多片リムおよびその脱着方法
【課題】支持に多大な労力を必要とせず、管理部品数および必要な作業数を増加させることがない多片リムの提供。
【解決手段】ガターバンド(11)の溝(11a)に嵌合するロックリング(40)は複数個の部分(41、42)に分割されて構成されており、その部分の一方の端部(41a、42a)同士が可撓性を有する連結部材(43)で連結されている。あるいは、円環の一部を切り欠いた概略C字状に形成され、切り欠いた部分の弦の長さはハブの直径寸法と実質的に等しい第1の部分(141)と、第1の部分における円環の切り欠いた部分に対応する形状である第2の部分(142)とにより、ロックリング(140)を構成している。
【解決手段】ガターバンド(11)の溝(11a)に嵌合するロックリング(40)は複数個の部分(41、42)に分割されて構成されており、その部分の一方の端部(41a、42a)同士が可撓性を有する連結部材(43)で連結されている。あるいは、円環の一部を切り欠いた概略C字状に形成され、切り欠いた部分の弦の長さはハブの直径寸法と実質的に等しい第1の部分(141)と、第1の部分における円環の切り欠いた部分に対応する形状である第2の部分(142)とにより、ロックリング(140)を構成している。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建設機械または鉱山機械用のタイヤ、特に大型の建設機械または鉱山機械用のタイヤに装着される多片リム(multi−piece rim)に関する。
【背景技術】
【0002】
大型の建設機械または鉱山機械用のタイヤは乗用車用のタイヤとは剛性が異なり、シングルピースのリムでは、大型の建設機械または鉱山機械用のタイヤが入らない場合が多い。そのため、大型の建設機械また鉱山機械用のタイヤについては、多片リムが用いられる場合が多い。
【0003】
そのような多片リムの構成を、図14で示す。
図14において、多片リム100Jは、リムベース1と、左右のサイドリング2と、ビードシートバンド3と、ロックリング4とを有している。
リムベース1のロックリング4を設けた側の端部(図14では右側端部)近傍は、ガターバンド11と呼ばれる。リムベース1の左端側端部にはバックフランジ12が形成されている。
なお、図14では、建設機械または鉱山機械側(ハブ)に多片リムを取り付けるための構成については、図示を省略している。
【0004】
図14において、タイヤに空気を注入し、タイヤの空気圧が高くなると、タイヤは矢印「Y」方向(図14では左右両方向)へ膨張し、図14における左右の両側のサイドリング2およびビートシートバンド3は、矢印「Y」方向へ移動する。
ロックリング4はガターバンド11に形成された溝11aに嵌合しており、ガターバンド11はリムベース1と一体である。そのため、ロックリング4は、サイドリング2およびビートシートバンド3が、図14中の左側へ移動するのを規制する。
【0005】
図15で示すように、ロックリング4は弾性、特に図15の矢印R方向(半径方向内方)にロックリング4の内径がガターバンド溝11aの溝底の径と同じかそれより小さい径まで収縮する方向へ作用する弾性反発力を有しており、一個所の切れ目4sが形成されている。
半径方向内方(図15の矢印R方向)に収縮する方向へ作用する弾性反発力をロックリング4が有していないと、ガターバンド11に形成された溝11aからロックリング4がはみ出してしまう恐れがある。そして、半径方向(図15のR方向)に収縮する弾性反発力が作用することにより、ロックリング4がガターバンドの溝11aに嵌合して保持されるのである。
【0006】
大型の建設機械または鉱山機械では、後輪側は複輪(ダブルタイヤ)となっているものがある。
図16において、インナー側およびアウター側の双方にタイヤとリムを有する構造、いわゆる「ダブルタイヤ」の一例が示されている。
図16において、インナー側(機械本体側、図16の左方)およびアウター側(機械本体側とは反対の側、図16の右方)に設けられたロックリング4は、インナー側とアウタータイヤ側との間で、相対するように配置されている。万が一、何れかのロックリング4が外れた際にも、ロックリング4が外れた側のタイヤ6を他方のタイヤ6と当接する方向へ移動せしめ、タイヤ6や多片リムにおける各部品が、機械本体(建設機械および/または鉱山機械)から外れないようにするためである。
【0007】
ここで、大型の建設機械または鉱山機械においては、タイヤ6を均一に摩耗させて寿命を延ばすため、タイヤローテーションが頻繁に行われる。また、タイヤがパンクした場合には、修理のためにタイヤ6を外す必要がある。
そのため、大型の建設機械または鉱山機械においては、タイヤ6を外す頻度が高い。そして、ダブルタイヤの場合には、アウター側のタイヤ6とインナー側のタイヤ6の双方を、機械本体から外さなければならない場合がある。
【0008】
タイヤ6を外す際に、図16で示す従来の多片リム100Jの場合には、インナー側のタイヤ6を外すために、アウター側のタイヤ6と多片リム100Jとを機械本体から外す必要がある。
【0009】
図16で示す従来の多片リム100Jは、アウター側のリムベースの外側(図16では右側)にバックフランジ12が存在する。そのため、アウターのタイヤ6をリムベース1から外そうとしても、タイヤ6の半径方向内方の縁部が、まず、サイドリング2に引っかかり、そのサイドリング2はバックフランジ12、あるいはその端部における半径方向の突起(リップ。図示を省略。)に引っ掛かってしまう。
【0010】
そのため、図16の場合には、アウター側のタイヤ6のみを、リムベース1のアウター側(図16で右側)へ外すことはできない。
また、アウター側の多片リム100Jにおいて、バックフランジ12およびそのリップ(図示せず)が存在すると、インナー側のタイヤ6を外そうとしても、バックフランジ12およびそのリップ(図示せず)に引っ掛かってしまい、機械本体から外すことができない。
【0011】
図16で示す従来技術において、アウター側の多片リムとタイヤとを機械本体から外すためには、ボルトB1を外して、アウター側のタイヤ6とリムベース1と取付部材7(リムベース1をハブに取り付けるための部材)とが組み合わさった状態で、ハブ5から外さなければならない。
しかし、ボルトB1は、例えば50本〜70本ある。ボルトB1がそれよりも少ない場合も存在するが、比較的多数の(場合によっては大量の)ボルトB1を外すためには、相当の労力が必要となる。
【0012】
図16の従来技術における問題点、すなわち、インナー側あるいはアウター側のタイヤ6を外す際に、アウター側の多片リムを機械本体から外さなければならないという問題を解消するため、図17で示すような技術も提案されている。
【0013】
図17において、一方の多片リム100(アウター側の多片リム)が、サイドリング2、ガターバンド11、ビードシートバンド3、ロックリング4を、それぞれ2つずつ有している。したがって、図17で示す従来技術では、アウター側においては、図16におけるバックフランジ12が存在しない。
そのため、図17においては、多片リム100のリムベース1を機械本体から外すことなく、リムベース1をハブ5に取り付けた状態で、インナー側のタイヤ6およびアウター側のタイヤ6を、図17の矢印「Y」方向へ抜き出すことが可能である。
【0014】
しかし、図17で示す多片リム100において、図15で示すような従来のロックリング4を用いた場合には、アウター側の多片リムあるいはインナー側の多片リムにロックリング4を取り付ける場合に、弾性反発力(図15の矢印R方向へ収縮しようとする弾性反発力)に逆らってロックリング4を半径方向寸法(図15のR方向寸法)が大きい状態を保持しつつ、ロックリング4をアウター側の多片リム100におけるリムベース1を通過させて、ガターバンド11の溝11aにロックリング4を装着しなければならない。
ここで、ロックリング4の質量は、たとえば50kg程度ある場合も存在するので、そのように重いロックリング4を、半径方向に収縮しようとする弾性反発力に抵抗しながら保持して、所定の位置に配置することは、非常に困難であり、過大な労力を必要とする。
【0015】
これに対して、図15で示す単一部品のロックリング4ではなく、2分割されたロックリングを用いることも提案されている。
2分割されたロックリングを用いる従来技術では、そのようなロックリング(2分割されたロックリング)をガターバンド11の溝11a(図14)に嵌合し、いわゆる「掛かり留め」された状態にせしめた後に、2分割したロックリングの両端をネジやプレート等の締結部品で締結している。
2分割したロックリングの両端を締結部品で締結するように構成すれば、ロックリングをガターバンド11の溝11a(図14)内に確実に嵌めておくことができるので、ロックリングを半径方向内方に収縮しようとする弾性反発力は不必要となる。
【0016】
しかし、従来の2分割したロックリングには、次のような問題点が存在する。
第1に、ロックリングを締結する作業において、ロックリングの2分割されたそれぞれの部分が、確実にガターバンドの溝11aに嵌合しなければならない(「掛かり留め」されていなければならない)。
ガターバンドの溝(図14の符号11a参照)に正しく嵌っていない状態で、2分割されたロックリングを締結部品で締結すると、タイヤ6と多片リム100とを正確に組み立てること(いわゆる「アセンブリ」)が困難となるからである。
【0017】
第2に、タイヤ径が大きい場合には、それに対応してロックリングの質量が大きくなる。そのため、ロックリングの2分割されたそれぞれの部分が、確実にガターバンドの溝(図14の符号11a参照)に嵌合するように、ロックリングを支持するのに、多大な労力が必要となってしまう。
具体的には、2名以上の作業者が必要となる場合が存在し、ロックリングの2分割されたそれぞれの部分を支持するための機器も準備しなければならない。
【0018】
第3に、ロックリングが2分割されることにより、管理するべき部品(管理部品)の数が増加してしまう。
【0019】
第4に、ロックリングが2分割されているので、1つのロックリングについて、締結する作業を2個所で行わなければならない。そのため、必要な作業数が増加してしまう。
【0020】
その他の従来技術として、たとえば、リムベースと、ガターバンド、第1および第2のセンターバンド、ディスク、バックフランジとを、完全溶け込み突合せ溶接で接合し、積載量の増加に対応することを可能とする多片リムディスクホイールが提案されている(特許文献1参照)。
係る従来技術は有用であるが、上述したロックリングが2分割されることによる問題点を解消するものではない。
【特許文献1】特開2000−108603号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0021】
本発明は上述した従来技術の問題点に鑑みて提案されたものであり、複数の部分に分割(たとえば2分割)されたロックリングにおけるそれぞれの部分を確実にガターバンドの溝に嵌合させることができて、ロックリングの質量が大きくても支持に多大な労力を必要とせず、管理部品数および必要な作業数を増加させることがないようなロックリングを有する多片リムと、そのようなロックリングを多片リムに組み立てる方法と、そのようなロックリングを多片リムから取り外す方法の提供を目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0022】
本発明の多片リム(100J、100)は、端部(インナー側端部および/またはアウター側端部)にガターバンド(11)が設けられているリムベース(1)と、それぞれのガターバンドに形成された溝(11a)に嵌合する(ガターバンド11と同数の)ロックリング(40)と、端部(インナー側端部および/またはアウター側端部)に配置されたビードシートバンド(3)と、インナー側端部およびアウター側端部に配置されたサイドリング(2)とを備え、前記ロックリング(40)は複数個(たとえば2個)の部分(41、42)に分割されて構成されており、その部分(41、42)の一方の端部(41a、42a)同士が可撓性を有する連結部材(たとえば、ワイヤー43)で連結されていることを特徴としている(請求項1)。
本明細書において、ディスクを有するホイールについても、「リム」、「多片リム」、「リムベース」という文言を用いている。
なお、アウター側の多片リムにおけるアウター側のロックリング(図17のロックリング4A)については、分割して構成しないことが可能である。
【0023】
また、本発明の多片リム(100J、100)の組立方法は、複数個(たとえば2個)の部分(41、42)に分割され、かつ、分割された部分の一方の端部(41a、42a)同士が可撓性を有する連結部材(たとえば、ワイヤー9)で連結されているロックリング(40)の連結されていない端部(41b)をガターバンドの溝11aに嵌合する工程(図3、図4)と、そのロックリング(40)をガターバンドの溝(11a)に沿って移動し、以って、複数の部分(41、42)に分割されたロックリング(40)の部分(41、42)同士を連結部材(43)で連結した連結個所(図5の矢印Aの部分)が垂直方向(図5の矢印UD方向)上方に位置させ、かつ、いまだに連結されていない側の端部(図5の矢印B参照)を垂直方向下方に位置せしめる工程(図5、図6)と、複数の部分(41、42)に分割されたロックリング(40)のいまだに連結されていない側の端部(41b、42b)同士を連結する工程(図7)、とを有することを特徴としている(請求項5)。
【0024】
上述した多片リム(請求項1の多片リム100)からロックリング(40)を取り外す本発明のロックリングの取り外し方法は、複数個(たとえば2個)の部分(41、42)に分割されているロックリングのあらかじめ連結部材(43)で連結されてはいない端部(41b、42b)間の連結を解除する工程と(図7で示すのとは逆の操作)、連結を解除された端部の一方の端部(42b、あるいは41b)を保持し(て引っ張り、あるいは、押し込むことにより)、ガターバンドの溝(11a)に沿ってロックリング(41、42)を移動させる工程(図3、図4)とを有することを特徴としている(請求項7)。
係る取り外し方法(請求項7の方法)を実施した後に、サイドリング(2)、ビードシートバンド(3)を外し、アウター側のタイヤ(6)およびインナー側のタイヤ(6)を、機械本体から離隔する方向(図17の矢印「Y」方向)に抜き取る。
【0025】
また本発明の多片リム(200)は、端部(インナー側端部および/またはアウター側端部)にガターバンド(11)が設けられているリムベース(1)と、それぞれのガターバンドに形成された溝(11a)に嵌合する(ガターバンド11と同数の)ロックリング(140)と、端部(インナー側端部および/またはアウター側端部)に配置されたビードシートバンド(3)と、インナー側端部およびアウター側端部に配置されたサイドリング(2)とを備え、前記ロックリング(140)は第1の部分(141)と第2の部分(142)とに周方向に異なる長さに2分割されて構成されており、第1の部分(141)は円環の一部を切り欠いた概略C字状に形成され、第2の部分(142)は第1の部分(141)における円環の切り欠いた部分に対応する形状であり、第1の部分(141)の(両)端部と第2の部分(142)の(両)端部とが連結部材(たとえば、プレート8)で連結されていることを特徴としている(請求項2)。
【0026】
係る多片リム(請求項2の多片リム)において、周方向に分割されたロックリング(140)の第1の部分(141)の切り欠いた部分の弦の長さは(多片リム200が取り付けられる)ハブの直径寸法と実質的に等しいのが好ましい(請求項3)。
ここで、第1の部分(141)の切り欠いた部分の弦の長さと、(多片リム200が取り付けられる)ハブの直径寸法とは、完全に等しい必要は無く、多少の相違があってもよい。
また、上記多片リム(請求項2の多片リム)において、周方向に分割されたロックリング(140)の第1の部分(141)と第2の部分(142)とが、その部分の一方の端部同士が可撓性を有する連結部材で連結されているのが好ましい(請求項4)。
【0027】
また、本発明の多片リム(請求項2の多片リム200)の組立方法は、円環の一部を切り欠いた概略C字状に形成され且つ当該切り欠いた部分の弦の長さは(多片リム200が取り付けられる)ハブの直径寸法と実質的に等しい第1の部分(141)と、第1の部分(141)における円環の切り欠いた部分に対応する形状の第2の部分(142)とを有するロックリング(140)における第1の部分(141)を、切り欠いた部分が(多片リム200が取り付けられる)ハブを通過する様に移動してハブの外周側に位置させる工程(図20、図21)と、ハブの外周側に位置した第1の部分(141)を広げ、ガターバンドを超えてガターバンドの溝(11a)に嵌合する工程(図22、図23)と、第1の部分(141)の切り欠いた部分に第2の部分(142)を設置する工程(図24)と、連結部材(たとえば、プレート8)により第1の部分(141)の(両)端部と第2の部分(142)の(両)端部とを連結する工程(図24)とを有することを特徴としている(請求項6)。
【0028】
上述した多片リム(請求項2の多片リム200)からロックリング(140)を取り外す本発明のロックリングの取り外し方法は、円環の一部を切り欠いた概略C字状に形成され且つ当該切り欠いた部分の弦の長さは(多片リム200が取り付けられる)ハブの直径寸法と実質的に等しい第1の部分(141)と、第1の部分(141)における円環の切り欠いた部分に対応する形状の第2の部分(142)とを有するロックリング(140)における第1の部分(141)の(両)端部と第2の部分(142)の(両)端部から連結部材(たとえば、プレート8)を取り外す(図24で示すのと逆の操作)工程と、第2の部分(142)を取り外す工程と、第1の部分(141)を広げガターバンドを超えてハブの外周側に移動する(図23、図22で示すのと逆の操作)工程と、ハブの外周側に位置した第1の部分(141)を、切り欠いた部分が(多片リム200が取り付けられる)ハブを通過する様に移動して取り外す(図21、図20で示すのと逆の操作)工程とを有することを特徴としている(請求項8)。
係る取り外し方法(請求項8の方法)を実施した後に、サイドリング(2)、ビードシートバンド(3)を外し、アウター側のタイヤ(6)およびインナー側のタイヤ(6)を、機械本体から離隔する方向(図17の矢印「Y」方向)に抜き取る。
【0029】
さらに本発明の多片リム(請求項1〜請求項4の何れか1項の多片リム)において、連結部材(たとえば、プレート80)はボルト(B2)を有し、該ボルト(B2)はロックリング(140B、140C)の各部分(141、142)の側面部に穿孔されたボルト孔(81)に螺合しており、該ボルト(B2)の連結部材(8)とロックリング(140B、140C)との境界部分にはカラー(300)が配置されているのが好ましい(請求項9)。
この場合、カラー(300)及び/又は連結部材(80)を(例えばラバー等により)被覆する被覆部材(400)を有しているのが好ましい。
【0030】
上述した本発明は、ディスクを有するホイールについても、ディスクを有しないリムについても、適用可能である。
【発明の効果】
【0031】
上述する構成を具備する本発明(請求項1、5、7の発明)によれば、複数部分(41、42)に分割された(たとえば2分割された)ロックリング(40)のそれぞれの部分における端部(41a、42a)同士を連結部材(たとえばワイヤー43)で連結することにより、連結部材(たとえばワイヤー43)で連結されていない端部(41b、42b)をガターバンドの溝(11a)に通し、そのまま押し込むことにより、複数個に分割されたロックリング(40)の全体が確実にガターバンドの溝(11a)に嵌合し、いわゆる「掛かり留め」される。
そのため、連結部材(43)で連結されていない側の端部(41b、42b)同士を(たとえばプレート8とボルトB2により)連結した際に、タイヤ(6)とリム(100)とが正確に組み立てられる。
【0032】
また、複数に分割された(たとえば2分割された)ロックリング(40)が、(図3、図4で示すように)ガターバンドの溝(11a)にある程度嵌合すれば、リムベース(1)がロックリング(40)の質量を支持することとなる。そのため、タイヤ径が大きく、ロックリング(40)の質量が大きくても、ロックリング(40)を支持するのに多大な労力を必要とせず、特別の機器を準備する必要もない。
【0033】
そして、複数部分に分割された(たとえば2分割された)ロックリング(40)のそれぞれの部分における端部(41a、42a)同士を連結部材(たとえばワイヤー43)で連結することにより、複数部分に分割された(たとえば2分割された)ロックリング(40)を一体の部材として取り扱うことができる。そのため、管理すべき部品数を少なくすることができる。
【0034】
さらに、ロックリング(40)が複数部分に分割されていても(たとえば、2分割されていても)、締結作業あるいは締結解除作業は、1つのロックリング(40)について1個所のみでよい(図3〜図7を参照)。そのため、タイヤ(6)の取付けや取り外しに際して、必要な作業数を増加させてしまうこともない。
それに加えて、複数部分に分割された(たとえば2分割された)ロックリング(40)をリムベース(1)から容易かつ確実に除去することができる。
【0035】
ここで、従来の2分割タイプのロックリング(等分割されているタイプの2ピースタイプのロックリング)では、2分割された各部分は半径方向内方へ収縮しようとする弾性反発力があってもロックリング(41、42)のそれぞれが円周の1/2以下しかないので、ガターバンドの溝に嵌合して掛かり留めしてから、図29における符号「A」、「B」で示す個所を連結しなければ、図29の下方の部分は落下してしまう。
また、個所A、Bで連結するに際して、2分割された各部分がガターバンドの溝に確実に掛かり留めされていることを目視して確認(視認)する必要があるが、図29で示すように、一人の作業者では個所A、Bを同時に視認する事は不可能である。
従って、個所A、Bに少なくとも一名の作業者を配置して、正確に掛かり留めされていることの確認作業と、連結作業とを、個所A、Bで同時に行う必要がある。一人の作業者が個所Aにおける確認作業及び連結作業を行った後に、個所Bに移動して作業を行う様にすると、個所Aにおける作業の際に、個所Bにおける掛かり留めされた状態が変化してしまうからである。
【0036】
図30で示すように、等分割で2分割された各部分の連結個所を垂直線上に配置すれば、図30の左右何れか一方の側のみから、上述した視認作業と連結作業とを行うことができる可能性がある。
しかし、上述した通り2分割された各部分は半径方向内方へ収縮しようとする弾性反発力があってもロックリング(41、42)のそれぞれが円周の1/2以下しかないので、図30の状態では、垂直方向下方の(ロックリングの)部分がそのまま落下してしまう恐れがある。また、多片リムが用いられるホイールは非常に大型であるため、図30で示すように配置した場合には、作業者が上方の連結個所を目視することは困難である。
【0037】
これに対して、上述する構成を具備する本発明(請求項2、4、6の発明)によれば、ロックリング(140)の第1の部分(141)は、円環の一部を切り欠いた概略C字状に形成されているため、ガターバンドの溝(11a)に嵌合した際に、ロックリング(140)の第1の部分(141)の内径が半径方向内方へ(例えば、ガターバンド溝11aの径と同程度まで)収縮しようとする弾性反発力を有し、しかもロックリング(140)の第1の部分(141)が円周の1/2より長いので、ロックリング(140)の第1の部分(141)をガターバンド(11)に係止する力が働く。
そのため、従来の等分割で2ピースタイプのロックリングとは異なり、第1の部分(141)と第2の部分(142)とが連結される以前の状態でも、第1の部分(141)がガターバンドの溝(11a)に確実に掛かり留めされている状態が、当該弾性反発力により保持される。
【0038】
ここで、円環の一部を切り欠いた概略C字状に形成されている第1の部分(141)は、従来の1ピースタイプのロックリングに比較して、切り欠いた部分(開口している部分)の寸法が大きく周方向の長さが短いので、ガターバンド溝(11a)に第1の部分(141)を嵌め込む際に切り欠いた部分の広げ量が少なくでき、かつ、第1の部分(141)の両端部が離れているので、バール等の治具で第1の部分(141)をガターバンド溝(11a)に嵌合する作業が容易になる。
また、円環の一部を切り欠いた概略C字状に形成されている第1の部分(141)は、半径方向の弾性反発力(半径方向に収縮しようとする弾性反発力)が比較的弱くても、ガターバンド溝(11a)に装着することができる。同様に、第1の部分(141)の曲率半径がガターバンド溝(11a)の曲率半径よりも大きい場合においても、装着が可能である。さらに、前記弾性反発力に抗して切り欠いた部分を広げるのに必要な力が、従来の1ピースタイプのロックリングに比較して小さくて済み、第1の部分(141)をガターバンドの溝(11a)に嵌合するのに必要な力も小さくて済む場合も存在する。これ等の理由により、本発明によれば、第1の部分(141)を容易にガターバンド溝(11a)に嵌合することができる。
【0039】
さらに、第1の部分(141)は円環の一部を切り欠いた概略C字状に形成されているため、第1の部分(141)と第2の部分(142)とを連結する個所は、ハブに対して左右何れか一方のみに位置することとなる(例えば、図18では、当該連結する個所は左側のみに存在)。
そのため、作業者一人のみで、第1の部分(141)がガターバンドの溝(11a)に確実に掛かり留めされている状態が、第1の部分(141)と第2の部分(142)との2個所の連結個所において、同時に視認することができる。
そして、ハブの反対側(図18)では左右方向の反対側)に移動することなく、2個所の連結個所を連結することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0040】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施形態について説明する。
図1〜図7は、本発明の第1実施形態を示している。
【0041】
本発明の第1実施形態に係る多片リムは、ロックリングの構成を除き、図17で示す多片リムと同様な構成である。そのため、まず、図17を参照して、第1実施形態の多片リムを説明する。
図17で示すように、第1実施形態に係る多片リムは、いわゆる「ダブルタイヤ」の形態で、機械本体のハブにおいて、インナー側とアウター側に取り付けられている。
【0042】
図17は、後輪に複輪(ダブルタイヤ)を有する大型の建設機械または鉱山機械において、機械本体後方から後輪を見た場合の、右側の状態を、例示している。
図17において、ハブ5の左側にはフランジ部51が形成されている。そして、ダブルタイヤの左側(インナー側)の多片リム100Jは、ボルトBにより、ハブ5のフランジ部51に取り付けられている。
【0043】
詳細には、フランジ部51において、鉛直取付け面51aに、インナー側(図17の左側)の多片リム100Jのハブ取付け部1Tが当接し、ボルトBによって取り付けられている。
複輪のうち、アウター側(図17の右側)の多片リム100は、ハブ5のアウター側端面52aに取り付けられている。詳細には、ハブ5の端面52aに、アウター側の多片リム100におけるハブ取付け部1Tが当接し、ボルトBによって取り付けられている。
【0044】
ここで、アウター側の多片リム100におけるハブ取付け部1Tの内径R2は、インナー側の多片リム100Jにおけるハブ取付け部1Tの内径R1よりも、小さく形成されている。これは、以下の理由による。
まず、インナー側のタイヤをハブ5の右側に抜き取る際に、ハブ5のアウター側の外径Rhが、多片リム100Jにおけるハブ取付け部1Tの内径R1よりも、小さくなくてはならない。そして、アウター側の多片リム100におけるハブ取付け部1Tの内径R2は、ハブ5におけるアウター側の外径Rhよりも小さい。そのため、アウター側の多片リム100におけるハブ取付け部1Tの内径R2は、インナー側の多片リム100Jにおけるハブ取付け部1Tの内径R1よりも、小さくなる。
なお、図17において、一点鎖線Lhcは、ハブ5の中心線を表している。
【0045】
インナー側の多片リム100Jは、図14で示す従来技術と同様な構成をしている。多片リム100Jは、リムベース1と、左右のサイドリング2と、ビードシートバンド3と、ロックリング4とを有している。
リムベース1のロックリング4を設けた側の端部(右端)近傍は、ガターバンド11を構成しており、ロックリング4が嵌合する溝が形成されている。そして、リムベース1の左側端部にはバックフランジ12が形成されている。
なお、図17で表示されているハブ取付け部1Tは、図14においては図示が省略されている。
【0046】
一方、アウター側の多片リム100は、リムベース1を有しており、そしてリムベースの左右両端部に、サイドリング2、ガターバンド11、ビードシートバンド3、ロックリング4を、それぞれ2つずつ有している。そして、アウター側の多片リム100においては、バックフランジ12を構成していない。
そのため、図17においては、多片リム100のリムベース1を機械本体のハブ5から外すことなく、リムベース1をハブ5に取り付けた状態で、インナー側のタイヤ6およびアウター側のタイヤ6と、多片リム100J、100の各部品を、図17の矢印「Y」方向へ抜き出すことができる。
【0047】
図17において、インナー側およびアウター側のロックリング4は、同一の構成を具備している。そして、係るロックリング4について、第1実施形態は従来の多片リムとは相違している。
係るロックリングの詳細については、図1以下を参照して説明する。
なお、図17において、アウター側の多片リム100におけるアウター側のロックリングは、符号4Aで表示されている。係るロックリング4Aは、図1以下を参照して説明される分割式の構造としないことが可能である。
【0048】
図1は、第1実施形態における要部(2分割されたロックリングの連結部分)を示している。第1実施形態においては、2分割されたロックリング40を連結する連結部材として、ワイヤー43を用いている。
なお、図1は、2分割されたロックリング40の2つの部材41、42における2個所の分割個所のうち、ワイヤー43で連結された端部41a、42a近傍を図示している。
ワイヤー43で連結された端部41a、42aとは反対側の端部とその近傍については、図5〜図7を参照して説明する。
【0049】
図1において、ロックリング40は、1つのリングを概略半円状に2分割した2つの部材41、42と、ワイヤー43と、ワイヤー43を2つの部材41、42に固定するための固定ボルト44とから構成されている。
ワイヤー43は、ワイヤー本体43aと、ワイヤー本体43aの両端に固着されたリング状部材(たとえば、ワッシャ)43bによって構成されている。
図1における符号41c、42cで示す円弧状の突起部は、リムベース1のガターバンド11に形成された溝11aに嵌合する突起部である。
【0050】
図2は、図1で示す状態からワイヤー43を取り外した状態を示している。
2つの部材41、42の対向する端部41a、42aの外周面41f、42fには、固定ボルト44(図1)と螺合する雌ねじを形成したねじ孔41d、42dが形成されている。
【0051】
図示の例では、ロックリング40は2分割されているが、ロックリングの分割数は、2分割に限定されるものではない。3分割以上に分割することも可能である。
【0052】
図1において、2分割されたロックリング40のそれぞれの部分41、42同士を結合するワイヤー43には、張力が作用する。そのため、ワイヤー43は、係る張力に耐える程度の断面積(あるいは強度)が必要である。たとえば、ワイヤー43は、2kNの張力に耐えることができる。
【0053】
図1、図2を参照して説明したロックリング40を、ガターバンドの溝部11aに取り付ける態様について、図3〜図7を参照して説明する。
【0054】
図示しない作業者により、ロックリング40は、図3および図4で示すように、多片リム(インナー側、アウター側の双方の多片リム100J、100)のリムベース1のガターバンド11に引っ掛けるように配置する。
ロックリングのそれぞれの部分41、42の内径は、ガターバンド11に嵌っていない自由状態において、嵌合時にロックリングの形状に対応するガターバンド11の外周部分の外形と一致する寸法となっている。ただし、ロックリングのそれぞれの部分41、42の内径は、ガターバンド11に嵌っていない自由状態で、嵌合時にロックリングの形状に対応するガターバンド11の外周部分の外形より大きくても、または小さくてもよい。
この段階では、図3で示すように、リムベースのガターバンド11に引っ掛けられて支持されている側のロックリングの(2分割された内の一方の)部分41は、ガターバンド11の溝11aに嵌合している。
【0055】
図3で示すように、(2分割された内の一方の)ロックリングの部分41がリムベースのガターバンド11に引っ掛けられており、かつ、ガターバンド11の溝11aに嵌合している状態とするためには、ロックリング40をリムベースのガターバンド11の上方に投げ掛ければよい。
あるいは、最初にロックリング40の一方の部分41における端部41bを、ガターバンド11の溝11aに嵌合し、その状態で一方の部分41を押し込めば、図3で示すような状態とすることができる。
【0056】
次に、図3、図4で示すような状態において、ロックリング40の一端部を保持して引っ張り、あるいは押し込んで、ロックリング40を矢印R方向に移動する。そして、図5で示すように、2分割されたロックリングの部分41、42をワイヤー43で連結した連結個所41a、42a(図5の矢印Aで示す個所)が垂直方向(図5の矢印UD方向)の最上部となり、連結されていない側の端部41b、42bが垂直方向最下部となるようにする。
図5において、2分割されたロックリング40における連結されていない側の端部41b、42bが向き合った部分(図5の矢印Bで示す個所)が、拡大されて図6で示されている。
【0057】
図5、図6で示すように、ロックリング40において、図3〜図6では連結されていない側の端部41b、42bには、その側面に、雌ねじが切られたねじ孔41d、42dが形成されている。
ロックリングの端部41b、42b同士を締結するためには、端部41b、42bにプレート8(図7)をセットし、プレート8のボルト孔81を貫通するように、ボルトB2、B2をねじ孔41d、42dに係合する。
図7で示すように、プレート8をボルトB2、B2で取り付けることにより、ロックリング40の端部41b、42bが連結される。
【0058】
タイヤローテーションなどでタイヤを外す際には、上述したのとは逆の操作を行えばよい。
すなわち、図7の状態で、ボルトB2を外してプレート8を外し、ロックリング40の端部41b、42bが連結されていない状態にする。その状態で、ロックリング40の端部41b、42bの一方を保持して引っ張り、あるいは押し込めば、図3、図4で示す状態を経由して、ロックリング40はリムベースのガターバンド11から外れる。
【0059】
このように、図7で示すプレート8を連結部41b、42bから取り外すことにより、図1〜図7に係る第1実施形態のロックリング40は、リムベースのガターバンド11から容易に外すことができる。
その後、図17で示す従来技術と同様に、サイドリング2、ビードシートバンド3を外し、アウター側のタイヤ6およびインナー側のタイヤ6を、図17の矢印「Y」方向(機械本体から離隔する方向)に抜き取れば、タイヤを多片リムごと機械本体のハブから取り外すことなく、タイヤのみを機械本体から取り外すことができる。そして、タイヤのみを機械本体に取り付けることができる。
【0060】
このように、第1実施形態によれば、たとえば2分割されたロックリング40の部分41、42の端部41a、42a同士を連結部材(たとえばワイヤー43)で連結することにより、連結部材(たとえばワイヤー43)で連結されていない側の端部(41b、あるいは42b)をガターバンドの溝11aに嵌合して、そのまま押し込めば、2分割されたロックリング40の全体が確実にガターバンドの溝11bに嵌合し、いわゆる「掛かり留め」された状態となる。
あるいは、そのような2分割されたロックリング40を、リムベースのガターバンド11の上方に投げ掛け、ロックリング40の円弧状突起部41c、42cがガターバンドの溝11aに嵌合した状態にすれば、いわゆる「掛かり留め」された状態となる。
【0061】
そして、連結されていない側の端部41b、42b同士を、プレート8とボルトB2により連結すれば、タイヤ6と多片リム100、100Jとが正確に組み立てられる。
さらに、逆の操作をすることにより、容易かつ確実に、ロックリング40をリムベース1から外すことが可能である。
【0062】
また、図3、図4で示すように、2分割されたロックリング40の一方(たとえば41)が、ガターバンドの溝11bにある程度嵌合すれば、リムベース1がロックリング40の重量を支持することとなる。そのため、タイヤ径が大きく、ロックリング40の質量が大きくても、ロックリング40を支持するのに多大な労力を必要とせず、特別の機器を準備しなくても済む場合が多くなる。
【0063】
そして第1実施形態によれば、2分割されたロックリング40のそれぞれの部分41、42における一方の端部41a、42a同士を連結部材(たとえばワイヤー43)で連結することにより、2分割されたロックリング40を一体の部材として取り扱うことを可能ならしめている。そのため、管理すべき部品数を少なくすることができる。
【0064】
さらに、図3〜図7を参照して説明したように、ロックリング40が2分割されていても、締結作業あるいは締結解除作業は、1つのロックリング40について1個所のみでよい。そのため、タイヤの取付けや取り外しに際して、必要な作業数を増加させてしまうこともない。
【0065】
図8は、第2実施形態を示している。
図8の第2実施形態では、第1実施形態と同様に、ロックリングを2分割した部分41、42の端部をワイヤー本体43aで連結した実施形態である。
ただし、第1実施形態では、ワイヤー43aをワッシャ43bと一体化して、ボルト44で締結してロックリングの分割体41、42に固定しているが、第2実施形態では、ワイヤー43aの両端を、2分割されたロックリング40Aの分割部分41、42の端部41a、42aへ、それぞれ直接に埋め込んでいる。
【0066】
図8で示すロックリング40Aの上記以外の構成は、第1実施形態と同様である。そして、ロックリング40Aをリムベース1に着脱する態様についても第1実施形態と同様である。
【0067】
なお、第1実施形態および第2実施形態で用いられているワイヤー43aは、高強度の鋼線(たとえば、ピアノ線)をより線にしたものであるが、鋼線のワイヤーの他に、高強度の樹脂繊維(たとえば、炭素繊維等)で構成されるワイヤーを用いることも可能である。
【0068】
図9は、第3実施形態を示す。
図9の第3実施形態では、連結部材として、鋼製のコイルスプリング43Bを選択している。コイルスプリング43Bの両端部は、ロックリング40Bの分割部分41、42の端部41a、42aに直接埋め込まれている。
【0069】
図9で示すロックリング40Bの上記以外の構成は、第1実施形態、第2実施形態と同様である。そして、ロックリング40Bをリムベース1に着脱する態様についても、第1実施形態、第2実施形態と同様である。
【0070】
図10は、第4実施形態を示す。
図10の第4実施形態では、連結部材として、2つの関節を有する多関節連結リンク43Cを用いている。
多関節リンク43Cは、1対のヨーク43Caと、1対のヒンジピン43Cpと、両端にヒンジピン挿通孔を有する連結リンク43Cbとで構成され、1対のヨーク43Caの軸部43sの先端は、ロックリンク40Cの分割部分41、42の端部41a、42aに埋め込まれている。
【0071】
図10におけるロックリング40Cの上記以外の構成は、第1実施形態〜第3実施形態と概略同様である。そして、ロックリング40Cをリムベース1へ着脱する態様についても、第1実施形態〜第3実施形態と同様である。
【0072】
図11は、第5実施形態におけるロックリング40Dの連結部を立体的に示している。図11の第5実施形態では、連結部材として、ボールジョイントを備えたユニバーサルジョイント43Dを選択している。
【0073】
連結部材としてユニバーサルジョイント43Dを用いた他は、第1実施形態〜第4実施形態と概略同様であり、ロックリング40Dの、リムベース1への着脱方法に関しても概略第1実施形態〜第4実施形態と同様に行われる。
【0074】
図12は、第6実施形態を示す。
図12において、ロックリングに符号40Eが付されている。そして図12では、第1実施形態〜第5実施形態において、2分割部分41、42が最初から連結されている端部の反対側の端部41b、42bが、連結された状態を立体的に示している。
図12の第6実施形態では、2分割された部分41、42が最初から連結されている側とは反対側の端部41b、42bが、連結部材として工業用ファスナーあるいはアジャスター43Eを用いて、連結されている。
【0075】
アジャスター43Eは、第1の部材43Ecと、第2の部材43Edとで構成されている。
第1の部材43Ecは、レバー43Eaと、先端がコ字状に閉じ他端がレバー43Eaの側部で回動するリンク43Ebとを有している。第2の部材43Edは、第1の部材43Ec側を向いた先端がU字状に曲げられて構成されている。
第1の部材43Ecは、たとえば、ロックリング40Eの一方の分割部分41に取り付けられ、第2の部材43Edは、ロックリング40Eの他方の分割部分42に取り付けられている。
【0076】
多片リムを組み立てるに際して、2分割した部分41、42を最終的に接続するためには、第1の部材のレバー43Eaをワンタッチ操作して、第1の部材43Ecのリンク43Ebを、第2の部材43EdのU字状に曲げられた部分に装着すればよい。
そして、タイヤを多片リムから分離するに際して、2分割されているロックリング40を外すためには、第1の部材のレバー43Eaをワンタッチ操作して、第1の部材43Ecのリンク43Ebを第2の部材43EdのU字状に曲げられた部分から外せばよい。
【0077】
図12で示すような工業用ファスナーあるいはアジャスター43Eを用いれば、ロックリングの部分における端部を、ワンタッチ式に締結可能に構成することが可能である。
【0078】
図17は、ディスクを有するタイプについて示されているが、ディスクがないタイプのリムについても、本発明を適用することができる。
図13は、ディスクがないタイプのリムを機械本体側のハブに取り付ける態様を示している。
【0079】
図13において、機械本体側のハブ5には、雌ねじを有するねじ孔55が形成されている。リムの外側(リムベース1の左端)にクランプ9を配置して、そのクランプ9にはボルトBが貫通するための貫通孔が形成されている。そして、クランプ9を貫通したボルトBが、ハブ5に形成されたねじ孔55に係合している。
その他の構成については、図17を参照して説明したのと同様である。
【0080】
図18〜図26は、第7実施形態を示している。
図18〜図26において、第7実施形態に係るロックリング140を除き、多片リム(図19において符号200J、200で示す多片リム。ただし、サイドリング、ビードシートバンド、ロックリングは図示を省略。)の構成は、図17で示す多片リムと同様である。
図19では、インナー側の多片リム200Jがアウター側の多片リム200と同様に、リムベース1の両端にガターバンド11が設けられた構成となっているが、図17の示すようにインナー側リムベース1のインナー側にバックフランジ12を設けた構成としてもよい。
【0081】
図18は、ガターバンド11に嵌っていない自由状態におけるロックリング140の全体を示している。図18において、全体を符号140で示すロックリングは、第1の部分141と第2の部分142から構成され、第1の部分141の周方向長さは、第2の部分142の周方向長さより大きくなっている。
第1の部分141は、円環の一部を切り欠いた概略C字状に形成されている。そして、第1の部分141の切り欠いた部分の弦の長さ(両端部間の寸法)Lは、ハブの直径寸法Dh(図19及び図20参照)と実質的に等しい。インナー側リムベースのアウター側およびアウター側リムベースのインナー側のガターバンド11へのロックリングの第1の部分141の着脱時に、第1の部分141とハブが干渉しないで着脱でき、且つ、第1の部分141がガターバンド11に確実に固定できるようにするためである。
第2の部分142は、図22において、リムベース1のガターバンド11に第1の部分141を嵌め込んだ状態で、第1の部分141における円環の切り欠いた部分に対応する形状である。ただし、加工誤差を吸収し、組立を容易にするため、隙間G(図24参照)が設けてある。
【0082】
第1の部分141の端部と第2の部分の端部142とは、連結部材8(図24参照)と公知の締結部材(例えば接続ボルト。図示せず。)によって連結されている。
なお、後述する第8実施形態(図27)及びその変形例(図28)は、第1の部分141の端部及び第2の部分の端部142と、連結部材8との締結(連結状態)に関するものである。
【0083】
なお、図18〜図26の第7実施形態に係るロックリング140が用いられるのは、主として、図19の矢印Zで示す領域であり、図26におけるインナータイヤとアウタータイヤとの間の領域である。
【0084】
図20は、図19のA矢視図である。
図20の状態(自由状態)におけるロックリング140の第1の部分141における切り欠いた部分の両端部間の寸法Lは、ハブの直径Dhと概略等しい。また、第1の部分141における内径寸法は、リムベース1に嵌合したロックリング140の形状に対応するガターバンド11の外周部分における曲率半径と実質的に等しいか、または、第1の部分141をガターバンド11に保持するのに必要な弾性反発力を得るのに必要な程度に小さい。そのため、第1の部分141をガターバンド11に嵌め込むのみで、第1の部分141をガターバンド11から落下しないように保持あるいは係止することができる。
ロックリング140の第1の部分141は、従来の1ピースロックリングに比較して切り欠いた部分(開口部分)の両端部間の寸法(弦の長さ)Lが大きく周方向の長さが短いので、ガターバンド11への着脱時には、第1の部分141の切り欠いた部分を広げる必要があるが、この広げ量は従来の1ピースロックリングの場合より小さい。
【0085】
また、円環の一部を切り欠いた概略C字状に形成されている第1の部分141は、半径方向の弾性反発力(半径方向に収縮しようとする弾性反発力)が比較的弱くても、ガターバンド溝11aに装着することができる。
同様に、第1の部分141の曲率半径がガターバンド溝11aの曲率半径よりも大きい場合においても、概略C字状に形成されている第1の部分141は、ガターバンド溝11aから脱落することなく、装着あるいは係止することができる。
【0086】
さらに、概略C字状に形成されている第1の部分141における切り欠いた部分(開口部分)を、前記弾性反発力に抗して広げるのに必要な力は、従来の1ピースタイプのロックリングに比較して小さくて済む場合が存在する。そして、係る場合であれば、第1の部分141をガターバンドの溝11aに嵌合するのに必要な力も、従来の1ピースタイプのロックリングに比較して小さくてよい。
これ等の理由により、図18〜図26の第7実施形態によれば、第1の部分141の切り欠いた部分(開口部分)を広げて、ガターバンド11に嵌め込む作業が容易となり、嵌め込み作業に必要な労力は、従来の1ピースロックリングの場合に比較して、遥かに小さくて済む。
【0087】
ここで、ロックリング140の第1の部分141における切り欠いた部分の両端部間の寸法L(C型リング開口部における弦の長さ)を、ハブの直径Dhよりも小さくすることは可能であるが、ハブ5と干渉するために着脱がし難くなる。
一方、ロックリング140の第1の部分141における切り欠いた部分の両端部間の寸法L(C型リング開口部における弦の長さ)を、ハブの直径Dhよりも大きくすることも可能である。ただし、寸法Lをハブの直径Dhよりも大きくした場合に、寸法Lが(ハブの直径Dhに比較して)大き過ぎると、図22のようにガターバンド11に第1の部分141を嵌め込んだ状態で、第1の部分141を第1の部分141の部分の弾性反発力だけでガターバンド11に保持しておくことができない可能性があるため、注意を要する。なお、ロックリング140あるいは第1の部分141の定常状態(図20の状態)で、ロックリング140(あるいは第1の部分141)の曲率半径がガターバンド11の曲率半径以下の寸法であれば、ロックリング140(あるいは第1の部分141)は問題無くガターバンド11に保持される。
【0088】
図20では図示されていないが、第2の部分142は、ガターバンド11と同一の曲率となっていることが好ましい。
第2の部分142にガターバンド11と同一の曲率でなくても実施可能であるが、ガターバンド溝11aに嵌合させる際に第2の部分142をガターバンド溝11aの曲率に合わせて変形させる必要がある。このとき、第2の部分142は第1の部分141に比較して寸法が短いので、当該変形をさせるために多大な力が必要となり、連結部材8に無理な力が作用するからである。
【0089】
図20〜図23を参照して、ロックリング140のリム1への組付方法を説明する。
先ず、図20の工程では、ロックリング140における第1の部分141の切り欠いた部分に、ハブ5を挿入する様に移動する。そして、図21で示す様に、第1の部分141をハブ5の外周部に位置させる。
なお、図20、図21において、符号Dgoはリムのガターバンド11の外径を示している。
【0090】
次の図22の工程では、ハブ5の外周側に位置した第1の部分141の切り欠いた部分を広げて、ガターバンド11の外周(外径Dgo)を超えてガターバンドの溝11aに嵌合する。
図22で示す様に第1の部分141がガターバンドの溝11aに嵌合した状態では、第1の部分141は半径方向内方へ収縮しようとする弾性反発力を有してガターバンド溝11aに嵌合しているので、第1の部分141がガターバンド溝11aから外れることは無く、リム1から落下することもない。すなわち、第1の部分141は、その弾性反発力によってガターバンド溝11aに嵌合した状態が保持される。
図23は、図22のV矢視を示しており、第1の部分141(より詳細には第1の部分141の内径側)がガターバンドの溝11aに嵌合した状態が示されている。
【0091】
従来の等分割の2ピースタイプロックリングでは、タイヤにおける車両の前後に二人の作業員を配して、ロックリングの締結作業を行わなければならない。これに対して、図18〜図26の第7実施形態に係るロックリング140を用いる場合には、第1の部分141の切り欠いた部分あるいは第2の部分142が、例えば車両の後方になる様に配置すれば、作業員が車両の後方に1人居ればロックリングの締結作業を行うことができる。
すなわち、第7実施形態に係るロックリング140の締結作業に際して、作業位置は、図22における右方の領域(例えば、車両後方)のみとなるので、一人の作業者でも、第1の部分141がガターバンド11の溝11aに確実に掛かり留めしている状態の視認作業及びロックリングの締結作業を行うことが可能となる。
【0092】
ここで、第1の部分141がガターバンド11の溝11aに確実に掛かり留めされたか否かの確認するに際しては、第1の部分141の両端部(図22における上下両端部)の嵌合状態を確認することが重要である。上述した様に、第7実施形態に係るロックリング140によれば、一人の作業者が第1の部分141の両端部における嵌合状態を同時に確認(視認)できるため、第1の部分141がガターバンド11の溝11aに確実に掛かり留めされた旨を確実且つ効率的に確認することができて、安全性が向上する。
換言すれば、第7実施形態に係る2ピースタイプのロックリングにおいて、2個所の連結個所を同時にチェックできると言う作用効果は、組立作業の省人化及び作業効率の向上について、大きな意義を持つ。
【0093】
図24の工程では、第1の部分141の切り欠いた部分に第2の部分142を設置する。第2の部分142は質量が大きくないため、第2の部分142の設置に際しては、第2の部分142をガターバンドの溝11aに沿って嵌合させるように設置すればよい。すなわち、第2の部分142を嵌合するための労力は極めて軽微なものとなる。
第2の部分142をガターバンドの溝11aに嵌合することを完了したならば、連結部材8により、第1の部分141の端部と第2の部分142の端部とを連結する。これにより、多片リムの組立が完了する。
【0094】
第7実施形態のロックリング140は、図19及び図26で示すように、インナー側とアウター側とが対向する領域において、インナー側とアウター側のリムにおける各々1個所に取り付けられるが、インナー側とアウター側のどちらを先に取り付けてもよい。
また、第1の部分141と第2の部分142との接続に際して、一方の接続個所には可撓性を有する接続部材を用い、他方の接続個所には、例えばねじ等による「締付け方式」の接続部材を用いることが好ましい。
【0095】
次に、第7実施形態に係るロックリング140を、多片リムから取り外す方法について説明する。
先ず、図24で説明したのとは逆の作業手順により、第1の部分141の端部と第2の部分142の端部から連結部材8を取り外す。そして、第2の部分141をリムのガターバンド溝11aから取り外す(図22の状態)。
【0096】
次に、図21、図22を参照して上述した手順とは逆の作業手順により、第1の部分141の切り欠いた部分を広げ、ガターバンド11を超えてハブ5の外周側に移動する。
そして、ハブ5の外周側に位置した第1の部分141を、図20を参照して上述したのとは逆の作業手順により、ハブ5から取り外す。
【0097】
第1の部分141(C型リング)の開口の大きさ(切り欠いた部分の両端部間の寸法L。C型リング開口部における弦の長さ。)は、ガターバンド溝11aに嵌合した際に、第1の部分141自身の弾性反発力(半径方向内方へ収縮しようとする弾性反発力)により、第1の部分141がガターバンド溝11aに嵌合した状態を維持できる様に決定される。
換言すれば、第1の部分141における切り欠いた部分の両端部間の寸法L(切欠部の弦の長さ)は、第1の部分141がガターバンド溝11aに嵌合した状態を維持できる程度の弾性反発力が得られる様に設定される。
【0098】
図18〜図24は、第1の部分141と第2の部分142とが別体に構成されている場合を示しているが、図25で示すロックリング140Aのように、第1の部分141の一端と第2の部分142の一端とを、可撓性を有する連結部材Wで予め連結する事も可能である。換言すれば、図25で示すロックリング140Aは、第7実施形態の変形例である。これにより、ロックリング140の着脱の手間をさらに減らすことが可能である。
図25の変形例では、可撓性を有する連結部材Wとして、図1、図8〜図12の各実施形態における連結部材を適用することができる。
【0099】
図27は第8実施形態を示している。
ロックリング140における第1の部分141と第2の部分142との接続は、ボルトを含む連結部材を用いて行われる。
ここで、車両走行時、石撥ね等に起因して、石等が連結部材に衝突してしまうと連結部材を構成する各種部品が変形し、ボルトが折損してしまうと言う問題がある。
【0100】
図27で示す第8実施形態は、連結部材とロックリングとの締結に関する実施形態である。
図27の第8実施形態では、連結部材80の挿通孔801とボルトB2との間の部分に、例えば合成樹脂製のカラーを配置し、そのカラーの内側にボルトを挿通している。このように構成することにより、ボルトB2の折損を防止している。
【0101】
図27において、ロックリング140Bの第1の部材141(または、第2の部材142)において、タイヤセンターから遠ざかる側の端面141sには盲孔141hが穿孔されており、盲孔141hには雌ねじ141mが形成されている。図27では、雌ねじ141mに接続用のボルトB2の雄ねじB2oが螺合した状態が示されている。
一方、連結部材80には挿通孔801が形成されており、挿通孔801には接続用のボルトB2の軸部B2sが挿通される様になっている。また、連結部材80におけるロックリング140Bと離反する側の面80sには、ボルト頭部B2hを収容する頭部収容孔802が形成されている。
【0102】
連結部材80の挿通孔801と接続用のボルトB2の軸部B2sとの間には、合成樹脂製のカラー300が配置されている。図27において、カラー300はハッチングを付して表現されている。
図27では明確には示されていないが、カラー300の外径は、挿通孔801の内径よりも幾分大きく形成されている。
接続用のボルトB2のボルト頭部B2hとは反対側には、ネジ山が加工されていない先端部B2eが設けられている。図27の状態では、ネジ山が加工されていない先端部B2eは、盲孔141hの底部141hbに当接している。
【0103】
連結部材80でロックリング140Bの部分141、142を連結するに際しては、先ず、端面141sに形成された盲孔141hと、連結部材80に形成された挿通孔801との位置が整合する様に、連結部材80をロックリング140Bに対向させる。そして、連結部材80の頭部収容孔802側から、合成樹脂製で円筒状のカラー300及び接続用のボルトB2を挿入し回転して、接続用のボルトB2の雄ねじB2oを盲孔141hの雌ねじ141mに螺合する。接続用のボルトB2は、その先端部B2eが盲孔141hの底部141hbに当接するまで回転される(図27)。
その状態において、合成樹脂製の円筒状カラー300は、ボルトB2と挿通孔801との間に位置している。
【0104】
ここで、接続用のボルトB2の先端部B2eの長さ及び盲孔141hの深さは、図27で示す様に接続用のボルトB2の先端部B2eが盲孔141hの底部141hbに当接した状態において、連結部材80の挿通孔801と頭部収容孔802との段部801sと、ボルト頭部B2hのロックリング141側端面B2hmとの間に、符号δで示す隙間が形成される様に設定されている。
換言すれば、接続用のボルトB2における雄ねじB2oの先端部B2sが、盲孔141hの底部141hbに当接した状態では、接続用のボルトB2と連結部材80とは隙間δを維持して固定(連結)される。
係る隙間δを設けることにより、連結部材80の段部801sとボルト頭部B2の端面B2hmとは接触せず、ボルトB2と連結部材80とが金属接触をすることが防止できる。
【0105】
出願人の実験によれば、ボルトB2と連結部材80の挿通孔801との間に合成樹脂製で円筒状のカラー300を位置させることにより、車両走行時、石撥ね等に起因して、石等が連結部材に衝突しても、ボルトB2の折損が従来に比較して遥かに減少することが確認された。
また、ボルトB2と連結部材80とが金属接触をすることなく、ロックリング140Bと連結部材80とを連結することができる。
図27の第8実施形態におけるその他の構成及び作用効果は、図1〜図26の各実施形態と同様である。
【0106】
図28は、図27の第8実施形態の変形例を示している。図28の変形例に係るロックリングは、全体を符号140Cで示されている。
図28の変形例では、連結部材80のロックリング140Cと対向する面を除く外周全面を、例えばラバー等の可撓性部材400で被覆している。ここで、連結部材80のロックリング140Cとは反対側の端面において、頭部収容孔802に相当する部分には可撓性部材400による被覆はされていない。ボルト2Bによる締結及び締結解除のためである。
【0107】
図28の変形例では、連結部材80のロックリング140Cと対向する面を除く外周全面を、ラバー等の可撓性部材400で被覆することにより、石撥ね等により石等が衝突した際の衝撃がさらに緩和され、接続用ボルトB3の折損がさらに減少する。
図28の変形例におけるその他の構成及び作用効果は、図27の第8実施形態と同様である。
【0108】
図示の実施形態はあくまでも例示であり、本発明の技術的範囲を限定する趣旨の記述ではない旨を付記する。
たとえば、2分割されたロックリングの部分を連結する連結部材としては、図示のものや上述したものに限定されるものではない。ある程度の可撓性と、ロックリングに作用する張力に耐えるだけの強度がある部材を用いておりかつ断面積があれば、どのようなものでも連結部材として適用することができる。
また、図27の第8実施形態や図28の変形例(第8実施形態の変形例)における連結部材80は、図1〜図7の第1実施形態や、図18〜図26の第7実施形態の何れについても、適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0109】
【図1】本発明の第1実施形態の要部を説明する斜視図。
【図2】図1に対してワイヤーを取り外した状態図。
【図3】第1実施形態のロックリングの取付けにおける初期工程を示す図。
【図4】図3を正面から見た図。
【図5】第1実施形態のロックリングの取付けにおける中間工程を示す図。
【図6】図5のB部拡大図。
【図7】第1実施形態のロックリングの取付けにおける最終工程を示す図。
【図8】本発明の第2実施形態における要部の斜視図。
【図9】本発明の第3実施形態における要部の斜視図。
【図10】本発明の第4実施形態における要部の斜視図。
【図11】本発明の第5実施形態における要部の斜視図。
【図12】本発明の第6実施形態における要部の斜視図。
【図13】ディスクがない多片リムをハブに取り付ける態様を示す図。
【図14】従来技術における多片リムの断面図。
【図15】図14におけるロックリングの単体図。
【図16】従来技術におけるダブルタイヤの構成を示す断面図。
【図17】図16で示すのとは異なるダブルタイヤの構成を示す断面図。
【図18】本発明の第7実施形態におけるロックリングの概略構成を示した模式図。
【図19】第7実施形態におけるロックリング装着位置を説明する断面図。
【図20】第7実施形態における多片リムの組立方法を説明する第1工程図。
【図21】第7実施形態における多片リムの組立方法を説明する第2工程図。
【図22】第7実施形態における多片リムの組立方法を説明する第3工程図。
【図23】図22のV矢視断面図。
【図24】第7実施形態における多片リムの組立方法を説明する第4工程図。
【図25】第7実施形態におけるロックリング接続部材の変形例を示した正面図。
【図26】第7実施形態の多片リムを用いたホイールの要部断面図。
【図27】第8実施形態の要部断面図。
【図28】第8実施形態の変形例における要部断面図。
【図29】従来の2ピースタイプロックリングで接続個所を水平に配置した状態を示す図。
【図30】従来の2ピースタイプロックリングで接続個所を垂直に配置した状態を示す図。
【符号の説明】
【0110】
1・・・リムベース
2・・・サイドリング
3・・・ビードシートバンド
4、4A、40、40A〜40E、140、140A、140B、140C・・・ロックリング
5・・・ハブ
6・・・タイヤ
7・・・取付け部材
8・・・プレート
9・・・クランプ
11・・・ガターバンド
12・・・バックフランジ
41、42・・・分割されたロックリングの複数部分
43・・・ワイヤー
100、100J・・・多片リム
141、142・・・分割されたロックリングの部分
【技術分野】
【0001】
本発明は、建設機械または鉱山機械用のタイヤ、特に大型の建設機械または鉱山機械用のタイヤに装着される多片リム(multi−piece rim)に関する。
【背景技術】
【0002】
大型の建設機械または鉱山機械用のタイヤは乗用車用のタイヤとは剛性が異なり、シングルピースのリムでは、大型の建設機械または鉱山機械用のタイヤが入らない場合が多い。そのため、大型の建設機械また鉱山機械用のタイヤについては、多片リムが用いられる場合が多い。
【0003】
そのような多片リムの構成を、図14で示す。
図14において、多片リム100Jは、リムベース1と、左右のサイドリング2と、ビードシートバンド3と、ロックリング4とを有している。
リムベース1のロックリング4を設けた側の端部(図14では右側端部)近傍は、ガターバンド11と呼ばれる。リムベース1の左端側端部にはバックフランジ12が形成されている。
なお、図14では、建設機械または鉱山機械側(ハブ)に多片リムを取り付けるための構成については、図示を省略している。
【0004】
図14において、タイヤに空気を注入し、タイヤの空気圧が高くなると、タイヤは矢印「Y」方向(図14では左右両方向)へ膨張し、図14における左右の両側のサイドリング2およびビートシートバンド3は、矢印「Y」方向へ移動する。
ロックリング4はガターバンド11に形成された溝11aに嵌合しており、ガターバンド11はリムベース1と一体である。そのため、ロックリング4は、サイドリング2およびビートシートバンド3が、図14中の左側へ移動するのを規制する。
【0005】
図15で示すように、ロックリング4は弾性、特に図15の矢印R方向(半径方向内方)にロックリング4の内径がガターバンド溝11aの溝底の径と同じかそれより小さい径まで収縮する方向へ作用する弾性反発力を有しており、一個所の切れ目4sが形成されている。
半径方向内方(図15の矢印R方向)に収縮する方向へ作用する弾性反発力をロックリング4が有していないと、ガターバンド11に形成された溝11aからロックリング4がはみ出してしまう恐れがある。そして、半径方向(図15のR方向)に収縮する弾性反発力が作用することにより、ロックリング4がガターバンドの溝11aに嵌合して保持されるのである。
【0006】
大型の建設機械または鉱山機械では、後輪側は複輪(ダブルタイヤ)となっているものがある。
図16において、インナー側およびアウター側の双方にタイヤとリムを有する構造、いわゆる「ダブルタイヤ」の一例が示されている。
図16において、インナー側(機械本体側、図16の左方)およびアウター側(機械本体側とは反対の側、図16の右方)に設けられたロックリング4は、インナー側とアウタータイヤ側との間で、相対するように配置されている。万が一、何れかのロックリング4が外れた際にも、ロックリング4が外れた側のタイヤ6を他方のタイヤ6と当接する方向へ移動せしめ、タイヤ6や多片リムにおける各部品が、機械本体(建設機械および/または鉱山機械)から外れないようにするためである。
【0007】
ここで、大型の建設機械または鉱山機械においては、タイヤ6を均一に摩耗させて寿命を延ばすため、タイヤローテーションが頻繁に行われる。また、タイヤがパンクした場合には、修理のためにタイヤ6を外す必要がある。
そのため、大型の建設機械または鉱山機械においては、タイヤ6を外す頻度が高い。そして、ダブルタイヤの場合には、アウター側のタイヤ6とインナー側のタイヤ6の双方を、機械本体から外さなければならない場合がある。
【0008】
タイヤ6を外す際に、図16で示す従来の多片リム100Jの場合には、インナー側のタイヤ6を外すために、アウター側のタイヤ6と多片リム100Jとを機械本体から外す必要がある。
【0009】
図16で示す従来の多片リム100Jは、アウター側のリムベースの外側(図16では右側)にバックフランジ12が存在する。そのため、アウターのタイヤ6をリムベース1から外そうとしても、タイヤ6の半径方向内方の縁部が、まず、サイドリング2に引っかかり、そのサイドリング2はバックフランジ12、あるいはその端部における半径方向の突起(リップ。図示を省略。)に引っ掛かってしまう。
【0010】
そのため、図16の場合には、アウター側のタイヤ6のみを、リムベース1のアウター側(図16で右側)へ外すことはできない。
また、アウター側の多片リム100Jにおいて、バックフランジ12およびそのリップ(図示せず)が存在すると、インナー側のタイヤ6を外そうとしても、バックフランジ12およびそのリップ(図示せず)に引っ掛かってしまい、機械本体から外すことができない。
【0011】
図16で示す従来技術において、アウター側の多片リムとタイヤとを機械本体から外すためには、ボルトB1を外して、アウター側のタイヤ6とリムベース1と取付部材7(リムベース1をハブに取り付けるための部材)とが組み合わさった状態で、ハブ5から外さなければならない。
しかし、ボルトB1は、例えば50本〜70本ある。ボルトB1がそれよりも少ない場合も存在するが、比較的多数の(場合によっては大量の)ボルトB1を外すためには、相当の労力が必要となる。
【0012】
図16の従来技術における問題点、すなわち、インナー側あるいはアウター側のタイヤ6を外す際に、アウター側の多片リムを機械本体から外さなければならないという問題を解消するため、図17で示すような技術も提案されている。
【0013】
図17において、一方の多片リム100(アウター側の多片リム)が、サイドリング2、ガターバンド11、ビードシートバンド3、ロックリング4を、それぞれ2つずつ有している。したがって、図17で示す従来技術では、アウター側においては、図16におけるバックフランジ12が存在しない。
そのため、図17においては、多片リム100のリムベース1を機械本体から外すことなく、リムベース1をハブ5に取り付けた状態で、インナー側のタイヤ6およびアウター側のタイヤ6を、図17の矢印「Y」方向へ抜き出すことが可能である。
【0014】
しかし、図17で示す多片リム100において、図15で示すような従来のロックリング4を用いた場合には、アウター側の多片リムあるいはインナー側の多片リムにロックリング4を取り付ける場合に、弾性反発力(図15の矢印R方向へ収縮しようとする弾性反発力)に逆らってロックリング4を半径方向寸法(図15のR方向寸法)が大きい状態を保持しつつ、ロックリング4をアウター側の多片リム100におけるリムベース1を通過させて、ガターバンド11の溝11aにロックリング4を装着しなければならない。
ここで、ロックリング4の質量は、たとえば50kg程度ある場合も存在するので、そのように重いロックリング4を、半径方向に収縮しようとする弾性反発力に抵抗しながら保持して、所定の位置に配置することは、非常に困難であり、過大な労力を必要とする。
【0015】
これに対して、図15で示す単一部品のロックリング4ではなく、2分割されたロックリングを用いることも提案されている。
2分割されたロックリングを用いる従来技術では、そのようなロックリング(2分割されたロックリング)をガターバンド11の溝11a(図14)に嵌合し、いわゆる「掛かり留め」された状態にせしめた後に、2分割したロックリングの両端をネジやプレート等の締結部品で締結している。
2分割したロックリングの両端を締結部品で締結するように構成すれば、ロックリングをガターバンド11の溝11a(図14)内に確実に嵌めておくことができるので、ロックリングを半径方向内方に収縮しようとする弾性反発力は不必要となる。
【0016】
しかし、従来の2分割したロックリングには、次のような問題点が存在する。
第1に、ロックリングを締結する作業において、ロックリングの2分割されたそれぞれの部分が、確実にガターバンドの溝11aに嵌合しなければならない(「掛かり留め」されていなければならない)。
ガターバンドの溝(図14の符号11a参照)に正しく嵌っていない状態で、2分割されたロックリングを締結部品で締結すると、タイヤ6と多片リム100とを正確に組み立てること(いわゆる「アセンブリ」)が困難となるからである。
【0017】
第2に、タイヤ径が大きい場合には、それに対応してロックリングの質量が大きくなる。そのため、ロックリングの2分割されたそれぞれの部分が、確実にガターバンドの溝(図14の符号11a参照)に嵌合するように、ロックリングを支持するのに、多大な労力が必要となってしまう。
具体的には、2名以上の作業者が必要となる場合が存在し、ロックリングの2分割されたそれぞれの部分を支持するための機器も準備しなければならない。
【0018】
第3に、ロックリングが2分割されることにより、管理するべき部品(管理部品)の数が増加してしまう。
【0019】
第4に、ロックリングが2分割されているので、1つのロックリングについて、締結する作業を2個所で行わなければならない。そのため、必要な作業数が増加してしまう。
【0020】
その他の従来技術として、たとえば、リムベースと、ガターバンド、第1および第2のセンターバンド、ディスク、バックフランジとを、完全溶け込み突合せ溶接で接合し、積載量の増加に対応することを可能とする多片リムディスクホイールが提案されている(特許文献1参照)。
係る従来技術は有用であるが、上述したロックリングが2分割されることによる問題点を解消するものではない。
【特許文献1】特開2000−108603号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0021】
本発明は上述した従来技術の問題点に鑑みて提案されたものであり、複数の部分に分割(たとえば2分割)されたロックリングにおけるそれぞれの部分を確実にガターバンドの溝に嵌合させることができて、ロックリングの質量が大きくても支持に多大な労力を必要とせず、管理部品数および必要な作業数を増加させることがないようなロックリングを有する多片リムと、そのようなロックリングを多片リムに組み立てる方法と、そのようなロックリングを多片リムから取り外す方法の提供を目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0022】
本発明の多片リム(100J、100)は、端部(インナー側端部および/またはアウター側端部)にガターバンド(11)が設けられているリムベース(1)と、それぞれのガターバンドに形成された溝(11a)に嵌合する(ガターバンド11と同数の)ロックリング(40)と、端部(インナー側端部および/またはアウター側端部)に配置されたビードシートバンド(3)と、インナー側端部およびアウター側端部に配置されたサイドリング(2)とを備え、前記ロックリング(40)は複数個(たとえば2個)の部分(41、42)に分割されて構成されており、その部分(41、42)の一方の端部(41a、42a)同士が可撓性を有する連結部材(たとえば、ワイヤー43)で連結されていることを特徴としている(請求項1)。
本明細書において、ディスクを有するホイールについても、「リム」、「多片リム」、「リムベース」という文言を用いている。
なお、アウター側の多片リムにおけるアウター側のロックリング(図17のロックリング4A)については、分割して構成しないことが可能である。
【0023】
また、本発明の多片リム(100J、100)の組立方法は、複数個(たとえば2個)の部分(41、42)に分割され、かつ、分割された部分の一方の端部(41a、42a)同士が可撓性を有する連結部材(たとえば、ワイヤー9)で連結されているロックリング(40)の連結されていない端部(41b)をガターバンドの溝11aに嵌合する工程(図3、図4)と、そのロックリング(40)をガターバンドの溝(11a)に沿って移動し、以って、複数の部分(41、42)に分割されたロックリング(40)の部分(41、42)同士を連結部材(43)で連結した連結個所(図5の矢印Aの部分)が垂直方向(図5の矢印UD方向)上方に位置させ、かつ、いまだに連結されていない側の端部(図5の矢印B参照)を垂直方向下方に位置せしめる工程(図5、図6)と、複数の部分(41、42)に分割されたロックリング(40)のいまだに連結されていない側の端部(41b、42b)同士を連結する工程(図7)、とを有することを特徴としている(請求項5)。
【0024】
上述した多片リム(請求項1の多片リム100)からロックリング(40)を取り外す本発明のロックリングの取り外し方法は、複数個(たとえば2個)の部分(41、42)に分割されているロックリングのあらかじめ連結部材(43)で連結されてはいない端部(41b、42b)間の連結を解除する工程と(図7で示すのとは逆の操作)、連結を解除された端部の一方の端部(42b、あるいは41b)を保持し(て引っ張り、あるいは、押し込むことにより)、ガターバンドの溝(11a)に沿ってロックリング(41、42)を移動させる工程(図3、図4)とを有することを特徴としている(請求項7)。
係る取り外し方法(請求項7の方法)を実施した後に、サイドリング(2)、ビードシートバンド(3)を外し、アウター側のタイヤ(6)およびインナー側のタイヤ(6)を、機械本体から離隔する方向(図17の矢印「Y」方向)に抜き取る。
【0025】
また本発明の多片リム(200)は、端部(インナー側端部および/またはアウター側端部)にガターバンド(11)が設けられているリムベース(1)と、それぞれのガターバンドに形成された溝(11a)に嵌合する(ガターバンド11と同数の)ロックリング(140)と、端部(インナー側端部および/またはアウター側端部)に配置されたビードシートバンド(3)と、インナー側端部およびアウター側端部に配置されたサイドリング(2)とを備え、前記ロックリング(140)は第1の部分(141)と第2の部分(142)とに周方向に異なる長さに2分割されて構成されており、第1の部分(141)は円環の一部を切り欠いた概略C字状に形成され、第2の部分(142)は第1の部分(141)における円環の切り欠いた部分に対応する形状であり、第1の部分(141)の(両)端部と第2の部分(142)の(両)端部とが連結部材(たとえば、プレート8)で連結されていることを特徴としている(請求項2)。
【0026】
係る多片リム(請求項2の多片リム)において、周方向に分割されたロックリング(140)の第1の部分(141)の切り欠いた部分の弦の長さは(多片リム200が取り付けられる)ハブの直径寸法と実質的に等しいのが好ましい(請求項3)。
ここで、第1の部分(141)の切り欠いた部分の弦の長さと、(多片リム200が取り付けられる)ハブの直径寸法とは、完全に等しい必要は無く、多少の相違があってもよい。
また、上記多片リム(請求項2の多片リム)において、周方向に分割されたロックリング(140)の第1の部分(141)と第2の部分(142)とが、その部分の一方の端部同士が可撓性を有する連結部材で連結されているのが好ましい(請求項4)。
【0027】
また、本発明の多片リム(請求項2の多片リム200)の組立方法は、円環の一部を切り欠いた概略C字状に形成され且つ当該切り欠いた部分の弦の長さは(多片リム200が取り付けられる)ハブの直径寸法と実質的に等しい第1の部分(141)と、第1の部分(141)における円環の切り欠いた部分に対応する形状の第2の部分(142)とを有するロックリング(140)における第1の部分(141)を、切り欠いた部分が(多片リム200が取り付けられる)ハブを通過する様に移動してハブの外周側に位置させる工程(図20、図21)と、ハブの外周側に位置した第1の部分(141)を広げ、ガターバンドを超えてガターバンドの溝(11a)に嵌合する工程(図22、図23)と、第1の部分(141)の切り欠いた部分に第2の部分(142)を設置する工程(図24)と、連結部材(たとえば、プレート8)により第1の部分(141)の(両)端部と第2の部分(142)の(両)端部とを連結する工程(図24)とを有することを特徴としている(請求項6)。
【0028】
上述した多片リム(請求項2の多片リム200)からロックリング(140)を取り外す本発明のロックリングの取り外し方法は、円環の一部を切り欠いた概略C字状に形成され且つ当該切り欠いた部分の弦の長さは(多片リム200が取り付けられる)ハブの直径寸法と実質的に等しい第1の部分(141)と、第1の部分(141)における円環の切り欠いた部分に対応する形状の第2の部分(142)とを有するロックリング(140)における第1の部分(141)の(両)端部と第2の部分(142)の(両)端部から連結部材(たとえば、プレート8)を取り外す(図24で示すのと逆の操作)工程と、第2の部分(142)を取り外す工程と、第1の部分(141)を広げガターバンドを超えてハブの外周側に移動する(図23、図22で示すのと逆の操作)工程と、ハブの外周側に位置した第1の部分(141)を、切り欠いた部分が(多片リム200が取り付けられる)ハブを通過する様に移動して取り外す(図21、図20で示すのと逆の操作)工程とを有することを特徴としている(請求項8)。
係る取り外し方法(請求項8の方法)を実施した後に、サイドリング(2)、ビードシートバンド(3)を外し、アウター側のタイヤ(6)およびインナー側のタイヤ(6)を、機械本体から離隔する方向(図17の矢印「Y」方向)に抜き取る。
【0029】
さらに本発明の多片リム(請求項1〜請求項4の何れか1項の多片リム)において、連結部材(たとえば、プレート80)はボルト(B2)を有し、該ボルト(B2)はロックリング(140B、140C)の各部分(141、142)の側面部に穿孔されたボルト孔(81)に螺合しており、該ボルト(B2)の連結部材(8)とロックリング(140B、140C)との境界部分にはカラー(300)が配置されているのが好ましい(請求項9)。
この場合、カラー(300)及び/又は連結部材(80)を(例えばラバー等により)被覆する被覆部材(400)を有しているのが好ましい。
【0030】
上述した本発明は、ディスクを有するホイールについても、ディスクを有しないリムについても、適用可能である。
【発明の効果】
【0031】
上述する構成を具備する本発明(請求項1、5、7の発明)によれば、複数部分(41、42)に分割された(たとえば2分割された)ロックリング(40)のそれぞれの部分における端部(41a、42a)同士を連結部材(たとえばワイヤー43)で連結することにより、連結部材(たとえばワイヤー43)で連結されていない端部(41b、42b)をガターバンドの溝(11a)に通し、そのまま押し込むことにより、複数個に分割されたロックリング(40)の全体が確実にガターバンドの溝(11a)に嵌合し、いわゆる「掛かり留め」される。
そのため、連結部材(43)で連結されていない側の端部(41b、42b)同士を(たとえばプレート8とボルトB2により)連結した際に、タイヤ(6)とリム(100)とが正確に組み立てられる。
【0032】
また、複数に分割された(たとえば2分割された)ロックリング(40)が、(図3、図4で示すように)ガターバンドの溝(11a)にある程度嵌合すれば、リムベース(1)がロックリング(40)の質量を支持することとなる。そのため、タイヤ径が大きく、ロックリング(40)の質量が大きくても、ロックリング(40)を支持するのに多大な労力を必要とせず、特別の機器を準備する必要もない。
【0033】
そして、複数部分に分割された(たとえば2分割された)ロックリング(40)のそれぞれの部分における端部(41a、42a)同士を連結部材(たとえばワイヤー43)で連結することにより、複数部分に分割された(たとえば2分割された)ロックリング(40)を一体の部材として取り扱うことができる。そのため、管理すべき部品数を少なくすることができる。
【0034】
さらに、ロックリング(40)が複数部分に分割されていても(たとえば、2分割されていても)、締結作業あるいは締結解除作業は、1つのロックリング(40)について1個所のみでよい(図3〜図7を参照)。そのため、タイヤ(6)の取付けや取り外しに際して、必要な作業数を増加させてしまうこともない。
それに加えて、複数部分に分割された(たとえば2分割された)ロックリング(40)をリムベース(1)から容易かつ確実に除去することができる。
【0035】
ここで、従来の2分割タイプのロックリング(等分割されているタイプの2ピースタイプのロックリング)では、2分割された各部分は半径方向内方へ収縮しようとする弾性反発力があってもロックリング(41、42)のそれぞれが円周の1/2以下しかないので、ガターバンドの溝に嵌合して掛かり留めしてから、図29における符号「A」、「B」で示す個所を連結しなければ、図29の下方の部分は落下してしまう。
また、個所A、Bで連結するに際して、2分割された各部分がガターバンドの溝に確実に掛かり留めされていることを目視して確認(視認)する必要があるが、図29で示すように、一人の作業者では個所A、Bを同時に視認する事は不可能である。
従って、個所A、Bに少なくとも一名の作業者を配置して、正確に掛かり留めされていることの確認作業と、連結作業とを、個所A、Bで同時に行う必要がある。一人の作業者が個所Aにおける確認作業及び連結作業を行った後に、個所Bに移動して作業を行う様にすると、個所Aにおける作業の際に、個所Bにおける掛かり留めされた状態が変化してしまうからである。
【0036】
図30で示すように、等分割で2分割された各部分の連結個所を垂直線上に配置すれば、図30の左右何れか一方の側のみから、上述した視認作業と連結作業とを行うことができる可能性がある。
しかし、上述した通り2分割された各部分は半径方向内方へ収縮しようとする弾性反発力があってもロックリング(41、42)のそれぞれが円周の1/2以下しかないので、図30の状態では、垂直方向下方の(ロックリングの)部分がそのまま落下してしまう恐れがある。また、多片リムが用いられるホイールは非常に大型であるため、図30で示すように配置した場合には、作業者が上方の連結個所を目視することは困難である。
【0037】
これに対して、上述する構成を具備する本発明(請求項2、4、6の発明)によれば、ロックリング(140)の第1の部分(141)は、円環の一部を切り欠いた概略C字状に形成されているため、ガターバンドの溝(11a)に嵌合した際に、ロックリング(140)の第1の部分(141)の内径が半径方向内方へ(例えば、ガターバンド溝11aの径と同程度まで)収縮しようとする弾性反発力を有し、しかもロックリング(140)の第1の部分(141)が円周の1/2より長いので、ロックリング(140)の第1の部分(141)をガターバンド(11)に係止する力が働く。
そのため、従来の等分割で2ピースタイプのロックリングとは異なり、第1の部分(141)と第2の部分(142)とが連結される以前の状態でも、第1の部分(141)がガターバンドの溝(11a)に確実に掛かり留めされている状態が、当該弾性反発力により保持される。
【0038】
ここで、円環の一部を切り欠いた概略C字状に形成されている第1の部分(141)は、従来の1ピースタイプのロックリングに比較して、切り欠いた部分(開口している部分)の寸法が大きく周方向の長さが短いので、ガターバンド溝(11a)に第1の部分(141)を嵌め込む際に切り欠いた部分の広げ量が少なくでき、かつ、第1の部分(141)の両端部が離れているので、バール等の治具で第1の部分(141)をガターバンド溝(11a)に嵌合する作業が容易になる。
また、円環の一部を切り欠いた概略C字状に形成されている第1の部分(141)は、半径方向の弾性反発力(半径方向に収縮しようとする弾性反発力)が比較的弱くても、ガターバンド溝(11a)に装着することができる。同様に、第1の部分(141)の曲率半径がガターバンド溝(11a)の曲率半径よりも大きい場合においても、装着が可能である。さらに、前記弾性反発力に抗して切り欠いた部分を広げるのに必要な力が、従来の1ピースタイプのロックリングに比較して小さくて済み、第1の部分(141)をガターバンドの溝(11a)に嵌合するのに必要な力も小さくて済む場合も存在する。これ等の理由により、本発明によれば、第1の部分(141)を容易にガターバンド溝(11a)に嵌合することができる。
【0039】
さらに、第1の部分(141)は円環の一部を切り欠いた概略C字状に形成されているため、第1の部分(141)と第2の部分(142)とを連結する個所は、ハブに対して左右何れか一方のみに位置することとなる(例えば、図18では、当該連結する個所は左側のみに存在)。
そのため、作業者一人のみで、第1の部分(141)がガターバンドの溝(11a)に確実に掛かり留めされている状態が、第1の部分(141)と第2の部分(142)との2個所の連結個所において、同時に視認することができる。
そして、ハブの反対側(図18)では左右方向の反対側)に移動することなく、2個所の連結個所を連結することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0040】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施形態について説明する。
図1〜図7は、本発明の第1実施形態を示している。
【0041】
本発明の第1実施形態に係る多片リムは、ロックリングの構成を除き、図17で示す多片リムと同様な構成である。そのため、まず、図17を参照して、第1実施形態の多片リムを説明する。
図17で示すように、第1実施形態に係る多片リムは、いわゆる「ダブルタイヤ」の形態で、機械本体のハブにおいて、インナー側とアウター側に取り付けられている。
【0042】
図17は、後輪に複輪(ダブルタイヤ)を有する大型の建設機械または鉱山機械において、機械本体後方から後輪を見た場合の、右側の状態を、例示している。
図17において、ハブ5の左側にはフランジ部51が形成されている。そして、ダブルタイヤの左側(インナー側)の多片リム100Jは、ボルトBにより、ハブ5のフランジ部51に取り付けられている。
【0043】
詳細には、フランジ部51において、鉛直取付け面51aに、インナー側(図17の左側)の多片リム100Jのハブ取付け部1Tが当接し、ボルトBによって取り付けられている。
複輪のうち、アウター側(図17の右側)の多片リム100は、ハブ5のアウター側端面52aに取り付けられている。詳細には、ハブ5の端面52aに、アウター側の多片リム100におけるハブ取付け部1Tが当接し、ボルトBによって取り付けられている。
【0044】
ここで、アウター側の多片リム100におけるハブ取付け部1Tの内径R2は、インナー側の多片リム100Jにおけるハブ取付け部1Tの内径R1よりも、小さく形成されている。これは、以下の理由による。
まず、インナー側のタイヤをハブ5の右側に抜き取る際に、ハブ5のアウター側の外径Rhが、多片リム100Jにおけるハブ取付け部1Tの内径R1よりも、小さくなくてはならない。そして、アウター側の多片リム100におけるハブ取付け部1Tの内径R2は、ハブ5におけるアウター側の外径Rhよりも小さい。そのため、アウター側の多片リム100におけるハブ取付け部1Tの内径R2は、インナー側の多片リム100Jにおけるハブ取付け部1Tの内径R1よりも、小さくなる。
なお、図17において、一点鎖線Lhcは、ハブ5の中心線を表している。
【0045】
インナー側の多片リム100Jは、図14で示す従来技術と同様な構成をしている。多片リム100Jは、リムベース1と、左右のサイドリング2と、ビードシートバンド3と、ロックリング4とを有している。
リムベース1のロックリング4を設けた側の端部(右端)近傍は、ガターバンド11を構成しており、ロックリング4が嵌合する溝が形成されている。そして、リムベース1の左側端部にはバックフランジ12が形成されている。
なお、図17で表示されているハブ取付け部1Tは、図14においては図示が省略されている。
【0046】
一方、アウター側の多片リム100は、リムベース1を有しており、そしてリムベースの左右両端部に、サイドリング2、ガターバンド11、ビードシートバンド3、ロックリング4を、それぞれ2つずつ有している。そして、アウター側の多片リム100においては、バックフランジ12を構成していない。
そのため、図17においては、多片リム100のリムベース1を機械本体のハブ5から外すことなく、リムベース1をハブ5に取り付けた状態で、インナー側のタイヤ6およびアウター側のタイヤ6と、多片リム100J、100の各部品を、図17の矢印「Y」方向へ抜き出すことができる。
【0047】
図17において、インナー側およびアウター側のロックリング4は、同一の構成を具備している。そして、係るロックリング4について、第1実施形態は従来の多片リムとは相違している。
係るロックリングの詳細については、図1以下を参照して説明する。
なお、図17において、アウター側の多片リム100におけるアウター側のロックリングは、符号4Aで表示されている。係るロックリング4Aは、図1以下を参照して説明される分割式の構造としないことが可能である。
【0048】
図1は、第1実施形態における要部(2分割されたロックリングの連結部分)を示している。第1実施形態においては、2分割されたロックリング40を連結する連結部材として、ワイヤー43を用いている。
なお、図1は、2分割されたロックリング40の2つの部材41、42における2個所の分割個所のうち、ワイヤー43で連結された端部41a、42a近傍を図示している。
ワイヤー43で連結された端部41a、42aとは反対側の端部とその近傍については、図5〜図7を参照して説明する。
【0049】
図1において、ロックリング40は、1つのリングを概略半円状に2分割した2つの部材41、42と、ワイヤー43と、ワイヤー43を2つの部材41、42に固定するための固定ボルト44とから構成されている。
ワイヤー43は、ワイヤー本体43aと、ワイヤー本体43aの両端に固着されたリング状部材(たとえば、ワッシャ)43bによって構成されている。
図1における符号41c、42cで示す円弧状の突起部は、リムベース1のガターバンド11に形成された溝11aに嵌合する突起部である。
【0050】
図2は、図1で示す状態からワイヤー43を取り外した状態を示している。
2つの部材41、42の対向する端部41a、42aの外周面41f、42fには、固定ボルト44(図1)と螺合する雌ねじを形成したねじ孔41d、42dが形成されている。
【0051】
図示の例では、ロックリング40は2分割されているが、ロックリングの分割数は、2分割に限定されるものではない。3分割以上に分割することも可能である。
【0052】
図1において、2分割されたロックリング40のそれぞれの部分41、42同士を結合するワイヤー43には、張力が作用する。そのため、ワイヤー43は、係る張力に耐える程度の断面積(あるいは強度)が必要である。たとえば、ワイヤー43は、2kNの張力に耐えることができる。
【0053】
図1、図2を参照して説明したロックリング40を、ガターバンドの溝部11aに取り付ける態様について、図3〜図7を参照して説明する。
【0054】
図示しない作業者により、ロックリング40は、図3および図4で示すように、多片リム(インナー側、アウター側の双方の多片リム100J、100)のリムベース1のガターバンド11に引っ掛けるように配置する。
ロックリングのそれぞれの部分41、42の内径は、ガターバンド11に嵌っていない自由状態において、嵌合時にロックリングの形状に対応するガターバンド11の外周部分の外形と一致する寸法となっている。ただし、ロックリングのそれぞれの部分41、42の内径は、ガターバンド11に嵌っていない自由状態で、嵌合時にロックリングの形状に対応するガターバンド11の外周部分の外形より大きくても、または小さくてもよい。
この段階では、図3で示すように、リムベースのガターバンド11に引っ掛けられて支持されている側のロックリングの(2分割された内の一方の)部分41は、ガターバンド11の溝11aに嵌合している。
【0055】
図3で示すように、(2分割された内の一方の)ロックリングの部分41がリムベースのガターバンド11に引っ掛けられており、かつ、ガターバンド11の溝11aに嵌合している状態とするためには、ロックリング40をリムベースのガターバンド11の上方に投げ掛ければよい。
あるいは、最初にロックリング40の一方の部分41における端部41bを、ガターバンド11の溝11aに嵌合し、その状態で一方の部分41を押し込めば、図3で示すような状態とすることができる。
【0056】
次に、図3、図4で示すような状態において、ロックリング40の一端部を保持して引っ張り、あるいは押し込んで、ロックリング40を矢印R方向に移動する。そして、図5で示すように、2分割されたロックリングの部分41、42をワイヤー43で連結した連結個所41a、42a(図5の矢印Aで示す個所)が垂直方向(図5の矢印UD方向)の最上部となり、連結されていない側の端部41b、42bが垂直方向最下部となるようにする。
図5において、2分割されたロックリング40における連結されていない側の端部41b、42bが向き合った部分(図5の矢印Bで示す個所)が、拡大されて図6で示されている。
【0057】
図5、図6で示すように、ロックリング40において、図3〜図6では連結されていない側の端部41b、42bには、その側面に、雌ねじが切られたねじ孔41d、42dが形成されている。
ロックリングの端部41b、42b同士を締結するためには、端部41b、42bにプレート8(図7)をセットし、プレート8のボルト孔81を貫通するように、ボルトB2、B2をねじ孔41d、42dに係合する。
図7で示すように、プレート8をボルトB2、B2で取り付けることにより、ロックリング40の端部41b、42bが連結される。
【0058】
タイヤローテーションなどでタイヤを外す際には、上述したのとは逆の操作を行えばよい。
すなわち、図7の状態で、ボルトB2を外してプレート8を外し、ロックリング40の端部41b、42bが連結されていない状態にする。その状態で、ロックリング40の端部41b、42bの一方を保持して引っ張り、あるいは押し込めば、図3、図4で示す状態を経由して、ロックリング40はリムベースのガターバンド11から外れる。
【0059】
このように、図7で示すプレート8を連結部41b、42bから取り外すことにより、図1〜図7に係る第1実施形態のロックリング40は、リムベースのガターバンド11から容易に外すことができる。
その後、図17で示す従来技術と同様に、サイドリング2、ビードシートバンド3を外し、アウター側のタイヤ6およびインナー側のタイヤ6を、図17の矢印「Y」方向(機械本体から離隔する方向)に抜き取れば、タイヤを多片リムごと機械本体のハブから取り外すことなく、タイヤのみを機械本体から取り外すことができる。そして、タイヤのみを機械本体に取り付けることができる。
【0060】
このように、第1実施形態によれば、たとえば2分割されたロックリング40の部分41、42の端部41a、42a同士を連結部材(たとえばワイヤー43)で連結することにより、連結部材(たとえばワイヤー43)で連結されていない側の端部(41b、あるいは42b)をガターバンドの溝11aに嵌合して、そのまま押し込めば、2分割されたロックリング40の全体が確実にガターバンドの溝11bに嵌合し、いわゆる「掛かり留め」された状態となる。
あるいは、そのような2分割されたロックリング40を、リムベースのガターバンド11の上方に投げ掛け、ロックリング40の円弧状突起部41c、42cがガターバンドの溝11aに嵌合した状態にすれば、いわゆる「掛かり留め」された状態となる。
【0061】
そして、連結されていない側の端部41b、42b同士を、プレート8とボルトB2により連結すれば、タイヤ6と多片リム100、100Jとが正確に組み立てられる。
さらに、逆の操作をすることにより、容易かつ確実に、ロックリング40をリムベース1から外すことが可能である。
【0062】
また、図3、図4で示すように、2分割されたロックリング40の一方(たとえば41)が、ガターバンドの溝11bにある程度嵌合すれば、リムベース1がロックリング40の重量を支持することとなる。そのため、タイヤ径が大きく、ロックリング40の質量が大きくても、ロックリング40を支持するのに多大な労力を必要とせず、特別の機器を準備しなくても済む場合が多くなる。
【0063】
そして第1実施形態によれば、2分割されたロックリング40のそれぞれの部分41、42における一方の端部41a、42a同士を連結部材(たとえばワイヤー43)で連結することにより、2分割されたロックリング40を一体の部材として取り扱うことを可能ならしめている。そのため、管理すべき部品数を少なくすることができる。
【0064】
さらに、図3〜図7を参照して説明したように、ロックリング40が2分割されていても、締結作業あるいは締結解除作業は、1つのロックリング40について1個所のみでよい。そのため、タイヤの取付けや取り外しに際して、必要な作業数を増加させてしまうこともない。
【0065】
図8は、第2実施形態を示している。
図8の第2実施形態では、第1実施形態と同様に、ロックリングを2分割した部分41、42の端部をワイヤー本体43aで連結した実施形態である。
ただし、第1実施形態では、ワイヤー43aをワッシャ43bと一体化して、ボルト44で締結してロックリングの分割体41、42に固定しているが、第2実施形態では、ワイヤー43aの両端を、2分割されたロックリング40Aの分割部分41、42の端部41a、42aへ、それぞれ直接に埋め込んでいる。
【0066】
図8で示すロックリング40Aの上記以外の構成は、第1実施形態と同様である。そして、ロックリング40Aをリムベース1に着脱する態様についても第1実施形態と同様である。
【0067】
なお、第1実施形態および第2実施形態で用いられているワイヤー43aは、高強度の鋼線(たとえば、ピアノ線)をより線にしたものであるが、鋼線のワイヤーの他に、高強度の樹脂繊維(たとえば、炭素繊維等)で構成されるワイヤーを用いることも可能である。
【0068】
図9は、第3実施形態を示す。
図9の第3実施形態では、連結部材として、鋼製のコイルスプリング43Bを選択している。コイルスプリング43Bの両端部は、ロックリング40Bの分割部分41、42の端部41a、42aに直接埋め込まれている。
【0069】
図9で示すロックリング40Bの上記以外の構成は、第1実施形態、第2実施形態と同様である。そして、ロックリング40Bをリムベース1に着脱する態様についても、第1実施形態、第2実施形態と同様である。
【0070】
図10は、第4実施形態を示す。
図10の第4実施形態では、連結部材として、2つの関節を有する多関節連結リンク43Cを用いている。
多関節リンク43Cは、1対のヨーク43Caと、1対のヒンジピン43Cpと、両端にヒンジピン挿通孔を有する連結リンク43Cbとで構成され、1対のヨーク43Caの軸部43sの先端は、ロックリンク40Cの分割部分41、42の端部41a、42aに埋め込まれている。
【0071】
図10におけるロックリング40Cの上記以外の構成は、第1実施形態〜第3実施形態と概略同様である。そして、ロックリング40Cをリムベース1へ着脱する態様についても、第1実施形態〜第3実施形態と同様である。
【0072】
図11は、第5実施形態におけるロックリング40Dの連結部を立体的に示している。図11の第5実施形態では、連結部材として、ボールジョイントを備えたユニバーサルジョイント43Dを選択している。
【0073】
連結部材としてユニバーサルジョイント43Dを用いた他は、第1実施形態〜第4実施形態と概略同様であり、ロックリング40Dの、リムベース1への着脱方法に関しても概略第1実施形態〜第4実施形態と同様に行われる。
【0074】
図12は、第6実施形態を示す。
図12において、ロックリングに符号40Eが付されている。そして図12では、第1実施形態〜第5実施形態において、2分割部分41、42が最初から連結されている端部の反対側の端部41b、42bが、連結された状態を立体的に示している。
図12の第6実施形態では、2分割された部分41、42が最初から連結されている側とは反対側の端部41b、42bが、連結部材として工業用ファスナーあるいはアジャスター43Eを用いて、連結されている。
【0075】
アジャスター43Eは、第1の部材43Ecと、第2の部材43Edとで構成されている。
第1の部材43Ecは、レバー43Eaと、先端がコ字状に閉じ他端がレバー43Eaの側部で回動するリンク43Ebとを有している。第2の部材43Edは、第1の部材43Ec側を向いた先端がU字状に曲げられて構成されている。
第1の部材43Ecは、たとえば、ロックリング40Eの一方の分割部分41に取り付けられ、第2の部材43Edは、ロックリング40Eの他方の分割部分42に取り付けられている。
【0076】
多片リムを組み立てるに際して、2分割した部分41、42を最終的に接続するためには、第1の部材のレバー43Eaをワンタッチ操作して、第1の部材43Ecのリンク43Ebを、第2の部材43EdのU字状に曲げられた部分に装着すればよい。
そして、タイヤを多片リムから分離するに際して、2分割されているロックリング40を外すためには、第1の部材のレバー43Eaをワンタッチ操作して、第1の部材43Ecのリンク43Ebを第2の部材43EdのU字状に曲げられた部分から外せばよい。
【0077】
図12で示すような工業用ファスナーあるいはアジャスター43Eを用いれば、ロックリングの部分における端部を、ワンタッチ式に締結可能に構成することが可能である。
【0078】
図17は、ディスクを有するタイプについて示されているが、ディスクがないタイプのリムについても、本発明を適用することができる。
図13は、ディスクがないタイプのリムを機械本体側のハブに取り付ける態様を示している。
【0079】
図13において、機械本体側のハブ5には、雌ねじを有するねじ孔55が形成されている。リムの外側(リムベース1の左端)にクランプ9を配置して、そのクランプ9にはボルトBが貫通するための貫通孔が形成されている。そして、クランプ9を貫通したボルトBが、ハブ5に形成されたねじ孔55に係合している。
その他の構成については、図17を参照して説明したのと同様である。
【0080】
図18〜図26は、第7実施形態を示している。
図18〜図26において、第7実施形態に係るロックリング140を除き、多片リム(図19において符号200J、200で示す多片リム。ただし、サイドリング、ビードシートバンド、ロックリングは図示を省略。)の構成は、図17で示す多片リムと同様である。
図19では、インナー側の多片リム200Jがアウター側の多片リム200と同様に、リムベース1の両端にガターバンド11が設けられた構成となっているが、図17の示すようにインナー側リムベース1のインナー側にバックフランジ12を設けた構成としてもよい。
【0081】
図18は、ガターバンド11に嵌っていない自由状態におけるロックリング140の全体を示している。図18において、全体を符号140で示すロックリングは、第1の部分141と第2の部分142から構成され、第1の部分141の周方向長さは、第2の部分142の周方向長さより大きくなっている。
第1の部分141は、円環の一部を切り欠いた概略C字状に形成されている。そして、第1の部分141の切り欠いた部分の弦の長さ(両端部間の寸法)Lは、ハブの直径寸法Dh(図19及び図20参照)と実質的に等しい。インナー側リムベースのアウター側およびアウター側リムベースのインナー側のガターバンド11へのロックリングの第1の部分141の着脱時に、第1の部分141とハブが干渉しないで着脱でき、且つ、第1の部分141がガターバンド11に確実に固定できるようにするためである。
第2の部分142は、図22において、リムベース1のガターバンド11に第1の部分141を嵌め込んだ状態で、第1の部分141における円環の切り欠いた部分に対応する形状である。ただし、加工誤差を吸収し、組立を容易にするため、隙間G(図24参照)が設けてある。
【0082】
第1の部分141の端部と第2の部分の端部142とは、連結部材8(図24参照)と公知の締結部材(例えば接続ボルト。図示せず。)によって連結されている。
なお、後述する第8実施形態(図27)及びその変形例(図28)は、第1の部分141の端部及び第2の部分の端部142と、連結部材8との締結(連結状態)に関するものである。
【0083】
なお、図18〜図26の第7実施形態に係るロックリング140が用いられるのは、主として、図19の矢印Zで示す領域であり、図26におけるインナータイヤとアウタータイヤとの間の領域である。
【0084】
図20は、図19のA矢視図である。
図20の状態(自由状態)におけるロックリング140の第1の部分141における切り欠いた部分の両端部間の寸法Lは、ハブの直径Dhと概略等しい。また、第1の部分141における内径寸法は、リムベース1に嵌合したロックリング140の形状に対応するガターバンド11の外周部分における曲率半径と実質的に等しいか、または、第1の部分141をガターバンド11に保持するのに必要な弾性反発力を得るのに必要な程度に小さい。そのため、第1の部分141をガターバンド11に嵌め込むのみで、第1の部分141をガターバンド11から落下しないように保持あるいは係止することができる。
ロックリング140の第1の部分141は、従来の1ピースロックリングに比較して切り欠いた部分(開口部分)の両端部間の寸法(弦の長さ)Lが大きく周方向の長さが短いので、ガターバンド11への着脱時には、第1の部分141の切り欠いた部分を広げる必要があるが、この広げ量は従来の1ピースロックリングの場合より小さい。
【0085】
また、円環の一部を切り欠いた概略C字状に形成されている第1の部分141は、半径方向の弾性反発力(半径方向に収縮しようとする弾性反発力)が比較的弱くても、ガターバンド溝11aに装着することができる。
同様に、第1の部分141の曲率半径がガターバンド溝11aの曲率半径よりも大きい場合においても、概略C字状に形成されている第1の部分141は、ガターバンド溝11aから脱落することなく、装着あるいは係止することができる。
【0086】
さらに、概略C字状に形成されている第1の部分141における切り欠いた部分(開口部分)を、前記弾性反発力に抗して広げるのに必要な力は、従来の1ピースタイプのロックリングに比較して小さくて済む場合が存在する。そして、係る場合であれば、第1の部分141をガターバンドの溝11aに嵌合するのに必要な力も、従来の1ピースタイプのロックリングに比較して小さくてよい。
これ等の理由により、図18〜図26の第7実施形態によれば、第1の部分141の切り欠いた部分(開口部分)を広げて、ガターバンド11に嵌め込む作業が容易となり、嵌め込み作業に必要な労力は、従来の1ピースロックリングの場合に比較して、遥かに小さくて済む。
【0087】
ここで、ロックリング140の第1の部分141における切り欠いた部分の両端部間の寸法L(C型リング開口部における弦の長さ)を、ハブの直径Dhよりも小さくすることは可能であるが、ハブ5と干渉するために着脱がし難くなる。
一方、ロックリング140の第1の部分141における切り欠いた部分の両端部間の寸法L(C型リング開口部における弦の長さ)を、ハブの直径Dhよりも大きくすることも可能である。ただし、寸法Lをハブの直径Dhよりも大きくした場合に、寸法Lが(ハブの直径Dhに比較して)大き過ぎると、図22のようにガターバンド11に第1の部分141を嵌め込んだ状態で、第1の部分141を第1の部分141の部分の弾性反発力だけでガターバンド11に保持しておくことができない可能性があるため、注意を要する。なお、ロックリング140あるいは第1の部分141の定常状態(図20の状態)で、ロックリング140(あるいは第1の部分141)の曲率半径がガターバンド11の曲率半径以下の寸法であれば、ロックリング140(あるいは第1の部分141)は問題無くガターバンド11に保持される。
【0088】
図20では図示されていないが、第2の部分142は、ガターバンド11と同一の曲率となっていることが好ましい。
第2の部分142にガターバンド11と同一の曲率でなくても実施可能であるが、ガターバンド溝11aに嵌合させる際に第2の部分142をガターバンド溝11aの曲率に合わせて変形させる必要がある。このとき、第2の部分142は第1の部分141に比較して寸法が短いので、当該変形をさせるために多大な力が必要となり、連結部材8に無理な力が作用するからである。
【0089】
図20〜図23を参照して、ロックリング140のリム1への組付方法を説明する。
先ず、図20の工程では、ロックリング140における第1の部分141の切り欠いた部分に、ハブ5を挿入する様に移動する。そして、図21で示す様に、第1の部分141をハブ5の外周部に位置させる。
なお、図20、図21において、符号Dgoはリムのガターバンド11の外径を示している。
【0090】
次の図22の工程では、ハブ5の外周側に位置した第1の部分141の切り欠いた部分を広げて、ガターバンド11の外周(外径Dgo)を超えてガターバンドの溝11aに嵌合する。
図22で示す様に第1の部分141がガターバンドの溝11aに嵌合した状態では、第1の部分141は半径方向内方へ収縮しようとする弾性反発力を有してガターバンド溝11aに嵌合しているので、第1の部分141がガターバンド溝11aから外れることは無く、リム1から落下することもない。すなわち、第1の部分141は、その弾性反発力によってガターバンド溝11aに嵌合した状態が保持される。
図23は、図22のV矢視を示しており、第1の部分141(より詳細には第1の部分141の内径側)がガターバンドの溝11aに嵌合した状態が示されている。
【0091】
従来の等分割の2ピースタイプロックリングでは、タイヤにおける車両の前後に二人の作業員を配して、ロックリングの締結作業を行わなければならない。これに対して、図18〜図26の第7実施形態に係るロックリング140を用いる場合には、第1の部分141の切り欠いた部分あるいは第2の部分142が、例えば車両の後方になる様に配置すれば、作業員が車両の後方に1人居ればロックリングの締結作業を行うことができる。
すなわち、第7実施形態に係るロックリング140の締結作業に際して、作業位置は、図22における右方の領域(例えば、車両後方)のみとなるので、一人の作業者でも、第1の部分141がガターバンド11の溝11aに確実に掛かり留めしている状態の視認作業及びロックリングの締結作業を行うことが可能となる。
【0092】
ここで、第1の部分141がガターバンド11の溝11aに確実に掛かり留めされたか否かの確認するに際しては、第1の部分141の両端部(図22における上下両端部)の嵌合状態を確認することが重要である。上述した様に、第7実施形態に係るロックリング140によれば、一人の作業者が第1の部分141の両端部における嵌合状態を同時に確認(視認)できるため、第1の部分141がガターバンド11の溝11aに確実に掛かり留めされた旨を確実且つ効率的に確認することができて、安全性が向上する。
換言すれば、第7実施形態に係る2ピースタイプのロックリングにおいて、2個所の連結個所を同時にチェックできると言う作用効果は、組立作業の省人化及び作業効率の向上について、大きな意義を持つ。
【0093】
図24の工程では、第1の部分141の切り欠いた部分に第2の部分142を設置する。第2の部分142は質量が大きくないため、第2の部分142の設置に際しては、第2の部分142をガターバンドの溝11aに沿って嵌合させるように設置すればよい。すなわち、第2の部分142を嵌合するための労力は極めて軽微なものとなる。
第2の部分142をガターバンドの溝11aに嵌合することを完了したならば、連結部材8により、第1の部分141の端部と第2の部分142の端部とを連結する。これにより、多片リムの組立が完了する。
【0094】
第7実施形態のロックリング140は、図19及び図26で示すように、インナー側とアウター側とが対向する領域において、インナー側とアウター側のリムにおける各々1個所に取り付けられるが、インナー側とアウター側のどちらを先に取り付けてもよい。
また、第1の部分141と第2の部分142との接続に際して、一方の接続個所には可撓性を有する接続部材を用い、他方の接続個所には、例えばねじ等による「締付け方式」の接続部材を用いることが好ましい。
【0095】
次に、第7実施形態に係るロックリング140を、多片リムから取り外す方法について説明する。
先ず、図24で説明したのとは逆の作業手順により、第1の部分141の端部と第2の部分142の端部から連結部材8を取り外す。そして、第2の部分141をリムのガターバンド溝11aから取り外す(図22の状態)。
【0096】
次に、図21、図22を参照して上述した手順とは逆の作業手順により、第1の部分141の切り欠いた部分を広げ、ガターバンド11を超えてハブ5の外周側に移動する。
そして、ハブ5の外周側に位置した第1の部分141を、図20を参照して上述したのとは逆の作業手順により、ハブ5から取り外す。
【0097】
第1の部分141(C型リング)の開口の大きさ(切り欠いた部分の両端部間の寸法L。C型リング開口部における弦の長さ。)は、ガターバンド溝11aに嵌合した際に、第1の部分141自身の弾性反発力(半径方向内方へ収縮しようとする弾性反発力)により、第1の部分141がガターバンド溝11aに嵌合した状態を維持できる様に決定される。
換言すれば、第1の部分141における切り欠いた部分の両端部間の寸法L(切欠部の弦の長さ)は、第1の部分141がガターバンド溝11aに嵌合した状態を維持できる程度の弾性反発力が得られる様に設定される。
【0098】
図18〜図24は、第1の部分141と第2の部分142とが別体に構成されている場合を示しているが、図25で示すロックリング140Aのように、第1の部分141の一端と第2の部分142の一端とを、可撓性を有する連結部材Wで予め連結する事も可能である。換言すれば、図25で示すロックリング140Aは、第7実施形態の変形例である。これにより、ロックリング140の着脱の手間をさらに減らすことが可能である。
図25の変形例では、可撓性を有する連結部材Wとして、図1、図8〜図12の各実施形態における連結部材を適用することができる。
【0099】
図27は第8実施形態を示している。
ロックリング140における第1の部分141と第2の部分142との接続は、ボルトを含む連結部材を用いて行われる。
ここで、車両走行時、石撥ね等に起因して、石等が連結部材に衝突してしまうと連結部材を構成する各種部品が変形し、ボルトが折損してしまうと言う問題がある。
【0100】
図27で示す第8実施形態は、連結部材とロックリングとの締結に関する実施形態である。
図27の第8実施形態では、連結部材80の挿通孔801とボルトB2との間の部分に、例えば合成樹脂製のカラーを配置し、そのカラーの内側にボルトを挿通している。このように構成することにより、ボルトB2の折損を防止している。
【0101】
図27において、ロックリング140Bの第1の部材141(または、第2の部材142)において、タイヤセンターから遠ざかる側の端面141sには盲孔141hが穿孔されており、盲孔141hには雌ねじ141mが形成されている。図27では、雌ねじ141mに接続用のボルトB2の雄ねじB2oが螺合した状態が示されている。
一方、連結部材80には挿通孔801が形成されており、挿通孔801には接続用のボルトB2の軸部B2sが挿通される様になっている。また、連結部材80におけるロックリング140Bと離反する側の面80sには、ボルト頭部B2hを収容する頭部収容孔802が形成されている。
【0102】
連結部材80の挿通孔801と接続用のボルトB2の軸部B2sとの間には、合成樹脂製のカラー300が配置されている。図27において、カラー300はハッチングを付して表現されている。
図27では明確には示されていないが、カラー300の外径は、挿通孔801の内径よりも幾分大きく形成されている。
接続用のボルトB2のボルト頭部B2hとは反対側には、ネジ山が加工されていない先端部B2eが設けられている。図27の状態では、ネジ山が加工されていない先端部B2eは、盲孔141hの底部141hbに当接している。
【0103】
連結部材80でロックリング140Bの部分141、142を連結するに際しては、先ず、端面141sに形成された盲孔141hと、連結部材80に形成された挿通孔801との位置が整合する様に、連結部材80をロックリング140Bに対向させる。そして、連結部材80の頭部収容孔802側から、合成樹脂製で円筒状のカラー300及び接続用のボルトB2を挿入し回転して、接続用のボルトB2の雄ねじB2oを盲孔141hの雌ねじ141mに螺合する。接続用のボルトB2は、その先端部B2eが盲孔141hの底部141hbに当接するまで回転される(図27)。
その状態において、合成樹脂製の円筒状カラー300は、ボルトB2と挿通孔801との間に位置している。
【0104】
ここで、接続用のボルトB2の先端部B2eの長さ及び盲孔141hの深さは、図27で示す様に接続用のボルトB2の先端部B2eが盲孔141hの底部141hbに当接した状態において、連結部材80の挿通孔801と頭部収容孔802との段部801sと、ボルト頭部B2hのロックリング141側端面B2hmとの間に、符号δで示す隙間が形成される様に設定されている。
換言すれば、接続用のボルトB2における雄ねじB2oの先端部B2sが、盲孔141hの底部141hbに当接した状態では、接続用のボルトB2と連結部材80とは隙間δを維持して固定(連結)される。
係る隙間δを設けることにより、連結部材80の段部801sとボルト頭部B2の端面B2hmとは接触せず、ボルトB2と連結部材80とが金属接触をすることが防止できる。
【0105】
出願人の実験によれば、ボルトB2と連結部材80の挿通孔801との間に合成樹脂製で円筒状のカラー300を位置させることにより、車両走行時、石撥ね等に起因して、石等が連結部材に衝突しても、ボルトB2の折損が従来に比較して遥かに減少することが確認された。
また、ボルトB2と連結部材80とが金属接触をすることなく、ロックリング140Bと連結部材80とを連結することができる。
図27の第8実施形態におけるその他の構成及び作用効果は、図1〜図26の各実施形態と同様である。
【0106】
図28は、図27の第8実施形態の変形例を示している。図28の変形例に係るロックリングは、全体を符号140Cで示されている。
図28の変形例では、連結部材80のロックリング140Cと対向する面を除く外周全面を、例えばラバー等の可撓性部材400で被覆している。ここで、連結部材80のロックリング140Cとは反対側の端面において、頭部収容孔802に相当する部分には可撓性部材400による被覆はされていない。ボルト2Bによる締結及び締結解除のためである。
【0107】
図28の変形例では、連結部材80のロックリング140Cと対向する面を除く外周全面を、ラバー等の可撓性部材400で被覆することにより、石撥ね等により石等が衝突した際の衝撃がさらに緩和され、接続用ボルトB3の折損がさらに減少する。
図28の変形例におけるその他の構成及び作用効果は、図27の第8実施形態と同様である。
【0108】
図示の実施形態はあくまでも例示であり、本発明の技術的範囲を限定する趣旨の記述ではない旨を付記する。
たとえば、2分割されたロックリングの部分を連結する連結部材としては、図示のものや上述したものに限定されるものではない。ある程度の可撓性と、ロックリングに作用する張力に耐えるだけの強度がある部材を用いておりかつ断面積があれば、どのようなものでも連結部材として適用することができる。
また、図27の第8実施形態や図28の変形例(第8実施形態の変形例)における連結部材80は、図1〜図7の第1実施形態や、図18〜図26の第7実施形態の何れについても、適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0109】
【図1】本発明の第1実施形態の要部を説明する斜視図。
【図2】図1に対してワイヤーを取り外した状態図。
【図3】第1実施形態のロックリングの取付けにおける初期工程を示す図。
【図4】図3を正面から見た図。
【図5】第1実施形態のロックリングの取付けにおける中間工程を示す図。
【図6】図5のB部拡大図。
【図7】第1実施形態のロックリングの取付けにおける最終工程を示す図。
【図8】本発明の第2実施形態における要部の斜視図。
【図9】本発明の第3実施形態における要部の斜視図。
【図10】本発明の第4実施形態における要部の斜視図。
【図11】本発明の第5実施形態における要部の斜視図。
【図12】本発明の第6実施形態における要部の斜視図。
【図13】ディスクがない多片リムをハブに取り付ける態様を示す図。
【図14】従来技術における多片リムの断面図。
【図15】図14におけるロックリングの単体図。
【図16】従来技術におけるダブルタイヤの構成を示す断面図。
【図17】図16で示すのとは異なるダブルタイヤの構成を示す断面図。
【図18】本発明の第7実施形態におけるロックリングの概略構成を示した模式図。
【図19】第7実施形態におけるロックリング装着位置を説明する断面図。
【図20】第7実施形態における多片リムの組立方法を説明する第1工程図。
【図21】第7実施形態における多片リムの組立方法を説明する第2工程図。
【図22】第7実施形態における多片リムの組立方法を説明する第3工程図。
【図23】図22のV矢視断面図。
【図24】第7実施形態における多片リムの組立方法を説明する第4工程図。
【図25】第7実施形態におけるロックリング接続部材の変形例を示した正面図。
【図26】第7実施形態の多片リムを用いたホイールの要部断面図。
【図27】第8実施形態の要部断面図。
【図28】第8実施形態の変形例における要部断面図。
【図29】従来の2ピースタイプロックリングで接続個所を水平に配置した状態を示す図。
【図30】従来の2ピースタイプロックリングで接続個所を垂直に配置した状態を示す図。
【符号の説明】
【0110】
1・・・リムベース
2・・・サイドリング
3・・・ビードシートバンド
4、4A、40、40A〜40E、140、140A、140B、140C・・・ロックリング
5・・・ハブ
6・・・タイヤ
7・・・取付け部材
8・・・プレート
9・・・クランプ
11・・・ガターバンド
12・・・バックフランジ
41、42・・・分割されたロックリングの複数部分
43・・・ワイヤー
100、100J・・・多片リム
141、142・・・分割されたロックリングの部分
【特許請求の範囲】
【請求項1】
端部にガターバンドが設けられているリムベースと、それぞれのガターバンドに形成された溝に嵌合するロックリングと、端部に配置されたビードシートバンドと、インナー側端部およびアウター側端部に配置されたサイドリングとを備え、前記ロックリングは周方向に複数個の部分に分割されて構成されており、その部分の一方の端部同士が可撓性を有する連結部材で連結されていることを特徴とする多片リム。
【請求項2】
端部にガターバンドが設けられているリムベースと、それぞれのガターバンドに形成された溝に嵌合するロックリングと、端部に配置されたビードシートバンドと、インナー側端部およびアウター側端部に配置されたサイドリングとを備え、前記ロックリングは第1の部分と第2の部分とに周方向に異なる長さに2分割されて構成されており、第1の部分は円環の一部を切り欠いた概略C字状に形成され、第2の部分は第1の部分における円環の切り欠いた部分に対応する形状であり、第1の部分の端部と第2の部分の端部とが連結部材で連結されていることを特徴とする多片リム。
【請求項3】
周方向に分割されたロックリングの第1の部分の切り欠いた部分の弦の長さは、ハブの直径寸法と実質的に等しくされている請求項2の多片リム。
【請求項4】
周方向に分割されたロックリングの第1の部分と第2の部分とが、その部分の一方の端部同士が可撓性を有する連結部材で連結されている請求項2、請求項3の何れかの多片リム。
【請求項5】
複数個の部分に分割され、かつ、分割された部分の一方の端部同士が可撓性を有する連結部材で連結されているロックリングの連結されていない端部をガターバンドの溝に嵌合する工程と、そのロックリングをガターバンドの溝に沿って移動し、以って、複数の部品に分割されたロックリングの部分同士を連結部材で連結した連結個所が垂直方向上方に位置させ、かつ、いまだに連結されていない側の端部を垂直方向下方に位置せしめる工程と、複数の部品に分割されたロックリングのいまだに連結されていない側の端部同士を連結する工程、とを有することを特徴とする多片リムの組立方法。
【請求項6】
円環の一部を切り欠いた概略C字状に形成され且つ当該切り欠いた部分の弦の長さはハブの直径寸法と実質的に等しい第1の部分と、第1の部分における円環の切り欠いた部分に対応する形状の第2の部分とを有するロックリングにおける第1の部分を、切り欠いた部分がハブを通過する様に移動してハブの外周側に位置させる工程と、ハブの外周側に位置した第1の部分を広げガターバンドを超えてガターバンドの溝に嵌合する工程と、第1の部分の切り欠いた部分に第2の部分を設置する工程と、連結部材により第1の部分の端部と第2の部分の端部とを連結する工程とを有することを特徴とする多片リムの組立方法。
【請求項7】
請求項1の多片リムからロックリングを取り外す取り外し方法において、複数個の部分に分割されているロックリングのあらかじめ連結部材で連結されてはいない端部間の連結を解除する工程と、連結を解除された端部の一方の端部を保持し、ガターバンドの溝に沿ってロックリングを移動させる工程とを有することを特徴とする取り外し方法。
【請求項8】
請求項2の多片リムからロックリングを取り外す取り外し方法において、円環の一部を切り欠いた概略C字状に形成され且つ当該切り欠いた部分の弦の長さはハブの直径寸法と実質的に等しい第1の部分と、第1の部分における円環の切り欠いた部分に対応する形状の第2の部分とを有するロックリングにおける第1の部分の端部と第2の部分の端部から連結部材を取り外す工程と、第2の部分を取り外す工程と、第1の部分を広げガターバンドを超えてハブの外周側に移動する工程と、ハブの外周側に位置した第1の部分を、切り欠いた部分がハブを通過する様に移動して取り外す工程とを有することを特徴とする取り外し方法。
【請求項9】
連結部材はボルトを有し、該ボルトはロックリングの各部分の側面部に穿孔されたボルト孔に螺合しており、該ボルトの連結部材とロックリングとの境界部分にはカラーが配置されている請求項1〜請求項4の何れか1項の多片リム。
【請求項1】
端部にガターバンドが設けられているリムベースと、それぞれのガターバンドに形成された溝に嵌合するロックリングと、端部に配置されたビードシートバンドと、インナー側端部およびアウター側端部に配置されたサイドリングとを備え、前記ロックリングは周方向に複数個の部分に分割されて構成されており、その部分の一方の端部同士が可撓性を有する連結部材で連結されていることを特徴とする多片リム。
【請求項2】
端部にガターバンドが設けられているリムベースと、それぞれのガターバンドに形成された溝に嵌合するロックリングと、端部に配置されたビードシートバンドと、インナー側端部およびアウター側端部に配置されたサイドリングとを備え、前記ロックリングは第1の部分と第2の部分とに周方向に異なる長さに2分割されて構成されており、第1の部分は円環の一部を切り欠いた概略C字状に形成され、第2の部分は第1の部分における円環の切り欠いた部分に対応する形状であり、第1の部分の端部と第2の部分の端部とが連結部材で連結されていることを特徴とする多片リム。
【請求項3】
周方向に分割されたロックリングの第1の部分の切り欠いた部分の弦の長さは、ハブの直径寸法と実質的に等しくされている請求項2の多片リム。
【請求項4】
周方向に分割されたロックリングの第1の部分と第2の部分とが、その部分の一方の端部同士が可撓性を有する連結部材で連結されている請求項2、請求項3の何れかの多片リム。
【請求項5】
複数個の部分に分割され、かつ、分割された部分の一方の端部同士が可撓性を有する連結部材で連結されているロックリングの連結されていない端部をガターバンドの溝に嵌合する工程と、そのロックリングをガターバンドの溝に沿って移動し、以って、複数の部品に分割されたロックリングの部分同士を連結部材で連結した連結個所が垂直方向上方に位置させ、かつ、いまだに連結されていない側の端部を垂直方向下方に位置せしめる工程と、複数の部品に分割されたロックリングのいまだに連結されていない側の端部同士を連結する工程、とを有することを特徴とする多片リムの組立方法。
【請求項6】
円環の一部を切り欠いた概略C字状に形成され且つ当該切り欠いた部分の弦の長さはハブの直径寸法と実質的に等しい第1の部分と、第1の部分における円環の切り欠いた部分に対応する形状の第2の部分とを有するロックリングにおける第1の部分を、切り欠いた部分がハブを通過する様に移動してハブの外周側に位置させる工程と、ハブの外周側に位置した第1の部分を広げガターバンドを超えてガターバンドの溝に嵌合する工程と、第1の部分の切り欠いた部分に第2の部分を設置する工程と、連結部材により第1の部分の端部と第2の部分の端部とを連結する工程とを有することを特徴とする多片リムの組立方法。
【請求項7】
請求項1の多片リムからロックリングを取り外す取り外し方法において、複数個の部分に分割されているロックリングのあらかじめ連結部材で連結されてはいない端部間の連結を解除する工程と、連結を解除された端部の一方の端部を保持し、ガターバンドの溝に沿ってロックリングを移動させる工程とを有することを特徴とする取り外し方法。
【請求項8】
請求項2の多片リムからロックリングを取り外す取り外し方法において、円環の一部を切り欠いた概略C字状に形成され且つ当該切り欠いた部分の弦の長さはハブの直径寸法と実質的に等しい第1の部分と、第1の部分における円環の切り欠いた部分に対応する形状の第2の部分とを有するロックリングにおける第1の部分の端部と第2の部分の端部から連結部材を取り外す工程と、第2の部分を取り外す工程と、第1の部分を広げガターバンドを超えてハブの外周側に移動する工程と、ハブの外周側に位置した第1の部分を、切り欠いた部分がハブを通過する様に移動して取り外す工程とを有することを特徴とする取り外し方法。
【請求項9】
連結部材はボルトを有し、該ボルトはロックリングの各部分の側面部に穿孔されたボルト孔に螺合しており、該ボルトの連結部材とロックリングとの境界部分にはカラーが配置されている請求項1〜請求項4の何れか1項の多片リム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図2】
【図3】
【図4】
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【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【公開番号】特開2008−222207(P2008−222207A)
【公開日】平成20年9月25日(2008.9.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−27268(P2008−27268)
【出願日】平成20年2月7日(2008.2.7)
【出願人】(000110251)トピー工業株式会社 (255)
【公開日】平成20年9月25日(2008.9.25)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年2月7日(2008.2.7)
【出願人】(000110251)トピー工業株式会社 (255)
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