多目的梯子
【課題】通常は、高所への昇降用として使用でき、さらに緊急時において老人、婦女子、若年者などを安全に避難させる梯子として使用でき、さらに家屋破壊、余震被害などを避けるため屋外において臨時的に設営する場合においては簡易テントとして使用できる多目的梯子を提供する。
【解決手段】一対の梯子支柱1a、1bの夫々の支柱両端近傍部には、支柱に沿って折りたたみ姿勢で固定、或いは支柱に対して直角に開脚姿勢で固定できるよう脚柱3a、3b、3c、3dの一端が枢着され、該脚柱の内部空間に回転芯軸により巻取り・巻戻しできるシート10,10bが収納されており、さらに、該一対の支柱の間に設けた複数の踏桟2を覆う矩形天井板20を取り外し自在に配設できる構造を具備することを特徴としている。
【解決手段】一対の梯子支柱1a、1bの夫々の支柱両端近傍部には、支柱に沿って折りたたみ姿勢で固定、或いは支柱に対して直角に開脚姿勢で固定できるよう脚柱3a、3b、3c、3dの一端が枢着され、該脚柱の内部空間に回転芯軸により巻取り・巻戻しできるシート10,10bが収納されており、さらに、該一対の支柱の間に設けた複数の踏桟2を覆う矩形天井板20を取り外し自在に配設できる構造を具備することを特徴としている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、日常は高所作業時の梯子として使用し、災害等緊急時には簡易テント代替としても使用できる多目的梯子に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、一対の支柱の間に複数の踏桟を設けた梯子は、庭木などの剪定作業、家屋の屋根上への昇降に使用されている。また、火災、地震などの緊急避難用としても使用されているところである。これらの梯子を、単に高所への昇降用ばかりでなく、多目的に応用して利便化をはかるものとして特開平8−198024号公報(特許文献1)では梯子支柱の両端から適宜の位置で所定の角度で回動屈折するようにして、門型形状となし、洗車などの作業において脚立兼用の梯子として使用することが提案されている。この梯子は、折りたたんでワンボックスカーなどの装備してレジャー用多目的な用具としても使用される試みがなされている。
【0003】
一般に、梯子は、もっぱら高所作業、緊急時の高所からの避難用として使用されるものであり、とくに、高所からの緊急避難時には人が安全に下降できることがより望まれるところであった。そして、これらの目的への使用時以外は、長く、広い保管場所を占有するものであるから、出来るだけ多目的に使用するよう梯子の効用を高めることは、近時の狭い土地、住宅事情から要望されていた。また、災害時には、住宅を離れて簡易宿泊できる空間を容易に確保することは、非常時の備えとして求められているところであった。
【特許文献1】特開平8−198024号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
そこで、本発明の目的は、緊急時において老人、婦女子、若年者などを安全に非難させる梯子として使用でき、さらに家屋破壊、余震被害の避けるため屋外において臨時的に野営する場合においては簡易テントとして使用できる多目的梯子を提供することである。
家屋破壊などの緊急時において、屋外において寝所を確保するための組み立て部材は一般に存在しないから、庭先、家屋周辺といえども緊急に簡易テントを設営するのは難しい。梯子は、長尺であり一般に、屋外に保管される、そこでこの屋外において保管されるから家屋破壊時においても損傷被害を受ける恐れの少ない梯子を、必要に応じて臨時寝所としての簡易テント機能を付与できれば、非常に利便性の高いものとなる。
さらに、火災などの緊急時には上階から、避難者および荷物を安全に避難・下降させる用具としての効用を具備させることも本発明の課題である。
【課題を解決するための手段】
【0005】
以上説明したような多目的の機能を具備する梯子の構成を次に説明する。
請求項1の多目的梯子は、一対の支柱の間に複数の踏桟を設けた梯子であって、夫々の支柱両端近傍部には、支柱に沿って折りたたみ姿勢で固定、或いは支柱に対して直角に開脚姿勢で固定できるよう脚柱の一端が枢着され、該脚柱の内部空間に回転芯軸により巻取り巻戻りできるシートが収納されており、さらに、該一対の支柱の間に設けた複数の踏桟の全面を覆う矩形天井板を取り外し自在に配設できる構造を具備することを特徴としている。
【0006】
請求項2の多目的梯子は、請求項1において、前記一対の支柱の片方、あるいは両方の内部空間に回転芯軸に巻取り巻き戻しできるシートが収納されていることを特徴としている。
請求項3の多目的梯子は、請求項1又は2において、前記一対の支柱の間を長手方向に移動できる摺動板を配設したことを特徴としている。
請求項4の多目的梯子は、請求項3において、前記摺動板は、板上に回転芯軸に巻取り巻き戻しできるシートが配設されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
請求項1の多目的梯子は、一対の支柱の夫々の支柱両端近傍部に枢着された4本の脚柱を支柱に沿って折りたたみ固定した状態では、一般の梯子と同じく、作業者あるいは避難者が高所への昇降用として使用できる。この簡易テントとして使用する場合には、4本の脚柱は支柱に対して直角に開脚し、これらの脚柱先端を下向きにして出来るだけ平坦な地面に設置し、一対の支柱の長手方向が地面になるべく水平になるように配置する。本発明の多目的梯子では、緊急時には臨時的に寝所などとする簡易テントとしても使用できる。
【0008】
これらの開脚した4本の脚柱で囲まれる直方体空間の側面を、脚柱の内部に収納されているロール状に巻取られたシートを、脚柱側面のスリットから同じ支柱の他端には枢着した脚柱に到達するまで巻戻して(繰り出して)1側面を覆うことが出来る。他の3側面も同じように脚柱から繰り出したシートにより覆うことができる。
さらに、開脚した4本の脚柱で囲まれる直方体空間の天井面、すなわち複数の踏桟を設けた一対の支柱の対置面を覆うように、矩形天井板を配設できる構造となっているから、別途準備された矩形天井板で上部面を覆いシートで密閉した直方体内部空間を作ることができ簡易テントとしての機能を発揮できる。
【0009】
4本の脚柱を支柱に沿って折りたたみ固定した状態で、矩形天井板のみを一対の支柱間に配設することにより、高所からの緊急避難時において老人、幼年児、女性などは天井板面上を滑るような状態で降りることができる。また、高所への荷物の昇降においても、この天井板面の滑らせて降することができる。逆に、荷物などをロープで滑らしながら高所へ引き上げることが出来る。
【0010】
請求項2の多目的梯子は、請求項1において、前記一対の支柱の片方、あるいは両方の内部空間に回転芯軸に巻取り巻き戻しできるシートが収納されている。従って、本発明の多目的梯子を簡易テントとして使用するとき、一対の支柱天井と、4本の脚柱で出来る直方体の1側面あるいは2側面の覆いを、支柱内に収納された巻取りシートを繰り出して覆うことができるものである。
【0011】
請求項3の多目的梯子は、請求項1又は2において、前記一対の支柱の間を長手方向に移動できる摺動板を配設したことを特徴としている。本発明では梯子を高所に立掛けた状態での支柱間上面を、長手方向(上下傾斜方向)に摺動して移動可能な摺動板を具備しているから、この摺動板の上に物品を載せ高所へ昇降することが出来る。さらに、幼児、老人を高所から下降させる場合は、この摺動板の上にロープなどにより縛るなどして適宜固定すれば、安全に摺動させて下降させることができる。
請求項4の多目的梯子は、請求項3において、前記一対の支柱の間を長手方向に移動できる摺動板の板上に、回転芯軸に巻取り巻き戻しできるシートが配設されているから、本発明の多目的梯子の4本の脚柱を開脚し、簡易テントとして使用する場合に天井面の覆いシートとすることが出来る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
次に、図面を用いて本発明の実施の形態を詳細に説明する。
図1は、本発明の多目的梯子の斜視図である。一対の支柱(1a、1b)の間に複数の踏桟2が配設されている。一対の支柱の夫々の両端近傍には脚柱(3a、3b、3c、3d)が支柱側面の枢着軸(4a、4b、4c、4d)に回動できるように夫々枢着されている。同図では、夫々の脚柱は支柱に沿って折りたたみ固定されている。一対の支柱間の上面には摺動板5が取り外し自在に配設されている。摺動板5の支柱に直角な1側辺にはロープ6が取り付けられている。このロープは、摺動板5を高所へ摺動して引っ張り上げる時に使用することが出来る。また高所から下降速度をコントロールしながら降ろす時に使用することが出来る。これらの支柱、踏桟、脚柱の素材は剛性のある素材(例えば、アルミ合金、その他金属)が好適に使用される。
【0013】
図1では、シートケース6を具備する摺動板5を取り付けた状態で示されているが、本発明の多目的梯子を、図9に示すように日常において高所(例えば、屋根40)への人の昇降梯子として使用する場合は、この摺動板5は取り外した状態で使用する。
図2は、シートケース6を具備する摺動板5を一対の支柱上面に摺動自在に配設する構造を説明する側面図である。
夫々の支柱(1a、1b)の踏桟側の上部角には、長手方向に沿ってガイド鍔(1c、1d)が設けられている。これらのガイド鍔に、摺動板の下部ガイド溝(5a、5b)を嵌めて、摺動板5が、支柱上面を上下方向のみ自在に摺動する。
天井用シートは、シートの端部に設けられたシートガイド6aを掴んで引き出され、シートケース6の側面の設けられた芯軸に直結した巻取り具6bで、内部に巻取り収納される。
【0014】
図3は、摺動板5上に設けられたシートケース6の内部構造を説明する斜視図である。摺動板5上面のシートケース6の内部には、回転芯軸に巻取り巻戻しできる天井用シート6cが内蔵されている。多目的梯子を、簡易テントとして使用するときに、この天井用シート6cを摺動板上のシートケース6から繰り出し、梯子支柱間の複数の踏桟全面を覆うように使用する。
収納された天井用シート6cの先端には、繰り出すためのシートガイド6a取り付けられている。天井用シート6cを収納するときは、回転芯軸6dに直結した巻取り具6bを手で回転させ天井用シート6cを巻き取る。
図4(a)、(b)は、シートケース6を具備しないタイプの摺動板5を2方向からの見た斜視図である。ガイド溝(5a、5b)は、摺動板の裏面に摺動方向に平行に設けられ、摺動板が摺動時に横揺れ、脱落しないような構造としている。
本発明の多目的梯子において、摺動板を使用して人が下降する使用法を示したものが図11である。同図に示すように使用者は摺動板に腰掛けても良いし、老人、幼児などの場合必要に応じてロープなどで縛り脱落しないようにすることも出来る。さらに、図12は摺動板を利用して、荷物などを下降、または引き上げする使用法を示したものである。この場合も必要に応じて、ロープで荷物を縛り固定する。
【0015】
図5は、本発明の多目的梯子を緊急時に簡易テントとして使う場合の設営の経過を示す斜視図である。先ず、一対の支柱の両端に取り付けられた4本の脚柱(3a、3b、3c、3d)が支柱に直角になるまで開かれ、設置面(例えば、地面)に立脚される。そして、一対の支柱の間を天井面とし、4本の脚柱でできる4面を側面とする直方体空間ができる。
図6は、前記直方体空間の4側面を囲むためのロール巻シート収納構造を説明する斜視図である。同図(a)は、脚柱3dの側面のスリット13を通して内部に収納されていたシート10を繰り出している状態を示したものである。シート先端部にはガイド棒10aが設けられ、引き出すとき手で掴みシートを容易に繰り出すことが出来るようになっている。
【0016】
シート素材としては、木綿(コットン)などの天然繊維と人工繊維(化繊)が使用される。化繊の種類としては、ポリアミド(PA)、通称ナイロンとポリエステル(PE)、ビニールシートが好適に使用できる。ナイロンは引き裂き強度に優れ、伸縮性もあるのでシートをきれいに張ることができる。ポリエステルは伸縮性には欠けるが、ナイロンよりも強く、紫外線による劣化も少ない利点がある。その他、PVC(塩ビ)が使われるが、PVCはほぼ完全防水で、しかも丈夫であるが、重いのが難点である。
【0017】
図6(b)は、脚柱内部空間のロールシートの収納構造を説明したものである。同図は、内部空間が理解しやすいように脚柱の支柱への枢着部付近から切断した状態の斜視図である。シートを巻取る芯軸11bは上部固定版12と脚柱下部の底板14の間に回転自在に軸着される。そして、芯軸の最下端は巻取り円盤11aに固定される。同図(b)において、シートを矢印方向に回転し脚柱内に収納するときは、脚柱下部の巻取り円盤11aを手で矢印方向に回す。
【0018】
図7(a)は、本発明の多目的梯子を簡易テントとして使用する場合の天井に使用する矩形天井板20の斜視図である。この矩形天井板は、木製(合板など含む)、プラスチックス、金属板などが好適に用いられる。また、必要に応じて長手方向の全長を適宜分割しても良い。さらに、同図(b)は矩形天井板を一対の支柱間に配設した状態の側面図である。矩形天井板20は支柱のガイド鍔1c、1dと、踏桟の間隙にフィットするように配設される。矩形天井板20は、適宜の間隔に設けられた複数の踏桟に板底を支えられ補強された状態となっている。したがって、緊急避難時に避難者が滑り降りたり、重量物を滑らせて下降させたりしても十分耐えることができる。同図(b)において、側面を覆うシート10bは、脚柱4bの内部に収納されていたシートを繰り出したものである。
【0019】
図8は、梯子支柱(1a、1b)と4本の脚柱で囲まれる直方体空間を矩形天井板20とシート10及びシート10bで側面を覆った状態の斜視図である。同図において直方体右側面は脚柱3dの内部に収納されたシート10で覆い、この面は出入り口として使用される。直方体の他の3側面は、脚柱3bの内部に収納されたシート10bを繰り出して覆う。側面を覆うシートは、適宜の間隔で設けられた留め具(30、30a、30b、30cとして例示)により、支柱及び脚柱に固定される。
【0020】
図9は、本発明の多目的梯子を簡易テントとして使用する形態において、脚柱に収納されたシートに代えて、支柱の内部空間に収納されたシートを下方に繰り出して覆う場合を示している。
側面を脚柱からのシートで覆うか、あるいは支柱からのシートで覆うかは適宜選択することが出来る。支柱から繰り出す方式とした場合は、その側面の脚柱の内部にシートを収納する構造とする必要はない。必要に応じて、どの側面を支柱シート収納構造にするか脚柱シート収納構造とするかを選択すればよい。
天井面は、矩形天井板に代えてシートケース6を具備する摺動板5から天井用シート6aを繰り出して覆った状態を示している。摺動板を同図支柱の右端に配置し、シートガイド6aにより天井用シート6cを繰り出して、天井全面を覆うことが出来る。
【産業上の利用可能性】
【0021】
本発明の多目的梯子は、通常は高所への昇降用具として使われる。特に、摺動板、天井板を具備しているから荷物などを滑り昇降できるので安全な昇降用具として優れている。さらに、火災、地震など緊急時には、屋外の簡易テントとしての寝所空間を設営することができるもので多目的梯子として日常生活において極めて利便性の高いものである。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の実施の形態の斜視図である。
【図2】本発明の実施の形態の側面図である。
【図3】本発明の実施の形態のシートケース付摺動板の斜視図ある。
【図4】本発明の実施の形態の構成部材である摺動板の斜視図である。
【図5】本発明の実施の形態の梯子脚柱を開脚した姿勢の斜視図である。
【図6】本発明の実施の形態の梯子脚柱のシート収納構造を示す斜視図である。
【図7】本発明の実施の形態の構成部材である天井板の斜視図とその配設構造を示す側面図である。
【図8】本発明の実施の形態の梯子を簡易テントとして設営した状態を示す斜視図である。
【図9】本発明の実施の形態の梯子の簡易テントとして設営した状態を示す斜視図である。
【図10】本発明の実施の形態の梯子の通常使用状態を示す説明図である。
【図11】本発明の実施の形態の梯子の摺動板の使用状態を示す説明図である。
【図12】本発明の実施の形態の梯子の摺動板の使用状態を示す説明図である。
【符号の説明】
【0023】
1a、1b … 支柱
1c … ガイド鍔
2 … 踏桟
3a、3b、3c、3d … 脚柱
4a、4b、4c、4d … 枢着軸
5 … 摺動板
5a … ガイド溝
6 … シートケース
6a … シートガイド
6b … 巻取り具
6c … 天井用シート
6d … 芯軸
7 … ロープ
10 … シート
10a … ガイド棒
10b … シート
11a … 巻取り円盤
11b … 芯軸
12 … 上部固定板
13 … スリット
14 … 底板
20 … 矩形天井板
30、30a、30b、30c … 留め具
40 … 屋根
【技術分野】
【0001】
本発明は、日常は高所作業時の梯子として使用し、災害等緊急時には簡易テント代替としても使用できる多目的梯子に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、一対の支柱の間に複数の踏桟を設けた梯子は、庭木などの剪定作業、家屋の屋根上への昇降に使用されている。また、火災、地震などの緊急避難用としても使用されているところである。これらの梯子を、単に高所への昇降用ばかりでなく、多目的に応用して利便化をはかるものとして特開平8−198024号公報(特許文献1)では梯子支柱の両端から適宜の位置で所定の角度で回動屈折するようにして、門型形状となし、洗車などの作業において脚立兼用の梯子として使用することが提案されている。この梯子は、折りたたんでワンボックスカーなどの装備してレジャー用多目的な用具としても使用される試みがなされている。
【0003】
一般に、梯子は、もっぱら高所作業、緊急時の高所からの避難用として使用されるものであり、とくに、高所からの緊急避難時には人が安全に下降できることがより望まれるところであった。そして、これらの目的への使用時以外は、長く、広い保管場所を占有するものであるから、出来るだけ多目的に使用するよう梯子の効用を高めることは、近時の狭い土地、住宅事情から要望されていた。また、災害時には、住宅を離れて簡易宿泊できる空間を容易に確保することは、非常時の備えとして求められているところであった。
【特許文献1】特開平8−198024号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
そこで、本発明の目的は、緊急時において老人、婦女子、若年者などを安全に非難させる梯子として使用でき、さらに家屋破壊、余震被害の避けるため屋外において臨時的に野営する場合においては簡易テントとして使用できる多目的梯子を提供することである。
家屋破壊などの緊急時において、屋外において寝所を確保するための組み立て部材は一般に存在しないから、庭先、家屋周辺といえども緊急に簡易テントを設営するのは難しい。梯子は、長尺であり一般に、屋外に保管される、そこでこの屋外において保管されるから家屋破壊時においても損傷被害を受ける恐れの少ない梯子を、必要に応じて臨時寝所としての簡易テント機能を付与できれば、非常に利便性の高いものとなる。
さらに、火災などの緊急時には上階から、避難者および荷物を安全に避難・下降させる用具としての効用を具備させることも本発明の課題である。
【課題を解決するための手段】
【0005】
以上説明したような多目的の機能を具備する梯子の構成を次に説明する。
請求項1の多目的梯子は、一対の支柱の間に複数の踏桟を設けた梯子であって、夫々の支柱両端近傍部には、支柱に沿って折りたたみ姿勢で固定、或いは支柱に対して直角に開脚姿勢で固定できるよう脚柱の一端が枢着され、該脚柱の内部空間に回転芯軸により巻取り巻戻りできるシートが収納されており、さらに、該一対の支柱の間に設けた複数の踏桟の全面を覆う矩形天井板を取り外し自在に配設できる構造を具備することを特徴としている。
【0006】
請求項2の多目的梯子は、請求項1において、前記一対の支柱の片方、あるいは両方の内部空間に回転芯軸に巻取り巻き戻しできるシートが収納されていることを特徴としている。
請求項3の多目的梯子は、請求項1又は2において、前記一対の支柱の間を長手方向に移動できる摺動板を配設したことを特徴としている。
請求項4の多目的梯子は、請求項3において、前記摺動板は、板上に回転芯軸に巻取り巻き戻しできるシートが配設されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
請求項1の多目的梯子は、一対の支柱の夫々の支柱両端近傍部に枢着された4本の脚柱を支柱に沿って折りたたみ固定した状態では、一般の梯子と同じく、作業者あるいは避難者が高所への昇降用として使用できる。この簡易テントとして使用する場合には、4本の脚柱は支柱に対して直角に開脚し、これらの脚柱先端を下向きにして出来るだけ平坦な地面に設置し、一対の支柱の長手方向が地面になるべく水平になるように配置する。本発明の多目的梯子では、緊急時には臨時的に寝所などとする簡易テントとしても使用できる。
【0008】
これらの開脚した4本の脚柱で囲まれる直方体空間の側面を、脚柱の内部に収納されているロール状に巻取られたシートを、脚柱側面のスリットから同じ支柱の他端には枢着した脚柱に到達するまで巻戻して(繰り出して)1側面を覆うことが出来る。他の3側面も同じように脚柱から繰り出したシートにより覆うことができる。
さらに、開脚した4本の脚柱で囲まれる直方体空間の天井面、すなわち複数の踏桟を設けた一対の支柱の対置面を覆うように、矩形天井板を配設できる構造となっているから、別途準備された矩形天井板で上部面を覆いシートで密閉した直方体内部空間を作ることができ簡易テントとしての機能を発揮できる。
【0009】
4本の脚柱を支柱に沿って折りたたみ固定した状態で、矩形天井板のみを一対の支柱間に配設することにより、高所からの緊急避難時において老人、幼年児、女性などは天井板面上を滑るような状態で降りることができる。また、高所への荷物の昇降においても、この天井板面の滑らせて降することができる。逆に、荷物などをロープで滑らしながら高所へ引き上げることが出来る。
【0010】
請求項2の多目的梯子は、請求項1において、前記一対の支柱の片方、あるいは両方の内部空間に回転芯軸に巻取り巻き戻しできるシートが収納されている。従って、本発明の多目的梯子を簡易テントとして使用するとき、一対の支柱天井と、4本の脚柱で出来る直方体の1側面あるいは2側面の覆いを、支柱内に収納された巻取りシートを繰り出して覆うことができるものである。
【0011】
請求項3の多目的梯子は、請求項1又は2において、前記一対の支柱の間を長手方向に移動できる摺動板を配設したことを特徴としている。本発明では梯子を高所に立掛けた状態での支柱間上面を、長手方向(上下傾斜方向)に摺動して移動可能な摺動板を具備しているから、この摺動板の上に物品を載せ高所へ昇降することが出来る。さらに、幼児、老人を高所から下降させる場合は、この摺動板の上にロープなどにより縛るなどして適宜固定すれば、安全に摺動させて下降させることができる。
請求項4の多目的梯子は、請求項3において、前記一対の支柱の間を長手方向に移動できる摺動板の板上に、回転芯軸に巻取り巻き戻しできるシートが配設されているから、本発明の多目的梯子の4本の脚柱を開脚し、簡易テントとして使用する場合に天井面の覆いシートとすることが出来る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
次に、図面を用いて本発明の実施の形態を詳細に説明する。
図1は、本発明の多目的梯子の斜視図である。一対の支柱(1a、1b)の間に複数の踏桟2が配設されている。一対の支柱の夫々の両端近傍には脚柱(3a、3b、3c、3d)が支柱側面の枢着軸(4a、4b、4c、4d)に回動できるように夫々枢着されている。同図では、夫々の脚柱は支柱に沿って折りたたみ固定されている。一対の支柱間の上面には摺動板5が取り外し自在に配設されている。摺動板5の支柱に直角な1側辺にはロープ6が取り付けられている。このロープは、摺動板5を高所へ摺動して引っ張り上げる時に使用することが出来る。また高所から下降速度をコントロールしながら降ろす時に使用することが出来る。これらの支柱、踏桟、脚柱の素材は剛性のある素材(例えば、アルミ合金、その他金属)が好適に使用される。
【0013】
図1では、シートケース6を具備する摺動板5を取り付けた状態で示されているが、本発明の多目的梯子を、図9に示すように日常において高所(例えば、屋根40)への人の昇降梯子として使用する場合は、この摺動板5は取り外した状態で使用する。
図2は、シートケース6を具備する摺動板5を一対の支柱上面に摺動自在に配設する構造を説明する側面図である。
夫々の支柱(1a、1b)の踏桟側の上部角には、長手方向に沿ってガイド鍔(1c、1d)が設けられている。これらのガイド鍔に、摺動板の下部ガイド溝(5a、5b)を嵌めて、摺動板5が、支柱上面を上下方向のみ自在に摺動する。
天井用シートは、シートの端部に設けられたシートガイド6aを掴んで引き出され、シートケース6の側面の設けられた芯軸に直結した巻取り具6bで、内部に巻取り収納される。
【0014】
図3は、摺動板5上に設けられたシートケース6の内部構造を説明する斜視図である。摺動板5上面のシートケース6の内部には、回転芯軸に巻取り巻戻しできる天井用シート6cが内蔵されている。多目的梯子を、簡易テントとして使用するときに、この天井用シート6cを摺動板上のシートケース6から繰り出し、梯子支柱間の複数の踏桟全面を覆うように使用する。
収納された天井用シート6cの先端には、繰り出すためのシートガイド6a取り付けられている。天井用シート6cを収納するときは、回転芯軸6dに直結した巻取り具6bを手で回転させ天井用シート6cを巻き取る。
図4(a)、(b)は、シートケース6を具備しないタイプの摺動板5を2方向からの見た斜視図である。ガイド溝(5a、5b)は、摺動板の裏面に摺動方向に平行に設けられ、摺動板が摺動時に横揺れ、脱落しないような構造としている。
本発明の多目的梯子において、摺動板を使用して人が下降する使用法を示したものが図11である。同図に示すように使用者は摺動板に腰掛けても良いし、老人、幼児などの場合必要に応じてロープなどで縛り脱落しないようにすることも出来る。さらに、図12は摺動板を利用して、荷物などを下降、または引き上げする使用法を示したものである。この場合も必要に応じて、ロープで荷物を縛り固定する。
【0015】
図5は、本発明の多目的梯子を緊急時に簡易テントとして使う場合の設営の経過を示す斜視図である。先ず、一対の支柱の両端に取り付けられた4本の脚柱(3a、3b、3c、3d)が支柱に直角になるまで開かれ、設置面(例えば、地面)に立脚される。そして、一対の支柱の間を天井面とし、4本の脚柱でできる4面を側面とする直方体空間ができる。
図6は、前記直方体空間の4側面を囲むためのロール巻シート収納構造を説明する斜視図である。同図(a)は、脚柱3dの側面のスリット13を通して内部に収納されていたシート10を繰り出している状態を示したものである。シート先端部にはガイド棒10aが設けられ、引き出すとき手で掴みシートを容易に繰り出すことが出来るようになっている。
【0016】
シート素材としては、木綿(コットン)などの天然繊維と人工繊維(化繊)が使用される。化繊の種類としては、ポリアミド(PA)、通称ナイロンとポリエステル(PE)、ビニールシートが好適に使用できる。ナイロンは引き裂き強度に優れ、伸縮性もあるのでシートをきれいに張ることができる。ポリエステルは伸縮性には欠けるが、ナイロンよりも強く、紫外線による劣化も少ない利点がある。その他、PVC(塩ビ)が使われるが、PVCはほぼ完全防水で、しかも丈夫であるが、重いのが難点である。
【0017】
図6(b)は、脚柱内部空間のロールシートの収納構造を説明したものである。同図は、内部空間が理解しやすいように脚柱の支柱への枢着部付近から切断した状態の斜視図である。シートを巻取る芯軸11bは上部固定版12と脚柱下部の底板14の間に回転自在に軸着される。そして、芯軸の最下端は巻取り円盤11aに固定される。同図(b)において、シートを矢印方向に回転し脚柱内に収納するときは、脚柱下部の巻取り円盤11aを手で矢印方向に回す。
【0018】
図7(a)は、本発明の多目的梯子を簡易テントとして使用する場合の天井に使用する矩形天井板20の斜視図である。この矩形天井板は、木製(合板など含む)、プラスチックス、金属板などが好適に用いられる。また、必要に応じて長手方向の全長を適宜分割しても良い。さらに、同図(b)は矩形天井板を一対の支柱間に配設した状態の側面図である。矩形天井板20は支柱のガイド鍔1c、1dと、踏桟の間隙にフィットするように配設される。矩形天井板20は、適宜の間隔に設けられた複数の踏桟に板底を支えられ補強された状態となっている。したがって、緊急避難時に避難者が滑り降りたり、重量物を滑らせて下降させたりしても十分耐えることができる。同図(b)において、側面を覆うシート10bは、脚柱4bの内部に収納されていたシートを繰り出したものである。
【0019】
図8は、梯子支柱(1a、1b)と4本の脚柱で囲まれる直方体空間を矩形天井板20とシート10及びシート10bで側面を覆った状態の斜視図である。同図において直方体右側面は脚柱3dの内部に収納されたシート10で覆い、この面は出入り口として使用される。直方体の他の3側面は、脚柱3bの内部に収納されたシート10bを繰り出して覆う。側面を覆うシートは、適宜の間隔で設けられた留め具(30、30a、30b、30cとして例示)により、支柱及び脚柱に固定される。
【0020】
図9は、本発明の多目的梯子を簡易テントとして使用する形態において、脚柱に収納されたシートに代えて、支柱の内部空間に収納されたシートを下方に繰り出して覆う場合を示している。
側面を脚柱からのシートで覆うか、あるいは支柱からのシートで覆うかは適宜選択することが出来る。支柱から繰り出す方式とした場合は、その側面の脚柱の内部にシートを収納する構造とする必要はない。必要に応じて、どの側面を支柱シート収納構造にするか脚柱シート収納構造とするかを選択すればよい。
天井面は、矩形天井板に代えてシートケース6を具備する摺動板5から天井用シート6aを繰り出して覆った状態を示している。摺動板を同図支柱の右端に配置し、シートガイド6aにより天井用シート6cを繰り出して、天井全面を覆うことが出来る。
【産業上の利用可能性】
【0021】
本発明の多目的梯子は、通常は高所への昇降用具として使われる。特に、摺動板、天井板を具備しているから荷物などを滑り昇降できるので安全な昇降用具として優れている。さらに、火災、地震など緊急時には、屋外の簡易テントとしての寝所空間を設営することができるもので多目的梯子として日常生活において極めて利便性の高いものである。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の実施の形態の斜視図である。
【図2】本発明の実施の形態の側面図である。
【図3】本発明の実施の形態のシートケース付摺動板の斜視図ある。
【図4】本発明の実施の形態の構成部材である摺動板の斜視図である。
【図5】本発明の実施の形態の梯子脚柱を開脚した姿勢の斜視図である。
【図6】本発明の実施の形態の梯子脚柱のシート収納構造を示す斜視図である。
【図7】本発明の実施の形態の構成部材である天井板の斜視図とその配設構造を示す側面図である。
【図8】本発明の実施の形態の梯子を簡易テントとして設営した状態を示す斜視図である。
【図9】本発明の実施の形態の梯子の簡易テントとして設営した状態を示す斜視図である。
【図10】本発明の実施の形態の梯子の通常使用状態を示す説明図である。
【図11】本発明の実施の形態の梯子の摺動板の使用状態を示す説明図である。
【図12】本発明の実施の形態の梯子の摺動板の使用状態を示す説明図である。
【符号の説明】
【0023】
1a、1b … 支柱
1c … ガイド鍔
2 … 踏桟
3a、3b、3c、3d … 脚柱
4a、4b、4c、4d … 枢着軸
5 … 摺動板
5a … ガイド溝
6 … シートケース
6a … シートガイド
6b … 巻取り具
6c … 天井用シート
6d … 芯軸
7 … ロープ
10 … シート
10a … ガイド棒
10b … シート
11a … 巻取り円盤
11b … 芯軸
12 … 上部固定板
13 … スリット
14 … 底板
20 … 矩形天井板
30、30a、30b、30c … 留め具
40 … 屋根
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対の支柱の間に複数の踏桟を設けた梯子であって、夫々の支柱両端近傍部には、支柱に沿って折りたたみ姿勢で固定、或いは支柱に対して直角に開脚姿勢で固定できるよう脚柱の一端が枢着され、該脚柱の内部空間に回転芯軸により巻取り巻戻りできるシートが収納されており、さらに、該一対の支柱の間に設けた複数の踏桟の全面を覆う矩形天井板を取り外し自在に配設できる構造を具備することを特徴とする多目的梯子。
【請求項2】
前記一対の支柱の片方、あるいは両方の内部空間に回転芯軸に巻取り巻き戻しできるシートが収納されていることを特徴とする請求項1に記載の多目的梯子。
【請求項3】
前記一対の支柱の間を長手方向に移動できる摺動板を配設したことを特徴する請求項1又は2に記載の多目的梯子。
【請求項4】
前記摺動板は、板上に回転芯軸に巻取り巻き戻しできるシートが配設されていることを特徴とする請求項3に記載の多目的梯子。
【請求項1】
一対の支柱の間に複数の踏桟を設けた梯子であって、夫々の支柱両端近傍部には、支柱に沿って折りたたみ姿勢で固定、或いは支柱に対して直角に開脚姿勢で固定できるよう脚柱の一端が枢着され、該脚柱の内部空間に回転芯軸により巻取り巻戻りできるシートが収納されており、さらに、該一対の支柱の間に設けた複数の踏桟の全面を覆う矩形天井板を取り外し自在に配設できる構造を具備することを特徴とする多目的梯子。
【請求項2】
前記一対の支柱の片方、あるいは両方の内部空間に回転芯軸に巻取り巻き戻しできるシートが収納されていることを特徴とする請求項1に記載の多目的梯子。
【請求項3】
前記一対の支柱の間を長手方向に移動できる摺動板を配設したことを特徴する請求項1又は2に記載の多目的梯子。
【請求項4】
前記摺動板は、板上に回転芯軸に巻取り巻き戻しできるシートが配設されていることを特徴とする請求項3に記載の多目的梯子。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2006−183437(P2006−183437A)
【公開日】平成18年7月13日(2006.7.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−381326(P2004−381326)
【出願日】平成16年12月28日(2004.12.28)
【出願人】(501023720)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年7月13日(2006.7.13)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年12月28日(2004.12.28)
【出願人】(501023720)
【Fターム(参考)】
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