説明

多粒子系を含む二段階の放出プロフィールを有する固形経口剤

本発明は、少なくとも1種の有効成分の経口投与用で、かつ、第一段階が時間で調節され、第二段階がpHで調節される有効成分の二段階の放出メカニズムを保証できる、固形剤であって、有効成分は、微小粒子系の形態でその中に存在し、前記系の微小粒子は、全て又は一部が有効成分で形成されるコアであって、有効成分の放出プロフィールを調節し、少なくとも下記のもので構成される材料で形成される少なくとも1つの層でコートされるコアを有する、固形剤に関する:
(i)コーティングの全質量に対して25〜75質量%の、胃腸液に溶けない少なくとも1種のポリマーA、
(ii)コーティングの全質量に対して25〜75質量%の、pH範囲5〜7に含まれる溶解pH値を有する少なくとも1種のポリマーB、及び
(iii)コーティングの全質量に対して0〜25質量%の、少なくとも1種の可塑剤
(ここで、ポリマーA及びBは、少なくとも0.25のポリマーB/ポリマーAの質量比で存在する)。また、本発明は、この固形剤及び対応する微小粒子の製造方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、微小粒子の形態で調剤される少なくとも1種の有効成分を含む、経口投与用の固形剤又は錠剤を提供することを対象とし、遊離形態の微小粒子及びそれらを含む最終製品の固形剤は、同じ特定の修飾放出プロフィールを有する。
本発明はまた、このような固形剤の製造における使用方法を対象とする。
【背景技術】
【0002】
従来技術において、多粒子の経口医薬剤形を利用することが有利であると分かっている。これらの多粒子系は、一般的に直径が2000μm未満である、多数の微小カプセル又は微小粒子から構成される。これらの系はいくつかの点で有利である。
まず、投与される有効成分の用量が、多くの微小粒子でその中に分散され(典型的には10000個の中に用量500mg)、そのために、胃内容排出の変動に対して低感受性を示し、高い用量の有効成分と組織とが接触するリスクが実質的にはない。
また、多粒子系は、単用量ユニット、例えばハードゼラチンカプセル内での、異なる修飾放出プロフィールを有する微小粒子の混合物の使用を可能とするので、様々な放出の波(release waves)を示す放出プロフィール、又は、様々な割合の適切な調整によって変動しない有効成分の血漿濃度レベルを確実なものとする放出プロフィールを作り出すことができる。
特に、多粒子状態でのこれらの修飾放出形態の説明に関して、文献US 2002/0192285、US 6 238 703、US 2002/0192285、US 2005/0118268及びUS 5 800 836に記載された方法で、及び、特に、出願WO 03/030878で記載された方法で言及されている。
【0003】
従って、より特別には、出願WO 03/030878は、多粒子経口医薬形態であって、第一段階が時間で調節され、第二段階がpHにより調節される二段階の修飾放出メカニズムに従ったその中に存在する有効成分の放出を可能とする医薬形態について記載している。さらに具体的には、この放出方法は、一連の3つの別々の相で体系化することができる:
第一段階が「潜伏」相、次いで第二段階が「放出制御」相であり、両方の相とも、胃の環境として代表的な酸性環境に接触して表れ、次いで、第三段階が「加速放出」、更に言うと「即時放出」相であり、この相は、腸の環境として代表的な中性環境に接触して表れる。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
従って、この多粒子系は、有効成分の修飾された遅放かつ除放を可能とし、一連の多様な放出は夫々、時間及びpHにより活性化される2つの別々のメカニズムに従って誘発される。第1相から第2相への変化は、胃の環境として代表的な酸性環境との接触時間により誘発され、それに対し、第2相から第3相への変化は、微小粒子が胃から出て腸に入るとき受けるpHの変化により誘発される。
この修飾放出プロフィールの特定のタイプは、特に以下の場合に有利である:
-日常生活に適合する投与スケジュールを維持すると同時に時間生物学的サイクルに有効成分の放出を合わせるために、又は、組合せの中で他のものに対して有効成分の放出を遅らせるために、遅放が好ましい場合、及び
-対象としている有効成分が、肝臓によって強く代謝されるが、代謝物が活性をもたない場合。この場合に、様々なオフセットピークの形での修飾放出により、肝代謝を最小限にし、有効成分の活性持続時間を延ばすと同時に生物利用効率を保持できる。
【0005】
これら全ての場合において、特定の3相放出プロフィールを示す調剤は、遅放性を得るために一般的に使用される腸溶性製剤として一般に知られる調剤よりも、変動性の点において優れている。
一般的な腸溶性調剤は、実際には2相(胃の環境として代表的な酸性環境中における非放出又は潜伏相、及び、腸の環境として代表的な中性環境における即時放出相)のみを示す。これらの一般的な腸溶性剤の場合に、有効成分の放出は、胃から腸への通過に関係するpHの変化によって誘発される。実際は、この通過は、個体によって非常に多様であり、同じ個体の中であっても時間によって非常に多様である。経口剤が、予期されるより長く、例えば最大18時間胃の中に留まることは珍しいことではない。従って、24時間毎に投与される製品に関しては、第一錠剤が18時間留まる場合であって、その次の錠剤が腸を一層早く通過する場合、患者は、第一日には治療されないのに、第二日において2回の用量の等量を受けてしまうことになるだろう。この変動性は、有効成分が低い治療指数を示す場合に、ネガティブな結果を有する場合があり、すなわち、この有効成分の高い血漿レベルが深刻な副作用に関係する。
【0006】
特定の3相放出プロフィールを示す調剤は、この問題を回避し、たとえ低い治療指数を有する有効成分であっても、許容可能で小さな変動を有する遅放かつ除放のプロフィールを利用することを可能とする。
それらは、一般的に微小粒子か微小カプセルの形態で与えられ、そのコアは、有効成分か有効成分の混合物を含み、コーティングでコートし、そのコーティングの組成及び/又は厚みは、2つの別々のメカニズムに従ってこの有効成分の放出を制御できるように正確に調整される。2つの別々のメカニズムは、コートされたコアが、胃に位置するか小腸に位置するかに応じて、一つは、酸性水性環境中での滞留時間により調節され、もう一つは、微小粒子が存在する環境のpHによって調節される。
例えば、WO 03/030878で記載される微小粒子のコーティングは、中性のpHでイオン化される基を有する少なくとも1種の親水性ポリマーを含む材料、例えば、(メタ)アクリル酸及びアルキル(メタ)アクリラートのコポリマー、及び、少なくとも1種の疎水性化合物、例えば、硬化性植物ワックスで形成される。このような微小粒子は、圧縮されない調剤系、例えば粉末又はハードゼラチンカプセルで調剤される場合に、修飾放出プロフィールに関して全く申し分がない。
【0007】
残念なことに、このタイプの微小粒子を含む圧縮固形経口剤、例えば錠剤の調剤は、修飾放出プロフィールに悪影響を及ぼすことが判明している。特に、最初の潜伏時間が、一般的に、微小粒子の少なくとも一部からの有効成分の加速放出の作用で失われ、それのコーティングは、錠剤の調剤の間に与えられる圧縮力によって破壊される。
実際は、全ての固形剤の間で、圧縮固形剤又は凝集固形剤、例えば錠剤が、いくつかの点で有利である。
粉末と比較して、それらは、水性媒体中での前希釈を必要としないので、すぐに患者によって摂取され、また、患者が受ける有効成分の用量は、完全に保証される。また、それらの工業的な製造は、カプセル及びハードゼラチンカプセルと比較して、調剤に関してあまり制限されない。また、後者と比べて、錠剤タイプの固形剤は、より高い機械的強度を有する。それらは、砕けにくいのと同時に、用量の観点から必要であれば、いくつかのパーツに分割することができる(分割錠剤)。
【0008】
従って、固形調剤は、錠剤形で存在し、この調剤の中に含まれる有効成分の特定の3相放出プロフィールを有する多数の微小粒子から構成されることが必要である。
特に、最終製品の錠剤形が、そのなかに存在する修飾放出微小粒子(遊離形とされる)と同じ3相の修飾放出プロフィールを示すように、錠剤固形剤は、3相修飾放出微小粒子から構成されることが必要である。
特に、固形調剤は、二段階の放出メカニズムより生じる3相修飾放出プロフィールを提供できることが必要で、このメカニズムは、胃の中での固形調剤の所定の滞留時間後に有効成分の放出が誘発される限りにおいて、第一段階が時間で調節され、固形調剤が、小腸に存在する環境と接触すると、有効成分の放出が加速する限りにおいて、第二段階がpHで調節される。
【0009】
予想外に、本発明者は、これらの固形剤の中に、特定のコーティングを有する微小粒子の形態で有効成分を分散させて、圧縮形成されても、それにもかかわらず有効成分の当該3相修飾放出プロフィールを保証することができる固形経口剤を得ることが可能であることが分かった。
さらに特別には、本発明は、第一の局面に従って、少なくとも1種の有効成分の経口投与用で、かつ、第一段階が時間で調節され、第二段階がpHで調節される、有効成分の二段階の放出メカニズムを保証できる固形剤に関係し、有効成分は、微小粒子系の形態でその中に存在し、前記系の微小粒子は、全て又は一部が有効成分で形成されるコアであって、有効成分の放出プロフィールを調節し、少なくとも下記のもので構成される材料で形成される少なくとも1つの層でコートされる、コアを有する:
-コーティングの全質量に対して25〜75質量%の、胃腸液に溶けない少なくとも1種のポリマーA、
-コーティングの全質量に対して25〜75質量%の、pH範囲5〜7に含まれる溶解用pH値を有する少なくとも1種のポリマーB、及び
-コーティングの全質量に対して0〜25質量%の、少なくとも1種の可塑剤
(ここで、ポリマーA及びBは、少なくとも0.25のポリマーB/ポリマーAの質量比で存在する)。
【0010】
「第一段階が時間で調節され、第二段階がpHで調節される有効成分の二段階の放出メカニズム」という表現は、分かりやすく説明すると、用語「時間とpHという観点での二段階の放出メカニズム」で表すこともできる。
本発明の意味の中で、用語「固形経口剤」は、経口投与用の一般的な錠剤を表す。
「二段階の放出メカニズム」という表現は、微小粒子が3相放出プロフィールの形態でも体系化されうる有効成分の放出の2つの別々のメカニズムを示す、という事実を反映する:
-酸性環境と接触している間、放出が遅延される第一メカニズム。この放出メカニズムは、第一潜伏相、続いての第二放出制御相に分けることができる。言い換えると、本発明に従った固形経口剤は、酸性の水性環境で、少なくとも30分間この環境と接触させた後にのみ、それらが含む有効成分の放出を開始する能力を有する。
-中性水性環境と接触したときに放出を加速(実際には即時)する第二メカニズム。この第二放出メカニズムは、第三放出相によって体系付けられうる。
【0011】
この理由に関して、本発明に従って対象としている固形剤は、一方で、胃の中での所定の残留時間によって調節される潜伏時間後に、それが含む有効成分を、持続的方法で放出させることが可能であり、他方で固形剤がpHの増加を受ける腸管に入るときに、有効成分の加速放出が誘発される。有効成分の放出又は本発明に従った固形剤中に製造された有効成分の放出のこれらの2種のメカニズムは、順に与えられる。
本発明の意義の範囲内で、ポリマーBの溶解pH値は、このポリマーが溶けないpH値より低く、この同じポリマーBが溶解するpH値より高い、生理的溶液又はインビトロのモデル溶媒のpH値である。
明白な理由で、このpH値は、所定のポリマーに特異的であり、固有の物理化学的特徴、例えばその化学的性質及びその鎖の長さに直接関連する
本発明の意義の範囲内で、固形剤は、最終的な機械的強度を有する固形剤である。それはまた、有利なことに、変形不可能である。
これらの特定の性質の観点からすれば、これはまた、「固体」として記載される調剤形態、例えば、ゼラチンカプセル及び粉末から区別される。
【0012】
有利なことに、本発明に従った固形剤は、保持される有効成分又は有効成分の混合物を含む微小粒子が分散されるマトリックス形態で提供される。
更に特別に、それらは、それらの組成物に加えられる様々な化合物及び/又は材料を圧縮することによって得られる。
好ましい形態に従うと、本発明に従った固形剤は、錠剤タイプの形態である。
好ましい態様に従うと、固形剤は、50〜500Nで変動する硬度を有する。
別の態様に従うと、本発明における固形剤は、少なくとも2つのタイプの微小粒子を含むことができ、この2つのタイプは、互いに少なくとも、それらが含む有効成分の性質及び/又はそれらのそれぞれの粒子を形成するコーティングの組成物及び/又は厚みの点で、異なる。
別の態様において、本発明の固形組成物は、別個の放出プロフィールで互いに異なる少なくとも2つのタイプの微小粒子を含みうる。
更に別の態様において、本発明に従った固形剤は、上記で定義された二段階の放出メカニズムを有する粒子とは別に、有効成分又はそれらが含む成分のための即時放出プロフィールを有する粒子を含むことができる。
更にその別の局面に従って、本発明は、下に定義されるような発明に従って固形剤の製造方法にも関連する。
最後に、別の局面に従うと、本発明は、下で定義されるように特定の微小粒子に関連する。
【0013】
≪固形剤≫
上記で特定したように、本発明に従った固形剤は、圧縮によって有利に製造される。当然、それは、特に下記に定義されるような更なる処理を受けてもよい。
この製造方法を考慮すると、それは、十分な極限強度を有する。例えば、直径12mmの丸型錠剤に関しては、その硬度は、50〜500 N、特に60〜200 Nで変化しうる。
この硬度は、ヨーロッパ薬局方に記載されたプロトコール(第6版)、チャプター2.9.8.に従って測定することができる。
更に、予想外に、この機械的凝集が、固形組成物中に分散された微小粒子によって、それらが有する有効成分の特定の3相修飾放出プロフィールの発現に、悪影響を及ぼすということは、証明されていない。
微小粒子は、それらが、一般的に水性環境に接触する固形剤の崩壊によって、本発明に従った固形剤を形成するマトリックスから放出される場合に、それらのコーティングの特定の組成のために、消化管内で、上述したような特定の3相修飾放出プロフィールに従った有効成分の放出を可能とする。
【0014】
さらに特別には、これらの微小粒子が前記粒子を形成するポリマーBの溶解pHよりも低いpH値を有する環境におかれた場合に、遅放かつ除放の放出プロフィールは、0.5〜12時間、特に0.5〜8時間、更に特に1〜5時間の所定の潜伏時間で、0.75〜24時間、特に0.75〜12時間、更に特に、0.75〜8時間、特に1〜5時間の半放出時間t1/2(存在する有効成分の半分が放出される時間の終わり)に従って、観察される。
一方で、これらの同じ微小粒子は、胃の中又はそれに匹敵する環境下に置かれる前に、つまり、ポリマーBの溶解pH値より低いpH値を有する環境におかれる前に、この粒子を形成するポリマーBの溶解pH値よりも高いpH値を有する環境下におかれた場合に、有効成分の放出は、潜伏時間なしに、t1/2が0.1〜10時間、特に0.1〜5時間、特別には0.1〜2時間で、観察される。
この潜伏時間は、微小粒子がそれらの用量の20%未満の有効成分を放出する境の時間に対応する。
【0015】
≪微小粒子系≫
本発明は、微小粒子を含み、その組成及び構成は、それらが含む修飾放出プロフィールに好適な有効成分又は有効成分の混合物を正確に与えるために、調整される。
より特別には、本発明に従って対象としている微小粒子は、コアの中に構造的に配置され、全て又は一部が少なくとも1種の有効成分又は有効成分の混合物で形成され、コーティングでコートされるか、フィルムコートされる。
このコアは、
-粗(純)有効成分、及び/又は、
-有効成分又は様々な他の成分と混合された有効成分の混合物を含むマトリックス顆粒、及び/又は、
-層の適用によって得られ、全部又は一部が有効成分で形成され、例えば、セルロース又は糖からなる顆粒でありうる。
マトリックス顆粒の場合において、マトリックスは、有効成分を含むことができ、任意で他の生理学的に許容可能な賦形剤、例えば、結合剤、界面活性剤、崩壊剤、フィラー又はpH(緩衝剤)を制御又は修正する薬剤を含んでも良い。
【0016】
担持粒子を使用する場合には、この粒子は、スクロース及び/又はデキストロース及び/又はラクトース及び/又はスクロース/デンプン混合物から構成されうる。それは、生理学的に許容可能な賦形剤のセルロースミクロスフェア又はいずれかのほかの粒子でありうる。有利なことに、担持粒子は、1500μm未満、好ましくは20〜1000μm、好ましくは50〜1000μm、特に50〜800μm、更に特に50〜600μmの平均直径を有する。活性層は、更に有効成分、1種以上の生理学的に許容可能な賦形剤、例えば、結合剤、表面活性剤、崩壊剤、フィラー又はpH(緩衝剤)を制御又は修正する薬剤を任意で含んでも良い。
特定の別の態様に従って、微小粒子を形成するコアは、全て又は一部が有効成分で形成する層を上記定義されたような担持粒子に適用することで得られる顆粒である。
本発明の場合において、コーティングは、関係する有効成分の又は関係する有効成分の混合物の特定の放出抑制、言い換えると、時間及びpHによって活性化される二段階の放出メカニズムにより誘発される3相を証明するために調整される。
本発明の場合において、コーティングは、関係する有効成分又は関係する有効成分の混合物の特定の放出プロフィールを、言い換えると、時間とpHによって活性化される二段階の放出メカニズムにより誘発される3相を、提供するために調整された組成を有する。
より特別には、コーティングは、ブレンドにより得られる複合材料で形成される:
-消化管の体液に溶けない少なくとも1種のポリマーA;
-5〜7のpH範囲内の溶解pH値を有する少なくとも1種の第2のポリマーB;及び
-任意で、少なくとも1種の可塑剤及び/又は他の標準的な賦形剤。
【0017】
≪ポリマーA≫
このポリマーは、消化管の体液又は消化液に溶けず、より特別には、以下から選択される:
-不水溶性のセルロース誘導体、
-(メタ)アクリラート(コ)ポリマーの不水溶性の誘導体、
-及びそれらのブレンド。
より特別には、それらは、エチルセルロース、例えば、商品名Ethocel(登録商標)で販売されているもの、セルロースアセタートブチラート、セルロースアセタート、タイプ「A」又は「B」のアンモニオ(メタ)アクリラートコポリマー(エチルアクリラート、メチルメタアクリラート、及び、トリメチルアンモニオエチルメタクリラートのコポリマー)、特に、商品名Eudragit(登録商標)RL及びEudragit(登録商標)RSで販売されているもの、ポリ(メタ)アクリル酸のエステル、特に、Eudragit(登録商標)NEで販売されているもの、及びそれらのブレンドから選択することができる。
【0018】
エチルセルロース、セルロースアセタートブチラート及びアンモニオ(メタ)アクリラートコポリマー、特に、商品名Eudragit RS(登録商標)及びEudragit RL(登録商標)で販売されているものが、本発明に非常に特に適している。
微小粒子のコーティングは、その全質量に対して、10〜75%を含み、好ましくは15〜60%を含むことができ、より好ましくは20〜55%を含むことができ、特に25〜55%、より特別には30〜50%のポリマーAを含むことができる。
別の態様に従って、粒子のコーティングは、その全質量に対して、35〜65質量%、特に40〜60質量%のポリマーAを含むことができる。
【0019】
≪ポリマーB≫
特別に、実例として、本発明に適したポリマー(B)が、制限することを意図されずに説明されうる。
-メタクリル酸とメチルメタクリラートのコポリマー、
-メタクリル酸とエチルアクリラートのコポリマー
-セルロース誘導体、例えば:
○セルロースアセテートフタラート(CAP)、
○セルロースアセタートスクシナート(CAS)、
○セルロースアセタートトリメリタート(CAT)、
○ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタラート(又はハイプロメロースフタラート)(HPMCP)、
○ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセタートスクシナート(又は、ハイプロメロースアセタートスクシナート)(HPMCAS)、
-シェラック、
-ポリビニルアセタートフタラート(PVAP)、
-及びそれらのブレンド。
【0020】
本発明の好ましい形態に従って、このポリマーBは、メタクリル酸及びメチルメタクリラートのコポリマー、メタクリル酸及びエチルアクリラートのコポリマー、及びそれらのブレンドから選択される。
上記で特定されたように、本発明に従って対象としているポリマーBは、その溶解pH値より高いpH値と接触するか、低いpH値と接触するかに応じて異なる溶解プロフィールを有する。
本発明の意義の範囲内で、ポリマーBは、一般的に、溶解pH値より低いpH値で溶けず、一方で、溶解pH値よりも高いpH値で溶解可能である。
例えば、溶解pH値のポリマーは、以下のものが可能である:
- 5.0、例えば、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート及び、特に、商品名HP-50でShin-Etsuから販売されているもの
- 5.5、例えば、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタラート及び、特に、商品名HP-55でShin-Etsuから販売されているもの、メタクリル酸及びエチルアクリラートの1:1コポリマー、及び、特にEvonikから商品名Eudragit L100-55で販売されているもの
- 6.0、例えば、メタクリル酸及びメチルメタクリラートの1:1コポリマー、特に、商品名Eudragit L100でEvonikから販売されているもの
- 7.0、例えば、メタクリル酸及びメチルメタクリラートの1:2コポリマー、特に、商品名Eudragit S100でEvonikから販売されているもの
【0021】
これらのポリマーは、夫々溶解pHよりも高いpH値で溶解可能である。
コーティングは、有利には、その全質量に対して、少なくとも25〜90質量%、特に30〜80質量%、より特別には、30〜75質量%、特に35〜70質量%、特に、35〜65質量%の、特に40〜60質量%のポリマーBで構成される。
有利には、コーティングは、0.25より大きい、特に0.3以上の、特に0.4以上の、更に特に0.5以上の、更に特に0.75以上の、ポリマーB/ポリマーA質量比で、ポリマーA及びBの2つのカテゴリーのブレンドから形成される。
【0022】
他の別の態様に従って、また、ポリマーB/ポリマーA比は、8未満、特に4未満、更に特に2未満、より特別には1.5未満である。
特に、例示の目的で本発明に非常に特に適したポリマーA及びBのブレンドとして、エチルセルロース、セルロースアセタートブチラート、及び、タイプ「A」又は「B」のアンモニオ(メタ)アクリラートコポリマーのブレンドと、少なくとも1種のメタクリル酸とエチルアクリラートのコポリマー、又は、1種のメタクリル酸とメチルメタクリラートのコポリマー、又はそれらのブレンドとのブレンドが挙げられる。
【0023】
従って、特定の態様に従って、本発明に従った粒子は、有利に、以下の組から選択される少なくとも1種のポリマーB/ポリマーAの組で形成されうる。
1.メタアクリル酸及びエチルアクリラート/エチルセルロースの1:1コポリマー
2.メタアクリル酸及びメチルメタクリラート/エチルセルロースの1:2コポリマー
3.メタクリル酸及びエチルアクリラートの1:1コポリマーと、メタクリル酸及びメチルメタクリラート/エチルセルロースの1:2コポリマーのブレンド
4.メタクリル酸及びエチルアクリラート/セルロースアセタートブチラートの1:1コポリマー
5.メタクリル酸及びメチルメタクリラート/セルロースアセタートブチラートの1:2コポリマー
6.メタクリル酸及びエチルアクリラートの1:1コポリマーと、メタクリル酸及びメチルメタクリラート/セルロースアセタートブチラートの1:2コポリマーのブレンド
7.タイプ「A」又はタイプ「B」のメタクリル酸及びエチルアクリラート/アンモニオ(メタ)アクリラートの1:1コポリマー
8.タイプ「A」又はタイプ「B」のメタクリル酸及びメチルメタクリラート/アンモニオ(メタ)アクリラートコポリマーの1:2コポリマー
9.メタクリル酸及びエチルアクリラートの1:1コポリマーと、タイプ「A」又はタイプ「B」のメタクリル酸及びメチルメタクリラート/アンモニオ(メタ)アクリラートコポリマーの1:2コポリマーのブレンド
【0024】
他の局面に従って、本発明の対象は、全て又は一部が少なくとも1種の有効成分で形成されるコアを有する微小粒子であり、コアは、第一段階が時間で調節され、第二段階が有効成分のpHで調節される二段階の放出メカニズムを決定する少なくとも1種の層でコーティングされ、その層は、少なくとも以下から構成される材料で形成される:
-コーティングの全質量に対して、10〜75質量%、特に25〜75質量%、特に25〜60質量%、より好ましくは25〜55質量%、より特別には30〜50質量%の少なくとも1種のポリマーA(ここで、ポリマーAは、胃腸液に溶けずに、エチルセルロース、セルロースアセタートブチラート、タイプ「A」又はタイプ「B」のアンモニオ(メタ)アクリラートコポリマー、ポリ(メタ)アクリル酸のエステル、及びそれらのブレンドから選択される)、及び
-コーティングの全質量に対して、25〜90質量%、特に25〜75質量%、特に30〜75質量%、特に35〜70質量%、更に特に40〜60質量%の少なくとも1種のポリマーB(ここで、ポリマーBは、5〜7で変動するpH範囲に含まれる溶解pH値を有し、メタクリル酸及びメチルメタクリラートのコポリマー、メタクリル酸及びエチルアクリラートのコポリマー、及びそれらのブレンドから選択される)。
有利には、コーティングは、上記の組から選択されるポリマーB/ポリマーAの組で形成されうる。
上述した2種類のポリマーに加えて、本発明に従った粒子のコーティングは、少なくとも1種の可塑剤を含みうる。
【0025】
≪可塑剤≫
この可塑剤は、特に以下から選択されうる:
-グリセロール及びそのエステル、(好ましくは、アセチル化されたグリセリド、グリセリルモノステアラート、グリセリルトリアセタート及びグリセリルトリブチラートから選択される)
-フタラート(好ましくは、ジブチルフタラート、ジエチルフタラート、ジメチルフタラート及びジオクチルフタラートから選択される)、
-シトラート(好ましくは、トリブチルアセチルシトラート、トリエチルアセチルシトラート、トリブチルシトラート及びトリエチルシトラートから選択される)、
-セバカート、好ましくはジエチルセバカート又はジブチルセバカート、
-アジパート、
-アゼラート、
-ベンゾアート、
-クロロブタノール、
-ポリエチレングリコール、
-植物油、
-フマラート、好ましくはジエチルフマラート、
-マラート、好ましくはジエチルマラート、
-オキザラート、好ましくはジエチルオキザラート、
-スクシナート、好ましくはジブチルスクシナート、
-ブチラート、
-セチルアルコールのエステル、
-マロナート、好ましくはジエチルマロナート、
-ヒマシ油、
-及び、これらの混合物。
【0026】
特に、コーティングは、その全質量に対して、25質量%未満の、好ましくは1〜20質量%の、より好ましくは5〜20質量%の、特に5〜15質量%の、より好ましくは、おおよそ10質量%の可塑剤を含みうる。
従って、本発明に従った粒子のコーティングは、有利に、少なくとも以下のものから形成されうる:
- 20〜60質量%の、特に、30〜60質量%の少なくとも1種のポリマーA(エチルセルロース、セルロースアセタートブチラート、タイプ「A」又はタイプ「B」のアンモニオ(メタ)アクリラートコポリマー又はそれらのブレンドのひとつから選択される)
- 30〜70質量%の、特に、40〜70質量%の少なくとも1種のポリマーB(メタクリル酸及びメチルメタクリラートのコポリマー、特に、メタクリル酸及びメチルメタクリラートの1:1コポリマー、及び、メタクリル酸及びメチルメタクリラートの1:2コポリマー、メタクリル酸及びエチルアクリラートのコポリマー、特に、メタクリル酸及びエチルアクリラートの1:1コポリマー、及び、メタクリル酸及びエチルアクリラートの1:2コポリマー、及びそれらのブレンドから選択される)、及び、
- おおよそ10質量%の少なくとも1種の可塑剤、例えば、トリエチルシトラート。
【0027】
特に、実例として、本発明に従った粒子を制限することを意図せずに、コーティングと以下の組成物の一つを有するものが挙げられる:
・30〜60%のエチルセルロース
40〜70%のメタクリル酸及びエチルアクリラートの1:1コポリマー
10%のトリエチルシトラート
・30〜60%のエチルセルロース
40〜70%のメタクリル酸及びメチルメタクリラートの1:2コポリマー
10%のトリエチルシトラート
・30〜60%のエチルセルロース
40〜70%のメタクリル酸及びエチルアクリラートの1:1コポリマーと、メタクリル酸及びメチルメタクリラートの1:2コポリマーのブレンド
10%のトリエチルシトラート
・30〜60%のセルロースアセタートブチラート
40〜70%のメタクリル酸及びエチルアクリラートの1:1コポリマー
10%のトリエチルシトラート
・30〜60%のセルロースアセタートブチラート
40〜70%のメタクリル酸及びメチルメタクリラートの1:2コポリマー
10%のトリエチルシトラート
・30〜60%のセルロースアセタートブチラート
40〜70%のメタクリル酸及びエチルアクリラートの1:1コポリマーと、メタクリル酸及びメチルメタクリラートの1:2コポリマーのブレンド
10%のトリエチルシトラート
・30〜60%のタイプ「A」又はタイプ「B」のアンモニオ(メタ)アクリラートコポリマー
40〜70%のメタクリル酸及びエチルアクリラートの1:1コポリマー
10%のトリエチルシトラート
・30〜60%のタイプ「A」又はタイプ「B」のアンモニオ(メタ)アクリラートコポリマー
40〜70%のメタクリル酸及びメチルメタクリラートの1:2コポリマー
10%のトリエチルシトラート、
及び、
・30〜60%のタイプ「A」又はタイプ「B」のアンモニオ(メタ)アクリラートコポリマー
40〜70%のメタクリル酸及びエチルアクリラートの1:1コポリマーと、メタクリル酸及びメチルメタクリラートの1:2コポリマーのブレンド
10%のトリエチルシトラート。
【0028】
当然、このコーティングは、コーティングの分野で通常使用される様々なほかの追加のアジュバントを含んでも良い。それらは、例えば、顔料、染料、フィラー、消泡剤、界面活性剤などでありうる。
本発明の特定の態様に従うと、このコーティングは有効成分を含まない。
本発明の別の態様に従うと、このコーティングは、1〜4のpH値範囲で溶解可能な化合物を含まない。
このコーティングは、単層又は多層でありうる。別の態様に従って、それは、上記で定義されたような複合材料から形成される単層で構成される。
微小粒子のコーティングは、それらが遊離状態であっても、本発明に従った固体組成物の中に分散されていても、有利に同じ外観を有する。それは、好ましくは、全部又は一部が有効成分で形成されたコアの表面に位置する連続膜の形態で提供される。それは、有利に、かなりの圧縮力、例えば少なくとも5kN、特に、少なくとも7kN及び好ましくは10kNより大きな力に曝されることにも適応できるために十分な機械的強度を有する。
【0029】
更に、このコーティングは、微小粒子を形成するコアの表面で組成に関して、有利に均質である。
従って、好ましいほかの態様に従って、微小粒子の表面に位置するコーティングは、空気流動層で、有効成分の粒子の上から、少なくともポリマーA及びBを含む溶液又は分散液を噴霧することで得られる。
好ましくは、ポリマーA及びB、及びもし存在するならば、可塑剤は、溶質状態、言い換えると、溶液媒体中に溶解した状態で噴霧される。この溶液媒体は、水と混合していてもしていなくてもよい有機溶媒を一般的に含む。従って、形成されるコーティングは、これらの同じポリマーを含む主に水性液体の分散液から形成されるコーティングと比べて組成に関して均質であることが判明している。
【0030】
好ましい別の態様に従って、噴霧溶液は、溶媒の全質量に対して、40質量%未満の水、特に、30質量%未満の水、更に特別には25質量%未満の水を含み、更に特に10質量%以下の含水量を含む。
物理的完全性と修飾放出プロフィールを保つコーティングのこの力は、微小粒子の全質量に対して、有利に、3〜85質量%、特に5〜60質量%、特別には10〜50質量%、更に特に10〜40質量%、より特別には20〜40質量%で変動する一定のコーティングで観察されうる。
本発明に従って対象としている微小粒子は、2000μm以下、特に1000μm以下、特に800μm以下、特に600μm以下、特に500μm以下の平均直径を有する。平均直径は、特徴付けられるサイズスケールに応じてレーザー回析又は篩分け分析によって測定される。
一般的に、特に、ヨーロッパ薬局方(第6版)チャプター2.9.31.に記載されるようなレーザー回析による方法の使用で、体積-平均直径として、サイズを特徴付けて、700μmのサイズスケール以下であることが好ましい。篩方法に従った特徴づけについては、篩の適当な選択は、分析的な篩による粒子サイズ区分を見積もる方法を提供するヨーロッパ薬局方(第6版)チャプター2.9.38.を参照することができる当業者の能力の範囲内で明らかになる。
【0031】
≪有効成分≫
本発明に従った固形剤は、広範な有効成分に適合することができる。明白な理由で、pHという観点で制御され、遅延されたそれらの放出プロフィールは、このような放出プロフィールが望ましい有効成分(より詳細には小腸での十分な放出を保証することが望ましい有効成分)にとって、固形剤を非常に特に有利なものとする。このことは、大半の医薬的活性成分に当てはまる。
【0032】
従って、本発明に従ってコートされる微小粒子中に存在する有効成分は、例えば、有利に、有効物質の以下のファミリーの少なくとも1種から選択されうる:麻酔薬、鎮痛薬、抗喘息薬、アレルギー治療薬、抗癌剤、抗炎症薬、抗凝固薬及び抗血栓薬、抗痙攣薬、抗癲癇薬、抗糖尿病薬、制吐薬、抗緑内障薬、抗ヒスタミン薬、抗感染症薬、特に抗生物質、抗真菌剤、抗ウイルス剤、抗パーキンソン病薬、抗コリン作用薬、鎮咳薬、炭酸脱水酵素阻害剤、心臓血管薬、特に脂質低下薬、抗不整脈薬、血管拡張薬、抗狭心症薬、高血圧治療薬、血管保護剤及びコリンエステラーゼ阻害剤、中枢神経系疾患治療薬、中枢神経系刺激薬、避妊薬、妊娠促進薬、ドーパミン受容体アゴニスト、子宮内膜症治療薬、胃腸疾患治療薬、免疫調節剤及び免疫抑制剤、記憶障害治療薬、抗片頭痛薬、筋弛緩薬、ヌクレオシドアナローグ、骨粗鬆症治療薬、副交感神経作動薬、プロスタグランジン、精神治療薬、例えば鎮静薬、睡眠薬、精神安定剤、神経弛緩薬、抗不安薬、精神刺激薬及び抗うつ薬、皮膚科治療薬、ステロイド及びホルモン、アンフェタミン類、食欲減退薬、非麻酔鎮痛剤(nonanalgesic painkiller)、バルビツレート類、ベンゾジアゼピン類、緩下薬及び向精神薬。
有効成分のこれらのファミリーのいくつかは、実施例で使用される有効成分によって、より具体的に記載される。
【0033】
明確な理由で、本発明に従った粒子は、上記で同定されたこれら以外の有効成分を調節する目的で使用されうる。
本発明に従った固形剤又は固形組成物は、有利に錠剤の形態で提供され、この錠剤は、上記で定義されるような微小粒子を含む。
特定の態様に従って、本発明に従った固形剤は、全質量に対して、5〜60質量%、特に10〜50質量%、より特別には20〜40質量%の範囲で微小粒子の充填レベルを示す。
有利に、有効成分の修飾放出を有する微小粒子を含む固形剤は、従来の生理学的に許容可能な賦形剤の使用、例えば、マトリックスの中に、特に錠剤の形態で微小粒子を調剤する使用も含む。
これらの賦形剤は特に、
-希釈剤、
-圧縮剤、例えば、微結晶性セルロース又はマンニトール、
-着色剤、
-崩壊剤、
-フロー剤、例えばタルク又はコロイド状シリカ、
-潤滑剤、例えばグリセロールベヘナート又はステアラート、
-香味料、
-防腐剤、
-及びそれらの混合物
でありうる。
【0034】
これらの賦形剤の選択は、本分野の当業者の能力の範囲内で明らかになる。
本発明の特定の態様に従って、圧縮剤及び/又は希釈剤は、特に以下から選択される:
○微結晶性セルロース、例えば、Avicel(登録商標)グレード(FMC製)、又はCelphere(登録商標)グレード(旭化成製)、又はセルロース粉末、
○カルシウム塩、例えば、カルシウムカルボナート、ホスファート及びサルファート、
○糖、例えば、ラクトース、スクロース、又は糖スフィア、
○マンニトール、例えば、Pearlitol(登録商標)グレード(Roquette製)、キシリトール及びエリスリトール
本発明に従った固形剤は、固形剤の全質量に対して、10〜80質量%、特に30〜75質量%、より特別には、35〜65質量%の範囲の含有量で1種以上の圧縮剤及び/又は希釈剤を特に含んでもよい。
本発明の他の特定の態様に従って、潤滑剤及び/又はフロー剤は特に、以下から選択される:
○ステアラート、例えば、マグネシウムステアラート、
○ステアリン酸、
○グリセロールベヘナート、
○コロイド状シリカ、及び、
○タルク。
【0035】
本発明に従った固形剤は、1種以上の潤滑剤及び/又はフロー剤を、固形剤の全質量に対して、0.1〜5質量%、特に、0.5〜2質量%の範囲の含有量で含んでもよい。
本発明のほかの特定の態様に従って、結合剤は、特に以下から選択される:
○セルロース由来のポリマー、例えば、ハイプロメロース、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、又はエチルセルロース、
○ポビドン及び
○ポリエチレンオキシド。
本発明に従った固形剤中の結合剤の含有量は、固形剤の全質量に対して、0〜40質量%、特に0〜30質量%、より特別には5〜20質量%の範囲でありうる。
特定の態様に従って、本発明に従った固形剤は、上記で定義された微小粒子に加えて、
少なくとも1種の圧縮剤及び/又は希釈剤(特に、微結晶性セルロース、マンニトール、及びそれらの混合物から選択される)、並びに、少なくとも1種の潤滑剤及び/又はフロー剤、特にマグネシウムステアラート、並びに、任意で少なくとも1種の結合剤(特に、ハイプロメロース及びメチルセルロースから選択される)を含む。
特に、これらの様々な賦形剤は、上記で定義されたような含有量で使用される。
他の生理学的に許容可能な賦形剤(特に、崩壊剤、着色料、香味料及び/又は防腐剤から選択される)を添加することもできる。
【0036】
特定の態様に従うと、本発明に従った固形剤は、その全質量に対して1質量%未満の崩壊剤を含み、より特別には、崩壊剤を含まない。
他の特定の態様に従うと、本発明に従った固形剤は、水不溶性ロウ製化合物を含まず、特にワックスを含まない。
錠剤の形態の最終製品の固形剤は、その体裁(色、外観、味のマスキングなど)を改善するため、本分野の当業者に知られた技術と調合に従ってコートされうる。
本発明に従った新しい医薬形態は、制御された放出プロフィールを示す能力で新規であり、特に、単回、倍加、又は複数回の一日用量で経口投与可能である。
当然ながら、本発明に従った固形剤は、例えば、調節される有効成分の性質、及び/又は、コーティングの組成、及び/又は、コーティングの厚みの観点から互いに異なる微小粒子の異なるタイプと組み合わせることができる。
【0037】
第一の形態に従って、有効成分の修飾放出を有する微小粒子の少なくとも一部は、夫々有効成分の修飾放出を可能とする少なくとも1種のコーティングでコートされた有効成分の微小粒子を含む。
好ましくは、有効成分の微小粒子は、有効成分及び1種以上の生理学的に許容可能な賦形剤を含む顆粒である。
第二の形態に従って、有効成分の修飾放出を有する微小粒子の少なくとも一部は、夫々担持粒子、担持粒子をコートする有効成分を含む少なくとも1つの活性層、及び有効成分の修飾放出を可能とする少なくとも1種のコーティングを含む。
上記で特定されたように、同じ固形剤中で、有効成分の放出の異なる反応速度を有する少なくとも2つのタイプの微小粒子、例えば即時放出粒子及び修飾放出粒子を混合することも有利でありうる。2つのタイプ(又は数タイプ)の微小粒子(それぞれ、それに特異的である放出プロフィールに従って放出される異なる有効成分を含む)を混合することも有利でありうる。
【0038】
本発明の別の対象は、本発明に従った少なくとも1種の有効成分の経口投与のための固形剤の製造方法であり、少なくとも以下の工程から構成される:
a) 全て又は一部が少なくとも1種の有効成分で形成された微小粒子を準備する工程、
b) 工程a)の微小粒子の上に、空気流動層で、混合物として、胃腸液に溶けない少なくとも1種のポリマーAと、pH範囲5〜7に溶解pH値を有する少なくとも1種のポリマーBとを含み、ポリマーB/ポリマーA質量比が少なくとも0.25である溶液又は分散液を噴霧する工程、
c) 工程b)で得られた、有効成分で形成されたコートされた微小粒子と、マトリクスを形成できる1種以上の生理学的に許容可能な賦形剤とを混合する工程、
d) 工程c)で形成された混合物を圧縮することで塊にする工程。
【0039】
別の態様に従って、工程c)で得られたコートされた有効成分から形成される微小粒子は、工程d)に従ったそれらの変換の前に、異なるコーティング組成及び/または異なるサイズを有するほかの微小粒子と、及び/又は、純粋な有効成分の粒子と、混合されうる。
有効成分で形成された粒子は、事前に様々な技術に従って、例えば、以下のようにして得られうる:
-任意で1種以上の生理学的に許容可能な賦形剤と有効成分の押出/球形化;及び/又は、
-任意で1種以上の生理学的に許容可能な賦形剤と有効成分の湿式造粒;及び/又は、
-任意で1種以上の生理学的に許容可能な賦形剤と有効成分の圧縮;及び/又は、
-任意で1種以上の生理学的に許容可能な賦形剤と有効成分を含む水性又は有機溶媒の分散液又は溶液での担持粒子上への噴霧;及び/又は、
-任意で篩にかけられた有効成分の粉末又は結晶;
-有効成分の微小粒子は事前にコートされていても良い。
【0040】
別の態様に従って、工程b)で使用される溶液又は分散液は、溶液であり、言い換えると、ポリマーA及びBが溶質として存在する溶媒である。
有利に、それは水と有機溶媒の混合物であり、その含水量は、溶媒の混合物の全質量に対して、40質量%未満、特に30質量%未満、更に特に25質量%未満、更に特別に10質量%以下である。有機溶媒は、本分野の当業者に知られる溶媒から選択されうる。例えば、以下の溶媒:アセトン、イソプロパノール、エタノール及びそれらの混合物を挙げることができる。
有効成分で形成される微小粒子と工程c)で混合されうる賦形剤は、希釈剤、結合剤、崩壊剤、フロー剤、潤滑剤、消化管での生成の挙動(the behavior of the preparation)を修正できる化合物、着色剤及び/又は香味剤でありうる。
単純で経済的な方法で本発明の固形剤を製造することを可能にする有利な一般的な方法は、ここで取り上げられる。
本発明に従った固形剤は、有利に、圧縮により得られる。この圧縮は、従来のいずれかの方法に従って行うことができ、その実施法は、本分野の当業者の能力の範囲から明らかである。
一般的に、微小粒子が分散されるマトリクスを形成するための全ての成分は、粉末状態で混合される。更に、これらの成分は、1種以上のフィラー及び1種以上の潤滑剤を、その粉末形態に含んでも良い。
【0041】
これらの全ての成分及び粒子を混合してから、従来の方法で、得られた混合物を圧縮して予期された固形剤、特に錠剤を形成する。
このような錠剤を製造する方法は、本分野の当業者に知られているので、下に更なる詳細は記載しない。
上述したようにこれらの錠剤は、適切な場合、更なる性質又は品質をそれらに与えることを目的として、例えば成形、それらの表面、特定のコーティング(例えばフィルムコーティング)を対象とする、更なる処理を受けても良い。
下記の例及び図は、例示の目的で示され、本分野の範囲を限定することを意図しない。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】例2に従って製造された錠剤、及び、例1に従って製造された微小粒子の0.1NのHCl媒体中で得られたインビトロ放出プロフィールの比較
【図2】例2に従って製造された錠剤、及び、例1に従って製造された微小粒子のpH6.8の0.05Mリン酸カリウム媒体中で得られたインビトロ放出プロフィールの比較
【図3】0.1NのHCl媒体中で2時間置いてから、次いでpH6.8の0.05Mのリン酸カリウム媒体中に置いて得られた、例3に従って製造されたメトホルミン微小粒子のインビトロ放出プロフィール
【図4】例4に従って製造された本発明に従わないメトホルミン錠剤、及び、微小粒子の0.1NのHCl媒体中で得られたインビトロ放出プロフィールの比較
【図5】例6に従って製造されたアシクロビル錠剤、及び、例5に従って製造されたアシクロビル微小粒子の0.1NのHCl媒体中で得られたインビトロ放出プロフィールの比較
【図6】例6に従って製造されたアシクロビル錠剤、及び、例5に従って製造されたアシクロビル微小粒子のpH6.8の0.05Mのリン酸カリウム媒体中で得られたインビトロ放出プロフィールの比較
【図7】例8に従って製造されたジクロフェナク錠剤、及び、例7に従って製造されたジクロフェナク微小粒子の0.2質量%のCremophor RH 40(登録商標)含有0.1NのHCl媒体中で得られたインビトロ放出プロフィールの比較
【図8】例8に従って製造されたジクロフェナク錠剤、及び、例7に従って製造されたジクロフェナク微小粒子のpH6.8の0.05Mのリン酸カリウム媒体中で得られたインビトロ放出プロフィールの比較
【図9】例9に従って製造された錠剤のpH6.8の0.05Mのリン酸媒体中及び0.1NのHCl媒体中で得られたインビトロ放出プロフィール
【図10】メトホルミン錠剤及び微小粒子(双方とも例10に従って製造される)の酸性条件(0.1N HCl媒体)に2時間置いてから、次いで中性pH(pH 6.8媒体)に連続暴露される間に得られるインビトロ放出プロフィールの比較
【0043】
全ての図面において、特に規定がない限り、記号◆は、対象としている錠剤を表し、記号Xは、対応する微小粒子を表し、そして、%Dは、溶解割合を表す。
【実施例】
【0044】
[例1]
メトホルミン微小粒子の製造と調剤
工程1:顆粒の製造(被覆工程)
1800 gのメトホルミンを、攪拌しながら、2486 gの水を含む反応器の中に入れた。溶液を70℃に加熱した。メトホルミン結晶が溶解してから、この溶液を底噴霧の設計のGPCG1.1空気流動層で、200 gのセルローススフィア(旭化成製)に噴霧した(粒子の層の底部分に位置するノズルを介したコーティング溶液の噴霧)。
噴霧後、得られた生成物を、200 μm及び800 μmの篩でふるいにかけた。次いで、1888 gの200 μm〜800 μmの顆粒(800 μmのメッシュのふるいを通り、200 μmの篩上に残った生成物のフラクションに対応する)を回収した。
【0045】
工程2:コーティング相
工程1で得られた490 gの顆粒を、周囲温度で、GPCG 1.1 空気流動層で、105 gのメタクリル酸とエチルアクリラートの1:1コポリマー(エボニック製 Eudragit L100-55)、84 gのセルロースアセタートブチラート(イーストマン製)及び21 gのトリエチルシトラート(Morflex製)を溶解させたアセトン/水(90/10 w/w)混合物でコートした。噴霧後、コートされた微小粒子を回収した。それらの容積平均直径(算定方法「標準感度を用いた調整標準分析」(モデル:汎用の通常感度)に従ったScirocco 2000 乾式供給モジュール(dry route module)を備えたMastersizer 2000装置(Malvern Instruments)を用いるレーザー回析により測定された)は、631 μmだった。
【0046】
[例2]
例1の微小粒子を含む錠剤の製造
例1で製造された4.0 gの遅発制御放出微小粒子を、4.0 gのハイプロメロース(Methocel E5(Dow製))、4.0 gの微結晶性セルロース(Avicel PH101(FMC製))及び0.2 gのマグネシウムステアラートと混合した。この混合物を用いて、Perkin-Elmer液圧プレスを利用して800 mg 錠剤を製造した。
インビトロ溶解テスト
錠剤のインビトロ放出反応速度を、37±0.5℃でUV分光分析により、一方で900 mlの0.1N HCl媒体中で、及び、他方でpH 6.8の900 mlの0.05Mのリン酸カリウム媒体中で測定した。溶解テストは、USP タイプII攪拌機(paddle device)で行なわれた。パドル(paddle)の回転速度は、75 rpmだった。
結果を図1及び2に夫々示す。夫々図1及び2はまた、比較の目的で、遊離形の微小粒子の、すなわち例1から得られた微小粒子に従った、放出プロフィールも表している。
錠剤及び遊離形の微小粒子の放出プロフィールは、夫々試験された溶解媒体で同様であることが分かった。
【0047】
[例3]
メトホルミン結晶のコーティング
コーティング相
300 μm〜800 μmでふるいをかけられた420 gのメトホルミン結晶を、165 gのメタクリル酸とエチルアクリラート(Eudragit L100 55(Evonik製))との1:1コポリマー、132 gのセルロースアセタートブチラート(Eastman製)及び33 gのトリエチルシトラート(Morflex製)を溶解させたアセトン/水(90/10 w/w)混合物を用いて、GPCG1.1 空気流動層で、周囲温度でコートした。噴霧が終わってから、予期される微小粒子を回収した。それらの容積平均直径(算定方法「標準感度を用いた調整標準分析」(モデル:汎用の通常感度)に従ったScirocco 2000 乾式供給モジュール(dry route module)を備えたMastersizer 2000装置(Malvern Instruments)を用いるレーザー回析により測定された)は、495 μmだった。
【0048】
連続暴露条件下での溶解プロフィール
上述のように製造された微小粒子のインビトロ反応速度を、37±0.5℃でUV分光分析により、0.1N HCl媒体中で2時間置いて、次いで、pHを調整してから、pH 6.8の0.05Mのリン酸カリウム媒体中に置いて測定した。溶解テストは、900 mlの溶媒中で、USP タイプII攪拌機で行なわれた。パドルの回転速度は、75 rpmだった。
溶解プロフィールは、図3に示される。
【0049】
[例4]
本発明に従わない錠剤中の微小粒子の製造と調剤
相1:顆粒の製造(被覆工程)
1746 gのメトホルミンと54 gのポビドン(Plasdone K29/32(ISP製))を、攪拌しながら、2486 gの水を含む反応器の中に入れた。この溶液を74℃に加熱した。メトホルミン結晶とポビドンが溶解してから、この溶液を底噴霧の設計のGPCG1.1空気流動層で、450 gのセルローススフィア(旭化成製)に噴霧した。2224 gのメトホルミン顆粒を得た。
相2:コーティング相
上記のように製造された455 gの顆粒を、GPCG 1.1 空気流動層で、117 gのメタクリル酸とエチルアクリラートの1:1コポリマー(エボニック製 Eudragit L100-55)及び78 gの水素化綿実油(Lubritab(登録商標)JRS Pharma製)を溶解させた1305 gのイソプロパノールにて、78℃でコートした。噴霧後、生成物を55℃で2時間置いた。638 gの微小粒子を回収した。
【0050】
錠剤の製造
上記のように製造された4.0 gの微小粒子を、3.0 gのハイプロメロース(Methocel E5 (Dow製))、3.0 gの微結晶性セルロース(Avicel PH101(FMC製))、2.0 gのマンニトール(Pearlitol SD 200 (Roquette製))及び0.2 gのマグネシウムステアラートと混合した。この混合物を使用してPerkin Elmer液圧プレスを利用して800 mgの錠剤を製造した。
インビトロ溶解テスト
上記のように製造されたメトホルミン微小粒子及び錠剤のインビトロ放出反応速度を、37±0.5℃でUV分光分析により、900 mlの0.1N HCl媒体中で測定した。溶解テストは、USP タイプII攪拌機で行なわれた。パドルの回転速度は、75 rpmだった。
溶解プロフィールは、図4に示される。錠剤及び遊離形の微小粒子の放出プロフィールは異なっていることが分かった。錠剤の放出プロフィールは、微小粒子の放出プロフィールに一致しなかった。それはより早く、制御が欠如したことを反映していた。
【0051】
[例5]
アシクロビル微小粒子の製造
相1:顆粒の製造(被覆工程)
810 gのアシクロビル及び90 gのポビドン(Plasdone K29/32 (ISP製))を、攪拌しながら、2100 gの水を含む反応器の中に入れた。アシクロビル結晶とポビドンが溶解してから、この溶液を底噴霧の設計のGPCG1.1空気流動層で、600 gのセルローススフィア(旭化成製)に噴霧した。コーティング後、その生成物を、200 μm及び800 μmの篩でふるいにかけた。200 μm〜800 μmのアシクロビル顆粒(800 μmのメッシュのふるいを通り、200 μmの篩上に残った生成物のフラクションに対応する)を回収した。
相2:コーティング相
上記のように製造された350 gの顆粒を、周囲温度で、GPCG 1.1 空気流動層で、45 gのメタクリル酸とエチルアクリラートの1:1コポリマー(エボニック製 Eudragit L100-55)、90 gのアンモニオ(メタ)クリラートタイプAコポリマー(Eudragit RL100(Evonik製))及び15 gのジブチルフタラート(Merck製)を溶解させたアセトン/水(90/10 w/w)混合物でコートした。噴霧が終わってから、微小粒子を回収した。コートされたアシクロビル微小粒子の容積平均直径(算定方法「標準感度を用いた調整標準分析」(モデル:汎用の通常感度)に従ったScirocco 2000 乾式供給モジュール(dry route module)を備えたMastersizer 2000装置(Malvern Instruments)を用いるレーザー回析により測定された)は、412 μmだった。
【0052】
[例6]
0.1NのHCl中及びpH6.8でのアシクロビル微小粒子を含む錠剤の溶解
例5で製造された2.0 gの遅発制御放出微小粒子を、1.0 gのハイプロメロース (Methocel E5(Dow製))、2.0 gの微結晶性セルロース(Avicel PH101(FMC製))、1.0 gのマンニトール(Pearlitol SD200(Roquette製))及び0.1 gのマグネシウムステアラートと混合した。この混合物を質量800mgの錠剤の製造に使用した。
錠剤のインビトロ放出反応速度を、37±0.5℃でUV分光分析により、一方で900 mlの0.1N HCl媒体中で、及び、他方でpH 6.8の900 mlの0.05Mのリン酸カリウム中で測定した。溶解テストは、USPタイプII攪拌機で行なわれた。パドルの回転速度は75 rpmだった。
この錠剤の溶解プロフィールを、図5及び図6で、例5で製造されたアシクロビル微小粒子の溶解プロフィールと対比した。
錠剤及び遊離形の微小粒子の放出プロフィールは、試験される夫々の溶解媒体と同じだった。
【0053】
[例7]
ジクロロフェナック微小粒子の製造
相1:顆粒の製造(被覆工程)
100 gのジクロフェナク ナトリウム及び400 gのポビドン(Plasdone K29/32(ISP製))を、攪拌しながら、1674 gの水に入れた。溶液を70℃に加熱した。成分を完全に溶解させてから、この溶液を底噴霧の設計のGPCG1.1空気流動層で、600 gのセルローススフィア(旭化成製)に噴霧した。得られた顆粒を、200 μm及び500 μmの篩でふるいにかけた。200μm〜500μmの範囲のジクロフェナク顆粒を得た。
【0054】
工程2:コーティング相
上記のように製造された420 gの顆粒を、周囲温度で、GPCG 1.1 空気流動層で、108 gのメタクリル酸とエチルアクリラートの1:1コポリマー(エボニック製 Eudragit L100-55)、54 gのアンモニオ(メタ)クリラートタイプBコポリマー(Eudragit RS100(Evonik製))及び18 gのトリエチルシトラート(Morflex製)を溶解させたアセトン/水(95/5 w/w)混合物を含む溶液でコートした。噴霧後、生成物を630 μmでふるいにかけた。従って得られた微小粒子は、411 μmの容積平均直径(算定方法「標準感度を用いた調整標準分析」(モデル:汎用の通常感度)に従ったScirocco 2000 乾式供給モジュール(dry route module)を備えたMastersizer 2000装置(Malvern Instruments)を用いるレーザー回析により測定された)を有していた。
【0055】
[例8]
ジクロフェナク微小粒子含有錠剤の溶解
例7で製造された112.5 gの遅発制御微小粒子を、157.8 gの微結晶性セルロース(Avicel PH101(FMC製))、28.2 gのマンニトール(Pearlitol SD200(Roquette製))及び1.5 gのマグネシウムステアラートと混合した。この混合物を、XP1プレス(Korsch製)を利用して、12 mmの直径の700 mgの円形の錠剤を製造するために用いた。混合物に適用される圧縮力は、15 kNだった。従って、製造された錠剤は、おおよそ98 Nの硬度を有した。
上記錠剤のインビトロ放出反応速度を、37±0.5℃でUV分光分析により、一方で900 mlの0.1N HCl媒体(0.2質量%のCremophor RH 40を含む)中で、他方でpH 6.8の900 mlの0.05Mのリン酸カリウム媒体中で測定した。溶解テストは、USP タイプII攪拌機で行なわれた。パドルの回転速度は、75 rpmだった。
この錠剤の溶解プロフィールを、図7及び図8で、例7で製造されたジクロフェナク微小粒子の溶解プロフィールと対比した。
錠剤及び遊離形の微小粒子の放出プロフィールは、試験される夫々の溶解媒体と同じだった。
【0056】
[例9]
例1のコートされていない顆粒及び微小粒子を含む錠剤の製造
例1で製造された1.0 gのコートされていない顆粒、及び、例1で製造された3.0 gの遅発制御放出微小粒子を、5.0 gの微結晶性セルロース(Avicel PH101(FMC製))、0.9 gのマンニトール(Pearlitol SD 100(Roquette製))及び0.1 gのマグネシウムステアラートと混合した。この混合物を用いて、Perkin Elmer液圧プレスを利用して800mgの錠剤を製造した。
インビトロ溶解テスト
錠剤のインビトロ放出反応速度を、37±0.5℃でUV分光分析により、一方で900 mlの0.1N HCl媒体中(印◆)で、及び、他方でpH 6.8の900 mlの0.05Mのリン酸カリウム中(印X)で測定した。溶解テストは、USP タイプII攪拌機で行なわれた。パドルの回転速度は、75 rpmだった。
結果を図9に表す。
0.1NのHCl媒体中で、即時放出される有効成分のフラクションは、錠剤の製造に用いられるコートされていない顆粒に存在する活性成分のフラクションに対応した。
【0057】
[例10]
メトホルミン微小粒子及び錠剤の製造
コーティング相
例1の工程1で420 gの顆粒を、周囲温度で、GPCG 1.1 空気流動層で、37 gのメタクリル酸とエチルアクリラートのコポリマー(エボニック製 Eudragit L100-55)、29.6 gのエチルセルロース(Ethocel 20 Premium (Dow製))及び7.4 gのトリエチルシトラート(Morflex製)を溶解させたアセトン/水(90/10 w/w)混合物でコートした。噴霧後、コートされた微小粒子を回収した。それらの容積平均直径(算定方法「標準感度を用いた調整標準分析」(モデル:汎用の通常感度)に従ったScirocco 2000 乾式供給モジュール(dry route module)を備えたMastersizer 2000装置(Malvern Instruments)を用いるレーザー回析により測定された)は、640μmだった。
【0058】
錠剤の製造
前の工程で製造された2.0 gの遅発制御放出微小粒子を、2.0 gのハイプロメロース(Methocel E5 (Colorcon製))、3.0 gの微結晶性セルロース(Avicel PH101(FMC製))、3.0 gのマンニトール(Pearlitol SD 200(Roquette製))及び0.2 gのマグネシウムステアラートと混合した。この混合物を、Perkin-Elmer液圧プレスを利用して800 mgの錠剤を製造するために用いた。
コメント:上述のように製造された微小粒子含有錠剤は、また、37 gのEudragit L100-55を、14.8 gのEudragit L100-55及び22.2 gのEudragit S100の混合物と置き換えて同様に得ることもできる。
連続暴露条件下での溶解プロフィール
上記で製造された錠剤及び微小粒子のインビトロ溶解プロフィールを、37±0.5℃でUV分光分析により、900 mlの0.1N HCl媒体中に2時間置いて、次いで、媒体のpHと塩分濃度を調整した後に、pH 6.8の0.05Mのリン酸カリウム中に置いて測定した。
溶解テストは、USP タイプII攪拌機で行なわれた。パドルの回転速度は、75 rpmだった。
微小粒子及び錠剤の得られた溶解プロフィールは、図10で比較した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1種の有効成分の経口投与用で、かつ、第一段階が時間で調節され、第二段階がpHで調節される有効成分の二段階の放出メカニズムを保証できる、固形剤であって、
有効成分は、微小粒子系の形態でその中に存在し、
前記系の微小粒子は、全て又は一部が有効成分で形成されるコアであって、有効成分の放出プロフィールを調節し、少なくとも下記のもので構成される材料で形成される少なくとも1つの層でコートされるコアを有する、固形剤:
-コーティングの全質量に対して25〜75質量%の、胃腸液に溶けない少なくとも1種のポリマーA、
-コーティングの全質量に対して25〜75質量%の、pH範囲5〜7に含まれる溶解pH値を有する少なくとも1種のポリマーB、及び
-コーティングの全質量に対して0〜25質量%の、少なくとも1種の可塑剤
(ここで、ポリマーA及びBは、少なくとも0.25のポリマーB/ポリマーAの質量比で存在する)。
【請求項2】
3相-修飾放出プロフィールを有する、請求項1に記載の固形剤。
【請求項3】
微小粒子を内部に分散したマトリックス形態で提供される、請求項1又は2に記載の固形剤。
【請求項4】
錠剤である、請求項1、2、又は3に記載の固形剤。
【請求項5】
ポリマーAが、
エチルセルロース、セルロースアセタートブチラート、セルロースアセタート、タイプ「A」又はタイプ「B」のアンモニオ(メタ)アクリラートコポリマー、ポリ(メタ)アクリル酸のエステル、及びそれらのブレンドから選択される、請求項1〜4のいずれかに記載の固形剤。
【請求項6】
微小粒子のコーティングが、その全質量に対して、25〜60質量%、特に25〜55質量%、更に特に30〜50質量%のポリマーAを含む、請求項1〜5のいずれかに記載の固形剤。
【請求項7】
ポリマーBが、
メタクリル酸及びメチルメタクリラートのコポリマー、メタクリル酸及びエチルアクリラートのコポリマー、セルロース誘導体、例えば、セルロースアセタートフタラート、セルロースアセタートスクシナート、セルロースアセタートトリメリタート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタラート及びヒドロキシプロピルメチルセルロースアセタートスクシナート、シェラック、ポリビニルアセタートフタラート、並びに、それらのブレンドから選択される、請求項1〜6のいずれかに記載の固形剤。
【請求項8】
微小粒子のコーティングが、その全質量に対して、30〜75質量%、特に35〜70質量%、更に特に40〜60質量%のポリマーBを含む、請求項1〜7のいずれかに記載の固形剤。
【請求項9】
微小粒子のコーティングが、
少なくとも、
エチルセルロース、セルロースアセタートブチラート、及び、タイプ「A」又は「B」のアンモニオ(メタ)アクリラートコポリマーの混合物と、
少なくとも1種のメタクリル酸とエチルアクリラートのコポリマー、又は、メタクリル酸とメチルメタクリラートのコポリマー、又はそれらのブレンドと
で形成される、請求項1〜8のいずれかに記載の固形剤。
【請求項10】
コーティングが、0.3以上の、特に0.4以上の、更に特に0.5以上の、特に有利には0.75以上の、ポリマーB/ポリマーA質量比で、ポリマーA及びBを含む、請求項1〜9のいずれかに記載の固形剤。
【請求項11】
微小粒子のコーティングが、少なくとも1種の可塑剤を更に含む、請求項1〜10のいずれかに記載の固形剤。
【請求項12】
微小粒子のコーティングが、その全質量に対して、25質量%未満、特に1〜20質量%、より好ましくは5〜20質量%の可塑剤を含む、請求項1〜11のいずれかに記載の固形剤。
【請求項13】
微小粒子のコーティングが、材料の単層から構成される、請求項1〜12のいずれかに記載の固形剤。
【請求項14】
微小粒子の表面に位置するコーティングが、
微小粒子の全質量に対して、
3〜85質量%、特に5〜60質量%、特に10〜50質量%、更に特に10〜40質量%、より特別には20〜40質量%の範囲で可変であるコーティングである、請求項1〜13のいずれかに記載の固形剤。
【請求項15】
微小粒子の表面に位置するコーティングが、空気流動層で、有効成分の粒子の上に、溶質状態で、少なくともポリマーA及びBを含む溶液を、噴霧することで得られる、請求項1〜14のいずれかに記載の固形剤。
【請求項16】
微小粒子の平均直径は、2000μm以下であり、特に1000μm以下であり、特に800μm未満であり、特に600μm未満であり、更に特に500μm未満である、請求項1〜15のいずれかに記載の固形剤。
【請求項17】
有効成分が、
麻酔薬、鎮痛薬、抗喘息薬、アレルギー治療薬、抗癌剤、抗炎症薬、抗凝固薬及び抗血栓薬、抗痙攣薬、抗癲癇薬、抗糖尿病薬、制吐薬、抗緑内障薬、抗ヒスタミン薬、抗感染症薬、特に抗生物質、抗真菌剤、抗ウイルス剤、抗パーキンソン病薬、抗コリン作用薬、鎮咳薬、炭酸脱水酵素阻害剤、心臓血管薬、特に脂質低下薬、抗不整脈薬、血管拡張薬、抗狭心症薬、高血圧治療薬、血管保護剤及びコリンエステラーゼ阻害剤、中枢神経系疾患治療薬、中枢神経系刺激薬、避妊薬、妊娠促進薬、ドーパミン受容体アゴニスト、子宮内膜症治療薬、胃腸疾患治療薬、免疫調節剤及び免疫抑制剤、記憶障害治療薬、抗片頭痛薬、筋弛緩薬、ヌクレオシドアナローグ、骨粗鬆症治療薬、副交感神経作動薬、プロスタグランジン、精神治療薬、例えば鎮静薬、睡眠薬、精神安定剤、神経弛緩薬、抗不安薬、精神刺激薬及び抗うつ薬、皮膚科治療薬、ステロイド及びホルモン、アンフェタミン類、食欲減退薬、非麻酔鎮痛剤(nonanalgesic painkiller)、バルビツレート類、ベンゾジアゼピン類、緩下薬又は向精神薬から選択される、請求項1〜16のいずれかに記載の固形剤。
【請求項18】
別個の放出プロフィールで互いに異なる少なくとも2つのタイプの微小粒子を含む、請求項1〜17のいずれかに記載の固形剤。
【請求項19】
少なくとも2つのタイプの微小粒子を含み、
前記タイプは、互いに、少なくとも、それらが含む有効成分の性質、及び/又は、それらのコーティングの組成、及び/又は、それらのコーティングの厚みで異なる、請求項1〜18のいずれかに記載された固形剤。
【請求項20】
請求項1〜19のいずれかに記載の少なくとも1種の有効成分の経口投与用の固形剤の製造方法であって、少なくとも以下の工程を含む、方法:
a) 全て又は一部が少なくとも1種の有効成分で形成された微小粒子を準備する工程、
b) 工程a)の微小粒子の上に、空気流動層で、混合物として、胃腸液に溶けない少なくとも1種のポリマーAと、pH範囲5〜7に溶解pH値を有する少なくとも1種のポリマーBとを含み、ポリマーB/ポリマーA質量比が少なくとも0.25である溶液又は分散液を噴霧する工程、
c) 工程b)で得られた、有効成分で形成されたコートされた微小粒子と、マトリクスを形成できる1種以上の生理学的に許容される賦形剤とを混合する工程、
d) 工程c)で形成された混合物を圧縮することで塊にする工程。
【請求項21】
ポリマーA及びBが、請求項5〜10で定義されるものである、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
工程b)で得られた微小粒子が、請求項11〜16で定義されるものである、請求項20又は21に記載の方法。
【請求項23】
全て又は一部が少なくとも1種の有効成分で形成されたコアを有する、微小粒子であって、
コアは、第一段階が時間で調節され、第二段階がpHで調節される、有効成分の二段階の放出メカニズムを調節する少なくとも1種の層でコーティングされ、
層は少なくとも以下のものから構成される材料で形成される微小粒子:
-コーティングの全質量に対して、25〜75質量%、特に25〜60質量%、より好ましくは25〜55質量%、より特別には30〜50質量%の少なくとも1種のポリマーA(ここで、ポリマーAは、胃腸液に溶けずに、エチルセルロース、セルロースアセタートブチラート、タイプ「A」又はタイプ「B」のアンモニオ(メタ)アクリラートコポリマー、ポリ(メタ)アクリル酸のエステル、及びそれらのブレンドから選択される)、及び
-コーティングの全質量に対して、25〜75質量%、特に30〜75質量%、特に35〜70質量%、更に特に40〜60質量%の少なくとも1種のポリマーB(ここで、ポリマーBは、5〜7で変動するpH範囲に含まれる溶解pH値を有し、メタクリル酸及びメチルメタクリラートのコポリマー、メタクリル酸及びエチルアクリラートのコポリマー、及びそれらのブレンドから選択される)。
【請求項24】
請求項1〜23に記載の微小粒子であって、それのコーティングが、以下の組から選択される少なくとも1種のポリマーB/ポリマーA組からなる微小粒子:
-メタクリル酸とエチルアクリラート/エチルセルロースとの1:1コポリマー、
-メタクリル酸とメチルメタクリラート/エチルセルロースの1:2コポリマー、
-メタクリル酸とエチルアクリラートの1:1コポリマー、及び、メタクリル酸とメチルメタクリラート/エチルセルロースの1:2コポリマーのブレンド、
-メタクリル酸とエチルアクリラート/セルロースアセタートブチラートの1:1コポリマー
-メタクリル酸とメチルメタクリラート/セルロースアセタートブチラートの1:2コポリマー、
-メタクリル酸とエチルアクリラートの1:1コポリマー、及び、メタクリル酸とメチルメタクリラート/セルロースアセタートブチラートの1:2コポリマーのブレンド、
-メタクリル酸とエチルアクリラート/タイプ「A」又はタイプ「B」のアンモニオ(メタ)アクリラートコポリマーの1:1コポリマー、
-メタクリル酸とメチルメタクリラート/タイプ「A」又はタイプ「B」のアンモニオ(メタ)アクリラートコポリマーの1:2コポリマー、
-メタクリル酸とエチルアクリラートの1:1コポリマー、及び、メタクリル酸とタイプ「A」又はタイプ「B」のメチルメタクリラート/アンモニオ(メタ)アクリラートコポリマーの1:2コポリマーのブレンド。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公表番号】特表2011−518139(P2011−518139A)
【公表日】平成23年6月23日(2011.6.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−504516(P2011−504516)
【出願日】平成21年4月17日(2009.4.17)
【国際出願番号】PCT/FR2009/050719
【国際公開番号】WO2009/138642
【国際公開日】平成21年11月19日(2009.11.19)
【出願人】(511025765)フラメル テクノロジーズ (6)
【Fターム(参考)】