説明

多層成形装置及び多層成形方法

【課題】多層成形品を成形するに際して、簡略な構造の成形装置を用いて製品デザインに自由度を有して高品質な成形品を安価に得ることができる多層成形品の成形装置、及び成形方法を提供すること。
【解決手段】一種類以上の異なる溶融樹脂を金型内に射出充填して多層成形品を成形する多層成形装置に、型閉じして複数のキャビティを形成する一対の金型と、該金型を開閉する型締ユニットと、前記複数のキャビティに溶融樹脂を充填する複数の射出ユニットとを備えて、一方のキャビティで成形した一次成形品を取り出して他方のキャビティにインサートするとともに、インサートした一次成形品の表面と裏面の全面若しくは周縁部を二次成形により積層する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、型閉じして複数のキャビティを形成する金型を用いて、一次成形と二次成形とによって樹脂を積層状態に射出成形して多層成形を行う多層成形装置、及び多層成形方法に関するものである。特に、キャビティの移動や交換を行うことなく多層成形品を得る多層成形装置、及び多層成形方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、色合いの異なる樹脂、または種類の異なる樹脂材料等を用いて一体化した多層成形品を得る成形方法として、キャビティスライド方式或いはキャビティ回転方式等が用いられる。
このうちキャビティスライド方式を用いた多層成形方法は、例えば特許文献1により提案されている。
この成形方法では、第1及び第2の二つの凹部が形成されたスライド金型を備えた固定型と、一つの凹部が形成された可動型を使用する。一次の成形は、スライド金型の第1の凹部と可動型の凹部で形成されるキャビティに溶融樹脂を充填する。次いで、金型を開き、一次成形品を可動型に残したままスライド型を所定の位置に移動させ、再び金型を閉じる。二次の成形は、一次成形品とスライド金型の第2の凹部とで形成されたキャビティに溶融樹脂を充填して多層成形品を得る。
【0003】
上記従来の多層成形品の成形方法に用いる金型には、一次成形及び二次成形用の射出ユニットそれぞれのノズルに連通する、固定型プレートを横切るように形成された固定型スプル孔と、固定型スプル孔を介してスライド金型に形成されたスライド型スプル孔が設けられている。そして、このノズルに連通したスプル孔から一次成形用のキャビティと二次成形用のキャビティに順次溶融樹脂が充填されて多層成形品が成形される構成となっている。
ところで、このようにスライド型に設けたスプル孔を介してキャビティに樹脂を充填する成形用金型では、二次成形に際して不要となるスプルやランナが形成されない構造が要求されることから、ホットランナ等が移動するスライド型の内部に組み込まれる必要がある。また、移動するスライド型と固定プレートとの間でホットランナ等を組み合わせて樹脂流路を形成することは困難である。このため、金型構造が複雑で、さらに価格も高価となる。しかも、型閉した際に形成される成形のためのキャビティが一つであることから、一次成形と二次成形とを同時に行うことができない。
【0004】
一方、キャビティ回転方式を用いた多層成形方法は、例えば特許文献2により提案されている。
この成形方法では、第1及び第2の二つの一次成形用の凹部が形成され可動盤に回動可能に取付けられた可動型と、一つの二次成形用凹部が形成された固定型とを使用する。一次の成形は、可動型の第1の凹部と固定型で形成されたキャビティに溶融樹脂を充填する。次いで、金型を開き、一次成形品を可動型に残したまま所定の位置に回転移動させ、再び金型を閉じる。二次の成形は、一次成形品と固定型の凹部で形成されたキャビティに溶融樹脂を充填して多層成形品を得る。
【0005】
上記キャビティ回転方式を用いた成形方法では、型閉において二つのキャビティを形成することから、スライド金型方式に比べ一次成形と二次成形を同時に行うことができる点で優れている。しかし、可動盤に金型の反転機構を組み込んだ成形装置が必要で、装置が大型化するとともに高価となり、金型に比して投影面積の大きな成形品や複雑な形状の成形品を成形することができない。また、一次成形品を二次成形用のキャビティに移動させる場合、成形品と一体に形成されたランナを取り去る必要があった。このように構成されていることから、上記いずれの方式も一次成形から二次成形に移行するに際して、型開を行った後、金型をスライド或いは回転させて移動させなければならず、成形サイクルに無駄な時間が発生する。また、金型構造が複雑で、成形品の意匠面にゲートの痕跡が残ることや、一次成形樹脂と二次成形樹脂との境界部がずれることで外観不良が発生する。
【特許文献1】特開2000−141406
【特許文献2】特開2007−118214
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の課題は、前記従来技術の問題点に鑑みてなされたもので、多層成形品を成形するに際して、簡略な構造の成形装置を用いて外観品質に優れた多層成形品を安価に得ることができる多層成形品の成形装置、及び成形方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明請求項1に記載の多層成形装置は、型閉じして複数のキャビティを形成する一対の金型と、該金型を開閉する型締ユニットと、前記複数のキャビティに溶融樹脂を充填する複数の射出ユニットとを備えて、一種類以上の異なる溶融樹脂を金型内に射出充填して多層成形品を成形する多層成形装置において、前記複数のキャビティが、一次成形品を成形する一次成形用キャビティと、インサートされた前記一次成形品の表面と裏面の全面、若しくは周縁部を積層可能とする二次成形用キャビティとで構成することとした。
【0008】
本発明請求項2に記載の多層成形方法は、型閉じして複数のキャビティを形成する一対の金型と、該金型を開閉する型締ユニットと、前記複数のキャビティに溶融樹脂を充填する複数の射出ユニットとを備えた多層成形装置を用いて多層成形品を成形する多層成形方法において、一次成形用キャビティに溶融樹脂を供給して一次成形品を成形した後、金型を開いて前記一次成形品を二次成形品キャビティにインサートすると共に、前記一次成形品と二次成形用キャビティとの隙間に溶融樹脂を充填して、前記一次成形品の表面と裏面の全面、若しくは周縁部を積層することとした。
【0009】
本発明請求項3に記載の多層成形方法は、請求項2に記載の発明において、前記複数の射出ユニットの両方又はいずれか一方の射出ユニットに発泡性溶融樹脂を用い、前記キャビティへ充填後に発泡させることとした。
本発明請求項4に記載の多層成形方法は、請求項2又は請求項3のいずれかにに記載の発明において、金属及び樹脂又は天然素材等で予め形成された補用部品を、前記複数のキャビティのいずれか一方にインサートすることとした。
【0010】
本発明請求項5に記載の多層成形方法は、請求項4に記載の発明において、前記補用部品は一次成形用キャビティにインサートされ、一次成形品と一体化されたこととした。
本発明請求項6に記載の多層成形方法は、請求項4に記載の発明において、前記補用部品は二次成形用キャビティにインサートされ、一次成形品と前記補用部品との間に形成された隙間に溶融樹脂を充填して一体化されたこととした。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係る多層成形装置は、型閉じして複数のキャビティを形成する一対の金型と、前記複数のキャビティに溶融樹脂を充填する複数の射出ユニットとを備えたので、複数のキャビティを同時に成形することができ成形サイクルが向上する。そして、一次成形用キャビティで成形した一次成形品を型開の後取り出し二次成形用キャビティにインサートする構成としたので、キャビティをスライドする機構や回転する機構を用いることがないので、金型構造や設備構造が簡略化され、成形装置のコストを低減することができるとともに、成形装置を省スペース化できるという効果を有する。さらには、金型の大きさに比して投影面積の大きな成形品を得ることが可能となる。
また、金型内に所定形状の補用部品がキャビティ内に供給されて成形品と一体化されるので、製品デザインの自由度が向上し、複雑且つ、意匠性に優れた多層成形品得ることができる。
【0012】
本発明に係る多層成形方法は、型閉じして複数のキャビティを形成する一対の金型と、前記複数のキャビティに溶融樹脂を充填する複数の射出ユニットとを備えた多層成形装置を用いたので、複数のキャビティを同時に成形することができる。そして、一次成形用キャビティで成形した一次成形品を型開の後取り出し二次成形用キャビティにインサートする構成としたので、キャビティをスライドする機構や回転する機構を用いることなく多層成形品を得ることができる効果を発現する。
また、二次成形用キャビティにインサートするとともに型閉じして、一次成形品とキャビティとの間に形成された隙間に溶融樹脂を充填するとともに、金型内に所定の形状の補用部品がキャビティ内に供給されて成形品と一体化されるので、製品デザインの自由度が向上し、複雑且つ、意匠性に優れた多層成形品が成形できる。
【0013】
さらに、複数の射出ユニットのいずれか一方の射出ユニットに、発泡性溶融樹脂を用いることとしたので、発泡層を備え、ソフト感を有して軽量化された成形品や、断熱性と遮音性に優れた多層成形品が成形できる。そして、補用部品をインサートしたので、発泡品のスワルマークを隠蔽して外観性に優れた多層成形品を成形できる。
二次成形用キャビティでは、一次成形品の表面と裏面の全面も若しくは周縁部に樹脂を充填して積層することとしたので、一次成形品との境界部にずれが生じることがなく意匠面が成形品の裏面側まで回り込んだ一体感のある外観的に優れた製品を得る。また、裏面側から樹脂を充填することで、意匠面にゲートの痕跡を無くすことができ外観不良を防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の多層成形品の成形装置及び成形方法について実施の形態を説明するが、本発明はこれらに限定されて解釈されるべきものではなく、本発明の範囲を逸脱しない限りにおいて、当業者の知識に基づいて、種々の変更、改良、修正を加え得るものである。例えば、図面は、好適な本発明の実施の形態を表わすものであるが、本発明は図面に示された情報により制限されない。本発明を実施し又は検証する上では、本明細書中に記述されたものと同様の手段若しくは均等な手段が適用され得るが、好適な手段は以下に記述される手段である。なお、以下の記載において、一般的な技術、公知の技術、汎用の技術は省略している。
【0015】
先ず、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。図1は、実施の形態を説明する多層成形装置の概要の説明図であり、図2は、一次成形用キャビティに補用部品をインサートした形態の成形工程を説明する図で、多層成形装置の要部を断面図で模式的に示してある。図3は、二次成形用キャビティに補用部品をインサートした形態の成形工程を説明する図で、多層成形装置の要部を断面図で模式的に示してある。
【0016】
図1に示すように、本発明の一実施例となる多層成形装置100は、図示しない型締装置と、一次成形用及び二次成形用の射出ユニット41、42と、金型3とにより基本構成される。金型3は、可動盤1に取付けられた可動型10と固定盤2に取付けられた固定型20とが型閉した状態で、一次成形用キャビティ7と二次成形用キャビティ8とを形成している。そして、符号51は二次成形用キャビティ8内にインサートされた一次成形品である。可動型10は固定型20に対して接離自在に型の開閉を行うことができる構成となっている。
なお、図示しない金型3の型開閉を行う型締装置は、公知のトグル式型締装置等が好適に用いられる。
【0017】
可動型10は、一次成形用の凸部11と二次成形用の凸部12と二つの凸部が形成され、可動型10のパーティング面13には二次成形用の樹脂流路14が設けられている。
一方、固定型20には、一次成形用のキャビティ面21と二次成形用のキャビティ面22と二つのキャビティ面が形成され、二つのキャビティに溶融樹脂を充填する樹脂流路23、24が設けられている。一次成形用の樹脂流路23はキャビティ面21に直接開口し、二次成形用の樹脂流路24は二次キャビティ面22に直接開口せず、二次キャビティ面22を迂回して設けた構成としている。そして、樹脂流路23、24の末端には、樹脂流路の開閉手段25、26がそれぞれ設けられている。
【0018】
また、固定型20の固定盤取付け面側には、一次成形用及び二次成形用の射出ユニット41、42を備え、一次成形用の射出ユニット41のノズル43は一次成形用の樹脂流路23に、二次成形用の射出ユニット42のノズル44は二次成形用の樹脂流路24に、溶融樹脂を供給する。
可動型10と固定型20とが型閉じした状態で、固定型20に設けた二次成形用の樹脂流路24と、可動型10に設けた二次成形用の樹脂流路14を介して二次成形用キャビティ8とが連通する構成となっている。
【0019】
次に、図2(a)〜(e)により成形方法について説明する。図2(a)〜(e)に示す成形方法は、一次成形用キャビティに補用部品をインサートして積層成形品を得る方法である。
図2(a)は、可動型10が型開された成形開始前の状態を示している。この状態では、樹脂流路の開閉手段25、26は閉じている。可動型10と固定型20とが型閉じした状態で、固定型20に設けた二次成形用の樹脂流路24と可動型10に設けた二次成形用の樹脂流路14を介して二次成形用キャビティと連通する構成となっている。
【0020】
そして、一次成形用の補用部品80が、補用部品の搬送手段5により可動型の一次成形用の凸部11に供給される。供給された補用部品80は、図示しない公知の例えば、吸着手段等により可動型10に固定される。
なお、補用部品80は金属又は樹脂或いは天然素材等で作られた成形体であって、成形品のデザインや補強等を目的としてインサートする。
補用部品80を一次成形用キャビティに供給する補用部品80の搬送手段5は、例えば、先端部に補用部品の着脱手段を備えた多関節式のロボット等、公知の手段を用いることで達成される。
【0021】
図2(b)は、可動型10が移動して型締めされ、可動型10と固定型20との間で一次成形用キャビティ7と二次成形用キャビティ8とが形成され、一次成形用キャビティ7に所定量の溶融樹脂を充填して一次成形品51を成形した状態を示している。成形開始後の初めての成形では、一次成形用の射出ユニット41から所定量の溶融樹脂を一次成形用キャビティ7にのみ充填し、二次成形用キャビティ8に溶融樹脂は充填しない。この時、樹脂流路の開閉手段25は開かれており、溶融樹脂がノズル43、樹脂流路23及び樹脂流路の開閉手段25を通って一次成形用キャビティ7に充填される。このようにして、補用部品80と一体となった一次成形品51を得る。
【0022】
図2(c)は、樹脂流路の開閉手段25が閉じられて可動型10が型開され、次いで、一次成形品51が一次成形用の凸部11から取り出されて二次成形用の凸部12にインサートされる状態を示している。一次成形品51は、図示しない慣用のハンドリング手段によって二次成形用の凸部12へインサートされるとともに、二次成形用の凸部12にインサートの後は、図示しない好適な固定手段等により可動型10に固定される。
また、一次成形品51を取り出した一次成形用の凸部11には、一次成形用の補用部品80が補用部品の搬送手段5により供給されて可動型10に固定される。
【0023】
図2(d)は、一次成形品51が二次成形用の凸部12に固定されて型締めされ、一次成形用キャビティ7と、一次成形品51と二次成形用キャビティ8とで形成された隙間それぞれに、同時に溶融樹脂を充填した状態を示している。
一次成形用キャビティ7では、樹脂流路の開閉手段25が開放される。そして、溶融樹脂がノズル43、樹脂流路23及び樹脂流路の開閉手段25を通って一次成形用キャビティ7に充填され、補用部品80がインサートされた一次成形品51を得る。
一方、二次成形キャビティ8では、樹脂流路の開閉手段26が開放される。そして、溶融樹脂がノズル44、樹脂流路24、樹脂流路の開閉手段26及び二次成形用の樹脂流路14を通って一次成形品51と二次成形用キャビティ8との隙間に充填され、一次成形品51と一体化された多層成形品52を得る。
【0024】
図2(e)は、樹脂流路の開閉手段25、26が閉じられ、可動型10が後退して型開した状態を示している。前述した慣用のハンドリング装置により積層成形品52は成形装置外へ取り出され、一次成形品51も同じく公知のハンドリング装置により二次成形用の凸部12へインサートされるとともに、可動型10に固定される。
以降、図2(d)と(e)の操作を繰り返すことによって、一次成形品51に樹脂が積層した多層成形品52を連続して得ることができる。
本発明における可動型10に設けた二次成形用の樹脂流路14と一次成形品51及び二次成形用キャビティ8の隙間との交差部であるゲートの形状は、図示しないが、タブゲート、フィルムゲート、ファンゲート等の周知の形態を用いることができる。そして、固定型20に設けた樹脂流路23、24はホットランナ等のランナレス手段を用いることが好ましく、樹脂流路23、24の末端に設けた樹脂流路の開閉手段25、26はバルブゲートやホットチップ等を用いることが好ましい。
【0025】
図3により他の実施の形態を説明する。前述した実施の形態と同一のものには同じ番号を附した。図3(a)〜(e)に示す成形方法は、二次成形用キャビティに補用部品をインサートして積層成形品を得る方法である。
図3(a)〜(e)により成形方法について説明する。図3(a)は、可動型60が型開され補用部品90が供給された成形開始前の状態を示している。この状態では、樹脂流路の開閉手段25、26は閉じている。そして、可動型10と固定型20とが型閉じした状態で、固定型20に設けた二次成形用の樹脂流路24と可動型10に設けた二次成形用の樹脂流路14を介して二次成形用キャビティと連通する構成となっている。
【0026】
図3(b)は、可動型10が移動して型締めされ、可動型10と固定型20との間で一次成形用キャビティ7と二次成形用キャビティ8とが形成され、一次成形用キャビティ7に所定量の溶融樹脂を充填して一次成形品51を成形した状態を示している。成形開始後の初めての成形では、一次成形用の射出ユニット41から所定量の溶融樹脂を一次成形用のキャビティにのみ充填し、二次成形用キャビティ8には溶融樹脂を充填しない。この時、樹脂流路の開閉手段25は開かれており、溶融樹脂がノズル43、樹脂流路23及び樹脂流路の開閉手段25を通って一次成形用のキャビティに充填され一次成形品51を得る。
【0027】
図3(c)は、樹脂流路の開閉手段25が閉じられて可動型10が型開され、次いで、一次成形品51が一次成形用の凸部11から取り出され、二次成形用の凸部12にインサートされた状態を示している。一次成形品51は、図示しない慣用のハンドリング手段によって二次成形用の凸部12へインサートされるとともに、二次成形用の凸部12にインサートの後は図示しない慣用の吸着手段等により可動型10に固定される。
また、二次成形品用キャビティ8に二次成形用の補用部品80が補用部品の搬送手段6により供給され、公知の手段により固定型10に固定される。
補用部品80を二次成形用キャビティ8に供給する補用部品の搬送手段6は、例えば、先端部に補用部品の着脱手段を備えた多関節式のロボット等、慣用の手段を用いることで達成される。
補用部品80は、金属又は樹脂或いは天然素材等で作られた成形体で、成形品のデザインや補強を目的としてインサートする。
【0028】
図3(d)は、一次成形品51と補用部品80が二次成形用キャビティ8に固定されて型締めされ、一次成形用キャビティと、一次成形品51と補用部品80及び二次成形用キャビティとで形成された隙間それぞれに、同時に溶融樹脂を充填した状態を示している。
一次成形用キャビティ7では、樹脂流路の開閉手段25が開放される。そして、溶融樹脂がノズル43、樹脂流路23及び樹脂流路の開閉手段25を通って一次成形用のキャビティに充填され、一次成形品51を得る。
一方、二次成形用キャビティ8では、樹脂流路の開閉手段26が開放される。そして、溶融樹脂がノズル44、樹脂流路24、樹脂流路の開閉手段25及び二次成形用の樹脂流路14を通って一次成形品51と補用部品80との隙間に充填され、一次成形品51に樹脂を積層し、且つ補用部品80と一体化された多層成形品52を得る。
【0029】
図3(e)は、樹脂流路の開閉手段25、26が閉じられ、可動型10が後退して型開した状態を示している。前述した慣用のハンドリング装置により多層成形品52は成形装置外に取り出され、一次成形品51は二次成形用の凸部12にインサートされる。
また、多層成形品52を取り出した二次成形用キャビティ8に、二次成形用の補用部品80が補用部品の搬送手段6により供給されて固定型20に固定される。
以降、図3(d)と(e)の操作を繰り返すことで、一次成形品51に樹脂を積層し補用部品80と一体化した多層成形品52を連続して得ることができる。
【0030】
本発明における可動型10に設けた二次成形用の樹脂流路14と一次成形品51と二次成形用キャビティ8の隙間との交差部であるゲートの形状は、図示しないが、タブゲート、フィルムゲート、ファンゲート等の周知の形態を用いることができる。そして、固定型20に設けた樹脂流路23、24はホットランナ等のランナレス手段を用いることが好ましく、樹脂流路23、24の末端に設けた樹脂流路の開閉手段25、26はバルブゲートやホットチップ等を用いることが好ましい。
【0031】
次いで、本発明の実施形態における発泡成形について説明する。一次成形用の射出ユニット41又は二次成形用の射出ユニット42の両方又はいずれか一方に、発泡剤を混合してキャビティ内に射出充填することにより、発泡層を備え、ソフト感を有して軽量化され、断熱性や遮音性に優れた成形品を得ることができる。例えば、図2(d)において、一次成形用の射出ユニット41から発泡剤を混合した溶融樹脂が一次成形キャビティ内に充填されると、基材が発泡層となった多層成形品52を、二次成形用の射出ユニット42から発泡剤を混合した溶融樹脂が一次成形キャビティ内に充填されると、表層が発泡層となった多層成形品52を得ることができる。
【0032】
そして、溶融樹脂に混合する発泡剤には、化学発泡剤や物理発泡剤が用いられる。発泡成形の形態は、キャビティ容積と同量に発泡剤を混合した溶融樹脂を射出充填し、その後キャビティの容積を所定量拡大して発泡させるフルショット法が好ましい。また、キャビティ内に炭酸ガス等を所定の圧力で充満させ、キャビティ容積と同量に発泡剤を混合した溶融樹脂を射出充填するガスカウンタープレッシャー法をフルショット法に併用することは、発泡層の表面性を改善する点において好ましい。
【0033】
なお、一次成形用キャビティ7に供給する補用部品80は製品表面の一部に露出する形状としたが、成形品の表面全体を覆う形状であっても良い。一方、二次成形用キャビティ8に供給する補用部品80は、成形品外表面全体を覆う形状としたが、成形品の表面を部分的に覆う形状であっても良い。
従来の一次成形品を金型に残して二次成形型と型閉じする方法では一次成形品の裏面に樹脂を充填して積層成形することができないが、図1に示すように本発明の可動型10のパーティング面13に設けた二次成形用の樹脂流路14部をコア側に延長することで、一次成形品の裏面全部若しくは周縁部を積層成形する構成とした。
【0034】
前述した補用部品の材料として、金属材料においては鉄鋼やステンレス等の鉄鋼材料、アルミニウム合金や銅合金等の非鉄金属材料が、樹脂材料においてはポリプロピレン樹脂等の熱可塑性樹脂やユリア樹脂等の熱硬化性樹脂が、また、天然素材においては綿や絹等の繊維、皮革、紙、木材及び石材等公知の素材が好適に用いられる。
【0035】
上記説明した発明の実施の形態においては、一次成形品と二次成形品が略相似の形状としたが、これに限るものではなく、成形品に肉厚の違いを持った形状であってもよい。また、成形品52を箱型の容器状としたが、板状に積層された多層成形品であっても良い。
そして、金型の構造はキャビティ部にインローを有しない平押型としたが、インローを有する半押込型を用いることもできる。
【0036】
以上説明したように、従来のスライド型を用いた多層成形品の成形方法では、一次成形を行ない、一旦金型を開いて一次成形品をスライドさせ、次いで二次成形を行って成形品を得ていた。このため、一次成形と二次成形とを同時に行うことができなかった。そして、従来の金型を回転させる多層成形品の成形方法では、一次成形と二次成形を同時に行うことができたが、成形サイクル毎に回転させて移動させなければならず、成形サイクルに無駄な時間が発生していた。また、従来の多層成形用の金型は、構造が複雑で高価でもあった。さらに、成形品の意匠面にゲートの痕跡が残る上、樹脂の境界部でのずれなどにより外観が不良となる。
本発明による多層成形装置及び多層成形方法は、金型に一次成形用と二次成形用の二つのキャビティを設けて、一次成形品を二次成形用キャビティにインサートすること及び一次成形品の表面と裏面の全面若しくは周縁部を樹脂で積層することにより上記の問題を解決した。
そして、本発明の多層成形装置及び多層成形方法を用いて多層成形品を成形することができた。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】実施の形態を説明する多層成形装置の概要の説明図である。
【図2】一次成形用キャビティに補用部品をインサートした形態の成形工程を説明する図である
【図3】二次成形用キャビティに補用部品をインサートした形態の成形工程を説明する図である。
【符号の説明】
【0038】
1 可動盤
2 固定盤
5、6 補用部品の搬送手段
10 可動型
11、12 凸部
13 パーティング面
14 二次成形用の樹脂流路
20 固定型
21 一次成形用キャビティ面
22 二次成形用キャビティ面
23、24 樹脂流路
25、26 樹脂流路の開閉手段
41 一次成形用射出ユニット
42 二次成形用射出ユニット
51 一次成形品
52 多層成形品
80 補要部品

【特許請求の範囲】
【請求項1】
型閉じして複数のキャビティを形成する一対の金型と、該金型を開閉する型締ユニットと、前記複数のキャビティに溶融樹脂を充填する複数の射出ユニットとを備えて、一種類以上の異なる溶融樹脂を金型内に射出充填して多層成形品を成形する多層成形装置において、
前記複数のキャビティが、一次成形品を成形する一次成形用キャビティと、インサートされた前記一次成形品の表面と裏面の全面、若しくは周縁部を積層可能とする二次成形用キャビティとで構成されたことを特徴とする多層成形装置。
【請求項2】
型閉じして複数のキャビティを形成する一対の金型と、該金型を開閉する型締ユニットと、前記複数のキャビティに溶融樹脂を充填する複数の射出ユニットとを備えた多層成形装置を用いて多層成形品を成形する多層成形方法において、
一次成形用キャビティに溶融樹脂を供給して一次成形品を成形した後、金型を開いて前記一次成形品を二次成形品キャビティにインサートすると共に、前記一次成形品と二次成形用キャビティとの隙間に溶融樹脂を充填して、前記一次成形品の表面と裏面の全面、若しくは周縁部を積層することを特徴とする多層成形方法。
【請求項3】
前記複数の射出ユニットの両方又はいずれか一方の射出ユニットに発泡性溶融樹脂を用い、前記キャビティへ充填後に発泡させることを特徴とする請求項2に記載の多層成形方法。
【請求項4】
金属及び樹脂又は天然素材等で予め形成された補用部品を、前記複数のキャビティのいずれか一方にインサートすることを特徴とする請求項2又は請求項3のいずれかに記載の多層成形方法。
【請求項5】
前記補用部品は一次成形用キャビティにインサートされ、一次成形品と一体化されたことを特徴とする請求項4に記載の多層成形方法。
【請求項6】
前記補用部品は二次成形用キャビティにインサートされ、一次成形品と前記補用部品との間に形成された隙間に溶融樹脂を充填して一体化されたことを特徴とする請求項4に記載の多層成形方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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