説明

多成分溶液組成測定方法

【課題】
化学プロセスでは、溶液組成測定結果を得るまでには、時間を要し、その結果を得るまでに遅延が生じ、又複数の物理量の測定をする場合には、測定器の数が複数個となり、更に演算も複雑なものとなる。
【解決手段】
多成分溶液中の相の数が増加するように、多成分溶液の組成調整を行うことにより、測定が必要な物理量を一つに絞ると同時に、密度計に代表される、迅速且つ簡便な測定が容易に可能な測定器を用いる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一つの示強変数を測定することにより、化学プロセス等に用いる多成分溶液の組成を測定する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
化学プロセスを実施し、適切に管理するためには、使用する溶液の組成測定が重要である。3成分以上の多成分溶液の組成を測定する方法には、サンプリングした溶液に対して滴定分析法やイオンクロマトグラフィー法や質量分析法や分光分析法を行う方法が知られている。又、溶液の音速計と導電率計等の複数の物理量を計測器で同時測定して、これらを演算して算出する方法が知られている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、化学プロセスを連続的に実施するためには、溶液組成測定を、オンライン且つ簡便に実施できることが望ましい。前記測定方法でサンプリングを要するものは、サンプリング及び測定そのものに時間を要し、測定結果を得るまでに遅延が生じる。又、前記複数の物理量の測定をする方法においては、測定器の数が複数個となり、更に演算も複雑なものとなる。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、前記課題を解決するために、以下の手段を採用した。本発明は、多成分溶液中の相の数が増加するように、多成分溶液の組成調整を行うことにより、測定が必要な物理量を一つに絞ると同時に、密度計に代表される、迅速且つ簡便な測定が容易に可能な測定器を用いることを要旨とする。
【0005】
即ち、本発明は、一定の温度条件、圧力条件下において、3成分或いは4成分の多成分溶液中の溶液組成を調整することにより、多成分溶液中に固相或いは液相或いはそれら両方を出現させて混相溶液とすることを特徴とし、混相溶液中の主たる液相部において、密度に代表される一つの示強変数を測定して、更に示強変数と組成と予め関連づけておくことにより、混相溶液中の主たる液相部の組成を得ることを特徴としている。
【発明の効果】
【0006】
本発明は、多成分溶液中の一成分の組成調整を行うことにより、その多成分溶液中に固相、液相又はそれら両方を出現させ、その混相溶液中の主たる液相部の一つの示強変数を測定して、混相溶液中の主たる液相部の組成を得ることができることである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、本発明の実施形態の一例を添付した図1及び図2を用いて説明する。本例は、H20,HI,I2,H2SO4で構成される4成分の多成分溶液に本発明を適用したものである。70℃、大気圧の一定条件下において、図1に示されるとおり、前記多成分溶液に、更なるI2を添加して成分を調整し、溶液中に、固相1と液相2を新たに出現させて、固相1、液相1及び液相2と全部で3相の混相溶液とした。固相1は、I2が飽和状態となり析出したものであり、液相2は、主たる液相部の液相1と互いに液液分離して生じたものである。
【実施例】
【0008】
以下、図1に示される一実施形態について、本発明の方法を適用して多成分溶液の組成を測定する方法を説明する。
図2に示される曲線1は、この混相溶液をサンプリングして、滴定分析法で組成を定量化したものである。図2に示される曲線2は、液相1の示強変数たる密度を密度計にて測定したものである。液相1において、H2SO4の含有量は微小であるので、本例では、これを無視した。予め取得した曲線1及び曲線2を用いることにより、液相1の組成を密度のみから得ることができる。
【0009】
このように、本発明では、化学プロセスにおける溶液内の多成分溶液の組成を、滴定分析法を用いることなく、密度計を用いるだけで、迅速且つ簡便に得ることができることを示している。
【0010】
即ち、図2に示されるように、予め、Iを添加し飽和状態とした時のH2O,HI及びI2から成る混相溶液の組成1のI2のモル分率に関する組成曲線、及びこの混相溶液の液相1の密度曲線を作成しておいた場合には、実際の測定対象の溶液にI2を加え、得られた液相1の密度を測定し、その密度に相当する液相1のI2のモル分率は、曲線2に対応する曲線1から得ることができる。
【産業上の利用可能性】
【0011】
熱化学水素製造法であるISプロセスは、原子力の熱と水だけから水素を製造でき、二酸化炭素を出さない方法として産業化の期待が高まっている。このISプロセスは、H2O,HI,I2,H2SO4の多成分溶液の処理を行う化学プロセスである。本発明によれば、ISプロセスで取り扱う多成分溶液の組成を迅速且つ簡便に得ることができ、プロセスの運転管理に役立てることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】H2O,HI,I2,H2SO4で構成される多成分混相溶液の相分離した状態を示す図である。
【図2】I飽和条件における液相1の組成及び密度を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一定の温度条件、圧力条件下において、多成分溶液中の溶液組成を調整することにより、多成分溶液中に固相、液相又はそれら両方を出現させて混相溶液中の主たる液相部において一つの示強変数を測定して、混相溶液中の主たる液相部の組成を得ることを特徴とする多成分溶液組成測定方法。























【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2006−322824(P2006−322824A)
【公開日】平成18年11月30日(2006.11.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−146639(P2005−146639)
【出願日】平成17年5月19日(2005.5.19)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)文部科学省の委託事業の成果に係る特許出願(平成16年度核熱利用システム技術開発、産業活力再生特別措置法第30条の適用を受けるもの)
【出願人】(505374783)独立行政法人 日本原子力研究開発機構 (727)