説明

多段式の油分離機

【解決手段】改善された多段式の油分離機を提供し、特に低温技術における圧縮機に用いる油分離機を提供するために、油分離機は、ガス入口(18)及びガス出口(20)を有するハウジング(10)と、ハウジング(10)内のガス入口(18)とガス出口(20)との間にカスケード型として配置された少なくとも2つのフィルタ要素(26,28) とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多段式の油分離機に関し、特に低温技術における圧縮機に用いる油分離機に関する。
【背景技術】
【0002】
クライオポンプでは、ヘリウムが圧縮機によって約20乃至25バールに凝縮され、その後、約1乃至8バールの圧力まで膨張させることによってヘリウムは冷却される。このために、ヘリウムは高純度を有する必要がある。凝縮は、油の一部がヘリウムに入り込む油封式スクロール圧縮機を使用することによって通常行なわれる。凝縮又は凝固を回避するために、技術的に実現可能なできる限り多くの油を分離する必要がある。
【0003】
このために、油が一又は複数のフィルタユニットを通過する油分離機が従来利用されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許第4203739号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、改善された油分離機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の油分離機は、請求項1の特徴によって定義されている。
【0007】
請求項1によれば、油分離機は、多段式に構成されており、ガス入口及びガス出口を有するハウジングを備えている。少なくとも2つのフィルタ要素が、ハウジング内のガス入口とガス出口との間にカスケード型として配置されている。複数のフィルタ要素を共通のハウジング内に配置することにより、ハウジングのコストを下げることが可能になる。
【0008】
分離された油をハウジングから排出するために、油通路が、少なくともカスケード型の最後のフィルタ要素とガス出口との間に設けられており、分離された油を圧縮機システムに戻すことが可能であることが好ましい。フィルタ要素を鉛直方向に配置することにより、分離された油が重力の影響を受けてフィルタ要素上を流れ落ちることが可能である。この点に関して、油通路がハウジング内にフィルタ要素の近くに形成されている場合、それによって、フィルタ要素上を流れ落ちる油が前記油通路の方向に流れることが有利である。油を受けるために、溝がハウジングに形成されることが可能であり、溝は、受けた油を樋のように油通路に向かって導く。少なくとも1本の油通路がフィルタ要素の各々の背後に設けられていることが好ましい。油通路は、油を戻すために共通通路に挿入され得る。
【0009】
フィルタ要素は、共通のハウジングフランジに固定されることが可能であり、油は、ハウジングフランジを通って運ばれることにより戻され得る。この場合、フィルタ要素は、直径が異なる円筒状のカートリッジの外面によって形成されることが可能であり、少なくとも2つのフィルタカートリッジは、円筒状のカートリッジの共通する長手軸を中心に位置付けられている。この場合、2つのフィルタ要素は、共通する長手軸を中心にハウジングフランジの両側に配置されることが可能であり、つまり、フィルタカートリッジを鉛直方向に配置する際に、一方のフィルタ要素はハウジングフランジ上に直立して取り付けられ、他方のフィルタ要素はハウジングフランジから吊るされて取り付けられる。気体が円筒状のフィルタ要素を通って内部から外部へと通過する間に、気体はまず、ハウジングフランジを貫く通路を通って直径が小さい方のフィルタカートリッジの内部に導かれ、気体は、このフィルタ要素を通って流れた後、ハウジングフランジを貫く更なる通路を通って直径が大きい方のフィルタ要素の内部に導かれることが可能である。
【0010】
或いは、共通する軸を中心に配置された少なくとも2つのフィルタカートリッジがハウジングフランジの同一の側に配置される場合、それにより、フィルタカートリッジが互いに挿入されることが特に有利である。直径が小さい方のフィルタカートリッジは、直径が大きい方のフィルタカートリッジ内に完全に収容されることが好ましい。ハウジング内に入った気体は、ハウジングフランジを通ってフィルタカートリッジの内部に導かれることが可能であり、気体は、ハウジングフランジの同一の側で、共通する軸に対して径方向にフィルタ要素を通って外側に向かって流れる。更に、複数の相互に挿入されたフィルタ要素をハウジングの異なる側に配置するという組み合わせを想到することが可能であり、このような組み合わせでは、気体がまず、一方のハウジングフランジ側で相互に挿入されたフィルタカートリッジを通って径方向に流れ、その後、他方のハウジングフランジ側で相互に挿入されたフィルタカートリッジを通って径方向に流れる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】多段式の油分離機を示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の例示的な実施形態を、図面を参照して以下に更に詳細に説明する。
【0013】
前記油分離機は、ハウジングフランジ12及びハウジング蓋14を有する略円筒状の外側のハウジング10を備えている。ハウジング蓋14は、円筒状の鐘としてハウジングフランジ12上に設けられており、ハウジングフランジ12に着脱可能に取り付けられている。略円筒状のハウジング10の一端部側がハウジングフランジ12によって形成されており、他方の対向端部側がハウジング蓋14の一部によって形成されている。略円筒状のハウジング10は長手軸16に対して回転対称に構成されている。
【0014】
前記ハウジングフランジ12には、ガス入口18が長手軸16の領域に形成されている。ハウジング蓋14の一部によって形成された対向端部側には、ガス出口20が長手軸16の領域に形成されている。長手軸16は鉛直方向に向いている。
【0015】
ハウジング蓋14内に、略円筒状の2つのフィルタカートリッジ22,24 がハウジングフランジ12に着脱可能に固定されている。2つのフィルタカートリッジ22,24 は共に、長手軸16に対して回転対称に構成されており、内側のフィルタカートリッジ22の直径は、外側のフィルタカートリッジ24の直径より小さい。フィルタ要素26,28 が、夫々のフィルタカートリッジ22,24 の円筒状の外面によって形成されている。フィルタカートリッジ22,24 は共に、ハウジングフランジ12に対向する端部側でカートリッジ蓋30,32 によって閉じられている。フィルタカートリッジ22,24 は共に、長手軸16の周りに環状に延びる凹部34,36 内に固定されている。内側のフィルタ要素26は内側の凹部34内に挿入され、該凹部34に接着されている。同様に、外側のフィルタ要素28は外側の凹部36内に挿入され、該凹部36に接着されている。
【0016】
前記凹部34と前記凹部36との間に、ハウジングフランジ12は、その中心が長手軸16上にある連続的な環状溝38を有しており、該環状溝38は、フィルタ要素26によって分離された油を受けるべく機能する。同様に、その中心が長手軸16上にある連続的な環状溝40が、凹部36の外側に設けられており、前記環状溝40は、フィルタ要素28によって分離された油を受けるべく機能する。環状溝38,40 の各々の下端部には、油通路42,44 がハウジングフランジ12を貫いて形成されている。2本の油通路42,44 は共通通路(不図示)に挿入されており、分離されて環状溝38,40 が受けた油は、共通通路を通って圧縮機システムに戻される。
【0017】
浄化されるべき気体は、ガス入口18を通ってハウジング10内の内側のフィルタカートリッジ22内に流れ込み、フィルタカートリッジ22からフィルタ要素26,28 を通って径方向の外側に流れる。その後、気体はハウジング蓋14からガス出口20に向かって導かれ、ガス出口20を通って気体は再度ハウジング10から出る。気体がフィルタ要素26,28 を通過している間、フィルタ要素26,28 は分離すべく油を捕らえる。分離された油は、重力の影響によりフィルタ要素26,28 の外面に沿って環状溝38,40 に向かって夫々流れ、環状溝38,40 を通って油通路42,44 に向かって夫々導かれる。フィルタカートリッジ22,24 は、ハウジング10の内部で圧縮機システムの高圧領域に位置付けられており、そのため、分離された油は圧力差により圧縮機システムの低圧側に向かう方向に油通路42,44 を通って戻される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
多段式の油分離機であって、ガス入口(18)及びガス出口(20)を有するハウジング(10)と、該ハウジング(10)内の前記ガス入口(18)と前記ガス出口(20)との間にカスケード型として配置された少なくとも2つのフィルタ要素(26,28) とを備えていることを特徴とする油分離機。
【請求項2】
前記ハウジング(10)は、前記カスケード型の最後のフィルタ要素(28)と前記ガス出口(20)との間に油通路(44)を有しており、該油通路は、分離された油を戻すために設けられていることを特徴とする請求項1に記載の油分離機。
【請求項3】
前記フィルタ要素(26,28) は共に鉛直方向に配置されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の油分離機。
【請求項4】
前記ハウジング(10)は、前記フィルタ要素(26,28) の各々の下流側に1本の油通路(42,44) を有することを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の油分離機。
【請求項5】
前記フィルタ要素(26,28) は共通のハウジングフランジ(12)に取り付けられていることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の油分離機。
【請求項6】
少なくとも1本の油通路(42,44) が前記ハウジングフランジ(12)を貫いて延びていることを特徴とする請求項5に記載の油分離機。
【請求項7】
前記フィルタ要素(26,28) は、直径が異なる円筒状のカートリッジ(22,24)の外面に形成されてあり、前記円筒状のカートリッジ(22,24) の共通軸(16)を中心に設けられていることを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載の油分離機。
【請求項8】
前記フィルタ要素(26,28) の内の2つは、前記共通軸(16)を中心にハウジングフランジ(12)の両側に配置されていることを特徴とする請求項7に記載の油分離機。
【請求項9】
前記フィルタ要素(26,28)の内の少なくとも2つは、前記共通軸(16)を中心にハウジングフランジ(12)の同一の側に配置されていることを特徴とする請求項7又は8に記載の油分離機。

【図1】
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【公表番号】特表2012−531305(P2012−531305A)
【公表日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−518065(P2012−518065)
【出願日】平成22年6月18日(2010.6.18)
【国際出願番号】PCT/EP2010/058639
【国際公開番号】WO2011/000720
【国際公開日】平成23年1月6日(2011.1.6)
【出願人】(508206070)オーリコン レイボルド バキューム ゲーエムベーハー (43)
【Fターム(参考)】