説明

多機能工具

【課題】ドライバーとしても兼用することができる工具を提供する。
【解決手段】工具を構成する第一の部材201及び第二の部材202の各々の先端には、第一の部材201及び第二の部材202が相互に接したときに、第一の部材201及び第二の部材202が協働してプラスのドライバーを構成する凹部211、212、213、221、222、223が形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は複数の機能を有する多機能工具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、原則的には、工具には一つの機能しか付与されておらず、その機能以外の機能の実施を必要とする場合には、当該機能を有する工具を用意することが必要であった。
【0003】
例えば、ニッパには、線状部材その他の目的物を切断する機能のみが付与されている。
【0004】
例外的に、ペンチには、ワイヤーその他の線状部材を挟み込む機能の他に、その線状部材を切断する機能も付与されている。これは、これら二つの機能が、同一の動作を行うことにより、実行可能であるからである。すなわち、ペンチを構成する二つの部材を相互に開いた後、相互に閉じるという動作を行うことにより、目的物を挟み込むこともできるし、あるいは、目的物を切断することもできるためである(ただし、目的物を挟み込むための領域と目的物を切断するための領域とは相互に異なっている)。
【0005】
なお、先行技術の調査を行った結果、本発明に対する適当な先行技術文献が発見されなかったため、特許文献は提示しない。
【特許文献1】なし
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
工具の中で最も使用頻度が高い工具はドライバーであると一般に言われている。
【0007】
しかしながら、従来は、ドライバーはそれ単独で用意することが必要であり、他の工具で兼用することは不可能であった。
【0008】
本発明は、このような問題点に鑑みてなされたものであり、ドライバーとしても兼用することができる工具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
以下に、「発明の実施の形態」において使用される参照符号を用いて、上述の課題を解決するための手段を説明する。これらの参照符号は、「特許請求の範囲」の記載と「発明の実施の形態」の記載との間の対応関係を明らかにするためにのみ付加されたものであり、「特許請求の範囲」に記載されている発明の技術的範囲の解釈に用いるべきものではない。
【0010】
上記の目的を達成するため、本発明は、第一の部材(201)と、第二の部材(202)と、からなる工具であって、前記第一の部材(201)と前記第二の部材(202)とを回動中心点を中心として相互に回動可能であるように連結し、前記第一の部材(201)及び前記第二の部材(202)の一端側においてその工具の機能を実行する機能部(201a、202a)を構成し、前記第一の部材(201)及び前記第二の部材(202)の他端側において使用者が前記工具を保持するための把手(201c、202c)を構成する工具において、前記第一の部材(201)及び前記第二の部材(202)の各々の前記一端側の先端は、前記第一の部材(201)及び前記第二の部材(202)が相互に接したときに、前記第一の部材(201)及び前記第二の部材(202)が協働してプラスまたはマイナスのドライバーを構成するように、形成されていることを特徴とする工具(200、250、300)を提供する。
【0011】
例えば、前記第一の部材(201)及び前記第二の部材(202)の各々の前記一端側の先端に形成された複数の凹部により前記プラスまたはマイナスのドライバーが構成される。
【0012】
前記工具(200、250、300)としては、例えば、ラジオペンチがある。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係る工具においては、第一の部材及び第二の部材の先端において、第一の部材と第二の部材とが相互に接したときに、第一の部材と第二の部材とが協働してプラスまたはマイナスのドライバーを構成する。このため、本発明に係る工具は、その工具本来の機能を発揮するための工具として使用することができるのみならず、第一の部材と第二の部材とを相互に閉じた状態において、プラスまたはマイナスのドライバーとしても兼用することができる。このため、別個にプラスまたはマイナスのドライバーを用意する必要がなくなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
(第一の実施形態)
図1は本発明の第一の実施形態に係るラジオペンチ200の分解斜視図である。
【0015】
本実施形態に係るラジオペンチ200は、第一の部材201と、第二の部材202と、止めピン204と、から構成されている。
【0016】
止めピン204は、図1に示すように、ピン軸204aと、ピン軸204aの一端においてピン軸204aと同心に形成され、ピン軸204aよりも大きな直径を有するヘッド204bと、から構成されている。
【0017】
ヘッド204bにはマイナスのドライバーを挿入するためのスリット204cが形成されており、ピン軸204aの他端には先端から所定の距離にわたって雄ネジ溝204dが切られている。
【0018】
第一の部材201及び第二の部材202は、例えば、鋼鉄製であり、以下に述べるように、協働してラジオペンチ200を構成する。
【0019】
第一の部材201は、第二の部材202と協働して対象物(図示せず)を挟み込む機能を実行する挟み込み領域を形成する先端部分201aと、第二の部材202と回動自在に連結するためのほぼ円筒形状の連結部分201bと、把手を構成する把手部分201cと、から構成されている。
【0020】
同様に、第二の部材202は、第一の部材201と協働して対象物(図示せず)を挟み込む機能を実行する挟み込み領域を形成する先端部分202aと、第一の部材201と回動自在に連結するための連結部分202bと、把手を構成する把手部分202cと、からなる。
【0021】
第一の部材201の先端部分201aのうち、第二の部材202に対向する面には、挟み込む対象物(図示せず)との間の摩擦力を増すための断面がギザギザ状の鋸歯状面207が形成されている。
【0022】
同様に、第二の部材202の先端部分202aのうち、第一の部材201に対向する面には、挟み込む対象物(図示せず)との間の摩擦力を増すための断面がギザギザ状の鋸歯状面208が形成されている。
【0023】
第一の部材201の連結部分201b及び第二の部材202の連結部分202bはともにほぼ円筒状に形成されている。第二の部材202の連結部分202bには、先端部分202a及び把手部分202cと比較して、高さが低くなっている凹部領域205が形成されている。この凹部領域205に第一の部材201の連結部分201bが嵌合し、第一の部材201の連結部分201bと第二の部材202の連結部分202bとが連結される。
【0024】
第一の部材201の連結部分201bには第一の部材201の回動中心点が存在し、同様に、第二の部材202の連結部分202bには第二の部材202の回動中心点が存在している。双方の回動中心点は同一の垂線X上に位置している。
【0025】
第一の部材201には、回動中心点を中心とし、連結部分201bの厚さ方向に貫通する孔206が形成されている。孔206はピン軸204aの直径と同一の内径を有している。このため、止めピン204は孔206に嵌合することができるようになっている。
【0026】
第二の部材202には、連結部分202bにおいて、第二の部材202の回動中心点を中心として、すなわち、垂線Xを中心として貫通孔209が形成されている。
【0027】
貫通孔209はピン軸204aの直径と同一の内径を有している。このため、止めピン204は貫通孔209に嵌合することができるようになっている。
【0028】
第一の部材201と第二の部材202とは、以下のようにして、連結される。
【0029】
まず、第一の部材201の連結部分201bを第二の部材202の凹部領域205に嵌め合わせる。
【0030】
次いで、止めピン204を孔206及び貫通孔209に通し、貫通孔209の裏側において、止めピン204の雄ネジ溝204dをナット(図示せず)に螺合させる。
【0031】
これにより、第一の部材201と第二の部材202とが相互に回転可能な状態で固定される。
【0032】
第一の部材201及び第二の部材202の各先端部分201a、202aが対象物(図示せず)を挟み込むための挟み込み領域を形成し、第一の部材201及び第二の部材202の把手部分201c、202cは使用者がラジオペンチ200を保持するための把手を構成する。
【0033】
図2は、第一の部材201及び第二の部材202を相互に閉じた状態において、本実施形態に係るラジオペンチ200を第一の部材201及び第二の部材202の先端部分201a、201bの方向から見たときの正面図である。
【0034】
図1及び図2に示すように、第一の部材201の先端部分201aの先端には、3つの凹部211、212、213が形成されている。
【0035】
図2に示すように、凹部211は鋸歯状面207に沿って第一の部材201の上方部分において形成されている。凹部212は第一の部材201の側面において形成されている。また、凹部213は鋸歯状面207に沿って第一の部材201の下方部分において形成されている。
【0036】
同様に、第二の部材202の先端部分202aの先端には、3つの凹部221、222、223が形成されている。
【0037】
図2に示すように、凹部221は鋸歯状面208に沿って第二の部材202の上方部分において形成されている。凹部222は第二の部材202の側面において形成されている。また、凹部223は鋸歯状面208に沿って第二の部材202の下方部分において形成されている。
【0038】
第一の部材201に形成されている凹部211、212、213と第二の部材202に形成されている凹部221、222、223とはそれぞれ左右対称の形状をなしているとともに、左右対称に位置している。
【0039】
このため、第一の部材201に形成されている凹部211と第二の部材202に形成されている凹部221とは、第一の部材201と第二の部材202とが相互に接したときに、協働して一つの凹部を形成する。第一の部材201と第二の部材202とが協働して形成する凹部は凹部212または第二の部材202の凹部222と同一の形状である。
【0040】
同様に、第一の部材201に形成されている凹部213と第二の部材202に形成されている凹部223とは、第一の部材201と第二の部材202とが相互に接したときに、協働して一つの凹部を形成する。第一の部材201と第二の部材202とが協働して形成する凹部は凹部212または第二の部材202の凹部222と同一の形状である。
【0041】
このように、第一の部材201の先端部分201aに凹部211、212、213が形成され、第二の部材202の先端部分202bに凹部221、222、223が形成されることにより、図2に示すように、第一の部材201と第二の部材202とを相互に閉じたときに、ラジオペンチ200の先端には、十字型の突起が形成される。
【0042】
この十字型の突起は本実施形態に係るラジオペンチ200をプラスのドライバーとしても使用することを可能にする。
【0043】
以上のように、本実施形態に係るラジオペンチ200はラジオペンチとして使用することができるのみならず、第一の部材201と第二の部材202とを相互に閉じた状態において、プラスのドライバーとしても兼用することができる。このため、別個にプラスのドライバーを用意する必要がなくなる。
【0044】
なお、第一の部材201に形成される凹部及び第二の部材202に形成される凹部の数は各3個に限定されるものではなく、また、第一の部材201に形成される凹部及び第二の部材202に形成される凹部の位置は図2に示した位置には限定されない。
【0045】
図3は、本発明の第一の実施形態の変形例に係るラジオペンチ250の正面図である。
【0046】
図3に示すように、本変形例に係るラジオペンチ250においては、第一の部材201には2個の凹部251、252が形成され、第二の部材202には2個の凹部253、254が形成されている。
【0047】
凹部251は第一の部材201の上半分の領域において形成され、鋸歯状面207を底面として一定の厚さを有する平板状の部分261と、第一の部材201の上半分と下半分の境界において平板状の部分261と直交する平板状の部分262とを画定している。
【0048】
凹部252は第一の部材201の下半分の領域において形成され、鋸歯状面207を底面として一定の厚さを有する平板状の部分263と、第一の部材201の上半分と下半分の境界において平板状の部分263と直交する平板状の部分262とを画定している。
【0049】
平板状の部分261と平板状の部分263とは同じ厚さを有している。また、平板状の部分262は凹部251及び252の双方により画定されている。
【0050】
凹部253は第二の部材202の上半分の領域において形成され、鋸歯状面208を底面として一定の厚さを有する平板状の部分264と、第二の部材202の上半分と下半分の境界において平板状の部分264と直交する平板状の部分265とを画定している。
【0051】
凹部254は第二の部材202の下半分の領域において形成され、鋸歯状面208を底面として一定の厚さを有する平板状の部分266と、第二の部材202の上半分と下半分の境界において平板状の部分266と直交する平板状の部分265とを画定している。
【0052】
平板状の部分264と平板状の部分266とは同じ厚さを有している。また、平板状の部分265は凹部253及び254の双方により画定されている。
【0053】
第一の部材201に形成された二つの凹部251、252及び第二の部材202に形成された二つの凹部253、254により、図3に示すように、第一の部材201と第二の部材202とを相互に閉じたときに、ラジオペンチ250の先端には、十字型の突起が形成される。
【0054】
第一の実施形態に係るラジオペンチ200と同様に、この十字型の突起は本変形例に係るラジオペンチ250をプラスのドライバーとしても使用することを可能にする。
【0055】
(第二の実施形態)
図4は、本発明の第二の実施形態に係るラジオペンチ300の部分的な斜視図である。
【0056】
本実施形態に係るラジオペンチ300は、第一の実施形態に係るラジオペンチ200と比較して、第一の部材201の先端部分201a及び第二の部材202の先端部分201bに形成される凹部の形状のみが異なり、その他は同一の形状を有している。このため、第一の実施形態に係るラジオペンチ200と同一の構成要素に対しては同一の参照符号を用いる。
【0057】
図5は、第一の部材201及び第二の部材202を相互に閉じた状態において、本実施形態に係るラジオペンチ300を第一の部材201及び第二の部材202の先端部分201a、201bの方向から見たときの正面図である。
【0058】
図4及び図5に示すように、第一の部材201の先端部分201aの先端には、鋸歯状面207を底面として一定の厚さを有する平板状の部分310を形成するような凹部301が形成されている。
【0059】
同様に、第二の部材202の先端部分202aの先端には、鋸歯状面208を底面として一定の厚さを有する平板状の部分320を形成するような凹部302が形成されている。
【0060】
図5に示すように、第一の部材201の平板状の部分310と第二の部材202の平板状の部分320とは、第一の部材201と第二の部材202とを相互に閉じたときに、協働して平板状の突起を形成する。すなわち、第一の部材201と第二の部材202とを相互に閉じたときに、ラジオペンチ300の先端には、平板状の突起が形成される。
【0061】
この平板状の突起は本実施形態に係るラジオペンチ300をマイナスのドライバーとしても使用することを可能にする。
【0062】
以上のように、本実施形態に係るラジオペンチ300はラジオペンチとして使用することができるのみならず、第一の部材201と第二の部材202とを相互に閉じた状態において、マイナスのドライバーとしても兼用することができる。このため、別個にマイナスのドライバーを用意する必要がなくなる。
【0063】
上述の第一及び第二の実施形態においては、第一の部材201と第二の部材202とを回動可能に連結するために止めピン204を用いたが、第一の部材201と第二の部材202とを回動可能に連結するための手段は止めピン204には限定されない。第一の部材201と第二の部材202とを回動可能に連結することができるものである限り、任意の手段を選択することが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0064】
上記の第一及び第二の実施形態においては、本発明を適用する対象として、ラジオペンチを選択したが、本発明の適用対象はラジオペンチには限定されない。
【0065】
第一の部材と、第二の部材と、からなる工具であって、第一の部材と第二の部材とを回動中心点を中心として相互に回動可能であるように連結し、第一の部材及び第二の部材の一端側においてその工具の機能を実行する機能部(上述の第一の実施形態における先端部分201a、202aに相当する部分)を構成し、第一の部材及び第二の部材の他端側において使用者が工具を保持するための把手(上述の第一の実施形態における把手部分201c、202cに相当する部分)を構成する工具であれば、いかなる工具に対しても本発明を適用することが可能である。
【0066】
例えば、ラジオペンチの他に、通常のペンチ、ニッパ、ケーブルカッター、エンビ管カッター、ダクトカッター、プライヤーなどに本発明を適用することが可能である。
【0067】
なお、ラジオペンチとは先端が先細になっている形状を有するものを指し、通常のペンチとはラジオペンチ以外のものを指す。
【図面の簡単な説明】
【0068】
【図1】本発明の第一の実施形態に係るラジオペンチの分解斜視図である。
【図2】本発明の第一の実施形態に係るラジオペンチの第一の部材及び第二の部材を相互に閉じた状態において、本実施形態に係るラジオペンチを第一の部材及び第二の部材の先端部分の方向から見たときの正面図である。
【図3】本発明の第一の実施形態の変形例に係るラジオペンチの正面図である。
【図4】本発明の第二の実施形態に係るラジオペンチの部分的な斜視図である。
【図5】本発明の第二の実施形態に係るラジオペンチの第一の部材及び第二の部材を相互に閉じた状態において、本実施形態に係るラジオペンチを第一の部材及び第二の部材の先端部分の方向から見たときの正面図である。
【符号の説明】
【0069】
200 本発明の第一の実施形態に係るラジオペンチ
201 第一の部材
201a 先端部分
201b 連結部分
201c 把手部分
202 第二の部材
202a 先端部分
202b 連結部分
202c 把手部分
204 止めピン204
204a ピン軸
204b ヘッド
204c スリット
204d 雄ネジ溝
205 凹部領域
206 孔
207、208 鋸歯状面
209 貫通孔
211、212、213、221、222、223 凹部
250 本発明の第一の実施形態の変形例に係るラジオペンチ
251、252、253、254 凹部
261、262、263、264、265、266 平板状の部分
300 本発明の第二の実施形態に係るラジオペンチ
301、302 凹部
310、320 平板状の部分

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一の部材と、第二の部材と、からなる工具であって、
前記第一の部材と前記第二の部材とを回動中心点を中心として相互に回動可能であるように連結し、前記第一の部材及び前記第二の部材の一端側においてその工具の機能を実行する機能部を構成し、前記第一の部材及び前記第二の部材の他端側において使用者が前記工具を保持するための把手を構成する工具において、
前記第一の部材及び前記第二の部材の各々の前記一端側の先端は、前記第一の部材及び前記第二の部材が相互に接したときに、前記第一の部材及び前記第二の部材が協働してプラスまたはマイナスのドライバーを構成するように、形成されていることを特徴とする工具。
【請求項2】
前記第一の部材及び前記第二の部材の各々の前記一端側の先端に形成された複数の凹部により前記プラスまたはマイナスのドライバーが構成されることを特徴とする請求項1に記載の工具。
【請求項3】
前記工具はラジオペンチであることを特徴とする請求項1または2に記載の工具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−183686(P2008−183686A)
【公開日】平成20年8月14日(2008.8.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−21294(P2007−21294)
【出願日】平成19年1月31日(2007.1.31)
【出願人】(000137546)株式会社マルト長谷川工作所 (7)
【Fターム(参考)】