多系統冷却システム
【課題】 大型部品の点数削減を図り、システム全体のコストダウン及び小型化を実現するとともに、冷却条件を考慮した冷却原理の最適化を図り、消費電力の削減、更には省エネルギ性の向上に寄与する。
【解決手段】 冷却水タンク2の内部に、断熱仕切壁4により仕切り、かつ上方を開放した複数の小タンク部2m,2s…を設け、各小タンク部2m,2s…と各被冷却部Rm,Rs…をそれぞれ接続して複数の冷却系統3m,3s…を構成するとともに、他の冷却系統3s…の設定温度Tss…よりも低い設定温度Tmsを設定し、かつ冷却部5により冷却を行う一つの冷却系統(主冷却系統)3mと、冷却部5により冷却された主冷却系統3mの冷却水Wから分岐した一部の冷却水Wp…が各小タンク部2s…に供給されることにより冷却を行う他の冷却系統(副冷却系統)3s…とを設ける。
【解決手段】 冷却水タンク2の内部に、断熱仕切壁4により仕切り、かつ上方を開放した複数の小タンク部2m,2s…を設け、各小タンク部2m,2s…と各被冷却部Rm,Rs…をそれぞれ接続して複数の冷却系統3m,3s…を構成するとともに、他の冷却系統3s…の設定温度Tss…よりも低い設定温度Tmsを設定し、かつ冷却部5により冷却を行う一つの冷却系統(主冷却系統)3mと、冷却部5により冷却された主冷却系統3mの冷却水Wから分岐した一部の冷却水Wp…が各小タンク部2s…に供給されることにより冷却を行う他の冷却系統(副冷却系統)3s…とを設ける。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷却水タンクから複数の被冷却部にそれぞれ異なる温度に冷却した冷却水を供給して冷却を行う複数の冷却系統を備える多系統冷却システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、冷却水が収容された冷却水タンクからレーザ加工機等の被冷却機器に冷却水を供給する冷却装置であって、特に、二つの独立した冷却系統を備える多系統冷却装置は知られており、例えば、特許文献1には、2系統の循環水経路を備えたレーザ加工機用冷却装置が開示されている。
【0003】
同文献1に開示されるレーザ加工機用冷却装置は、循環ポンプをその経路中に備え、レーザ加工機を構成する機器のうち、発熱量の大きいものを冷却する第1の循環水経路と、循環ポンプより能力の低い循環ポンプをその経路中に備え、第1の循環水経路により冷却するものの発熱量よりも小さい発熱量の機器を冷却する第2循環水経路と、からなる2系統の循環水経路を備えたレーザ加工機用冷却装置であって、第1の循環水経路と第2循環水経路とを繋ぐバイパス経路を備え、第1の循環水経路中の循環ポンプによる循環によって、第2の循環水経路中に残留しているガスを除去するようにした構成を備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10−335720号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上述した従来(特許文献1)のレーザ加工機用冷却装置をはじめ、多系統の給水系統を備える冷却装置は、次のような問題点があった。
【0006】
第一に、レーザ加工機等の特定の被冷却機器における複数の被冷却部を冷却する際には、流量等の給水条件をはじめ、異なる温度の冷却水が要求される場合がある。この場合、設定温度が異なるため、相互に干渉しない独立した温度制御を行う複数の異なる給水系統が必要となる。即ち、基本的には、冷却手段となる冷却装置が複数台分必要となるため、部品点数が大幅に増加し、これに伴うコストアップ及び大型化を招く。
【0007】
第二に、各給水系統における設定温度の差が大きい場合には、各給水系統の独立性を確保し、相互の干渉を排除することが、熱損失を低減して、より効率的動作の観点からも望ましいが、設定温度の差が小さい場合には、むしろ相互の干渉を有効に利用することも考えられる。しかし、従来の冷却装置は、被冷却部の要求する冷却条件を考慮した冷却原理の最適化の観点からは必ずしも十分であるとは言えず、消費電力の無用な増加、更には省エネルギ性の低下を招きやすい。
【0008】
本発明は、このような背景技術に存在する課題を解決した多系統冷却システムの提供を目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、上述した課題を解決するため、冷却水Wが収容された冷却水タンク2から複数の被冷却部Rm,Rs…にそれぞれ異なる温度に冷却した冷却水W…を供給して冷却を行う複数の冷却系統を備える多系統冷却システム1を構成するに際して、冷却水タンク2の内部に、断熱仕切壁4により仕切り、かつ上方を開放した複数の小タンク部2m,2s…を設け、各小タンク部2m,2s…と各被冷却部Rm,Rs…をそれぞれ接続して複数の冷却系統3m,3s…を構成するとともに、他の冷却系統3s…の設定温度Tss…よりも低い設定温度Tmsを設定し、かつ冷却部5により冷却を行う一つの冷却系統(主冷却系統)3mと、冷却部5により冷却された主冷却系統3mの冷却水Wから分岐した一部の冷却水Wp…が各小タンク部2s…に供給されることにより冷却を行う他の冷却系統(副冷却系統)3s…とを設けたことを特徴とする。
【0010】
この場合、発明の好適な態様により、冷却系統3m,3s…は、被冷却部Rm,Rs…を冷却した後の冷却水W…を小タンク部2m,2s…に戻す循環系により構成することができる。なお、冷却系統3m,3s…における最大の設定温度Tssと最低の設定温度Tmsの差は、15〔℃〕以下に選定することが望ましい。一方、断熱仕切壁4は、一枚の仕切壁材4sにより,又は隙間Sを介して配した二枚以上の仕切壁材4p,4q…の組合わせにより構成することができる。この際、断熱仕切壁4は、二枚以上を組合わせた各仕切壁材4p,4qの角度を異ならせることにより少なくとも上側と下側の断熱性能を異ならせるとともに、副冷却系統3sにおける小タンク部2sに冷却水Wp,Wを供給する配管Lmr,Lsrの少なくとも接続高さを当該断熱性能に対応して選定することができる。なお、断熱仕切壁4は、二枚以上の仕切壁材4p…を組合わせた際の隙間Sに断熱部材6を収容して構成することもできる。さらに、断熱仕切壁4には、下端辺の所定位置に切欠部を形成することにより一又は二以上の通水孔部4qx,4px,4py,4qyを設けることができるとともに、副冷却系統3sにおける小タンク部2sに対して、複数の位置から流入する各冷却水W,Wpが内部で撹拌されるように、当該複数の位置における配管Lmr,Lsrの接続位置及び/又は接続高さを選定することができる。
【0011】
また、主冷却系統3mは、被冷却部Rmに供給する冷却水Wの温度(検出温度)Tmdを検出し、検出温度Tmdが設定温度Tmsになるように、冷却部5の冷却能力をフィードバック制御することができる。一方、副冷却系統3sには、冷却部5により冷却された主冷却系統3mの冷却水Wから分岐した一部の冷却水Wpの流量を調整する流量調整回路(第一流量調整回路)M1,M1eを設けることができる。他方、主冷却系統3mに接続した被冷却部Rmから小タンク部2mに戻る冷却水Wから分岐した一部の冷却水Wを副冷却系統3sにおける小タンク部2sに供給するとともに、当該一部の冷却水Wの流量を調整する第二流量調整回路M2を設けることができる。この際、副冷却系統3sは、被冷却部Rsに供給する冷却水Wの温度(検出温度)Tsdを検出し、検出温度Tsdが設定温度Tssになるように、第一流量調整回路M1,M1e及び/又は第二流量調整回路M2をフィードバック制御することができる。
【発明の効果】
【0012】
このような構成を有する本発明に係る多系統冷却システム1によれば、次のような顕著な効果を奏する。
【0013】
(1) 冷却水タンク2の内部に、断熱仕切壁4により仕切り、かつ上方を開放した複数の小タンク部2m,2s…を設けるとともに、他の冷却系統3s…の設定温度Tss…よりも低い設定温度Tmsを設定し、かつ冷却部5により冷却を行う一つの主冷却系統3mと、冷却部5により冷却された主冷却系統3mの冷却水Wから分岐した一部の冷却水Wp…が各小タンク部2s…に供給されることにより冷却を行う他の副冷却系統3s…とを設けたため、複数の冷却系統を設ける場合であっても、少なくとも冷却水タンク2と冷却部5はそれぞれ一つで足りる。したがって、特に大型部品の点数削減を図ることができ、システム全体のコストダウン及び小型化を実現できる。
【0014】
(2) 主冷却系統3mの低い温度の冷却水Wを各副冷却系統3s…に供給して相対的な温度差を作り出すようにしているため、副冷却系統3s…は冷却部を含まない受動的な温度制御系を構成すれば足りる。したがって、被冷却部Rm,Rs…の要求する冷却条件を考慮した冷却原理の最適化を図ることができ、消費電力の削減、更には省エネルギ性の向上に寄与できる。
【0015】
(3) 好適な態様により、冷却系統3m,3s…における最大の設定温度Tssと最低の設定温度Tmsの差を15〔℃〕以下に選定すれば、本発明に係る多系統冷却システム1に基づく有効な作用効果を確実に享受できる。
【0016】
(4) 好適な態様により、断熱仕切壁4を、一枚の仕切壁材4sにより,又は隙間Sを介して配した二枚以上の仕切壁材4p…の組合わせにより構成すれば、冷却水タンク2内における各小タンク部2m,2s…の相互間における熱損失防止(断熱性向上)を図れるとともに、特に、隙間S…を介して配した二枚以上の仕切壁材4p…の組合わせにより構成すれば、簡易な構成により容易に断熱性を高めることができる。
【0017】
(5) 好適な態様により、断熱仕切壁4を構成するに際し、二枚以上を組合わせた各仕切壁材4p,4qの角度を異ならせることにより少なくとも上側と下側の断熱性能を異ならせるとともに、副冷却系統3sにおける小タンク部2sに冷却水Wp,Wを供給する配管Lmr,Lsrの少なくとも接続高さを当該断熱性能に対応して選定するようにすれば、冷却水Wp,Wの条件及び状態等に対応して最適な接続高さを選定できるため、熱損失等を最小限に抑えることができる。
【0018】
(6) 好適な態様により、二枚以上の仕切壁材4p…を組合わせた際の隙間Sに断熱部材6を収容して構成すれば、各小タンク部2m,2s…の容積を犠牲にすることなく断熱性をより高めることができる。この場合、断熱部材6を収容しなくても十分に断熱効果があり、断熱性能を確保できるが、冷却水タンク2が小さく、仕切壁材4p…間を広くできない場合等においては、必要により断熱部材6を用いることができる。
【0019】
(7) 好適な態様により、断熱仕切壁4に、下端辺の所定位置に切欠部を形成することにより一又は二以上の通水孔部4qx,4px,4py,4qyを設ければ、小タンク部2s側に別途設けるドレン部が不要となり、構成の単純化及びコストダウンに寄与できる。
【0020】
(8) 好適な態様により、副冷却系統3sにおける小タンク部2sに対して、複数の位置から流入する冷却水W,Wpが内部で撹拌されるように、当該複数の位置における配管Lmr,Lsrの接続位置及び/又は接続高さを選定すれば、冷却水W温度の均等化及び安定化に寄与できる。
【0021】
(9) 好適な態様により、主冷却系統3mにおいて、被冷却部Rmに供給する冷却水Wの温度(検出温度)Tmdを検出し、検出温度Tmdが設定温度Tmsになるように、冷却部5の冷却能力をフィードバック制御するようにすれば、主冷却系統3mは、いわば一般的な汎用性の高い冷却装置として構成可能となり、システム1全体の低コスト化及び小型化に寄与できるとともに、高い安定性及び信頼性を確保できる。
【0022】
(10) 好適な態様により、副冷却系統3sに、冷却部5により冷却された主冷却系統3mの冷却水Wから分岐した一部の冷却水Wpの流量を調整する第一流量調整回路M1,M1eを設ければ、冷却水Wpの流量を可変調整することにより、小タンク部2sの冷却水Wに対する温度制御を容易に行うことができる。
【0023】
(11) 好適な態様により、主冷却系統3mに接続した被冷却部Rmから小タンク部2mに戻る冷却水Wから分岐した一部の冷却水Wを副冷却系統3sにおける小タンク部2sに供給するとともに、当該一部の冷却水Wの流量を調整する第二流量調整回路M2を設ければ、当該一部の冷却水Wの流量を可変調整することにより、小タンク部2sの冷却水Wに対する昇温時の温度制御を容易に行うことができる。
【0024】
(12) 好適な態様により、副冷却系統3sにおいて、被冷却部Rsに供給する冷却水Wの温度(検出温度)Tsdを検出し、検出温度Tsdが設定温度Tssになるように、第一流量調整回路M1,M1e及び/又は第二流量調整回路M2をフィードバック制御するようにすれば、降温時の温度制御及び/又は昇温時の温度制御が可能になるため、冷却水Wの温度に対する制御応答性、更には制御性をより高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の好適実施形態に係る多系統冷却システムの原理的構成図、
【図2】同多系統冷却システムに用いる冷却水タンクの一部を破断した平面図、
【図3】同冷却水タンクに設けた断熱仕切壁の構成部品の部分斜視図、
【図4】同多系統冷却システムの具体的な回路構成図、
【図5】本発明の変更実施形態に係る多系統冷却システムの原理的系統図、
【図6】本発明の他の変更実施形態に係る多系統冷却システムに用いる各種冷却水タンクの断面側面図、
【図7】本発明の他の変更実施形態に係る多系統冷却システムに用いる一部配管を含む冷却水タンクの断面側面図、
【図8】本発明の他の変更実施形態に係る多系統冷却システムに用いる一部配管を含む冷却水タンクの断面側面図、
【図9】本発明の他の変更実施形態に係る多系統冷却システムに用いる一部配管を含む冷却水タンクの断面側面図、
【図10】本発明の他の変更実施形態に係る多系統冷却システムに用いる冷却水タンクの断面側面図、
【図11】同冷却水タンクの断面平面図、
【図12】本発明の他の変更実施形態に係る多系統冷却システムの一部を示す具体的な回路構成図、
【図13】本発明の他の変更実施形態に係る多系統冷却システムの一部を示す具体的な回路構成図、
【発明を実施するための形態】
【0026】
次に、本発明に係る好適実施形態を挙げ、図面に基づき詳細に説明する。
【0027】
まず、本実施形態に係る多系統冷却システム1の構成について、図1〜図4を参照して具体的に説明する。
【0028】
最初に、多系統冷却システム1の原理的構成について、図1を参照して説明する。多系統冷却システム1は、基本的に、冷却水Wが収容された冷却水タンク2から二つの被冷却部Rm,Rsにそれぞれ異なる温度に冷却した冷却水W…を供給して冷却を行う二つの冷却系統3m,3sを備えて構成する。
【0029】
二つの被冷却部Rm,Rsは一台の被冷却機器Rの内部に備えている。例示の場合、一方の被冷却部Rmの冷却を行う冷却水Wに対する要求温度は+21〔℃〕、他方の被冷却部Rsの冷却を行う冷却水Wに対する要求温度は+26〔℃〕である。したがって、被冷却機器Rには、一方の被冷却部Rmに対して冷却水Wが供給される冷却水入口及び被冷却部Rmにより熱交換された使用後の冷却水Wが排出される冷却水出口とを有するとともに、他方の被冷却部Rsに対して冷却水Wが供給される冷却水入口及び被冷却部Rsにより熱交換された使用後の冷却水Wが排出される冷却水出口とを有する。
【0030】
一方、多系統冷却システム1は、単一の冷却水タンク2を備える。この冷却水タンク2は、上端を開放し、全体を直方体形に形成する。なお、冷却水タンク2には、上端に着脱する蓋体2C(図4)が付属する。また、冷却水タンク2の内部には、断熱仕切壁4を設ける。この断熱仕切壁4は、冷却水タンク2の内部空間を仕切り、上方が開放される二つの小タンク部2m,2sを形成する。この断熱仕切壁4は、図1〜図3に示すように、隙間Sを介して配する二枚の仕切壁材4p,4qの組合わせにより構成する。即ち、仕切壁材4p,4qは、図3に示すように、それぞれステンレス材等の材料を用いた矩形のプレート部材をL形に折曲して形成し、図2に示すように、冷却水タンク2の一つの隅部を囲むように、冷却水タンク2の内壁面に溶接等により固定する。
【0031】
これにより、冷却水タンク2の二つの内壁面と断熱仕切壁4により平面視が長方形となる小タンク部2sが構成されるとともに、平面視がL形となる他の小タンク部2mが構成される。例示の場合、図2に示すように、小タンク部2sの容積は小タンク部2mの容積に対して概ね1/4程度となる。このような小タンク部2s,2mの容積(容積比率)は小タンク部2mと2s間の温度差等を考慮して任意に設定できる。なお、二枚の仕切壁材4pと4qの間隔は概ね10〔mm〕前後が望ましい。また、図1に示すように、断熱仕切壁4(仕切壁材4p,4q)の下端は冷却水タンク2の底面に当接させるとともに、断熱仕切壁4の上端は、冷却水タンク2の上端よりも下方に位置させる。これにより、小タンク部2sの上端開口から溢れた冷却水Wは、他方の小タンク部2mの内部に流入可能となる。
【0032】
このように、断熱仕切壁4を、隙間Sを介して配した二枚の仕切壁材4p,4qの組合わせにより構成すれば、冷却水タンク2内における各小タンク部2m,2sの相互間における熱損失防止(断熱性向上)を図れるとともに、簡易な構成により容易に断熱性を高めることができる利点がある。具体的には、一枚の場合、小タンク部2mと2s間おける確保できる温度差は、3〔℃〕程度であるが、二枚にすることにより、小タンク部2mと2s間おいて、少なくとも10〔℃〕程度の温度差を確保できる。
【0033】
さらに、二つの冷却系統3m,3sにおいて、一方の(一つの)冷却系統3mは、小タンク部2mを被冷却部Rmに接続する基本的な構成を備える。この冷却系統3mは、主冷却系統3mとなり、設定温度Tmsは、他の冷却系統3sの設定温度Tssよりも低く設定する。即ち、例示の場合、設定温度Tmsは21〔℃〕、設定温度Tssは26〔℃〕に設定する。したがって、設定温度TmsとTssの差は5〔℃〕となる。このように、冷却系統3m,3sにおける最大の設定温度Tssと最低の設定温度Tmsの差は15〔℃〕以下に選定することが望ましい。なお、被冷却部Rm,Rsにおける負荷の大きさが小さい場合等では、この差が15〔℃〕を越えても可能であるが、この差を15〔℃〕以下に選定することにより、本発明に係る多系統冷却システム1に基づく有効な作用効果を確実に享受できる利点がある。
【0034】
主冷却系統3mは、図1に示すように、小タンク部2mに設けた流出口に、冷却水Wを送り出す圧送ポンプ7mの吸入口を接続するとともに、この圧送ポンプ7mの吐出口に冷却部5の流入口を接続する。この冷却部5の流出口は多系統冷却システム1の一方の冷却水出口となり、この冷却水出口は一方の被冷却部Rmの冷却水入口に接続する。さらに、被冷却部Rmの冷却水出口は多系統冷却システム1の冷却水戻口を介して小タンク部2mに設けた流入口に接続する。これにより、小タンク部2mの冷却水Wが送出ポンプ7mにより送り出され、冷却部5により冷却された後、多系統冷却システム1から被冷却部Rmに供給されるとともに、被冷却部Rmを冷却した後、再び、多系統冷却システム1の小タンク部2mに戻される循環系が構成される。
【0035】
一方、他方の(残りの)冷却系統3sは、小タンク部2sを被冷却部Rsに接続する基本的な構成を備える。この冷却系統3sは、副冷却系統3sとなり、冷却部5により冷却された主冷却系統3mの冷却水Wから分岐した一部の冷却水Wpが小タンク部2sに供給されることにより冷却を行う。したがって、副冷却系統3sは、図1に示すように、小タンク部2sに設けた流出口に、冷却水Wを送り出す圧送ポンプ7sの吸入口を接続するとともに、この圧送ポンプ7sの吐出口は多系統冷却システム1の他方の冷却水出口となり、この冷却水出口は他方の被冷却部Rsの冷却水入口に接続する。また、被冷却部Rsの冷却水出口は多系統冷却システム1の冷却水戻口を介して小タンク部2sに設けた流入口に接続する。これにより、小タンク部2sの冷却水Wが送出ポンプ7sにより送り出され、多系統冷却システム1から被冷却部Rsに供給されるとともに、被冷却部Rsを冷却した後、再び、多系統冷却システム1の小タンク部2sに戻される循環系が構成される。さらに、上述した冷却部5の下流側に分岐部8を設け、この分岐部8の分岐側を、電動バルブ(制御バルブ)等の可変流量バルブ9を用いた流量調整回路(第一流量調整回路)M1を介して小タンク部2sに接続する。
【0036】
他方、多系統冷却システム1はコントローラ10を備える。コントローラ10には設定部11が付属し、設定温度Tms,Tss等の各種設定を行うことができる。コントローラ10は、多系統冷却システム1全体の制御を司る機能を備える。したがって、本発明に関連して、コントローラ10の制御出力ポートには、少なくとも上述した冷却部5及び可変流量バルブ9を接続するとともに、冷却部5の下流側に接続した水温センサ12m及び圧送ポンプ7sの下流側に接続した水温センサ12sを、コントローラ10の入力ポートに接続する。この場合、水温センサ12mは、多系統冷却システム1における一方の冷却水出口から一方の被冷却部Rmに供給する冷却水Wの温度を検出するとともに、水温センサ12sは、多系統冷却システム1における他方の冷却水出口から他方の被冷却部Rsに供給する冷却水Wの温度を検出する。コントローラ10は、CPU,メモリ,電源ユニット等を含むコンピュータ機能を備え、少なくとも、多系統冷却システム1に係わる一連の制御(シーケンス制御)を実行する。したがって、コントローラ10には、これらの制御を実現するための制御プログラムを格納する。
【0037】
これにより、被冷却部Rmに供給する冷却水Wの温度(検出温度)Tmdは水温センサ12mにより検出され、検出温度Tmdが設定温度Tmsになるように、コントローラ10により冷却部5の冷却能力がフィードバック制御される主冷却系統3mが構成される。したがって、主冷却系統3mは、いわば一般的な汎用性の高い冷却装置として構成でき、システム1全体の低コスト化及び小型化に寄与できるとともに、高い安定性及び信頼性を確保できる利点がある。また、被冷却部Rsに供給する冷却水Wの温度(検出温度)Tsdは水温センサ12sにより検出され、検出温度Tsdが設定温度Tssになるように、コントローラ10により分岐した冷却水Wp…の流量がフィードバック制御される副冷却系統3sが構成される。したがって、副冷却系統3sは、冷却水Wpの流量を可変可能な電動バルブ等の可変流量バルブの追加により容易に構成できる利点がある。
【0038】
さらに、図4には、多系統冷却システム1の、より具体化した回路構成を示す。同図中、図1と同一部分には同一符号を付してその構成を明確にした。冷却部5は、一般的な冷凍サイクルCを構成しており、熱交換器を用いた冷却器31の二次側を圧送ポンプ7mの吐出口と多系統冷却システム1における冷却水出口間に接続する。冷凍サイクルCは、圧縮機32,凝縮器33及び電子膨張弁34を順次接続し、圧縮機32と電子膨張弁34間に冷却器31の一次側を接続する。これにより、冷媒が循環する冷媒循環回路を有する冷凍サイクルCが構成される。なお、図中、33fは凝縮器33を空冷する凝縮器ファン、35は冷媒ストレーナ、36は高圧圧力スイッチ、37は吸入温度センサ、38は吐出管温度センサ、39は凝縮冷媒温度センサ、40は冷却器入口冷媒温度センサ、41は圧縮機インバータをそれぞれ示す。コントローラ10は、冷却部5の冷却能力を制御する機能を備えているが、この冷却能力の制御は、圧縮機インバータ41に制御信号を付与し、圧縮機32の回転数を制御することにより行われる。その他、冷却水タンク2において、21は液面レベル計、22はドレインバルブ、23はストレーナをそれぞれ示すとともに、冷却系統3m,3sにおいて、24m,24sは水圧計、25m,25sはバイパスバルブをそれぞれ示す。
【0039】
次に、本実施形態に係る多系統冷却システム1の動作(機能)について、図1〜図4を参照して説明する。
【0040】
まず、多系統冷却システム1の運転を開始することにより、冷却部5(冷凍サイクルC)及び圧送ポンプ7m,7sが作動する。これにより、主冷却系統3mでは、小タンク部2mの冷却水Wが圧送ポンプ7mにより送り出され、冷却部5(冷却器31)により冷却された後、被冷却部Rmに供給されるとともに、被冷却部Rmを冷却した冷却水Wは被冷却部Rmから小タンク部2mに戻される。この際、被冷却部Rmに供給される冷却水Wの温度は、水温センサ12mにより検出され、検出温度Tmdとしてコントローラ10に付与される。また、コントローラ10には設定温度Tms(21〔℃〕)が設定されているため、検出温度Tmdが設定温度Tmsになるように、冷却部5の冷却能力がフィードバック制御される。即ち、圧縮機インバータ41を介して圧縮機32の回転数が可変制御される。
【0041】
他方、副冷却系統3sでは、小タンク部2sの冷却水Wが圧送ポンプ7sを介して被冷却部Rsに供給され、被冷却部Rsを冷却した冷却水Wは被冷却部Rsから小タンク部2sに戻される。この場合、分岐部8により分岐された冷却水Wp、即ち、冷却部5(冷却器31)により冷却された冷却水Wの一部の冷却水Wpが可変流量バルブ9を介して小タンク部2sに供給され、小タンク部2sの冷却水Wは、温度の低い冷却水Wpにより冷却されることになる。この際、小タンク部2sには冷却水Wpが供給されるため、小タンク部2sから溢れる冷却水Wは、小タンク部2sの上端開口から他方の小タンク部2mに流入する。一方、被冷却部Rsに供給される冷却水Wの温度は、水温センサ12sにより検出され、検出温度Tsdとしてコントローラ10に付与される。また、コントローラ10には設定温度Tss(26〔℃〕)が設定されているため、検出温度Tsdが設定温度Tssになるように、分岐した冷却水Wpの流量がフィードバック制御される。即ち、可変流量バルブ9の開度が可変制御される。
【0042】
よって、このような本実施形態に係る多系統冷却システム1によれば、冷却水タンク2の内部に、断熱仕切壁4により仕切り、かつ上方を開放した二つの小タンク部2m,2sを設けるとともに、他の冷却系統3sの設定温度Tssよりも低い設定温度Tmsを設定し、かつ冷却部5により冷却を行う一つの主冷却系統3mと、冷却部5により冷却された主冷却系統3mの冷却水Wから分岐した一部の冷却水Wpが小タンク部2sに供給されることにより冷却を行う他の副冷却系統3sとを設けたため、二つの冷却系統を設ける場合であっても、少なくとも冷却水タンク2と冷却部5はそれぞれ一つで足りる。したがって、特に大型部品の点数削減を図ることができ、システム全体のコストダウン及び小型化を実現できる。また、主冷却系統3mの低い温度の冷却水Wを副冷却系統3sに供給して相対的な温度差を作り出すようにしているため、副冷却系統3sは冷却部を含まない受動的な温度制御系を構成すれば足りる。したがって、被冷却部Rm,Rsの要求する冷却条件を考慮した冷却原理の最適化を図ることができ、消費電力の削減、更には省エネルギ性の向上に寄与できる。
【0043】
次に、本発明の変更実施形態に係る多系統冷却システム1について、図5〜図13を参照して説明する。
【0044】
図5に示す変更実施形態は、冷却水タンク2の内部に、二つの(二個所の)断熱仕切壁4,4により仕切り、かつ上方を開放した三つの小タンク部2m,2s,2sを設け、各小タンク部2m,2s,2sと各被冷却部Rm,Rs,Rsをそれぞれ接続して三つの冷却系統3m,3s,3sを構成するとともに、他の冷却系統3s,3sの設定温度Tss,Tssよりも低い設定温度Tmsを設定し、かつ冷却部5により冷却を行う一つの主冷却系統3mと、冷却部5により冷却された主冷却系統3mの冷却水Wから二系統に分岐した一部の冷却水Wp,Wpが二つの各小タンク部2s,2sにそれぞれ供給されることにより冷却を行う他の二つの副冷却系統3s,3sとを設けたものである。このように、図5に示す変更実施形態は、図1の実施形態に対して副冷却系統3sをさらに一つ増やし、全体の冷却系統3m,3s…を三つにしたものであり、全体の冷却系統3m,3s…の数は任意に選定可能である。なお、図5において、図1と同一部分には同一符号を付してその構成を明確にするとともに、その詳細な説明を省略する。
【0045】
図6に示す変更実施形態は、冷却水タンク2における特に断熱仕切壁4の変更例を示す。図6(a)は、断熱仕切壁4を、二枚の仕切壁材4p,4qを組合わせて構成した際の隙間Sに、別途の断熱部材6を収容したものである。例示の断熱部材6は、隙間Sに充填可能なゴム素材等により形成した空気袋を用いることにより空気層を介在させたものであり、このような断熱部材6を追加することにより、各小タンク部2m,2sの容積を犠牲にすることなく断熱性をより高めることができる。この場合、断熱部材6を収容しなくても十分に断熱効果があり、断熱性能を確保できるが、冷却水タンク2が小さく、仕切壁材4p…間を広くできない場合等においては、必要により断熱部材6を用いることができる。なお、断熱部材6としては、冷却水Wに影響を与えない断熱板等の各種断熱部材6を利用することができる。また、図6(b)は、断熱仕切壁4を、一枚の仕切壁材4sにより構成したものであり、例えば、所定の厚さを確保したプラスチック板等を用いることができる。さらに、図6(c)は、断熱仕切壁4を、三枚の仕切壁材4p,4q,4rの組合わせにより構成したものであり、二枚の仕切壁材4p,4qの組合わせよりも断熱性を高めることができるとともに、簡易な構成により容易に断熱性を高めることができる。このように、仕切壁材4p…は任意の枚数を組み合わせることができる。いずれの変更例であっても、冷却水タンク2内における各小タンク部2m,2s…の相互間における熱損失防止(断熱性向上)を図ることができる。
【0046】
図7に示す変更実施形態は、冷却水タンク2における断熱仕切壁4の変更例及び小タンク部2sに対する配管の接続位置の変更例を示す。この変更例は、断熱仕切壁4を、離間した一対の仕切壁材4p,4qにより構成する点は、図1に示した基本の実施形態と同様であるが、各仕切壁材4p,4qをそれぞれ傾斜させて配することにより、仕切壁材4pと4q間における上側の間隔を広くし、かつ下側の間隔を狭くしたものである。これにより、小タンク部2sから見て上側の断熱性能が高くなり、かつ下側の断熱性能が低くなる。一方、小タンク部2sには、被冷却部Rsにより熱交換された温度の高い冷却水Wを戻す配管Lsrが接続されるとともに、冷却器31により冷却された冷却水Wのうち一部の冷却水Wpを分岐し、さらに可変流量バルブ9(流量調整回路M1)を介して供給するための配管Lmrが接続される。したがって、この場合、例えば、温度の低い冷却水Wpを供給する配管Lmrを小タンク部2sの上側位置に接続すれば、反対側の小タンク部2m側から受ける影響をより回避することが可能になるとともに、温度の高い冷却水Wを戻す配管Lsrを小タンク部2sの下側位置に接続すれば、小タンク部2m側の影響を積極的に受けることにより熱交換可能となる。
【0047】
図8は、図7の変更例を示す。この変更例は、図7に示した断熱仕切壁4の上下を反転させたものであり、各仕切壁材4p,4qをそれぞれ傾斜させて配することにより、仕切壁材4pと4q間における上側の間隔を狭くし、かつ下側の間隔を広くしたものである。これにより、小タンク部2sから見て上側の断熱性能が低くなり、かつ下側の断熱性能が高くなる。したがって、この場合には、図7の場合とは反対に、温度の低い冷却水Wpを供給する配管Lmrを小タンク部2sの下側位置に接続すれば、反対側の小タンク部2m側から受ける影響をより回避することが可能になるとともに、温度の高い冷却水Wを戻す配管Lsrを小タンク部2sの上側位置に接続すれば、小タンク部2m側の影響を積極的に受けることにより熱交換可能となる。
【0048】
図7及び図8のように、断熱仕切壁4を、高さ位置に応じて異なる断熱性能となるように構成すれば、配管Lmr,Lsrの接続位置(接続高さ)を、冷却水Wp,Wの条件及び状態等に対応して最適な接続高さに選定可能となり、熱損失等を最小限に抑えることができる。
【0049】
図9に示す変更実施形態は、冷却水タンク2における小タンク部2sに接続する配管の接続位置の変更例を示す。上述したように、小タンク部2sには、被冷却部Rsにより熱交換された温度の高い冷却水Wを戻す配管Lsrが接続されるとともに、冷却器31により冷却された冷却水Wのうち一部の冷却水Wpを分岐し、さらに可変流量バルブ9を介して供給するための配管Lmrが接続されるため、例えば、図9に示すように、各配管LmrとLsrの位置関係(接続位置及び/又は接続高さ)を設定すれば、冷却水W,Wpの流入時には、温度の高い冷却水Wと冷却された冷却水Wpを衝突させ、或いはスパイラル状に流入させるなどにより温度の高い冷却水Wと冷却された冷却水Wpを撹拌させることが可能となり、冷却水W温度の均等化及び安定化に寄与できる。
【0050】
図10(及び図11)に示す変更実施形態は、冷却水タンク2における断熱仕切壁4の他の変更例を示す。この変更例は、断熱仕切壁4、即ち、仕切壁材4p,4qの下端辺における一個所又は二個所以上に切欠部を形成し、これにより、小タンク部2sの通水孔部4px,4qx,4py,4qyを設けたものである。このような通水孔部4px…,4py…を設けることにより、メンテナンス時や洗浄時には、小タンク部2s内部の冷却水Wを、この通水孔部4px…,4py…を通して小タンク部2m側に排出した後、小タンク部2mのドレン部51を通して外部に排水できる。したがって、小タンク部2s側に別途設けるドレン部が不要となり、構成の単純化及びコストダウンに寄与できる。
【0051】
図12及び図13に示す変更実施形態は、多系統冷却システム1における回路の変更例を示す。図12は、図4に示した回路に対して、第二流量調整回路M2を追加したものであり、この第二流量調整回路M2により、被冷却部Rmから戻る高温の冷却水Wの一部を分岐して小タンク部2sに供給することができる。この場合、第二流量調整回路M2は、可変流量バルブ52と配管Lmtにより構成することができる。これにより、副冷却系統3sにおいては、前述した、被冷却部Rsに供給する冷却水Wの温度(検出温度)Tsdを水温センサ12sにより検出し、検出温度Tsdが設定温度Tssになるように、コントローラ10により分岐した冷却水Wp…の流量をフィードバック制御、即ち、第一流量調整回路M2をフィードバック制御する基本形態に加え、検出温度Tsdが設定温度Tssになるように、第一流量調整回路M1及び第二流量調整回路M2の双方をフィードバック制御することが可能となる。したがって、降温時の温度制御及び昇温時の温度制御が可能になるため、冷却水Wの温度に対する制御応答性、更には制御性をより高めることができる。
【0052】
図13は、図4における可変流量バルブ9の代わりに、定流量バルブ53と、三方弁を有する可変流量バルブ54とを接続して構成した第一流量調整回路M1eを設けたものである。図4に示した可変流量バルブ9のみを用いた場合には、可変流量バルブ9の調整により被冷却部Rmに供給される冷却水Wの流量が変動してしまうが、図13の第一流量調整回路M1eを用いれば、可変流量バルブ54により冷却水Wpの流量を可変した場合であっても、被冷却部Rmに供給する冷却水Wの流量を一定に維持できる。即ち、安定した規定量に維持することができる。なお、可変流量バルブ54により配管Lmrを通して小タンク部2sに供給する流量を調整した際における余分な冷却水Wpは、配管Lrrを通して小タンク部2mに戻す(逃がす)ことができる。
【0053】
また、図13には、被冷却部Rmに供給する冷却水Wの流量を制御する流量制御回路M3を付設する場合を仮想線により示す。この流量制御回路M3は、被冷却部Rmに供給する冷却水Wの流量を流量計55により検出するとともに、この検出した流量(検出流量)に基づいて、コントローラ10は、圧送ポンプ7mに制御信号を付与し、検出流量が予め設定した目標流量となるように制御する機能を備える。したがって、流量制御回路M3を設ける場合、第一流量調整回路M1eと組合わせることにより、より緻密な制御が可能になる。さらに、流量制御回路M1eに第一流量調整回路M1eを兼用させることも可能である。したがって、この場合には、流量制御回路M3を、図4に示した可変流量バルブ9を用いた第一流量調整回路M1と組合わせることも可能である。なお、図6〜図13において、図1〜図5と同一部分には同一符号を付してその構成を明確にするとともに、その詳細な説明は省略する。
【0054】
以上、好適実施形態及び変更実施形態について詳細に説明したが、本発明は、このような実施形態に限定されるものではなく、細部の構成,数量,数値,素材,手法等において、本発明の要旨を逸脱しない範囲で、任意に変更,追加,削除することができる。
【0055】
例えば、冷却水タンク2の内部に、断熱仕切壁4により仕切り、かつ上方を開放した複数の小タンク部2m,2s…を設けるとは、小タンク部2m,2s…を予め製作し、各小タンク部2m,2s…の上端を連結管等により連結して一体化した構造も含まれる概念である。一方、冷却系統3m,3s…は、被冷却部Rm,Rs…を冷却した後の冷却水W…を小タンク部2m,2s…に戻す循環系により構成した場合を示したが、冷却水Wを循環させることなく廃棄する非循環式に構成する場合を排除するものではない。さらに、冷却部5は、冷凍サイクルCを用いたが、ペルチェ素子を利用したサーモモジュール等の他の冷却手段を用いてもよい。なお、冷凍サイクルC及びサーモモジュールは冷却器又は加熱器として機能させることができるため、本発明における「冷却」とは「加熱」も含む概念である。また、冷却水Wとは、水道水をはじめ不凍液等の冷却可能な液体を含み、基本的には冷却液と同一の概念である。
【産業上の利用可能性】
【0056】
本発明に係る多系統冷却システム1は、レーザ加工機をはじめ、複数系統により冷却水を供給する各種被冷却機器の冷却に利用できる。
【符号の説明】
【0057】
1:多系統冷却システム,2:冷却水タンク,2m:小タンク部,2s…:小タンク部,3m:冷却系統(主冷却系統),3s…:冷却系統(副冷却系統),4:断熱仕切壁,4s:仕切壁材,4p…:仕切壁材,4qx:通水孔部,4px:通水孔部,4py:通水孔部,4qy:通水孔部,5:冷却部,6:断熱部材,W…:冷却水,Wp:分岐した一部の冷却水,Rm:被冷却部,Rs…:被冷却部,Tms:設定温度,Tss…:設定温度,Tmd:検出温度,Tsd…:検出温度,S:隙間,M1:流量調整回路(第一流量調整回路),M2:第一流量調整回路,M3:第二流量調整回路,Lmr:配管,Lsr:配管
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷却水タンクから複数の被冷却部にそれぞれ異なる温度に冷却した冷却水を供給して冷却を行う複数の冷却系統を備える多系統冷却システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、冷却水が収容された冷却水タンクからレーザ加工機等の被冷却機器に冷却水を供給する冷却装置であって、特に、二つの独立した冷却系統を備える多系統冷却装置は知られており、例えば、特許文献1には、2系統の循環水経路を備えたレーザ加工機用冷却装置が開示されている。
【0003】
同文献1に開示されるレーザ加工機用冷却装置は、循環ポンプをその経路中に備え、レーザ加工機を構成する機器のうち、発熱量の大きいものを冷却する第1の循環水経路と、循環ポンプより能力の低い循環ポンプをその経路中に備え、第1の循環水経路により冷却するものの発熱量よりも小さい発熱量の機器を冷却する第2循環水経路と、からなる2系統の循環水経路を備えたレーザ加工機用冷却装置であって、第1の循環水経路と第2循環水経路とを繋ぐバイパス経路を備え、第1の循環水経路中の循環ポンプによる循環によって、第2の循環水経路中に残留しているガスを除去するようにした構成を備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10−335720号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上述した従来(特許文献1)のレーザ加工機用冷却装置をはじめ、多系統の給水系統を備える冷却装置は、次のような問題点があった。
【0006】
第一に、レーザ加工機等の特定の被冷却機器における複数の被冷却部を冷却する際には、流量等の給水条件をはじめ、異なる温度の冷却水が要求される場合がある。この場合、設定温度が異なるため、相互に干渉しない独立した温度制御を行う複数の異なる給水系統が必要となる。即ち、基本的には、冷却手段となる冷却装置が複数台分必要となるため、部品点数が大幅に増加し、これに伴うコストアップ及び大型化を招く。
【0007】
第二に、各給水系統における設定温度の差が大きい場合には、各給水系統の独立性を確保し、相互の干渉を排除することが、熱損失を低減して、より効率的動作の観点からも望ましいが、設定温度の差が小さい場合には、むしろ相互の干渉を有効に利用することも考えられる。しかし、従来の冷却装置は、被冷却部の要求する冷却条件を考慮した冷却原理の最適化の観点からは必ずしも十分であるとは言えず、消費電力の無用な増加、更には省エネルギ性の低下を招きやすい。
【0008】
本発明は、このような背景技術に存在する課題を解決した多系統冷却システムの提供を目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、上述した課題を解決するため、冷却水Wが収容された冷却水タンク2から複数の被冷却部Rm,Rs…にそれぞれ異なる温度に冷却した冷却水W…を供給して冷却を行う複数の冷却系統を備える多系統冷却システム1を構成するに際して、冷却水タンク2の内部に、断熱仕切壁4により仕切り、かつ上方を開放した複数の小タンク部2m,2s…を設け、各小タンク部2m,2s…と各被冷却部Rm,Rs…をそれぞれ接続して複数の冷却系統3m,3s…を構成するとともに、他の冷却系統3s…の設定温度Tss…よりも低い設定温度Tmsを設定し、かつ冷却部5により冷却を行う一つの冷却系統(主冷却系統)3mと、冷却部5により冷却された主冷却系統3mの冷却水Wから分岐した一部の冷却水Wp…が各小タンク部2s…に供給されることにより冷却を行う他の冷却系統(副冷却系統)3s…とを設けたことを特徴とする。
【0010】
この場合、発明の好適な態様により、冷却系統3m,3s…は、被冷却部Rm,Rs…を冷却した後の冷却水W…を小タンク部2m,2s…に戻す循環系により構成することができる。なお、冷却系統3m,3s…における最大の設定温度Tssと最低の設定温度Tmsの差は、15〔℃〕以下に選定することが望ましい。一方、断熱仕切壁4は、一枚の仕切壁材4sにより,又は隙間Sを介して配した二枚以上の仕切壁材4p,4q…の組合わせにより構成することができる。この際、断熱仕切壁4は、二枚以上を組合わせた各仕切壁材4p,4qの角度を異ならせることにより少なくとも上側と下側の断熱性能を異ならせるとともに、副冷却系統3sにおける小タンク部2sに冷却水Wp,Wを供給する配管Lmr,Lsrの少なくとも接続高さを当該断熱性能に対応して選定することができる。なお、断熱仕切壁4は、二枚以上の仕切壁材4p…を組合わせた際の隙間Sに断熱部材6を収容して構成することもできる。さらに、断熱仕切壁4には、下端辺の所定位置に切欠部を形成することにより一又は二以上の通水孔部4qx,4px,4py,4qyを設けることができるとともに、副冷却系統3sにおける小タンク部2sに対して、複数の位置から流入する各冷却水W,Wpが内部で撹拌されるように、当該複数の位置における配管Lmr,Lsrの接続位置及び/又は接続高さを選定することができる。
【0011】
また、主冷却系統3mは、被冷却部Rmに供給する冷却水Wの温度(検出温度)Tmdを検出し、検出温度Tmdが設定温度Tmsになるように、冷却部5の冷却能力をフィードバック制御することができる。一方、副冷却系統3sには、冷却部5により冷却された主冷却系統3mの冷却水Wから分岐した一部の冷却水Wpの流量を調整する流量調整回路(第一流量調整回路)M1,M1eを設けることができる。他方、主冷却系統3mに接続した被冷却部Rmから小タンク部2mに戻る冷却水Wから分岐した一部の冷却水Wを副冷却系統3sにおける小タンク部2sに供給するとともに、当該一部の冷却水Wの流量を調整する第二流量調整回路M2を設けることができる。この際、副冷却系統3sは、被冷却部Rsに供給する冷却水Wの温度(検出温度)Tsdを検出し、検出温度Tsdが設定温度Tssになるように、第一流量調整回路M1,M1e及び/又は第二流量調整回路M2をフィードバック制御することができる。
【発明の効果】
【0012】
このような構成を有する本発明に係る多系統冷却システム1によれば、次のような顕著な効果を奏する。
【0013】
(1) 冷却水タンク2の内部に、断熱仕切壁4により仕切り、かつ上方を開放した複数の小タンク部2m,2s…を設けるとともに、他の冷却系統3s…の設定温度Tss…よりも低い設定温度Tmsを設定し、かつ冷却部5により冷却を行う一つの主冷却系統3mと、冷却部5により冷却された主冷却系統3mの冷却水Wから分岐した一部の冷却水Wp…が各小タンク部2s…に供給されることにより冷却を行う他の副冷却系統3s…とを設けたため、複数の冷却系統を設ける場合であっても、少なくとも冷却水タンク2と冷却部5はそれぞれ一つで足りる。したがって、特に大型部品の点数削減を図ることができ、システム全体のコストダウン及び小型化を実現できる。
【0014】
(2) 主冷却系統3mの低い温度の冷却水Wを各副冷却系統3s…に供給して相対的な温度差を作り出すようにしているため、副冷却系統3s…は冷却部を含まない受動的な温度制御系を構成すれば足りる。したがって、被冷却部Rm,Rs…の要求する冷却条件を考慮した冷却原理の最適化を図ることができ、消費電力の削減、更には省エネルギ性の向上に寄与できる。
【0015】
(3) 好適な態様により、冷却系統3m,3s…における最大の設定温度Tssと最低の設定温度Tmsの差を15〔℃〕以下に選定すれば、本発明に係る多系統冷却システム1に基づく有効な作用効果を確実に享受できる。
【0016】
(4) 好適な態様により、断熱仕切壁4を、一枚の仕切壁材4sにより,又は隙間Sを介して配した二枚以上の仕切壁材4p…の組合わせにより構成すれば、冷却水タンク2内における各小タンク部2m,2s…の相互間における熱損失防止(断熱性向上)を図れるとともに、特に、隙間S…を介して配した二枚以上の仕切壁材4p…の組合わせにより構成すれば、簡易な構成により容易に断熱性を高めることができる。
【0017】
(5) 好適な態様により、断熱仕切壁4を構成するに際し、二枚以上を組合わせた各仕切壁材4p,4qの角度を異ならせることにより少なくとも上側と下側の断熱性能を異ならせるとともに、副冷却系統3sにおける小タンク部2sに冷却水Wp,Wを供給する配管Lmr,Lsrの少なくとも接続高さを当該断熱性能に対応して選定するようにすれば、冷却水Wp,Wの条件及び状態等に対応して最適な接続高さを選定できるため、熱損失等を最小限に抑えることができる。
【0018】
(6) 好適な態様により、二枚以上の仕切壁材4p…を組合わせた際の隙間Sに断熱部材6を収容して構成すれば、各小タンク部2m,2s…の容積を犠牲にすることなく断熱性をより高めることができる。この場合、断熱部材6を収容しなくても十分に断熱効果があり、断熱性能を確保できるが、冷却水タンク2が小さく、仕切壁材4p…間を広くできない場合等においては、必要により断熱部材6を用いることができる。
【0019】
(7) 好適な態様により、断熱仕切壁4に、下端辺の所定位置に切欠部を形成することにより一又は二以上の通水孔部4qx,4px,4py,4qyを設ければ、小タンク部2s側に別途設けるドレン部が不要となり、構成の単純化及びコストダウンに寄与できる。
【0020】
(8) 好適な態様により、副冷却系統3sにおける小タンク部2sに対して、複数の位置から流入する冷却水W,Wpが内部で撹拌されるように、当該複数の位置における配管Lmr,Lsrの接続位置及び/又は接続高さを選定すれば、冷却水W温度の均等化及び安定化に寄与できる。
【0021】
(9) 好適な態様により、主冷却系統3mにおいて、被冷却部Rmに供給する冷却水Wの温度(検出温度)Tmdを検出し、検出温度Tmdが設定温度Tmsになるように、冷却部5の冷却能力をフィードバック制御するようにすれば、主冷却系統3mは、いわば一般的な汎用性の高い冷却装置として構成可能となり、システム1全体の低コスト化及び小型化に寄与できるとともに、高い安定性及び信頼性を確保できる。
【0022】
(10) 好適な態様により、副冷却系統3sに、冷却部5により冷却された主冷却系統3mの冷却水Wから分岐した一部の冷却水Wpの流量を調整する第一流量調整回路M1,M1eを設ければ、冷却水Wpの流量を可変調整することにより、小タンク部2sの冷却水Wに対する温度制御を容易に行うことができる。
【0023】
(11) 好適な態様により、主冷却系統3mに接続した被冷却部Rmから小タンク部2mに戻る冷却水Wから分岐した一部の冷却水Wを副冷却系統3sにおける小タンク部2sに供給するとともに、当該一部の冷却水Wの流量を調整する第二流量調整回路M2を設ければ、当該一部の冷却水Wの流量を可変調整することにより、小タンク部2sの冷却水Wに対する昇温時の温度制御を容易に行うことができる。
【0024】
(12) 好適な態様により、副冷却系統3sにおいて、被冷却部Rsに供給する冷却水Wの温度(検出温度)Tsdを検出し、検出温度Tsdが設定温度Tssになるように、第一流量調整回路M1,M1e及び/又は第二流量調整回路M2をフィードバック制御するようにすれば、降温時の温度制御及び/又は昇温時の温度制御が可能になるため、冷却水Wの温度に対する制御応答性、更には制御性をより高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の好適実施形態に係る多系統冷却システムの原理的構成図、
【図2】同多系統冷却システムに用いる冷却水タンクの一部を破断した平面図、
【図3】同冷却水タンクに設けた断熱仕切壁の構成部品の部分斜視図、
【図4】同多系統冷却システムの具体的な回路構成図、
【図5】本発明の変更実施形態に係る多系統冷却システムの原理的系統図、
【図6】本発明の他の変更実施形態に係る多系統冷却システムに用いる各種冷却水タンクの断面側面図、
【図7】本発明の他の変更実施形態に係る多系統冷却システムに用いる一部配管を含む冷却水タンクの断面側面図、
【図8】本発明の他の変更実施形態に係る多系統冷却システムに用いる一部配管を含む冷却水タンクの断面側面図、
【図9】本発明の他の変更実施形態に係る多系統冷却システムに用いる一部配管を含む冷却水タンクの断面側面図、
【図10】本発明の他の変更実施形態に係る多系統冷却システムに用いる冷却水タンクの断面側面図、
【図11】同冷却水タンクの断面平面図、
【図12】本発明の他の変更実施形態に係る多系統冷却システムの一部を示す具体的な回路構成図、
【図13】本発明の他の変更実施形態に係る多系統冷却システムの一部を示す具体的な回路構成図、
【発明を実施するための形態】
【0026】
次に、本発明に係る好適実施形態を挙げ、図面に基づき詳細に説明する。
【0027】
まず、本実施形態に係る多系統冷却システム1の構成について、図1〜図4を参照して具体的に説明する。
【0028】
最初に、多系統冷却システム1の原理的構成について、図1を参照して説明する。多系統冷却システム1は、基本的に、冷却水Wが収容された冷却水タンク2から二つの被冷却部Rm,Rsにそれぞれ異なる温度に冷却した冷却水W…を供給して冷却を行う二つの冷却系統3m,3sを備えて構成する。
【0029】
二つの被冷却部Rm,Rsは一台の被冷却機器Rの内部に備えている。例示の場合、一方の被冷却部Rmの冷却を行う冷却水Wに対する要求温度は+21〔℃〕、他方の被冷却部Rsの冷却を行う冷却水Wに対する要求温度は+26〔℃〕である。したがって、被冷却機器Rには、一方の被冷却部Rmに対して冷却水Wが供給される冷却水入口及び被冷却部Rmにより熱交換された使用後の冷却水Wが排出される冷却水出口とを有するとともに、他方の被冷却部Rsに対して冷却水Wが供給される冷却水入口及び被冷却部Rsにより熱交換された使用後の冷却水Wが排出される冷却水出口とを有する。
【0030】
一方、多系統冷却システム1は、単一の冷却水タンク2を備える。この冷却水タンク2は、上端を開放し、全体を直方体形に形成する。なお、冷却水タンク2には、上端に着脱する蓋体2C(図4)が付属する。また、冷却水タンク2の内部には、断熱仕切壁4を設ける。この断熱仕切壁4は、冷却水タンク2の内部空間を仕切り、上方が開放される二つの小タンク部2m,2sを形成する。この断熱仕切壁4は、図1〜図3に示すように、隙間Sを介して配する二枚の仕切壁材4p,4qの組合わせにより構成する。即ち、仕切壁材4p,4qは、図3に示すように、それぞれステンレス材等の材料を用いた矩形のプレート部材をL形に折曲して形成し、図2に示すように、冷却水タンク2の一つの隅部を囲むように、冷却水タンク2の内壁面に溶接等により固定する。
【0031】
これにより、冷却水タンク2の二つの内壁面と断熱仕切壁4により平面視が長方形となる小タンク部2sが構成されるとともに、平面視がL形となる他の小タンク部2mが構成される。例示の場合、図2に示すように、小タンク部2sの容積は小タンク部2mの容積に対して概ね1/4程度となる。このような小タンク部2s,2mの容積(容積比率)は小タンク部2mと2s間の温度差等を考慮して任意に設定できる。なお、二枚の仕切壁材4pと4qの間隔は概ね10〔mm〕前後が望ましい。また、図1に示すように、断熱仕切壁4(仕切壁材4p,4q)の下端は冷却水タンク2の底面に当接させるとともに、断熱仕切壁4の上端は、冷却水タンク2の上端よりも下方に位置させる。これにより、小タンク部2sの上端開口から溢れた冷却水Wは、他方の小タンク部2mの内部に流入可能となる。
【0032】
このように、断熱仕切壁4を、隙間Sを介して配した二枚の仕切壁材4p,4qの組合わせにより構成すれば、冷却水タンク2内における各小タンク部2m,2sの相互間における熱損失防止(断熱性向上)を図れるとともに、簡易な構成により容易に断熱性を高めることができる利点がある。具体的には、一枚の場合、小タンク部2mと2s間おける確保できる温度差は、3〔℃〕程度であるが、二枚にすることにより、小タンク部2mと2s間おいて、少なくとも10〔℃〕程度の温度差を確保できる。
【0033】
さらに、二つの冷却系統3m,3sにおいて、一方の(一つの)冷却系統3mは、小タンク部2mを被冷却部Rmに接続する基本的な構成を備える。この冷却系統3mは、主冷却系統3mとなり、設定温度Tmsは、他の冷却系統3sの設定温度Tssよりも低く設定する。即ち、例示の場合、設定温度Tmsは21〔℃〕、設定温度Tssは26〔℃〕に設定する。したがって、設定温度TmsとTssの差は5〔℃〕となる。このように、冷却系統3m,3sにおける最大の設定温度Tssと最低の設定温度Tmsの差は15〔℃〕以下に選定することが望ましい。なお、被冷却部Rm,Rsにおける負荷の大きさが小さい場合等では、この差が15〔℃〕を越えても可能であるが、この差を15〔℃〕以下に選定することにより、本発明に係る多系統冷却システム1に基づく有効な作用効果を確実に享受できる利点がある。
【0034】
主冷却系統3mは、図1に示すように、小タンク部2mに設けた流出口に、冷却水Wを送り出す圧送ポンプ7mの吸入口を接続するとともに、この圧送ポンプ7mの吐出口に冷却部5の流入口を接続する。この冷却部5の流出口は多系統冷却システム1の一方の冷却水出口となり、この冷却水出口は一方の被冷却部Rmの冷却水入口に接続する。さらに、被冷却部Rmの冷却水出口は多系統冷却システム1の冷却水戻口を介して小タンク部2mに設けた流入口に接続する。これにより、小タンク部2mの冷却水Wが送出ポンプ7mにより送り出され、冷却部5により冷却された後、多系統冷却システム1から被冷却部Rmに供給されるとともに、被冷却部Rmを冷却した後、再び、多系統冷却システム1の小タンク部2mに戻される循環系が構成される。
【0035】
一方、他方の(残りの)冷却系統3sは、小タンク部2sを被冷却部Rsに接続する基本的な構成を備える。この冷却系統3sは、副冷却系統3sとなり、冷却部5により冷却された主冷却系統3mの冷却水Wから分岐した一部の冷却水Wpが小タンク部2sに供給されることにより冷却を行う。したがって、副冷却系統3sは、図1に示すように、小タンク部2sに設けた流出口に、冷却水Wを送り出す圧送ポンプ7sの吸入口を接続するとともに、この圧送ポンプ7sの吐出口は多系統冷却システム1の他方の冷却水出口となり、この冷却水出口は他方の被冷却部Rsの冷却水入口に接続する。また、被冷却部Rsの冷却水出口は多系統冷却システム1の冷却水戻口を介して小タンク部2sに設けた流入口に接続する。これにより、小タンク部2sの冷却水Wが送出ポンプ7sにより送り出され、多系統冷却システム1から被冷却部Rsに供給されるとともに、被冷却部Rsを冷却した後、再び、多系統冷却システム1の小タンク部2sに戻される循環系が構成される。さらに、上述した冷却部5の下流側に分岐部8を設け、この分岐部8の分岐側を、電動バルブ(制御バルブ)等の可変流量バルブ9を用いた流量調整回路(第一流量調整回路)M1を介して小タンク部2sに接続する。
【0036】
他方、多系統冷却システム1はコントローラ10を備える。コントローラ10には設定部11が付属し、設定温度Tms,Tss等の各種設定を行うことができる。コントローラ10は、多系統冷却システム1全体の制御を司る機能を備える。したがって、本発明に関連して、コントローラ10の制御出力ポートには、少なくとも上述した冷却部5及び可変流量バルブ9を接続するとともに、冷却部5の下流側に接続した水温センサ12m及び圧送ポンプ7sの下流側に接続した水温センサ12sを、コントローラ10の入力ポートに接続する。この場合、水温センサ12mは、多系統冷却システム1における一方の冷却水出口から一方の被冷却部Rmに供給する冷却水Wの温度を検出するとともに、水温センサ12sは、多系統冷却システム1における他方の冷却水出口から他方の被冷却部Rsに供給する冷却水Wの温度を検出する。コントローラ10は、CPU,メモリ,電源ユニット等を含むコンピュータ機能を備え、少なくとも、多系統冷却システム1に係わる一連の制御(シーケンス制御)を実行する。したがって、コントローラ10には、これらの制御を実現するための制御プログラムを格納する。
【0037】
これにより、被冷却部Rmに供給する冷却水Wの温度(検出温度)Tmdは水温センサ12mにより検出され、検出温度Tmdが設定温度Tmsになるように、コントローラ10により冷却部5の冷却能力がフィードバック制御される主冷却系統3mが構成される。したがって、主冷却系統3mは、いわば一般的な汎用性の高い冷却装置として構成でき、システム1全体の低コスト化及び小型化に寄与できるとともに、高い安定性及び信頼性を確保できる利点がある。また、被冷却部Rsに供給する冷却水Wの温度(検出温度)Tsdは水温センサ12sにより検出され、検出温度Tsdが設定温度Tssになるように、コントローラ10により分岐した冷却水Wp…の流量がフィードバック制御される副冷却系統3sが構成される。したがって、副冷却系統3sは、冷却水Wpの流量を可変可能な電動バルブ等の可変流量バルブの追加により容易に構成できる利点がある。
【0038】
さらに、図4には、多系統冷却システム1の、より具体化した回路構成を示す。同図中、図1と同一部分には同一符号を付してその構成を明確にした。冷却部5は、一般的な冷凍サイクルCを構成しており、熱交換器を用いた冷却器31の二次側を圧送ポンプ7mの吐出口と多系統冷却システム1における冷却水出口間に接続する。冷凍サイクルCは、圧縮機32,凝縮器33及び電子膨張弁34を順次接続し、圧縮機32と電子膨張弁34間に冷却器31の一次側を接続する。これにより、冷媒が循環する冷媒循環回路を有する冷凍サイクルCが構成される。なお、図中、33fは凝縮器33を空冷する凝縮器ファン、35は冷媒ストレーナ、36は高圧圧力スイッチ、37は吸入温度センサ、38は吐出管温度センサ、39は凝縮冷媒温度センサ、40は冷却器入口冷媒温度センサ、41は圧縮機インバータをそれぞれ示す。コントローラ10は、冷却部5の冷却能力を制御する機能を備えているが、この冷却能力の制御は、圧縮機インバータ41に制御信号を付与し、圧縮機32の回転数を制御することにより行われる。その他、冷却水タンク2において、21は液面レベル計、22はドレインバルブ、23はストレーナをそれぞれ示すとともに、冷却系統3m,3sにおいて、24m,24sは水圧計、25m,25sはバイパスバルブをそれぞれ示す。
【0039】
次に、本実施形態に係る多系統冷却システム1の動作(機能)について、図1〜図4を参照して説明する。
【0040】
まず、多系統冷却システム1の運転を開始することにより、冷却部5(冷凍サイクルC)及び圧送ポンプ7m,7sが作動する。これにより、主冷却系統3mでは、小タンク部2mの冷却水Wが圧送ポンプ7mにより送り出され、冷却部5(冷却器31)により冷却された後、被冷却部Rmに供給されるとともに、被冷却部Rmを冷却した冷却水Wは被冷却部Rmから小タンク部2mに戻される。この際、被冷却部Rmに供給される冷却水Wの温度は、水温センサ12mにより検出され、検出温度Tmdとしてコントローラ10に付与される。また、コントローラ10には設定温度Tms(21〔℃〕)が設定されているため、検出温度Tmdが設定温度Tmsになるように、冷却部5の冷却能力がフィードバック制御される。即ち、圧縮機インバータ41を介して圧縮機32の回転数が可変制御される。
【0041】
他方、副冷却系統3sでは、小タンク部2sの冷却水Wが圧送ポンプ7sを介して被冷却部Rsに供給され、被冷却部Rsを冷却した冷却水Wは被冷却部Rsから小タンク部2sに戻される。この場合、分岐部8により分岐された冷却水Wp、即ち、冷却部5(冷却器31)により冷却された冷却水Wの一部の冷却水Wpが可変流量バルブ9を介して小タンク部2sに供給され、小タンク部2sの冷却水Wは、温度の低い冷却水Wpにより冷却されることになる。この際、小タンク部2sには冷却水Wpが供給されるため、小タンク部2sから溢れる冷却水Wは、小タンク部2sの上端開口から他方の小タンク部2mに流入する。一方、被冷却部Rsに供給される冷却水Wの温度は、水温センサ12sにより検出され、検出温度Tsdとしてコントローラ10に付与される。また、コントローラ10には設定温度Tss(26〔℃〕)が設定されているため、検出温度Tsdが設定温度Tssになるように、分岐した冷却水Wpの流量がフィードバック制御される。即ち、可変流量バルブ9の開度が可変制御される。
【0042】
よって、このような本実施形態に係る多系統冷却システム1によれば、冷却水タンク2の内部に、断熱仕切壁4により仕切り、かつ上方を開放した二つの小タンク部2m,2sを設けるとともに、他の冷却系統3sの設定温度Tssよりも低い設定温度Tmsを設定し、かつ冷却部5により冷却を行う一つの主冷却系統3mと、冷却部5により冷却された主冷却系統3mの冷却水Wから分岐した一部の冷却水Wpが小タンク部2sに供給されることにより冷却を行う他の副冷却系統3sとを設けたため、二つの冷却系統を設ける場合であっても、少なくとも冷却水タンク2と冷却部5はそれぞれ一つで足りる。したがって、特に大型部品の点数削減を図ることができ、システム全体のコストダウン及び小型化を実現できる。また、主冷却系統3mの低い温度の冷却水Wを副冷却系統3sに供給して相対的な温度差を作り出すようにしているため、副冷却系統3sは冷却部を含まない受動的な温度制御系を構成すれば足りる。したがって、被冷却部Rm,Rsの要求する冷却条件を考慮した冷却原理の最適化を図ることができ、消費電力の削減、更には省エネルギ性の向上に寄与できる。
【0043】
次に、本発明の変更実施形態に係る多系統冷却システム1について、図5〜図13を参照して説明する。
【0044】
図5に示す変更実施形態は、冷却水タンク2の内部に、二つの(二個所の)断熱仕切壁4,4により仕切り、かつ上方を開放した三つの小タンク部2m,2s,2sを設け、各小タンク部2m,2s,2sと各被冷却部Rm,Rs,Rsをそれぞれ接続して三つの冷却系統3m,3s,3sを構成するとともに、他の冷却系統3s,3sの設定温度Tss,Tssよりも低い設定温度Tmsを設定し、かつ冷却部5により冷却を行う一つの主冷却系統3mと、冷却部5により冷却された主冷却系統3mの冷却水Wから二系統に分岐した一部の冷却水Wp,Wpが二つの各小タンク部2s,2sにそれぞれ供給されることにより冷却を行う他の二つの副冷却系統3s,3sとを設けたものである。このように、図5に示す変更実施形態は、図1の実施形態に対して副冷却系統3sをさらに一つ増やし、全体の冷却系統3m,3s…を三つにしたものであり、全体の冷却系統3m,3s…の数は任意に選定可能である。なお、図5において、図1と同一部分には同一符号を付してその構成を明確にするとともに、その詳細な説明を省略する。
【0045】
図6に示す変更実施形態は、冷却水タンク2における特に断熱仕切壁4の変更例を示す。図6(a)は、断熱仕切壁4を、二枚の仕切壁材4p,4qを組合わせて構成した際の隙間Sに、別途の断熱部材6を収容したものである。例示の断熱部材6は、隙間Sに充填可能なゴム素材等により形成した空気袋を用いることにより空気層を介在させたものであり、このような断熱部材6を追加することにより、各小タンク部2m,2sの容積を犠牲にすることなく断熱性をより高めることができる。この場合、断熱部材6を収容しなくても十分に断熱効果があり、断熱性能を確保できるが、冷却水タンク2が小さく、仕切壁材4p…間を広くできない場合等においては、必要により断熱部材6を用いることができる。なお、断熱部材6としては、冷却水Wに影響を与えない断熱板等の各種断熱部材6を利用することができる。また、図6(b)は、断熱仕切壁4を、一枚の仕切壁材4sにより構成したものであり、例えば、所定の厚さを確保したプラスチック板等を用いることができる。さらに、図6(c)は、断熱仕切壁4を、三枚の仕切壁材4p,4q,4rの組合わせにより構成したものであり、二枚の仕切壁材4p,4qの組合わせよりも断熱性を高めることができるとともに、簡易な構成により容易に断熱性を高めることができる。このように、仕切壁材4p…は任意の枚数を組み合わせることができる。いずれの変更例であっても、冷却水タンク2内における各小タンク部2m,2s…の相互間における熱損失防止(断熱性向上)を図ることができる。
【0046】
図7に示す変更実施形態は、冷却水タンク2における断熱仕切壁4の変更例及び小タンク部2sに対する配管の接続位置の変更例を示す。この変更例は、断熱仕切壁4を、離間した一対の仕切壁材4p,4qにより構成する点は、図1に示した基本の実施形態と同様であるが、各仕切壁材4p,4qをそれぞれ傾斜させて配することにより、仕切壁材4pと4q間における上側の間隔を広くし、かつ下側の間隔を狭くしたものである。これにより、小タンク部2sから見て上側の断熱性能が高くなり、かつ下側の断熱性能が低くなる。一方、小タンク部2sには、被冷却部Rsにより熱交換された温度の高い冷却水Wを戻す配管Lsrが接続されるとともに、冷却器31により冷却された冷却水Wのうち一部の冷却水Wpを分岐し、さらに可変流量バルブ9(流量調整回路M1)を介して供給するための配管Lmrが接続される。したがって、この場合、例えば、温度の低い冷却水Wpを供給する配管Lmrを小タンク部2sの上側位置に接続すれば、反対側の小タンク部2m側から受ける影響をより回避することが可能になるとともに、温度の高い冷却水Wを戻す配管Lsrを小タンク部2sの下側位置に接続すれば、小タンク部2m側の影響を積極的に受けることにより熱交換可能となる。
【0047】
図8は、図7の変更例を示す。この変更例は、図7に示した断熱仕切壁4の上下を反転させたものであり、各仕切壁材4p,4qをそれぞれ傾斜させて配することにより、仕切壁材4pと4q間における上側の間隔を狭くし、かつ下側の間隔を広くしたものである。これにより、小タンク部2sから見て上側の断熱性能が低くなり、かつ下側の断熱性能が高くなる。したがって、この場合には、図7の場合とは反対に、温度の低い冷却水Wpを供給する配管Lmrを小タンク部2sの下側位置に接続すれば、反対側の小タンク部2m側から受ける影響をより回避することが可能になるとともに、温度の高い冷却水Wを戻す配管Lsrを小タンク部2sの上側位置に接続すれば、小タンク部2m側の影響を積極的に受けることにより熱交換可能となる。
【0048】
図7及び図8のように、断熱仕切壁4を、高さ位置に応じて異なる断熱性能となるように構成すれば、配管Lmr,Lsrの接続位置(接続高さ)を、冷却水Wp,Wの条件及び状態等に対応して最適な接続高さに選定可能となり、熱損失等を最小限に抑えることができる。
【0049】
図9に示す変更実施形態は、冷却水タンク2における小タンク部2sに接続する配管の接続位置の変更例を示す。上述したように、小タンク部2sには、被冷却部Rsにより熱交換された温度の高い冷却水Wを戻す配管Lsrが接続されるとともに、冷却器31により冷却された冷却水Wのうち一部の冷却水Wpを分岐し、さらに可変流量バルブ9を介して供給するための配管Lmrが接続されるため、例えば、図9に示すように、各配管LmrとLsrの位置関係(接続位置及び/又は接続高さ)を設定すれば、冷却水W,Wpの流入時には、温度の高い冷却水Wと冷却された冷却水Wpを衝突させ、或いはスパイラル状に流入させるなどにより温度の高い冷却水Wと冷却された冷却水Wpを撹拌させることが可能となり、冷却水W温度の均等化及び安定化に寄与できる。
【0050】
図10(及び図11)に示す変更実施形態は、冷却水タンク2における断熱仕切壁4の他の変更例を示す。この変更例は、断熱仕切壁4、即ち、仕切壁材4p,4qの下端辺における一個所又は二個所以上に切欠部を形成し、これにより、小タンク部2sの通水孔部4px,4qx,4py,4qyを設けたものである。このような通水孔部4px…,4py…を設けることにより、メンテナンス時や洗浄時には、小タンク部2s内部の冷却水Wを、この通水孔部4px…,4py…を通して小タンク部2m側に排出した後、小タンク部2mのドレン部51を通して外部に排水できる。したがって、小タンク部2s側に別途設けるドレン部が不要となり、構成の単純化及びコストダウンに寄与できる。
【0051】
図12及び図13に示す変更実施形態は、多系統冷却システム1における回路の変更例を示す。図12は、図4に示した回路に対して、第二流量調整回路M2を追加したものであり、この第二流量調整回路M2により、被冷却部Rmから戻る高温の冷却水Wの一部を分岐して小タンク部2sに供給することができる。この場合、第二流量調整回路M2は、可変流量バルブ52と配管Lmtにより構成することができる。これにより、副冷却系統3sにおいては、前述した、被冷却部Rsに供給する冷却水Wの温度(検出温度)Tsdを水温センサ12sにより検出し、検出温度Tsdが設定温度Tssになるように、コントローラ10により分岐した冷却水Wp…の流量をフィードバック制御、即ち、第一流量調整回路M2をフィードバック制御する基本形態に加え、検出温度Tsdが設定温度Tssになるように、第一流量調整回路M1及び第二流量調整回路M2の双方をフィードバック制御することが可能となる。したがって、降温時の温度制御及び昇温時の温度制御が可能になるため、冷却水Wの温度に対する制御応答性、更には制御性をより高めることができる。
【0052】
図13は、図4における可変流量バルブ9の代わりに、定流量バルブ53と、三方弁を有する可変流量バルブ54とを接続して構成した第一流量調整回路M1eを設けたものである。図4に示した可変流量バルブ9のみを用いた場合には、可変流量バルブ9の調整により被冷却部Rmに供給される冷却水Wの流量が変動してしまうが、図13の第一流量調整回路M1eを用いれば、可変流量バルブ54により冷却水Wpの流量を可変した場合であっても、被冷却部Rmに供給する冷却水Wの流量を一定に維持できる。即ち、安定した規定量に維持することができる。なお、可変流量バルブ54により配管Lmrを通して小タンク部2sに供給する流量を調整した際における余分な冷却水Wpは、配管Lrrを通して小タンク部2mに戻す(逃がす)ことができる。
【0053】
また、図13には、被冷却部Rmに供給する冷却水Wの流量を制御する流量制御回路M3を付設する場合を仮想線により示す。この流量制御回路M3は、被冷却部Rmに供給する冷却水Wの流量を流量計55により検出するとともに、この検出した流量(検出流量)に基づいて、コントローラ10は、圧送ポンプ7mに制御信号を付与し、検出流量が予め設定した目標流量となるように制御する機能を備える。したがって、流量制御回路M3を設ける場合、第一流量調整回路M1eと組合わせることにより、より緻密な制御が可能になる。さらに、流量制御回路M1eに第一流量調整回路M1eを兼用させることも可能である。したがって、この場合には、流量制御回路M3を、図4に示した可変流量バルブ9を用いた第一流量調整回路M1と組合わせることも可能である。なお、図6〜図13において、図1〜図5と同一部分には同一符号を付してその構成を明確にするとともに、その詳細な説明は省略する。
【0054】
以上、好適実施形態及び変更実施形態について詳細に説明したが、本発明は、このような実施形態に限定されるものではなく、細部の構成,数量,数値,素材,手法等において、本発明の要旨を逸脱しない範囲で、任意に変更,追加,削除することができる。
【0055】
例えば、冷却水タンク2の内部に、断熱仕切壁4により仕切り、かつ上方を開放した複数の小タンク部2m,2s…を設けるとは、小タンク部2m,2s…を予め製作し、各小タンク部2m,2s…の上端を連結管等により連結して一体化した構造も含まれる概念である。一方、冷却系統3m,3s…は、被冷却部Rm,Rs…を冷却した後の冷却水W…を小タンク部2m,2s…に戻す循環系により構成した場合を示したが、冷却水Wを循環させることなく廃棄する非循環式に構成する場合を排除するものではない。さらに、冷却部5は、冷凍サイクルCを用いたが、ペルチェ素子を利用したサーモモジュール等の他の冷却手段を用いてもよい。なお、冷凍サイクルC及びサーモモジュールは冷却器又は加熱器として機能させることができるため、本発明における「冷却」とは「加熱」も含む概念である。また、冷却水Wとは、水道水をはじめ不凍液等の冷却可能な液体を含み、基本的には冷却液と同一の概念である。
【産業上の利用可能性】
【0056】
本発明に係る多系統冷却システム1は、レーザ加工機をはじめ、複数系統により冷却水を供給する各種被冷却機器の冷却に利用できる。
【符号の説明】
【0057】
1:多系統冷却システム,2:冷却水タンク,2m:小タンク部,2s…:小タンク部,3m:冷却系統(主冷却系統),3s…:冷却系統(副冷却系統),4:断熱仕切壁,4s:仕切壁材,4p…:仕切壁材,4qx:通水孔部,4px:通水孔部,4py:通水孔部,4qy:通水孔部,5:冷却部,6:断熱部材,W…:冷却水,Wp:分岐した一部の冷却水,Rm:被冷却部,Rs…:被冷却部,Tms:設定温度,Tss…:設定温度,Tmd:検出温度,Tsd…:検出温度,S:隙間,M1:流量調整回路(第一流量調整回路),M2:第一流量調整回路,M3:第二流量調整回路,Lmr:配管,Lsr:配管
【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷却水が収容された冷却水タンクから複数の被冷却部にそれぞれ異なる温度に冷却した冷却水を供給して冷却を行う複数の冷却系統を備える多系統冷却システムであって、前記冷却水タンクの内部に、断熱仕切壁により仕切り、かつ上方を開放した複数の小タンク部を設け、各小タンク部と各被冷却部をそれぞれ接続して複数の冷却系統を構成するとともに、他の冷却系統の設定温度よりも低い設定温度を設定し、かつ冷却部により冷却を行う一つの冷却系統(主冷却系統)と、前記冷却部により冷却された主冷却系統の冷却水から分岐した一部の冷却水が各小タンク部に供給されることにより冷却を行う他の冷却系統(副冷却系統)とを設けたことを特徴とする多系統冷却システム。
【請求項2】
前記冷却系統は、前記被冷却部を冷却した後の冷却水を前記小タンク部に戻す循環系により構成することを特徴とする請求項1記載の多系統冷却システム。
【請求項3】
前記冷却系統における最大の設定温度と最低の設定温度の差は、15〔℃〕以下に選定することを特徴とする請求項1又は2記載の多系統冷却システム。
【請求項4】
前記断熱仕切壁は、一枚の仕切壁材により,又は隙間を介して配した二枚以上の仕切壁材の組合わせにより構成することを特徴とする請求項1,2又は3記載の多系統冷却システム。
【請求項5】
前記断熱仕切壁は、二枚以上を組合わせた各仕切壁材の角度を異ならせることにより少なくとも上側と下側の断熱性能を異ならせるとともに、前記副冷却系統における小タンク部に冷却水を供給する配管の少なくとも接続高さを当該断熱性能に対応して選定してなることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の多系統冷却システム。
【請求項6】
前記断熱仕切壁は、二枚以上の仕切壁材を組合わせた際の前記隙間に断熱部材を収容して構成することを特徴とする請求項5記載の多系統冷却システム。
【請求項7】
前記断熱仕切壁は、下端辺の所定位置に切欠部を形成することにより一又は二以上の通水孔部を設けてなることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の多系統冷却システム。
【請求項8】
前記副冷却系統における前記小タンク部に対して、複数の位置から流入する各冷却水が内部で撹拌されるように、当該複数の位置における配管の接続位置及び/又は接続高さを選定してなることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の多系統冷却システム。
【請求項9】
前記主冷却系統は、前記被冷却部に供給する冷却水の温度(検出温度)を検出し、前記検出温度が設定温度になるように、前記冷却部の冷却能力をフィードバック制御することを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載の多系統冷却システム。
【請求項10】
前記副冷却系統は、前記冷却部により冷却された主冷却系統の冷却水から分岐した一部の冷却水の流量を調整する流量調整回路(第一流量調整回路)を備えることを特徴とする請求項1〜9のいずれかに記載の多系統冷却システム。
【請求項11】
前記主冷却系統に接続した前記被冷却部から小タンク部に戻る冷却水から分岐した一部の冷却水を前記副冷却系統における小タンク部に供給するとともに、当該一部の冷却水の流量を調整する第二流量調整回路を備えることを特徴とする請求項1〜10のいずれかに記載の多系統冷却システム。
【請求項12】
前記副冷却系統は、前記被冷却部に供給する冷却水の温度(検出温度)を検出し、前記検出温度が設定温度になるように、前記第一流量調整回路及び/又は前記第二流量調整回路をフィードバック制御することを特徴とする請求項10又は11記載の多系統冷却システム。
【請求項1】
冷却水が収容された冷却水タンクから複数の被冷却部にそれぞれ異なる温度に冷却した冷却水を供給して冷却を行う複数の冷却系統を備える多系統冷却システムであって、前記冷却水タンクの内部に、断熱仕切壁により仕切り、かつ上方を開放した複数の小タンク部を設け、各小タンク部と各被冷却部をそれぞれ接続して複数の冷却系統を構成するとともに、他の冷却系統の設定温度よりも低い設定温度を設定し、かつ冷却部により冷却を行う一つの冷却系統(主冷却系統)と、前記冷却部により冷却された主冷却系統の冷却水から分岐した一部の冷却水が各小タンク部に供給されることにより冷却を行う他の冷却系統(副冷却系統)とを設けたことを特徴とする多系統冷却システム。
【請求項2】
前記冷却系統は、前記被冷却部を冷却した後の冷却水を前記小タンク部に戻す循環系により構成することを特徴とする請求項1記載の多系統冷却システム。
【請求項3】
前記冷却系統における最大の設定温度と最低の設定温度の差は、15〔℃〕以下に選定することを特徴とする請求項1又は2記載の多系統冷却システム。
【請求項4】
前記断熱仕切壁は、一枚の仕切壁材により,又は隙間を介して配した二枚以上の仕切壁材の組合わせにより構成することを特徴とする請求項1,2又は3記載の多系統冷却システム。
【請求項5】
前記断熱仕切壁は、二枚以上を組合わせた各仕切壁材の角度を異ならせることにより少なくとも上側と下側の断熱性能を異ならせるとともに、前記副冷却系統における小タンク部に冷却水を供給する配管の少なくとも接続高さを当該断熱性能に対応して選定してなることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の多系統冷却システム。
【請求項6】
前記断熱仕切壁は、二枚以上の仕切壁材を組合わせた際の前記隙間に断熱部材を収容して構成することを特徴とする請求項5記載の多系統冷却システム。
【請求項7】
前記断熱仕切壁は、下端辺の所定位置に切欠部を形成することにより一又は二以上の通水孔部を設けてなることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の多系統冷却システム。
【請求項8】
前記副冷却系統における前記小タンク部に対して、複数の位置から流入する各冷却水が内部で撹拌されるように、当該複数の位置における配管の接続位置及び/又は接続高さを選定してなることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の多系統冷却システム。
【請求項9】
前記主冷却系統は、前記被冷却部に供給する冷却水の温度(検出温度)を検出し、前記検出温度が設定温度になるように、前記冷却部の冷却能力をフィードバック制御することを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載の多系統冷却システム。
【請求項10】
前記副冷却系統は、前記冷却部により冷却された主冷却系統の冷却水から分岐した一部の冷却水の流量を調整する流量調整回路(第一流量調整回路)を備えることを特徴とする請求項1〜9のいずれかに記載の多系統冷却システム。
【請求項11】
前記主冷却系統に接続した前記被冷却部から小タンク部に戻る冷却水から分岐した一部の冷却水を前記副冷却系統における小タンク部に供給するとともに、当該一部の冷却水の流量を調整する第二流量調整回路を備えることを特徴とする請求項1〜10のいずれかに記載の多系統冷却システム。
【請求項12】
前記副冷却系統は、前記被冷却部に供給する冷却水の温度(検出温度)を検出し、前記検出温度が設定温度になるように、前記第一流量調整回路及び/又は前記第二流量調整回路をフィードバック制御することを特徴とする請求項10又は11記載の多系統冷却システム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2012−2496(P2012−2496A)
【公開日】平成24年1月5日(2012.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−111194(P2011−111194)
【出願日】平成23年5月18日(2011.5.18)
【出願人】(000103921)オリオン機械株式会社 (450)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年1月5日(2012.1.5)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年5月18日(2011.5.18)
【出願人】(000103921)オリオン機械株式会社 (450)
【Fターム(参考)】
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