説明

多用途手袋

多用途手袋は、織物材料上に成形されたエラストマー材料で形成される三次元成形部分を備え、この成形部分は、約0.8mmから約10.8mmの厚さを有し、エラストマー材料は、約0.4mmから約10.0mmの範囲内の異なる厚さの2つまたはそれ以上の領域を備える。多用途手袋の成形部分は、手のひらの中心が凹状構成を形成するように縁部から沈められた、凹状の手のひらを有する。多用途手袋は、織物材料を含む未完成手袋を、手の少なくとも一部の形の第1の金型部分の上に配置すること、および、少なくとも1つの第2の金型部分を、第1の金型部分上の未完成手袋とともにキャビティを作り出すように第1の金型部分と成形係合させることによって製造される。次いでエラストマー材料が、成形部分を形成するようにこのキャビティ内に注入され、エラストマー材料は、第1の金型部分と対向する織物材料の面上に注入される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2007年7月16日出願の米国仮特許出願第60/950,028号の優先権を主張する2008年7月16日出願の米国特許出願第12/218,562号の一部継続出願である、2009年10月12日出願の米国特許出願第12/577,273号の一部継続出願である。これらの全体を参照により本明細書に組み込む。
【0002】
本発明は、作業、スポーツ、および運動競技、園芸などのための多用途手袋の分野に関し、より詳細には、着用者の手の保護を改善するためのエラストマー補強を有する多用途手袋に関する。
【背景技術】
【0003】
多用途手袋は、園芸、建設などの分野、あるいは現場、製造または園芸施設での一般的な作業、スポーツまたは運動競技、あるいは単に、家の周辺での作業または遊びにおいて用いられる。これらの手袋は一般に、把持部分を含み、この把持部分は、使用者の手から物品が滑り出すことを防ぎ、切り傷、擦り傷、および水膨れなど使用者の皮膚への損傷を防ぎ、対象物を回転させまたは握るときにより良好な把持をもたらす。手袋の把持部分は一般に、天然または合成ゴムなどエラストマーの把持表面を手袋に適用するためにナイロン手袋をエラストマー材料に浸漬することにより、ニットのナイロン手袋に適用される。この工程は、手袋の密度を高め、かつ、水分および汚れを吸収する傾向があり洗浄が困難な織物部分を残す。
【0004】
本発明の目的は、最も磨耗しやすい1つまたは複数の領域内に継目のない補強を有する、多用途手袋を作り出すことである。継目を最小化することに加え、さらなる材料または当て物が磨耗および/または衝撃を最も受けやすい領域内に施され、この当て物もまた、好ましくは継目なしで含まれる。これに関して、想定される最終用途に応じて、衝撃および磨耗から保護するための戦略的な領域内で用いられる天然または合成ゴムを含むエラストマー材料の量を調整することが可能である。最終的には、そのような当て物を使用することにより、より長持ちしより快適な手袋を使用者に提供する。さらに本発明は、1つまたは複数の改良された把持表面をさらに設けるために、戦略的領域におけるエラストマー材料内に様々な凹凸を設ける能力を備える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国仮特許出願第60/950,028号
【特許文献2】米国特許出願第12/218,562号
【特許文献3】米国特許出願第12/577,273号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
したがって本発明の目的は、典型的な浸漬されるナイロンニットの多用途手袋の改善である、多用途手袋を作り出すことである。
【0007】
本発明の別の目的は、ニット多用途手袋の密度を増大させることを必要とせずに、さらなる耐久性と、様々な手のひらの厚さを有する能力とを提供することである。
【0008】
本発明のさらなる目的は、密度を生み出すための、織物上のエラストマー材料の吸収への依存をなくすことである。
【0009】
本発明のさらに別の目的は、戦略的に配置される当て物および/または耐磨耗性区域ならびに強化された把持区域を有する、多用途手袋を提供することである。
【0010】
本発明のさらに別の目的は、場合によっては、通常過剰な量の水分および汚れを吸収するニットの裏地をもたない、エラストマー材料を含む手のひら構造を提供することである。この構造は、手袋を洗濯するのではなく湿った布で単純に拭くことができることにより、手袋をより容易に洗浄することを可能にする。
【0011】
本発明の別の目的は、通常補強を必要とする領域、すなわち人差し指および親指、ならびに、場合によっては人差し指と親指の間の領域およびそれぞれの指の付け根と股の真下の領域内で、磨耗に対する最大の保護を作り出すことである。
【0012】
本発明のさらに別の目的は、磨耗および衝撃を最も受けやすい領域、すなわち親指の付け根および指の真下の手のひら領域内でエラストマー材料を盛り上げることにより、磨耗および衝撃からの保護を提供することである。
【0013】
本発明の別の目的は、手袋の特性、および最も具体的には把持および可撓性を改善するために、様々な領域内で異なるエラストマー材料を有するように変えることができる、成形構成要素を作り出すことである。たとえば、より軟らかいエラストマー材料を、磨耗しにくい領域において可撓性をもたらすために用いることができ、より強く凹凸のあるエラストマー材料を、把持に関する領域内で用いることができる。
【0014】
本発明のさらなる目的は、着用者の手が閉じるときのひだを最小限にするために、少なくとも部分的にカップ状の形状を作り出すように手のひら部分の中心が手のひら部分の縁部から沈む予め湾曲させられた凹状の手のひら部分を有する、より自然な感覚の成形された手袋を作り出すことである。この予め湾曲させられた手のひら部分はまた、静止した手がより自然な形状となるように、指へと続きまたは延びる。
【0015】
本発明のさらに別の目的および利点は、本発明の精神および範囲から逸脱することなく、明細書から、ある程度明らかかつ/または明白になる。
【課題を解決するための手段】
【0016】
これらおよびその他の目的は、織物材料上に成形されるエラストマー材料で形成される三次元部分を備える、手のひら面を有する本発明の多用途手袋によって達成され、この成形部分は、異なる厚さの2つまたはそれ以上の領域を備える。成形された手のひら部分は、耐磨耗性のための厚くされた領域、快適さのための当て物をされた領域、運動を改善するための薄くされた領域を含む伸縮溝、および把持を改善するための凹凸を有する把持領域のうちの1つまたは複数を有することができる。成形された手のひら部分は、特定の材料の異なる特性を利用するために、様々なエラストマー材料で形成することができる。
【0017】
いくつかの用途において損傷を受けやすくなることがある、使用者の指関節または手の裏を覆う保護を形成するように、手袋の裏面が成形部分を備えることも企図される。成形された裏面は、手袋の成形された前面と別個とすることができ、またはそれと一体に形成することができ、かつ、成形部分が、着用者の手の周りで最大および360°を含んで継目なく延びるように形成することができる。
【0018】
多用途手袋の成形部分は、1片の耐熱性織物を、手の少なくとも一部の形状で形成された第1の金型部分に接触させて配置することと、対応する第2のまたはさらなる(1つまたは複数の)金型部分を第1の金型部分と金型係合させることと、成形部分を形成するように、第1の金型部分に対向する織物材料の面上の金型部分間の成形キャビティ内にエラストマー材料を注入することとによって形成することができる。第1の金型部分が手の少なくとも一部の形状であるという場合、これは、金型部分が、手の少なくとも一部の三次元形状で形成されることを意味する。
【0019】
手の少なくとも一部の形状の第1の金型部分が、潜在的な使用者の手袋のサイズに対して様々なサイズで形成されること、ならびに、対応する第2のおよび/または1つまたは複数のさらなる金型部分が、凹凸を有する1つまたは複数の領域、1つまたは複数の厚くされた領域、1つまたは複数の当て物をされた領域、および1つまたは複数の伸縮溝のうちの、1つまたは複数を備えることが予測される。好ましくは、金型内で用いられる耐熱性織物は、エラストマー材料の吸収性を改善するためのニットの親水性材料である。
【0020】
最も好ましくは、手の少なくとも一部の形状である金型上に配置される織物は、手の少なくとも一部の三次元形状である第1の金型部分上に配置される手袋の形である。これは、織物が一切れの織物ではなく、平坦に置かれるときに2層の織物を有する部分を少なくとも含むように、織物が手袋の少なくとも一部に相当することを企図する。手袋の形の織物が第1の金型部分上に配置されるとき、第1の金型部分は、第1の金型部分の少なくとも一部のそれぞれの面上に少なくとも1つの層を有する、手袋の少なくとも一部として形成された織物内の開口部内へと挿入される。
【0021】
三次元成形部分の少なくとも一部を形成するために使用されるエラストマー材料は、好ましくは、約10〜25のデュロメータ硬度、および最も好ましくは約15のデュロメータ硬度を有する、相対的に軟らかい熱可塑性ゴム材料である。内部に織物がある成形キャビティ内へと射出成形されるとき、エラストマー材料は、織物の孔構造内へと吸収される。
【0022】
織物上のエラストマー材料の厚さが約0.5mmから約3.0mmの間となるように、エラストマー材料の厚さが制御されることも好ましい。これに関して、磨耗しやすいまたは緩衝を必要とする領域がより厚い場合でも、伸縮することが意図される領域、すなわち指の関節および手のひら内の折れ目における厚さが、可撓性を生み出すための隣接する領域に対して薄くされまたは低減されることが好ましい。そのような薄い層のエラストマー材料は、薄いエラストマー材料の物理的一体性を維持する多孔性織物内にエラストマー材料を吸収させることによってのみ使用することができる。
【0023】
当然、製造者のデザイン上の好みに基づいて、完成した手袋を作り出すために他のステップを用いることもできる。たとえば、何らかの特性をもたらすために手袋を材料に浸漬させるステップなど知られた工程ステップは、成形された手のひら部分が織物材料に接着される前または後のいずれかに用いることができる。
【0024】
本発明は、同様の参照符号が同様の部分を指示する添付の図面を見ながら考慮すると、よりよく理解されるであろう。ただし図面は、本発明の好ましい実施形態を示すために提示されるに過ぎず、いかなる方法においても本発明を限定しない。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明による多用途手袋の手のひら面を示す正面図である。
【図2】図1の手袋を示す背面図である。
【図3】図1の手袋の手のひら面の把持部分の裏を示す図である。
【図4】浮き出された把持細部を有する、図1の手袋の手のひら把持部分の手のひら面を示す図である。
【図5】園芸手袋の実施形態の手のひら把持部分の内側を示す図である。
【図6】図5の把持部分を有する園芸手袋の手のひら面を示す図である。
【図7】図6の手袋の裏面を示す図である。
【図8】図5の手のひら把持部分の手のひら面を示す図である。
【図9】本発明による多用途手袋の好ましい実施形態の手のひら面を示す正面図である。
【図10】図9の手袋を示す背面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
図1は、織物材料に接着されたエラストマー材料で形成された成形部分4を有する、多用途手袋2の手のひら面を示す。図1に示す多用途手袋2の手のひら面はまた、成形部分4を超える領域内に織物材料12を備えるが、そのような織物材料12は、本発明の手袋2の手のひら面の可視要素である必要はない。それにもかかわらず、成形部分4を超える織物材料12が、隣接する成形部分4を形成する織物材料の連続であることが好ましい。
【0027】
図2は、盛り上がり穴が開けられた保護形状が設けられた独立した成形領域14を有する、織物材料12を備える手袋2の裏面を示す。当然、指が手の裏と接合する指関節または手の裏自体を覆う成形部分4または14を含む、いかなる成形部分を手袋2の裏面に形成することもできる。手袋2の裏面上の織物材料12は、好ましくは、手袋の手のひら面上の織物材料12を含む未完成手袋の一部として形成される。あるいは、手袋2の裏面上の織物12は、成形された手のひら部分4または手のひら面の織物材料12のいずれかへと、手袋2の手のひら面に縫い付けることができる。手袋2をより良好に嵌め、使用中に使用者の手の上にしっかりと維持するために、成形された手首ストラップ16として示される閉鎖要素を設けることができる。
【0028】
本発明の手袋2の成形部分4は、好ましくは、図6、図8、および図9に示す浮き出された把持細部6、図4および図9に示す沈められた収縮溝8、ならびに、図4、図6、および図10に示す盛り上がった凹凸を有する把持領域10を有する。これに関して、図3〜図10の実施形態の成形部分4は、好ましくは、把持、耐久性、および補強をより良好にするための、盛り上がったまたは厚くされた凹凸を有する人差し指先端および親指先端として示される、盛り上がった凹凸を有する把持領域10を備える。
【0029】
手袋2の成形部分4、あるいは手袋2の何らかの成形部分4および/または14は、好ましくは、およそ華氏400℃の熱に耐えることができその上にエラストマー材料が射出成形される、耐熱性ニットの親水性織物を用いて製作される。好ましくは、手の少なくとも一部の形状の第1の金型部分を含む金型と、少なくとも1つの対応する第2の金型部分は、その内部の織物とともに成形キャビティを作り出す。いかなる適当な親水性および耐熱性のニット織物を織物に用いることもできるが、ここで企図されるような本発明には、ナイロン材料を含む織物材料が最も適することが見出されている。そのようなナイロンニットの親水性材料は、エラストマー材料が織物12の「孔」を貫通しその中へと引き込まれることにより織物12と接着するための、多孔構造を含む。
【0030】
上記で提示したように、手の少なくとも一部の形状の金型部分は、単に手の一部の二次元の輪郭ではなく、手の少なくとも一部の三次元形状とすることができる。耐熱性織物12は、好ましくは、未完成手袋の形であり、すなわち、手の少なくとも一部を受けることができる手袋構造の少なくとも一部である。あるいは、より好ましくないが、耐熱性織物12は、成形部分4の代替実施形態を示す図3〜図4および/または図5および図8に示すような、織物材料12に縫い付けられる手袋2の成形部分4を形成する、輪郭付けされたエラストマー材料の形に切断することができる。
【0031】
ただし、本発明の多用途手袋2は、最も好ましくは、織物材料12を含む未完成手袋を、手の少なくとも一部の形の第1の金型部分の上に配置すること、および、少なくとも1つの第2の金型部分を第1の金型部分と成形係合させて、第1の金型部分上の未完成手袋とともにキャビティを作り出すことによって製造される。次いで、エラストマー材料がキャビティ内に注入されて成形部分4を形成し、エラストマー材料は、第1の金型部分と対向する織物材料12の面に注入される。成形部分4が形成されると、第2の金型部分が第1の金型部分と非係合状態にされ、完全に形成された多用途手袋2が第1の金型部分から取り外される。
【0032】
浮き出された把持細部6、沈められた伸縮溝8、および盛り上がった凹凸を有する把持領域10、ならびに孔24、くぼみ、へこみなどに関しては、第2の金型部分がこれらの要素を成形部分4内に形成するように適合されることが好ましい。
【0033】
成形部分4が手袋2の周りに最大および360°を含んで継目なく延びる、最も好ましい実施形態のうちの1つでは、手袋の少なくとも一部の形の未完成手袋とともに第1の金型部分上に成形キャビティを作り出すように、第2の金型部分および第3の金型部分を第1の金型部分と成形係合させることができる。ここでは、第2の金型部分が、手袋2の手のひら面または裏面のうちの一方の少なくとも一部を成形するようになされ、第3の金型部分が、手袋2の手のひら面または裏面のもう一方の一部を成形するようになされることが企図される。
【0034】
本発明におけるエラストマー材料の射出成形の方法により、エラストマー材料をもたない領域を手袋2の裏に選択的に残しながら、手袋2の両面、すなわち手のひら面および裏面にエラストマー材料を適用することが可能になる。これにより、手袋2の通気性が保証され、エラストマー材料をもたない開いた部分は、使用者が快適となるように、開口部内にメッシュまたは他の織物を有することができる。好ましくは、図9および図10に示すように、成形部分4のエラストマー材料は、手袋2の裏の周りで継目なく続き、最も好ましくは、手袋2の少なくとも一部の周りで360°継目なく続く。
【0035】
金型の三次元部分、すなわち図3および図4の実施形態における親指および人差し指、ならびに図5および図8〜図10の実施形態におけるそれぞれの指のために、人差し指および親指を含めた指がそれらの形状を保持することを助けることを保証する、ステイを挿入することができる。ただし、予め湾曲させられた凹状構成となるようになされた、成形部分4の指および手のひらを含めた手袋2の形状付けされた成形部分は、好ましくは、第1の金型部分が三次元形状でありまたは手の少なくとも一部を形成する、対応する金型部分によって形成される。好ましい対応する金型部分を用いるとき、エラストマー材料は、手袋2の1つまたは複数の成形された部分4および/または14を形成するように、手の少なくとも一部の形状の第1の金型部分の反対側の織物12の面上に注入される。
【0036】
いずれにしても、成形されるエラストマー材料は、親指および人差し指または指の先端全体、ならびに、使用者の親指および指の周囲の少なくとも50%またはそれより大きい、覆われるべき親指および指の周囲の大部分を覆うためのキャップを含めた、金型内の織物のすべての領域に接着されることが意図される。
【0037】
場合によっては、使用者の手のひら、親指、および指と接触するいかなる部分も裏当てされるように、薄い裏当て材料を、布と第1の金型部分との間に、またはエラストマー材料を射出する前の織物として挿入することができる。次いで手袋の織物12を、必要に応じて手袋2のそれぞれの指および補強領域の輪郭上に縫い付けることができる。
【0038】
成形された手のひら部分4内の織物が、手袋2の領域全体を含む未完成手袋の形でない場合、成形部分4は次いで、手袋2の残りの部分に取り付けられる。ただし好ましくは、図1〜図4における親指の裏および人差し指の裏ならびに図5〜図8におけるすべての指を含めた成形された指の裏面上に見ることができる織物12は、縫い付けられないが、成形工程中にエラストマー材料と接着する織物12の連続部である。
【0039】
図1〜図4、図9、および図10では、成形部分4は、防水構造を可能な限り作り出すために、親指および人差し指の先端を覆うキャップを形成するように親指および人差し指の先端の周りに成形され、かつ、指のまちに隣接する指の下方部分上までを含む指の下の領域内で手のひらを横断して成形される。金型はまた、使用者が移植ごて、熊手などをより効果的に把持することを可能にするように把持を強化するために、人差し指と親指との間で盛り上がり、少なくとも親指の付け根の周りから少なくとも人差し指の付け根の周りへと鞍部28を形成し、成形された手のひら部分4の一部として手袋2の手のひら面から手袋2の裏面へと延びる。伸縮溝8は、好ましくは、可撓性を改善するために、手のひら領域内および指を含む成形された手のひら部分4上の手の接合部の少なくとも一部の領域内に配置される。耐摩耗性のための盛り上がった部分10または当て物は、鞍部28の領域内と同様に、親指および人差し指の先端に含まれる。
【0040】
用いられるエラストマー材料に関しては、(1つまたは複数の)成形部分4および/または14あるいはそれらの一部を形成する際に、様々な組成のエラストマー材料を用いることができる。たとえば、濡れたときにより滑りにくいエラストマー材料を、親指あるいは1つまたは複数の指の先端ならびに鞍部28にて用いることができ、それにより、手袋2が濡れた状態でより万能となることを可能にする。さらに、成形部分4の一領域内で耐摩耗性が特に重要である場合、より高密度の材料をその領域において用いることができる。同様に、当て物をされた領域10など、ある領域において衝撃耐性が特に重要である場合、より低密度のエラストマー材料が好ましいことがある。そのような変形形態の適当な応用例は、当業者のデザイン上の好みに十分に含まれる。
【0041】
それにもかかわらず、熱可塑性硬質ゴム(TPV)および熱可塑性ゴム(TPR)は、本発明の手袋2の(1つまたは複数の)成形部分4および/または14に使用されるエラストマー材料を形成し、本発明の手袋2の(1つまたは複数の)成形部分4および/または14に使用されるエラストマー材料として働くための好ましい材料であることが見出されている。エラストマー材料の耐久性と可撓性の間のバランスは、本発明を用いるときは、可撓性に傾けることができることが見出されている。そのため、耐久性よりも可撓性がより望ましい領域内の織物に接着されるときは、約15から約25、かつ最も好ましくは約15のショアデュロメータ硬度を有するエラストマー材料を非常に薄い厚さで用いることができる。
【0042】
図5〜図10に示す実施形態では、成形成分4は、好ましくは、手のひら面全体および指の側部の大部分を含めた指の周囲を、少なくとも50%、および好ましくは50%より大きく覆う。図9および図10に示す実施形態の手のひら部分4’は、好ましくは、着用者の手が閉じるときのひだを最小限にするように凹状構成に予め湾曲させられる。成形部分4はまた、好ましくは、把持力を増大し使用者の保護を高めるために、凹凸を有するループ、ゴツゴツした表面、くぼみへこみなど、浮き出された把持細部6を含む。手袋2の裏部分は、着用者の手の容易な挿入および取外しを可能にしながらぴったりと快適に嵌まるように、手袋ストラップ16ではなく伸縮可能な材料18の形で示される閉鎖要素を備えることができる。
【0043】
もちろん、図5〜図10の手袋2の成形部分4はまた、所定のカップ形状、伸縮溝8、または凹凸を有する領域6を作り出すために、予め湾曲させられた手のひら部分4’の湾曲より大きいまたは小さい湾曲の、当て物をされたまたは盛り上がった部分10を含む、いかなる様々なパターンの形状およびデザインで成形するために修正することもできる。これらの特徴部分の利点は、同様に、快適さ、外見上の価値、園芸などいくつかの用途にとって重要となることがある防水、ならびに、決定的に重要な衝撃領域において当て物を提供すること、手袋2の決定的に重要な領域においてさらなる把持および/または耐摩耗性を提供することである。
【0044】
本発明の手袋2は、上記で説明したように、様々な織物およびエラストマー材料を用いて製造することができる。様々な材料に加えて、本発明の手袋2は、成形部分の全体および様々な領域の両方で、様々な厚さを有することができる。
【0045】
より詳細には、好ましくは親水性のニット織物である、本発明の手袋を形成するために用いられる織物材料は、いかなる適当な厚さとすることもできるが、好ましくは約0.4mmから約1.8mmの厚さであり、最も好ましくは約0.5mmから約0.8mmの厚さである。同様に、エラストマー材料は、織物材料上にいかなる適当な厚さで成形することもできるが、エラストマー材料が、約0.4mmから約10.0mmの厚さを有することが好ましい。これに関して、エラストマー材料の上限は適当な用途に対応させることができ、電気ドリルからジャックハンマーまであらゆるものとともに使用するための、電気絶縁から振動減衰などの特性を必要とする用途のために、最大約4.0mm、約5.0mm、約6.0mm、約7.0mm、および約10.0mmの厚さを含む。したがって、織物材料と接着するエラストマー材料を有する成形部分の厚さは、約0.8mmから約10.8mmの好ましい厚さを有するであろう。
【0046】
それにもかかわらず、より一般的な多用途では、成形部分4におけるエラストマー材料の厚さは、約0.5mm厚から約3.0mm厚であり、最も好ましくは、約0.5mmから約1.7mmである。これらの厚さを用いると、織物材料と接着する成形部分4内の好ましい手袋2の全体の厚さは、約0.8mm厚から約3.1mm厚であり、最も好ましくは、約1.0mm厚から約2.3mm厚さである。
【0047】
図9および図10の好ましい実施形態では、成形された予め湾曲させられた手のひら部分4’は、ここでも同様に手を閉じるときのひだを最小化するために、指を含めた全体的なカップ形状を形成するように指へと続く。可撓性、着用性、および緩衝性を最大限にするための段階的な厚さを有する、盛り上がった部分10および伸縮溝8もまた、この実施形態に組み込まれる。最も好ましくは、手のひらの周りおよび手のひらの中、指の先端と関節の間、指と手のひらの間、手袋の裏の周り、および伸縮溝8の中などに示される、成形された第1の領域20を形成する図9の実施形態は、約0.4mmから約1.0mm、および好ましくは約0.5mmから約0.8mmのエラストマー材料で形成される。約0.5mmから約0.6mmの織物とともに使用される場合、成形された第1の領域20内の成形された手のひら部分4の全体の厚さは、好ましくは、約1.0mmから約1.6mmである。これにより、成形された第1の領域20において、最大の可撓性が使用者に提供される。
【0048】
指の先端、鞍部28上、人差し指と親指の間にあり、かつ/または手のひらと指の間の領域を横断する、図9および図10の実施形態の成形された第2の領域22は、盛り上がった中間領域10を備える。成形された第2の領域22は、約1.2mmから約1.6mm、好ましくは約1.4mmのエラストマー材料で形成される。約0.5mmから約0.6mmの織物とともに使用される場合、成形された第2の領域22内の成形部分4の全体の厚さは、好ましくは、約1.7mmから約2.2mmである。これにより、感覚を犠牲にせずに、さらなる耐摩耗性およびさらなる保護がもたらされる。
【0049】
手のひらの中および/または手袋2の裏面上の指の節を横断する、図9および図10の実施形態の成形された第3の領域24は、さらなる盛り上がった領域10’で構成される。成形された第3の領域24は、約1.6mmから約2.0mm、好ましくは約1.8mmのエラストマー材料で形成される。約0.5mmから約0.6mmの織物とともに使用される場合、成形された第3の領域24内の成形部分4の全体の厚さは、好ましくは約2.1mmから約2.6mmである。これにより、外傷的な衝撃を最も受けやすい使用者の手の部分の、最大限の保護がもたらされる。
【0050】
本発明は大いに、成形工程において用いられる適当な織物12で裏打ちされる場合、ショアデュロメータ硬度約15の低さで約0.4mmおよび好ましくは約0.5mmの薄さの成形されたエラストマー材料を利用することができる、成形された手のひら部分4を有する手袋の今まで知られていない利点をもたらす。この形成および可撓性の進歩により、良好な耐久性とともに最高の可撓性を使用者が必要とする場合に、手袋の成形部分4としての用途が可能になる。
【0051】
最も好ましくは、図9および図10は、手袋2の周りで最大および360°を含んで継目なく延び、好ましくは、手袋2への空気の流れ、したがって通気性を可能にする開口部を有する、成形部分4を有する手袋2を提供する。たとえば図10に示すように、成形部分4は、指領域内の通気性のために、手袋2の裏面上で開いた織物部分12を取り囲む。成形部分4によって取り囲まれる、エラストマー材料をもたないそのような織物部分は、必要に応じて手袋2の手のひら領域内へと組み込むことができる。
【0052】
当然、上記で説明したように、様々な領域20、22、および24内の成形部分4に用いられるエラストマー材料は、様々な物理特性を有することができる。これらは、密度、粘着性、可撓性などの差を含む。
【0053】
図9および図10にも示すように、手袋2のエラストマーの部分は、エラストマー材料を貫通して延びる孔24を含むことができる。これらの孔24は、使用者の快適さを高める手袋2の内側と外側の間の通気性をもたらすだけでなく、手袋2の内部で孔24を密閉する使用者の指と、手袋2の外部で保持される物との間に真空が作り出される場合、真空把持ももたらすことができる。
【0054】
さらに、図9および図10の手袋2の成形部分4は、濡れたまたは滑りやすい状態における把持の改善を生み出すために、ゴツゴツした表面、くぼみ、へこみ、水分を水平および垂直の両方に移動させる「V」字形部材および/または「W」字形部材の形の、把持部材6を備える。図面に示すように、しかし限定ではなく、把持細部6は、上記で説明したような真空効果を用いることにより把持をさらに高めるために、くぼみまたは孔24をその上に有することができる。
【0055】
たとえば本発明の手袋2は、好ましくは、スポーツおよび運動競技用に手袋を使用するために、盛り上がった凹凸をもつ把持領域10を有する成形部分4を指の先端および親指先端に備える。盛り上がった領域10は、ボールを捕えるため、かつ/またはラケット、バット、ロープ、パドルなどを握るために、さらなる把持および抵抗を生み出す。最も好ましくは、指の先端および親指先端の盛り上がった凹凸を有する把持領域10上の凹凸を有する表面は、把持および抵抗をさらに改善する。
【0056】
さらに、当業者には明らかとなるように、本発明の手袋2は、上記で説明した構成要素の様々な組み合わせでデザインすることができる。たとえば、図1〜図2の手袋2は、手首ストラップ16ではなく伸縮可能な材料18を用いて作ることができ、または、すべての指の前および側部を覆う成形部分4を備えることができる。同様に、図示の実施形態は、人差し指および親指のみ、またはすべての指および親指を覆う成形部分4を備えるが、親指および指を、いかなる数および組み合わせで覆うこともできることを理解されたい。
【0057】
上記説明に含まれまたは添付の図面に示されるすべての事項は、例示的であり限定ではないと解釈されるように、上記で説明した物、上記説明から明らかになった物、および上記構造のいくつかの変更を、本発明の精神および範囲から逸脱することなく行うことができることがわかるであろう。これに関して、かつ限定ではなく、説明されたいくつかの実施形態において示されるいくつかの特徴部分は、本発明の範囲を逸脱することなく、単一またはいかなる数の組み合わせで適用することもできる。
【0058】
添付の特許請求の範囲は、本明細書で説明された全体的かつ具体的な特徴部分のすべてを網羅することが意図され、本発明の範囲内のすべての表現は、言語的に、それらに包含されることも理解されたい。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
手のひら面および裏面を有する多用途手袋であって、前記手のひら面が、三次元成形部分を備え、前記三次元成形部分が、織物材料に接着されたエラストマー材料で形成され、親指部分および少なくとも1つの指部分を有し、厚さの異なる2つまたはそれ以上の隣接するエラストマーの領域を成形部分内に備え、前記成形部分が、前記手のひら内に凹形状を形成するように前記手のひらの中央が前記手のひらの縁部から沈められる予め湾曲させられた構成で形成される、多用途手袋。
【請求項2】
前記成形部分が、1つまたは複数の指関節に対応する前記手袋の前記裏面の少なくとも一部と連続し、前記手のひら面上の前記エラストマー材料と前記裏面上の前記エラストマー材料とが一体に形成される、請求項1に記載の多用途手袋。
【請求項3】
前記成形部分の前記少なくとも1つの指部分が、前記手のひらから前記指先端へと予め湾曲させられる、請求項1に記載の多用途手袋。
【請求項4】
前記親指部分および少なくとも1つの指部分のうちの少なくとも1つが、前記親指および少なくとも1つの指のうちの少なくとも1つの先端を覆うキャップ内で終端し、さらに、前記親指部分および前記少なくとも1つの指部分が、前記親指および少なくとも1つの指のうちの少なくとも1つの周囲の少なくとも50%を覆うように形成される、請求項1に記載の多用途手袋。
【請求項5】
織物材料上に成形されたエラストマー材料で形成される三次元成形部分を備える多用途手袋であって、前記成形部分が、約0.8mmから約10.8mmの厚さを有し、前記エラストマー材料が、約0.4mmから約10.0mmの範囲内の異なる厚さの2つまたはそれ以上の領域を備える、多用途手袋。
【請求項6】
エラストマー材料が、約15から約25のショアデュロメータ硬度を有する、熱可塑性硬質ゴム(TPV)および熱可塑性ゴム(TPR)からなる群から選択される材料を含む、請求項5に記載の多用途手袋。
【請求項7】
前記エラストマー材料が、約15のショアデュロメータ硬度を有するTPRである、請求項6に記載の多用途手袋。
【請求項8】
前記織物材料が、ニット親水性材料である、請求項5に記載の多用途手袋。
【請求項9】
前記成形部分が、前記エラストマー材料が約0.4mmから約1.0mmの厚さを有する第1の領域を有する、請求項5に記載の多用途手袋。
【請求項10】
前記成形部分が、前記エラストマー材料が約1.0mmから約2.0mmの厚さを有する第2の領域を有する、請求項9に記載の多用途手袋。
【請求項11】
前記成形部分の前記第2の領域が、少なくとも1つの指の先端、前記親指の先端、1つまたは複数の指関節、前記手のひらの一部、および前記人差し指と前記親指との間の鞍部のうちの少なくとも1つを含む、請求項10に記載の多用途手袋。
【請求項12】
前記織物材料が、前記成形部分内から前記手袋の前記成形部分を超えて延びる、請求項5に記載の多用途手袋。
【請求項13】
前記成形部分が、前記手袋の周りで継目なく360°続く、請求項5に記載の多用途手袋。
【請求項14】
前記成形部分が、前記手袋の前記裏面上の開いた織物部分を取り囲む、請求項5に記載の多用途手袋。
【請求項15】
三次元成形部分を有する多用途手袋の製造方法であって、
a.織物材料を含む未完成手袋を、手の少なくとも一部の形の第1の金型部分上に配置するステップと、
b.少なくとも第2の金型部分を、前記第1の金型部分上の前記未完成手袋とともにキャビティを作り出すように前記第1の金型部分と成形係合させるステップと、
c.成形部分を形成するために、前記キャビティ内にエラストマー材料を注入するステップであって、前記エラストマー材料が前記第1の金型部分と対向する前記織物材料の前記面上に注入されるステップとを含む方法。
【請求項16】
d.前記第2の金型部分を前記第1の金型部分から非係合状態にするステップと、
e.前記完全に形成された多用途手袋を前記第1の金型部分から取り外すステップとをさらに含む、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記第2の金型部分が、異なる厚さの2つまたはそれ以上の隣接するエラストマー領域とともに成形部分を形成するための要素を備える、請求項15に記載の方法。
【請求項18】
前記第2の金型部分が、ゴツゴツした部分、くぼみ、へこみ、w字形部材、v字形部材、凹凸を有するループ、孔および浮き出された把持細部からなる群から選択される1つまたは複数の凹凸を有する把持部分とともに成形部分を形成するための要素を備える、請求項15に記載の方法。
【請求項19】
前記成形部分が、前記手袋の周りで、継目なく360°延びる、請求項15に記載の方法。
【請求項20】
前記成形部分が、前記手袋の少なくとも1つの指または親指の周囲を50%より大きく覆う、請求項15に記載の方法。
【請求項21】
前記成形部分が、前記手袋の手のひら面から裏面へと延びる、前記親指と人差し指との間の鞍部を備える、請求項15に記載の方法。
【請求項22】
ステップ(b)が、第3の金型部分を、前記第1の金型部分上の前記未完成手袋とともにキャビティを作り出すように前記第1の金型部分と成形係合させるステップをさらに含む、請求項15に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公表番号】特表2013−507537(P2013−507537A)
【公表日】平成25年3月4日(2013.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−533378(P2012−533378)
【出願日】平成22年10月11日(2010.10.11)
【国際出願番号】PCT/US2010/052168
【国際公開番号】WO2011/046870
【国際公開日】平成23年4月21日(2011.4.21)
【出願人】(512091073)
【Fターム(参考)】