説明

多機能カードシステム

【課題】 自動取引装置や個人用端末の使用に際しての、記録容量の増加とセキュリティ効果の高い多機能カードシステムを提供する。
【解決手段】 取引履歴情報を格納する複数のEEPROM9a,9bを有し、そのEEPROM9a,9bに情報を格納する場合には接触式の電気的接合部5を介してATM12から前記取引履歴情報の記憶エリアに格納し、記憶エリアの全てに取引情報が格納されても、更に取引情報の格納が必要の時に最先の記憶エリアに格納されている取引情報を抹消し、その抹消した記憶エリアに取引情報を格納する。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、金融機関で使用される自動取引装置や小売店等で行なわれる商取引時に使用される多機能カード(ICカード)システムに関する。
【0002】
【従来の技術】金融機関とその金融機関の口座契約者(以下、顧客とする)との間に、その預貯金の入出金又は振込等、その口座の預貯金残高の変動を伴う取引が行なわれた場合には、金融機関のセンタコンピュータに管理される勘定元帳ファイル内に資金の移動明細が記憶されている。一般的にこの資金の移動明細は、その取引内容が通帳に記帳されると、勘定元帳ファイルの中から消去される。従って、資金の移動を伴う取引が通帳を使用して行なわれた場合には、現取引も含めた未記帳データが通帳に印刷されることにより未記帳データの記憶は不要となる。資金の移動を伴う取引が通帳を使用しないで行なわれた場合は、その取引は新しい未記帳データとして勘定元帳ファイルの中に記録される。
【0003】近来では、口座間の自動振替処理や自動引落し、更に顧客識別カード(Identi-fication Card 以後、IDカードとする)による預貯金の入出金取引が急増しているため、勘定元帳ファイル内の未記帳データの蓄積量は増加している。なお、1冊の通帳に印字できる印字可能行は図15に示したように24行程度であるため、通帳中紙7枚(15頁)×24行/頁=360行(取引)となる。これは通帳の届出印欄や約款面を考慮していないものであり、現実的には印字可能頁は13頁程度であるため印字可能行は312行程度が一般的である。そして、通帳に印字欄がなくなると、新通帳を発行することになる。
【0004】このような、通帳の短命化に対して、特公平4−17476号公報に記載されているような電子通帳としてのICカードが提案されている。これは、マイクロプロセッサ,メモリ,データ入出力回路,データ入出力端子,記憶データ表示用のディスプレイ等から構成される,所謂「IC(集積回路)カード」を用いるものがあり、携帯性の優れたカード型通帳が提案されている。これらのカード型通帳としては、光カード方式のものも提案されている。
【0005】また、振込取引用として、振込先の金融機関名や受取人の口座番号等の情報を予め記憶させた所謂「振込カード」が使用されている。更に近来では電子決済取引として、ICカードに電子マネーとして資金を格納しておき、商取引時に電子情報として資金の授受を行なっている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】このカード型通帳等としてのICカードは低価格化,量産化また物的強度の向上などから、急速に浸透し広範囲の分野で使用されている。しかしながら、記憶容量の大容量化やセキュリティ面での機密性はIC(集積回路)により配慮され、かつ暗号化技術が駆使されているが、光カード型通帳については光記録部が暗号化して記録していても顕微鏡等で拡大することにより内容を知ることができ、改ざんが可能であったためセキュリティ面での問題があった。
【0007】また既存の装置での改造対応が困難であり、システム全体での改造費用が増大化するという問題もある。更に、カード型通帳を初め、電子マネーを格納した取引カード,振込カード、およびクレジッットカードなど、数多くのカードを持ち歩く必要性から、利用者にとっては非常に煩わしいものであった。
【0008】
【課題を解決するための手段】上記課題を解決するために本発明は、ICカードの信号を送受信するための接点を接触式の電気的結合部として、ICカードには金銭の入出金取引における取引履歴情報を格納する記憶エリアを複数の記憶素子に分割して設け、それらの情報を格納させる。
【0009】ICカードの記憶エリアが満杯になったら、最前の取引履歴情報が格納されている記憶素子の取引履歴情報を消去し、格納すべき取引履歴情報を格納する。ICカードに格納されている取引履歴情報と、金融機関等のホストコンピュータに管理されている未記帳データを加えて取引履歴情報を編集,表示し、印刷指示があると通帳処理部に収納してある帳票に印刷して発行する。
【0010】また、自動取引装置を使用して金銭の入出金取引を行なった場合には、ICカードの表面に最終取引履歴情報を表示(印刷)して返却する。更に、ICカードには従来より使用されている銀行カード機能を始め、電子マネーとしての残高情報の記憶エリア,振込取引時の振込情報を記憶させてある記憶エリアを設け、それぞれの固有データを格納しておく。
【0011】
【発明の実施の形態】以下、図面に従って本発明の実施の形態を説明する。図1は本発明の多機能カードの概略図であり、同図(a)は表面を示したもので、同図(b)が内部の回路構成を示したものである。図において、1は多機能カードとして使用するICカードで、2は磁気ストライプであり、金融機関コードや顧客の氏名や口座番号等の顧客固有のデータを磁気化して記録している。なお、この磁気ストライプ2は磁気ストライプ面の上に隠蔽層を設け、磁気ストライプ上に絵柄等を印刷可能な所謂オーバープリントカードの形態とすることもできる。
【0012】3はエンボスエリアであり、前記磁気ストライプ2と同様に金融機関コードや顧客の氏名及び口座番号等の凸文字を打刻するために設けられたものである。4は熱可逆性シール(リライタブルシール)貼付部であり、後述するサーマルヘッドにより印刷及び印刷の消去が可能な部分である。5は端子部であり、予め取り決められた位置に設けてあり、データの送受信が行なわれる結合部で、図1(b)に示した内部回路と接続されている。このICカード1は後述するカードリーダ・レシートプリンタ(Cardreader Receipt Pri-nter 以後、CRPとする)に取り込まれてその記憶内容の読取り及び書込みが可能となる。
【0013】6は通信制御やコマンド処理などの書替え不要な情報や記帳処理プログラムなどを格納したROM(Read Only Memory)で、7は通信時のデータバッファや制御プログラム,及び顧客情報等を一時的に格納可能なRAM(Randam Access Me-mory)であり、8はデータバスである。9a,9bは電気的に記憶情報の消去及び再書込みが可能な不揮発性メモリであるEEPROM(Electrically Erasable and Programmable ROM )で、データ蓄積用のメモリである、これらの各メモリの読出しや書込みを制御するのがマイクロプロセッサ(MPU)10である。
【0014】なお、端子部5とROM6,RAM7,データバス8,EEPROM9a,9b及びMPU10をICカード1の平面上に記載したが、これらは一体のIC(集積回路)としてカード基材に埋め込まれているものであり、エンボスエリア3や熱可逆性シール貼付部4のエリア内に埋め込まれることを意味するものではない。
【0015】図2は本発明の多機能カード(ICカ−ド)のデータフォーマット11の概念を示す説明図であり、11aがこのICカード1を発行した金融機関コード(番号),口座契約した営業店番号,口座番号,顧客氏名,及び暗証番号等である。なお、これらの情報は磁気ストライプ2にも磁気化して記録されている。
【0016】11bは、顧客の身体的な特徴等を抽出してデジタル符号化した顧客識別データである。11cは電子マネー残高であり、電子取引決済を行なう際に授受される電子化された貨幣残高情報である。11dはEEPROM9aに割り当てられた取引履歴情報の記憶エリアであり、複数の取引分を格納できる容量が確保されている。11eはEEPROM9bに割り当てられた取引履歴情報の記憶エリアであり、複数の取引分を格納できる容量が確保されている。
【0017】11fは前記EEPROM9a,9bの最新の取引履歴情報の直後に格納される管理フラグである。11gが振込取引時に使用する振込取引情報であり、図では複数の振込先情報エリアを設けている。なお、11c,11d,11e,11gなどの情報はEEPROMに記憶させておき、読取動作後にRAM7などに一時記憶し、EEPROMを一旦消去後に再度書き込むことも可能であるから記憶する記憶素子が限定されるものではない。
【0018】図3は本発明の多機能カードシステムで使用される自動取引装置の外観図であり、図4はその自動取引装置の制御ブロック図である。図において、12は自動取引装置(以後、ATMとする)であり、1は金融機関が発行し、金融機関毎のコードや顧客の口座番号,氏名等の顧客情報等の前記図2に示した情報が記憶された多機能カード(以後、ICカードとする)である。 13はICカード1に記憶されている前記情報を読出す機能を有するカード処理部で、このカード処理部13の前面側に接続されたカード挿入返却口13aより、ICカード1が挿入されたり返却が行なわれる。更に、明細票処理部14として、取引明細の印字を行ない後述する手順により顧客に発行される取引明細票(図示しない)の発行処理を行なうものが一体となり、CRP15を構成している。
【0019】16は通帳処理部であり通帳挿入返却口16aより挿入される通帳17に印字処理など行なうもので、更に図示しない記憶情報の読取りや更新手段、印字頁行の検出手段及び改頁手段等を有している。(詳細は後述する)
18は操作案内やサービス案内等を表示する表示部である。
【0020】19は貨幣処理部であり、顧客により入金される貨幣を真偽鑑別,計数し、搬送して貨幣収納庫に収納し、又は顧客に支払われる貨幣を図示しない手段により繰り出すもので、紙幣入出金部19aと硬貨入出金部19bで構成される。この紙幣入出金部19aには紙幣を投入、又は顧客に紙幣を支払うための接客口19cが、また硬貨入出金部19bには硬貨を投入、又は顧客に硬貨を支払うための接客口19dが結合されている。なお、接客口19c,19dには図示しない駆動手段によって開閉動作するシャッタ20a,20bが設けられ、貨幣の挿抜を規制している。
【0021】21は顧客による取引入力するための取引誘導画面表示を行なったり、操作入力するための所謂タッチパネルで構成された接客部であり、取引の選択入力を行なう部分である。22は音声案内部であり顧客を前述した取引誘導画面表示と共に音声で誘導するためのもので、顧客と対面する位置にスピーカ22aを有している。23は記憶部で、各種の制御を行なうためのプログラムが記憶されたROMやRAM又はフロッピーデスクなどで構成されている。
【0022】24は上位装置であるホストコンピュータとの接続口であるインターフェース部(以後、IF部とする)であり、25は以上の各部を制御する主制御部で、26は以上の各部に電力を供給する電源部である。27は端末制御装置(Terminal Control unit 以後、TCとする)であり、図示しない他のATMや窓口端末と上位装置であるホストコンピュータ28との中間に位置し、複数の装置の通信制御するものである。
【0023】29はホストコンピュータ28と接続された記憶装置であり、後述する取引に必要な情報を記憶しているものである。上記の記憶装置29の格納情報として、29aは勘定元帳ファイルであり、例えば顧客の住所,氏名及び口座番号,暗証番号,預貯金残高,未記帳データなどである。その他、システム全体の各種情報として、顧客情報ファイルや商品情報ファイル等があるが、本発明には関係しないため内容説明は省略する。なお、TC27とホストコンピュータ28は通信回線30により接続されている。
【0024】次にカード処理部13と明細票処理部14で構成されるCRP15について説明する。図5はこのCRP15の側面図であり、前記カード挿入返却口13aに続いて磁気ヘッド31が設けられており、挿入されるICカード1に設けられた磁気ストライプ2から磁気記録情報を読み取るものである。
【0025】32はエンボスリーダでありICカード1の表面のエンボスエリア3に設けられた顧客氏名や口座番号等の凸文字を光学的に読取り、取引記録として取引明細票に印刷するための情報を得るものである。33はサーマルヘッドであり、ICカード1の表面の熱可逆性シール貼付部4に取引内容等を印刷するためのもので、磁気ストライプ2やエンボス文字(凸部)より所定の間隙を設けて構成されている。34はICカードリーダラータ部であり、ICカード1の表面の端子部5と対応可能な接触子34aを有しており搬送路35を搬送されたICカード1と圧接し電気的に接続される。
【0026】前記搬送路35では、図示しない駆動手段により搬送ローラ36を回転駆動させることによりICカード1を搬送する。また、この搬送路35には搬送状況を監視するための各種センサが配置されているが図においては省略した。
【0027】次に、明細票処理部14について説明すると、41a,41bは折り畳まれた未使用の取引明細票42a,42bを収納したスタッカで、43は前記折り畳まれた取引明細票42a,42bの一方を搬送路44に沿って搬送するための搬送ローラである。
【0028】45は前記搬送路44に設けられたカッタであり取引明細票42a(又は42b)を所定の長さに切断するためのものであり、46は切断された取引明細票42に取引記録を印刷するための印刷部である。なお、以降の説明は所定長に切断されたものを、取引明細票42として記述する。カッタ45で所定の長さに切断された取引明細票42は印刷部46で印刷された後、カード挿入返却口13aから発行される。47は顧客が取り忘れたICカード1や取引明細票42を取込み,収納しておく取込ボックスである。
【0029】図6は通帳処理部16の概要を示す説明図であり、16aは前記した通帳挿入返却口である。61は磁気リードラートヘッドであり、挿入された通帳17の所定位置に設けられた磁気ストライプ17aから磁気記録情報を読み取ったり、取引完了時に磁気記録情報を更新するためのものである。62は頁・行検出器であり、挿入された通帳17の開かれた頁に付されているページマーク17bや印字済行などを光学的に読み取り、処理すべき印字頁であるか否かを検出するためのものである。63は印字ヘッドであり、挿入された通帳17に印字処理を行なうもので、この印字ヘッド63と対向して設けられたプラテン64により印字処理する。
【0030】65は改頁部であり、通帳17に印字可能行が残っていない場合や、開かれた頁が印字すべき頁ではないと判断された場合に通帳17の頁捲りを行なうものである。66は搬送ローラであり、通帳17を挟持して回転駆動されることにより搬送路67に沿って通帳17を搬送する。68は開かれた通帳17と外形が略一致する帳票69を複数枚堆積した帳票スタッカであり、下部に設けた付勢手段70により、前記帳票69を上方に押し上げている。
【0031】68a,68bは帳票スタッカ68の上部に設けた帳票繰出ローラであり、回転支点71aにより支持されるアーム71の先端に回動可能に支持されている。このアーム71は図示しない駆動手段により回動すると、帳票繰出ローラ68a,68bのいずれか一方が帳票69と圧接状態になるように構成されている。例えば、図示したように帳票繰出ローラ68aが帳票69と圧接している状態で帳票繰出ローラ68aを右回転することにより帳票69を矢印D方向に繰り出せる。この時には帳票繰出ローラ68bは帳票69より離反している。
【0032】また、図示しない駆動手段によりアーム71が回動され、帳票繰出ローラ68bが帳票69と圧接する状態で、帳票繰出ローラ68bを左回転すると帳票69を矢印E方向に繰り出せるように構成されている。この時には帳票繰出ローラ68aは帳票69との圧接を解除される位置関係になる。
【0033】次に、多機能カードとしての用途の一つである「顧客識別カード(キャッユカード)」としての機能をATM12における出金取引処理のフローチャートを図7に従って説明する。図において、Sはステップを示している。まず、顧客が接客部21に表示した取引選択画面より『お引出し』を選択すると(S1)、同画面上に『カードを入れて、暗証番号を入力してください』と「入力キー画面」を併せて表示する。この表示に従ってICカード1をカード挿入返却口13aより挿入すると(S2)、ICカード1をカード処理部13まで取込み、磁気ストライプ2に記憶されている磁気記録情報を磁気ヘッド31により読み取り(S3)、その読み取った口座番号等の情報をTC27を介してホストコンピュータ28に送信する。
【0034】なお、磁気ストライプ2には、このカードがICカードであることが磁気符号により予め記録してあり、旧来の磁気カードと判別ができるようになっているものである。更に、カード処理部13の内部まで搬送しエンボスリーダ32により、エンボスエリア3のエンボス文字の読み取りを行い(S4)、それらの情報を記憶部23に一時記憶させる。
【0035】一方、顧客が「入力キー画面」より暗証番号を入力すると(S5)、この入力された暗証番号もホストコンピュータ28に送信されて、前記口座番号等により先行して検索されている記憶装置29内の勘定元帳ファイル29aより該当する暗証番号が照合される。以上の動作において、ICカード1の挿入方向や暗証番号の入力誤りなどの顧客誤操作や磁気読取不良等発生すると所定の返却処理等に移行するが本発明と関係がないため省略している。
【0036】ホストコンピュータ28に管理されている記憶装置29内の勘定元帳ファイル29aから取引き可能な顧客であることが判断されると、取引を許容するデータがATM12に送信されてくる(S6)。
【0037】このデータを受信してATM12は顧客操作画面を出金用入力画面に切り替えて出金額の入力操作を促し、顧客が所望する金種と枚数を入力して確認操作入力が行われると(S7)、貨幣処理部19より指示された貨幣を繰出してそれらの貨幣の鑑別を行い、接客口19c及び19dまで搬送させて待機させる(S8)。 前記出金額の入力操作と並行して、ステップ3での磁気記録情報の読み取りによりICカードであることの磁気符号が検出されている場合には、挿入されたカードがIC(集積回路)を有する物、即ちICカードであると判断し、このICカードをICカードリーダライタ部34まで搬送し、接触子34aを矢印C方向に回動させて端子部5と接触子34aを圧接する(S9)。
【0038】続いてICカード1の記憶情報の読み取りに入る(S10)。まず、端子部5に所定の順番で電圧,クロック,通信入出力信号を与えていき、ホストコンピュータ28より受信したデータとICカード1との相互チェックを行い、正しい相手であることを確認する。ICカード1には、今回の出金取引データとホストコンピュータ28から受信する未記帳データを含めた取引情報が送信され取引履歴情報の更新を行う(S11)。なお、取引履歴情報の更新については後で詳細に述べる。
【0039】続いて、端子部5と接触子34aの圧接を解除してからICカード1を矢印A方向に搬送させてサーマルヘッド33を通過させる。同時にサーマルヘッド33には熱可逆性シール貼付部4の全印刷を消去可能なエネルギーを加える。熱可逆性シール貼付部4の端部がサーマルヘッド33の位置まで搬送されたら、矢印A方向への搬送を停止する。
【0040】次にICカード1を矢印B方向に搬送すると共に、サーマルヘッド33に印刷エネルギーを加えて、図1に示すように本日の年月日や現在の取引残高を印刷する(S12)。印刷が終了したら矢印B方向の搬送を終了してICカード1を保持する。一方、明細票処理部14では、取引明細票42a(又は42b)を所定の長さに切断し、ステップ4で読み取り、記憶部23に記憶したいるエンボス文字読取情報や取引内容を印刷部46により印刷する(S13)。ICカード1の熱可逆性シール貼付部4の印刷と取引明細票42の印刷が終了したら搬送制御によりカード挿入排出口13aよりほぼ同時にそれらを排出して、顧客に返却することになる(S14)。
【0041】ICカード1と取引明細票42の抜取りが図示しない検知手段により確認されると接客口19c,19dのシャッタ20a,20bを開いて(S15)、ステップ8により待機させていた貨幣の抜取り、即ち,支払いを可能にする。顧客により貨幣の抜取りが行われ、図示しない検知手段により抜取りが確認されるとシャッタ20a,20bを閉じる(S16)。以上の動作が完了すると、ホストコンピュータ28に処理完了が取引内容と共に送信されて、記憶装置29内の勘定元帳ファイル29aが更新され、一方ATM12では記憶部23に一時記憶した情報を消去して処理が完結する。
【0042】ステップ9において、ICカードではないと判断された場合について説明すると、まず、通帳挿入返却口16aに通帳17が挿入され、図示しない挿入検知手段がこれを検知し、通帳17を通帳処理部16に取り込んでいるか否かを判定する(S22)。通帳17が挿入されている取引(有通帳取引)の時には磁気リードライトヘッド61により、挿入された通帳17の磁気ストライプ17aに磁気記録されている顧客情報の読取りを行なう(S23)。
【0043】次に、通帳17の開かれた頁が処理すべき頁であるか否かを判定するため、頁・行検出器62によりページマーク17bと印字済行の読み取りを光学的に行ない(S24)、処理すべき頁であれば通帳17を印字ヘッド63まで搬送する。なお、印字すべき頁ではない場合には改頁部65まで搬送して、頁捲りを行なうことになるが、動作は省略する。
【0044】ホストコンピュータ28から未記帳データが送信されてきたら印字ヘッド63により印字し(S25)、そして、取引データを印字する(S26)。続けて、印字が終了したら磁気ストライプ17aに磁気リードライトヘッド61により取引情報の更新を行ない(S27)、通帳挿入返却口16aまで搬送して図示しない抜取り検知手段が通帳17の抜取りを検知したら、前記ステップ14に移行する。なお、取引明細票42の発行はしない。
【0045】ステップ22において、通帳17が挿入されていない取引(無通帳取引)であると判定された場合には明細票処理部14で、取引明細票42a(又は42b)を所定の長さに切断し、ステップ4で読取ったエンボス文字読取情報や取引内容を印刷部46により印刷して(S29)、前記ステップ13に移行する。なお、ステップ12における熱可逆性シール貼付部4への印刷は、予め不要であると設定登録されている場合には省略される。
【0046】次に多機能カードの他用途として、「カード型通帳」に取引明細を記憶する作用について図8に示す電子記帳処理を示すフローチャートを用いて説明する。まず、顧客が接客部21に表示した取引選択画面より『通帳記入』を選択すると(S31)、同画面上に『通帳またはカードを入れて、暗証番号を入力してください』と「入力キー画面」を併せて表示する。この表示に従ってICカード1をカード挿入返却口13aより挿入すると(S32)、ICカード1をカード処理部13まで取込み、磁気ストライプ2に記憶されている磁気記録情報を磁気ヘッド31で読み取り(S33)、その読み取った口座番号等をホストコンピュータ28に送信する。
【0047】なお、磁気ストライプ2には、このカードがICカードであることが磁気符号により予め記録してあることは前述と同様である。更に、カード処理部13の内部まで搬送しエンボスリーダ32により、エンボスエリア3のエンボス文字の読み取りを行い(S34)、それらの情報を記憶部23に一時記憶させる。
【0048】一方、顧客が「入力キー画面」より暗証番号を入力すると(S35)、この入力された暗証番号もホストコンピュータ28に送信されて、前記口座番号等により先行して検索されている記憶装置29内の勘定元帳ファイル29aより該当する暗証番号が照合される。以上の動作において、ICカード1の挿入方向や暗証番号の入力誤りなどの顧客誤操作や磁気読取不良等が発生すると所定の返却処理等に移行するが本発明と関係がないため省略する。
【0049】前記入力操作と並行して、ステップ33での磁気情報読み取りによりICカードであることの磁気符号が検出されている場合には、挿入されたカードがIC(集積回路)を有する物、即ち,ICカードであると判断し、このICカードをICカードリーダライタ部34まで搬送し、接触子34aを矢印C方向に回動させて端子部5と接触子34aを圧接する。
【0050】続いてICカード1の記憶情報の読み取りに入る(S36)。まず、端子部5に所定の順番で電圧,クロック等を与えていき、ホストコンピュータ28より受信したデータとICカード1との相互チェックを行い、正しい相手であることを確認する。
【0051】ホストコンピュータ28に管理されている記憶装置29内の勘定元帳ファイル29aから取引き可能な顧客である情報と、取引を許容するデータと残高情報や未記帳データがATM12に送信されてくる(S37)。ATM12では送られてきた残高情報や未記帳データを通帳形式フォーマットで取引日時順に編集し(S38)、その『取引履歴(残高情報)』と『印刷』キーを接客部21に表示する(S39)。この表示画面に従って顧客が『印刷』キーを押下すると(S40)、印刷処置が並行して行なわれる(S41)。なお、この印刷処理は後述する。
【0052】次に、ICカード1に取引履歴情報を記憶させることになるが、ICカード1から読み取った情報よりもそれ以降に取引を行なった情報、即ち,未記帳取引データが存在した場合を説明する。なお、取引履歴情報の格納はEEPROM9a(図8ではEEPROM−1)から行ない、EEPROM9aに記憶可能エリアがなくなったらEEPROM9b(図8ではEEPROM−2)に格納させるように制御され、最後に格納する取引履歴情報の次記憶エリアには管理フラグ11eを格納し、そしてEEPROM9bの記憶エリア11fの最後まで格納したら、EEPROM9aの記憶エリア11dの古い取引履歴情報を消去して、その消去した記憶エリア11dに管理フラグ11eを格納するよう予めプログラムされている。
【0053】なお、複数の取引履歴情報を格納し、最後の記憶エリアまで格納しても未格納取引履歴情報が存在したら、最初の記憶エリア11d側の取引履歴情報を全て消去して、第1の記憶エリアから該未格納取引履歴情報を格納することも言うまでもない。
【0054】主制御部25は読取ったEEPROM9a,9b内の記憶エリアを示す管理フラグ11eを検索し、管理フラグ11eが検出されてた記憶エリアから取引履歴情報を格納していく。
【0055】ステップ42において、管理フラグ11fがEEPROM9aに格納されている場合には、未記帳分を含めた取引履歴情報の格納が可能であるか否かを取引情報量で比較する(S43)。格納が可能であればEEPROM9aに取引履歴情報と更に格納が可能であれば管理フラグ11fを再度セットし、それらの情報をICカードに記憶させる(S44)。
【0056】ICカード1内の情報の更新が終了したら端子部5との電気的接続を断ち、ICカード1をサーマルヘッド33まで搬送して熱可逆性シール貼付部4の印刷をまず消去し、続けて最終取引履歴情報(本実施例では最終取引日と残高金額)を印刷する(S45)。なお、最終取引履歴情報の印刷要否は予めICカード1またはATM12に設定登録しておくことにより、省略することもできる。
【0057】次に、ICカード1を磁気ヘッド31部まで搬送して、磁気ストライプ2の磁気記録情報の更新を行なう。並行して明細票処理部14は取引明細票42a(又は42b)を所定長だけ繰り出して、カッタ45により切断後、印刷部46により印刷してカード挿入返却口13aまで搬送する。ICカード1と取引明細票42をカード挿入返却口13aまで排出し、顧客によりそれらが抜き取られたことが図示しない手段により検出されたらATM12での取引が終了する。以上の動作が完了すると、ホストコンピュータ28に処理終了が送信されて、記憶装置29内の勘定元帳ファイル29aが更新され処理が完結する。
【0058】なお、顧客がICカード1と取引明細票42を取り忘れたことが検知されると取込ボックス47に取込み保管することになる。また、磁気記録情報の更新を記載したが、取引内容によっては省略できることもある。更に、ICカード1に取引履歴情報を格納した時点で、ホストコンピュータ28で記憶管理していた未記帳データを抹消することも可能である。
【0059】ステップ43においてEEPROM9aに未記帳分の全取引履歴情報の格納が不可能であるについて説明すると、まずEEPROM9aに格納可能な取引件数までの取引履歴情報を格納更新する(S47)。続けてEEPROM9bに格納している全ての取引履歴情報を消去して、新たにステップ47で格納した残りの取引履歴情報の格納を行なう(S48)。
【0060】ここで、EEPROM9dに取引履歴情報を格納しても更に残情報として取引履歴情報が存在する場合には(S49)、後述するステップ53に移行する。
【0061】ただし、このような事態は格納すべき最大取引件数を加味してEEFPROM9aの記憶容量を決定しておけばよいので通常では発生しないようにすることが可能である。
【0062】ステップ49でEEPROM9dに残りの取引履歴情報の格納を行ない、残情報がなければ管理フラグ11fを再度セットし、それらの情報をICカードに記憶させ、前述ステップ45に移行する。
【0063】ステップ42において、EEPROM9dに管理フラグ11fが検知された場合には、EEPROM9dに未記帳分の取引履歴情報を含めて格納が可能であるか否かを情報量で比較する(S50)。格納が可能であればEEPROM9dに取引履歴情報と更に管理フラグ11fを再度セットし、それらの情報をICカード1に記憶させる(S51)。
【0064】続けてステップ50においてEEPROM9bに未記帳分の全取引履歴情報の格納が不可能であるについて説明すると、まずEEPROM9bに格納可能な取引件数までの取引履歴情報を格納更新する(S52)。続けてEEPROM9aに格納している全ての取引履歴情報を消去して、新たにステップ52で格納した残りの取引履歴情報の格納を行なうことになる(S53)。
【0065】ここで、EEPROM9aに取引履歴情報を格納しても更に残情報として取引履歴情報が存在する場合には(S54)、前述したステップ48に移行する。
【0066】次にステップ41による印刷処理について説明する。図9は電子記帳明細の画面表示例であり、ステップ40で印刷要求が有るとこのような画面を表示する。これはICカード1に格納する取引履歴情報としての未記帳データであり、従来の通帳形式フォーマットと同様に画面表示される。ここで顧客が『印刷』ボタンを押下すると通帳処理部16に起動がかかる。
【0067】通帳処理部16では帳票繰出ローラ68aを帳票69に圧接し、更に右回転駆動させて帳票69を矢印D方向に繰出して印字ヘッド63まで搬送して、図10に示すように帳票69に印刷を行ない通帳挿入返却口16aまで搬送し、接客部21に『印刷が終了しましたので帳票をお取りください』と表示し、顧客による帳票69の抜き取りを促す。顧客により帳票69が抜き取られたことが図示しない手段により検知されたら帳票印刷処理が終了したことになる。
【0068】ここで帳票69について説明すると、帳票69は通帳17とほぼ同外形をしていて表面側は図10に示したように罫線や年月日,摘要欄等がすでに印刷してあるもので前記の印刷は印刷日付や取引内容のみを印刷すればよいことになっている。
【0069】また印刷可能行数も通帳のそれより5行程度多く設定してある。更に裏面は白紙状態又は淡い色彩の印刷が施してあり、罫線等の印刷はない。なお、従来の通帳では改行間隔が5.08mmが一般的であるが、本帳票69では第1行目から連続して印刷するため改行間隔4.23mmに設定も可能であり、図に対して更に5行程度の印字処理行を増加することもできる。
【0070】従来の通帳例を図19に示したので簡単に説明すると、17aは磁気ストライプであり、ICカード1の磁気ストライプ2と同様な磁気データが記録されている。17bはページマークであり、通帳の開かれた頁を識別するためのもので、17cはセンタホールドであって複数の中紙の綴じ合わせ部であり、ここを折り目として2つ折りされている。
【0071】更に、図示しない選択画面を表示して、例えば過去の取引履歴情報である自動口座引落情報の中から電気料金などを集計して表示するサービスを提供する場合を説明する。図示しない顧客誘導画面表示により、顧客がサービスを要求すると、ICカード1内より取引履歴情報を読み出して、例えば図11に示したような電気料金の月別データの過去2年分を編集しグラフ表示する。
【0072】ここで顧客が『印刷』ボタンを押下すると、前記帳票69を繰出して印刷することになる。なお、『終了』ボタンを押下するとこのサービスは終了できる。通帳処理部16では帳票繰出ローラ68bを帳票69に圧接し、更に左回転駆動させて帳票69を矢印E方向に繰出して印字ヘッド63まで搬送して、図12に示すように帳票69に印刷を行ない通帳挿入返却口16aまで搬送し、接客部21に『印刷が終了しましたので帳票をお取りください』と表示し、顧客による帳票69の抜き取りを促す。なお、帳票69への印刷は裏面に行なわれている。
【0073】顧客により帳票69が抜き取られたことが図示しない手段により検知されたら帳票印刷処理が終了したことになる。このように帳票69の裏面に印刷する場合には罫線を含む全ての線や文字を印刷することになるが、種々の異なるサービス画面に対応できるため自由度がある。なお、帳票69の隅に設けられた切欠き69aは表裏を確認するために設けられたもので、印刷前に図示しないセンサによりこの切欠き69aの有無を検出している。
【0074】以上の説明は取引履歴情報が取引日時順にICカード1内に格納されることを前提にして説明したが、多種多様な取引システムにおいてはICカードによる取引が許容されておらず、磁気ストライプの磁気記録情報により取引が行なわれた場合では、取引履歴情報が取引順に格納されていないことがある。図13は多機能カードによる多種多様な取引形態の一例を示す概念図で、図14は多機能カードヘの取引履歴情報の格納と表示の概念を示す説明図であり、同図に従って説明する。
【0075】ATM12はTC27(図示しない)を介して通信回線30によりホストコンピュータ28に接続されていることは前述の通りである。12aは、例えば他の金融機関に設置されているATMであり、通信回線30aにより他の金融機関の保有するホストコンピュータ28aに接続され、更にネットワーク回線70を介して前述したホストコンピュータ28と接続可能に形成されている。
【0076】12bは、例えばオフラインシステムとして企業内や店舗内などに設置される現金支払装置(以後、CDとする)12bであり、顧客口座毎に預貯金残高情報などを格納した記録媒体71の情報に基づき、現金の支払取引を可能にしているものである。
【0077】この記録媒体71は、所定の時間毎にCD12bより現金収納庫等と同時に運び出された後、記憶装置29に記録情報を取り込ませ、記憶装置29内の勘定元帳ファイル29aの預貯金残高情報を更新する。そして、再度最新情報を記録し、支払取引用の現金とともにCD12bに装着され運用される。
【0078】図14において、取引履歴1〜3(符号11e′)はICカード1内に格納済みの取引履歴情報であり、最終取引として取引履歴3が格納されているものである。取引履歴4〜6(符号29a′)はICカード1へ取引履歴情報として格納されていない、未記帳データであり記憶装置29に記憶・保管されているものである。
【0079】取引履歴7(符号12b′)はCD12bによりオフライン取引された取引履歴情報であり、取引履歴8(符号12a′)は他の金融機関で取引(他行取引)された過去の情報である。取引履歴9が現在取引を進めている取引履歴情報である。この現取引において取引履歴4〜6及び取引履歴9を格納する時点で取引履歴7,8はホストコンピュータ28に情報が送信されておらず勘定元帳ファイル29a内に記憶されていないものであり、ICカード1には現時点では取引履歴7,8の格納することはできない。よって、取引履歴7,8を受信した時点以降の取引において、それらの取引履歴情報をICカード1に格納することになる。なお、ホストコンピュ−タ28では取引履歴7,8を受信すれば、取引日時順に並び換えて記憶装置29内に格納することも可能である。
【0080】このように取引日時順ではない状態で取引履歴情報がICカード1に格納された場合においても、図9や図10に示した画面表示や帳票印刷時には取引順になるようにICカード1のMPU又はATM12が日付情報を検索して取引日時順に加工編集することになる。
【0081】次に取引日時順表示のための加工編集をATM12を使用した取引の場合を説明するが、ICカード1の挿入から返却までの操作や動作は前述した通りであるので省略し、要部のみを説明する。ATM12は未記帳データとして取引履歴4〜6を受信すると、一旦記憶部23に格納し、次にICカード1から取引履歴情報1〜3を読み出して、それらの取引履歴情報1〜6の全ての取引日時を検索して、その日時に対応する取引履歴情報順に接客部21に表示する。
【0082】ICカード1への取引履歴4〜6の格納に際して、取引履歴4〜6が取引日時順でなければ主制御部25により取引日時順に並び換えてICカード1内の管理フラグ11fがセットされている格納エリアから順次記憶する。なお、ATM12に送信したICカード1からの取引履歴情報1〜3が取引日時順でない場合でもATM12側で取引日時を検索して、その日時に対応する取引履歴情報順に接客部21に表示するが、ICカード1側で取引日時順に並び換えてATM12に送信しても良いことは言うまでもないが、未記帳データを加えた後に再度ATM12側で並び換えのための動作が行なわれるため有用性がない。
【0083】次に多機能カードとして、更に他用途として扱われる「電子マネー」としての使用形態について説明する。電子マネーとして商取引を行なう都度、ICカード1を使用する必要があるため、取扱い頻度が増加すると残高不足になり“資金補充”が必要でICカード1への資金充填を行なうものである。顧客の口座からICカード1に電子マネーとして充填(資金移動)する場合を、図15に示す本発明の電子決済のフローチャートにより説明する。
【0084】まず顧客がATM12に近づくとこれを検知し、接客部21に顧客誘導画面を表示する。ここで顧客が『電子取引』を押下すると顧客誘導画面表示に切り替わり(S61)、次に『カードを入れて、暗証番号を入力してください』と表示点滅する。
【0085】ICカード1がカード挿入返却口13aから挿入されると(S62)、カード処理部13まで取込み磁気ストライプ2に記憶されている情報を読み取り、磁気記録情報によりICカードであることが判断されると、端子部5を介して記憶情報を読み取る(S63)。顧客により暗証番号が入力されると(S64)、ステップ63で読み取ったICカード1内に記憶されていた暗証番号との照合が行なわれる(S65)。ステップ63において読み取ったICカード1内の暗証番号と、同一であることが判定できたらステップ68の処理となる。
【0086】ステップ65において同一データが存在しない場合には、『暗証番号が違います、もう一度暗証番号を入力してください』と顧客誘導画面表示に文言を付加し、再度の入力を促す。この再入力を所定回数行なっても暗証番号の一致が確認できない場合には(S66)、『暗証番号が違いますのでお取引できません』などと表示してICカード1をカード挿入返却口13aから排出して処理を終了する(S67)。
【0087】暗証番号の入力により顧客が識別されるとホストコンピュータ28に接続され(S68)、記憶装置29内の勘定元帳ファイル29aから預貯金残高情報が検索される。ATM12に返信された預貯金残高情報等を編集し、接客部21に図16に示したように残高情報の表示と出金額の指示入力画面及び出金は現金又は電子マネーとしてICカード1に充填するかを選択させる顧客誘導画面を表示する(S69)。
【0088】『電子通貨』を選択すると(S70)、ICカード1内に記憶されていた電子マネー残高情報に対し、更に○○円の資金移動が可能であるかが表示され、この画面表示を参照し顧客は必要な金額を入力する(S71)。ATM12の主制御部25ではICカード1の電子マネー残高情報に出金額を加算処理して取引限度額内であるかを判断する(S72)。取引限度内であればICカード1の残高情報を更新する(S73)。
【0089】なお、ステップ72で取引限度額以上と判断された場合には最高出金額を表示して顧客に訂正入力と確認操作を要求することになる。ICカード1をカード挿入返却口13aから排出し(S74)、抜き取られたことが図示しない検知手段により検知されると(S75)、ATM12での出金処理が終了したことになる。そして出金額がホストコンピュータ28に送信され、勘定元帳ファイル29a内の顧客の預貯金残高情報が更新されて(S76)、すべての処理が完結することになる。
【0090】続いて、ステップ70で顧客が『現金』を選択した場合を述べる。これは顧客がICカード1内の残高表示した画面表示をみて、電子マネーとしての充填が不要であると判断した場合や、現金としての出金をこの時点で希望する場合である。
【0091】まず、出金額が入力され預貯金残高情報から出金可能の確認が行なわれると、貨幣処理部19から指示された金種の貨幣を繰り出して、所定の搬送路を搬送しながら鑑別・計数して接客口19c,19dまで貨幣を搬送して待機する(S77)。
【0092】一方、ICカード1には取引記録として前記出金取引の説明で述べた方法で取引履歴情報として記憶させて、カード挿入返却口13aから排出し(S78)、抜き取られたことが図示しない検知手段により検知されると(S79)、シャッタ20a,20bを開いて貨幣の取り出しを可能にする(S80)。貨幣を取り出したことが図示しない検知手段により検知されると(S81)、シャッタ20b,20bを閉めてステップ76に移行する。以上で顧客の保有するICカード1への資金(電子マネー)の充填処理が終了したことになり、充填額又は現金支払額がホストコンピュータ28に送信され、記憶装置29内の顧客の預貯金残高情報が更新されてすべての処理が完結することになる。
【0093】以上、図15に記載した電子決済のフローチャートにより電子マネーの充填取引を説明したが、ステップ70における指示入力について他の実施例を述べる。図16において、顧客が例えば『電子通貨,1,2,万,現金,3,万,8,千,確認』と押下した場合には、ステップ72において電子マネーとして12万円をICカード1に充填し、ステップ77により現金3万8千円を出金し、全述した各ステップにより並行処理を進める。なお、ステップ76において合計15万8千円を顧客の預貯金残高情報より減額することは言うまでもない。
【0094】以上、多機能カードとして、金融機関において入出金取引を行なう際に使用する顧客識別カード(キャッユカード),カード型通帳,電子マネーによる商取引を行なうための電子財布機能を例に説明したが、更に振込カード機能として振込先情報をICカード内に格納してあるので振込みのための操作入力を軽減できる。
【0095】最後に多機能カードとして使用しているICカード1内の電子マネー残高や入出金取引などの取引履歴情報等を表示可能な個人用端末について説明する。なお、この個人用端末は金融機関等が貸し出すものに限定されるものではなく、所定の規格に合致した機能を有しているものであれば市販品でも問題はない。
【0096】図17が個人用端末の使用状態を示す説明図で、図において50は個人用端末であり開口部51よりICカード1が矢印F方向より挿入可能になっている。52はICカード内に記憶している情報や操作表示等を行なう表示部で、53a〜53fは各種の操作を行なうための操作キーである。
【0097】53a,53bは表示したい情報を検索するための操作キーであり、例えば表示情報の前取引情報を検索する場合には上向きの操作キー53aを押下し、後取引情報を検索する場合には下向きの操作キー53bを押下する。53c,53dは表示画面の桁数内に納まらない情報を検索するために画面を左右にスクロール可能な操作キーである。53eはモード設定キーであり、表示を希望する情報を指定するために操作するキーであり、予め取り決められた順序で記憶情報の表示を切り換える。
【0098】53fはクリアキーであり、初期画面に戻すためのものでICカード1が挿入された後に押下されると、端子部5に所定の順序で電圧,クロックを与えていく機能も有している。
【0099】更に個人用端末50には図示しないが、挿入されたICカード1を検出する挿入検出部54やICカード1と通信制御を行なうための所定のプログラムや読み取った記憶情報を一時的に記憶可能なメモリ部55や、更に各種操作キー情報の制御等を行なう制御部56と、以上の各部に電力を供給するバッテリーである電源部57を有している。なお、上記の制御部56はICカード内の記憶情報を読取り、編集して表示を制御するものであるが、情報の格納や更新はできないように予めプログラムされている。
【0100】入出金取引などの表示操作において、ICカード1内に格納された取引履歴情報が取引日時順でない場合には、ICカード1側のMPUで取引日時を検索して、その日時に対応する取引履歴情報順に表示部52に表示するが、個人用端末50側で取引日時順に並び換えて表示部52に表示しても良いことは言うまでもない。
【0101】次に図18を加えて操作内容を説明する。顧客(個人)が所有する個人用端末50の開口部51に矢印F方向からICカード1を挿入し、所定の位置まで挿入されたことを図示しない挿入検出部54が検出すると、端子部5と電気的な接続を可能とする。
【0102】顧客がクリアキー53fを押下すると、ICカード1内の記憶情報を予め定められた手順で読み取る。制御部56はこの読み取った情報をメモリ部55に記憶されている所定のフォーマットに従って編集し、表示部52に表示させる。この表示は、例えば図2に示した取引履歴情報11d,11eであれば最終情報(取引履歴情報3の記憶エリアに格納)であり、図10に示した取引内容であれば、「平成7年12月21日のカードによる、35万円の引出取引」時の最終残高を図17に示したように表示することになる。
【0103】顧客が表示した最終取引履歴情報の前取引情報を検索する場合には、操作キー53aを押下すると画面を矢印G方向にスクロールすることにより、図18(a)に示したように前の取引情報を順次表示する。また逆に操作キー53bを押下すると、取引情報は格納されていないため図18(b)に示したように「データなし」を表示することになる。また、操作キー53cを押下すると図18(c)に示したように表示を矢印K方向にスクロールする。なお、操作キー53dを押下するとを矢印K方向とは反対の方向にスクロールすることは言うまでもない。
【0104】モード設定キー53eを押下すると、所定の順序で表示科目を切り換える。例えば、取引履歴情報→振込先情報→電子マネー残高情報→その他サービス情報を順次切り換えて再度、取引履歴情報に戻る。図18(d)に示したものが電子マネーとしての残高情報で、図18(e)に示したものが、サービス画面としての表示例であり、図では1年間の電気使用料の合計額を表示している。
【0105】このように個人用端末を使用することにより、自動取引装置を使用する必要もなく取引履歴情報を確認できるため、従来の通帳同様の機能を果たすことができる。更に個人用端末は小型化が可能でポケットに入る程度の大きさにすることが可能である他、制御部や操作部および表示部を有することから、携帯型電話器やポケットベル、および電卓などとの兼用を考慮することも容易であるから、顧客にとって煩わしいものではない。
【0106】
【発明の効果】以上説明したように本願発明は、ICカードと自動取引装置間の信号を送受信するための接点を接触式の電気的結合部としたので、既存の自動取引装置においてカード処理部の一部改造と、ICカードの読取りと書込み制御を行なえるようにプログラム変更すれば、安価で多機能を保有したICカードを扱える自動取引装置を提供できる。また1枚のICカード内に種々の用途に対応した取引情報を格納したので顧客にとって利便性が良いという効果を奏する。更に、取引履歴情報としてICカード内に記憶するとともに、帳票に印刷して発行したり、更にICカードの表面には最終取引時の残高情報などを取引毎に表示記録するためのサービスを提供できるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の多機能カードを示す概略図である。
【図2】本発明の多機能カードのデータフォーマット例を示す説明図である。
【図3】本発明の自動取引装置の外観図である。
【図4】本発明の自動取引装置の制御ブロック図である。
【図5】本発明のカードリーダ・レシートプリンタの概要を示す説明図である。
【図6】本発明の通帳処理部の概要を示す説明図である。
【図7】本発明の出金取引処理を示すフローチャートである。
【図8】本発明の電子記帳処理を示すフローチャートである。
【図9】本発明の電子記帳の画面表示例を示す説明図である。
【図10】本発明の帳票印字結果を示す説明図である。
【図11】本発明の画面表示例を示す説明図である。
【図12】本発明の帳票印字結果を示す説明図である。
【図13】本発明の多機能カードによる取引形態の一例を示す概念図である。
【図14】本発明の多機能カードへの取引履歴情報の格納と表示の概念を示す説明図である。
【図15】本発明の電子決済処理のフローチャートである。
【図16】本発明の顧客誘導画面を示す説明図である。
【図17】本発明の個人用端末の使用状態を示す説明図である。
【図18】本発明の個人用端末における表示例を示す説明図である。
【図19】従来の通帳における取引印字結果を示す説明図である。
【符号の説明】
1 多機能カード(ICカード)
2 磁気ストライプ
5 端子部
9a EEPROM−1
9b EEPRPM−2
10 マイクロプロセッサ(MPU)
11 カードデータ
12 自動取引装置(ATM)
13 カード処理部
13a カード挿入返却口
14 明細票処理部
25 主制御部
28 ホストコンピュータ
29 記憶装置
29a 勘定元帳ファイル
34 ICカードリーダライタ部
34a 接触子
42 取引明細票
50 個人用端末
52 表示部
68 印字ヘッド
69 帳票
71 記録媒体

【特許請求の範囲】
【請求項1】 複数回分の取引情報の記憶エリアを備え、該取引情報を取引順に前記記憶エリアに格納可能なICカードを使用する多機能カードシステムにおいて、前記記憶エリアの全てに取引情報が格納されても、更に取引情報の格納が必要の時に最先の記憶エリアに格納されている取引情報を抹消し、該抹消した記憶エリアに前記取引情報を格納することを特徴とする多機能カードシステム。
【請求項2】 請求項1記載の多機能カードシステムにおいて、前記ICカードには複数の記憶素子を設け、各記憶素子に複数の記憶エリアを有することを特徴とする多機能カードシステム。
【請求項3】 請求項1及び2記載の多機能カードシステムにおいて、前記ICカードをカード型通帳として位置づけ、金銭の入出金取引における取引履歴情報を格納することを特徴とする多機能カードシステム。
【請求項4】 請求項2記載の多機能カードシステムにおいて、前記ICカードの複数の記憶素子とは電気的に接続可能な端子部を介して、取引履歴を記憶することを特徴とする多機能カードシステム。
【請求項5】 請求項2記載の多機能カードシステムにおいて、前記記憶素子は電気的に記憶情報の消去及び再書込みが可能な不揮発性メモリであることを特徴とする多機能カードシステム。
【請求項6】 請求項3記載の多機能カードシステムにおいて、前記ICカードを取込み、該ICカード内に格納している取引情報の読み取り及び書込みが可能なカード処理部を有する自動取引装置を設け、該自動取引装置と回線接続されるホストコンピュータと、該ホストコンピュータに管理される未記帳取引履歴情報を記憶する記憶装置とを接続し、前記自動取引装置は、前記未記帳取引履歴情報を受信し、それらの情報をICカードに格納している最終取引履歴情報の次の記憶エリアに格納することを特徴とする多機能カードシステム。
【請求項7】 請求項3記載の多機能カードシステムにおいて、前記ICカードを取込み、該ICカード内に格納している取引情報の読み取り及び書込みが可能なカード処理部を有する自動取引装置を設け、該自動取引装置と回線接続されるホストコンピュータと、該ホストコンピュータに管理される未記帳取引履歴情報を記憶する記憶装置とを接続し、前記自動取引装置は、前記未記帳取引履歴情報を受信し、それらの情報をICカードに格納している取引履歴情報の次の記憶エリアに未記帳取引履歴情報を取引順に格納することを特徴とする多機能カードシステム。
【請求項8】 請求項3記載の多機能カードシステムにおいて、前記ICカードを取込み、該ICカード内に格納している取引情報の読み取りが可能なカード処理部と、顧客に対して顧客誘導画面と操作入力画面を表示する接客部と、取引情報を所定のフォーマットに編集可能な制御部とを有する自動取引装置を設け、該自動取引装置と回線接続されるホストコンピュータと、該ホストコンピュータに管理される未記帳取引履歴情報を記憶する記憶装置とを接続し、前記自動取引装置はICカードに格納されている取引情報の読み出しと、前記未記帳取引履歴情報を受信し、それらの情報を取引種別に編集し、前記接客部に表示することを特徴とする多機能カードシステム。
【請求項9】 請求項3記載の多機能カードシステムにおいて、前記ICカードを取込み、該ICカード内に格納している取引情報の読み取りが可能なカード処理部と、顧客に対して顧客誘導画面と操作入力画面を表示する接客部と、取引情報を所定のフォーマットに編集可能な制御部とを有する自動取引装置を設け、該自動取引装置と回線接続されるホストコンピュータと、該ホストコンピュータに管理される未記帳取引履歴情報を記憶する記憶装置とを接続し、前記自動取引装置はICカードに格納されている取引情報の読み出しと、前記未記帳取引履歴情報を受信し、それらの情報を合成して取引順に編集し、前記接客部に表示することを特徴とする多機能カードシステム。
【請求項10】 請求項6及び7記載の多機能カードシステムにおいて、格納した前記未記帳取引履歴情報の次の記憶エリアに現取引情報を格納することを特徴とする多機能カードシステム。
【請求項11】 請求項5,6,7記載の多機能カードシステムにおいて、前記ICカードの記憶エリアが満杯になったら、最前の取引履歴情報が格納されている記憶素子側の取引履歴情報を消去し、該記憶素子に格納すべき取引履歴情報を格納することを特徴とする多機能カードシステム。
【請求項12】 請求項8記載の多機能カードシステムにおいて、前記自動取引装置には帳票収納部と搬送路及び該搬送路の一部に設けた帳票印刷部とを設け、顧客により接客部に表示した情報の印刷指示入力があった場合には、前記帳票収納部より帳票を繰り出し、前記表示情報を印刷して発行することを特徴とする多機能カードシステム。
【請求項13】 請求項10記載の多機能カードシステムにおいて、前記取引履歴情報の格納が完了したら、次の記憶エリアに管理フラグを格納することを特徴とする多機能カードシステム。
【請求項14】 請求項12記載の多機能カードシステムにおいて、前記帳票収納部及び帳票印刷部は通帳処理部に設けられ、通帳処理機能を兼用することを特徴とする多機能カードシステム。
【請求項15】 請求項12記載の多機能カードシステムにおいて、前記帳票収納部から前記搬送路への帳票繰出手段を複数個設け、一方の帳票繰出手段は帳票の表裏を反転させる方向であることを特徴とする多機能カードシステム。
【請求項16】 請求項13記載の多機能カードシステムにおいて、前記ICカードに格納している最終取引履歴情報は前記管理フラグを検索することにより判定し、該管理フラグの格納されている記憶エリアから未記憶情報を格納していくことを特徴とする多機能カードシステム。
【請求項17】 請求項15記載の多機能カードシステムにおいて、前記未記帳取引履歴情報以外の印刷時には、帳票の表裏を反転させる方向に繰出すことを特徴とする多機能カードシステム。
【請求項18】 取引情報の記憶エリアを備え、該取引情報を取引順に前記記憶エリアに格納可能なICカードを有する多機能カードシステムにおいて、前記ICカードの表面上に熱可逆性シール部を設け、該熱可逆性シール部への印刷部を有し、前記ICカードに格納している取引情報の読み取り及び書込みが可能なカード処理部とを有する取引装置を設け、取引情報を前記熱可逆性シール部に印刷することを特徴とする多機能カードシステム。
【請求項19】 請求項18記載の多機能カードシステムにおいて、前記熱可逆性シール部への印刷情報は最終取引情報であることを特徴とする多機能カードシステム。
【請求項20】 ICカードからの情報の読取部と表示部及び表示の切換操作部を有する個人用端末を設け、ICカード内に格納されている取引科目毎の取引情報を順次表示可能な制御部を有することを特徴とする多機能カードシステム。
【請求項21】 請求項20記載の多機能カードシステムにおいて、ICカード内から取引履歴情報を読み出して、取引日時順に前記表示部に表示することを特徴とする多機能カードシステム。
【請求項22】 請求項20及び21記載の多機能カードシステムにおいて、 前記表示される取引日時順は最新の取引より開始され、操作部よりの指示操作により順次スクロールされることを特徴とする多機能カードシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図9】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図16】
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【図14】
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【図17】
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【図18】
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【図15】
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【図19】
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