に対して第2信号記録層L2に記録されている信号の読み出し動作を行うために必要な大きさのレーザー光を放射させるための駆動信号が供給される。
【0064】
斯かる駆動信号がレーザーダイオード1に供給されると該レーザーダイオード1からS偏光光であるとともに第2信号記録層L2に記録されている信号を読み出すために必要な大きさのレーザー光が放射される。前記レーザーダイオード1から放射されたレーザー光は、前述した第1信号記録層L1に記録されている信号の読み出し動作時と同様に回折格子2に入射され、該回折格子2によってメインビームとサブビームより成るレーザー光として出射される。
【0065】
そして、前記回折格子2から出射されたレーザー光は、偏光ビームスプリッタ3に入射され、前述したように該偏光ビームスプリッタ3に設けられている制御膜3aによって透過レーザー光と反射レーザー光とに分離される。前記制御膜3aにて反射されたレーザー光はモニター用のレーザー光としてフロントモニター用ダイオード4に照射されるので、前述したモニター動作によってレーザー光の強度を所望の値になるように制御することが出来る。
【0066】
また、前記偏光ビームスプリッタ3に設けられている制御膜3aを信号の読み出し動作を行うためのレーザー光として透過したレーザー光はコリメートレンズ5に入射され、該コリメートレンズ5によって平行光に変更される。前記コリメートレンズ5によって平行光に変更されたレーザー光は、第1動作位置にある偏光方向制御板10に設けられている1/2波長板11を透過して反射ミラー6に入射され、該反射ミラー6にて対物レンズ7方向へ反射されることになる。
【0067】
前記反射ミラー6にて反射されて対物レンズ7に入射されるレーザー光の偏光方向は偏光素子である1/2波長板11を透過しているので、P偏光光に変換されている。図2は斯かるP偏光光のレーザー光が前記対物レンズ7によって第2信号記録層L2に集光された状態を示すものであり、同図より明らかなように第1信号記録層L1を透過して第2信
号記録層L2にレーザー光が集光されるとともに一部のレーザー光は破線で示すように該第2信号記録層L2を透過することになる。
【0068】
前記第2信号記録層L2に集光されるレーザー光はP偏光光であるため、第1信号記録層L1に付されているP偏光反射コートである第1偏光反射コートP1にて一部が反射されるとともにその外のレーザー光が第2信号記録層L2に集光されることになる。前記第1偏光反射コートP1にて反射されるレーザー光は対物レンズ7に入射されるが、このようにして対物レンズ7に入射されて光検出器9へ戻る戻り光のレベルは非常に小さく、光ピックアップ装置の制御動作に悪影響を与えることはない。
【0069】
前記第2信号記録層L2に集光されたレーザー光は、該第2信号記録層L2に付されている第2偏光反射コートP2にて反射される。前記第2偏光反射コートP2にて反射されたレーザー光は、第1信号記録層L1を透過するとともに対物レンズ7に光ディスクD側から入射されるので、反射ミラー6、偏光方向制御板10に設けられている1/2波長板11及びコリメートレンズ5を介して偏光ビームスプリッタ3に入射される。
【0070】
前記偏光ビームスプリッタ3に入射される第2信号記録層L2からの反射光であるレーザー光の偏光方向はS偏光光に変換されているので、該偏光ビームスプリッタ3に設けられている制御膜3aによって光量の半分がセンサーレンズ8側に反射されることになる。
【0071】
前記制御膜3aにて反射されて前記センサーレンズ8に入射されたレーザー光は、該センサーレンズ8によって非点収差を付加されて光検出器9に照射される。このようにしてレーザー光が光検出器9に照射されると、該光検出器9に組み込まれている4分割センサー等によるフォーカシングエラー信号、トラッキングエラー信号及びデータ信号の生成動作が行われ、斯かる信号に基づくフォーカシング制御動作、トラッキング制御動作及びデータ信号の復調動作が前述した第1信号記録層L1に記録されている信号の読み出し動作と同様に行われることになる。
【0072】
斯かる動作によって多層型光ディスクDに設けられている第2信号記録層L2に記録されている信号の光ピックアップ装置による読み出し動作は行われるが、斯かる動作が行われるとき、前述したように第2信号記録層L2に集光されるレーザー光の一部が該第2信号記録層L2を透過する。
【0073】
前記第2信号記録層L2を透過したP偏光光であるレーザー光は、第2信号記録層L2の奥に隣接して配置されている第3信号記録層L3に照射されるが、該第3信号記録層L3にはS偏光反射コートである第3偏光反射コートP3が付されているので、該レーザー光は図2の破線で示すように第3信号記録層L3を透過することになる。従って、前記第3信号記録層L3からレーザー光が反射されないので、対物レンズ7に対して迷光と呼ばれる不要な戻り光が入射されることはない。従って、光ピックアップ装置の第2信号記録層L2に記録されている信号の読み出し動作に第3信号記録層L3が悪影響を与えることはない。
【0074】
また、前記第3信号記録層L3を透過したレーザー光が第3信号記録層L3に隣接して配置されている第4信号記録層L4に照射されるが、該第4信号記録層L4にもS偏光反射コートである第4偏光反射コートP4が付されているので、該レーザー光は図2の破線で示すように第4信号記録層L4を透過することになる。従って、前記第4信号記録層L4からレーザー光が反射されないので、対物レンズ7に対して迷光と呼ばれる不要な戻り光が入射されることはない。従って、光ピックアップ装置の第2信号記録層L2に記録されている信号の読み出し動作に第4信号記録層L4が悪影響を与えることはない。
【0075】
以上に説明したように第1信号記録層L1及び第2信号記録層L2に記録されている信号の読み出し動作は行われるが、次に第3信号記録層L3に記録されている信号の読み出し動作について説明する。
【0076】
第3信号記録層L3にはS方向の偏光光を反射させる第3偏光反射コートP3が付されているので、光ピックアップ装置に組み込まれている偏光方向制御板10は図5に示す第1動作位置の反対側、即ち矢印B方向に変位した第2動作位置に変位せしめられる。前記偏光方向制御板10が第2動作位置にあるとき、前記偏光方向制御板10に設けられている透孔12がレーザー光の光路内に配置された状態になる。
【0077】
斯かる状態において、光ディスク装置に組み込まれている制御回路から第3信号記録層L3に記録されている信号の読み出し動作を行うための命令信号が出力されると、光ピックアップ装置に組み込まれているレーザーダイオード駆動回路からレーザーダイオード1に対して第3信号記録層L3に記録されている信号の読み出し動作を行うために必要な大きさのレーザー光を放射させるための駆動信号が供給される。
【0078】
斯かる駆動信号がレーザーダイオード1に供給されると該レーザーダイオード1からS偏光光であるとともに第3信号記録層L3に記録されている信号を読み出すために必要な大きさのレーザー光が放射される。前記レーザーダイオード1から放射されたレーザー光は、前述した第1信号記録層L1及び第2信号記録層L2に記録されている信号の読み出し動作時と同様に回折格子2に入射され、該回折格子2によってメインビームとサブビームより成るレーザー光として出射される。
【0079】
そして、前記回折格子2から出射されたレーザー光は、偏光ビームスプリッタ3に入射され、前述したように該偏光ビームスプリッタ3に設けられている制御膜3aによって透過レーザー光と反射レーザー光とに分離される。前記制御膜3aにて反射されたレーザー光はモニター用のレーザー光としてフロントモニター用ダイオード4に照射されるので、前述したモニター動作によってレーザー光の強度を所望の値になるように制御することが出来る。
【0080】
また、前記偏光ビームスプリッタ3に設けられている制御膜3aを信号の読み出し動作を行うためのレーザー光として透過したレーザー光はコリメートレンズ5に入射され、該コリメートレンズ5によって平行光に変更される。前記コリメートレンズ5によって平行光に変更されたレーザー光は、第2動作位置にある偏光方向制御板10に設けられている透孔12を透過して反射ミラー6に入射され、該反射ミラー6にて対物レンズ7方向へ反射されることになる。
【0081】
前記反射ミラー6にて反射されて対物レンズ7に入射されるレーザー光の偏光方向は偏光素子である1/2波長板11を透過していないので、S偏光光のままである。図3は斯かるS偏光光のレーザー光が前記対物レンズ7の集光動作によって第3信号記録層L3に集光された状態を示すものであり、同図より明らかなように第1信号記録層L1及び第2信号記録層L2を透過して第3信号記録層L3に集光されるとともに一部のレーザー光は破線で示すように該第3信号記録層L3を透過することになる。
【0082】
前記第1信号記録層L1及び第2信号記録層L2には、P方向の偏光光を反射させる第1偏光反射コートP1及び第2偏光反射コートP2が付されているので、S偏光光であるレーザー光は、前記第1信号記録層L1及び第2信号記録層L2によって減衰されることなく第3信号記録層L3に照射されることになる。
【0083】
前記第3信号記録層L3にはS方向の偏光光を反射させる第3偏光反射コートP3が付
されているので、一部のレーザー光が反射されるとともにその外のレーザー光は第3信号記録層L3を透過する。
【0084】
前記第3偏光反射コートP3にて反射されたレーザー光は、対物レンズ7に光ディスクD側から入射されるので、反射ミラー6、偏光方向制御板10に設けられている透孔12及びコリメートレンズ5を介して偏光ビームスプリッタ3に入射される。
【0085】
前記偏光ビームスプリッタ3に入射される第3信号記録層L3からの反射光であるレーザー光の偏光方向はS偏光光であるので、該偏光ビームスプリッタ3に設けられている制御膜3aによって光量の半分がセンサーレンズ8側に反射されることになる。
【0086】
前記制御膜3aにて反射されて前記センサーレンズ8に入射されたレーザー光は、該センサーレンズ8によって非点収差を付加されて光検出器9に照射される。このようにしてレーザー光が光検出器9に照射されると、該光検出器9に組み込まれている4分割センサー等によるフォーカシングエラー信号、トラッキングエラー信号及びデータ信号の生成動作が行われ、斯かる信号に基づくフォーカシング制御動作、トラッキング制御動作及びデータ信号の復調動作が前述した第1信号記録層L1及び第2信号記録層L2に記録されている信号の読み出し動作時と同様に行われる。
【0087】
斯かる動作によって多層型光ディスクDに設けられている第3信号記録層L3に記録されている信号の光ピックアップ装置による読み出し動作は行われるが、斯かる動作が行われるとき、前述したように第3信号記録層L3に集光されるレーザー光の一部が該第3信号記録層L3を透過する。
【0088】
前記第3信号記録層L3を透過したS偏光光であるレーザー光は、第3信号記録層L3の奥に隣接して配置されている第4信号記録層L4に照射される。前記第4信号記録層L4にはS偏光反射コートである第4偏光反射コートP4が付されているので、該レーザー光は該第4偏光反射コートP4によって図3の破線で示すように第3信号記録層L3側に反射されることになる。
【0089】
前記第4信号記録層L4に付されている第4偏光反射コートP4から第3信号記録層L3側に反射された戻り光は、該第3信号記録層L3、第2信号記録層L2及び第1信号記録層L1を透過した後対物レンズ7に光ディスクD側から入射される。斯かる戻り光は、前述した第3信号記録層L3から反射されるレーザー光と同様に反射ミラー6、偏光方向制御板10に設けられている透孔12及びコリメートレンズ5を介して偏光ビームスプリッタ3に入射される。
【0090】
このようにして偏光ビームスプリッタ3に入射される第4信号記録層L4からの反射光であるレーザー光はS偏光光であるので、該偏光ビームスプリッタ3に設けられている制御膜3aによって光量の半分がセンサーレンズ8側に反射されることになる。
【0091】
前記制御膜3aにて反射されて前記センサーレンズ8に入射されたレーザー光は、迷光と呼ばれるレーザー光であり、斯かるレーザー光は、該センサーレンズ8によって非点収差を付加されて光検出器9に照射されることになる。このようにして迷光であるレーザー光が光検出器9に組み込まれている受光部に照射されるが、斯かる受光部は隣接する信号記録層から反射されて該受光部に照射される迷光による悪影響を最大限排除するように設計されているので、フォーカシング制御動作、トラッキング制御動作及びデータ信号の復調動作を支障なく行うことが出来る。
【0092】
以上に説明したように第1信号記録層L1、第2信号記録層L2及び第3信号記録層L
3に記録されている信号の読み出し動作は行われるが、次に第4信号記録層L4に記録されている信号の読み出し動作について説明する。
【0093】
第4信号記録層L4にはS方向の偏光光を反射させる第4偏光反射コートP4が付されているので、光ピックアップ装置に組み込まれている偏光方向制御板10は第3信号記録層L3に記録されている信号の読み出し動作時と同様に第1動作位置の反対側である第2動作位置に変位せしめられる。前記偏光方向制御板10が第2動作位置にあるとき、前記偏光方向制御板10に設けられている透孔12がレーザー光の光路内に配置された状態になる。
【0094】
斯かる状態において、光ディスク装置に組み込まれている制御回路から第4信号記録層L4に記録されている信号の読み出し動作を行うための命令信号が出力されると、光ピックアップ装置に組み込まれているレーザーダイオード駆動回路からレーザーダイオード1に対して第4信号記録層L4に記録されている信号の読み出し動作を行うために必要な大きさのレーザー光を放射させるための駆動信号が供給される。
【0095】
斯かる駆動信号がレーザーダイオード1に供給されると該レーザーダイオード1からS偏光光であるとともに第4信号記録層L4に記録されている信号を読み出すために必要な大きさのレーザー光が放射される。前記レーザーダイオード1から放射されたレーザー光は、前述した各信号記録層に記録されている信号の読み出し動作時と同様に回折格子2に入射され、該回折格子2によってメインビームとサブビームより成るレーザー光として出射される。
【0096】
そして、前記回折格子2から出射されたレーザー光は、偏光ビームスプリッタ3に入射され、前述したように該偏光ビームスプリッタ3に設けられている制御膜3aによって透過レーザー光と反射レーザー光とに分離される。前記制御膜3aにて反射されたレーザー光はモニター用のレーザー光としてフロントモニター用ダイオード4に照射されるので、前述したモニター動作によってレーザー光の強度を所望の値になるように制御することが出来る。
【0097】
また、前記偏光ビームスプリッタ3に設けられている制御膜3aを信号の読み出し動作を行うためのレーザー光として透過したレーザー光はコリメートレンズ5に入射され、該コリメートレンズ5によって平行光に変更される。前記コリメートレンズ5によって平行光に変更されたレーザー光は、第2動作位置にある偏光方向制御板10に設けられている透孔12を透過して反射ミラー6に入射され、該反射ミラー6にて対物レンズ7方向へ反射されることになる。
【0098】
前記反射ミラー6にて反射されて対物レンズ7に入射されるレーザー光の偏光方向は偏光素子である1/2波長板11を透過していないので、S偏光光のままである。図4は斯かるS偏光光のレーザー光が前記対物レンズ7の集光動作によって第4信号記録層L4に集光された状態を示すものであり、同図より明らかなように第1信号記録層L1、第2信号記録層L2及び第3信号記録層L3を透過して第4信号記録層L4に集光されるとともに一部のレーザー光は破線で示すように該第4信号記録層L4を透過することになる。
【0099】
前記第1信号記録層L1及び第2信号記録層L2には、P方向の偏光光を反射させる第1偏光反射コートP1及び第2偏光反射コートP2が付されているので、S偏光光であるレーザー光は、前記第1信号記録層L1及び第2信号記録層L2によって減衰されることなく第3信号記録層L3に照射されることになる。
【0100】
前記第3信号記録層L3にはS方向の偏光光を反射させる第3偏光反射コートP3が付
されているので、一部のレーザー光が該第3偏光反射コートP3によって反射されるとともにその外のレーザー光は第3信号記録層L3を透過して第4信号記録層L4に集光されることになる。
【0101】
前記第4信号記録層L4に集光されるレーザー光はS偏光光であるため、第3信号記録層L3に付されているS偏光反射コートである第3偏光反射コートP3にて一部が反射されるとともにその外のレーザー光が第4信号記録層L4に集光されることになる。前記第3偏光反射コートP3にて反射されるレーザー光は対物レンズ7に入射されるが、このようにして対物レンズ7に入射されて光検出器9へ戻る戻り光のレベルは非常に小さく、光ピックアップ装置の制御動作に悪影響を与えることはない。
【0102】
また、前記第4信号記録層L4の奥には信号記録層等の反射層が設けられていないので、前記第4信号記録層L4を透過したレーザー光は対物レンズ側に反射されることはなく、光ピックアップ装置の制御動作に対して何等影響を与えることはない。
【0103】
前記第4信号記録層L4に集光されたレーザー光は、該第4信号記録層L4に付されている第4偏光反射コートP4にて反射される。前記第4偏光反射コートP4にて反射されたレーザー光は、第3信号記録層L3、第2信号記録層L2及び第1信号記録層L1を透過するとともに対物レンズ7に光ディスクD側から入射されるので、反射ミラー6、偏光方向制御板10に設けられている透孔12及びコリメートレンズ5を介して偏光ビームスプリッタ3に入射される。
【0104】
前記偏光ビームスプリッタ3に入射される第4信号記録層L4からの反射光であるレーザー光はS偏光光であるので、該偏光ビームスプリッタ3に設けられている制御膜3aによって光量の半分がセンサーレンズ8側に反射されることになる。
【0105】
前記制御膜3aにて反射されて前記センサーレンズ8に入射されたレーザー光は、該センサーレンズ8によって非点収差を付加されて光検出器9に照射される。このようにしてレーザー光が光検出器9に照射されると、該光検出器9に組み込まれている4分割センサー等によるフォーカシングエラー信号、トラッキングエラー信号及びデータ信号の生成動作が行われ、斯かる信号に基づくフォーカシング制御動作、トラッキング制御動作及びデータ信号の復調動作が前述した各信号記録層に記録されている信号の読み出し動作と同様に行われることになる。
【0106】
前述したように第1信号記録層L1、第2信号記録層L2、第3信号記録層L3及び第4信号記録層L4に記録されている信号の読み出し動作は行われるが、各信号記録層に記録されている信号の読み出し動作を行う場合の相違点は、レーザーダイオード1に供給される駆動信号の大きさを変更する点と集光動作を行う信号記録層を検出するための動作を行う点にある。
【0107】
即ち、第1信号記録層L1及び第2信号記録層L2に記録されている信号の読み出し動作は、P方向の偏光光にて行うが、第2信号記録層L2は第1信号記録層L1よりも入射面D1から見て奥に配置されているとともに第1信号記録層L1にて光量が減衰されるので、レーザーダイオード1から放射されるレーザー光の強度を大きくする必要があるからである。
【0108】
第2信号記録層L2に記録されている信号の読み出し動作は、前述したようにレーザーダイオード1に供給される駆動信号の大きさを第1信号記録層L1に記録されている信号の読み出し動作を行う場合に比較して大きくする切換動作を行った後に第1信号記録層L1と第2信号記録層L2とを識別する動作を行うことによって行われる。
【0109】
斯かる信号記録層の識別動作は、対物レンズ7を多層型光ディスクDの入射面D1に対して離れた位置から近づける方向に移動させるときに得られるフォーカスエラー信号を検出することによって行うことが出来る。即ち、周知のとおり対物レンズ7を光ディスクの信号面に対して垂直方向へ変位させるとS字カーブと呼ばれるフォーカスエラー信号が得られるので、対物レンズ7を入射面D1から離れた位置から近づける方向に移動させると第1信号記録層L1と第2信号記録層L2の位置で2つのS字カーブと呼ばれるフォーカスエラー信号が得られる。
【0110】
このように対物レンズ7を変位させたときに得られるS字カーブの数を検出することによって第1信号記録層L1と第2信号記録層L2とを識別することが出来るので、2つ目のS字カーブが得られた信号記録層が所望の信号記録層である第2信号記録層L2であることを認識することが出来る。従って、第2信号記録層L2に対するフォーカス制御動作及びトラッキング制御動作を行うことによって該第2信号記録層L2に記録されている信号の読み出し動作を行うことが出来る。
【0111】
また、第3信号記録層L3及び第4信号記録層L4に記録されている信号の読み出し動作は、前述したようにS方向の偏光光にて行うが、第4信号記録層L4は第3信号記録層L3よりも入射面D1から見て奥に配置されているとともに第3信号記録層L3にて光量が減衰されるので、レーザーダイオード1から放射されるレーザー光の強度を大きくする必要がある。
【0112】
第4信号記録層L4に記録されている信号の読み出し動作は、前述したようにレーザーダイオード1に供給される駆動信号の大きさを第3信号記録層L3に記録されている信号の読み出し動作を行う場合に比較して大きくする切換動作を行った後に第3信号記録層L3と第4信号記録層L4とを識別する動作を行うことによって行われる。
【0113】
斯かる信号記録層の識別動作は、前述したように対物レンズ7を多層型光ディスクDの入射面D1に対して離れた位置から近づける方向に移動させるときに得られるフォーカスエラー信号を検出することによって行うことが出来る。即ち、対物レンズ7を光ディスクの信号面に対して垂直方向へ変位させるとS字カーブと呼ばれるフォーカスエラー信号が得られるので、対物レンズ7を入射面D1から離れた位置から近づける方向に移動させると第3信号記録層L3と第4信号記録層L4の位置で2つのS字カーブと呼ばれるフォーカスエラー信号が得られる。
【0114】
このように対物レンズ7を変位させたときに得られるS字カーブの数を検出することによって第3信号記録層L3と第4信号記録層L4とを識別することが出来るので、2つ目のS字カーブが得られた信号記録層が所望の信号記録層である第4信号記録層L4であることを認識することが出来る。従って、第4信号記録層L4に対するフォーカス制御動作及びトラッキング制御動作を行うことによって該第4信号記録層L4に記録されている信号の読み出し動作を行うことが出来る。
【0115】
前述したように第3信号記録層L3及び第4信号記録層L4の識別動作は、対物レンズ7を多層型光ディスクDの入射面D1に対して離れた位置から近づける方向に移動させるときに得られるフォーカスエラー信号を検出することによって行うことが出来る。そして、斯かる動作を行うとき、対物レンズ7の移動動作に伴って焦点位置が第1信号記録層L1及び第2信号記録層L2を通過するが、斯かる動作はS偏光光のレーザー光にて行われるので、第1信号記録層L1及び第2信号記録層L2にてレーザー光が反射されることはない。
【0116】
従って、前記第1信号記録層L1及び第2信号記録層L2を焦点位置が通過するときS字カーブ特性を示すフォーカスエラー信号が生成されることはない。それ故、最初のS字カーブ特性は第3信号記録層L3の位置を焦点位置が通過するときに得られ、2つ目のS字カーブ特性は第4信号記録層L4の位置を焦点位置が通過するときに得られることになるので、第3信号記録層L3及び第4信号記録層L4を識別することが出来る。
【0117】
本実施例では信号記録層が4層設けられている多層型光ディスクについて説明したが、3層以上の信号記録層が設けられている多層型光ディスクに実施することが出来る。また、本実施例では、4層、即ち偶数の信号記録層が設けられている多層型光ディスクについて説明したが、3層や5層のような奇数個の信号記録層が設けられている多層型光ディスクに実施することは勿論可能である。
【0118】
また、本発明の多層型光ディスクDに設けられている信号記録層に記録されている信号の読み出し動作を行うレーザー光の偏光方向を選択変更する動作を1/2波長板11が設けられている偏光方向制御板10を第1動作位置と第2動作位置に変位させることによって行うようにしたが、他の構成にすることは勿論可能である。
【図面の簡単な説明】
【0119】
【図1】本発明に係る多層型光ディスクと対物レンズとの関係を示す断面図である。
【図2】本発明に係る多層型光ディスクと対物レンズとの関係を示す断面図である。
【図3】本発明に係る多層型光ディスクと対物レンズとの関係を示す断面図である。
【図4】本発明に係る多層型光ディスクと対物レンズとの関係を示す断面図である。
【図5】本発明に係る多層型光ディスクに記録されている信号の読み出し動作を行う光ピックアップ装置の一実施例を示す構成図である。
【符号の説明】
【0120】
L1 第1信号記録層
L2 第2信号記録層
L3 第3信号記録層
L4 第4信号記録層
P1 第1偏光反射コート
P2 第2偏光反射コート
P3 第3偏光反射コート
P4 第4偏光反射コート
1 レーザーダイオード
3 偏光ビームスプリッタ
5 コリメートレンズ
7 対物レンズ
9 光検出器
10 偏光方向制御板
11 1/2波長板
12 透孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも3層以上の信号記録層が設けられている多層型光ディスクであり、信号の読み取り動作を行うレーザー光が入射される面側から連続して配置されている2層の信号記録層に付される偏光反射コートの偏光方向と隣接する信号記録層に付される偏光反射コートの偏光方向とが逆の関係になるように構成したことを特徴とする多層型光ディスク。
【請求項2】
少なくとも4層以上の偶数層の信号記録層が設けられている多層型光ディスクであり、信号の読み取り動作を行うレーザー光が入射される面側から連続して配置されている2層の信号記録層に付される偏光反射コートの偏光方向と隣接する2層の信号記録層に付される偏光反射コートの偏光方向とが逆の関係になるように構成したことを特徴とする多層型光ディスク。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−61772(P2010−61772A)
【公開日】平成22年3月18日(2010.3.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−229233(P2008−229233)
【出願日】平成20年9月8日(2008.9.8)
【出願人】(000001889)三洋電機株式会社 (18,308)
【出願人】(504464070)三洋オプテックデザイン株式会社 (315)
【Fターム(参考)】