説明

多層配線板及びその製造方法

【課題】多層配線板内で発生する熱を効率よく外部に放出するための多層配線板の構成及びその製造方法を提供することにある
【解決手段】放熱性向上を目的とした金属基板上に絶縁層と導体配線層が交互に積層された多層配線板において、導体配線層(3、11、19)と絶縁層(2、4、8、15、18)間に放熱層(6、16)が、導体配線層上に部分的に放熱パターン(12、20)が形成されており、放熱層(6、16)及び放熱パターン(12、20)は相互にビア(7、14、17、22)にて電気的及び熱的に接続されて、最終的には金属基板1に接続されて放熱される。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、電子機器等に使用される半導体装置搭載用の多層配線板とその製造方法に係り、特に基板の片面に二層もしくはそれ以上の多層の導体配線層を有し、配線密度が向上した構成の多層配線板とその製造方法に関する。
【0002】本発明にて言う多層配線板は、半導体集積回路素子(以下、チップと称する)を直接、搭載・接続するタイプの回路基板(一般的に普及している、印刷回路の設けられたプリント配線板)や、チップをリードフレームに搭載・接続した状態での半導体装置を接続する外部回路としてのプリント配線板等を包含する。
【0003】
【従来の技術】互いに交差するような回路パターンを含む配線板を片面のみで作成するために導体配線層と絶縁層とを交互に積層することで、多層配線板を得て配線密度を向上させることが従来より行なわれている。
【0004】従来のプリント配線板は実装部品を取り付けた後、動作時の発熱量の多い部品については部品個別にフィンを取り付けていた。
【0005】また、従来の複合プリント配線板は、プリント配線基板製造過程において内層のパターン層の表面に実装部品を取り付けた後、多層化接着プレスして1枚のプリント配線基板を形成してなるため、実装部品がプリント配線基板に内装されるので放熱性が著しく低下し回路の動作に悪影響を及ぼす。
【0006】さらに、従来の多層配線板でベース基板に放熱板を用いた場合、放熱板上に絶縁層と導体配線層とを交互に積層することで、多層配線基板上に実装されるチップと放熱板との距離ができてしまう。このため、この放熱板を多層配線板の中央に設ける工夫がされているが、熱の伝達方向が基板と水平方向のみとなってしまうため、発熱量の多い部品に関しては多層配線板の側面に放熱用のフィンなどを取り付ける必要があった。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】従来のプリント配線板は、部品個別に放熱用のフィンを取り付けなければならないため、部品実装コストが高く多くの実装作業時間を要していた。
【0008】複合プリント配線板においては部品を配線基板に内装するため、放熱用のフィンなどを取り付けることもできず、部品の発熱によって回路動作に悪影響を及ぼす問題があった。また、表面実装、チップオンボードやTAB等の実装方式を用いた場合、従来の約4倍もの発熱量となるため、放熱量が不足するという問題がある。
【0009】さらに、従来の多層配線板においては、放熱板上に絶縁層と導体配線層とを交互に積層することで、多層化になればなるほど絶縁層の厚さが増して、多層配線基板上に実装されるチップ、その他の部品と放熱板との距離が増えて、放熱性が著しく低下する。このため、放熱板を多層配線板の中央に設ける工夫がされているが、熱の伝達方向が基板と水平方向のみとなってしまうため、発熱量の多い部品に関しては多層配線板の側面に放熱用のフィンなどを取り付ける必要があることから、部品実装コストが高く多くの実装作業時間を要していた。
【0010】本発明は、上記問題点に鑑みなされたもので、その目的とするところは、多層配線板内で発生する熱を効率よく外部に放出するための多層配線板の構成及びその製造方法を提供することにある
【0011】
【課題を解決するための手段】本発明において上記課題を解決するために、まず請求項1においては、放熱性向上を目的とした金属基板上に絶縁層と導体配線層が交互に積層された多層配線板において、前記絶縁層と前記導体配線層との間に放熱層を設けることを特徴とする多層配線板としたものである。
【0012】また、請求項2においては、前記導体配線層面に放熱パターンを設けることを特徴とする多層配線板としたものである。
【0013】また、請求項3においては、前記放熱層及び放熱パターンは相互にビアによって電気的及び熱的に接続されており、最終的に前記金属基板に接続されて、金属基板を通して放熱するようにしたものである。
【0014】さらにまた、請求項4においては、以下の(a)〜(i)の工程を備えることを特徴とする多層配線板の製造方法としたものである。
(a)金属基板上に第1絶縁層を形成する工程。
(b)ビアホールを形成した第1絶縁層上に導体層を形成し、第1導体配線層を形成する工程。
(c)第2絶縁層を形成し、ビアホールを形成する工程。
(d)第2絶縁層上及びビアホールに導体層を形成し、導体層をパターニング処理して第1放熱層を形成する工程。
(e)第3絶縁層及びビアホールを形成する工程。
(f)第3絶縁層上及びビアホールに導体層を形成し、第2導体配線層及び第2放熱パターンを形成する工程。
(g)第4絶縁層を形成してビアホール及び導体層を形成し、導体層をパターニング処理して第2放熱層を形成する工程。
(h)第5絶縁層を形成してビアホール及び導体層を形成し、導体層をパターニング処理して第3導体配線層及び第3放熱パターンを形成する工程。
(i)上記(c)〜(f)の工程を必要回数繰り返して、多層配線板を作製する工程。
【0015】
【発明の実施の形態】本発明による多層配線板の形成方法は、次に示すものである。図1は本発明の多層配線板の一実施例の構成を、図2(a)〜(h)は本発明の多層配線板の一実施例の製造工程を示す断面図である。本発明の多層配線板の基本構成は、導体配線層と絶縁層間に放熱層が、導体配線層面に部分的に放熱パターンが形成されており、放熱層及び放熱パターンは相互にビアにて電気的及び熱的に接続されて、最終的には金属基板に接続されて放熱される。
【0016】まず、金属基板1上に第1絶縁層2を形成する(図2(a)参照)。金属基板1は、導電性があり、熱伝導性に優れた材料であれば使用でき、銅板が最も一般的である。絶縁層の形成方法としては、樹脂溶液をローラーコート法、ディップコート法、スプレーコート法、スピナーコート法、カーテンコート法、スクリーン印刷法等の各種手段を用いて塗布することができる。絶縁層の材料は、一般の多層配線板に用いられる電気絶縁性を有するものであれば特に制限はない。耐熱性、絶縁性などから、ベンゾシクロブテン(以下BCBと称す)が好適である。
【0017】第1絶縁層2にビアホールを形成した後導体層を形成し、パターニング処理して第1導体配線層3を形成し、一部の第1導体配線層はビアにて金属基板に接続されてグランド接続される(図2(b)参照)。ビアホールの形成は、ドリル等の機械加工法、フォトリソグラフィー法、レーザー加工法が利用できるが微細加工性、絶縁層材料の選択幅の広さ及び加工形状の制御容易性等の理由からレーザー加工が一般的である。導体層は、最初真空蒸着法、スパッタリング法、無電解メッキ法のいずれかの方法にて全面に銅金属の薄膜導体層を形成して、電解銅メッキにて所定の厚さの導体層及びビアを形成する。導体配線層は、通常のフォトリソグラフィー法にてパターニング処理して形成する。
【0018】次に、第2絶縁層4及びビアホール5及び導体層を形成した後導体層をパターニング処理して第1放熱層6を形成する(図2(c)、(d)参照)。ここで、第1放熱層6はビア7にて金属基板1に電気的、熱的に接続される。
【0019】次に、第3絶縁層8及びビアホール9、10及び全面に導体層を上記の方法で形成した後、導体層をパターニング処理して第2導体配線層11及び第2放熱パターン12を形成する(図2(e)、(f)参照)。ここで、第2導体配線層11と第2放熱パターン12は同一面上に混在しているが電気的には絶縁されている。さらに、第2導体配線層11はビア13にて第1導体配線層3に電気的に接続され、第2放熱パターン12はビア14にて第1放熱層6に電気的及び熱的に接続される。
【0020】同様にして、第4絶縁層15及びビアホールを形成した後全面に導体層を形成し、パターニング処理して第2放熱層16を形成する(図2(g)参照)。
【0021】同様にして、第5絶縁層18及びビアホールを形成した後全面に導体層を形成し、パターニング処理して第3導体配線層19及び第3放熱パターン20を形成する(図2(h)参照)。以上の一連の工程により、3層の導体配線層と2層の放熱層及び放熱パターンを有する本発明の多層配線板が得られる。これ以上の多層配線板が必要な場合は図2の(c)〜(f)の工程を必要回数繰り返せばよい。
【0022】以上のように、本発明の放熱層及び放熱パターンを有する多層配線板は所定の箇所においてビアにて放熱層と放熱パターンとが相互に接続されており、これらが金属基板に接続されていることから、放熱が効率よく行われる。
【0023】
【実施例】以下、本発明の多層配線板の実施例について、図面を参照しながら説明する。図2(a)〜(h)にその多層配線板の一実施例の製造方法を示す。
【0024】黒化処理を施した厚さ約400μmの銅の金属基板1上にBCB(ダウケミカル社製)樹脂溶液をスピンコーターにて塗布し、75℃20分間乾燥した後、窒素中で100℃15分、150℃15分、210℃30分間加熱硬化して、約10μm厚の第1絶縁層2を形成した(図2(a)参照)。
【0025】次に、KrFエキシマレーザー加工機を用いて、0.5J/cm2 のレーザービームを所定の位置に照射して、第1絶縁層2にビアホールを形成した。さらに、第1絶縁層2上にスパッタリング法にて厚み約0.2μmの銅の導体薄膜を形成して、電解銅めっきにより膜厚約10μmの導体層を形成した。導体層上にネガ型液状レジスト(PMER;東京応化工業(株)製)をディップコータで塗布し、乾燥硬化して感光層を形成し、所定のパターンマスクを介して、約500mJ/cm2 の露光量で露光して、専用の現像液で現像処理して110℃30分加熱乾燥してレジストパターンを形成した。さらに、50℃の塩化第2鉄溶液をスプレーエッチングした後5%の水酸化ナトリウム溶液に浸漬してレジストパターンを剥離して第1導体配線層3を形成した(図2(b)参照)。
【0026】次に、BCB(ダウケミカル社製)樹脂溶液をスピンコーターにて塗布し、75℃20分間乾燥した後、窒素中で100℃15分、150℃15分、210℃30分間加熱硬化して、約10μm厚の第2絶縁層4を形成した。さらに、KrFエキシマレーザー加工機を用いて、0.5J/cm2 のレーザービームを所定の位置に照射して、第1絶縁層2及び第2絶縁層4に50μmφのビアホール5を形成した(図2(c)参照)。
【0027】次に、上記の導体層形成と同様の方法で約10μmの導体層を形成し、上記と同様な方法でパターニング処理して第1放熱層6を形成した。ここで、第1放熱層6はビア7にて金属基板1に電気的及び熱的に接続される(図2(d)参照)。
【0028】次に、上記の第2絶縁層4と同様の方法で第3絶縁層8を形成した。さらに、上記と同様な方法でビアホール9及び10を形成した(図2(e)参照)。
【0029】次に、上記の導体層形成と同様の方法で約10μmの導体層を形成し、上記と同様な方法でパターニング処理して第2導体配線層11及び第2放熱パターン12を形成した(図2(f)参照)。ここで、第2導体配線層11はビア13にて第1導体配線層3に電気的に接続され、第2放熱パターン12はビア14にて第1放熱層6に電気的及び熱的に接続される。
【0030】次に、上記の第2絶縁層と同様の方法で第4絶縁層15及びビアホールを形成した。さらに、上記の導体層形成と同様の方法で約10μmの導体層を形成し、上記と同様な方法でパターニング処理して第2放熱層16を形成した(図2(g)参照)。ここで、第2放熱層16はビア17にて第2放熱パターン12に電気的及び熱的に接続される。
【0031】次に、上記の第2絶縁層と同様の方法で第5絶縁層18及びビアホールを形成した。さらに、上記の導体層形成と同様の方法で約10μmの導体層を形成し、上記と同様な方法でパターニング処理して第3導体配線層19及び第3放熱パターン20を形成した(図2(h)参照)。ここで、第3導体配線層19はビア21にて第2導体配線層11に電気的に接続され、第3放熱パターン20はビア22にて第2放熱層6に電気的及び熱的に接続される。以上の一連の工程により、3層の導体配線層と2層の放熱層及び放熱パターンを有する本発明の多層配線板が得られた。
【0032】
【発明の効果】本発明の多層配線板の構成にすることにより、チップにて発生した熱は、放熱層及び放熱パターンからビアを通して金属基板へと流れる様な熱の回路を作製することができ、金属基板より放熱できる。また、放熱用フィンなどを設ける必要もないので基板の小型化を可能とした多層配線板を得ることができる。さらに、前記放熱層がグランドに接続されて導電性パターンがストリップ構造となるためクロストークもなく電気的特性も向上する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の多層配線板の一実施例の構成を示す断面図である。
【図2】(a)〜(h)は、本発明の多層配線板の一実施例の製造方法を示す工程断面図である。
【符号の説明】
1……金属基板
2……第1絶縁層
3……第1導体配線層
4……第2絶縁層
5、9、10……ビアホール
6……第1放熱層
7、13、14、17、21、22……ビア
8……第3絶縁層
11……第2導体配線層
12……第2放熱パターン
15……第4絶縁層
16……第2放熱層
18……第5絶縁層
19……第3導体配線層
20……第3放熱パターン

【特許請求の範囲】
【請求項1】放熱性向上を目的とした金属基板上に絶縁層と導体配線層が交互に積層された多層配線板において、前記絶縁層と前記導体配線層との間に放熱層を設けることを特徴とする多層配線板。
【請求項2】前記導体配線層面に放熱パターンを設けることを特徴とする請求項1記載の多層配線板。
【請求項3】前記放熱層及び放熱パターンは相互にビアによって電気的及び熱的に接続されており、最終的に前記金属基板に接続されていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の多層配線板。
【請求項4】以下の工程を備えることを特徴とする多層配線板の製造方法。
(a)金属基板上に第1絶縁層を形成する工程。
(b)ビアホールを形成した第1絶縁層上に導体層を形成し、第1導体配線層を形成する工程。
(c)第2絶縁層を形成し、ビアホールを形成する工程。
(d)第2絶縁層上及びビアホールに導体層を形成し、導体層をパターニング処理して第1放熱層を形成する工程。
(e)第3絶縁層及びビアホールを形成する工程。
(f)第3絶縁層上及びビアホールに導体層を形成し、第2導体配線層及び第2放熱パターンを形成する工程。
(g)第4絶縁層を形成してビアホール及び導体層を形成し、導体層をパターニング処理して第2放熱層を形成する工程。
(h)第5絶縁層を形成してビアホール及び導体層を形成し、導体層をパターニング処理して第3導体配線層及び第3放熱パターンを形成する工程。
(i)上記(c)〜(f)の工程を必要回数繰り返して、多層配線板を作製する工程。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開平10−150278
【公開日】平成10年(1998)6月2日
【国際特許分類】
【出願番号】特願平8−308499
【出願日】平成8年(1996)11月19日
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)